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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050728
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】塞栓組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20240403BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240403BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61L31/04 100
A61L31/06
A61L31/14 300
A61L31/12 100
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024012422
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2020564239の分割
【原出願日】2019-05-10
(31)【優先権主張番号】62/671,836
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】512156316
【氏名又は名称】インセプト・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】INCEPT,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アマルプリート・エス・ソーニー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・クラーソン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ラロー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ビリングス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管内位置における塞栓物質のインビボでの凝固を制御するためのための塞栓術システムを提供する。
【解決手段】インビボで標的部位において相互に反応して塞栓物質を形成する第一及び第二の塞栓成分を含む塞栓組成物であって、塞栓成分は生理液に希釈可能であり、望まない部位においては塞栓組成物を形成しない、塞栓組成物の凝固を制御するための塞栓術システム及び方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始剤を含む第一の液体を、第一のカテーテルルーメンを通じて標的内腔へと送達するステップと、共開始剤を含む第二の液体を、第二のカテーテルルーメンを通じて前記標的内腔へと送達するステップと、を含み、前記第一の液体と前記第二の液体のうちの少なくとも一方は、複数の官能基を含む水溶性ポリマを含む塞栓術の方法において、
前記開始剤と前記共開始剤は、前記第一の液体と前記第二の液体が相互に混合されると、相互に反応して、前記水溶性ポリマを架橋させて前記標的内腔内に塞栓物質を形成する前記水溶性ポリマの官能基のフリーラジカル重合を開始させるラジカル開始剤を形成し、
前記第一の液体と前記第二の液体の混合物の希釈の所定のパーセンテージは、インビトロゲル化時間試験により測定された場合に120秒未満での前記塞栓物質の形成を阻止する方法。
【請求項2】
前記開始剤はペルオキシドであり、前記共開始剤は還元剤を含み、前記官能基はアクリレート及び/又はメチルアクリレートである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマは、ポリエチレンオキサイドを含む、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記共開始剤は還元剤を含む、請求項1~3の何れかの方法。
【請求項5】
前記還元剤は、Fe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、又はCu+を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
希釈の前記所定のパーセンテージは、前記第一の液体と前記第二の液体の1:1 v/v混合物の100%~400% v/v希釈の範囲である、請求項1~5の何れかの方法。
【請求項7】
前記第一の液体と前記第二の液体の1:1混合物は、インビトロゲル化時間試験により測定された場合に5秒以内に前記塞栓物質を形成する、請求項1~6の何れかの方法。
【請求項8】
前記開始剤はペルオキシドを含む、請求項1~7の何れかの方法。
【請求項9】
前記開始剤はtert-ブチルペルオキシドを含む、請求項1~8の何れかの方法。
【請求項10】
前記水溶性ポリマは、2~16の範囲の数のビニル基を含む、請求項1~9の何れかの方法。
【請求項11】
前記水溶性ポリマは、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、たんぱく質、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリビニルアルコールを含む、請求項1~10の何れかの方法。
【請求項12】
前記水溶性ポリマは、少なくとも80% w/w(Mn)のPEGを含む、請求項1~11の何れかの方法。
【請求項13】
前記第一の液体及び/又は第二の液体は放射線不透過造影剤を含む、請求項1~12の何れかの方法。
【請求項14】
前記塞栓物質は粘着性ハイドロゲルである、請求項1~13の何れかの方法。
【請求項15】
第一のカテーテルは前記第一のルーメンを含み、第二のカテーテルは前記第二のルーメンを含み、前記第一のカテーテルと前記第二のカテーテルは同軸に展開され、
前記第一のカテーテルはアウタカテーテルであり、前記第二のカテーテルはインナカテーテルであるか、又は
前記第一のカテーテルはインナカテーテルであり、前記第二のカテーテルはアウタカテーテルである、
請求項1~13の何れかの方法。
【請求項16】
富血管性腫瘍、血管破裂、血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、止血のため、静脈破裂、又は病態を有する組織に塞栓形成するために実行される、請求項1~15の何れかの方法。
【請求項17】
第一の液体を収容する第一の流体供給部と、
第二の液体を収容する第二の流体供給部と、
不飽和炭化水素を含む少なくとも2つの官能基を含む水溶性ポリマと、
開始剤と、
共開始剤と、
を含む、塞栓組成物のインビボでの凝固を制御するための塞栓術システムにおいて、
前記開始剤は前記第一の液体と前記第二の液体のうちの一方の中に含められ、前記共開始剤は前記第一の液体と前記第二の液体のうちの他方の中に含められ、
前記水溶性ポリマは前記第一の液体と前記第二の液体のうちの少なくとも一方の中に含められ、
前記第一の液体と前記第二の液体の混合物は、前記開始剤と前記共開始剤を反応させて、前記水溶性ポリマの共有結合架橋により塞栓物質を形成する前記官能基のフリーラジカル重合のためのラジカル開始剤を形成し、
前記第一の液体と前記第二の液体の混合物の希釈の所定のパーセンテージは、インビトロゲル化時間試験において測定した場合に120秒未満での前記塞栓物質の形成を防止する塞栓術システム。
【請求項18】
開始剤はペルオキシドを含み、前記共開始剤は還元剤を含み、前記官能基はアクリレート及び/又はメチルアクリレートである、請求項17のシステム。
【請求項19】
前記水溶性ポリマは、ポリエチレンオキサイドを含む、請求項17又は18のシステム。
【請求項20】
前記還元剤は、Fe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、又はCu+を含む、請求項17~19の何れかのシステム。
【請求項21】
希釈の前記所定のパーセンテージは、前記第一の液体と前記第二の液体の1:1 v/v混合物の100%~400% v/v希釈の範囲である、請求項17~20の何れかのシステム。
【請求項22】
前記第一の液体と前記第二の液体の1:1混合物は、インビトロゲル化時間試験により測定された場合に5秒以内に前記塞栓物質を形成する、請求項17~21の何れかのシステム。
【請求項23】
前記開始剤はペルオキシドを含む、請求項17~22の何れかのシステム。
【請求項24】
前記共開始剤は還元剤を含む、請求項17~23の何れかのシステム。
【請求項25】
前記水溶性ポリマは、2~16の範囲の数のビニル基を含む、請求項17~24の何れかのシステム。
【請求項26】
前記水溶性ポリマは、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、たんぱく質、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリビニルアルコールを含む、請求項17~25の何れかのシステム。
【請求項27】
前記水溶性ポリマは、少なくとも80% w/w(Mn)のPEGを含む、請求項17~26の何れかのシステム。
【請求項28】
前記第一の液体及び/又は第二の液体は放射線不透過造影剤を含む、請求項17~27の何れかのシステム。
【請求項29】
前記塞栓物質は粘着性ハイドロゲルである、請求項17~24の何れかのシステム。
【請求項30】
第一のカテーテルは前記第一のルーメンを含み、第二のカテーテルは前記第二のルーメンを含み、前記第一のカテーテルと前記第二のカテーテルは同軸に展開され、
前記第一のカテーテルはアウタカテーテルであり、前記第二のカテーテルはインナカテーテルであるか、又は
前記第一のカテーテルはインナカテーテルであり、前記第二のカテーテルはアウタカテーテルである、
請求項1~13の何れかの請求項17~24の何れかのシステム。
【請求項31】
架橋して前記塞栓物質を形成する少なくとも1つの別の前駆体をさらに含む、請求項17~30の何れかのシステム。
【請求項32】
前記少なくとも2つの官能基はアクリレート基及び/又はメタクリレート基を含む、請求項17~31の何れかのシステム。
【請求項33】
富血管性腫瘍、血管破裂、血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、止血のため、静脈破裂、又は病態を有する組織の塞栓治療のための請求項17~32の何れかの前記システムの使用。
【請求項34】
請求項17~33の何れかの前記システムの構成要素を含むキット。
【請求項35】
請求項17~33の何れかの塞栓成分、開始剤、共開始剤、カテーテルの1つ又は複数を含むキット。
【請求項36】
前記カテーテルは、同軸カテーテルシステムのインナカテーテル又はアウタカテーテルであり、前記キットは前記カテーテルに接続可能なカテーテルアダプタを含む、請求項35のキット。
【請求項37】
脈管構造内に設置された医療機器において塞栓物を形成するための、請求項17~33の何れかの前記塞栓術システムの使用。
【請求項38】
血管内位置における医療機器に塞栓物質を形成する方法において、
カテーテルを血管内腔の、前記血管内腔中の血液が前記カテーテルから前記血管内位置の前記医療機器に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
複数の塞栓成分を前記カテーテルから前記血管内腔へと放出するステップであって、前記塞栓成分は相互に化学的に反応して前記医療機器に塞栓物を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項39】
前記医療機器は止血コイル、コイル、止血プラグ、ビーズ、ステント、フィルタ、又は医療用バルーンである、請求項37の方法。
【請求項40】
前記塞栓成分は開始剤、共開始剤、水溶性ポリマであって、反応して前記ポリマを架橋させて前記塞栓物を形成する複数の官能基を含む水溶性ポリマを含む、請求項38又は39の方法。
【請求項41】
血管内位置に塞栓物質を形成する方法であって、
カテーテルを血管内腔の、前記血管内腔中の血液が前記カテーテルから前記血管内位置に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
前記カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップと、
複数の塞栓成分を前記カテーテルから前記血管内腔へと放出するステップであって、前記塞栓成分は相互に化学的に反応して前記血管内位置に塞栓物質を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項42】
前記塞栓物質は、前記カテーテルの周囲の前記血液の流れを制限する場合のみ形成される、請求項41の方法。
【請求項43】
前記カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップは、前記カテーテルの遠位部分でバルーンを膨張させるステップを含む、請求項41又は42の方法。
【請求項44】
前記塞栓物は、前記血管内位置に存在する医療機器に形成される、請求項41~43の何れかの方法。
【請求項45】
前記塞栓成分は、開始剤、共開始剤、及び、水溶性ポリマであって、反応して前記ポリマを架橋し、前記塞栓物質を形成する複数の官能基を含む水溶性ポリマと、を含む、請求項41~44の何れかの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2018年5月15日に出願された米国仮特許出願第62/671,836号の優先権を主張するものであり、同仮出願をあらゆる目的のために参照によって本願に援用する。
【0002】
技術分野は、標的組織に塞栓形成する方法と、塞栓成分を脈管構造内に送達して、その場で反応させ、塞栓物質を形成させる同軸カテーテルシステムを含む、そのための装置と組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
塞栓術は、塞栓成分の導入によって血液循環又はその他の体液を遮断することを含む。塞栓術の用途には、動脈瘤の治療、出血時の止血処置、又は特定の種類の腫瘍組織の血管の人工的閉塞が含まれる。一般に、医療提供者は、映像によるガイダンスを利用して、カテーテルを動脈等の主要内腔に挿入し、それを動脈瘤、腫瘍、又は破裂血管のようなその他の標的領域等の標的部位に続く血管へと進める。その後、塞栓を形成する機械的装置又は物質が注入される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、共開始剤を含む第一の液体を、第一のカテーテルルーメンを通じて標的内腔へと送達するステップと、開始剤を含む第二の液体を、第二のカテーテルルーメンを通じて標的内腔へと送達するステップと、を含む塞栓術の方法であり、第一の液体と第二の液体のうちの少なくとも一方は、各々が不飽和炭化水素を含む複数の官能基を含む少なくとも1種の水溶性ポリマをさらに含む。共開始剤と開始剤は、混合されると反応してラジカル開始剤を形成し、それが少なくとも1種の水溶性ポリマの不飽和部分を重合させて、塞栓物質を標的内腔に形成する。塞栓物質は、インビボで、血液又はその他の体液によって所定の量を超えて希釈されると形成されないように設計される。しかしながら、それと同時に、塞栓物質は所期の使用部位では有効に形成される。1つの実施形態において、成分は、第一の液体と第二の液体の混合物の所定の希釈パーセンテージが塞栓物質の形成を阻止するか、又はインビトロゲル化時間試験において塞栓物質不形成により測定した場合に、ゲル形成において例えば120秒超の実質的遅延を提供するように選択される。所定の希釈量の例は、100% v/v~400% v/vの範囲の値である。
【0005】
本発明の他の実施形態は、第一の液体を収容する第一の流体供給部、第二の液体を収容する第二の流体供給部、不飽和炭化水素を含む少なくとも2種の官能基を含む水溶性ポリマ、開始剤、及び共開始剤のうちの1つ又は複数を含む、塞栓組成物のインビボでの凝固を制御するための塞栓術システムであり、開始剤は第一の液体と第二の液体のうちの一方の中に含められ、共開始剤は第一の液体と第二の液体のうちの他方の中に含められ、水溶性ポリマは第一の液体と第二の液体のうちの少なくとも一方の中に含められる。第一の液体と第二の液体の混合物は、開始剤と共開始剤を反応させて、水溶性ポリマの共有結合架橋により塞栓物質を形成する官能基のフリーラジカル重合のためのラジカル開始剤を形成する。成分は、所定の希釈が塞栓材料の形成を阻止するか、有意に遅延させるように選択されてよい。例えば、第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物の300% v/v又は400% v/v希釈により、インビトロゲル化時間試験により測定した場合に120秒以内の塞栓物質不形成により測定した場合に、塞栓物質の形成を阻止する。システムは、1つ又は複数のカテーテル及び/又はカテーテルアダプタを含んでいてよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】同軸カテーテルシステムで使用するためのインナカテーテルの実施形態を示す。
図2図1のインナカテーテルを含む同軸カテーテルシステムの分解図である。
図3図2の同軸カテーテルシステムの平面図であり、デュアルシリンジアセンブリが断面図で示される。
図4A】同軸カテーテルが留置位置にある図3のカテーテルシステムの使用の実施形態を示す。
図4B】塞栓組成物を放出している図4Aのカテーテルシステムを示す。
図4C】塞栓組成物を放出した後の図4Bのカテーテルシステムを示す。
図4D図4Cのカテーテルシステムからの塞栓成分の放出後に所定の位置にある塞栓物質を示す。
図4E】同軸カテーテルが留置位置にあり、塞栓成分を放出している図3のカテーテルシステムの使用の代替的実施形態を示す。
図5】同軸カテーテルが留置位置にあり、塞栓成分を放出している図3のカテーテルシステムの使用の代替的実施形態を示す。
図6A】第一及び第二の塞栓成分が送達装置の第一及び第二のルーメンから放出されている、止血コイルとの組合せによる塞栓術システムの実施形態の使用を示す。
図6B】第一及び第二の塞栓成分がコイルに向かって流れている図6Aの使用を示す。
図6C】第一及び第二の塞栓成分がコイルにおいて塞栓物質を形成している図6Bの使用を示す。
図6D】第一及び第二の塞栓成分の第二の用量がコイルに向かって流れている図6Cの使用を示す。
図6E】脈管構造がコイルにおいて塞栓物質で塞栓形成されている図6Dの使用を示す。
図7A】バルーンとの組合せによる脈管構造内の塞栓術システムの実施形態の使用を示す。
図7B】塞栓成分が送達装置から放出されている図7Aの使用を示す。
図7C】塞栓物質が脈管構造に塞栓形成している図7Bの使用を示す。
図8】架橋ポリマのマトリクスの一部を示し、架橋間の計算による距離を例示する。
図9】実施例9で説明されている右腎のベースライン血管造影図である。
図10】実施例9で説明されている右腎の最尾部のサブトラクション血液造影図であり、カテーテル先端が矢印で示されている。
図11】カテーテルにより尾極において塞栓形成された頭蓋動脈を示す画像であり、ゲルが非標的外頭蓋部を取り囲み、完全な塞栓形成を示している。
図12】肝臓ベースライン血管造影図と、実施例9に記載されている右腎の右外側葉への塞栓物送達のためのカテーテル留置であり、カテーテル先端は左側の矢印で示され、右側の矢印は送達時にカテーテル先端が置かれた位置を示す。
図13】塞栓形成された肝臓の標的脈管構造であり、カテーテル先端は矢印で示されている。
図14】特定の塞栓術調査に使用されたフローループの略図である。
図15図14のフローループ中の関心対象部分の画像であり、カテーテルは塞栓成分と色素を、医療用コイルを通過する流動流体の中に放出している。
図16】直線で示される塞栓ハイドロゲルの形成による管の塞栓形成後の図15の医療用コイルの画像である。
図17】管内から取り除かれた後の図16の医療用コイルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特定の実施形態は、血液の流れ又はその他の要素に起因する希釈効果に係わらず、化学的に反応して塞栓物質を形成することのできる塞栓成分の送達に関する。ハイドロゲルが好ましい塞栓物質である。塞栓成分は、同軸カテーテルシステムを通じて送達可能である。カテーテルの遠位端は脈管構造内に位置付けられて、カテーテルの遠位側の脈管構造内の標的部位において塞栓物質を形成する塞栓成分を放出する。塞栓成分は、別々のカテーテルルーメンから放出され、混合されて相互に化学反応し、ハイドロゲル又はその他の塞栓物質を形成する。塞栓成分は、血液の流れの希釈効果並びに血液及び組織のたんぱく質や生体分子による妨害に係わらず、有効な塞栓物質を形成するように選択できると判断された。他方で、塞栓物質は標的部位でのみ形成されることがさらに望まれた。塞栓成分及び組成物は、これらが標的部位以外の位置に塞栓物質を形成するリスクを最小化するように考案された。塞栓物質が形成されないようにするために開発された1つの解決策は、体積パーセンテージ希釈等の所定の希釈程度だけ希釈されたときに塞栓物質を形成しないような成分を提供することであった。当業者であればわかるように、血流等のダイナミックな希釈条件の下でも有効な塞栓物質を形成するハイドロゲル等の塞栓物質を作るという目的は、非標的位置で希釈時に塞栓物質を形成しないハイドロゲルを作るという目的と相反する。
【0008】
1つの有用なシステムは、開始剤及び共開始剤と混合される複数のフリーラジカル重合性基を有するハイドロゲル前駆体に基づく。ハイドロゲル前駆体の実施形態は、複数のビニル官能基を持つ水溶性ポリマである。共開始剤と組み合わされる水溶性ポリマがハイドロゲル前駆体と呼ばれるのは、反応するとそれがハイドロゲルを形成し、ハイドロゲルマトリクスの一部となるからである。ハイドロゲルは、フリーラジカル重合反応を通じてビニル基の架橋が始まると形成される。フリーラジカル開始剤は、ペルオキシドと還元剤からなる試薬を組み合わせることによって製作される。ペルオキシドは開始剤と呼ばれてよく、及び/又は還元剤は共開始剤と呼ばれてよく、開始剤と共開始剤は協働して別の開始剤を形成し、これはフリーラジカル開始剤と呼ばれてよい。他のシステムは、複数のハイドロゲル前駆体に基づき、前駆体の1つは複数の求電子基を有し、前駆体のその他は複数の求核基を有し、これらは例えば低pH等、それらが反応しない限定条件下で相互に混合される。これらの前駆体は、pH又はその他の限定条件を変化させて反応を起こさせる試薬とそれらを組み合わせることによって塞栓を形成するために使用される。ハイドロゲル前駆体の一実施形態は、複数の官能基を有する水溶性ポリマである。
【0009】
塞栓組成物のインビボでの凝固を制御するための塞栓術システムの実施形態は、複数のビニル官能基と還元剤(共開始剤)を含む水溶性ポリマを含む第一の液体を収容する第一の流体供給部と、ペルオキシドの形態の開始剤を含む第二の液体を収容する第二の流体供給部と、第一の液体を第一のカテーテルルーメンに送達するために第一の流体供給部に接続可能であり、第二の液体を第二のカテーテルルーメンに送達するために第二の流体供給部に接続可能なカテーテルアダプタと、を含み、第一の液体と第二の液体の1:1 v/vの混合物は、水溶性ポリマを結合架橋させて塞栓物質を形成するビニル基の重合のためのフリーラジカル源を提供し、所定の希釈程度がインビボでの塞栓物質の形成を阻止する。インビトロゲル化時間試験は、塞栓前駆体の希釈感度の評価に有益である。1つの実施形態において、第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物の400% v/v希釈は、インビトロゲル化時間試験に従って、例えば0.3~30分等のある時限内での塞栓物質不形成により測定した場合に、塞栓物質の形成を阻止する。代替的に、後述のように、異なる体積パーセンテージ希釈が選択されてもよい。
【0010】
塞栓術・塞栓形成という用語は、生体内腔、血管、器官、又は他の標的組織が、塞栓物又は塞栓物質と呼ばれてよい物質の塊の設置によって閉塞されるプロセス又は状態を意味する。標的組織という用語は広く、例えば、血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、動脈瘤、がん、腫瘍、富血管性腫瘍(富血管性腫瘍)(がん性又は良性)、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、うっ血、血管破裂、静脈破裂、又は病変状態を有する組織であってよい。標的組織に血管が通っている場合、その標的組織を通る血管内の塞栓形成によって標的組織に塞栓術が行われ、例えば、腫瘍を通る血管の塞栓術は腫瘍の塞栓術と言われる。塞栓術は、標的内腔、例えば血管、動脈、静脈、又はその他の生体内腔で行われてよい。
【0011】
カテーテルシステム、同軸、及びマルチルーメンカテーテルを用いた塞栓成分の送達
複数のルーメン、好ましくは相互に関して摺動的に移動可能なルーメンを有するカテーテルシステム、例えば同軸カテーテルが、塞栓成分の送達に有益である。その他のカテーテル、例えば、複数のルーメンを有するシングルカテーテルも使用されてよい。実施形態はカテーテルを含んでいてよく、又は相互に関してオフセット距離だけ移動可能なルーメンを有するカテーテルシステムが有益である。
【0012】
図1~3は、同軸カテーテルシステムの実施形態を示しており、カテーテルは相互に関して移動可能である。図1は、ハブアセンブリ12とシャフト14を有する小径カテーテル10を示す。ハブアセンブリ12は、中間部分16と、ストレインリリーフ部材18と、ハブウィング22及び近位ハブコネクタ24を有するハブ20と、を有する。シャフトカテーテル14は、後述の特定の実施形態においてはインナカテーテルを提供するために使用されてよく、遠位出口先端26を有する。当業者は、カスタムメイドでも市販品として入手されてもよいこれらの構成要素をよく知っている。ストレインリリーフ部材18は、フレキシブルシャフトカテーテル14からハブ20への移行部を提供する。中間部分16は任意選択によるものであり、シャフトカテーテル14を覆う別のストレインリリーフ部材として、及び/又はシャフトカテーテルの、大きい内径(ID)及び/又は外径(OD)を有する部分として提供されてもよい。図2は、同軸カテーテルシステム28の分解図であり、インナカテーテル10と、アウタカテーテル30と、同軸カテーテルアダプタ(Tuohy-Borst)32と、デュアルシリンジ34を有する。アウタカテーテル30は、アウタカテーテルシャフト36と、アウタカテーテルストレインリリーフ部材38と、遠位ハブコネクタ40と、ハブ42と、ハブウィング44と、近位ハブコネクタ46と、を有する。同軸カテーテルアダプタ32は、遠位コネクタ48と、胴部50と、近位コネクタ52と、サイドアーム54と、を有する。Tuohy-Borstアダプタ等の同軸カテーテルアダプタアダプタは、その中を通るカテーテルの周囲にシールを提供するシーリング部材(図示せず)を有し、サイドアーム54は、サイドアームと、インナカテーテルシャフト14とアウタカテーテルシャフト36との間に形成される環状空間との間の流体連通を提供する。デュアルシリンジ34は、流体供給部(胴部)58と、プランジャ60と、プランジャハンドル62と、シール64と、を有するシリンジ56と、流体供給部(胴部)68と、プランジャ70と、プランジャハンドル72と、シール74と、を有するシリンジ66と、シリンジ56、66を保持するホルダ76と、プランジャ60、70に結合されたエンドピース78と、を有する。フレキシブルチューブとして描かれているコネクタ80は、シリンジ56をサイドアーム54に結合する。
【0013】
アウタカテーテル30は、近位ハブコネクタ46及び遠位コネクタ48を通じて同軸カテーテルアダプタ32に接続される。インナカテーテル10は同軸カテーテルアダプタ32の中を通り、その際、インナカテーテルシャフト14はアウタカテーテルシャフト36の中に入る。サイドアーム54は、コネクタ80を通じてシリンジ56に接続される。インナカテーテル10は、近位ハブコネクタ24を通じてシリンジ66に接続される。図3のように組み立てられると、流体供給部68はインナカテーテルシャフト14のルーメンと流体連通し、流体供給部58は、インナカテーテルシャフト14とアウタカテーテルシャフト36との間に形成される環状空間と流体連通する。流体供給部58及び68には、塞栓成分を含む液体が収容される。インナカテーテル遠位先端82は、アウタカテーテル遠位先端84に関して摺動可能であり、図のように、先端26は先端84に関して遠位方向に延ばされてよい。使用時には、アウタカテーテルシャフト36は、既知の手技を用いて脈管構造内に導入され、先端84は所望の位置に位置付けられてよい。同軸カテーテルアダプタ32は、アウタカテーテル30に接続され、インナカテーテルシャフト14はその中を通り、先端82が所望の通りに位置付けられる。デュアルシリンジ28は、サイドポート54及びハブコネクタ24に接続される。これらの実施形態は例に過ぎず、例えば、ハブとカテーテルが接続され、結合ジョイントの周囲にストレインリリーフを有するアウタカテーテル等、他の構成も使用されてよい。
【0014】
図4A~4Eは、同軸カテーテルの使用を示す。同軸という用語は、1つのカテーテルが他のカテーテルのルーメン内に配置され、インナカテーテル及びルーメンの中心軸同士が、ルーメン内のインナカテーテルの配置又は移動により限定されて実質的に平行であるシステムを包含するように広く使用される。同軸インナカテーテルは、オフセンタルーメン又は中央ルーメンの中で展開されてよい。アクセス及びカニューレ留置を可能にする標準的な介入手法を使って、動脈又は静脈への外科的又は低侵襲的アクセスが得られる。ガイドカテーテル及び適当なイメージング技術が使用されてよく、これは、アウタカテーテル30の遠位先端84を配置するのに有益であるからである。図4Aにおいて、血管床の一部は、富血管性腫瘍130等、組織内の複数の支流を有する血管床128として示されている。血管132は静脈又は動脈であり、血管床128と連通する。遠位先端84は、血管分岐部134内に配置され、インナカテーテルの遠位先端26はアウタカテーテルの中を通り、カテーテル先端84の遠位側に配置される。矢印は、血流の方向を示す。図4Bは、先端26から放出される、前駆体136を含む塞栓組成物を含む第一の液体を示す。また、先端84は、小さい点により表される開始剤138を含む塞栓組成物を含む液体を放出する。レドックス試薬が不飽和官能基と共に使用される場合のように、還元剤等の共開始剤がさらにシステムに含められてもよい。
【0015】
特定の理論には拘束されないが、流動血液又はその他の流動流体の中に放出される場合、塞栓組成物は図中に概念的に示されているドメイン140の形成を促進するために提供できる。塞栓領域140は、図4Cで、血管床128の中で下流に移動し、複数の分岐点を通って流れ、最終的にこれらが反応し、細すぎてドメイン140を通過させることのできない血管に到達する。塞栓ドメインは内部で、及び相互に反応して蓄積し、血流を遮断し、血管床128に塞栓を形成する。実施例に記載されている方法を用いた器官及び組織からのハイドロゲルの解析により、一般にドメインが連続的構造を形成することが明らかになっている。また、塞栓組成物は、これらが内腔を完全には埋めていなくても、設置後に膨張して基本的に完全にルーメンを埋めるとも考えられている。塞栓物質を通る流れは観察されておらず、血流は完全に遮断された。塞栓組成物は、設置後に、血管又はその他の位置への機械的粘着により、しっかりと位置付けられることが観察され、すなわち、形状、方向、及び寸法の局所的変化によって塞栓物質の設置後の移動が阻止された。
【0016】
塞栓術の代替的な方法が図4Eに示されており、この場合、前駆体136と開始剤138はより長い反応時間を提供し、それによってこれらは血管床128の様々な分岐部の中に入り込んだ後に反応して塞栓物質144を形成する。
【0017】
塞栓術の代替的な方法は図5に示されており、この場合、第一の塞栓成分146は先端84における環状空間から放出され、第二の塞栓成分148は先端26において放出され、第一及び第二の塞栓成分は、例えば求電子-求核化学反応を用いて反応し、塞栓物質を形成する。塞栓ドメイン150が形成され、下流に移動して血管床128に塞栓形成する。
【0018】
塞栓物質は、血管破裂の治療に使用されてよい。
【0019】
インビボで配置された医療機器と共に塞栓成分を使用する方法が図6A~6Eに示されている。カテーテル160、162は、脈管構造164内の、医療機器、例えばコイル166が設置されている標的部位の近位側に、例えばカテーテル160を通じて導入される。塞栓成分168、170が放出され、下流のコイル166へと流される。成分168、170は相互に反応して、塞栓物質172を形成する。成分168、170の複数回の用量が、塞栓物質が血管164の塞栓術を完了させるまで送達されてよい。このプロセスは、実施例12で説明されているものを含む、血管内の流れの状態をモデル化する各種の流量及びチューブサイズでの、モデルフローチャンバを使った実験で観察されている。塞栓成分、それらの濃度、及びそれらの送達速度は、チューブ内に留置されたコイル等の障害物がないかぎり、血管内で塞栓物質を形成しないように選択された。塞栓物質172は、コイルにおいて、及びその周囲に形成されることが観察された。特定の理論によって拘束されないが、塞栓成分は、コイルに到達する前に反応し始めて、薄いハイドロゲルを形成し、コイルがこれらの薄い構造を固定して、それによってハイドロゲルが堆積できたように見える。代替的な理論は、コイルにより、血液及び塞栓成分がコイルを通って流れる際に不規則なレオロジが促進されて、それによってコイルにおける混合及び塞栓物質の形成が促進される、というものである。何れの理論も正しく、個々の状況によってこれらの効果のうちのどちらがより大きいかが決まり得る。脈管構造及び/又は血管奇形の中に留置するために多くの医療機器が利用可能であり、これは例えばビーズ、ステント、フィルタ、バルーン等の止血コイル、止血プラグ、その他であり、これらはすべて、金属、ポリマ系、生分解性、及び永久的形態で利用できる。
【0020】
塞栓成分の代替的な使用方法が図7A~7Cに示されている。カテーテル180、182は標的組織の付近に留置され、バルーン184は完全に展開される(図の通り)か、部分的に展開される。塞栓成分184、186は、カテーテル180、182のルーメンから放出される。アウタカテーテルルーメン及び送達領域の中のカテーテルルーメンのうちの1つは、インナカテーテルとアウタカテーテルとの間の環状スペースである点に留意されたい。成分184、186は反応して塞栓物質188を形成する。このプロセスは、血管内の流れの状態をモデル化する流量及びチューブサイズによるモデルフローチャンバを使った実験で観察された。塞栓成分及びそれらの濃度は、血管内に流れの制約がない場合に血管内で塞栓物質を形成しないように選択された。塞栓物質172は、バルーン184が完全に、又は部分的に展開されたときのみ、形成されることが観察された。前述のように、血流量の減少によって明らかに、塞栓成分が制約のない流れの状態より濃縮されて、塞栓物質184が形成できる状態が作られる。第一の希釈条件群(流れの制約がない場合)で塞栓物質を形成しないように塞栓成分を選択できるという事実をうまく利用して、制約された流れの条件下でのみ塞栓物質が形成されるように物質を使用する新しい方法が考案された。さらに、うっ血時にコイルと共に塞栓ゲルを形成することにより、血流が制約されていない場合のコイル内のゲル形成と比較して、より濃縮されたゲルが生成され得る。
【0021】
当該技術分野において慣例的であるように、カテーテルという用語は、ある文脈では組立後のカテーテル全体又はカテーテルシャフトを指すために使用され、これはその用語の文脈から明らかである。カテーテルルーメンの遠位出口は、流体を送達するか、又はツールのための患者へのアクセスを提供し、カテーテルの近位部分は使用中、患者の体外にある。一方向弁がルーメンと直列に提供されてよく、それによって例えば逆流が遮断される。送達は、手動で行われても、機械力によって行われてもよい。手動流体供給部の例は、手動力により動作可能なシリンジである。シリンジは、独立して動作可能であっても、単独の力が加えられたときに一緒に動作するように接続されてもよい。例えば、デュアル又はマルチバレルシリンジは、手動で、又はシリンジポンプを使って動作してよい。リザーバの他の例は、加圧容器又は、例えば蠕動ポンプ等のポンプに接続された容器である。流体供給部からの流量は、一定であっても、異なる流量に合わせて調整可能であっても、又はカテーテルの使用中に流量を変化させるように調整可能であってもよい。拍動流のための制御が、流量、体積、流動時間、及びパルス間隔のうちの1つ又は複数を制御するために提供されてよい。この制御は機械的、例えばカム又はラチェットであっても、電子的、例えば機械的に動作可能なポンプの電子制御によってもよい。パルスは、本明細書に記載の部分的用量に、又は一定の用量に対応するように設定されてよい。流体供給部は、塞栓成分及び塞栓形成プロセスに有益なその他の成分を含む液体を供給するために使用されてよい。カテーテルの好ましいサイズ及び有益な塞栓成分については後述する。
【0022】
実験は、同軸カテーテルシステム等の摺動式カテーテルシステムを有利に使用できることを示しており、一方のカテーテルは、ある塞栓成分を、他の塞栓成分を放出する他のカテーテルに関して遠位側に放出するように設置される。図1~3で例示された同軸カテーテルは摺動式カテーテルであり、相互に関して移動可能な2つのカテーテルシャフトを有する。使用時に、図3においてdとして表される距離は、0超~100mmであってよく、当業者であれば、明記された限界間のすべての範囲と値、すなわち0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、又は100mm、例えば2~10mm又は3~7mmも想定されることがすぐにわかるであろう。富血管性腫瘍の塞栓術のためのこのオフセット距離の有益な範囲は典型的に、3~10mm又は3~7mmである。血管破裂の治療の場合、オフセット距離は例えば0~15mmであり、当業者であれば、上で挙げたように、それらの間の範囲及び値の全部が想定されることがわかるであろう。
【0023】
実施例
実施例1は、ウサギの動物モデルを使用した、モデル血管床として腎臓に塞栓形成されるインビボ試験について述べる。1つの塞栓前駆体は、1% w/wグルコン酸第一鉄(水溶液)(FeG)に溶解させた30% w/wの濃度の重合性水溶性ポリマ直鎖ポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレート3.4kDa(Mn)を含む第一の液体であり、これをインナカテーテルを通じて送達した。もう一方の塞栓前駆体は、フリーラジカル重合開始剤(tert-ブチルペルオキシド、TBHP、1000ppm)と造影剤としてイオプロミドを含む第二の液体であり、これをインナカテーテルとアウタカテーテルとの間の環状空間を通じて送達した。これらの処理は、塞栓術のためのレドックス開始重合系の試験を反映している。ウサギの腎臓の大きさはヒトの肝臓の腫瘍のそれとほぼ等しく、典型的な大きさは直径1~5センチメートルであり、これは富血管性腫瘍の典型的な大きさである。インナカテーテル先端は、もう一方のカテーテル先端から遠位側に5mmの距離で使用した。2つの組成物を1:1 v/vの比で送達した。標的脈管構造の塞栓術は、小血管(直径15μm未満)の塞栓形成を含めて、成功した。本明細書で使用される公称濃度という用語は、それが送達されるときの割合で希釈された場合に得られる塞栓成分又はその他の物質の濃度を指す。インビボ試験の場合、1:1 v/vの割合で混合された成分は、調製時の濃度の半分である公称濃度を有する。インビボ反応において、第一の濃度で調製され、その後1:1 v/vの比で送達される塞栓成分の結果的な公称濃度は調製時の濃度の半分である。
【0024】
実施例2では、実施例1と同じ物質を使用したが、塞栓組成物は、組成物が意図的に標的組織(腎臓)と標的外組織(前腸間膜動脈)の両方に流される位置へと送達した。標的組織では塞栓形成されたが、標的外組織では塞栓形成されなかった。特定の理論に拘束されないが、塞栓成分の希釈率は腸間膜動脈においてはより高く、それによって塞栓成分は相互に反応可能となる前に希釈されると考えられる。それに対して、明らかに腎臓内での希釈はより低い割合で行われ、それによって塞栓形成が有効であった。
【0025】
実施例3では、異なる調合の塞栓物質を使用した。さらに、送達方式を変えて、ボーラスからこの実施例の中でパフと呼ばれる間欠送達方式に変更した。パフ方式には、使用者が塞栓成分の所望の用量を分割して投与して、結果を、通常は数秒以内のリアルタイムイメージングで評価できるという利点がある。使用者は、所望の最終結果が実現されるまで間欠投与を継続できる。一般に、従来の多くの塞栓術技術で使用される物質とプロセスは、結果を迅速に評価できず、それによって使用者は、その処置が有効であるか否か、及び結果が不満足である場合にどのように対応すべきかを評価するまでに何分も、さらにはもっと長く待たなければならない。
【0026】
実施例3の調合では、12% w/wの調製時濃度(6% w/wの公称濃度)の10kDa(Mn)PEGジアクリレートと0.88% w/wのグルコン酸第一鉄を含む第一の液体を使用した。第二の液体には、ULTRAVIST 300溶液中に2830ppmのTBHPを含めた。ULTRAVIST 300は、周知の非イオン性水溶性X線造影剤であり、1mL当たり623.4mgのイオプロミドを提供し、バッファとして2.42mgのトロメタミンと安定剤として0.1mgのエデト酸カルシウム二ナトリウムを含む。これらの塞栓化学は従来利用可能な各種のX線造影剤媒質中で有効であることは重要であり、その理由は、これによって使用者が自分達の既存のイメージングプロセスその他と両立する媒質を選択できるからである。
【0027】
実施例4に記載の一連の調合では、3.4kDa~10kDa(Mn)及び7.5~15% w/wの公称濃度の範囲の様々な濃度と分子量の水溶性ハイドロゲル前駆体を用いた。他の可変値は一定に保持した。実施例4はまた、インビトロゲル化時間試験も説明している。ゲル化時間は一般に、ビニル部分、重合開始剤、及び還元剤の濃度が高くなることに応答してより速くなった。しかしながら、ゲル化時間はまた、表1のように、アクリレート官能性水溶性ポリマ(PEGジアクリレート)のモル濃度をPEGの分子量を増やすことによって低下させた場合もより速くなった。この結果は、ゲル化時間が一般には官能基(アクリレート)濃度の上昇があると加速すると予想されるため、反直感的である。この反直感的結果は、それでも素早くゲル化する、希釈感度の高い塞栓組成物を製作するのに有益である。特定の理論に拘束されないが、この結果は、分子量(MW)の増大によりミセルを形成する能力の増大に起因する。このミセル形成によって、アクリレート部分の豊富な領域が作られる。
【0028】
表2の第二の一連の調合では、1000~3000ppmの範囲のペルオキシド(具体的には、TBHP)の濃度と1~2% w/wの範囲の還元剤(FeG)の濃度を使用し、その他の可変数は一定に保持した。ゲル化時間は一般に、開始剤と還元剤の濃度を高めると低下した。FeGの濃度を1.5~2に増やしても、ゲル化時間にはほとんど影響がないことがわかった。複数のアームを有する前駆体の中の官能基の数は、ゲル化時間にほとんど影響を与えず、実施例7のように、システムは2本のアーム及び4本のアームを持つ前駆体を有し、そのどちらも1秒未満でゲル化した。
【0029】
実施例5は、塞栓成分の希釈感度を実証する。塞栓成分は、示された条件で、ゲル化阻止のために300% w/wで希釈可能であることが観察された。ゲル化を阻止する正確な量は表3から推測でき、これは、公称6%のPEG溶液が、使用される開始剤に応じて3%又は2%の公称濃度でゲル化しないことを報告しており、これらはそれぞれ100%又は200% v/v希釈に対応する。実施例6はさらに、ゲル化阻止のために300% v/vで希釈可能であると観察された、塞栓成分の希釈感度を実証する。表4で報告されているように、6%公称PEG溶液は、150% v/v希釈にあたる2.4%の公称濃度でゲル化しない。
【0030】
実施例8及び9はさらに、塞栓形成成功の別の実施例である。これらの実施例では、塞栓術のための2部式の求電子-求核官能化前駆体系を用いた。実施例10~11では、塞栓物質の粘着性と接着性を試験した。物質は、組織に接着せず、プラスチック製チューブ及びカテーテルに対する接着性は低いか、又はなかった。前述の実施例12は、望ましい場合、体腔内の医療機器又は標的障害物のある部位にのみ、塞栓物質を形成するために塞栓成分を使用できることを実証している。
【0031】
塞栓成分は、大小の血管に塞栓形成するために送達可能であることが観察され、複数の分枝を有する血管領域においては血管の分枝に塞栓形成された。送達の量と速度は、所望の直径、例えば4μm~15mmの血管直径の血管に塞栓形成するために使用されてよく、すなわち当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲及び値、例えば10未満若しくは20μm未満、4、8、10、15、20、30、50、100、200、500、1000、1500、2000μm、4~50μm、少なくとも10μm、少なくとも15、若しくは少なくとも20μm、又は1、2、3、4、5、10、又は15mmも想定されることがすぐにわかるであろう。ハイドロゲルは、標的位置で形成されると明らかに膨張して、塞栓物質と血管の縁との間に残っている何れの通路、空隙、又は領域をも閉塞させる。
【0032】
塞栓成分の希釈により、塞栓物質を作る上での特定の問題が生じ、これには塞栓成分が、血流を遮断するのに十分に形成される物質を作るように反応しない、という問題が含まれる。しかしながら、驚くべきことに、実験は、成分を血管中に放出させて、血管の複数の分枝を閉塞できることを示した。ハイドロゲルは、適切な機械的強度を有して、血液又は体液の流れを遅らせる連続的形態で形成された。
【0033】
この理論を理解すると、この発見をさらに活用するために、システムの様々な要素を利用できた。1つの要素は、インナカテーテルの遠位出口と同軸のアウタカテーテルの遠位出口との間の距離を制御することによって、塞栓成分の放出地点間の距離を調整することであった。実施例で使用したカテーテルの先端にあったこれらの出口間の距離は、有利な希釈効果を提供するように制御できた。この局面で、特定の希釈効果が予期せぬ利点を提供したことの発見は予想外であり、驚くべきことであった。特定の理論に拘束されないが、最初に血流中に放出された塞栓成分を含む流体が部分的に希釈され、化合されて複数の小さいドメイン及び/又はハイドロゲルを形成し、それが脈管構造の分枝の中に流れ込み、そこでこれらが塞栓形成したと考えられる。したがって、本発明の特定の実施形態は、マルチルーメンカテーテルから遠位先端間の距離を開けて塞栓形成成分を放出すること、希釈感度の高い塞栓組成物、すなわち素早く(約5秒以下で)重合する塞栓組成物を使用すること、用量を分割した塞栓成分の放出、及び富血管性腫瘍(良性、がん性)と血管破裂の塞栓術を含む、有効な塞栓形成のためにこれに関して実行するのに有益な化学作用のうちの、1つ又は複数を含む。これら及びその他の特徴については後で詳しく説明する。
【0034】
本明細書に記載の有効な塞栓術システムを形成する上での問題には、血流中での塞栓成分の希釈、有効な反応のための成分の十分な混合、及びその血管を通る血流を完全に遮断するために血管をハイドロゲルで実質的に満たすこと、が含まれていた。これらの問題の他に、継続的な希釈効果が所期の標的組織以外の部位での塞栓物質の形成を阻止するメカニズムを備える塞栓術システムがさらに考案された。さらに、塞栓ハイドロゲルは、組織、血管組織、器官の組織、プラスチック製チューブ、及びカテーテルの中に粘着物質として形成できる。ハイドロゲルは、相互に粘着したが、組織には接着しなかった。粘着特性は重要な安全上の特徴を提供するが、これはハイドロゲルを送達するために使用されるカテーテル等の機器が、塞栓ハイドロゲル物質で取り囲まれてもハイドロゲルで詰まることがないからである。これらのシステムを用いた実験によって明らかとなった別の利点もあり、これは、カテーテルを患者において一連の塞栓治療のために使用できることであり、それによってカテーテルを抜いて挿入し直すことなく、複数の位置に塞栓を形成できる。また、塞栓術の進行状況をモニタし、希望に応じて用量の投与を繰り返すことができる。
【0035】
塞栓物質、前駆体、官能基、及びハイドロゲルのより詳しい開示
塞栓物質は、理想的には、制御された方法で容易に送達され、標的外の塞栓形成を回避するべきである。これらの物質は、耐久性のある閉塞を形成し、移植に適した生体適合物質で構成されるべきである。
【0036】
塞栓物質は、架橋前駆体から形成されるマトリクスを含む。前駆体という用語は、架橋によりマトリクスを形成する成分を指す。マトリクス内に存在するが、マトリクスを形成するために反応しない物質は前駆体ではなく、これらは例えば塩又はイメージング剤である。塞栓物質は好ましくは、相互に共有結合反応してマトリクスを形成する前駆体で形成される架橋マトリクスを有するハイドロゲルである。前駆体は、結果として得られる塞栓物質、例えばハイドロゲルについて望ましい特性を考慮して選択される。ハイドロゲルは、水分含有量が約20% w/wより多い水和性マトリクスを有し、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることが容易にわかり、以下の何れも上限又は下限として利用できる:20%、99%、80%、95%、少なくとも50%、等であり、パーセンテージはw/w、溶媒はハイドロゲルの場合に水である。マトリクスは、水溶性分子の架橋による基本的に無限の分子量を有するネットワークを形成することによって形成されてよい。水分含有量の高いハイドロゲルは典型的に、柔らかい可撓性物質である。ハイドロゲルは、米国特許出願公開第2009/0017097号明細書、同第2011/0142936号明細書、及び同第2012/0071865号明細書に記載されている。
【0037】
前駆体は、共有結合架橋マトリクスを生成する反応のための1つ又は複数の官能基を含む。ある基は、分子の特徴的な化学反応を提供する化学部分である。基という用語は、基を担持する分子が他の化学部分と自由に誘導体化又は置換可能であることを示すために使用される。官能基という用語は、本明細書において、何に付着しているかを問わず、異なる化学特性を有する1つ又は複数の原子の集合を指すために使用される。官能基の原子は相互に、及び分子の残りと共有結合によって結合される。塞栓物質を形成することに関する官能基という用語は、共有結合して、塞栓物質のマトリクスを形成する基を指し、官能基は他の官能基と共有結合反応して、共有結合架橋マトリクスを作る。架橋マトリクスを形成するために、前駆体は他の前駆体と複数の結合点で反応しなければならない。一般に、マトリクスの前駆体分子は、2つ又はそれ以上の地点で他の前駆体分子と結合する。(例えば、フリーラジカル重合における)反応中心である少なくとも2つの官能基を有する前駆体は、各反応基が異なる成長ポリマ鎖の形成に参加できるため、架橋できる。反応中心を持たない官能基の場合、特に、架橋には前駆体タイプの少なくとも1つにつき、このような官能基が3つ又はそれ以上必要となる。例えば、多くの求電子-求核反応は求電子及び求核官能基を消費するため、前躯体が架橋を形成するのに第三の官能基が必要である。このような前駆体はそれゆえ、3つ又はそれ以上の官能基を有し得、前駆体により2つ又はそれ以上の官能基と架橋され得る。
【0038】
酸化-還元(レドックス)反応による重合
レドックス反応による重合化学は、塞栓組成物の反応に有益である。実験により、高速重合条件は、有利な点として、カテーテルの送達を捕捉せずに血流中にドメインを形成することが証明された。フェントンタイプの試薬は、ペルオキシドと鉄の混合物である。フェントン試薬等のレドックス反応による、又はフェントンタイプの化学作用による重合とは、本明細書において、還元剤の存在下でペルオキシドを使用し、フリーラジカル重合官能基を重合させて、前駆体の重合を起こし、塞栓物質を形成することを示すために使用される用語である。塞栓物質として、ハイドロゲルの形成が好ましい。前駆体と官能基については、本明細書の別の箇所で説明されている。好ましいフリーラジカル重合性官能基は、アクリレート及びアクリレート誘導体である。レドックス反応を含むフリーラジカル重合プロセスには、ペルオキシドに触媒作用を及ぼして、フリーラジカルを形成するための還元剤が関わる。開始剤として使用するためのペルオキシドには、有機ペルオキシドと無機ペルオキシドがある。有機ペルオキシドは、ペルオキシド官能基(ROOR’)を含む有機化合物である。R’が水素である場合、化合物は有機ヒドロペルオキシドと呼ばれる。過酸エステルは一般構造RC(O)OORを有する。有機ペルオキシドは、ペルオキシエステル、ペルオキシ(ジ)カーボネート、ジアクリルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタル、及びヒドロペルオキシド等のクラスに分類できる。O-O結合は容易に壊れ、RO・の形態のフリーラジカルを生成する。実施例においては、例示的ペルオキシドとしてTBHPを使用した。ペルオキシド、ペルオキシド形成物質の例は、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、tert-アミルヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、及び、水性媒質と混合されると過酸化水素等のペルオキシドを形成する固体ペルオキシドである。固体ペルオキシドには、例えば過酸化水素尿素、過炭酸ナトリウム、及び過ホウ酸ナトリウムが含まれる。開始剤の濃度は典型的に10~10,000パーツ・パー・ミリオン(ppm)であり、当業者であれば、明示された限度間のすべての範囲と値、例えば10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、若しくは1000ppm、又は100~2000ppm若しくは100~1000ppmも想定されることがすぐにわかるであろう。
【0039】
特定の実施形態において、一方の塞栓成分は共開始剤と共にポリマを含み、第二の塞栓成分は開始剤を含む。還元剤がペルオキシドを含まない塞栓成分中に存在していてもよい。塞栓成分の一方を含む流体はもう一方の塞栓成分を含む流体と組み合わされて塞栓物質を作り、一方又は両方の流体は還元剤を含み、これは単独の種(二価又は三価イオンの1つ)としても、又は複数の種(少なくとも2種類の還元剤)としても存在してよい。還元剤は、金属イオン、例えばFe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、及びCu+が含まれる。これらは、化合物の中でも、又は塩としても提供されてよく、例えば鉄塩、鉄化合物、硫酸第一鉄、乳酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、及び銅塩である。塩には、硫酸塩、塩化物、カリウム、コハク酸塩、その他が含まれていてよい。塞栓流体中の還元剤イオンの濃度は典型的に0.2~200mMであり、当業者であれば、明示された限度間のすべての範囲と値、例えば0.2、1、5、10、15、19、20、21、25、30、35、40、50、75、100、150、200mM、又は10~50mMも想定されることがすぐにわかるであろう。
【0040】
塞栓成分のための希釈剤として市販の放射線不透過剤を使用することが有益である。例えば、ペルオキシドを市販の放射線不透過剤と組み合わせて含められてよい。これらの薬剤としては、OMNIPAQUE(イオヘキソール)、ISOVUE(イオパミドール)、OPTIRAY(イオベルソール)、及びULTRAVIST(イオプロミド)が含まれるが、これらに限定されない。塞栓成分は、これらの試薬のうちの1つ及びペルオキシド又は還元剤を含んでいてよい。
【0041】
フリーラジカル重合基は、不飽和炭化水素基、例えばビニル基等の不飽和化合物を含む。フリーラジカル重合は、成長鎖にモノマを連続的に添加することである。フリーラジカルは、開始剤に応答して形成できる。開始されたフリーラジカルは活性中心を有し、それ自体を他のモノマユニットに添加して、ポリマ鎖を成長させる。モノマは好ましくは、不飽和炭化水素又はビニル基(-CH=CH2)である。ビニル基は、前駆体上の官能基として使用されてよく、例えばポリマはビニル官能基を担持するように誘導体化されてよい。ビニル官能基には、アクリレート基及びメチルアクリレートが含まれる。基という用語は、置換されてよい化学部分を指し、置換基自体も置換されてよい。アクリレート基の誘導体にはメタクリレート基が含まれる。
【0042】
求電子-求核化学反応及び官能基
塞栓物質は、求電子性官能基を含む塞栓成分と、求核性官能基を含む塞栓成分との間の共有結合反応が関わる実施形態で製作されてよい。求核性基は、電子対を求電子試薬に供与して、反応に関する化学結合を形成する化学種である。求電子性基は、供与可能な電子対を含む求核性官能基と反応する傾向を有する化学基である。求電子性又は求核性基を含む塞栓成分は後述のような前駆体、例えばポリマ、小分子、又はその他の分子であってよい。塞栓成分は相互に反応して、塞栓物質を形成する。
【0043】
実施例8で説明するように、求電子性及び求核性官能基を有する前駆体は、これらが相互に反応しない条件、例えば第一の低pHで、塞栓成分の1つの中に提供されてよい。他の塞栓成分は、組み合わされた成分のpHを調整して、官能基の共有結合反応に有利な第二のpHを実現する因子、例えばアルカリ性バッファを有していてよい。塞栓組成物のインビボでの凝固を制御するための塞栓術システムの実施形態は、複数の求電子性官能基を含む前駆体と複数の求核性官能基を含む前駆体を含む、第一のpHの第一の液体を収容する第一の流体供給部と、第一の液体と1:1 v/vの比で混合されると、第一の流体と第二の流体が混合されて、求電子性官能基と求核性官能基との反応に有利な第二のpHを有するようにする第二の液体を収容する第二の流体供給部と、第一の液体を第一のカテーテルルーメンに送達するために第一の流体供給部に接続可能であり、第二の液体を第二のカテーテルルーメンに送達するために第二の流体供給部に接続可能なカテーテルアダプタと、を含み、第一の液体と第二の液体の1:1 v/vの混合により、求電子性基と求核性官能基が相互に反応して、前駆体を共有結合架橋させて、塞栓物質を形成するものである。この実施形態において、塞栓物質の形成を阻止するか、所定の時間にわたり塞栓物質の形成を阻止する、第一の液体と第二の液体の混合物の所定の希釈が選択されてよい。例えば、希釈は、第一の液体と第二の液体の1:1 v/vの混合物の100%~400% v/v希釈の範囲から選択されてよく、これはインビトロゲル化時間試験において、20~600秒の範囲から選択された所定の時間内での塞栓物質不形成により測定した場合に、塞栓物質の形成を阻止する。塞栓術システムの実施形態は、第一及び第二の流体が第一及び第二の液体が1:1 v/vで混合されたときに、求電子性基対求核性基について0.9:1~1.1:1の範囲の化学量論比を提供する特定の実施形態を含んでいてよい。第一のpHは7未満又は0.1~7.0の範囲から選択されてよく、当業者であれば、明示された限度間のすべての範囲と値、例えば2~5、3、4、5、6、又は7のpHも想定されることがすぐにわかるであろう。第二のpHは、少なくとも7又は7~14の範囲から選択されてよく、当業者であれば、明示された限度間のすべての範囲と値、例えば7.0、7.2、7.4、8、9、9.5、10、11、12、13、及び14も想定されることがすぐにわかるであろう。
【0044】
アミンとチオールは、好ましい求核性官能基である。高速で効率的な反応を起こすために、様々な求電子性官能基が利用可能である。カルボン酸は通常、生理学的条件下で、アミン又はチオール等の他の基と反応しない。しかしながら、このような基は、これらをN-ヒドロキシスクシンイミド等の活性化基で誘導体化して活性エステルを作ることによって反応的とすることができる。これらの官能基を活性化するための幾つかの方法が当該技術分野で知られている。好ましい活性化基には、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロリド、ハロゲン化アリール、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、及びイミドエステルが含まれる。ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を備えるポリマは、一般に、官能基へと容易に誘導体化できる。
【0045】
スクシンイミド基は、有益な求電子性官能基であり、アミン及び/又はチオール等の官能基との反応が好ましい。スクシンイミド基には、スクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミド基、スルホスクシンイミドエステル基、N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル基、N-ヒドロキシエトキシレートスクシンイミドエステル基、グルタル酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SG)、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SS)、炭酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SC)、アジピン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SAP)、又はアゼライン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SAZ)が含まれる。これらの基の幾つかは加水分解により不安定となるエステル結合を有し、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、又はセバシン酸結合等の比較的線形の疎水結合も使用されてよく、これらの結合はコハク酸、グルタル酸、又はアジピン酸結合より分解しにくい。分枝、環状、又はその他の疎水結合も使用されてよい。その他の求電子性官能基は例えば、カルボジイミダゾール、スルホニルクロリド、クロロカルボネート、マレイミドである。
【0046】
前駆体
前駆体の例は、多官能性前駆体である。多官能という用語は、少なくとも2つの官能基、例えば2より多いか、又は2~200の官能基を有することを指す。当業者であれば、明記された限度間のすべての範囲と値、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、26、32、50、60、64、70、80、90、96、100、110、112、120、128、140、150、160、180、190、若しくは200、又は2~16若しくは2~8も想定されることがすぐにわかるであろう。
【0047】
多官能性前駆体は、ポリマでも非ポリマでもよい。ポリマは、モノマユニット又は残基と呼ばれる一連の繰返しユニットから作られる分子である。ポリマには、ランダム、ブロック、交互ブロック、ランダムブロック、及びコポリマが含まれる。ポリマという用語はオリゴポリマを含むように使用され、これは本明細書において、20以下の繰返しユニットを有するポリマを指すために使用される。ポリマは、少なくとも3つの繰返しユニットを有する。非ポリマが使用されてもよい。幾つかの非ポリマは、架橋剤として有益であり、例えば分子量(Mn)が2000又はそれ以下の非ポリマ前駆体である。多官能性前駆体(ポリマ又はその他の前駆体)は水溶性であってよく、すなわち、室温及び少なくとも1g/100mlの濃度において、水溶液中に溶解する。水溶性前駆体には、望まれない位置で塞栓を形成しかねない疎水性液体粒子を形成し得る疎水性前駆体に関して、前駆体の液滴が継続的に希釈、分散され、反応しない場合は本体から除去されるという利点がある。前駆体は、水溶性ポリマでも、水溶性非ポリマでもよい。
【0048】
多官能性前駆体は、コアと複数のアームを含んでいてよい。コアとは、コアから延びる複数のアームに結合する分子の連続部分を指す用語であり、アームの幾つか又は全部は官能基を有し、これは多くの場合、アームの終端にある。コア及び/又はアームのうちの1つ又は複数は親水性であり、本明細書に記載の各種の前駆体から選択されてよい。アームの数は例えば、2より多いか、2~200の官能基であってよい。当業者であれば、明記された限度間のすべての範囲と値、すなわち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、26、32、50、60、64、70、80、90、96、100、110、112、120、128、140、150、160、180、190、又は200も想定されることがすぐにわかるであろう。約2~16本のアームが一般に好ましく、これは本願について考えられる分子量での立体化学的考慮による。2本のアームは、直鎖状非分岐ポリマを指す。親水性アームは、例えばポリエーテル、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシドコポリプロピレンオキシド(PPO)、コポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマ等のポリアルキレンオキシドであってよい。当該技術分野で慣例的であるように、PEGという用語は、PEGの末端基に関係なく、繰返しのPEO基を有するポリマを指すために使用される。親水性アーム又はコアは、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はたんぱく質を含んでいてよい。コアと複数のアームを含む多官能性前駆体という用語は、分子量が250,000 ダルトン(Mn)未満の前駆体に限定される。コアと複数のアームを含む多官能性前駆体は、例えば前駆体の総重量の10%又は20% w/w以下のコアを有していてよく、当業者であれば、明記された限度間のすべての範囲と値、すなわち1、2、5、10、15、又は20%も想定され、Mnが使用されることがすぐにわかるであろう。親水性という用語は、本明細書に記載のその用語の定義によって、親水性である部分が水溶性であるか、又は他の物質に付着していなければ水溶性であることを意味する。
【0049】
多官能性前駆体は、主鎖と複数のペンダント基を含んでいてよく、前駆体は2つ又はそれ以上の官能基を有する。多くのポリマは、主鎖と呼ばれるポリマに、ポリマ主鎖に付着するペンダント基を加えることによって修飾されたものを作ることから得られる構造を有する。主鎖は、複数のペンダント基の追加により修飾されるポリマである。ポリマ主鎖は、置換又は誘導体化可能な基として働き、ペンダント基はペンダント基でさらに修飾されるか、置換及び誘導体化されてよい。
【0050】
多官能性前駆体は、親水性ポリマであるか、それを含んでいてよく、又は基本的に親水性ポリマからなっていてよい。基本的になる(consisting essentially)という用語は、ある前駆体に関して、その前駆体が表示されたポリマ残基の少なくとも80重量%であることを意味する。例えば、少なくとも80% w/wのポリエチレンオキシド基(CH2CH2O)により構成されるPEGポリマは、基本的にPEGからなる。ポリマ又はアームのPEG含有量は、ポリマ又はアーム上のポリエチレンオキシド基のすべてを、これらが他の基により中断されていても、合算することによって計算される。それゆえ、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有するアームは、合計が少なくとも1000MWとなるのに十分なCH2CH2O基を有する。親水性ポリマの例は、PEG、ポリ(ビニルアルコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエーテル、ポリ(オキシアルキレン)、及びポリアルキレンイミンの他、そのコポリマ及び誘導体であり、これにはその置換も含まれる。当該技術分野で慣例的であるように、PEGという用語は、ヒドロキシル末端基の有無を問わず、また特定の末端基を問わず、ポリエチレンオキシドを指すために使用される。
【0051】
多官能性前駆体は疎水性部分を含めて製作されてもよく、結果として得られるハイドロゲルが少なくとも約20%の必要な量の水分を保持しているかぎり、ハイドロゲルを作るために使用されてもよい。幾つかの場合において、前駆体はそれにもかかわらず水溶性であり、これは、親水性部分も有するからである。同様に、ある量の疎水性前駆体は、ハイドロゲルが成果物であるかぎり、親水性前駆体と共に使用してハイドロゲルを製作してもよい。疎水性前駆体は水分散系(懸濁液)を作るが、それにもかかわらず架橋物質を形成するために反応できてよい。ある疎水性部分は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖、又はその他の基を含んでいてよい。疎水性部分を有する幾つかの前駆体は、PLURONIC F68、JEFFAMINE、又はTETRONICの商品名で販売されている。コポリマ又はその他の疎水性分子若しくは疎水性部分は、分子(例えば、ポリマ又はコポリマ)が凝集して、水性連続相の疎水性ドメインを含むミセル若しくはミクロ相を形成させるのに十分な疎水性を有するもの、又はそれ自体で試験した場合に、約7~約7.5のpH、約30~約50℃の温度の水の水溶液から沈殿するか、若しくはその中にある間にそれ以外に相を変化させるのに十分な疎水性を有するものである。
【0052】
多官能性前駆体ポリマは、天然又は合成物質であってよい。天然という用語は、植物、動物、又は真核生物細胞中に自然に見られることを意味する。この用語は、誘導体化された天然の生成物を含み、また、合成により、又は再結合手段により作られた天然の生成物から精製された天然物質も含む。天然ポリマはそれゆえ、グリコサミノグリカン、ポリサッカライド、及びたんぱく質を含む。グリコサミノグリカンの幾つかの例には、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キチン質、ヘパリン、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、及びそれらの誘導体が含まれる。これらの物質は、合成により、天然可溶性状態から、部分的溶解可能若しくは水膨張可能又はハイドロゲル状態に改質されてよい。天然のたんぱく質又はポリサッカライドは、これらの方法で使用するように適応されてよく、これらは例えばたんぱく質、ペプチド、ポリサッカライド、コラーゲン、フィブリン(フィブリノゲン)、アルブミン、アルギン酸、ヒアルロン酸、及びヘパリンである。
【0053】
合成前駆体が使用されてもよい。合成とは、天然では植物、動物、又は真核生物細胞中に見られない分子を指す。幾つかの合成前駆体は、アミノ酸を含まず、又は自然界で発生するアミノ酸配列を持たない。幾つかの合成前駆体は、ペプチド、例えば、ジ-、トリ-、テトラ-リシンである。幾つかの合成分子はアミノ酸残基を含むが、連続する1、2、又は3のみを有し、アミノ酸又はそのクラスタは非天然ポリマ又は基によって分離される。ポリサッカライド又はそれらの誘導体はそれゆえ、合成ではない。
【0054】
幾つかの実施形態は、基本的に、5つ以下の残基のオリゴペプチド配列、例えば少なくとも1つのアミン、チオール、カルボキシル、又はヒドロキシル側鎖を含むアミノ酸からなる前駆体を含む。残基は、自然界で発生するものか、又はその誘導体であるアミノ酸である。このようなオリゴペプチドの主鎖は、天然であっても合成であってもよい。幾つかの実施形態において、2つ又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、前駆体を作るための合成主鎖の一部として形成される。
【0055】
分子量が2000ダルトン以下である前駆体は有益であり、有利な点として、分子量が少なくとも4000ダルトンの前駆体と一緒に使用できる。当業者であれば、明記された限度間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかり、2000以下には、100~2000、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、及び1990ダルトン(Mn)が含まれ、また、少なくとも2000には2000~1,000,000ダルトン(Mn)が含まれる。
【0056】
多官能性前駆体は、導入部位に存在する酵素により切断可能なアミノ酸配列を持たずに調製されてよく、これにはペプチダーゼ及び/又はメタロプロテイナーゼ及び/又はコラゲナーゼによる攻撃を受けやすい配列を持たないことが含まれる。さらに、前駆体は、あらゆるアミノ酸を含まず、又は約50超、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つのアミノ酸のアミノ酸配列を持たずに作られてよい。前駆体は、非たんぱく質であってよく、これは、それらが天然で発生するたんぱく質ではなく、天然に発生するたんぱく質を切断することによって製作できず、合成物質をたんぱく質に加えることによって製作できないことを意味する。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン、非フィブリノゲン、及び非アルブミンであってもよく、これは、それらがこれらのたんぱく質の1つではなく、これらのたんぱく質のうちの1つの化学的誘導体ではないことを意味する。非たんぱく質前駆体の使用とアミノ酸配列の限定的使用は、免疫反応を回避し、望ましくない細胞の認識を回避し、及び天然の発生源から得られたたんぱく質を使用することに伴う危険を回避するために有益である可能性がある。前駆体はまた、非サッカライド(サッカライドを含まない)又は、基本的に非サッカライド(前駆体の分子量のw/wで約5%を超えるサッカライドを含まない)とすることもできる。それゆえ、前駆体は例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、又はゲランを除外してよい。前駆体はまた、非タンパク質及び非サッカライドの両方とすることもできる。
【0057】
前駆体及び結果として得られる塞栓物質は、加水分解可能、酵素分解可能、又は生分解不能であってよい。生分解性という用語は、人の体内へのインプラントについて典型的な状態を指し、加水分解性基及びたんぱく質分解性基の両方を含む。加水分解性基は、水中で自然に分解する基であり、エステルは加水分解性を有する。たんぱく質分解性基は、プロテアーゼにより分解される基である。たんぱく質分解性アミノ酸配列は、プロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ又はメタロプロテイナーゼにより分解されることが知られており、たんぱく質分解性を提供するために前駆体の中に含められてよい。炭化水素鎖、ポリカーボネート、及びPEGは生分解性を持たない。たんぱく質分解性配列を持たないポリアミドは、生分解性を持たず、分析されていないが、アミド又はペプチド結合の加水分解は極めて遅い。移植から20年間人体内に保持されてその機械的強さの少なくとも3分の2が失われるまで分解されないインプラントは、分解性を持たない。生体分解性物質の特定の実施形態は、1つ又は複数の官能基が生分解性基、例えばエステル又はその他の加水分解性基又は酵素分解性基によりポリマに結合されたものを含む非生分解性ポリマである。
【0058】
多官能性前駆体は、複数の官能基を含む。多官能性前駆体の実施形態は、親水性のポリマ又は非ポリマである。1つ又は複数の多官能性前駆体は、塞栓物質を形成するために使用されてよい。多官能性前駆体は、ハイドロゲルの形成のために選択されて親水性であることが好ましく、又はハイドロゲルを形成するために親水性の他の多官能性前駆体と共に使用される。多官能性前駆体は、1つ又は複数の生分解性基を含んでいても、生分解性基を含まなくてもよい。多官能性前駆体は、本明細書に記載されているように、いくつかの官能基及び/又はアーム若しくはペンダント基を有するように選択されてよい。官能基は、フリーラジカル重合官能基、求電子性官能基、又は求核性官能基であってよい。多官能性前駆体の分子量は、100~1,000,000ダルトン(Mn)の範囲であってよい。当業者であれば、明記された限度間のすべての範囲と値、例えば100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、40,000、50,000、60,000、80,000、100,000、200,000、250,000、500,000、700,000、800,000、900,000ダルトン(Mn)も想定されることがすぐにわかるであろう。一般に、100,000未満又は60,000未満の分子量が好ましい。ハイドロゲル又はその他の塞栓物質の架橋間の所望の距離は、1つ又は複数の前駆体の分子量の選択において考慮され、また、その他の特性も考慮され、これには前駆体の可溶性、前駆体を送達するために使用される液体の粘度、及び分子量により影響を受ける重合又はその他の反応キネティクスが含まれる。多官能性前駆体のための官能基の数は、少なくとも2又は2~200である。多官能性前駆体上のアームの数は、0~200、例えば2超、又は2~200であってよく、各アームが官能基を有するか、複数、例えば2超又は2~200のアームが官能基を有する。多官能性前駆体のアームは、1つ又は複数の生分解性基を含んでいても、生分解性基を含まなくてもよい。
【0059】
複数のアミン及び/又はチオールを含む多官能性前駆体は一般に、求電子性官能基を含む多官能性前駆体との反応にとって有益である。このような前駆体は、1000ダルトン未満又は2000ダルトン(Mn)未満の分子量を有していてよく、例えばオルニチン、スペルミン、スペルミジン、尿素、グアニジン、ジアミノピメリン酸、ジアミノブチル酸、メチルオルニチン、ジアミノプロピオン酸、シスチン、ランチオニン、シスタミン、トリオキサトリデカンジアミン、シクロヘキサンビス(メチルアミン)、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メチレンビス(メチルシクロヘキサミン)、ジアミノシクロヘキサン、n-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、ジアミノメチルジプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、ビス(アミノプロピル)プロパンジアミン、ジアミノメチルプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、ジメチルプロパンジアミン、2,2-ジメチル1,3-プロパンジアミン、メチルペンタンジアミン、2-メチル-1,5ペンタンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、及びジアミノドデカンから選択されてよい。
【0060】
塞栓物質のためのハイドロゲル
塞栓物質はハイドロゲルであってよい。ハイドロゲルの構造は、そのマトリクスの内容物及び/又は特性、例えばハイドロゲルの前駆体の濃度、及びその物質組成の点で説明されてよい。塞栓物質を作るために使用される塞栓成分は、前駆体及び/又は開始剤を含んでいてよい。前駆体の特性には、化学組成、水溶性、親水性、分子量、アームの長さ、アームの数、官能基、架橋間の距離、分解性、その他が含まれる。反応条件の選択もまた、ハイドロゲルの構造と特性に影響を与え、これには反応化学、反応物質の濃度、及び固体含有量の選択が含まれる。
【0061】
ハイドロゲル(マトリクス)の分子ストランド間の間隔は、幾つかのハイドロゲル特性に影響を与える。架橋密度は、架橋剤として使用される前駆体及びその他の前駆体の全体的分子量並びに前駆体分子ごとに利用可能な官能基の数の選択により制御できる。架橋密度を制御するためのまた別の方法は、求核性官能基対求電子性官能基の化学量論又はレドックス開始剤/共開始剤の濃度を調整することによるものである。架橋可能部位間の距離がより長い前駆体は、概してより柔らかい、より可撓性の高い、及びより弾性の高いゲルを形成するが、これは架橋密度がより低く、すなわち架橋間の平均分子量がより高いからである。
【0062】
架橋間の計算された距離を提供する幾何学と構造を有する前駆体が選択されてよい。架橋間の距離は、官能基の数、及びそれらの間の距離の幾何学的考慮に基づいて計算されてよい。架橋ポリママトリクス内の架橋とは、2つのポリマの結合点である。それに加えて、もつれもまた、特にハイドロゲルがミセルタイプの溶液構造を有する系から作られる場合、有効架橋密度を高め得る。例えば、求電子-求核化学により形成されたマトリクスにおいて、前駆体は、架橋間の計算された距離を提供するために選択されてよく、これは、多官能性前駆体202、204を有し、前駆体202、204間の架橋206及び共有結合208を有するマトリクス200を描いた図8の通りである。前駆体202は、前駆体204の官能基212と反応した官能基210を有する。計算された距離214は架橋206間に形成される。計算された距離は、塞栓物質及びハイドロゲルの設計と使用にとって有益なメトリクスである。計算された距離は、分子量(Mn)の点で有効に説明されてよい。幾何学的考慮に基づくこの計算された距離はまた、幾何学的に計算された距離と呼ばれてもよい。多官能性前駆体とのフリーラジカル重合プロセスはまた、前駆体の幾何学に基づく架橋間の計算された距離を有していてもよい。
【0063】
架橋間の計算された距離は、架橋の密度が増すと減少する。塞栓物質及び/又はハイドロゲル塞栓物質のための架橋間の計算された距離は、例えば200~200,000であってよく、当業者であれば、この範囲内のすべての範囲と値、例えば200~250,000、500~300,000、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、8000、10000、12000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、150000、及び200000ダルトン(Mn)も想定され、支持されることがすぐにわかるであろう。架橋可能部位間の距離がより長い前駆体は、より短い距離に関して、概してより柔らかい、より可撓性の高い、より弾性の高いゲルを形成する。それゆえ、水溶性セグメント、例えばポリエチレングリコールがより長いと、弾力性が高まり、望ましい物性が生じさせられる傾向がある。それゆえ、特定の実施形態は、分子量が200~50000の範囲内の分子量の水溶性アームを有する前駆体に関し、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば200、400、500、600、700、800、1000、1200、1500、1800、2000、2500、3000、4000、5000、7000、10000、20000、30000、40000、50000ダルトン(Mn)も想定されることがすぐにわかるであろう。
【0064】
ハイドロゲルの固体含有量と架橋密度は、その機械的特性に影響を与え、その生体適合性に影響を与える場合があり、ハイドロゲルの固体含有量は約2.5%~約40%の間であってよく、当該技術分野であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかるであろう。2.5%~25%、約5%~約15%、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、18.0、20.0、22.0、25.0、30.0、40.0% w.w。
【0065】
圧縮弾性率は、硬さの尺度である。これは、弾性物質における、その物質が圧縮されているときの機械的応力対ひずみの比であり、単位面積当たりの圧縮力/単位体積当たりの体積の変化の単位で測定される。圧縮弾性率の高い物質、例えばシアノアクリレートグルーは、硬く、変形しない。このような物質は除去しにくく、例えば、シアノアクリレートの塊を含む組織の外科的切除は困難である。より低い弾性率はより柔らかい物質を提供する。組織の弾性率と同等の弾性率はさらに、送達後に膨張する場合に、血管又はその他の組織を不当に歪めたり、さらには破壊したりすることのない物質を提供する。架橋間の比較的短い距離は、より高い弾性率の、より硬い物質を提供し、架橋間の、より長い距離は、比較的低い弾性率を提供して、使用温度より低いガラス遷移温度及び/又は水等の可塑剤の存在を提供する。塞栓ハイドロゲルの圧縮弾性率は、好ましくは、5~200kPaであり、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかり、これには10~100kPa又は15~75kPaが含まれる。
【0066】
膨張もまた、ハイドロゲルを含む塞栓物質にとって有益であり、平衡重量状態(EWC:equilibrium weight condition)で測定される。膨張は、体積の制約がない状態での水性溶質の超過分として測定される:%膨張=[(EWCでの重量-初期形成時の重量)/初期形成時の重量]*100。20~80%の膨張の範囲が有益であり、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかり、これには20、40、50、60、70、80、又は40~80%が含まれる。
【0067】
本出願を読んだ当業者は、膨張、圧縮弾性率、及び架橋間の計算された距離の好ましい特性の組合せを有するハイドロゲルを製作することができ、固体含有量と前駆体の選択を適切に調整できる。水溶性ポリマとなるように選択された前駆体の少なくとも1つ又は全部を含む塞栓物質が好ましく、これは例えばPEGポリマ及び/又はペプチドである。
【0068】
ハイドロゲルは、別の物質が存在する中で形成されてもよい。ハイドロゲルマトリクスとの共有結合の点で事実上不活性である放射線不透過剤が使用されてもよい。ハイドロゲルの固体含有量とは、マトリクスの乾燥重量を指し、非マトリクス物質、例えばマトリクスに共有結合しない塩又は放射線不透過剤を含まない。固体含有量は、前駆体の濃度と組成及びこれらの架橋プロセスに基づいて計算できる。
【0069】
架橋系の中の重合基を含むマクロマ又は官能性ポリマのゲル化時間は一般に、開始剤が形成されるまでの時間、ビニル基の重合が開始するまでの時間、及びビニル基が相互に反応して架橋系を形成するための重合時間に関する。反応は、主として再結合を通じて終了する。血流中に塞栓物質を形成するには、5秒未満のゲル化時間が一般的に有利であり、例えば0.8、1、2、3、4、又は5秒以下である。比較的大量の塞栓物質が望ましい用途、例えば破裂した血管に塞栓形成する場合においては、より短いゲル化時間が有益であり得る。
【0070】
塞栓成分は、粘着性塞栓物質、例えば粘着性ハイドロゲルを提供するように選択されてよい。粘着性とは、形成された塞栓物が、それが形成された環境に優先してそれ自体に付着する傾向を指す特性である。シリコーン製チューブ又は分岐しない血管組織の中に、粘着体として容易に除去できる固体の塊として形成された物質は粘着物質である。実施例1~3及び9において血管組織と接触している状態で形成された塞栓物質は、粘着性を有することが観察され、切除された組織は手で圧搾して、塞栓ハイドロゲル物質を塞栓形成された血管から粘着塊として取り出すことができた。実施例10~11では、ハイドロゲルはプラスチック製チューブの中で粘着性を有することが観察され、ハイドロゲルは、プラスチック又はカテーテルには付着せずに、1つの粘着塊を形成することが観察された。実施例10~11において、粘着性は送達カテーテルからの容易な除去に寄与しており、これは、ハイドロゲルには周囲の組織及び/又はカテーテルより優先的にそれ自体に付着する傾向があるからである。粘着性は、接着性とは異なる特性であり、接着性は、接着剤以外の物質に接着する接着剤の特性であり、例えば組織に接着する塞栓物は接着性を有する。
【0071】
実施例10~11において報告されている試験結果は、他の塞栓剤ONYX(沈殿性ポリビニルアルコール)とは対照的であり、グルー(n-ブチルシアノアクリレート)はこれらを送達するために使用されるカテーテルに接着し得る。これは、塞栓物質中に永久的に埋め込まれ、その後、大動脈内に残ると報告されている。この接着イベントには、手術又は血小板凝集抑制薬の投与維持による治療が必要である:J Korean Neurosurg Soc. 2012 Jun;51(6):374-376;J Vasc Interv Neurol.2015 Jul;8(3);37-41.;Interv Neuroradiol.1997 Mar 30;3(1):13-9.Epub 2001 May15
【0072】
塞栓組成物
塞栓組成物は複数の液体中で送達され、これらが組み合わされて、液体中の塞栓成分が反応して起こる多官能性前駆体の架橋反応から塞栓物質が形成されることによって塞栓物質が作られ、「前駆体」という用語は、前駆体の1つ又は複数の化学種を意味する。塞栓物質は、ハイドロゲルでも非ハイドロゲルでもよく、生分解性でも非生分解性でもよい。
【0073】
塞栓成分の1つは多官能性前駆体を含む。塞栓成分に送達するための調製時の液体中の多官能性前駆体の濃度は、5~60% w/wの範囲である。調製時の、という用語は、送達される前の液体中の前駆体の濃度を指す。これらの濃度は、本明細書に記載されている化学スキームに適用可能であり、これにはレドックス反応及び求電子-求核化学により開始される重合が含まれる。本明細書に記載されている構造を有する1つ又は複数の多官能性前駆体が選択されてよく、ハイドロゲル又はその他の塞栓物質の所望の構造は、本明細書に記載されている。
【0074】
レドックスが反応を開始する重合を用いる実施形態では、多官能性前駆体を含む液体と開始剤を含む他の液体が提供される。ペルオキシドとは別の還元剤が液体中に提供される。前駆体、官能基、還元剤、及び開始剤、並びにそれらの構造と濃度は、本明細書に記載されているように選択される。液体が混合されて成分が反応する。
【0075】
求電子-求核化学を使用する実施形態では、求電子性官能基を含む5~60% w/wの濃度の多官能性前駆体と、求核性官能基を有する5~60% w/wの濃度の多官能性前駆体を含む1つの液体が提供される。混合された液体を、官能基同士の反応を可能にするpHにするための第二の液体が提供される。前駆体、官能基、及びそれらの構造と濃度は、本明細書に詳しく記載されている。スクシンイミド基の場合、液体は組み合わされると7~12のpHを提供し、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば7.0、7.2、7.4、8.0、8.5、9.0,9.5、10.0、11.0、又は12.0も想定されることがすぐにわかるであろう。所望のpHを提供するために、一方又は両方の液体中に1つ又は複数の塩又はバッファが使用されてもよい。
【0076】
塞栓成分は、1つ又は複数の造影剤、例えば放射線不透過剤と共に存在してもよい。造影剤としては、ヨウド造影剤若しくは放射線不透過金属又はそれらの誘導体が含まれていてよい。10%~70% w/wの量が一般的に有益であり、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかるであろう。10、20、30、40、50、60% w/w。
【0077】
塞栓成分を含む液体の含有量は、薬剤的に容認される形態で送達されるように提供され、これは、純度が高く、発熱物質等の汚染物質を含まないことを意味する。
【0078】
塞栓術システム及び方法
塞栓術システムの実施形態は、複数のビニル官能基を含む水溶性ポリマと共開始剤を含む第一の液体を収容する第一の流体供給部と、重合開始剤を含む第二の液体を収容する第二の流体供給部と、第一の液体を第一のカテーテルルーメンに送達するために第一の流体供給部に接続可能であり、第二の液体を第二のカテーテルルーメンに送達するために第二の流体供給部に接続可能なカテーテルアダプタと、を含む。塞栓成分は、本明細書に記載のガイダンスに従って、例えば前駆体(多官能性前駆体を含む用語)、レドックス重合を使用する系、求電子-求核化学を使用する系が選択されてよい。例えば、1つの実施形態は、流体を送達するための第一のルーメンと第二のルーメンを有するマルチルーメンカテーテルであり、第一の流体供給部は、第一のルーメンを通じてインビボの部位に流体を送達するための第一のルーメンに流体接続可能であり、第一の流体供給部には、第一の塞栓成分を含む第一の液体が収容され、第二の流体供給部は、第二のルーメンを通じてインビボの部位に液体を送達するための第二のルーメンに流体接続可能であり、第二の流体供給部には、第二の塞栓成分を含む第二の液体が収容される。所望の接続性を提供するために、同軸カテーテルアダプタが使用されてよい。レドックスにより開始される重合を利用する実施形態において、塞栓成分の一方は前駆体、例えば多官能性前駆体であり、還元剤が第一の液体又は第二の液体中に存在し、他方の塞栓成分はペルオキシドである。求電子-求核化学の場合、塞栓成分の一方は求電子性官能基を含む第一の前駆体、例えば多官能性前躯体を含み、他方の塞栓成分は、求核性官能基を含む第二の多官能性前駆体を含む。したがって、第一の液体は、多官能性前駆体を提供するように選択でき、第二の液体は、開始剤を提供するように選択でき、又はその逆である。或いは、第一の液体は、求電子性官能基を含む多官能性前駆体を提供するように選択でき、第二の液体は、求核性官能基を含む多感農政前駆体を提供するように選択でき、又はその逆である。マルチルーメンカテーテルは、同軸であっても、又は本明細書に記載されているそれ以外であってもよい。
【0079】
カテーテルは、価値の技術、例えばセルディンガ法又は改良セルディンガ法を使って患者の脈管構造又はその他の領域に導入されてよい。
【0080】
塞栓成分の送達は好ましくは、リアルタイムイメージングで行われる。リアルタイムイメージングには、血管造影法、蛍光透視法、MRI、コンピュータ断層撮影、コーンビーム断層撮影法で行われる。リアルタイムという用語は、瞬時可視化及び短時間のイメージング遅延、例えば最大で約5分の遅延を含む技術を指す。
【0081】
送達は、ボーラス、低速連続送達によっても、パフ方式を用いてもよい。ボーラスという用語は、本明細書において、約0.1~1.0ml/sの速度の連続的投与を指すために使用され、低速連続送達は、最大約0.1ml/sで送達される。パフという用語は、本明細書において、塞栓成分投与の段階式プロセスを指すために使用される。この段階式プロセスは、塞栓組成物の全体用量を一連の部分用量で投与する複数のステップを含み、各ステップは、各用量部分の塞栓効果を評価するための時間により分離される、用量部分の投与を含む。毎回の部分用量投与の後に、効果が観察され、部分用量の投与と遅延を含むまた別のステップが、塞栓形成が完了するまで繰り返される。一般に、全体用量は0.1~50mlであり、1~60秒の遅延が適当であり、2~50ステップ(部分用量)が適当である。当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50ml;又は1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60秒;又は2、3、4、5、6、7。8、9、10、15、20、25、30、40、又は50の部分用量も想定されることがすぐにわかるであろう。例えば、富血管性腫瘍(良性又はがん性)の塞栓療法の場合、全体用量は一般に0.1~2mlであり、部分用量は0.01~1mlであり、1~10秒の遅延が適当である。また、例えば、5ml以下の用量を必要とする血管領域の塞栓術は一般に、0.1~1.0mlの部分用量、1~10秒の遅延による2~10ステップで治療可能である。また、例えば、例えば破裂血管等の止血用途では、例えば2~10の部分用量で投与される1~50mlの範囲の量の塞栓組成物が必要となる可能性がある。何れの場合も、より長い遅延が一般的に使用されてもよいが、臨床的には有益でない。当業者であれば、部分用量について、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば0.01、0.02、0.025、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.5、0.7、0.8、1、1.2、1.5、1.8、2mlも想定されることがすぐにわかるであろう。
【0082】
相互に迅速に反応して塞栓物質を形成する塞栓成分が有益である。迅速な反応は、血流の希釈効果又はその他の希釈効果と共に、ドメインとしての塞栓物質の形成を有益に促進すると考えられる。したがって、実施形態は、まとめて2種又はそれ以上の塞栓成分を含む2種又はそれ以上の流体を送達して、5秒以下の、本明細書に記載のゲル化試験による高速反応時間を提供することを含み、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.5、2、2.5、3、4、及び5秒又は0.05~3秒も想定されることがすぐにわかるであろう。インビボでのゲル化時間試験により測定された場合に、例えば5秒超~600秒という、より長い反応時間も有益であり、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値も想定されることがすぐにわかるであろう。5、10、15、20、30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、400、500、及び600秒。
【0083】
希釈効果は、重要であることが観察された。ある程度の希釈は、予想外に有益であったが、過剰な希釈は塞栓形成を阻止した。しかしながら、希釈の問題は、標的外組織での塞栓形成のリスクを最小化するための設計要素としてのその使用により、利点に転じた。塞栓成分とこれらを送達するために使用される液体は、インビボで送達されたときに希釈される可能性があるが、それにもかからず塞栓物質を形成する成分を送達するために選択されてよい。塞栓形成は、塞栓組成物の送達が標的領域までの血液の流れを遮断するか否かを観察することによって、インビボで観察できる。インビトロゲル化時間試験の点で、塞栓成分の希釈能力を規定することも有益である。カテーテルルーメンを通じて送達するための液体が調製され、これらは塞栓成分と、適当な濃度で送達することが企図されるその他の物質を含む。これらの液体は、1:1の比でインビトロゲル化時間試験により試験される。希釈可能な塞栓成分の実施形態は、公称濃度(混合後の濃度)で塞栓物質を形成するが、300% v/v又は、代替的に250~500% v/vの値で希釈されると塞栓物質を形成しない成分を含み、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば250、300、350、400、450% v/vも想定されることがすぐにわかるであろう。塞栓成分を100% v/vで希釈すると、成分の濃度は50%低下する。例えば、第一の成分100μlと第二の成分100μlの送達(すなわち、1:1 v/vの比で送達される)は、200μlの体積を追加することによって100%希釈され、400μlの体積を追加することによって200%希釈される。さらに、基準としてインビトロでのゲル不形成を使用する代わりに、顕著に遅延させられたゲル化時間が選択されてもよく、例えば、所定の量の希釈(例えば、250~450% v/v)により、0.3~30分以内にインビトロで塞栓物質は形成されず、当業者であれば、明示された限界間のすべての範囲と値、例えば20、30、60、120、又は600秒、15又は30分も想定されることがすぐにわかるであろう。
【0084】
塞栓術システムは、キットとして提供されてもよい。キットは、塞栓成分を有し、1つ又は複数のカテーテル及びキットに使用されるための流体供給部と協働するアダプタ、第一の塞栓成分のための流体供給部、第二の塞栓成分のための第二の流体供給部、1つ又は複数の塞栓成分と共に使用される水又はその他の水溶液の1つ又は複数の容器、放射線不透過物質、ポンプ、又は1つのシリンジ若しくは複数のシリンジ(1又は2バレル式)のうちの1つ又は複数を有していてよい。好ましい実施形態は、少なくとも塞栓成分を提供するキット、同軸カテーテルシステムのためのインナカテーテル、及び同軸カテーテルアダプタである。塞栓成分は、本明細書で定められているガイダンスを使って選択されてよい。キットは、1つ又は複数の成分を所定の濃度で含む液体を調製する指示を含んでいてよい。塞栓成分は例えば、カテーテルを通じた送達にすぐに使用可能な状態で、水溶液中で、液体として、固体として、すぐに使用可能な溶液として、又はカテーテルを介して送達される液体の内容物を調製するための濃縮溶液として提供されてよい。例えば、固体として提供される成分は、使用者が所定の量の液体を添加することにより、又は固体を、添加すると成分の所望の濃度を提供する予め調製された量の溶液と組み合わせることによって、所望の濃度で調製されてよい。
【0085】
同軸カテーテルアダプタの例は、Tuohy-Borstアダプタである。コネクタの選択は、使用者が適当な大きさのカテーテルを選択するのに役立てるために使用されてよい。及び/又は、アダプタのコネクタは、特定の流体供給部に特定の大きさであってよく、それによって使用者は流体供給部を所期の接続点にしか接続できず、それゆえ、特定の塞栓成分を所望のカテーテル及び/又はカテーテルルーメンを通じてしか送達できない。
【0086】
用途
同軸カテーテル等のマルチルーメンカテーテル及び/又は塞栓成分の使用の例は、病気、病態の治療用又は、腫瘍、血管過多組織、血管異常、富血管性腫瘍、血管破裂、血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤を含む血管適応、止血、血管破裂、若しくは治療を要する組織、又は塞栓形成すべきその他の血管新生化組織用である。この使用は、塞栓コイル、止血器具、止血剤等の他の方法又は装置とは独立していても、それと組み合わせられてもよい。腫瘍という用語は広く、これには筋腫、嚢腫、脂肪腫、及びがん性又は良性の富血管性腫瘍が含まれる。本明細書に記載のマルチルーメンカテーテルは、脈管構造内に導入され、脈管構造内の腫瘍又はその他の組織の付近の位置に位置決めされる。位置決めは、当業者の間で知られているガイドワイヤの使用の有無を問わずに行われてよい。スライド式同軸カテーテルの実施形態では、アウタカテーテルが位置決めされ、インナカテーテルがアウタカテーテルを通って先端が所望の通りに位置決めされ、インナカテーテルの遠位先端はアウタカテーテルの先端に関して遠位方向に配置され、オフセット距離が本明細書に記載されているように選択される。塞栓成分及び所望によりその他の物質を含む流体は、ルーメンを通じてカテーテルの外へと通過し、そこで成分は相互に反応して塞栓物質、例えばハイドロゲルを形成する。成分の濃度、送達速度及び量、用量又は部分用量、及び反応化学は、本明細書に記載されているように選択されてよい。成分の選択は、所望のハイドロゲル組成、局所血流量又はその他の条件、及び塞栓形成のための血管の所望の直径、例えば4μm~15mmを考慮して行われてよい。腫瘍の治療のための総量は、腫瘍の大きさを考慮して選択され、0.2~2.0mlの範囲であってよい。
【0087】
マルチルーメンカテーテルにおいて、第一のルーメンと第二のルーメンは、0.005~0.2インチの直径の範囲となるように独立して選択されてよい。マルチルーメンカテーテルが内管及び内管を同軸に取り囲む外管を含む場合、第一のルーメンは内管内にあり、第二のルーメンは内管と外管との間に形成される環状空間であり、内管はその外径が0.005~0.1インチとなるように選択されてよく、外管は、その内径が0.01~0.2インチとなるように選択されてよく、内管の外径は、外管のルーメンを通過するように選択される。同軸カテーテルの特定の実施形態は、その内径が0.005~0.2in2の断面積を提供する内管と、0.00005~0.005in2の断面積を有する環状空間を提供し、内管の外径は外管のルーメンの内径を通過するように選択される。
【0088】
本明細書で言及した特許、特許出願、及びその他の出版物は、あらゆる目的のために参照によって本願に援用され、矛盾が生じた場合は本開示を優先させる。実施形態は、本明細書に記載された特徴、例えばカテーテル、塞栓成分、前駆体、開始剤、還元剤、及びハイドロゲル構造を、相互に組み合わせて含む。
【実施例0089】
実施例1:ウサギの腎臓の塞栓形成。標的塞栓術
ニューシーランドホワイトウサギを使って、カテーテルシステムの送達及び塞栓成分による塞栓物質形成の有効性をインビボで試験した。カテーテルシステムは2つのシングルルーメンカテーテルからなり、これらは同軸的に固定され、組み合わせられると血管構造中に深く浸透できる急速ゲル化塞栓物を作る2種類の流体を別々に送達するデュアルチャネルを形成した。塞栓物質は、2つの流体ストリームの導入により形成されるハイドロゲルであり、一方は鉄化合物と結合したジアクリレートポリエチレングリコールを含み、もう一方はヨウド造影剤と溶液中のペルオキシドからなる。
【0090】
カテーテルシステムは、サイドポートを有するTuohy-Borstアダプタによって相互に結合されたアウタ及びインナカテーテルであった。アウタカテーテルは、インナルーメンが0.027インチのBoston Scientific社製Renegade HI-FLOマイクロカテーテルであった。インナカテーテルは、ステンレススチールコイル補強型ポリアミドシャフトで、その内径と外径はそれぞれ0.014インチと0.017インチであり、近位端に接着されたストレインリリーフ-ハブアセンブリを有していた。サイドポートを有するTouhy BorstアダプタをEN/ISO標準のルアロック接続終端部によりアウタカテーテルのハブに接続し、インナカテーテルをTuohy-Borstアダプタのコンプレッション継手の中に通した。コンプレッション継手の中に導入した後、インナカテーテルを前進させて、その先端が所定の位置になるようにした。その後、インナカテーテルのストレインリリーフの周囲でコンプレッション継手を作動させることによって、インナカテーテルをTuohy-Borstアダプタの中に固定した。
【0091】
0.88%(w/w)のグルコン酸第一鉄(FeG)水溶液内に30%(w/w)の直鎖状ジアクリレートポエチレングリコール(3.4kg/mol、Mn)を含む第一の液体を調製した。第二の液体(開始剤溶液)には、ヨウド(イオプロミド)造影剤、ULTRAVIST 300と共に溶液内のtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)1000ppmを含めた。1:1 v/vで送達すると、その結果として形成されたハイドロゲル塞栓物は公称15% w/wのPEGを有していた。
【0092】
全身麻酔及び調剤の導入後、外科的切開を介してウサギモデルの背側大動脈へのアクセスを行った。21ゲージニードルを使って背側大動脈を穿刺し、その後、0.018インチガイドワイヤを導入した。蛍光透視イメージング下で、カテーテル送達システムを次のステップでセットした。血管造影シースを、ガイドカテーテルを含むその後の機器留置のためのコンジットとして設置した。アウタカテーテルをガイドカテーテルを通じて導入し、右腎動脈の中に位置決めした。標的腎血管構造のベースライン血管造影を行った。インナカテーテルを、マイクロカテーテルのハブに取り付けられたTuohy-Borstアダプタを通じて同軸的に挿入し、アウタマイクロカテーテルの先端から約5ミリメートル突出するまで追跡した。1mLシリンジであって、プレポリマを充填した1本と開始剤溶液を充填した1本をカテーテルシステムの近位ハブに接続した。プロポリマ溶液の入ったシリンジをインナカテーテルに接続し、開始剤溶液を、インナカテーテルの外径とアウタマイクロカテーテルの内径との間に形成される環状のギャップを通じて送達されるように、Tuohy-Borstサイドポートに接続した。シリンジをインジェクションクレードルの中に固定して、両方の溶液をタンデム送達できるようにした。このカテーテル送達システムを通じて、両方の溶液を同等に送達する(1:1 v/v)ことにより、合計0.8mLの塞栓量を1回のボーラスで数秒間かけて送達し、送達すると塞栓物が形成された。フォローアップのためのデジタルサブトラクション血管造影(DSA)を行い、形成されたポリマが腎血管構造中に標的塞栓を作り、形成されたハイドロゲルが標的外領域には送達されず、又は浸入しなかったことを確認した。
【0093】
ウサギを安楽死させ、標的腎を摘出した。解剖顕微鏡を利用し、右腎を切片にして特徴付けを行った。トリパンブルーを使ってゲルに着色し、天然組織とハイドロゲル塞栓との間のコントラストを増強した。ゲルは、標的血管を全体的に閉塞したことが特定され、ゲルは大血管(少なくとも直径15μm)及び小血管(直径15μm未満)中に存在した。
【0094】
実施例2:ウサギの腎臓の塞栓形成。希釈感度
実施例1と同じ実験の中で、実施例1と同じ物質及び送達システムを使い、左腎に塞栓形成を行った。この実験は意図的に、左腎動脈の上腸間膜動脈分枝の付近で行った。カテーテル送達システムを通じて、合計1.2mLの塞栓量を1回のボーラスで数秒間かけて送達したところ、送達が完了するとすぐに塞栓形成された。注入中、上腸間膜動脈の中に流れた過剰な注入量は、血液の流れによってより薄く希釈されたために重合しないことが観察され、これは蛍光造影法で確認された。標的組織の事後評価もまた、広範な塞栓形成を示し、ハイドロゲルは大血管及び小血管(15μm未満)を満たしていた。
【0095】
実施例3:ウサギの腎臓の塞栓形成、パフ送達法
実施例1及び2と同じモデルにおいて、ただし別の実験で、ウサギの腎臓にボーラスとパフの2つの方式を使って塞栓形成を行った。前述のものと同じカテーテルシステムの構成で、アウタカテーテルをTerumo PROGREATマイクロカテーテルシステムに置き換えたものを用いて、蛍光顕微鏡下で塞栓術を行った。この実験では、プレポリマ溶液は0.88%(w/w)のグルコン酸第一鉄(FeG)水溶液中に直鎖状ジアクリレートポリエチレングリコール(10kg/mol)を12%(w/w)含んでいた。開始剤溶液には、ヨウド(イオプロミド)造影剤、ULTRAVIST 300と共に溶液内のTBHP、2830ppmを含めた。1:1 v/vで送達すると、結果として形成されたハイドロゲル塞栓物は公称6%のPEGからなっていた。
【0096】
左腎に対する処置では、前述の実施例と同様に、ただし異なる塞栓調剤を使って、数秒にわたり0.7mLのボーラス送達を適用した。右腎にはパフ方式で塞栓術を行い、毎回約0.2mLの塞栓量の一連の注入を約1秒のインタバルで、約1~2秒送達を遅延させて送達した。右腎の塞栓形成は、合計1.6mLの塞栓量を0.2mLの8回のパフで行った。DSAで、両側の腎臓の閉塞が確認された。標的組織の事後評価でも、両側の腎臓の広範な塞栓形成が示され、2部式ハイドロゲル塞栓の送達のための2つの方法(ボーラスとパフ)の有用性が実証された。
【0097】
実施例4:インビトロ試験、ゲル化時間試験
ゲル化実験を行って、プレポリマと開始剤溶液を組み合わせてハイドロゲルを形成するのに必要な時間を特徴付けた。「インビトロゲル化時間試験」とは、この例の方法を使って行われた試験を指し、2つの液体を混合し、ゲル化時間を後述のように記録した。試験システムには、厚さ5mmのガラス板スペーサ(磁力を弱めるため)を備える攪拌板、各々がTEFLONコーティングされたフリー攪拌棒(7×2ミリメートル)からなる基本構成を含み、リングスタンドから吊り下げられた使い捨てのほうけい酸ガラス培養試験管(12×75ミリメートル)、画像収集のためにコンピュータに接続されたデジタル顕微鏡カメラ、及び100マイクロリットル(μl)を送達するのに適当な範囲の2つのピペット及びチップを含んでいた。
【0098】
ピペットを使って、12%のPEGと0.88%(w/w)のFeG水溶液を含む100μlのプレポリマ溶液をガラス製培養試験管の中に、攪拌板を1000rpmに設定してフリー攪拌棒を回転させながら添加した。コンピュータ制御によってデジタルカメラを起動させ、ゲル化イベントを記録した。その後、ヨウド造影剤(ISOVUE 300)又は開始剤と造影剤を別に示される濃度)で含む1000ppm(w/w)のTBHPの開始剤溶液100μlをガラス管試験環境に添加した。ゲル形成によっては攪拌棒が停止したとき、又は攪拌棒が停止しない場合は、管内の自由液位の低下によって観察されるようにゲルが可視的に形成されたときにカメラによる記録を停止し、ゲル化イベントのデジタル記録をとった。異なるポリマ濃度の様々な直鎖状ジアクリレートPEGポリマに関するゲル化時間試験の平均の結果を下の表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
TBHP及びFeGの濃度がゲル化時間に与える影響を評価するために、ポリマをその後の評価のために一定に保持した。ポリマは、最終公称濃度が15% w/wである3.4kg/mol(Mn)のジアクリレートPEGであり、FeGとTBHPの濃度を変えて試験した。結果として得られた平均ゲル化時間を以下の表2に示し、FeG及びTBHPの濃度がゲル化時間に与える影響を証明する。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例5:インビトロ試験。希釈感度
この実施例は、塞栓物の希釈感度に焦点を当てており、これは、希釈がゲル化を遅らせ、十分な量になるとそれを阻止するからである。特にことわりのないかぎり、実施例4の物質と方法を使用した。試験を行ったプレポリマ溶液は、12% w/wのジアクリレート(Mn)PEG、10kg/molに0.88% w/wのFeGを組み合わせたものであった。異なる開始剤溶液で2つの実験を行い、ULTRAVIST 300の中で、過酸化水素(H2O2)とTBHPの開始時濃度はそれぞれ500ppm(w/w)又は2830ppm(w/w)であった。1:1 v/vで送達したところ、ベースライン公称PEG濃度はPBSでの希釈後に6%となった。各タイプの開始剤について、実験にプレポリマと開始剤溶液の等分希釈を含めて、ベースライン6%の他に最終公称PEG濃度、5、4、3、及び2% w/wが得られるようにした。平均ゲル化時間の結果を下表に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
実施例6:インビトロ試験、希釈感度
実施例4によるゲル化時間試験を用いて、希釈感度を試験した。前駆体を次のように調製した。
ポリマ前駆体、12% PEG/1% FeG:10kg/molのPEGジアクリレート(PEGDA)409mgと1.13%のFeG(水溶液)3ml
開始剤前駆体、2000ppm TBHP:ULTRAVIST 300 9.45gと1.24%のTBHP(水溶液)1.82g
【0105】
希釈感度を求めるために、ポリマ前駆体を以下の体積のPBSにより希釈してからゲル化時間の試験を行った:ポリマ前駆体:PBS比:80:20、60:40、及び40:60で、これは形成されたゲル中の公称PEG濃度の公称濃度、それぞれ4.8、3.6、2.4%の公称濃度に対応する。不希釈サンプル(12% PEG)は公称PEG濃度6%に対応する。TBHP含有溶液(不希釈時2000ppm)を、PEG含有前駆体の希釈とマッチするように希釈した。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例7:2官能性及び4官能性ポリマ前駆体のゲル化時間の比較
実施例4に従ってゲル化時間試験を行った。20kg/molのPEGDA(Mn)又は20kg/molの4アームPEGテトラアクリレート(Mn)を使って以下の前駆体を調製した。
【0108】
ポリマ前駆体は、混合時にFeGが1%になるように調製した。
【0109】
開始剤前駆体は、ULTRAVIST 300造影剤中のTBHPが2000ppmであった。ポリマ前駆体と開始剤前駆体を試験のために1:1 v/vで混合した。混合前の濃度を下表に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
実施例8:塞栓形成のための2部式求電子-求核性官能基化前駆体
スクシニミジル官能性分岐PEGとトリリシンのポリマ前駆体を酸性水溶性バッファの中で調製し、第一のシリンジから同軸カテーテルシステムのインナカテーテルを通じて送達し、PEGは19% w/wで存在し、トリリシンは化学量論的にマッチさせた。造影剤とアルカリ塩を含むアルカリ加速溶液を第二のシリンジから、インナカテーテルとアウタカテーテルとの間の環状ギャップを通じて送達した。送達は、ポリマ前駆体:アルカリ加速溶液の比1:1 v/vで行った。アルカリ加速溶液はpH 10.9で、混合時にPEGとトリリシンを架橋させる加速剤として作用した。この塞栓系のゲル化時間は0.4秒であった。
【0112】
この調剤をインビボブタモデルで評価した。腎臓及び肝臓の塞栓形成を行い、成功した。実施例1の送達システムを使用した。PEG前駆体とトリリシン溶液の1:1 v/v混合による公称PEG濃度は9.5%となった。
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
実施例9:求電子-求核性官能基化前駆体による塞栓形成
実施例8の2部式求電子-求核性近納期化前駆体系を使用し、この実施例では別の変化を説明する。右腎を評価し、肝臓のベースライン血管造影図を撮影した、図9を参照されたい。標的脈管構造内に異常は見られなかった。
【0117】
カテーテルを右腎の最尾部に位置決めした。組み合わせた溶液1.8mlをパフ方式で送達したところ、塞栓形成は見られなかった。
【0118】
前駆体溶液を再調製して、希釈感度を低下させ、それによってPEG溶液のポリマ濃度は当初の19%(実施例8のとおり)から23%(w/w)に上昇した。2つの前駆体、1.9ml(組み合わせた合計)を送達し、塞栓形成が実現し、図10、矢印はカテーテルの先端を示している。
【0119】
カテーテルを頭蓋動脈の尾極まで移動させ、同じ2部式塞栓物を調製した(19%のPEG濃度)。まず、塞栓物0.9ml(組み合わせた合計)を均衡状態にならないように送達した。さらに1.2mlを送達し、塞栓形成を実現した、図11
【0120】
肝臓の評価を行い、肝臓のベース血管造影図を図12に示す。標的脈管構造内に異常は見られなかった。肝臓に、2部式求電子-求核性官能基化前駆体系を19% PEG溶液と共に使用して塞栓形成を行った。1.2mlの塞栓剤(パフ方式)を用いて、塞栓形成を実現した。血管造影図から、図13に示されるように、標的脈管構造のみの塞栓形成が実現されたことが確認される。
【0121】
実施例10:カテーテル引抜力
試験手順を使って、カテーテルを塞栓物から引き抜くのに必要な力を測定した。簡潔に言えば、カテーテルの周囲に意図的にゲルを形成させ、INSTRON引張強さ試験機を使ってゲルからカテーテルを引き抜くのに必要な力を測定し、このINSTRONはISO 10555-1:2013(E)に準じて500mm/分で動作する。
【0122】
ある長さのチューブ(1/4”×1/8”のPVCチューブ、Durometer 65A)をTuohy Borstアダプタの遠位開口に接続した。同軸カテーテルアセンブリを用意し(2.8 Frenchカテーテル、20cmと1.7 Frenchカテーテル、+20cm)、インナカテーテルがアウタカテーテルより5mm先まで延びるようにし、相互に固定した。マイクロカテーテルアセンブリの遠位端をTuohy Borstアダプタを通じて、ある長さのチューブの中に通し、アセンブリの遠位端をTuohy Borstの圧縮手段の4cm先に位置付けた。アダプタを同軸カテーテルの周囲に密着させた。第一及び第二の前駆体を充填したダブルバレルシリンジをad Touhyのサイドポートに、シリンジとTuohyとの間のスタティックミキサ要素で固定した。1.4cmの総量を装置に注入したところ、これはアダプタの弁からゲルを形成し、カテーテルアセンブリを覆い、アセンブリの遠位先端を超えて延びた。このようにして、カテーテルアセンブリの、ゲルと接触する長さを実験中に4cmの長さに慎重に保持した。ゲルが形成された後、2バレルシリンジとスタティックミキサ要素をサイドポートから取り外し、Touhyの弁を緩めて、弁がカテーテルアセンブリに力をかけないようにした。カテーテルアセンブリの近位端とTuohy Borstアダプタを、ISO 10555-1:2013(E)に準じて500mm/分のクロスヘッド速度で動作するINSTRON装置の引張グリップにしっかりと固定した。力と正規化した力(埋め込まれた長さのため)を収集したところ、平均結果はそれぞれ1.07N及び0.27N/cmであった。
【0123】
実施例11:粘着性
実施例10に記載のゲルについて、粘着性をさらに評価した。前述の条件でカテーテルアセンブリをゲルから引っ張り、環境光内で裸眼によりチェックし、カテーテル上にゲルが見えないか確認した。残留ゲルは見られなかった。
【0124】
実施例12
図14に関して、ポリビニルチューブ(1.0mm~4.78mmID)のループを作り、入口を37.1℃の給水部に入れて、Tuohy Borstコネクタに接続し、同軸カテーテル送達システムへのアクセスを提供した。アウタカテーテルはTerumo PROGREAT 2.8Fマイクロカテーテルであり、インナカテーテルのODは1.7F、IDは0.016inであった。2バレルシリンジを同軸カテーテルに接続した。12%のPEGと0.88%のグルコン酸第一鉄を収容したバレルをインナカテーテルとISOVUE 300中2830ppmのTBHPを収容するバレルに接続した。少量の緑色素をPEG/FeG溶液に添加して、可視化した。図14に示される関心対象領域をビデオカメラで撮影した。
【0125】
同軸カテーテルは、チューブ内の関心対象領域の上流端に位置付けた。蠕動ポンプを作動させて、関心対象領域で50ml/分の流速となるようにした。デュアルシリンジを手で操作し、塞栓成分をチューブの関心対象領域の中に注入した。成分の幾つかのパフ(これに関しては約100~500μl)を注入したところ、塞栓物質の形成はないことがわかった。
【0126】
図15に示されるようにコイル(VORTX 6mm×6.7mm、Boston Scientific,Minneapolis)をチューブ内の関心対象領域に設置し、塞栓成分の5回分のパフを約1分で放出した。コイルと接触して塞栓物質が形成され、他の箇所では形成されないことが観察された、図16。チューブに塞栓形成されると、流れは塞栓物質により止められた。塞栓物質を除去すると、丈夫で粘着性の塊がコイルの周囲に形成されたことが観察された、図17
【0127】
他の開示
1. 塞栓組成物のインビボでの凝固を制御する塞栓術システムにおいて、
第一の液体を収容する第一の流体供給部と、
第二の液体を収容する第二の流体供給部と、
不飽和炭化水素を含む少なくとも2つの官能基を含む水溶性ポリマと、
開始剤と、
共開始剤と、
を含み、
開始剤は第一の液体と第二の液体の一方に入れられ、共開始剤は第一の液体と第二の液体の他方に入れられ、
水溶性ポリマは第一の液体と第二の液体の少なくとも一方に入れられ、
第一の液体と第二の液体の混合が、開始剤と共開始剤を反応させて、水溶性ポリマを共有架橋させて塞栓物質を形成する官能基のフリーラジカル重合のためのラジカル開始剤を形成する。
2. 第一の液体と第二の液体の混合物の希釈の所定のパーセンテージは、インビトロゲル化時間試験により測定した場合に、120秒未満での塞栓物質の形成を阻止する、1の塞栓術システム。例えば、希釈の所定のパーセンテージは100%~400%の範囲内である。
3. 第一の液体と第二の液体の1:1の混合は、インビトロゲル化時間試験により測定した場合に5秒以内に塞栓物質を形成する、1~2の何れかの塞栓術システム。
4. 官能基は、アクリレート官能基又はメタクリレート官能基の1つ又は複数を含む、1~3の何れかの塞栓術システム。
5. ビニル基間の分子量、Mnは少なくとも4000ダルトンである、1~4の何れかの塞栓術システム。
6. 共開始剤は鉄を含み、0.2~200mMの濃度で存在する、1~5の何れかの塞栓術システム。
7. 開始剤はペルオキシド、例えばtert-ブチルペルオキシド(TBHP)である、1~6の何れかの塞栓術システム。
8. ペルオキシドの濃度は10~10,000パーツ・パー・ミリオン(ppm)の範囲である、7の塞栓術システム。
9. 塞栓物質はハイドロゲルである、1~7の何れかの塞栓術システム。
10. ハイドロゲルの架橋間の計算された距離は少なくとも4000ダルトン、Mnである、9の塞栓術システム。
11. 第一の液体と第二の液体の1:1の混合物は、1500~100,000 Paの圧縮弾性率を有するハイドロゲルである塞栓物質を形成する、9又は10の塞栓術システム。
12. 第一の液体と第二の液体の1:1の混合物は、形成時に、20%~300% w/wの膨潤性を有するハイドロゲルである塞栓物質を形成する、9~11の何れかの塞栓術システム。
13. 塞栓物質は粘着性である、1~12の何れかの塞栓術システム。
14. 第一の液体又は第二の液体は、還元剤が同じ流体供給部内に開始剤として存在しない場合、還元剤等の共開始剤をさらに含む、1~13の何れかの塞栓術システム。
15. 還元剤(共開始剤)はFe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、又はCu+を含む、14の塞栓術システム。
16. 還元剤は、鉄塩、硫酸第一鉄、乳酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、及び銅塩からなる群より選択される塩として提供される、14又は15の塞栓術システム。
17. 還元剤は、第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物において0.2~200mMの濃度を有する、14~16の何れかの塞栓術システム。
18. 開始剤は、ペルオキシド基、アルキル水素ペルオキシド基、又は過硫酸塩を含む、1~17の何れかの塞栓術システム。
19. 開始剤の濃度は50~10,000パーツ・パー・ミリオン(ppm)である、1~18の何れかの塞栓術システム。
20. 水溶性ポリマは、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、たんぱく質、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリビニルアルコールを含む、1~19の何れかの塞栓術システム。
21. 水溶性ポリマは少なくとも80% w/w(Mn)のPEGを含む、1~20の何れかの塞栓術システム。
22. 水溶性ポリマの分子量は4000~200,000ダルトン、Mnの範囲である、1~21の何れかの塞栓術システム。
23. 水溶性ポリマは、2~16の数の官能基を含む、1~22の何れかの塞栓術システム。
24. 官能基は、不飽和炭化水素、アクリレート官能基、又はメタクリレート官能基を含むように別々に選択される、1~23の何れかの塞栓術システム。
25. 第一及び/又は第二の液体に入れられた別の水溶性ポリマ及び/又は別の前駆体をさらに含む、1~24の何れかの塞栓術システム。
26. 別の水溶性ポリマ及び/又は別の前駆体は複数の官能基を含む、25の塞栓術システム。
27. 第一の液体中の水溶性ポリマの濃度は5~50% w/wである、1~25の何れかの塞栓術システム。
28. 第一の液体及び/又は第二の液体は放射線不透過造影剤を含む、1~27の何れかの塞栓術システム。
29. 放射線不透過造影剤はヨウド基、イソパミドール、トリヨウド基、ジアトリゾ酸ナトリウム、タングステン、又はタンタルを含む、28の塞栓術システム。
30. 第一の液体と第二の液体は、カテーテルルーメン内を通過するのに適した粘度を有するように別々に選択される、1~29の何れかの塞栓術システム。
31. 第一の液体と第二の液体は水性液体である、1~30の何れかの塞栓術システム。
32. 100%~250% v/v以下に希釈されたときに、塞栓物質が形成され、血管内腔で有効に塞栓形成する、1~31の何れかの塞栓術システム。
33. 成分が0~100% v/v希釈されたときに、塞栓物質は、ゲル化時間試験により測定された場合に5秒以内に形成される、1~32の何れかの塞栓術システム。
34. 第一の液体のための第一の流量制御手段と第二の液体のための第二の流量制御手段をさらに含む、1~33の何れかの塞栓術システム。
35. 第一の流量制御手段と第二の流量制御手段は、ポンプ、シリンジポンプ、及び蠕動ポンプからなる群より別々に選択される、34の塞栓術システム。
36. 第一の流量制御手段及び/又は第二の流量制御手段は、第一の液体及び/又は第二の液体を送達しながら流量を変えるように調整可能である、34~35の何れかの塞栓術システム。さらに、調整は別々に行われてよい。
37. 第一の流量制御手段及び/又は第二の流量制御手段は、第一の液体及び/又は第二の液体の送達前に流量を変えるように調整可能である、34~35の何れかの塞栓術システム。
38. 塞栓術システムは、第一の液体及び/又は第二の液体を0.01~10ml/秒の範囲の流量で提供する、1~37の何れかの塞栓術システム。
39. 水溶性ポリマはポリエチレングリコールを含み、開始剤はペルオキシドを含み、塞栓術システムは、還元剤が同じ流体供給部の中にペルオキシドとして存在しない場合に、第一の液体又は第二の液体の中に入れられた還元剤(共開始剤)をさらに含み、還元剤は、Fe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、及びCu+からなる群より選択される、1~38の何れかの塞栓術システム。
40. 還元剤はFe2+であり、グルコン酸第一鉄により提供される、39の塞栓術システム。
41. 少なくとも第一のカテーテルルーメンを含むカテーテルをさらに含む、1~40の何れかの塞栓術システム。
42. カテーテルアダプタは、
内径が0.005~0.1インチの範囲のインナカテーテル、
外径が0.01~0.2インチの範囲のアウタカテーテル、
に接続可能な同軸カテーテルであり、
インナカテーテルの外径は外管ルーメンを通過するように選択される、1~41の何れかの塞栓術システム。
43. カテーテルをさらに含み、第一のカテーテルルーメンの遠位先端は、第二のカテーテルルーメンの遠位先端に向かって遠位方向に、0mm超~200mm以下の間で調整可能な距離だけ移動可能である、1~41の何れかの塞栓術システム。
44. カテーテルアダプタは同軸カテーテルアダプタであり、塞栓術システムは、同軸カテーテルアダプタに接続可能なインナカテーテル及びアウタカテーテルを含み、インナカテーテルのルーメンとアウタカテーテルのルーメンは直径0.005~0.2インチの範囲に別々に選択される、1~43の何れかの塞栓術システム。
45. 1~44の何れかの塞栓術システムはキットである。
46. 塞栓術の方法において、
開始剤を含む第一の液体を、第一のカテーテルルーメンを通じて標的内腔へと送達するステップと、共開始剤を含む第二の液体を、第二のカテーテルルーメンを通じて標的内腔へと送達するステップを含み、第一の液体と第二の液体の少なくとも一方は、複数の官能基を含む水溶性ポリマを含み、
第一の液体と第二の液体が相互に混合されると、開始剤と共開始剤が相互に反応し、水溶性ポリマを架橋して標的内腔内に塞栓物質を形成するための水溶性ポリマ官能基のフリーラジカル重合を開始するラジカル開始剤を形成する方法。
47. 富血管性腫瘍の塞栓術の方法において、
開始剤を含む第一の液体を、第一のカテーテルルーメンを通じて富血管性腫瘍へと送達するステップと、共開始剤を含む第二の液体を、第二のカテーテルルーメンを通じて富血管性腫瘍へと送達するステップを含み、第一の液体と第二の液体の少なくとも一方は、複数の官能基を含む水溶性ポリマを含み、
第一の液体と第二の液体が相互に混合されると、開始剤と共開始剤が相互に反応し、水溶性ポリマを架橋して富血管性腫瘍内に塞栓物質を形成するための水溶性ポリマ官能基のフリーラジカル重合を開始するラジカル開始剤を形成する方法。
48. 血管破裂の塞栓術の方法において、
開始剤を含む第一の液体を、第一のカテーテルルーメンを通じて血管破裂部へと送達するステップと、共開始剤を含む第二の液体を、第二のカテーテルルーメンを通じて富血管性腫瘍へと送達するステップを含み、第一の液体と第二の液体の少なくとも一方は、複数の官能基を含む水溶性ポリマを含み、
第一の液体と第二の液体が相互に混合されると、開始剤と共開始剤が相互に反応し、水溶性ポリマを架橋して血管破裂部内に塞栓物質を形成するための水溶性ポリマ官能基のフリーラジカル重合を開始するラジカル開始剤を形成する方法。
49. 第一の液体と第二の液体の希釈の所定のパーセンテージは、塞栓物質の形成を阻止するか、(a)インビトロゲル化時間試験における塞栓物質の不形成、又は(b)インビトロゲル化時間試験により測定された場合の120秒未満での塞栓物質不形成により測定される、ゲル形成における実質的遅延を提供する、46~48の何れかの方法。
49. 希釈の所定のパーセンテージは、第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物の100%~400% % v/v希釈の範囲内、例えば300%である、46~48の何れかの方法。
50. 第一のカテーテルは第一のルーメンを含み、第二のカテーテルは第二のルーメンを含み、第一のカテーテルと第二のカテーテルは同軸的に展開される、46~49の何れかの方法。
51. 第一のカテーテルはアウタカテーテルであり、第二のカテーテルはインナカテーテルであるか、又は第一のカテーテルはインナカテーテルであり、第二のカテーテルはアウタカテーテルである、50の方法。
52. インナカテーテルはアウタカテーテルに関して摺動的に移動可能であり、インナカテーテルとアウタカテーテルの遠位先端間のオフセット距離を提供する、51の方法。
53. インナカテーテルの遠位先端をアウタカテーテルの遠位先端の遠位側へと移動させるステップをさらに含む、52の方法。
54. 第一の液体と第二の液体は、インナカテーテルの遠位先端がアウタカテーテルの遠位先端の遠位側にある状態で送達される、53の方法。
55. 第一の液体と第二の液体の1:1混合物は、インビトロゲル化時間試験により測定された場合に5秒以内に塞栓物質を形成する、46~54の何れかの方法。
56. 第一の液体と第二の液体の1:1混合物は、サブトラクション血管造影法により可視化された流れの停止により測定された場合にin vivoで5秒以内に塞栓物質を形成する、46~55の何れかの方法。
57. 官能基はアクリレート基及び/又はメタクリート基を含む、46~56の何れかの方法。
58. 官能基間の分子量は少なくとも4000ダルトンである、46~57の何れかの方法。
59. 第一の液体は0.2~200mMのモル濃度の還元剤又は鉄を含む、46~58の何れかの方法。
60. 開始剤はペルオキシド、例えばtert-ブチルペルオキシド(TBHP)を含む、46~59の方法。
61. 第一の液体中のペルオキシドの濃度は10~3000パーツ・パー・ミリオン(ppm)である、46~60の何れかの方法。
62. 塞栓物質はハイドロゲルを含む、46~61の何れかの方法。
63. ハイドロゲルの架橋間の計算された距離は少なくとも4000ダルトンである、62の方法。
64. 第一の液体と第二の液体の1:1混合物は、圧縮弾性率が1500~100,000 Paのハイドロゲルである塞栓物質を形成する、46~63の何れかの方法。
65. 第一の液体と第二の液体の1:1混合物は、形成時に20%~300% w/wの膨潤性を有するハイドロゲルである塞栓物質を形成する、46~64の何れかの何れかの方法。
66. 塞栓物質は粘着性を有する、46~65の何れかの方法。
67. 塞栓物質は、組織、例えば内腔壁、血管等の塞栓物質にさらされる組織に接着しない、46~66の何れかの方法。
68. 共開始剤は還元剤を含む、46~67の何れかの方法。
69. 還元剤は、Fe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、又はCu+を含む、68の方法。
70. 還元剤は、鉄塩、流酸第一鉄、乳酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、及び銅塩からなる群より選択される塩として提供される、68又は69の方法。
71. 還元剤は、0.2~200mMの第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物の濃度を有する、68~70の何れかの方法。
72. 開始剤は、ペルオキシド基、アルキル過酸化水素基、又は過硫酸塩を含む、68~71の何れかの方法。
73. 開始剤の濃度は50~5,000パーツ・パー・ミリオン(ppm)である、46~72の何れかの方法。
74. 水溶性ポリマは、ポリサッカライド、ヒアルロン酸、たんぱく質、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリビニルアルコールを含む、46~73の何れかの方法。
75. 水溶性ポリマは少なくとも80% w/w(Mn)のPEGを含む、46~74の何れかの方法。
76. 水溶性ポリマの分子量は4000~200,000ダルトン、Mnの範囲である、46~75の何れかの方法。
77. 水溶性ポリマは、2~16の数の官能基を含む、46~76の何れかの方法。
78. 官能基は、アクリレート基又はメタクリレート基を含むように別々に選択される、46~77の何れかの方法。
79. 第一及び/又は第二の液体の中に入れられた別の水溶性ポリマ及び/又は別の前駆体をさらに含む、46~78の何れかの方法。
80. 別の水溶性ポリマ及び/又は別の前駆体は、複数の官能基、例えば不飽和炭化水素又はビニル基を含む、79の方法。
81. 第一の液体及び/又は第二の液体中の水溶性ポリマの濃度は5~50% w/wである、46~80の何れかの方法。
82. 第一の液体及び/又は第二の液体は放射線不透過造影剤を含む、46~81の何れかの方法。
83. 放射線不透過造影剤はイオパミドール、トリヨウド基、ヨウド基、ジアトリゾ酸ナトリウム、タングステン、又はタンタルを含む、82の方法。
84. 第一の液体と第二の液体は、カテーテルルーメン内を通過するのに適した粘度を有するように別々に選択される、46~83の何れかの方法。
85. 第一の液体と第二の液体は水性液体である、46~84の何れかの方法。
86. 100%~250% v/v以下に希釈されたときに、塞栓物質が形成され、血管内腔で有効に塞栓形成する、46~85の何れかの方法。
87. 成分が0~100% v/v希釈されたときに、塞栓物質は、ゲル化時間試験により測定された場合に5秒以内に形成される、46~86の何れかの方法。
88. 第一の液体のための第一の流量制御手段と第二の液体のための第二の流量制御手段をさらに含む、46~87の何れかの方法。
89. 第一の流量制御手段と第二の流量制御手段は、ポンプ、シリンジポンプ、及び蠕動ポンプからなる群より別々に選択される、88の方法。
90. 第一の流量制御手段及び/又は第二の流量制御手段は、第一の液体及び/又は第二の液体を送達しながら流量を変えるように調整可能である、88~89の何れかの方法。さらに、調整は別々に行われてよい。
91. 第一の流量制御手段及び/又は第二の流量制御手段は、第一の液体及び/又は第二の液体の送達前に流量を変えるように調整可能である、88~90の何れかの方法。
92. 方法は、第一の液体及び/又は第二の液体を0.01~10ml/秒の範囲の流量で提供する、46~91の何れかの方法。
93. 水溶性ポリマはポリエチレングリコールを含み、開始剤はペルオキシドを含み、共開始剤は、Fe2+、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、及びCu+からなる群より選択される、46~92の何れかの方法。
94. 共開始剤はFe2+であり、グルコン酸第一鉄により提供される、93の方法。
95. 少なくとも第一のカテーテルルーメンを含むカテーテルをさらに含む、46~94の何れかの方法。
96. 第一のカテーテルルーメンは第一のカテーテルの中に配置され、第二のカテーテルルーメンは第二のカテーテルの中に配置され、第一のカテーテルと第二のカテーテルは横並び又は同軸的に配置される、46~95の何れかの方法。
97. 第一のカテーテルと第二のカテーテルは同軸であり、第一及び第二のカテーテルの一方はインナカテーテルであり、第一及び第二のカテーテルの他方はアウタカテーテルであり、インナカテーテルの外径は0.005~0.1インチであり、
アウタカテーテルの内径は0.01~0.2の範囲であり、
インナカテーテルの外径は、アウタカテーテルのルーメンを通過するように選択される、
93の方法。
98. 第一のカテーテルルーメンの遠位先端が第二のカテーテルルーメンの遠位先端の遠位方向に、0mm超~200mm以下の範囲で調整される距離だけ移動可能であるカテーテルを含む、46~97の何れかの方法。
99. インナカテーテルとアウタカテーテルを同軸カテーテルアダプタに接続するステップを含み、インナカテーテルのルーメンとアウタカテーテルのルーメンは、直径が0.005~0.2インチの範囲となるように別々に選択される、46~98の何れかの方法。
100. 標的内腔は血管であり、直径が20μm未満の1つ又は複数の分枝の塞栓形成を含む、複数の血管分枝内に塞栓物質を形成するステップを含む、46~99の何れかの方法。
101. 第一の液体及び/又は第二の液体の、ある期間により分離された一連の部分用量での送達を含む、46~100の何れかの方法。
102. 部分用量の送達はリアルタイムイメージング下で行われる、46~101の何れかの方法。
103. 総用量が0.5~50mlの範囲である、46~102の何れかの方法
104. 血管破裂又は富血管性腫瘍を治療するために行われる46~103の何れかの方法。
105. 組織、例えば血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、動脈瘤、がん、腫瘍、富血管性腫瘍(がん性又は良性)、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、止血、血管破裂、静脈破裂、又は病態を有する組織等の病気又は病態の治療のための46~104の何れかの方法。
106. 標的内腔が血管であり、第一の液体と第二の液体を血流の存在中で導入するステップを含み、第一の塞栓成分と第二の塞栓成分が塞栓物質を形成する、46~105の何れかの方法。
107. 標的内腔は動脈、静脈、又は動脈瘤である、46~105の何れかの方法。
108. 標的内腔に医療機器を導入するステップをさらに含む、46~107の何れかの方法。
109. 医療機器は、コイル、プラグ、止血コイル、止血プラグ、ビーズ、ステント、フィルタ、又はバルーンのうちの1つ又は複数を含む、108の方法。
110. 医療機器の上流で塞栓成分を放出するステップを含み、塞栓物質は医療機器において形成される、108~110の何れかの方法。
111. 塞栓組成物のインビボでの凝固を制御するカテーテルシステムにおいて、
インナカテーテルと、
インナカテーテルと同軸アウタカテーテルとの間のシーリングのためのシールを提供する同軸カテーテルアダプタであって、インナカテーテルと同軸アウタカテーテルとの間の環状空間と流体連通する環状コネクタを提供するアダプタと、
インナカテーテルに接続可能で、インナカテーテルとの流体の流体連通を提供するインナカテーテル流体供給部と、
環状コネクタに接続可能で、環状空間との流体の流体連通を提供するアウタカテーテル流体供給部と、
第一の液体中の開始剤と、
第二の液体中の共開始剤と、
第一の液体及び/又は第二の液体中に入れられた水溶性前駆体であって、
第一の液体はインナカテーテル供給部に入れられ、第二の液体はアウタカテーテル供給部に入れられ、
第一の液体はアウタカテーテル供給部に入れられ、第二の液体はインナカテーテル供給部に入れられる
水溶性前駆体と、
を含み、
第一の液体と第二の液体の混合は、前駆体を共有結合架橋して塞栓物質を形成するための官能基のフリーラジカル重合を提供し、第一の液体と第二の液体は、第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物が例えば400% v/v希釈だけ希釈されたときに、所定の時間内の物質不形成により測定して、塞栓物質の形成が阻止されるように希釈可能であるカテーテルシステム。実施形態は20秒~5分の範囲の所定の時間を含む。
112. 塞栓組成物をインビボで凝固させる塞栓術システムにおいて、
複数の求電子性官能基を含む前駆体と複数の求核性官能基を含む前駆体を含む、第一のpHの第一の液体を収容する第一の流体供給部と、
第一の液体と1:1 v/vの比で混合されると、第一の流体と第二の流体の混合物が求電子系官能基と求核性官能基の反応に有利な第二のpHになるようにする第二の液体を収容する第二の流体供給部と、
第一の液体を第一のカテーテルルーメンに送達するために第一の流体供給部に接続可能であり、第二の液体を第二のカテーテルルーメンに送達するために第二の流体供給部に接続可能なカテーテルアダプタと、
を含み、
第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物は、求電子性基と求核性官能基を相互に反応させて、前駆体を共有結合架橋させて、塞栓物質が形成されるようにし、
第一の液体と第二の液体の混合物の所定の希釈は、塞栓物質の形成を阻止するか、所定の時間にわたり塞栓物質の形成を阻止する塞栓術システム。
113. 第一の液体と第二の液体の1:1 v/v混合物の100%~400% v/v希釈の範囲から選択された希釈は、インビトロゲル化時間試験において20~600秒の範囲から選択された所定の時間内の塞栓物質の不形成により測定される塞栓物質の形成を阻止する、112の塞栓術システム。
114. 第一及び第二の流体は、第一及び第二の液体が1:1 v/vで混合されたときに、求電子性基と求核性基について0.8:1~1.2:1の範囲の化学量論的比を提供する、112の塞栓術システム。
115. 求核性官能基はアミン基及び/又は一級アミン基及び/又はチオール基及び/又は一級チオール基である、112~114の何れかの塞栓術システム。
116. 求電子性官能基は、スクシンイミド、スクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミド基、スルホスクシンイミドエステル基N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル基、N-ヒドロキシエトキシレートスクシンイミドエステル基、グルタル酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SG)、コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SS)、炭酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SC)、アジピン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SAP)、及びアゼライン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(SAZ)から独立して選択される、112~115の何れかの塞栓術システム。
117. 第一及び第二の前駆体は、ポリマ、水溶性ポリマ、ポリサッカライド、たんぱく質、ペプチド、ポリエチレングリコール、又はポリビニルアルコールを含むように独立して選択される、112~116の何れかの塞栓術システム。
118. 第一及び/又は第二の前駆体は少なくとも80% w/w(Mn)のPEGを含む、112~117の何れかの塞栓術システム。
119. 第一及び第二の前駆体の分子量は200~500,000ダルトン、Mnの範囲である、112~118の何れかの塞栓術システム。
120. 前駆体の分子量は200~2000ダルトン(Mn)の範囲であり、第二の前駆体の分子量は10,000~300,000ダルトン(Mn)の範囲である、112~119の何れかの塞栓術システム。
121. 第一及び第二の前駆体は、2~200の数の官能基を含むように独立して選択される、112~120の何れかの塞栓術システム。
122. 第一及び/又は第二の液体内で使用する水溶液をさらに含み、水溶液は医薬品として容認可能な形態であり、すなわち高純度で、発熱因子等の汚染物質を含まない、1~112の何れかの塞栓術システム又は方法。例えば、キットとして提供される。
123. ある血管内位置における医療機器に塞栓物質を形成する方法において、
カテーテルを血管内腔の、血管内腔中の血液がカテーテルから血管内位置の医療機器に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
複数の塞栓成分をカテーテルから血管内腔へと放出するステップであって、塞栓成分は相互に化学的に反応して医療機器に塞栓物を形成するステップと、
を含む、方法。
124. 塞栓物質は医療機器と接触して形成される、123の方法。医療機器の例は:コイル、プラグ、止血コイル、止血プラグ、ビーズ、ステント、フィルタ、バルーンである。方法は、医療機器の血管内位置への設置を含んでいてよい。
125. 血管内位置に塞栓物質を形成する方法において、
カテーテルを血管内腔の、血管内腔中の血液がカテーテルから血管内位置に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップと、
複数の塞栓成分をカテーテルから血管内腔へと放出するステップであって、塞栓成分は相互に化学的に反応して血管内位置に塞栓物質を形成するステップと、
を含む、方法。
126. 塞栓物質は、カテーテルの周囲で血液の流れを制限した場合のみ形成される、125の方法。
127. カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップは、バルーンを膨張させるステップを含み、例えばバルーンはカテーテルの遠位部に配置される、125又は126の方法。
128. カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップは、血流を止めるステップ又は血流を止めずに血流を減少させるステップを含む、125~127の何れかの方法。
129. 複数の塞栓成分は、上述の、例えば1~119の何れかに列挙された1つ又は複数の塞栓成分を含む、123~128の何れかの方法。
130. 複数の塞栓成分は、ビニル基を有する前駆体を含む第一の塞栓成分と、開始剤を含む第二の塞栓成分を含む、123~129の何れかの方法。
131. 複数の塞栓成分は、求電子性官能基を有する前駆体を含む第一の塞栓成分と、求核性官能基を含む第二の塞栓成分を含む、125~129の何れかの方法。
132. カテーテルはマルチルーメンカテーテル、例えば同軸カテーテルである、123~131の何れかの方法。
133. 123~132の何れかの方法で使用される1つ又は複数の構成要素を含むシステム又はキット。
134. 組織、例えば血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、がん、腫瘍、富血管性腫瘍(がん性又は良性)、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、止血、血管破裂、静脈破裂、又は病態を有する組織等の病気又は病態の治療のための1~133の何れかの塞栓術システム又は方法の使用。
135. 哺乳類に組織の塞栓形成に有効な量の塞栓成分を投与するステップを含み、塞栓成分は1~132の何れかについて示され、又は本明細書においてさらに提供されている、病気又は組織の病態を治療する方法。
136. 組織は、血管、器官、腫瘍、筋腫、細胞集団、がん、腫瘍、富血管性腫瘍(がん性又は良性)、動脈瘤、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤、止血、血管破裂、静脈破裂、又は病態を有する組織の中の1つ又は複数である、135の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A-E】
図7A-C】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内位置における塞栓物質のインビボでの凝固を制御するためのための塞栓術システムであって、
カテーテル;
複数の塞栓成分であって、前記塞栓成分は互いに化学反応して血管内位置に塞栓物質を形成することができ、前記塞栓成分は、開始剤、共開始剤、およびポリマと反応し、架橋して塞栓物質を形成する複数の官能基を含むポリエチレングリコールを含む重合性水溶性ポリマを含み、重合性水溶性ポリマの架橋は、少なくとも約20%の膨潤性を有するハイドロゲルを形成し、前記複数の塞栓成分は約5重量%を超えるサッカライドを含まない、システム。
【請求項2】
前記カテーテルは、血管内位置で塞栓物質を形成するように構成され、前記カテーテルは、前記血管内腔内の血液が前記カテーテルから前記血管内腔に向かう方向に流れる位置で血管内腔に導入され得、カテーテル周囲の血流が制限される、請求項1の塞栓術システムであって、
複数の塞栓成分がカテーテルから血管内腔に放出され得る、システム。
【請求項3】
前記塞栓物質は、前記カテーテルの周囲の前記血液の流れを制限する場合のみ形成される、請求項2の塞栓術システム。
【請求項4】
前記カテーテルの周囲の血液の流れを制限することは、前記カテーテルの遠位部分でバルーンを膨張させることを含む、請求項2又は3の塞栓術システム。
【請求項5】
前記塞栓物質は、前記血管内位置に存在する医療機器に形成される、請求項2、3または4の何れか一つの塞栓術システム。
【請求項6】
前記医療機器は止血コイル、コイル、止血プラグ、ビーズ、ステント、フィルタ、又は医療用バルーンである、請求項5の塞栓術システム。
【請求項7】
塞栓物質を形成する方法における、塞栓成分の使用であって、
カテーテルを血管内腔の、血管内腔中の血液が前記カテーテルから血管内位置の医療機器に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
複数の前記塞栓成分を前記カテーテルから前記血管内腔へと放出するステップであって、前記塞栓成分は相互に化学的に反応して前記医療機器に前記塞栓物質を形成するステップと、
を含む使用。
【請求項8】
前記医療機器は止血コイル、コイル、止血プラグ、ビーズ、ステント、フィルタ、又は医療用バルーンである、請求項7の使用。
【請求項9】
前記塞栓成分は開始剤、共開始剤、水溶性ポリマであって、反応して前記ポリマを架橋させて前記塞栓物質を形成する複数の官能基を含む水溶性ポリマを含む、請求項7又は8の使用。
【請求項10】
塞栓物質を形成する方法における、塞栓成分の使用であって、
カテーテルを血管内腔の、前記血管内腔中の血液が前記カテーテルから血管内位置に向かう方向に流れる位置に導入するステップと、
前記カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップと、
複数の塞栓成分を前記カテーテルから前記血管内腔へと放出するステップであって、前記塞栓成分は相互に化学的に反応して前記血管内位置に塞栓物質を形成するステップと、
を含む使用。
【請求項11】
前記塞栓物質は、前記カテーテルの周囲の前記血液の流れを制限する場合のみ形成される、請求項10の使用。
【請求項12】
前記カテーテルの周囲の血液の流れを制限するステップは、前記カテーテルの遠位部分でバルーンを膨張させるステップを含む、請求項10又は11の使用。
【請求項13】
前記塞栓物は、前記血管内位置に存在する医療機器に形成される、請求項10~12の何れかの使用。
【請求項14】
前記塞栓成分は、開始剤、共開始剤、及び、水溶性ポリマであって、反応して前記ポリマを架橋し、前記塞栓物質を形成する複数の官能基を含む水溶性ポリマと、を含む、請求項10~12の何れかの使用。
【外国語明細書】