(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050756
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム、鼻および副鼻腔疾患の診断支援方法、学習モデルの生成方法およびデータの取得方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240403BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240403BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240403BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/46 536Q
A61B6/46 536Z
A61B6/50 500D
A61B6/03 560T
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014603
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2020048500の分割
【原出願日】2020-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154025
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】足立 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 重治
(72)【発明者】
【氏名】坂下 雅文
(72)【発明者】
【氏名】高林 哲司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鼻および副鼻腔疾患の診断を支援するシステムを提供する。
【解決手段】上顎洞、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞のCT画像と上顎洞周辺の骨を含むCT画像から、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、蝶形骨洞の5つの領域に区画化し、それらの内部にできたものの領域を特定し、上顎洞周辺の骨を特定する画像処理装置と、5つ領域の大きさと、それらの内部にできたものの領域大きさとの関係を数値化し、一方と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、5つ領域について濃淡を数値化するデータ算出装置と、5つ領域について内部にできたものとの関係を数値化したものと、一方と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化したものと、5つ領域について濃淡を数値化したものと、そのCT画像に対応する人の鼻、副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルに、データ算出装置による値を入力することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する学習モデル装置とを備える。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、
前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、
前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化する数値化工程と、
前記数値化工程により数値化されたものと、歯性上顎洞炎であるか否かのデータとを教師データとして、CT画像と歯性上顎洞炎との関係を学習させる学習工程とを包含する学習モデルの生成方法。
【請求項2】
上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、
前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、
前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化する数値化工程と、
前記CT画像に対応する問診データと、前記数値化工程により数値化されたものと、前記CT画像に対応する鼻および副鼻腔疾患のデータとを教師データとして、CT画像と鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させる学習工程とを包含する学習モデルの生成方法。
【請求項3】
上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と上顎洞周辺の骨を含むCT画像から、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の5つの領域に区画化し、前記5つの領域について、それらの内部にできたものの領域をそれぞれ特定し、前記上顎洞周辺の骨を特定する画像処理装置と、
前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化するデータ算出装置と、
上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の5つ領域に区画化されたそれぞれについて、その内部にできたものとの関係を数値化したものと、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化したものと、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化したものと、そのCT画像に対応する人の鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルに、前記データ算出装置によって数値化された値を入力することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する学習モデル装置とを備えた鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム。
【請求項4】
前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞、および上顎洞周辺の骨を含むCT画像から、一対の前頭洞を含むCT画像、一対の篩骨洞を含むCT画像、一対の蝶形骨洞を含むCT画像、一対の上顎洞および前記一対の上顎洞周辺の骨を含む画像を選択し、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの領域を特定する画像処理装置と、
前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの関係を数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化するデータ算出装置と、
基本パターンと、問診データ、前記区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化した値、前記一方の上顎洞周辺の骨と前記他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化した値、および前記区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡を数値化した値とを比較することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する判定処理装置とを備えた鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム。
【請求項5】
上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、
前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、
前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの関係を数値化する数値化工程とを包含するデータの取得方法。
【請求項6】
上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞CT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像を取得する工程と、
上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞CT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、問診データと、鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルに、前記取得されたCT画像および問診データを入力することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する鼻および副鼻腔疾患の診断支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻および副鼻腔疾患の診断を支援するシステム、鼻および副鼻腔疾患の診断支援方法、学習モデルの生成方法およびデータの取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、上顎洞疾患を治療するための装置および方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、鼻および副鼻腔がどのような疾患なのかを判定する診断支援システムおよび方法が何ら記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理方法は、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像処理方法であって、第三基板を基準にCT画像から前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含む画像を選択する。
【0006】
本発明の診断支援のための画像合成方法は、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像合成方法であって、CT画像から前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含む画像と上顎洞の画像を選択する選択工程と、前記選択された前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞の画像と、前記選択された上顎洞の画像を合成する合成工程とを包含する。
【0007】
本発明のデータの取得方法は、上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの関係を数値化する数値化工程とを包含する。
【0008】
学習モデルの生成方法は、上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化する数値化工程と、前記数値化工程により数値化されたものと、歯性上顎洞炎であるか否かのデータとを教師データとして、CT画像と歯性上顎洞炎との関係を学習させる学習工程とを包含する。
【0009】
本発明の別の学習モデルの生成方法は、上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像を取得する工程と、前記CT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化する区画化工程と、前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、 前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化する数値化工程と、前記CT画像に対応する問診データと、前記数値化工程により数値化されたものと、前記CT画像に対応する鼻および副鼻腔疾患のデータとを教師データとして、CT画像と鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させる学習工程とを包含する。
【0010】
本発明の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と上顎洞周辺の骨を含むCT画像とを取得できるCT装置と、前記CT画像から、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の5つの領域に区画化し、前記5つの領域について、それらの内部にできたものの領域をそれぞれ特定し、前記上顎洞周辺の骨を特定する画像処理装置と、前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化するデータ算出装置と、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の5つ領域に区画化されたそれぞれについて、その内部にできたものとの関係を数値化したものと、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化したものと、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化したものと、そのCT画像に対応する人の鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルに、前記データ算出装置によって数値化された値を入力することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する学習モデル装置とを備えている。
【0011】
本発明の鼻および副鼻腔疾患の診断支援方法は、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞CT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像を取得する工程と、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞CT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、問診データと、鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルに、前記取得されたCT画像および問診データを入力することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する。
【0012】
本発明の他の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、少なくとも前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞を含むCT画像を取得できるCT装置と、前記CT画像から前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含むCT画像と上顎洞を含むCT画像とを選択し、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞を5つの領域に区画化し、前記区画化された5つの領域の中にできたものの領域を特定する画像処理装置と、前記区画化された5つ領域の大きさと、前記5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係をそれぞれ数値化するデータ算出装置と、基本パターンと、前記区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化したものとを比較することにより、歯性上顎洞炎について判定する判定処理装置とを備えている。
【0013】
本発明のさらに別の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞、および上顎洞周辺の骨を含むCT画像を取得できるCT装置と、前記CT画像から、一対の前頭洞を含むCT画像、一対の篩骨洞を含むCT画像、一対の蝶形骨洞を含むCT画像、一対の上顎洞および前記一対の上顎洞周辺の骨を含む画像を選択し、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの領域を特定する画像処理装置と、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの関係を数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化するデータ算出装置と、基本パターンと、前記区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化した値、前記一方の上顎洞周辺の骨と前記他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化した値、および前記区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡を数値化した値とを比較することにより鼻および副鼻腔疾患について判定する判定処理装置とを備えている。
【0014】
本発明のさらに他の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞、および上顎洞周辺の骨を含むCT画像を取得できるCT装置と、前記CT画像から、一対の前頭洞を含むCT画像、一対の篩骨洞を含むCT画像、一対の蝶形骨洞を含むCT画像、一対の上顎洞および前記一対の上顎洞周辺の骨を含む画像を選択し、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を5つに区画化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの領域を特定する画像処理装置と、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものの関係を数値化し、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化し、前記区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化するデータ算出装置と、基本パターンと、問診データ、前記区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化した値、前記一方の上顎洞周辺の骨と前記他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化した値、および前記区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡を数値化した値とを比較することにより、鼻および副鼻腔疾患について判定する判定処理装置とを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像処理方法では、第三基板を基準にCT画像から前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含む画像を選択することができるため、第三基板で区切られる前篩骨洞と後篩骨洞の状態を容易に確認することができ、歯性上顎洞炎の鑑別に役立つ。
【0016】
本発明の診断支援のための画像合成方法では、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞の画像と上顎洞の画像が合成されるため、本来1枚のCT画像では確認することができない上顎洞、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞の状態を一度に確認することができ、歯性上顎洞炎の鑑別の時間短縮に役立つ。
【0017】
本発明のデータの取得方法では、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域と、その内部にできたものとの関係が数値化されるため、それを利用して3縦法により、歯性上顎洞炎の鑑別を行うことができる。
【0018】
本発明の学習モデルの生成方法では、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の区画化された5つ領域の大きさと、その5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係と、歯性上顎洞炎であるか否かとについて学習させているため、その学習モデルを利用すれば、歯性上顎洞炎の判定を行うことができる。
【0019】
本発明の別の学習モデルの生成方法では、CT画像に対応する問診データと、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の区画化された5つ領域の大きさと、その5つの領域の内部にできたものの領域大きさとの関係と、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差と、その区画化された5つ領域のそれぞれについての濃淡と、対応する鼻および副鼻腔疾患のデータとを学習させているため、その学習モデルを利用すれば、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について鼻および副鼻腔疾患の判定を行うことができる。
【0020】
本発明の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の5つ領域に区画化されたそれぞれについて、その内部にできたものとの関係を数値化したものと、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化したものと、区画化された5つ領域のそれぞれについて、濃淡を数値化したものと、対応する人の鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルを備えているため、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について鼻および副鼻腔疾患の判定を行うことができる。
【0021】
本発明の別の鼻および副鼻腔疾患の診断支援方法は、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞CT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、問診データと、鼻および副鼻腔疾患との関係を学習させた学習モデルを利用することができるため、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について鼻および副鼻腔疾患の判定を行うことができる。
【0022】
本発明の他の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、基本パターンと、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の5つに区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化したものとを比較する判定処理装置とを備えているため、歯性上顎洞炎について判定することができる。
【0023】
本発明のさらに別の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、基本パターンと、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の5つに区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化した値、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化した値、並びに区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡を数値化した値とを比較する判定処理装置を備えているため、鼻および副鼻腔疾患について判定することができる。
【0024】
本発明のさらに他の鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムは、基本パターンと、問診データ、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の5つに区画化された領域においてその内部にできたものの関係を数値化した値、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を数値化した値、並びに区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡を数値化した値とを比較する判定処理装置を備えているため、鼻および副鼻腔疾患について判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は冠状断における上顎洞を含むCT画像を示し、(b)は(a)の〇印部分を拡大したものを示している。
【
図2】(a)は好酸球性副鼻腔炎の一例を模式的に示し、(b)は副鼻腔真菌症の一例を模式的に示し、(c)は内反性乳頭腫の一例を模式的に示し、(d)は上顎癌の一例を模式的に示している。
【
図3】
図3は、鼻および副鼻腔疾患と問診データとの関係を示している。
【
図4】
図4は、患者の上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の状態、CT画像を3条件基準と3縦法とにより歯性上顎洞炎を判定した結果と、医師によりCT画像および問診データを基に歯性上顎洞炎を実際に鑑別した結果を示している。
【
図5】(a)は頭部の冠状断のCT画像を示し、(b)は線20にて切断した矢状断のCT画像を示し、(c)は線21にて切断した矢状断のCT画像を示している。
【
図6】
図6は、第2実施形態における、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像合成システム100を示している。
【
図7】
図7は、画像合成システム100にて矢状断にて画像を合成する方法のフローの一例を示している。
【
図8】(a)は矢状断での画像が合成されたものを示し、(b)は冠状断での画像が合成されたものを示している。
【
図9】
図9は、画像合成システム100が冠状断にて画像を合成する方法のフローの一例を示している。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態における、データの取得システム200を示している。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施形態における、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞についてデータの取得方法の一例を示している。
【
図12】
図12は、本発明の第4実施形態における、データの取得システム300を示している。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態における、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞についてデータの取得方法の一例を示している。
【
図14】
図14は、本発明の第5実施形態における、歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム400を示している。
【
図15】
図15は、本発明の第6実施形態における、歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム500を示している。
【
図16】
図16は、本発明の第7実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム600を示している。
【
図17】
図17は、本発明の第8実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム700を示している。
【
図18】
図18は、本発明の第9実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800を示している。
【
図19】
図19は、本発明の第10実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム900を示している。
【
図20】
図20は、本発明の第11実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1000を示している。
【
図21】
図21は、本発明の第12実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1100を示している。
【
図22】
図22は、本発明の第13実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1200を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、
図1および2を用いて副鼻腔疾患のCT画像を用いた鑑別方法について説明する。
【0027】
図1(a)は、歯性上顎洞炎の一例を示すCT画像であり、冠状断における上顎洞を含むCT画像を示し、
図1(b)は、
図1(a)の〇印部分を拡大したものを示している。
【0028】
歯性上顎洞炎は、歯から来る炎症であり、そのCT画像には、
図1(b)に示すような根尖病巣と上顎骨透亮像が現れ、上顎洞内に
図1(a)に示すような陰影が見られる。CT画像に、根尖病巣、上顎骨透亮像および上顎洞内陰影があることを基準に歯性上顎洞炎を鑑別することを、本明細書では3条件基準と呼ぶこととする。
【0029】
図2は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞を示している。詳しくは、
図2(a)は好酸球性副鼻腔炎の一例を模式的に示し、
図2(b)は副鼻腔真菌症の一例を模式的に示し、
図2(c)は内反性乳頭腫の一例を模式的に示し、
図2(d)は上顎癌の一例を模式的に示し、それらの上部は矢状断を表し、それらの下部は冠状断を表している。以下に、
図2を用いて好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌の特徴を説明する。
【0030】
好酸球性副鼻腔炎では、図示していないが両方の前篩骨洞1および後篩骨洞2に優位に陰影が現れる。
【0031】
副鼻腔真菌症では、片方の上顎洞3、4が石灰化し、CT画像では白っぽく見え、図示していないがその片方の上顎洞3、4の周辺の骨の一部が厚くなる。
【0032】
なお、視覚的に見やすくするため、
図2(b)の上部の画像では、前篩骨洞および後篩骨洞写っている矢状断のCT画像に、上顎洞が写っている別の矢状断のCT画像から上顎洞の部分を切り取ったものが合成されている。これは、
図2(c)および
図2(d)についても同じである。
【0033】
内反性乳頭腫では、片方の上顎洞5、7に腫瘤ができ、その片方の上顎洞5、7の周辺の骨の一部が厚くなる。
【0034】
上顎癌では、片方の上顎洞9、10の周辺の骨の一部が破壊される。
【0035】
また、CT画像による鑑別方法では、上述した歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌のどれにも当てはまらない場合、術後性頬部嚢胞など稀な疾患に注意しつつ慢性副鼻腔炎と鑑別している。
【0036】
さらに、患者の問診データである鼻閉、鼻漏、嗅覚障害、頭重感、頭痛、頬部腫脹、頬部痛、および鼻出血を少なくとも聞き取り、CT画像および
図3に示す鼻および副鼻腔疾患と問診データとの関係を考慮して、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、上顎癌、および慢性副鼻腔炎の鑑別をしている。
【0037】
しかし、歯性上顎洞炎の初期段階では、上顎骨透亮像や根尖病巣が現れない場合がある。また、各患者の個体差や感じ方や問診の応答の内容のばらつきなどから、患者の問診データと疾患との関係が必ずしも
図3に示されるように現れるわけではない。
【0038】
上述した歯性上顎洞炎の鑑別方法では、CT画像に上顎骨透亮像や根尖病巣が現れない場合、問診を行ったとしても、慢性副鼻腔炎として鑑別され得る。特に、歯性上顎洞炎の初期段階では、上顎骨が融けるというところまではいかない。初期段階の歯性上顎洞炎でありながら、慢性副鼻腔炎として鑑別されると根本的な治療が遅れ、場合によっては歯を支える骨が融け、歯を失うこともある。このため、なるべく早期に歯性上顎洞炎を特定することが重要となる。
【0039】
発明者は、篩骨洞が第三基板を境に、前篩骨洞と後篩骨洞とに分けられ、前篩骨洞と後篩骨洞とが発生学的に別であり、その違いが副鼻腔炎の炎症の広がりに影響をしていることを突き止めた。つまり、第三基板を境に前に位置する上顎洞、前頭洞および前篩骨洞に軟部影が生じるが、第三基板を境に後に位置する後篩骨洞および蝶形骨洞に軟部影が生じないという歯性上顎洞炎の別の鑑別方法(以下、3縦法という)を発明者は見つけ出した。
【0040】
【0041】
図4は、患者の上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の状態、CT画像を3条件基準と3縦法とにより歯性上顎洞炎を判定した結果と、医師によりCT画像および問診データを基に歯性上顎洞炎を実際に鑑別した結果を示している。
【0042】
図4における上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞のそれぞれの列には、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞のそれぞれの状態に応じた数字が入る。
【0043】
図4に示す数字は、Lund-Mackay scoreを用いて導き出された数字である。一例として、副鼻腔に軟部影がない場合0点とし、副鼻腔に軟部影があり含気がある場合1点とし、副鼻腔に軟部影があり含気がない場合2点としている。
【0044】
ここで、3縦法では、第三基板を境にした前に位置する上顎洞、前頭洞および前篩骨洞に軟部影が生じ、第三基板を境にした後ろに位置する後篩骨洞及び蝶形骨洞に軟部影が生じないことを判断基準として歯性上顎洞炎として判定する。例えばこの場合、上顎洞の点数が2点であり、前篩骨洞の点数が1~2点であり、前頭洞の点数が1~2点であり、後篩骨洞の点数が0点であり、且つ蝶形骨洞の点数が0点である場合を基準とすることで、歯性上顎洞炎と判定する。
【0045】
図4に示すように、CT画像だけによる歯性上顎洞炎の判定では、3条件基準よりも3縦法の方が歯性上顎洞炎を見つけ出すことができる確率が高い。つまり、3条件基準では発見できなかった歯性上顎洞炎を発見することができ、患者に対して早期に歯性上顎洞炎の治療を行うことができる。
【0046】
例えば、番号4、5の場合は、歯性上顎洞炎の初期段階であったため、上顎骨透亮像や根尖病巣が現れなかったので、3条件基準では、歯性上顎洞炎と判定されていない。しかし、3縦法では、歯性上顎洞炎の早期治療が可能となり、患者の苦痛を早期に緩和することができる。
【0047】
以下、本発明の第1実施形態におけるCT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像処理方法を説明する。
【0048】
3縦法を使用するためには、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の状態を知る必要がある。また、前篩骨洞と後篩骨洞は、第三基板により分かれているため、矢状断のCT画像に第三基板が写るように、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞が写っているCT画像を選択することが好ましい。言い換えると、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像処理方法では、複数の矢状断のCT画像から、第三基板が写っているCT画像であって、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞が写っているCT画像が選択される。これにより、第三基板で隔てられた前篩骨洞と後篩骨洞の状態を確認することができる。
【0049】
なお、上顎洞の状態を確認するためには、上述した第三基板が写っている矢状断のCT画像とは別の、上顎洞が写っている矢状断のCT画像を複数の矢状断のCT画像から選択する必要がある。
【0050】
以下に、第2実施形態における、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像合成システムおよび画像合成方法の必要性について説明する。
【0051】
図5(a)は頭部の冠状断のCT画像を示し、
図5(b)は線20にて切断した矢状断のCT画像を示し、
図5(c)は線21にて切断した矢状断のCT画像を示している。
図5(b)に示される矢状断のCT画像には、前頭洞、篩骨洞、第三基板23、後篩骨洞および蝶形骨洞が写っているが、上顎洞は写っていない。また、
図5(c)に示される矢状断のCT画像には、上顎洞が写っているが、前頭洞、篩骨洞、第三基板23、後篩骨洞および蝶形骨洞は写っていない。
【0052】
このため、1枚のCT画像では、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の状態を確認することができない。例えば、表示装置に1枚のCT画像だけしか表示できない場合には、
図5(b)のCT画像と
図5(c)のCT画像と差し替えながら上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞の状態を確認する必要がある。
【0053】
また、表示装置に
図5(b)のCT画像と
図5(c)のCT画像を並べて表示する場合でも、2つのCT画像に視線を動かす必要があり、集団検診などで多くの人のCT画像を見る場合、その負担は小さくない。
【0054】
しかし、第2実施形態におけるCT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像合成システムおよび画像合成方法では、例えば、
図5(b)のCT画像に
図5(c)のCT画像の一部をはめ込み合成することができ、上述したような問題を解決するとこができる。
【0055】
図6は、第2実施形態における、CT画像により鼻および副鼻腔疾患の診断を支援する画像合成システム100を示している。
【0056】
画像合成システム100は、X線CT装置110、画像処理装置120および表示装置130を備えている。
【0057】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得することができる。
【0058】
画像処理装置120は、複数の矢状断のCT画像から、特定の部位が写っているCT画像を選択することができる画像選択部121と、CT画像から特定の部位を切り出すことができる画像切出部122と、切り出された部位の画像を別のCT画像に合成することができる画像合成部123を有している。
【0059】
また、画像選択部121は、複数の矢状断のCT画像から、第三基板23が写っているCT画像であって、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞が写っているCT画像を選択すること、および複数の矢状断のCT画像から、上顎洞24が写っているCT画像を選択することができる。さらに、画像選択部121は、複数の冠状断のCT画像から、上顎洞40および前篩骨洞41が写っているCT画像を選択すること、および複数の冠状断のCT画像から、前頭洞42が写っているCT画像を選択することができる。
【0060】
表示装置130は、取得されたCT画像を表示することができ、さらに、合成されたCT画像を表示することもできる。
【0061】
図7は、画像合成システム100にて矢状断にて画像を合成する方法のフローの一例を示し、
図8(a)は矢状断での画像が合成されたものを示している。
【0062】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得する(ステップS100)。画像選択部121は、複数の矢状断のCT画像から、第三基板23が写っているCT画像であって、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞および蝶形骨洞が写っているCT画像を選択する(ステップS110)。画像選択部121が、複数の矢状断のCT画像から上顎洞24が写っているCT画像を選択し、画像切取部122が、上顎洞が写っている部分を切り取る(ステップS120)。画像合成部123は、
図8(a)に示すように、選択された前篩骨洞31、前頭洞32、後篩骨洞34および蝶形骨洞35が写っているCT画像に切り取られた上顎洞30を合成する(ステップS130)。その後、表示装置130に合成された画像が表示されてもよい。
【0063】
画像合成システム100は、上述したように矢状断にて画像を合成したが、画像合成システム100は、冠状断にて画像を合成してもよい。
図9は、画像合成システム100が冠状断にて画像を合成する方法のフローの一例を示し、
図8(b)は冠状断での画像が合成されたものを示している。
【0064】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得する(ステップS100)。画像選択部121は、複数の冠状断のCT画像から、上顎洞40および前篩骨洞41が写っているCT画像を選択する(ステップS210)。画像選択部121は、複数の冠状断のCT画像から、前頭洞42が写っているCT画像を選択し、画像切取部122は、前頭洞42が写っている部分を切り取る(ステップS220)。画像合成部123は、
図8(b)に示すように、選択された上顎洞40および前篩骨洞41が写っているCT画像に切り取られた前頭洞42を合成する(ステップS230)。その後、表示装置130に合成された画像が表示されてもよい。
図8(b)に示す画像には、後篩骨洞および蝶形骨洞は写っていないが、1枚の冠状断の画像にて、上顎洞40、前篩骨洞41、および前頭洞42の状態を確認することができる。
【0065】
以下に、本発明の第3実施形態における、データの取得システムおよびデータの取得方法を説明する。本発明の第3実施形態における、データの取得システムおよびデータの取得方法では、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の状態を数値化することができる。
【0066】
図10は、本発明の第3実施形態における、データの取得システム200を示している。
【0067】
データの取得システム200は、X線CT装置110、画像処理装置220、およびデータ算出装置240を備えている。
【0068】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得することができる。
【0069】
画像処理装置220は、複数の矢状断のCT画像から、特定の部位が写っているCT画像を選択することができる画像選択部221と、CT画像から特定の部位を切り出すことができる画像切出部222と、特定の部位の中にできているもの領域を特定することができる領域特定部224とを有している。なお、画像処理装置220は、複数の矢状断のCT画像ではなく、複数の冠状断のCT画像から、特定の部位が写っているCT画像を選択してもよい。
【0070】
データ算出装置240は、特定の部位と、特定の部位の中にできているものとの関係を数値化する。例えば、データ算出装置240は、特定の部位の大きさと、特定の部位の中にできているもの領域の大きさを比較し、その結果を数値化することができる。
【0071】
本発明の第3実施形態における、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞についてデータの取得方法の一例を
図11を用いて説明する。
【0072】
X線CT装置110は、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞を含むCT画像データを取得する(ステップS300)。画像選択部221は、CT画像データから前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞と含む画像と、上顎洞とを含む画像とを選択する(ステップS310)。画像切出部222は、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域について5つに区画化する(ステップS320)。領域特定部224は、それぞれの区画化された領域の内部にできたものの領域を特定する(ステップS330)。データ算出装置240は、それぞれ区画化された領域の大きさと内部にできたものの大きさの関係を数値化する(ステップS340)。
【0073】
例えば、データ算出装置240が、Lund-Mackay scoreに従い数値化する場合、特定の部位の中にできているものがない場合0点と数値化し、特定の部位の中の全体にできている場合2点と数値化し、その間については1点と数値化することができる。ここで、特定の部位の中にできているものがない場合、CT画像の特定の部位部分は黒くなる。また、CT画像の特定の部位の中にできているものは、黒でも白でもなく影として現れる。
【0074】
また、データ算出装置240は、特定の部位の大きさと、特定の部位の中にできているもの領域の大きさの割合を算出してもよい。例えば、その割合がαの範囲に入っている場合、Lund-Mackay scoreの2点に相当し、その割合がβの範囲に入っている場合、同scoreの1点に相当し、その割合がγの範囲に入っている場合、同scoreの0点に相当するとして、3縦法を適用してもよい。なお、α>β>γという関係を有している。
【0075】
また、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の部位の大きさと、それらの部位の中にできているもの領域の大きさの割合をそれぞれa、b1、b2、c1、およびc2とした場合、多くの歯性上顎洞炎のCT画像からa、b1、b2、c1、およびc2が同定されてもよい。同定方法としては、最小二乗法または最尤推定法などが用いられてもよい。
【0076】
本発明の第3実施形態では、区画化された上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域の大きさと、それらの内部にできたものの大きさを比較していたが、本発明の第4実施形態では、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の立体的な大きさと、それらの内部にできたものの立体的な大きさを比較することにより、それらの関係を数値化することができる。
【0077】
以下に、本発明の第4実施形態における、データの取得システムおよびデータの取得方法の一例を説明する。
図12は、本発明の第4実施形態における、データの取得システム300を示している。
【0078】
データの取得システム300は、X線CT装置110、画像処理装置320、およびデータ算出装置340を備えている。
【0079】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得することができる。
【0080】
画像処理装置320は、取得したCT画像から、特定の部位が写っているCT画像を選択することができる画像選択部321と、CT画像から特定の部位を切り出すことができる画像切出部322と、特定の部位の中にできているもの領域を特定することができる領域特定部324とを有している。
【0081】
データ算出装置340は、特定の部位と、特定の部位の中にできているものとの関係を数値化することができる。例えば、データ算出装置340は、画像処理装置320からの複数のデータから、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれの容積を算出し、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の内部にできたもののそれぞれの体積を算出し、それらの関係を数値化することができる。
【0082】
本発明の第4実施形態における、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞についてデータの取得方法の一例を
図13を用いて説明する。
【0083】
X線CT装置110は、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞を含むCT画像データを取得する(ステップS400)。画像選択部321は、CT画像データから上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞について、それまたはそれらを含む画像を選択し、画像切出部322は、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域について5つに区画化し、領域特定部324は、それぞれの区画化された領域の内部にできたものの領域を特定する(ステップS410)。
【0084】
データ算出装置340は、5つに区画化されたデータを画像処理装置320から受け取り、それらのデータから上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれの容積を算出する(ステップS420)。
【0085】
データ算出装置340は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の部位の中にできているもの領域を特定したデータを画像処理装置320から受け取り、それらのデータから、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の内部にできたもののそれぞれの体積を算出する(ステップS430)。
【0086】
データ算出装置340は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれの容積と、それらの内部にできたもののそれぞれの体積の関係を数値化する(ステップS440)。
【0087】
例えば、データ算出装置340が、Lund-Mackay scoreに従い数値化してもよい。
【0088】
また、データ算出装置340は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれの容積と、それらの内部にできたもののそれぞれの体積との割合を算出してもよい。例えば、その割合がαの範囲に入っている場合、Lund-Mackay scoreの2点に相当し、その割合がβの範囲に入っている場合、同scoreの1点に相当し、その割合がγの範囲に入っている場合、同scoreの0点に相当するとして、3縦法を適用してもよい。なお、α>β>γという関係を有している。
【0089】
また、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の容積と、それらの部位の中にできているもの体積の割合をそれぞれa’、b1’、b2’、c1’、およびc2’とした場合、多くの歯性上顎洞炎のCT画像からa’、b1’、b2’、c1’、およびc2’が同定されてもよい。同定方法としては、最小二乗法または最尤推定法などが用いられてもよい。
【0090】
以下に、本発明の第5実施形態における、歯性上顎洞炎の学習モデルの生成システムを説明する。
【0091】
図14は、本発明の第5実施形態における、歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム400を示している。
【0092】
診断支援学習モデル生成システム400は、X線CT装置110、画像処理装置220、データ算出装置240、および学習モデル生成装置450を備えている。診断支援学習モデル生成システム400のX線CT装置110、画像処理装置220およびデータ算出装置240は、データの取得システム200のものと同じ機能を有している。
【0093】
データ算出装置240は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の大きさと、それらの中にできているもの領域の大きさの関係を数値化することができる。ここで、それらの関係が、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の大きさと、それらの中にできているもの領域の大きさの割合であってもよい。
【0094】
学習モデル生成装置450は、X線CT装置から取得したCT画像から上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれについて数値化された値と、そのCT画像に対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータ460を教師データとして、機械学習を行い、学習モデルを生成する。
【0095】
また、学習モデル生成装置450は、機械学習する際に、X線CT装置から取得したCT画像から上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれについて数値化された値と、そのCT画像に対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータに、さらに、その人の問診データ470を加えて機械学習を行い、学習モデルを生成してもよい。ここで、問診データ470は、少なくとも頬部腫脹および頬部痛であるか否かのデータを含む。
【0096】
なお、上述した機械学習は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、またはディープラーニングなどにより行われてもよい。
【0097】
以下に、本発明の第6実施形態における、歯性上顎洞炎の学習モデルの生成システムを説明する。
【0098】
図15は、本発明の第6実施形態における、歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム500を示している。
【0099】
診断支援学習モデル生成システム500は、X線CT装置110、画像処理装置320、データ算出装置340、および学習モデル生成装置550を備えている。診断支援学習モデル生成システム500のX線CT装置110、画像処理装置320およびデータ算出装置540は、データの取得システム300のものと同じ機能を有している。
【0100】
データ算出装置340は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の容積と、それらの中にできているもの体積の関係を数値化することができる。ここで、それらの関係は、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の容積と、それらの中にできているもの体積の割合であってもよい。
【0101】
学習モデル生成装置550は、X線CT装置から取得したCT画像から上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれについて数値化された値と、そのCT画像に対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータ460を教師データとして、機械学習を行い、学習モデルを生成する。
【0102】
また、学習モデル生成装置550は、機械学習する際に、X線CT装置から取得したCT画像から上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれについて数値化された値と、そのCT画像に対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータに、さらに、その人の問診データ470を加えて機械学習を行い、学習モデルを生成してもよい。
【0103】
なお、上述した機械学習は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、またはディープラーニングなどにより行われてもよい。
【0104】
以下に、本発明の第7実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図16を用いて説明する。
図16に示されている鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム600は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援することができる。
【0105】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム600は、X線CT装置110、画像処理装置220、データ算出装置240、および学習モデル装置650を備えている。
【0106】
学習モデル装置650は、第5実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム400によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞に区画化された5つ領域と、それらの中にできているものとの関係と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している。例えば、学習モデル装置650は、第5実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム400によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の大きさと、それらの中にできているもの領域の大きさのそれぞれの割合と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している。
【0107】
X線CT装置110は、診断の対象となる人の頭部のCT画像を得ることができる。画像選択部221は、CT画像データから前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞と含む画像と、上顎洞とを含む画像とを選択し、画像切出部222は、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域について5つに区画化し、領域特定部224は、それぞれの区画化された領域の内部にできたものの領域を特定する。データ算出装置240は、それぞれ区画化された領域の大きさと内部にできたものの大きさの割合を算出し、学習モデル装置650に送る。
【0108】
学習モデル装置650は、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果680を出力する。
【0109】
また、学習モデル装置650が、第5実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム400によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の大きさと、それらの中にできているもの領域の大きさのそれぞれの割合と、それに対応する人の問診データ470と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している場合、学習モデル装置650は、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合と問診データ670を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果680を出力してもよい。ここで、問診データ670は、少なくとも頬部腫脹および頬部痛であるか否かのデータを含み、学習モデル装置650に入力される問診データ670の項目は、学習モデルを生成するときの項目と一致している。
【0110】
以下に、本発明の第8実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図17を用いて説明する。
図17に示される鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム700は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援することができる。
【0111】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム700は、X線CT装置110、画像処理装置320、データ算出装置340、および学習モデル装置750を備えている。
【0112】
学習モデル装置750は、第6実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム500によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞に区画化された5つ領域と、それらの中にできているものとの関係と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している。例えば、学習モデル装置750は、第6実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム500によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の容積と、それらの中にできているもの領域の体積のそれぞれの割合と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している。
【0113】
X線CT装置110は、診断の対象となる人の頭部のCT画像を得ることができる。
【0114】
画像処理装置320は、取得したCT画像から、特定の部位が写っているCT画像を選択することができる画像選択部321と、CT画像から特定の部位を切り出すことができる画像切出部322と、特定の部位の中にできているもの領域を特定することができる領域特定部324とを有している。
【0115】
データ算出装置340は、画像処理装置320からのデータから、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞のそれぞれの容積を算出し、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の内部にできたもののそれぞれの体積を算出し、それらの割合を算出し、学習モデル装置750に送る。
【0116】
学習モデル装置750は、データ算出装置340から受け取ったそれらの割合を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果780を出力する。
【0117】
また、学習モデル装置750が、第6実施形態における歯性上顎洞炎の診断支援学習モデル生成システム500によって、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の容積と、それらの中にできているもの領域の体積のそれぞれの割合と、それに対応する人の問診データ470と、それに対応する人が歯性上顎洞炎であるか否かのデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している場合、学習モデル装置750は、データ算出装置340から受け取ったそれらの割合と問診データ670を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果780を出力してもよい。ここで、問診データ670は、少なくとも頬部腫脹および頬部痛であるか否かのデータを含み、学習モデル装置750に入力される問診データ770の項目は、学習モデルを生成するときの項目と一致している。
【0118】
なお、第7および8実施形態では、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞を含むCT画像を画像処理し数値化したデータと歯性上顎洞炎の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、歯性上顎洞炎であるか否かを判定させた。
【0119】
上述した
図4に示されているように、3縦法と3条件基準とを併用することにより歯性上顎洞炎の発見確率を高めることができることから、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、歯性上顎洞炎の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、歯性上顎洞炎であるか否かを判定させてもよい。
【0120】
さらに、問診データと、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、歯性上顎洞炎の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、歯性上顎洞炎であるか否かを判定させてもよい。
【0121】
以下に、本発明の第9実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の学習モデルの生成システムを説明する。第9実施形態では、歯性上顎洞炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について学習させることができる。
【0122】
図18は、本発明の第9実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800を示している。
【0123】
診断支援学習モデル生成システム800は、X線CT装置110、画像処理装置820、データ算出装置840、および学習モデル生成装置850を備えている。
【0124】
X線CT装置110は、少なくとも人の頭部のCT画像を取得することができる。
【0125】
画像処理装置820は、画像選択部821、画像切出部822、領域特定部824、および上顎洞周辺切出部825を有し、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の5つ区画化された領域の大きさと、それらの5つの領域の内部にできたものの領域の大きさとの関係、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差、並びに5つに区画化された領域のそれぞれの濃淡を数値化することができる。
【0126】
画像選択部821は、冠状断のCT画像データから前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞を含む画像を選択することができる。また、画像選択部821は、矢状断のCT画像データから前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、および上顎洞を含む画像を選択してもよい。
【0127】
画像切出部822は、それらのCT画像について、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の領域を区画化して切り出すことができる。
【0128】
領域特定部824は、それぞれの区画化された領域の内部にできたものの領域を特定することができる。
【0129】
上顎洞周辺切出部825は、上顎洞の周りの骨の画像を切り出すことができる。この場合、切り出す前のCT画像は、冠状断であることが好ましい。矢状断のCT画像の場合、上顎洞の左右差を比較するのに精密な位置設定をする必要があるからである。また、上顎洞の周りの骨とは、上顎洞とその骨の境からその外側に約2cm離れたところを含む。
【0130】
データ算出装置840は、割合算出部841、濃淡算出部842および左右差算出部843を有している。
【0131】
割合算出部841は、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合を算出する。例えば、区画化され切り出された上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の面積と、領域の内部にできたものの領域の面積の割合を算出してもよい。
【0132】
濃淡算出部842は、区画化され切り出された上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の濃淡を数値化する。例えば、濃淡算出部842は、区画化され切り出された領域の濃淡を数値化しそれらを足し合わせ、その領域の面積で割り平準化してもよい。また、区画化され切り出された領域の濃淡を数値化し、それらをそのまま学習モデル生成装置850に送ってもよいし、それらを重み付けして学習モデル生成装置850に送ってもよい。なお、濃淡を数値化する方法としては、複数の地点をサンプリングすることにより行われてもよい。
【0133】
濃淡算出部842が、区画化され切り出された上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞の濃淡を数値化する場合、濃淡算出部842は、選択的に区画化された領域の内部にできたものの領域について濃淡を数値化しそれらを足し合わせ、その領域の面積で割り平準化してもよい。また、濃淡算出部842は、内部にできたものの領域の濃淡を数値化し、それらをそのまま学習モデル生成装置850に送ってもよいし、それらを重み付けして学習モデル生成装置850に送ってもよい。
【0134】
また、濃淡算出部842は、骨破壊を見つけ出すための下処理として、冠状断のCT画像から切り出された上顎洞の周りの骨の濃淡を数値化してもよい。骨の濃淡を数値化する方法としては、複数の地点をサンプリングすることにより行われてもよい。また、サンプリングする場合、左右の上顎洞の周りの骨について、頭部の中心線から線対称となる2点を一対として複数対サンプリングすることが好ましい。
【0135】
左右差算出部843は、骨肥厚を見つけ出すために、一方の上顎洞周辺の骨と他方の上顎洞周辺の骨との差を算出する。例えば、左右差算出部843は、冠状断のCT画像から切り出された上顎洞の周りの骨について左右を比較し、その差を数値化してもよい。具体的には、左右差算出部843は、冠状断のCT画像において、右の上顎洞と骨の境と左の上顎洞と骨の境とについて、頭部の中心線からの距離を算出し、その差を算出してもよい。
【0136】
さらに、左右差算出部843は、骨破壊を見つけ出すために、右の上顎洞と骨の濃淡と左の上顎洞と骨の濃淡との差を算出してもよい。例えば、濃淡算出部842から上顎洞の周りの骨の濃淡を数値化したものを受け取り、頭部の中心線から線対称となる2点の数値の差を算出してもよい。
【0137】
さらに、左右差算出部843は、好酸球性副鼻腔炎の判定精度を上げるために、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合について、左右差を算出してもよい。左右差がない場合、その鼻および副鼻腔疾患が好酸球性副鼻腔炎である可能性が高いからである。
【0138】
また、同様の理由で左右差算出部843は、5つ領域の内部にできたもの左右差を算出してもよい。この左右差は、5つ領域の内部の面積であってもよいし、5つ領域の内部の濃淡であってもよい。
【0139】
学習モデル生成装置850は、データ算出装置840により算出された数値と、算出のもととなったCT画像に対応する人の鼻および副鼻腔疾患を教師データとして、機械学習を行い、学習モデルを生成する。データ算出装置840により算出された数値には、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合、区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡に関する数値、および左右の上顎洞の周辺の骨の左右差が少なくとも含まれている。
【0140】
上述した学習モデル生成装置850では、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について判定することが可能であるが、例えば、上顎癌だけを学習させたい場合には、左右差算出部843は、右の上顎洞と骨の濃淡と左の上顎洞と骨の濃淡との差を算出するが、右の上顎洞と骨の境と左の上顎洞と骨の境との左右差を算出する必要はない。
【0141】
同様に、副鼻腔真菌症および内反性乳頭腫だけを学習させたい場合には、左右差算出部843は、右の上顎洞と骨の境と左の上顎洞と骨の境との左右差を算出するが、右の上顎洞と骨の濃淡と左の上顎洞と骨の濃淡との差を算出する必要はない。
【0142】
また、CT画像による判定方法では、上述した歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌のどれにも当てはまらない場合、慢性副鼻腔炎と判定してもよい。ただし、術後性頬部嚢胞など稀な疾患もあるので注意が必要である。
【0143】
学習モデル生成装置850は、機械学習する際に、データ算出装置840により算出された数値に、さらに、その人の問診データ870を加えて、算出のもととなったCT画像に対応する人の鼻および副鼻腔疾患を教師データに、機械学習を行い、学習モデルを生成してもよい。ここで、問診データ870は、少なくとも鼻閉、鼻漏、嗅覚障害、頭重感、頭痛、頬部腫脹、頬部痛、鼻出血、および発症時期である。問診データは、さらに以前に上顎洞およびその周りについて手術をしたことがあるかないかを含んでもよい。さらに、問診データは、血中の好酸球数、喘息の有無、およびアスピリン過敏症の有無を含んでいてもよい。
【0144】
なお、上述した機械学習は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、またはディープラーニングなどにより行われてもよい。
【0145】
以下に、本発明の第10実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図19を用いて説明する。
図10に示されている鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム900は、鼻および副鼻腔疾患の診断を支援することができる。
【0146】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム900は、X線CT装置110、画像処理装置820、データ算出装置840、および学習モデル装置950を備えている。
【0147】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム900のX線CT装置110、画像処理装置820およびデータ算出装置840は、鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800のものと同じ機能を有している。
【0148】
学習モデル装置950は、第9実施形態における鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800によって、データ算出装置840により算出された数値と、算出のもととなったCT画像に対応する人の鼻および副鼻腔疾患を教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している。
【0149】
なお、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム900のデータ算出装置840は、鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800のデータ算出装置840と同じ機能を有している。
【0150】
学習モデル装置950は、データ算出装置840から受け取った、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合と、区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡に関する数値と、左右の上顎洞の周辺の骨の左右差とを、鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800によって生成された学習モデルに入力して、どのような鼻および副鼻腔疾患を判定し、判定結果980を出力することができる。なお、好酸球性副鼻腔炎の判定精度を上げるために、学習モデルが、区画化された5つ領域のそれぞれについて左右差についても学習している場合には、その左右差も学習モデルに入力される。
【0151】
また、CT画像による判定方法では、上述した歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌のどれにも当てはまらない場合、慢性副鼻腔炎と判定してもよい。ただし、術後性頬部嚢胞など稀な疾患もあるので注意が必要とである。
【0152】
また、学習モデル装置950が、第9実施形態における診断支援学習モデル生成システム800によって、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合と、区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡に関する数値と、左右の上顎洞の周辺の骨の左右差と、それに対応する人の問診データ870と、それに対応する人の鼻および副鼻腔疾患のデータを教師データとして、予め機械学習が行われた学習モデルを有している場合、学習モデル装置950は、データ算出装置240から受け取った、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合と、区画化された5つ領域のそれぞれについて濃淡に関する数値と、左右の上顎洞の周辺の骨の左右差と、問診データ970を鼻および副鼻腔疾患の学習モデル生成システム800によって生成された学習モデルに入力し、どのような鼻および副鼻腔疾患を判定し、判定結果980を出力してもよい。
【0153】
なお、学習モデル装置950に入力される問診データ970の項目は、学習モデルを生成するときの項目と一致している。例えば、好酸球性副鼻腔炎の判定精度を上げるために、学習モデルが、区画化された5つ領域のそれぞれについて左右差についても学習している場合には、その左右差も学習モデルに入力される。
【0154】
また、CT画像による判定方法では、上述した歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌のどれにも当てはまらない場合、慢性副鼻腔炎と判定してもよい。ただし、術後性頬部嚢胞など稀な疾患もあるので注意が必要である。
【0155】
ところで、上述した第10実施形態では、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞と、上顎洞の周りの骨を含むCT画像を画像処理し数値化したデータと、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、どのような鼻および副鼻腔疾患かを判定させた。
【0156】
しかし、歯性上顎洞炎には3縦法および3条件基準という特徴があり、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌には、
図2に示される特徴があることから、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、どのような鼻および副鼻腔疾患かを学習モデル装置が判定してもよい。
【0157】
さらに、問診データと、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、および蝶形骨洞のCT画像と、上の歯から上顎洞までの骨および上顎洞周辺の骨のCT画像と、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌の有無とで機械学習させた学習モデルを用いて、どのような鼻および副鼻腔疾患かを学習モデル装置が判定してもよい。
【0158】
以下に、本発明の第11実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図20を用いて説明する。
図20に示されている鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1000は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援することができる。
【0159】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1000は、X線CT装置110、画像処理装置220、データ算出装置240、および判定装置1050を備えている。鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1000のX線CT装置110、画像処理装置220、およびデータ算出装置240は、第3実施形態における、データの取得システム200のものと同じ機能を有している。
【0160】
判定装置1050は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援するための基本パターンを有している。
【0161】
基本パターンの一例としては、第3実施形態で同定した上顎洞がaであり、前頭洞がb1であり、前篩骨洞b2であり、後篩骨洞がc1であり、蝶形骨洞がc2である。
【0162】
判定装置1050は、基本パターンと、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合とのマッチング割合を算出し、マッチング割合が所定の値以上の場合、歯性上顎洞炎であると判定し、その判定結果1080を出力する。
【0163】
さらに、判定装置1050は、マッチング割合と問診データ1070に基づいて歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、その判定結果1080を出力してもよい。問診データ1070としては、少なくとも頬部腫脹および頬部痛であるか否かのデータを含む。
【0164】
また、判定結果1080には、歯性上顎洞炎であるか否かの他にマッチング割合が示されていてもよい。
【0165】
以下に、本発明の第12実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図21を用いて説明する。
図21に示されている鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1100は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援することができる。
【0166】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1100は、X線CT装置110、画像処理装置320、データ算出装置340、および判定装置1150を備えている。鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1100のX線CT装置110、画像処理装置320、およびデータ算出装置340は、第4実施形態における、データの取得システム300のものと同じ機能を有している。
【0167】
判定装置1150は、歯性上顎洞炎か否かについての診断を支援するための基本パターンを有している。
【0168】
基本パターンの一例としては、第4実施形態で同定した上顎洞がa’であり、前頭洞がb1’であり、前篩骨洞b2’であり、後篩骨洞がc1’であり、蝶形骨洞がc2’である。
【0169】
判定装置1150は、基本パターンと、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合とのマッチング割合を算出し、マッチング割合が所定の値以上の場合、歯性上顎洞炎であると判定し、その判定結果1180を出力する。
【0170】
さらに、判定装置1150は、マッチング割合と問診データ1070に基づいて歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、その判定結果1180を出力してもよい。
【0171】
また、判定結果1180には、歯性上顎洞炎であるか否かの他にマッチング割合が示されていてもよい。
【0172】
以下に、本発明の第13実施形態における、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムを
図22を用いて説明する。
図22に示されている鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1200は、歯性上顎洞炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌についての診断を支援することができる。
【0173】
鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1200は、X線CT装置110、画像処理装置820、データ算出装置840、および判定装置1250を備えている。鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム1200のX線CT装置110、画像処理装置820、およびデータ算出装置840は、第9実施形態における、データの取得システム800のものと同じ機能を有している。
【0174】
判定装置1050は、歯性上顎洞炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌ついての診断を支援するための歯性上顎洞炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌について基本パターンを有している。以下に、基本パターンについて説明する。
【0175】
歯性上顎洞炎を判定するために、基本パターンは、第11実施形態の基本パターンを有している。
【0176】
また、片方だけでなく両方の洞に陰影が現れることを手がかりに、好酸球性副鼻腔炎を判定するために、予め好酸球性副鼻腔炎のCT画像から、区画化された5つ領域のそれぞれについて、その内部にできたものとの割合についての左右差dが同定されている。その場合、基本パターンは、さらに左右差dを有している。
【0177】
前篩骨洞および後篩骨洞には、上顎洞、前頭洞、および蝶形骨洞に比べて優位な陰影が生じることを手がかりに、好酸球性副鼻腔炎を判定するために、予め好酸球性副鼻腔炎のCT画像から、前篩骨洞および後篩骨洞の濃淡と上顎洞、前頭洞、および蝶形骨洞の濃淡との差eが同定されている。その場合、基本パターンは、さらに濃淡の差eを有している。
【0178】
また、上顎洞の石灰化を手がかりに、副鼻腔真菌症を判定するために、予め副鼻腔真菌症のCT画像から上顎洞の濃淡fが同定されている。その場合、基本パターンは、さらに上顎洞の濃淡fを有してる。
【0179】
また、片方の上顎洞にできる骨肥厚を手がかりに、副鼻腔真菌症を判定するために、予め副鼻腔真菌症のCT画像から上顎洞の周りの骨の左右差g1が同定されている。その場合、基本パターンは、さらに上顎洞の周りの骨の左右差g1を有している。
【0180】
また、片方の上顎洞にできる骨肥厚を手がかりに、内反性乳頭腫を判定するために、予め内反性乳頭腫のCT画像から上顎洞の周りの骨の左右差g2が同定されている。その場合、基本パターンは、さらに上顎洞の周りの骨の左右差g2を有している。
【0181】
また、片方の上顎洞にできる骨破壊を手がかりに、上顎癌を判定するために、予め上顎癌のCT画像から上顎洞の周りの骨の濃淡の左右差hが同定されている。その場合、基本パターンは、さらに上顎洞の周りの骨の濃淡の左右差hを有している。
【0182】
判定装置1250は、基本パターンa、b1、b2、c1、c2、d、e、f、g1、g2、およびhと、データ算出装置840から受け取った、上顎洞、前頭洞、前篩骨洞、後篩骨洞、および蝶形骨洞と、それらの中にできているもの領域との関係(例えば、平面上に切り取られた、それらの洞の面積とそれらの領域の面積の割合、またはそれらの洞の容積とそれらの領域の体積の割合)と、上記割合についての左右差と、前篩骨洞および後篩骨洞の濃淡と上顎洞、前頭洞、および蝶形骨洞の濃淡との差と、上顎洞の濃淡と、上顎洞の周りの骨の左右と、上顎洞の周りの骨の濃淡の左右差とのマッチング割合をそれぞれ算出し、その中でマッチング割合が高い鼻および副鼻腔疾患を判定し、その判定結果1280として出力してもよい。
【0183】
さらに、判定装置1250は、マッチング割合と問診データ1070に基づいて鼻および副鼻腔疾患を判定し、その判定結果1280を出力してもよい。
【0184】
問診データ1270としては、少なくとも鼻閉、鼻漏、嗅覚障害、頭重感、頭痛、頬部腫脹、頬部痛、鼻出血、および発症時期である。問診データは、さらに以前に上顎洞およびその周りについて手術をしたことがあるかないかを含んでもよい。さらに、問診データは、血中の好酸球数、喘息の有無、およびアスピリン過敏症の有無を含んでいてもよい。
【0185】
また、歯性上顎洞炎、酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌の全てのマッチング率が所定の基準を超えない場合、その鼻および副鼻腔疾患を慢性副鼻腔炎と判定してもよい。ただし、術後性頬部嚢胞など稀な疾患もあるので注意が必要である。
【0186】
また、判定結果1280には、鼻および副鼻腔疾患名に加え、歯性上顎洞炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、内反性乳頭腫、および上顎癌のそれぞれのマッチング割合が示されていてもよい。
【0187】
頭部用CT画像を撮影するCT装置は、体全体のCT画像を撮影するCT装置比べて安価であり、離島のような遠隔地であっても、そのような装置を有する病院や診療所が存在するが、鼻および副鼻腔疾患について専門にする医師は限られる。
【0188】
しかし、
図16に示される、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム600のX線CT装置110が遠隔地の病院に配置されており、鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム600の画像処理装置220、データ算出装置240および学習モデルが別の場所に配置されている場合であっても、第7実施形態を実施することができる。
【0189】
例えば、遠隔地のX線CT装置110が取得したCT画像がインターネットなどのネットを介して、別の場所の画像処理装置220に送信される。別の場所の画像処理装置220が、それらのCT画像を画像処理し、データ算出装置240に送り、データ算出装置240が、画像処理したデータを受け取り、区画化された領域の大きさと内部にできたものの大きさの割合を算出し、学習モデル装置650に送り、学習モデル装置650が、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果680が、インターネットなどのネットを介して遠隔地の病院のパソコンに送られ、遠隔地の病院の医師がパソコンとつながれた表示装置に表示される判定結果680を参考に歯性上顎洞炎か否かを鑑別することができる。
【0190】
また、遠隔地の病院の医師が患者の問診データを集め、例えば、遠隔地の病院のパソコンからそれらの問診データがインターネットなどのネットを介して、学習モデル装置650に送られ、データ算出装置240から受け取ったそれらの割合と問診データ670を学習モデルに入力し、歯性上顎洞炎であるか否かを判定し、判定結果680が、インターネットなどのネットを介して遠隔地の病院のパソコンに送られてもよい。
【0191】
同様に、X線CT装置110が遠隔地の病院に配置されていたとしても、遠隔地の病院は、第8および10~13実施形態における鼻および副鼻腔疾患の診断支援システムからの判定結果などを受け取ることができ、遠隔地の病院の医師は、それらを参考に鼻および副鼻腔疾患を鑑別することができる。
【符号の説明】
【0192】
100 画像合成システム
110 X線CT装置
200 データの取得システム
220、320、820 画像処理装置
221、321、821 画像選択部
222、322、822 画像切出部
224、324、824 領域特定部
240、340、840 データ算出装置
460 歯性上顎洞炎のデータ
470、670、870 問診データ
600、700、900 鼻および副鼻腔疾患の診断支援システム
650、750 学習モデル装置
680、780 判定結果