(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050759
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ビタミンKと抗凝固剤の併用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240403BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/5377
A61K31/4439
A61P21/00
A61P7/02
A61P43/00
A61K31/4545
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014647
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2021554988の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/817,037
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523178178
【氏名又は名称】ナットウファーマ アーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】リック ファン ゴルプ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】許容できない血液凝固および/またはそのリスクの増加を特徴とする状態を治療または防止する方法を提供する。
【解決手段】それを必要とする対象にビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤の組み合わせを投与することを含み、少なくとも1つの抗凝固剤は、対象の遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を阻害するように構成された第一抗凝固剤を有する、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
許容できない血液凝固および/またはそのリスクの増加を特徴とする状態を治療または
防止する方法であって、それを必要とする対象にビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤
を含む組み合わせを投与することを含み、前記少なくとも1つの抗凝固剤は、前記対象の
遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を阻害す
るように構成された第一抗凝固剤を含む、方法。
【請求項2】
前記第一抗凝固剤はリバーロキサバンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一抗凝固剤はアピキサバンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一抗凝固剤はダビガトラン・エテキシレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組み合わせは、錠剤、カプセル、ソフトゲル、グミ、シロップ、静脈内投与剤、お
よびこれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記状態は、肺塞栓症、動脈細動、関節置換、深部静脈血栓症、およびこれらの組み合
わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ビタミンK2は約10~2000μg/日の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ビタミンK2は約50~1000μg/日の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ビタミンK2を約150~500μg/日の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リバーロキサバンは約15~20mg/日の量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記アピキサバンは約2.5~5mg/日の量で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ダビガトラン・エテキシラートは約150~300mg/日の量で投与される、請求項4に
記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせはビタミンK相反抗凝固剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ビタミンK相反抗凝固剤はワルファリンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象は酸化ストレス、許容できないほど低いATP産生、許容できないほど低い血流
、またはこれらの組み合わせ患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
遅発性筋肉痛を治療または防止する方法であって、それを必要とする対象に、ビタミン
K2と少なくとも1つの抗凝固剤を含む組み合わせを投与することを含む、方法。
【請求項17】
ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤の組み合わせを含む製剤であって、前記少なく
とも1つの抗凝固剤は、対象の遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合
体に結合した第Xa因子を阻害するように構成されている第一抗凝固剤を含む、製剤。
【請求項18】
前記第一抗凝固剤は、リバーロキサバン、アピキサバン、およびダビガトラン・エテキ
シレートからなる群から選択される、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記組み合わせはビタミンK相反抗凝固剤を含まない、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
許容できない血液凝固および/またはそのリスクの増加を特徴とする状態の治療または
防止に使用するための組成物であって、それを必要とする対象に、ビタミンK2と少なくと
も1つの抗凝固剤を含む組成物を投与することを含み、前記少なくとも1つの抗凝固剤は、
前記対象の遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因
子を阻害するように構成された第一抗凝固剤を含む、組成物。
【請求項21】
前記第一抗凝固剤はリバーロキサバンである、請求項20に記載の使用のための組成物
。
【請求項22】
前記第一抗凝固剤はアピキサバンである、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記第一抗凝固剤はダビガトラン・エテキシレートである、請求項20に記載の使用の
ための組成物。
【請求項24】
前記組成物は、錠剤、カプセル、ソフトゲル、グミ、シロップ、静脈内投与剤、および
これらの組み合わせからなる群から選択される形態である、請求項20に記載の使用のた
めの組成物。
【請求項25】
前記状態は、肺塞栓症、動脈細動、関節置換、深部静脈血栓症、およびこれらの組み合
わせからなる群から選択される、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記ビタミンK2は約10~2000μg/日の量で投与される、請求項20に記載の使用のため
の組成物。
【請求項27】
前記ビタミンK2は約50~1000μg/日の量で投与される、請求項20に記載の使用のため
の組成物。
【請求項28】
前記ビタミンK2は約150~500μg/日の量で投与される、請求項20に記載の使用のため
の組成物。
【請求項29】
前記リバーロキサバンは約15~20mg/日の量で投与される、請求項21に記載の使用の
ための組成物。
【請求項30】
前記アピキサバンは約2.5~5mg/日の量で投与される、請求項22に記載の使用のため
の組成物。
【請求項31】
前記ダビガトラン・エテキシレートは約150~300mg/日の量で投与される、請求項23
に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
ビタミンK相反抗凝固剤を含まない、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
前記ビタミンK相反抗凝固剤はワルファリンを含む、請求項32に記載の使用組成物。
【請求項34】
前記対象は、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産生、許容できないほど低い血
流、またはこれらの組み合わせを患っている、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
遅発性筋肉痛の治療または防止に使用するための組成物であって、それを必要とする対
象に、ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤を含む組成物を投与することを含む、組成
物。
【請求項36】
ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤の組み合わせを含む製剤であって、前記少なく
とも1つの抗凝固剤は、対象の遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合
体に結合した第Xa因子を阻害するように構成されている第一抗凝固剤を含む、製剤。
【請求項37】
前記第一抗凝固剤は、リバーロキサバン、アピキサバン、およびダビガトラン・エテキ
シラートからなる群から選択される、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記組み合わせはビタミンK相反抗凝固剤を含まない、請求項35に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【関連アプリケーションへの相互参照】
【0001】
本出願は、2019年3月12日に出願された米国仮特許出願第62/817,037号の優先権を主張
するものであり、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ビタミンKと特定の抗凝固剤を組み合わせて使用して、許容できない血液凝
固を防ぐ;対象の体内の血栓の数および/もしくは重症度を低減させるおよび/もしくは
なくす;酸化ストレスを防ぐ、減少させるおよび/もしくは除去する;対象のATP産生を
増加させる;許容できないほど低いATP産生を防ぐ;対象の血流を増加させる;血流低下
を防ぐ;またはこれらの組み合わせを対象とする。
【背景技術】
【0003】
心房細動(Afib)は、不整脈および/または頻脈を特徴とする重篤な状態である。Afib
の症状としては、胸の粗動または「鼓動」が挙げられるが、該状態は大抵無症状である。
Afibの結果、心臓を含む身体への送血量が減少するおよび/または予測不能になることが
多く、これは酸化ストレス、筋肉疲労、および潜在的には心臓発作を引き起こし得る。さ
らに、Afibを患っている対象は、心臓で血栓が形成され、それが脳を含む身体の他の領域
に移動するリスクが高い可能性がある。
【0004】
Afibの治療には、従来、抗血栓薬が使用されてきたが、斯かる治療は、一般的に既存の
血栓を減らすことを目的とするのみである。そのため、血流低下による酸化ストレスなど
、Afibの他の症状を治療することや、血流低下およびATP産生低下など、Afibで観察され
るものと同様の影響が表れる可能性のある他の状態を治療することが、当技術分野ではま
だ必要とされている。さらに、Afibは無症状のことが多いため、最も効果的な治療であれ
ば、血栓が防止されかつ酸化ストレスは軽減されるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、許容できない血液凝固、血流低下、酸化ストレス、許容できないほど低いAT
P産生、これらの組み合わせ、および/もしくはそれらの症状を呈しやすいならびに/ま
たは呈している対象を治療する方法を目的とし、該方法は、それを必要とする対象に、少
なくとも1つの抗凝固剤とビタミンKの組み合わせを投与することを含む。いくつかの態様
によると、対象は、許容できない血液凝固、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産
生、および/または血流低下に起因する、またはその原因である状態を患っている可能性
がある。いくつかの態様によると、少なくとも1つの抗凝固剤およびビタミンKの量は、許
容できない血液凝固を防ぐ;対象の体内の血栓の数および/または重症度を低減させるお
よび/もしくはなくす;酸化ストレスを防ぐ、減少させる、および/もしくは除去する;
対象のATP産生を増加させる;許容できないほど低いATP産生を防ぐ;対象の血流を増加さ
せる;血流の低下を防ぐ;またはこれらの組み合わせに十分である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例I(a)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図2】実施例I(b)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図3】実施例I(c)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図4】実施例I(d)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図5】実施例I(e)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図6】実施例IIで述べる研究の結果を示す図である。
【
図7】実施例III(a)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図8】実施例III(b)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図9】実施例IV(a)で述べる研究の結果を示す図である。
【
図10】実施例IV(b)で述べる研究の結果示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、許容できない血栓形成、血流低下、酸化ストレス、許容できないほど低いAT
P産生、これらの組み合わせ、および/またはそれらの症状に陥りやすい、および/また
は患っている対象を治療する方法であって、その方法は、それを必要とする対象に、少な
くとも1つの抗凝固剤とビタミンKの組み合わせを投与することを含む。いくつかの態様で
は、対象は、許容できない血栓形成、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産生、お
よび/または血流低下に起因する、および/またはその原因となる状態を患っている可能
性がある。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝固剤およびビタミンKの量は、許容
できない血液凝固を防ぐ;対象の体内の血栓の数および/または重症度を低減させるおよ
び/またはなくす;酸化ストレスを防ぐ、減らすおよび/または除去する;対象のATP産
生を増加させる;許容できないほど低いATP産生を防ぐ;対象の血流を増加させる;血流
の低下を防ぐ;またはこれらの組み合わせに十分である。
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、許容できない血液凝固を防止する方法、ならびに/ま
たは許容できない血液凝固を低減させるおよび/もしくは除去する方法を対象とする。本
明細書で使用する場合、「許容できない血液凝固」という語句は、限定するわけではない
が、脳卒中ならびに/または筋肉および/もしくは他の組織の損傷を含む、対象のもつ望
ましくない合併症リスクを高める血液凝固を指す。例えば、許容できない血栓とは、心臓
、脚の組織(脚の筋肉を含む)、肺、およびこれらの組み合わせにおいて形成される、お
よび/またはそれらに移動する血栓など、対象のもつ望ましくない合併症リスクを高める
、対象の身体のある領域に形成される、および/またはそれらに移動する血栓を指し得る
。
【0009】
いくつかの態様では、許容できない血液凝固は、少なくとも一部が心房細動(Afib)、
すなわち不整脈および/または頻脈に起因している可能性がある。Afibを患っている対象
は、心臓で血栓が形成されるリスクが高く、それが脳を含む身体の他の領域に移動する可
能性がある。いくつかの態様では、本明細書で特許請求する方法の恩恵を享受し得る対象
には、Afib患者が含まれる。本方法は、Afibの症状を、例えば、対象が脳卒中を患うリス
クならびに/または衰弱、失語、障害、および/もしくは死亡を含むその影響を低減およ
び/または排除することができる。
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、対象における許容できない低血流を防止、低減、およ
び/または排除する方法を対象とする。許容できないほど低い血流は、本明細書に記載さ
れているような許容できない血液凝固に少なくとも部分的に起因する場合がある。例えば
、心臓、脚、および/もしくは肺で形成され、ならびに/またはそれらに移動する血栓は
、組織への血流を低下および/または遮断する可能性がある。対象の体内の血栓を減少お
よび/または除去することにより、血流が増加する可能性がある。対象の体内で許容でき
ない血液凝固を防ぐことにより、対象の許容できないほど低い血流を防ぐことができる。
【0011】
いくつかの態様では、本開示は、酸化ストレスを防止、低減、および/または除去する
方法を対象とする。本明細書で使用する場合、「酸化ストレス」という語句は、対象の全
身的な活性酸素種の発現と、反応性中間体の解毒および/または結果として生じる損傷を
修復する対象の能力との間の不均衡を意味する。この不均衡は、限定するわけではないが
、細胞の損傷(細胞に含まれるタンパク質、脂質、およびDNAの損傷を含む)、痛み(例
えば、筋肉痛)、痛み(例えば、筋痛)、慢性疲労、脱力感、硬直、およびこれらの組み
合わせを含む、対象の望ましくない合併症リスクを増加させることを理解すべきである。
いくつかの態様では、酸化ストレスは、対象の体内の高レベルのフリーラジカル、特に過
酸化物などの活性酸素種に対応し得る。いくつかの態様では、本方法は、対象のフリーラ
ジカルを低減および/または除去することができる。
【0012】
いくつかの態様では、酸化ストレスは、本明細書に記載されているように、許容できな
い血液凝固および/または許容できない血流低下に少なくとも部分的に起因する可能性が
ある。例えば、心臓、脚、および/または肺で形成される、および/またはそれらに移動
する血栓は、本明細書で説明したように、組織への血流を低下および/または遮断する可
能性がある。この許容できないほど低い血流は、組織に供給される酸素の減少(すなわち
、低酸素症)をもたらし、これは次に、フリーラジカルの生成および/またはフリーラジ
カルを介した組織の損傷を引き起こす可能性がある。さらに、高レベルの活性酸素種は、
筋力低下や疲労の原因となる収縮不全を促す可能性がある。
【0013】
いくつかの態様では、酸化ストレスは、筋肉細胞によるエネルギー産生が損なわれてい
る状態に少なくとも部分的に起因している可能性があり、これには、限定するわけではな
いが、心肺疾患が含まれる。いくつかの態様では、本明細書で特許請求する方法から利益
を得ることができる対象には、心肺疾患患者が含まれ、その例としては、限定するわけで
はないが、冠動脈心疾患、脳卒中、一過性の虚血性発作、末梢動脈疾患、および大動脈疾
患が挙げられる。
【0014】
いくつかの態様では、本開示は、許容できないほど低いアデノシン三リン酸(ATP)産
生を防止、低減、および/または排除する方法を対象とする。本明細書で使用する場合、
「許容できないほど低いATP産生」という語句は、対象の望ましくない合併症リスクを高
めるATPレベルを対象においてもたらすATP産生を指す。いくつかの態様では、許容できな
いほど低いATP産生は、本明細書に記載されているように、酸化ストレスに少なくとも部
分的に起因する可能性がある。例えば、細胞内のミトコンドリアは、細胞のエネルギー源
として、酸化的リン酸化によりATPの生成を担うことが知られている。酸化ストレスは、A
TP生成を阻害し、それによって許容できないほど低いATP生成をもたらす可能性がある。
いくつかの態様では、本開示の方法は、必要とする対象においてATP産生を増加させるこ
とができる。いくつかの態様では、対象における酸化ストレスを防止、低減、および/ま
たは除去することにより、対象における許容できないほど低いATP産生を防止することが
できる。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、許容できない血液凝固および/またはそのリスクの増加
を特徴とする状態の治療または防止に使用するための組成物であって、ビタミンK2と少な
くとも1つの抗凝固剤を含む前記組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み
、前記少なくとも1つの抗凝固剤は、前記対象における遊離した第Xa因子および/または
プロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を阻害するように構成された第一抗凝固剤
を含む、組成物を提供する。
【0016】
好ましくは、前記第一抗凝固剤はリバーロキサバンである。
【0017】
好ましくは、前記第一抗凝固剤はアピキサバンである。
【0018】
好ましくは、前記第一抗凝固剤はダビガトラン・エテキシラートである。
【0019】
好ましくは、前記組成物は、錠剤、カプセル、ソフトゲル、グミ、シロップ、静脈内投
与剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される形態である。
【0020】
好ましくは、前記状態は、肺塞栓症、動脈細動、関節置換、深部静脈血栓症、およびこ
れらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
好ましくは、ビタミンK2は、約10~2000μg/日の量で投与される。
【0022】
好ましくは、ビタミンK2は、約50~1000μg/日の量で投与される。
【0023】
好ましくは、ビタミンK2は約150~500μg/日の量で投与される。
【0024】
好ましくは、リバーロキサバンは、約15~20mg/日の量で投与される。
【0025】
好ましくは、アピキサバンは約2.5~5mg/日の量で投与される。
【0026】
好ましくは、ダビガトラン・エテキシラートは約150~300mg/日の量で投与される。
【0027】
好ましくは、前記組成物は、ビタミンK相反抗凝固剤を含まない。
【0028】
好ましくは、ビタミンK相反抗凝固剤は、ワルファリンを含む。
【0029】
好ましくは、前記対象は、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産生、許容できな
いほど低い血流、またはこれらの組み合わせを患っている。
【0030】
本発明のさらなる態様は、ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤を含む組成物を、そ
れを必要とする対象に投与することを含む、遅発性筋肉痛の治療または防止に使用するた
めの組成物を提供する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤の組み合わせを含み
、前記少なくとも1つの抗凝固剤は、対象における遊離した第Xa因子および/またはプロ
トロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を阻害するように構成されている第一抗凝固剤
を含む、製剤を提供する。
【0032】
好ましくは、前記第一抗凝固剤は、リバーロキサバン、アピキサバン、およびダビガト
ラン・エテキシラートからなる群から選択される。
【0033】
好ましくは、この組み合わせは、ビタミンK相反抗凝固剤を含まない。
【0034】
本開示は、本明細書に記載されているように、許容できない血液凝固、血流低下、酸化
ストレス、許容できないほど低いATP産生、これらの組み合わせに陥りやすい、および/
または患っている対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に、少なくとも1
つの抗凝固剤とビタミンKの組み合わせを投与することを含む方法を対象とする。
【0035】
本開示の組み合わせは、ビタミンKを含む。当業者は、ビタミンKおよびその誘導体は、
式1の1つまたは複数の化合物およびその薬学的または栄養学的に許容される塩を指すこと
を理解するであろう。
【0036】
【0037】
式中、Rは、ポリイソプレノイド残基、エステル、エーテル、およびチオール付加物を
含む任意の共有結合した有機基であってもよい。いくつかの態様では、組み合わせに含ま
れるビタミンKは、式2を有する化合物であってもよい。
【0038】
【0039】
式中、nは1から12の整数であり、破線は二重結合の任意の存在を示す。
【0040】
いくつかの態様では、組み合わせに含まれるビタミンKは、ビタミンK1、すなわちフィ
ロキノンおよび/またはその水素化形態ジヒドロフィロキノン、ビタミンK2、例えば、短
鎖メナキノン(例えば、MK-1、MK2、MK-3、およびMK-4)ならびに長鎖メナキノン(例え
ば、MK-5、MK-6、MK-7、MK-8、およびMK-9)からなる群から選択されるメナキノン、また
はこれらの組み合わせであってもよい。当業者であれば、メナキノンはMK-nと略記され、
Mはメナキノンを、KはビタミンKを、nはイソプレノイド側鎖の残基数を表すことを理解し
よう。
【0041】
本開示の態様に従って有用であり得るビタミンKの供給源としては、限定するわけでは
ないが、天然供給源(例えば、野菜抽出物、脂肪、および油)に由来するフィロキノン、
合成フィロキノン、合成ビタミンK3(すなわち、メナジオン)、合成MK-4、MK-5、MK-6、
MK-7、MK-8、MK-9、MK-10、MK-11、MK12、およびMK-13を含む異なる形態のビタミンK2、
納豆(すなわち、発酵させた大豆から調製された食品)、発酵食品、乳製品、ならびにこ
れらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
本開示の組み合わせは、少なくとも1つの抗凝固剤をさらに含む。いくつかの態様では
、「抗凝固剤」とは、対象における血液凝固プロセスを操作する薬剤を指し、特に、抗血
液凝固効果をもたらす薬剤を指す。本開示のいくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝
固剤は、遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子
を阻害する抗凝固剤を含む。第Xa因子の阻害は、血液凝固カスケードの内在性および外在
性経路を遮断し、トロンビンの形成および血栓の発生の両方を阻害することができる。本
開示に従って有用な抗凝固剤の例としては、リバーロキサバン、アピキサバン、およびダ
ビガトラン・エテキシラートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
いくつかの態様では、前記組み合わせは、本明細書で「ビタミンK相反抗凝固剤」とも
いう、ビタミンKとの使用に相反する抗凝固剤を含まない場合がある。ビタミンKと相反す
る抗凝固剤には、ビタミンKと一緒に投与すると許容できない作用をもたらす抗凝固剤ク
ラスが含まれる。例えば、いくつかのクラスの抗凝固剤は、カルシウム依存性凝固因子II
、VII、IX、および/もしくはX、ならびに/または調節因子であるプロテインC、プロテ
インS、および/もしくはプロテインZの生物学的に活性な形態のビタミンK依存性合成を
阻害することによって機能する。したがって、そのような抗凝固剤と一緒にビタミンKを
投与すると、血液凝固プロセスを希望通りに操作することが制限され得る。ビタミンKと
相反する抗凝固剤の例としては、ワルファリン、クマテトラリル、フェンプロクモン、ア
セノクマロール、ジクマロール、チオクロマロール、ブロディファクム、およびこれらの
組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本開示の方法は、第一の量のビタミンKを、第二の量の少なくとも1つの抗凝固剤と組み
合わせて投与することを含み得る。本明細書で使用される「組み合わせ」または「組み合
わせて」は、同時および/または連続的な投与を指すことがあることを理解すべきである
。例えば、本方法は、第一の量のビタミンKを投与した後に、第一の量のビタミンKが体内
で活性がある(または、活性化する)時間の前またはその間に、第二の量の少なくとも1
つの抗凝固剤を投与すること、または、その逆を含み得る。いくつかの態様では、本方法
は、第一の量のビタミンKを第二の量の少なくとも1つの抗凝固剤と同時にまたはほぼ同時
に投与することを含み得る。
【0045】
第一および第二の量は、1日1回または複数回の用量で投与することができる。当業者で
あれば、「用量」とは、特定の時点で投与される薬剤の量を指すことを理解するであろう
。いくつかの態様では、第一の量のビタミンKは、1日1回の用量で提供されてもよいし、1
日に複数回の用量の過程で提供されてもよい。例えば、第一の量のビタミンKは、1日1回
、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上の用量で投与されてもよく、各用量は、1つまた
は複数の他の用量に対して、同じまたは異なる量のビタミンKを含む。同様に、第二の量
の少なくとも1つの抗凝固剤は、1日1回、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上の用量で
投与されてもよく、各用量は、1つまたはそれ以上の他の用量に対して、同じまたは異な
る量の少なくとも1つの抗凝固剤を含む。いくつかの態様では、ビタミンKの各用量は、独
立して、少なくとも1つの抗凝固剤の用量と同時にまたはそれに連続して投与することが
できる。いくつかの態様では、ビタミンKの各用量は、少なくとも1つの抗凝固剤の用量と
同時に、またはほぼ同時に投与されてもよい。
【0046】
ビタミンKの第一の量は、治療上有効な量であり得る。いくつかの態様では、治療上有
効な量のビタミンKは、少なくとも1つの抗凝固剤と組み合わせて投与された場合に、対象
の体内の血栓の数および/または重症度を低減させるおよび/またはなくし、酸化ストレ
スを低減および/または除去し、対象のATP産生を増加させ、対象の血流を増加させ、ま
たはこれらの組み合わせを行うビタミンKの量を指し得る。
【0047】
いくつかの態様では、ビタミンKの治療上有効な量とは、少なくとも1つの抗凝固剤の抗
凝固能力を高め、その結果、少なくとも1つの抗凝固剤が、ビタミンKなしで投与された場
合に観察される抗凝固効果よりも高い抗凝固効果をもたらすビタミンKの量を指し得る。
代替的または追加的に、ビタミンKの治療上有効な量とは、少なくとも1つの抗凝固剤の治
療上有効な量を減らすビタミンKの量であり得る。特に、ビタミンKの治療上有効な量とは
、許容できない血液凝固を防ぐ;対象の体内の血栓の数および/もしくは重症度を低減さ
せるおよび/もしくはなくす;酸化ストレスを防ぐ、減らす、および/もしくは除去する
、対象のATP産生を増加させる;許容できないほど低いATP産生を防止する;対象の血流を
増加させる;血流低下を防止する;またはこれらの組み合わせを行うのに必要な少なくと
も一つの抗凝固剤の量が、ビタミンKを投与しない場合に対象に同等または同じ効果を提
供するために必要な少なくとも1つの抗凝固剤の量と比較した場合に少なくなる、量であ
り得る。代替的または追加的に、治療上有効な量のビタミンKは、血液凝固因子を活性化
することによって大量出血を減少および/もしくは防止するのに十分な量、ならびに/ま
たは許容可能な骨代謝に必要な2つの骨基質タンパク質の許容可能なカルボキシル化をも
たらすのに十分な量のビタミンKを指し得る。
【0048】
いくつかの態様では、治療上有効な量のビタミンKは、約10~2000μg/日、任意に約50
~1000μg/日、任意に約150~500μg/日の投与量に相当し得る。いくつかの態様では、治
療上有効な量のビタミンKは、約10~16000μg/週、任意に約70~14000μg/週、任意に約3
50~7000μg/週の投与量に相当し得る。
【0049】
少なくとも1つの抗凝固剤の第二の量は、治療上有効な量であり得る。いくつかの態様
では、少なくとも1つの抗凝固剤の治療上有効な量とは、ビタミンKと組み合わせて投与さ
れた場合に、許容できない血液凝固を防止する;対象の体内の血栓の数および/もしくは
重症度を低減させるおよび/もしくはなくす;酸化ストレスを防止、低減および/もしく
は排除する;対象のATP産生を増加させる;許容できないほど低いATP産生を防止する;対
象の血流を増加させる;血流の低下を防止する;またはこれらの組み合わせを行う、少な
くとも1つの抗凝固剤の量を指し得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝固剤の
治療上有効な量は、少なくとも1つの抗凝固剤がビタミンKなしで投与された場合に許容で
きる抗凝固効果をもたらすのに必要な少なくとも1つの抗凝固剤の量よりも少なくてもよ
い。
【0050】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝固剤の治療上有効な量は、約5~30mg/日、
任意に約15~20mg/日の投与量に相当し得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝
固剤の治療上有効な量は、約1~10mg/日、任意に約2.5~5mg/日の投与量に相当し得る。
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗凝固剤の治療上有効な量は、約50~400mg/日、
任意で約150~300mg/日の投与量に相当し得る。本明細書に記載されている少なくとも1つ
の抗凝固剤の治療上有効な量は、組み合わせにおける抗凝固剤の総量を指しす場合もある
し、組み合わせにおける少なくとも1つの抗凝固剤の1つの量を指す場合もあることを理解
されたい。
【0051】
本発明の併用療法では、相乗効果が得られる、つまり、どちらか一方の療法のみの場合
よりも効果が大きい(または、異なる効果が得られる)と考えられる。
【0052】
いくつかの態様では、組み合わせは、経腸、非経口、局所、またはこれらの組み合わせ
で投与されてもよい。経腸投与には、経口投与、頬側投与、腸内投与、および胃内投与が
含まれることを理解されたい。非経口投与には、組み合わせが腸経由の吸収を伴わずに血
流に吸収される、任意の投与形態が含まれる。非経口投与の例としては、筋肉内投与、静
脈内投与、腹腔内投与、眼内投与、皮下投与、関節内投与、およびこれらの組み合わせが
挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本方法は、組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの態
様では、対象は、Afibおよび/または心肺疾患を患っていてよい。いくつかの態様では、
対象は、許容できない血液凝固、血流低下、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産
生、これらの組み合わせ、および/またはそれらの症状を患っていてよい。本方法は、Af
ibおよび/または心肺疾患を患っている患者において、許容できない血液凝固、血流低下
、酸化ストレス、許容できないほど低いATP産生、これらの組み合わせ、および/または
それらの症状を防止および/または治療するために使用することができる。本明細書に記
載の治療から利益を得ることができる対象は、追加的または代替的に、肺塞栓症、関節置
換(例えば、人工股関節置換もしくは膝関節置換)、深部静脈血栓症、またはこれらの組
み合わせを呈している者であってもよい。本明細書に記載の治療方法から利益を得ること
ができる他の対象は、運動、例えば、偏心運動の結果として筋肉痛を患っている、および
/または、筋肉痛になりやすい対象であってもよい。例えば、いくつかの態様では、本方
法は、遅発性筋肉痛を患っている対象に組み合わせを投与することを含み得る。いくつか
の態様では、本方法は、運動の前に対象に組み合わせを投与することを含み得る。組み合
わせは、運動の1時間前~50週間前までの期間、任意に運動の約1日前~40日前までの期間
、任意に運動の約1日前~7日前までの期間、対象に投与されてもよい。対象は、ヒト、愛
玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、ラット、マウス)、農場動物(例え
ば、ヒツジ、ウマ、ウシ)などの哺乳類であってもよい。
【0054】
本開示は、本明細書に記載の組み合わせを含む組成物も対象とする。前記組成物は、錠
剤(コーティングされたものまたはコーティングされていないもの)、カプセル(ハード
またはソフト)、スプレー、ソフトゲル、グミ、糖剤、トローチ剤、経口溶液、懸濁液、
分散液、シロップ、滅菌非経口製剤、および/またはこれらの組み合わせの形態であって
もよい。組成物は、本明細書に記載される1つまたは複数の形態を含んでいてもよく、各
形態は、組み合わせの1つまたは両方の成分(すなわち、ビタミンKおよび少なくとも1つ
の抗凝固剤)を含むことを理解すべきである。
【0055】
組成物は、さらに薬学的に許容される添加剤、担体、賦形剤、またはこれらの組み合わ
せを含んでいてもよい。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、
リン酸カルシウム、およびリン酸ナトリウムなどの希釈剤;コーンスターチまたはアルギ
ン酸などの造粒・崩壊剤;デンプンゼラチンまたはアカシアなどの結合剤;発泡剤;ステ
アリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクなどの潤滑剤;ならびにこれらの組
み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加物の例としては、保存
料、キレート剤、発泡剤、天然および人工甘味料、香料、着色料、味覚マスキング剤、酸
味料、乳化剤、増粘剤、懸濁剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、およびこれらの組み合わ
せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
組成物は、栄養強化食品または飲料として提供されてもよい。栄養強化食品および飲料
の例としては、ジュース飲料、乳飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、ミネラルウォーター、
大豆飲料、ホットチョコレート、モルト飲料、ビスケット、パン、クラッカー、菓子、チ
ョコレート、チューインガム、マーガリン、スプレッド、ヨーグルト、朝食用シリアル、
スナックバー、食事代替品、プロテインパウダー、デザート、医療用栄養経管フィード、
栄養補助食品、およびこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示は、本明細書に記載の組成物を、本明細書に記載の組み合わせを投与するための
指示書とともに含むキットも対象とする。
【0058】
この書面による説明は、好ましい実施形態を含む本発明を開示するために、また、任意
のデバイスまたはシステムを作成および使用し、任意の組み込まれた方法を実行すること
を含め、当業者が本発明を実施できるようにするために、例を使用する。本発明の特許可
能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含み得る。そ
のような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの文言とは異なることのない構造要素を有
する場合、または、特許請求の範囲の文字通りの文言との違いが実質的でなく、同等の構
造要素を含む場合は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。記載された様々な実
施形態からの態様、およびそのような各態様に対する他の既知の等価物は、本願の原理に
従った追加の実施形態および技術を構築するために、当業者によって混合および適合させ
ることができる。
【0059】
本明細書に記載の態様について、上記の例示的な態様に関連して説明してきたが、既知
のものであれ、または現在予期されていないものであれ、様々な代替物、修正、変形、改
良、および/または実質的な同等物が、少なくとも通常の技術を有する者には明らかにな
る可能性がある。したがって、上述の例示的な態様は、限定的なものではなく例示的なも
のであることが意図されている。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な
変更を行うことができる。したがって、本開示は、すべての既知または後に開発された代
替物、修正、変形、改良、および/または実質的な同等物を包含することを意図している
。
【0060】
単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り「1つおよび1つだけ」を意味する
ものではなく、「1つまたは複数」を意味するものである。本開示全体を通して記載され
る様々な態様の要素に対する、当業者に知られている、または後に知られるようになる構
造的および機能的な同等物はすべて、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。さら
に、本明細書で開示されているものは、一般に開放することを意図したものではない。
【0061】
さらに、本明細書では、「例」という言葉を、「例、実例、または例示として供す」を
意味するために使用する。本明細書で「例」として記載されている任意の態様は、必ずし
も他の態様よりも好ましいまたは有利であると解釈されるものではない。特に明記されて
いない限り、「いくつかの」という用語は、1つまたは複数を意味する。「A、B、またはC
のうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、ならびに「A、B
、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせは、A、B、および/またはCの
任意の組み合わせを含み、Aの倍数、Bの倍数、またはCの倍数を含んでいてもよい。具体
的には、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、なら
びに「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせは、Aのみ、Bのみ
、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCであってもよく、その
ような組み合わせはいずれもA、B、またはCの1つまたは複数の要素を含んでいてもよい。
【0062】
本明細書で用いる場合、「約」および「およそ」という用語は、当業者が理解している
ものに近いことと定義される。非限定的な一実施形態では、用語「約」および「およそ」
は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内
であると定義される。
【実施例0063】
実施例I(a):血管平滑筋細胞(VSMC)におけるビタミンKの取り込み
血管平滑筋細胞(VSMC)を80%コンフルエントになるまで培養した後、培地を1μMのビ
タミンK2(MK-7)または1μMのビタミンK1を補充した培地に変えた。細胞を24時間培養し
、0、1、2、4、8、および24時間後の時点で細胞を収集した。細胞を溶解し、HPLCでビタ
ミンKの含有量を測定した。
図1に示すように、1μMのビタミンK2(MK-7)にさらされたVS
MCで観察されたビタミンKの取り込み量は、1μMのビタミンK1にさらされたVSMCで観察さ
れたビタミンKの取り込み量よりも優れていた。
【0064】
実施例I(b):VSMCにおける酸化ストレス
細胞内の活性酸素種のレベルは、2',7'-ジクロロフルオレセインジアセテート(DCFDA
)の蛍光色素2',7'-ジクロロフルオレセイン(DCF)への変換を測定することで測定でき
ることが知られている。DCFDAに晒した細胞が発する蛍光は、酸化されたDCFDAからDCFへ
の量に正比例する。
【0065】
本研究を行うために、96ウェルプレートにVSMC(10,000細胞/ウェル)を蒔き、一晩放
置して接着させた。次に、細胞を20μM DCFDAとともに1時間インキュベートした。その後
、培地を10μMのビタミンK2(MK-7)を補充した培地に変えた。細胞内の酸化ストレスを
可視化するために、6時間蛍光を測定し、蛍光強度を細胞数で正規化した。
図2に示すよう
に、ビタミンK2(MK-7)はVSMCの酸化ストレスを明らかに低減させた。
【0066】
実施例I(c):VSMCにおけるワルファリン誘発性酸化ストレス
本研究は、ビタミンK2(MK-7)がワルファリン誘発性酸化ストレスを低減させるか否か
を調べるために行った。本研究を行うために、96ウェルプレートにVSMC(10,000細胞/ウ
ェル)を蒔き、一晩放置して接着させた。次に、細胞を100μMのワルファリンとともに24
時間インキュベートした。翌日、20μMのDCFDAを1時間かけて細胞に添加した。その後、
細胞を通常の培地(ベースライン)、ビタミンK2(MK-7)、またはワルファリンとともに
5時間インキュベートした。蛍光を測定し、蛍光強度を細胞数で正規化した。
【0067】
図3に示すように、ビタミンK2(MK-7)は、VSMCの正常な酸化ストレスを低減させるだ
けでなく、ワルファリンによる酸化ストレスを相殺した。
【0068】
実施例I(d):VSMCにおけるワルファリン誘発性酸化ストレス
本研究では、ビタミンK拮抗薬であるワルファリンを用いてビタミンKの代謝をブロック
した。本研究は、ビタミンKの代謝を阻害することで、細胞内に酸化ストレスが生じるか
否かを調べるために行った。本研究を行うために、96ウェルプレートにVSMC(10,000細胞
/ウェル)を蒔き、一晩放置して接着させた。次に、細胞を20μMのDCFDAとともに1時間イ
ンキュベートした。その後、10~100μMの異なる濃度のワルファリンを補充した培地に変
え、6時間かけて蛍光強度を測定した。蛍光は細胞数で正規化した。
図4は、本研究の結果
を示しており、具体的には、ワルファリンが細胞内酸化ストレスを引き起こしたことを示
している。
【0069】
実施例I(e):低酸素誘発性酸化ストレス
本研究は、VSCMにおける細胞内酸化ストレスがミトコンドリア機能不全に由来するか否
かを決定するために行った。本研究を行うために、VSMCをHIF1aの既知の安定化剤である
塩化コバルトとともにインキュベートした。塩化コバルトがHIF1aに結合することで、HIF
1aの分解が阻害され、その結果、細胞内が低酸素状態になる。HIF1aは、がんの生物学や
他の多くの病態生理に関与しており、具体的には、血管新生、血管形成、エネルギー代謝
、細胞生存、および腫瘍浸潤などの領域に関与している。通常の環境下では、傷害の後、
HIF1aは酵素プロリルヒドロキシラーゼ(PHD)によって分解される。HIF1aの継続的なア
ップレギュレーション(塩化コバルトによって模倣される)は、血管新生の開始と低酸素
を克服するための細胞代謝を調節する役割を通して腫瘍の増殖と転移を促進する。低酸素
は、正常および腫瘍細胞の両方でアポトーシスを促進する。さらに、低酸素症は著しい細
胞内酸化ストレスを発生させる。
【0070】
本研究を行うために、96ウェルプレートにVSMC(10,000細胞/ウェル)を蒔き、一晩放
置して接着させた。次に、19時間の間、50μMのCoCl
2を補充した培地に変えた。翌日、細
胞を洗浄し、培地に溶媒(CoCl
2およびビタミンK2(MK-7)/UQ10の溶媒)、10μMビタミ
ンK2(MK-7)、または10μMのUQ10が存在する中で、20μMのDCFDAとともに1時間インキュ
ベートした。その後、培地を、溶媒、ビタミンK2(MK-7)/UQ10、またはCoCl
2を補充した培
地に変え、6時間蛍光を測定した。蛍光強度は細胞数で正規化した。
図5にその結果を示す
。
【0071】
実施例I(f):結論
実施例I(a)~I(e)に記載の研究に基づき、VSMCはビタミンK1よりも非常に効率的
かつ有意に良好にビタミンK2(MK-7)を取り込むことができると結論付けた。ビタミンK
の代謝を妨害すると(すなわち、ビタミンKのレドックスリサイクリングをブロックする
ためにワルファリンを使用すると)、細胞内の酸化ストレスが増加する。ビタミンK2(MK
-7)の添加は、通常の条件でも、ワルファリン誘発性酸化ストレスの条件でも、細胞内酸
化ストレスを相殺する。さらに、HIF1aを安定化させる塩化コバルト(耐久スポーツ時の
ような慢性的な低酸素症を誘発する)は、酸化ストレスを増加させ、筋肉組織に有害であ
る可能性がある。また、このような状況下では、ビタミンK2(MK-7)は低酸素誘発性酸化
ストレスを相殺するようで、ミトコンドリア活性を向上させることが示唆される。この効
果は、ミトコンドリア呼吸鎖の中間体として知られるUQ10には見られなかった。
【0072】
実施例II:ビタミンK2(MK-7)とATP経路
本研究は、ビタミンK2(MK-7)が、筋肉におけるワルファリン誘発性酸化ストレスに及
ぼす影響を調べるために行った。本研究を行うために、ヒト血管平滑筋細胞(hVSMC;5,0
00個/ウェル)を96ウェルの暗色プレートに蒔き、一晩放置して接着させた。次に、細胞
を、溶媒のみ(ブランクコントロール)、ワルファリン(10または50μM)、ビタミンK2
(MK-7)(10μM)、またはワルファリン(50μM)とビタミンK2(MK-7)(10μM)の組
み合わせのいずれかとともに24時間インキュベートした。細胞数を補正するためにヘキス
トを加えた(1μg/mL)。次に、哺乳動物用溶解バッファーを5分間用いた後、50μLのATP
基質溶液をウェルに加え、暗環境下で10分間インキュベートしてATPを測定した。最後に
、培地を白いプレートに移して発光を測定した。
【0073】
図6に本研究の結果を示す。これらの結果に基づき、ビタミンK2(MK-7)は、ワルファ
リンによって誘発される酸化ストレスを相殺し、細胞のATPを増加させることが明らかに
なった。このストレスは、小胞体(ER)コンパートメントに存在するVKOR(ビタミンKエ
ポキシド還元酵素)酵素の妨害に由来するという仮説が立てられた。明らかに、ワルファ
リンはVSMCにおけるATP生成に影響を与えていない。これは、ワルファリンによる細胞内
ストレスの増加は、ミトコンドリアストレスへの影響ではなく、ERにあるVKOR酵素を介し
たものであることを示唆する。ここで、ビタミンK2(MK-7)の効果は、ビタミンK依存性
タンパク質の翻訳後カルボキシル化としてよく説明されるものであり、このカルボキシル
化は、ビタミンKがVKOR酵素を介してリサイクルされる小胞体内で起きる。
【0074】
実施例III(a):ATPの増加
本研究は、ビタミンK2(MK-7)がATP生成に影響を与えるか否かを調べるために行った
。ATPは、細胞質では解糖系を経て、ミトコンドリアではクレブスサイクルと酸化的リン
酸化を経て生成される。解糖系を経たATP生成は2個のATPしか得られないのに対し、ミト
コンドリアでのATP生成は約32個のATPが生成される
【0075】
本研究を行うために、96ウェルプレートにVSCM(5000細胞/ウェル)を蒔き、一晩放置
して接着させた。次に、細胞を溶媒、ビタミンK2(MK-7)(10μM)、またはUQ10(10μM
)のいずれかとともに24時間インキュベートした。細胞数を補正するためにヘキストを加
えた(1μg/mL)。次に、哺乳動物用溶解バッファーを5分間用いた後、50μLのATP基質溶
液をウェルに加え、暗環境下で10分間インキュベートしてATPを測定した。最後に、培地
を白いプレートに移して発光を測定した
【0076】
図7に本研究の結果を示す。これらの結果に基づき、溶媒(ビタミンK2(MK-7)またはU
Q10の溶媒)と比較して、ビタミンK2(MK-7)のみがVSMCのATP産生を有意に増加させると
判断した(p=0.014)。これは、解糖系を介したATP合成によるものか、ミトコンドリアで
の酸化的リン酸化によるものかのいずれかであり得る。
【0077】
実施例III(b):ATPの増加
本研究は、ビタミンK2(MK-7)の影響を受けるATP産生の起源をさらに調べるために行
った。本研究を行うために、VSCM(5000細胞/ウェル)を96ウェルプレートに蒔き、一晩
放置して接着させた。次に、細胞を溶媒、CoCl2(100μM)、ビタミンK2(MK-7)(10μM
)、UQ10(10μM)のいずれかとともに48時間インキュベートした。細胞数を補正するた
めにヘキストを加えた(1μg/mL)。次に、哺乳動物用溶解バッファーを5分間用いた後、
50μLのATP基質溶液をウェルに加え、暗環境下で10分間インキュベートしてATPを測定し
た。最後に、培地を白板に移して発光を測定した。
【0078】
図8に本研究の結果を示す。これらの結果に基づき、CoCl
2は(HIF1aの安定化を介して
)ATP産生を減少させると判断した。CoCl
2に誘発される低酸素症が、酸化的リン酸化によ
るATP産生を減少させた。これは、この経路が酸素依存的であるからである。この場合も
、ビタミンK2(MK-7)がATP産生をわずかではあるが、溶媒と比較して有意に増加させた
。CoCl
2と比較して、ビタミンK2(MK-7)とUQ10の両方が有意に高いATPレベルを示し、こ
れは、ミトコンドリアを介した効果を示唆する。
【0079】
実施例IV(a):ビタミンK2(MK-7)と低酸素症
本研究は、ビタミンK2(MK-7)が低酸素症に誘導されるATPの減少(CoCl2処理、それに
よるHIF1aの安定化)を防ぐことができるか否かを調べるために行った。本研究を行うた
めに、VSMCをCoCl2とビタミンK2(MK-7)で同時処置した。
【0080】
まず、96ウェルプレートにVSCM(5000細胞/ウェル)を蒔き、一晩放置して接着させた
。次に、細胞をCoCl2(100μM)またはCoCl2とビタミンK2(MK-7)もしくはUQ10(それぞ
れ100μMと10μM)とともに24時間インキュベートした。次に、ATPを測定し、細胞数を補
正した。CoCl2の値は、ビタミンK2(MK-7)またはUQ10を用いたCoCl2同時処置に対する相
対値とした。細胞数を補正するためにヘキストを添加した(1μg/mL)。次に、哺乳動物
用溶解バッファーを用いた後、50μLのATP基質溶液をウェルに加え、暗環境下で10分間イ
ンキュベートしてATPを測定した。最後に、培地を白いプレートに移して発光を測定した
。
【0081】
図9に本研究の結果を示す。
図9に示したデータに基づき、VSMCをCoCl
2で同時処置する
ことは、ATP生成の減少を(部分的に)防ぐことができたと結論付けた。これは、ビタミ
ンK2(MK-7)がミトコンドリアの機能とATP生成に直接影響を与えることを示唆する。ま
た、ビタミンK2(MK-7)は、DOMSに伴い細胞内に蓄積されたカルシウムの影響を軽減すると
結論付けた。
【0082】
実施例IV(b):ビタミンK2(MK-7)と低酸素症
本研究は、ビタミンK2(MK-7)がATPに与える影響を経時的に調べるために行った。VSM
Cを含むすべての細胞は増殖することが知られている。細胞増殖という用語は、生物学的
な細胞の発生と細胞分裂(複製)の文脈で使われる。細胞分裂の文脈で使われる場合は、
細胞集団の成長を意味し、「母細胞」と呼ばれる細胞が成長して分裂して、2つの「娘細
胞」が作られる(M期)。細胞の発生の文脈で使われる場合は、細胞質や小器官の体積が
増加すること(G1期)や、S期の複製の後に遺伝物質が増加すること(G2期)を意味する
。また、細胞が静止している場合は、この期をG0と呼ぶ。細胞集団は、倍加と呼ばれる特
定のタイプの指数関数的増殖を遂げる。各世代の細胞数は、前の世代の2倍になるはずで
ある。しかし、すべての細胞が各世代で生き残るわけではないので、世代数は最大値を示
すに過ぎない。
【0083】
本研究を行うために、まず、VSCM(5000細胞/ウェル)を96ウェルプレートに蒔き、一
晩放置して接着させた。次に、細胞をビタミンK2(MK-7)(10μM)とともに指示された
時点までインキュベートした。細胞数を補正するためにヘキストを添加した(1μg/mL)
。次に、哺乳動物用溶解バッファーを5分間用いた後、50μLのATP基質溶液をウェルに加
え、暗環境下で10分間インキュベートしてATPを測定した。最後に、培地を白板に移して
発光を測定した。
【0084】
図10に本研究の結果を示す。
図10に示すように、ビタミンK2(MK-7)はVSMCにおけるAT
P産生を刺激したが、細胞の増殖によりビタミンK2(MK-7)は枯渇した。さらにビタミンK
2(MK-7)を追加した場合は、再びATP産生が刺激された。これは、細胞が最大のATP産生
を達成するためには、ビタミンK2(MK-7)の蓄積が必要であることを示す。
【0085】
実施例V:新規経口抗凝固剤(NOAC)の抗凝固活性に対するビタミンK2(MK-7)の影響
本実験は、T-TAS Total Thrombus-formation Analysis Systemを用いて、新規経口抗凝
固剤(NOAC)であるリバーロキサバンおよびダビガトランの抗凝固活性に対するビタミン
K2(MK-7)の影響を評価するために行った。T-TAS Total Thrombus-formation Analysis
Systemは、全血の血栓形成性を評価することができるマイクロチップに基づくフローチャ
ンバーシステムである。血栓形成に対する抗凝固剤の効果をモニタリングし、出血性合併
症のリスクを予測するのに有効なツールである。
【0086】
本研究を行うために、治療期間開始時に10~11週齢の野生型雄スプラーグドーリーラッ
ト45匹と遺伝子導入オスRen-2ラット[TGR(mREN-2)27]45匹を、動物施設IKEM-CEM Institu
te of Clinical and Experimental Medicine(チェコ共和国、プラハ)から購入した。実
験におけるすべての動物は、個別に換気されたケージに収容し(1ケージあたり2~3ラッ
ト)、相対湿度55±10%、温度22±2oC、午前7時から午後7時までの光サイクルで、JCET
の動物飼育室において維持した。ラットは餌と水を自由に利用した。出産後、以下の表1
に示す10の実験群(1群5匹または10匹)に無作為に分けた。
【0087】
【0088】
治療開始の4日前に、選択した代表的な3つのケージ(ラットn=9)において、動物の体
重および摂餌量の最初の部分を測定して、表1に示した投薬を得るために食餌への追加に
必要な試験化合物の適切な量を算出した。摂食量は、ラット1匹あたり1日あたり約30gと
推定された。表1に示したように、ビタミンK2(MK-7)を含む/含まないリバーロキサバ
ンまたはダビガトランを補充したAIN-93G食餌を動物に2週間与えた。その後、さらなる分
析のために血液サンプルを採取するために動物に麻酔した。治療の開始時と終了時にラッ
トの体重を測定した。
【0089】
治療の開始時および終了時に、代表的な動物群の1日あたりの摂餌量を測定して、被験
化合物の1日投薬量(体重1kgあたり)をモニターした。in vitroでの血栓形成は、製造業
者のプロトコルに従ってマイクロチップに基づくフローチャンバーシステム(Total Thro
mbus-formation Analyser System, T-TAS;藤森工業株式会社、東京、日本)を用いて、
全血で測定した。分析のために、クエン酸処理した全血(480μL)を、1.25mg/mLのCTI(
コーントリプシンインヒビター(Corn Trypsin Inhibitor))を含む300mMのCaCl2溶液20
μLと混ぜた。混ぜた後、血液サンプルを、コラーゲンと組織トロンボプラスチンでコー
ティングしたマイクロチップ上で、正常な小静脈の初期壁せん断速度(240s-1)を生み出
す4μL/分の流速で直ちに灌流した。微細毛細血管内での血栓の形成と破壊は流れの乱れ
を引き起こし、これはそれぞれ圧力の上昇と低下をもたらした。
【0090】
各サンプルで得られた流れ圧力のパターンを用いて、以下の推定パラメータを基づき血
栓形成を分析した:
10kPaまでの時間(T10;分):ベースライン圧力から10kPaに達するまでに必要な時
間であり、血栓形成の開始を反映する;
閉塞時間(OT;分):ベースライン圧力から80kPaに達するのに必要な時間であり、
毛細血管のほぼ完全な閉塞を反映する;
アッセイ開始後30分の流れ圧力曲線下(80kPa以下)の面積(AUC30):全血の総血栓
形成性を反映する。
【0091】
プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン
時間(TT)およびフィブリノゲンレベル(Clauss法)は、Coag-Chrom 3003装置(Bio-kse
l、ポーランド、グルジョンツ)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。フィブリ
ン生成についてのより高感度なアッセイは、以前に記載された方法に基づいて使用し(Bj
ornsson TD et al. Aspirin acetylates fibrinogen and enhances fibrinolysis. Fibri
nolytic effect is independent of changes in plasminogen activator levels. J Phar
macol Exp Ther. 1989;250:154-161; He S et al. A simple and rapid laboratory meth
od for determination of haemostasis potential in plasma. II. Modifications for u
se in routine laboratories and research work. Thromb Res. 2001;103:355-361.)、B
uczko et al.(Buczko W et al. Aspirin and the fibrinolytic response. Thromb Res.
2003;110:331-334.)によって修正した。フィブリン生成曲線は、37℃のトリス緩衝液(
66-mmol/Lトリス;130-mmol/L NaCl;pH=7.4)に溶解したCaCl2(36mmol/L)を入れたマ
イクロプレートウェルにおいて、ラット血漿サンプルを直接再石灰化することにより作成
した。マイクロプレートリーダー(Biotek EL808, BioTek Instruments Inc., USA)を用い
て、ウェル内の光学密度の増加(フィブリン生成の結果)を1分間隔で14分間測定し、曲
線下面積で表した
【0092】
表2に示すように、ダビガトランおよびリバーロキサバンは、スプラーグドーリーラッ
トにおいて血栓形成を阻害し、ビタミンK2(MK-7)の添加は、ダビガトランおよびリバー
ロキサバンのいずれにおいても、閉塞時間(OT)およびトロンビン時間を5~7%とわずか
に増加させたが、血栓の形成(AUC)を防止することはなかった。表3に示すように、ダビ
ガトランとリバーロキサバンは、TGRラットの血栓形成も阻害し、ビタミンK2(MK-7)は
この効果を有意に修正しなかった。これらのデータに基づき、ビタミンKの添加は、血栓
形成を防ぐことはないが遅らせる可能性はあり、それにより抗凝固剤の活性を高めると結
論づけた。
【0093】
【0094】
ビタミンK2と少なくとも1つの抗凝固剤の組み合わせを含む製剤であって、前記少なくとも1つの抗凝固剤は、対象の遊離した第Xa因子および/またはプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を阻害するように構成されている第一抗凝固剤を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。