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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050766
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】改変ウイルスカプシド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240403BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240403BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C40B40/06
C12N7/01
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61P25/00
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014824
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2020566878の分割
【原出願日】2019-02-14
(31)【優先権主張番号】18156932.8
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520308374
【氏名又は名称】ビョークルン,トマス
(71)【出願人】
【識別番号】520308385
【氏名又は名称】デイヴィッドソン,マーカス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビョークルン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッドソン,マーカス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウイルスベクターおよび粒子、ならびにそれらを設計し製造するための方法およびツールを提供する。
【解決手段】本発明は、カプシド上に提示されたときに、こうしたカプシドを含むウイルス粒子に所望の特性を付与する、例えばHSV pUL22タンパク質に由来する、ポリペプチドを同定するための方法、ならびに改善された特性を有するウイルスベクターおよびウイルス粒子を設計し、製造するための方法に関する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターのライブラリを製造する方法であって、
i)所望の特性を有するかまたは有することが推測されるポリペプチドの群から1つ以上の候補ポリペプチドを選択すること、および前記ポリペプチドの配列を検索することと;
ii)複数の候補ポリヌクレオチドを提供することであって、各候補ポリヌクレオチドは前記候補ポリペプチドの1つのポリペプチド断片をコードし、これにより転写および翻訳時に各候補ポリペプチドは各候補ポリペプチドの1つ以上のポリペプチド断片によって表される、提供することと;
iii)複数のバーコードポリヌクレオチドを提供することと;
iv)カプシド遺伝子およびウイルスゲノムを含む、ウイルスベクター中にバーコードポリヌクレオチドと共に各候補ポリヌクレオチドを挿入すること、これによりそれぞれがバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される単一の候補ポリヌクレオチドを含む複数のウイルスベクターを得ることであって、前記候補ポリヌクレオチドは、前記カプシド遺伝子内に挿入され、前記カプシド遺伝子は、前記ウイルスゲノムの外側にありかつ前記バーコードポリヌクレオチドは、前記ウイルスゲノム内に挿入され、前記ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む、挿入することと、
v)ステップiv)で得られた前記複数のウイルスベクターを増幅系で増幅することであって、各ウイルスベクターは、前記増幅系において複数のコピーで存在する、増幅することと、
a)参照系においてステップv)の前記増幅系から前記複数のウイルスベクターの少なくとも第1の部分を検索することおよび転送することであって、これにより各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングする、検索することおよび転送することと、
b)前記増幅系において前記複数のウイルスベクターの第2の部分を維持すること、および複数のウイルス粒子を得るために産生系において前記第2の部分の全部または一部を任意により移すこと、
を含む、方法。
【請求項2】
所望の特性を有するウイルスベクターを設計する方法であって、請求項1に記載の方法を含みかつ、
vi)請求項1に記載のステップv)b)の前記増幅系からウイルスベクターの一部を検索するか、または請求項1に記載のステップv)b)の前記産生系から前記ウイルス粒子の少なくとも一部を検索し、かつ細胞集団を前記検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
vii)マーカー発現をモニターしかつマーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
viii)ステップvii)で選択された前記細胞で発現される前記バーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより前記所望の特性に関与する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
ix)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、前記改変カプシド遺伝子は、ステップviii)で同定された前記候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
所望の特性を有するウイルス粒子を製造する方法であって、請求項1に記載の方法を含みかつ、
vi)ステップv)b)の前記増幅系から前記複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップまたはステップv)b)の前記産生系から前記複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)細胞集団をステップvi)で得られた前記検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)マーカー発現をモニターしかつマーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
ix)ステップviii)で同定された前記細胞で発現される前記バーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより前記所望の特性に関与する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、前記改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された前記候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップと;
xi)ステップx)の前記ウイルスベクターを産生系で産生するステップであって、それにより前記所望の特性を有する前記ウイルスベクターまたは前記ウイルス粒子を得る、ステップ、
をさらに含む、方法。
【請求項4】
導入遺伝子を標的細胞に送達する方法であって、
a)改変カプシドを含みかつ導入遺伝子を封入する改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を提供することであって、前記改変ウイルスベクターまたは前記改変ウイルス粒子は、請求項3に記載のステップxi)で定義された前記ウイルスベクターまたは前記ウイルス粒子である、提供することと;
b)前記改変ウイルスベクターまたは前記改変ウイルス粒子を注射部位に注射すること、
を含む、方法。
【請求項5】
ウイルスベクターのライブラリであって、各ウイルスベクターが、
i)宿主細胞で前記ウイルスベクターを発現させるための骨格;
ii)カプシド遺伝子およびその中に挿入され、候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチド;
iii)マーカーポリヌクレオチド;および
iv)バーコードポリヌクレオチド
を含み、
前記候補ポリペプチドは、所望の特性を有するかまたは有することが推測される1つ以上のポリペプチドを含む所定の群から選択され、
転写および翻訳時に各候補ポリペプチドは、前記ライブラリ中の1つ以上のポリペプチド断片によって提示され、
前記候補ポリヌクレオチドは、前記ウイルスベクターの前記カプシド遺伝子内に挿入されこれによりそれは、前記カプシド上に提示されるポリペプチド断片に転写および翻訳され得、かつ前記ウイルスゲノム内に挿入されたバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結され、
かつ前記マーカーポリヌクレオチドは、前記ウイルスゲノム内に含まれかつ前記カプシド遺伝子は、前記ウイルスゲノムの外側にある、
ライブラリ。
【請求項6】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ボカウイルスまたは狂犬病ウイルスであり、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項5に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【請求項7】
導入遺伝子を標的細胞に送達するためのウイルス粒子をコードするウイルスベクターであって、改変カプシド遺伝子および前記標的細胞に送達される導入遺伝子を含み、
前記改変カプシド遺伝子は、前記ウイルスゲノムの外側にありかつ前記導入遺伝子の送達かつ/または前記標的細胞への標的化を改善するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
ウイルスベクター。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号1~配列番号50を含むかまたはそれらからなる、請求項7に記載のウイルスベクター。
【請求項9】
標的細胞への導入遺伝子の送達のための改変ウイルス粒子であって、改変カプシドおよび宿主細胞に送達される導入遺伝子を含み、
前記改変カプシドは、天然のカプシド遺伝子および前記導入遺伝子を含む未改変ウイルス粒子と比較して前記標的細胞への前記導入遺伝子の送達、前記標的細胞への標的化、前記ウイルス粒子の感染性、および/または前記改変ウイルス粒子の逆行性輸送の1つ以上を改善し、かつ前記改変カプシド遺伝子は、前記ウイルスゲノムの外側にある、改変ウイルス粒子。
【請求項10】
前記改変カプシドが、配列番号1~配列番号50からなる群から選択されるペプチドを含む、請求項9に記載の改変ウイルス粒子。
【請求項11】
遺伝子治療のための、請求項7または8に記載のウイルスベクターの、または請求項9または10に記載のウイルス粒子の使用。
【請求項12】
神経系の障害などの、障害の治療の方法での使用のための、請求項7または8に記載のウイルスベクター、または請求項9または10に記載のウイルス粒子。
【請求項13】
所望の効果を有する薬物を同定するための方法であって、
a)候補薬物を提供するステップ;
b)前記候補薬物を細胞に投与するステップ;
c)b)の前記細胞への前記ウイルス粒子の送達を可能にする改変カプシドおよびマーカーポリヌクレオチドを含む改変ウイルス粒子を提供するステップ;
d)前記候補薬物の存在下および非存在下で前記マーカーポリペプチドの発現および/または局在化をモニターするおよび比較するステップであって;これにより前記候補薬物が前記マーカーポリヌクレオチドの前記発現に影響を有するか否かを決定する、ステップ
を含む、方法。
【請求項14】
標的細胞へのウイルスベクターまたは粒子のトロピズムを改善するための方法であって、請求項1に記載の方法を含みかつ、
vi)ステップv)b)の前記増幅系から前記複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップまたはステップv)b)の前記産生系から前記複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団をvi)で得られた前記検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子とおよびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)前記標的細胞においてマーカー発現をモニターし比較するステップと;
ix)前記参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子からの前記発現と比較して前記マーカーの発現の増加を有する前記標的細胞中の前記候補ポリヌクレオチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含む、トロピズムが改善されたウイルスベクターまたはウイルス粒子を設計するステップであって、前記改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された前記候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ、
をさらに含む、方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドを挿入することによって改変されたカプシドを含むウイルス粒子に所望の特性を付与するポリペプチドの1つ以上の領域を同定する方法であって、請求項1に記載の方法を含みかつ、
vi)ステップv)b)の前記増幅系から前記複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップまたはステップv)b)の前記産生系から前記複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団をvi)で得られた前記検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子とおよびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)前記標的細胞におけるマーカー発現をモニターし比較するステップと;
ix)前記所望の特性に対応する前記マーカーの発現プロファイルを有する前記標的細胞において前記候補ポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより前記特性に関与する前記ポリペプチドの前記領域を同定する、ステップ、
をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスベクターおよび粒子ならびにそれらを設計し、製造するための方法およびツールに関する。
【背景技術】
【0002】
指向性進化によるウイルスベクターの操作により、トロピズムおよび機能が改善された強力なカプシドが大量に生成された1~9。Cre-レコンビナーゼにより制限された選択および最適化のためのディープシーケンスの最近の追加は、近年このアプローチの精度および効力を改善したが、それは、実際の機能的なカプシドが表面化するまで複数世代のスクリーニングを必要とする産生中に生成される連続的感染性およびキメラによって依然として制限されている2~4。プロセスのランダム性のため、ごくわずかなde novo配列が有効なフレーム内アミノ酸置換をコードし、さらに少数が正しく組み立てられる。このスクリーニングアプローチはまた本質的に再現性がなく、最適化を事後に行う必要がある。結果として生じるカプシドバリアントもまた、機能およびどの分子標的が関与しているかについての洞察をほとんど与えない。
【0003】
一般的に使用される代替アプローチは合理的な設計であり、体系的な変更が、カプシドの既知の特性(例えば、AAV2カプシドからのヘパラン硫酸プロテオグリカン結合の除去)に基づいて行われるか、体系的なアミノ酸置換またはカプシド表面の高親和性ナノボディの提示を通じて行われる10~14。このアプローチは、機能的にはより厳格であるが、それほど多様性を与えず、機能的な可能性が制限されている。
【0004】
したがって、信頼性が高く、再現性があり、かつ高い多様性を可能にする、特性が改善されたカプシドを設計するための方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で提供される方法は、上記の欠点を克服する。所望の特性を有することがわかっているまたは有すると推測される選択されたタンパク質に、合理的かつ体系的なアプローチを適用することにより、改変ウイルス粒子をコードする改変ウイルスベクターのライブラリを発現させることができ、ここで改変ウイルス粒子は、選択されたタンパク質の断片を提示する改変カプシドを含む。適応させたスクリーニングを使用して、ウイルス粒子に所望の特性を付与するために特に有用である上記タンパク質の断片を同定できる。これらは、適応させた特性を有する改変カプシド、すなわち、同定された断片の1つを提示するカプシドを設計するために使用できる。実施例に見られるように、方法は、例えば、所与の細胞型に対してトロピズムおよび/または感染力が増大したウイルス粒子を設計するために使用できる。本発明の方法は、信頼性が高く、再現性があり、多様性が非常に高い。生成されたカプシドは、導入遺伝子を送達するために使用でき、また治療方法および遺伝子治療方法のみでなく、例えば、タンパク質ドメインの機能マッピングおよび薬物スクリーニングにおいての用途も見出す。
【0006】
本明細書では、以下のステップを含む、ウイルスベクターのライブラリを製造する方法が提供される:
i)所望の特性を有するかまたは有すると推測されるポリペプチドの群から1つ以上の候補ポリペプチドを選択し、そのポリペプチドの配列を検索するステップと;
ii)複数の候補ポリヌクレオチドを提供するステップであって、各候補ポリヌクレオチドは、候補ポリペプチドのうちの1つのポリペプチド断片をコードし、これにより転写および翻訳時に各候補ポリペプチドは、各候補ポリペプチドの1つ以上のポリペプチド断片によって表される、ステップと;
iii)複数のバーコードポリヌクレオチドを提供するステップと;
iv)各候補ポリヌクレオチドをバーコードポリヌクレオチドと共に、カプシド遺伝子およびウイルスゲノムを含むウイルスベクターに挿入し、これによりそれぞれがバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される単一の候補ポリヌクレオチドを含む複数のウイルスベクターを得るステップであって、候補ポリヌクレオチドは、カプシド遺伝子内に挿入され、カプシド遺伝子は、ウイルスゲノムの外側にあり、バーコードポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に挿入され、ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む、ステップと、
v)ステップiv)で得られた複数のウイルスベクターを増幅系で増幅することであって、各ウイルスベクターは、増幅系において複数のコピーで存在する、ステップと、
a)参照系において、ステップv)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも第1の部分を検索し転送するステップであって、これにより各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングする、ステップと、
b)増幅系において複数のウイルスベクターの第2の部分を維持し、複数のウイルス粒子を得るために産生系において第2の部分の全部または一部を任意により移すステップ。
【0007】
上記のステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む、所望の特性を有するウイルスベクターを設計する方法も提供される:
vi)上記のステップv)b)の増幅系からウイルスベクターの一部を検索するか、または上記のステップv)b)の産生系からウイルス粒子の少なくとも一部を検索し、かつ細胞集団を上記検索したウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
vii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
viii)ステップvii)で選択された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定する、ステップと;
ix)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップviii)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ。
【0008】
所望の特性を有するウイルス粒子を製造する方法も提供され、本方法は、上記のステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む:
vi)上記ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、または上記ステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)細胞集団を、ステップvi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
ix)ステップviii)で同定された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定する、ステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップと;
xi)ステップx)のウイルスベクターを増幅系または産生系で産生するステップであって、それにより所望の特性を有するウイルス粒子を得る、ステップ。
【0009】
導入遺伝子を標的細胞に送達する方法も提供され、この方法は以下を含む:
a)改変カプシドを含み導入遺伝子を封入する改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を提供するステップであって、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子は、上記のステップxi)で定義されたウイルスベクターまたはウイルス粒子である、ステップと;
b)改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を注射部位に注射するステップ。
【0010】
ウイルスベクターのライブラリも提供され、各ウイルスベクターは:
i)宿主細胞でウイルスベクターを発現させるための骨格;
ii)カプシド遺伝子およびその中に挿入され、候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチド;
iii)マーカーポリヌクレオチド;および
iv)バーコードポリヌクレオチド
を含み、
候補ポリペプチドは、所望の特性を有するかまたは有すると推測される1つ以上のポリペプチドを含む所定の群から選択され、
転写および翻訳時に、各候補ポリペプチドは、ライブラリ中の1つ以上のポリペプチド断片によって提示され、
候補ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターのカプシド遺伝子内に挿入され、これによりカプシド上に提示されるポリペプチド断片に転写および翻訳され、ウイルスゲノム内に挿入されたバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結され、
マーカーポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に含まれ、カプシド遺伝子はウイルスゲノムの外側にある。
【0011】
本明細書に記載のウイルスベクターのライブラリを含む細胞または複数の細胞も提供される。
【0012】
導入遺伝子を標的細胞に送達するためのウイルス粒子をコードするウイルスベクターもまた提供され、ウイルスベクターは、改変カプシド遺伝子および標的細胞に送達される導入遺伝子を含み、
改変カプシド遺伝子はウイルスゲノムの外側にあり、導入遺伝子の送達を改善するかつ/または標的細胞への標的化を改善するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0013】
本明細書に記載されるウイルスベクターによってコードされるウイルス粒子もまた提供される。
【0014】
導入遺伝子を標的細胞に送達するための改変ウイルスベクターまたはウイルス粒子もまた提供され、改変ウイルスベクターまたはウイルス粒子は、改変カプシド遺伝子および標的細胞に送達される導入遺伝子を含み、
改変カプシドは、天然のカプシド遺伝子および導入遺伝子を含む未改変ウイルス粒子と比較して、次の1つ以上を改善する:標的細胞への導入遺伝子の送達、標的細胞への標的化、改変ウイルスベクターもしくは改変ウイルス粒子の感染性、および/または改変ウイルスベクターもしくは改変ウイルス粒子の逆行性輸送。
【0015】
遺伝子治療のための本明細書に記載されるウイルスベクター、ウイルス粒子、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子の使用もまた提供される。
【0016】
神経系の障害などの障害の治療の方法で使用するための、本明細書に記載のウイルスベクター、ウイルス粒子、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子も提供される。
【0017】
それを必要とする対象における、神経系の障害などの障害の治療の方法も提供され、この方法は、対象への記載されたウイルスベクター、ウイルス粒子、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子の投与を含む。
【0018】
所望の効果を有する薬物を同定するための方法も提供され、本方法は、
a)候補薬物を提供するステップ;
b)候補薬物を細胞に投与するステップ;
c)b)の細胞へのウイルス粒子の送達を可能にする改変カプシドおよびマーカーポリヌクレオチドを含む改変ウイルス粒子を提供するステップ;
d)候補薬物の存在下および非存在下でマーカーポリペプチドの発現および/または局在化をモニターするおよび比較するステップ;
を含み、これにより、候補薬物がマーカーポリヌクレオチドの発現に影響を有するか否かを決定する。
【0019】
ウイルスベクターまたは粒子の標的細胞へのトロピズムを改善するための方法も提供され、この方法は、上記のステップi)~v)を含み、
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞におけるマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子からの発現と比較してマーカーの発現の増加を有する、標的細胞中の候補ポリヌクレオチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含む、トロピズムが改善されたウイルスベクターまたはウイルス粒子を設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ、
をさらに含む。
【0020】
また、本明細書に開示されるのは、ポリペプチドを挿入することによって改変されたカプシドを含むウイルス粒子に所望の特性を付与するポリペプチドの1つ以上の領域を同定する方法であって、この方法は、上記のステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む:
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞においてマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)所望の特性に対応するマーカーの発現プロファイルを有する、標的細胞中の候補ポリヌクレオチドを同定するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】BRAVEアプローチのための非常に多様なAAVカプシドライブラリの作製(A)文献から特定されたシナプスへの親和性が実証されている131のタンパク質を提示する円グラフである。これらは3つの主要な群、ウイルス由来(カプシドおよびエンベロープ)タンパク質、宿主由来タンパク質(ニューロトロフィンおよび疾患関連タンパク質、例えばタウ)、神経毒およびレクチン、に分類される。(B)1.131のタンパク質のNCBI参照配列を、アミノ酸配列に翻訳し、1aaシフティングスライディングウィンドウアプローチにより、計算的に14aaの長いポリペプチドに消化した。生成された61314個のペプチドは合計で、44708個の固有のポリペプチドからなった。2.3つの代替的リンカー:単一のアラニン(14aaと呼ばれる)、5つのアラニン残基(14aaA5)を有するリッジリンカー、およびaa配列GGGGS(14aaG4S)を有する柔軟なリンカー、をポリペプチドに付加した。aaペプチドの最後の群は、22aaの長さおよび単一のアラニンリンカーを有して同様に生成された(22aaと呼ばれる)。3.合計92358のアミノ酸の配列を次に、ヒト細胞での発現用にコドン最適化し、末端にオーバーハングを付加して、588位でAAV2 Cap遺伝子中への方向性がある瘢痕(scar)のないギブソンアセンブリクローニングを可能にした。全長170bpの得られたオリゴはすべて、CustomArrayオリゴヌクレオチドアレイ上で並行して合成した。4.得られたオリゴヌクレオチドのプールを、Cis作用のAAV2 Rep/CapおよびITR隣接CMV-GFPを備えた新規AAV産生骨格に組み込んだ。20bpのランダム分子バーコード(BC)を、GFP遺伝子の3’UTRで同時に挿入した。5a.一方向のCre組換えアプローチを使用し、その後、emPCRベースのイルミナシーケンスアダプターを追加し、ペプチドのプール全体を次に、ランダムバーコードをルックアップテーブル(LUT)のそれぞれのペプチドに連結するペアエンドシーケンスを使用して、配列決定する。得られたライブラリは、ペプチドおよびバーコードの3934570の固有の組み合わせを含んだ。5b.LUTの作成と並行して、同じプラスミドライブラリを使用して、複製欠損AAVウイルスベクターのプレップを生成する。この場合、ペプチドはカプシド表面に提示され、バーコードはAAVゲノムの一部としてパッケージ化される。次に、複数の並行スクリーニング実験をin vitroおよびin vivoの両方で実行し、適切な選択(例えば、標的脳領域の切開)を行った後、mRNAを抽出し、発現したバーコードの配列決定を行う。6.配列決定されたバーコードとLUTとの組み合わせにより、効果を、元の131のタンパク質に戻ってマッピングでき、かつコンセンサスモチーフを、Hammock、隠れマルコフモデルベースのクラスター化アプローチ(7)を使用して決定できる。(C)AAVライブラリの2つの別々の産生を、1細胞あたり3コピーのプラスミド濃度(30cpc)または10倍高い濃度(30cpc)で実行した。どのペプチドが正しいアセンブリおよびゲノムのパッケージ化を可能にするかを評価するために、DNAseで両方のバッチを処理し(パッケージ化されていないゲノムを削除するため)、バッチを溶解し、調製物からのバーコードを個別にシーケンスした。発現したバーコードの多様性が非常に高いため、含まれたバーコードの重複は非常に少なかった。しかし、3cpcバッチでパッケージ化されたすべてのペプチドの絶対的な大部分を、30cpcバッチでも回収した。(D)挿入されたペプチドの機能的寄与を評価するために、30cpcライブラリを成体ラットの前脳に注入し、発現パターンを、同じ力価で同じ導入遺伝子(GFP)を発現するAAV2-WTベクターバッチと比較した。
図2】in vitroおよびin vivoでの単一世代BRAVEスクリーニング(A~B)最初の概念実証研究で、BRAVE技術を利用して、in vitroにおけるHEK293T細胞のトロピズムの再導入についてスクリーニングすることにした。野生型AAV2は、ヘパリン硫酸(HS)プロテオグリカン結合により生じる非常に高い感染力を呈する(B)。AAV-MNMnull血清型は、塩基587/588でのNheI制限酵素部位の挿入によりこの結合を破壊し、これによってHEK293T細胞の感染力を大幅に低下させる(B’)。400万個の固有にバーコード化されたカプシドバリアントのスクリーニングでは、親AAV-MNMnullカプシド構造よりも大幅に改善された感染力が付与された132の含有タンパク質からいくつかの領域を発見した。HSV-2表面タンパク質pUL44から1つのペプチドを選択し、AAV-MNM001と名付けた最初の新規カプシドを生成した。このカプシドは、CMV-GFPを個別にパッケージ化するために使用した場合、HEK293T細胞に対して著しく増加したトロピズムを示した(B’’)。2番目の実験で、BRAVE技術を使用して、in vitroでの初代皮質ラットニューロンの感染力を改善した。AAV2-WTおよびAAV-MNMnullの両方のベクターは、非常に低い初代ニューロンの感染力を呈し(D~D’)、AAV-MNM001は、ある程度の改善を示す(D’’)。BRAVEスクリーニングを介して、HSV-2 pUL1タンパク質のC末端領域にわたりクラスター化する複数のペプチドを同定し(C)、それらは、新規のAAVカプシド(AAV-MNM002)で単独で使用された場合に、培養中の一次ニューロンの感染力を劇的に改善した(D’’’)。(E)AAV2およびAAV-MNM001/004/008/009/017/025/026の力価の比較。力価をゲノムコピー/細胞として示す(トランスフェクション時のHEK293Tではない)。選択したカプシドは、AAV2と比較するために同じ製造方法で少なくとも2回製造する必要があった。黒い線は平均値を表し、2つの群は、2テールt検定を使用した場合、有意に異なった。p≦0.05。
図3】in vivoでの逆行性輸送のためのAAV-MNM004カプシドの特徴(A)HSV pUL22タンパク質のバイオインフォマティクス分析で、タンパク質のC末端領域は、すべての求心性領域(皮質、視床および黒質)への再現可能な輸送を呈し、線条体の注射部位では同じバイアスを示さなかった。(B~D)これらの特性を提示するすべてのペプチドのHMMのクラスター化は、それぞれのカプシド構造の2つの重複するコンセンサスモチーフを明らかにした(C)。(D)AAV-MNM004を、2つのカプシド構造のそれぞれを備えたscAAV|CMV-GFPベクターの片側線条体注射により、in vivoにおいて親AAV2と比較した。AAV注射の5週間後に、動物を屠殺し、免疫組織化学を使用してこれらの切片をGFP染色し、DABペルオキシダーゼ反応を用いて茶色の沈殿染色を行った。AAV2-カプシドは、注射部位において効率的な形質導入を促進したが、ベクターの逆行性輸送はごくわずかであった。一方で、AAV-MNM004カプシドは、内側嗅内皮質まで遡るすべての求心性領域への逆行性輸送を促進した。
図4】in vivoおよびin vitroの両方で、アルツハイマー病に関与するタンパク質の機能をマッピングし理解するためのBRAVEアプローチの利用(A)興味深いことに、sAAP領域は、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)由来のVP1タンパク質の領域と有意な配列相同性を共有し、その軸索を取り込み、感染力を駆動していると考えられる。(B~C、E)より深い特徴付けの後、この領域は3つの隣接する保存されたモチーフからなり、3番目のモチーフはVSV-G糖タンパク質(ニューロントロピズムを改善するためにレンチウイルスをシュードタイプするのによく使用される)およびHIV gp120タンパク質と有意な相同性を共有する。2つの新規カプシド構造が、この領域、AAV-MNM009およびAAV-MNM017から生成された。新規カプシドはいずれも、in vivoにおいて逆行性輸送を促進したが、AAV-MNM017は興味深いさらなる特性も呈した。AAV-MNM017は、非常に高い有効性で、in vitroで初代ニューロンおよび初代グリア細胞の両方に感染した。(D~D’’)ヒト初代グリア細胞での検出。(D):mCherryで染色したAAV-MNM001;(D’):GFPで染色したAAV-MNM017;(D’’):共染色。
図5】BRAVEを使用したAAVカプシドの再シャッフルの評価およびDAニューロンに感染するカプシドの生成(A~B)最後のBRAVEスクリーニング実験で、線条体出力領域への注射により黒質のドーパミンニューロンへの効率的な逆行性輸送を備える新規AAVカプシドバリアントを開発することを目的とした。このスクリーニングで、近接したCAV-2カプシドタンパク質の2つの領域を同定した。興味深いことに、最初のペプチドは同じタンパク質の3番目の領域と有意な相同性を共有し(A)、2番目のペプチド(B)は、レクチン大豆凝集素(SA)由来のペプチドモチーフを共有する。SAもまた、シナプスからニューロンの細胞体へ効率的に輸送されるため、逆行性トレーサーとして使用できる。(C~C’)。二重蛍光免疫組織化学により、これらの細胞の大部分が実際にTH陽性であり、それによりDA産生性であると推定されたことを確認できた(C’’~C’’’)。同じin vitro hESC分化プロトコルを使用して、de novoカプシドバリアントのin vitroニューロントロピズムがヒト起源のニューロンでも維持されるかを評価した。実際に、初代げっ歯類ニューロンにおいて高いトロピズムを呈したいずれのバリアント(MNM002、008、および010)も、野生型AAVバリアントよりもはるかに高いトロピズムを示した。
図6】扁桃体基底外側の機能的解剖および不安の発症におけるその関与(A)最後の実験では、BRAVEにより生成したAAV-MNM004カプシドバリアントを利用して、扁桃体基底外側から背側線条体への求心性神経の機能的寄与に関する未解決の問題に答えた。これは、逆行性誘導化学療法(DREADD)アプローチを使用して行った。背側線条体においてCre-レコンビナーゼを発現するAAV-MNM004ベクター、およびCre誘導性(DIO)化学遺伝学的(DREADD)ベクターを、野生型ラットの扁桃体基底外側(BLA)に両側から注射した。(B)DREADDリガンドCNOを使用して背側線条体に対して突出しているBLAニューロンの活性を選択的に誘導した後、高架式十字迷路(EPM)を使用して例証された著しい恐怖および不安の表現型を発見した。ここでは、対照動物(Cre遺伝子がGFPに置換された)と比較して、動物はオープンアームで有意に短い時間を費やした。これは、正の刺激を促進する腹側線条体へのBLAの突出の信じられている機能とは全く対照的であることを示している。(C)この増強された不安表現型は、オープンフィールドアリーナでの有意な過剰運動と、CNOチャレンジ後の過度の掘り込み、激しい発汗、および凍結エピソード(D~E)などの恐怖表現型を伴い、動物を屠殺し、BLAを、免疫組織化学を使用して、HA-タグ(hM3Dq DREADD発現を同定する)またはmCherry(rM3Ds DREADDを視覚化する)のいずれかで染色し、DABペルオキシダーゼ反応を使用して茶色の沈殿染色に発色させた。
図7】AAV産生アプローチ(A)3-プラスミドアプローチ。AAVゲノムを、トランスファープラスミドおよびパッケージングプラスミドの2つのプラスミドに分ける。アデノウイルス(Ad)からの必要な遺伝子を、3番目のヘルパープラスミドを使用してトランスで供給する。トランスファープラスミドは、産生されたビリオンにパッケージ化される遺伝子配列を含む。この配列には、複製されカプシドに挿入されるAAVからの反転末端反復(ITR)が隣接する。このプラスミドは、プロモーターによって駆動される目的遺伝子(GOI)を含み、3’非翻訳領域(3’UTR)およびポリアデニル化配列(pA)を有する。パッケージングプラスミドは、野生型AAVゲノムの残りの部分、すなわち通常力価を上げるための強力なプロモーターによって駆動されるRep遺伝子およびCap遺伝子を含む。これらの遺伝子はもはやITR配列に隣接していないため、それらは最終のAAVビリオンにはパッケージされない。ヘルパープラスミドは、Ad E4遺伝子、E2a遺伝子およびVA遺伝子を含み、これらは、すでに産生細胞株で発現され得るAd遺伝子E1aおよびE1bと一緒に、AAVの産生を可能にする。(B)2-プラスミドアプローチ。トランスファープラスミドは(A)と同様であるが、ヘルパープラスミドおよびパッケージングプラスミドを1つの大きなプラスミドに統合した。これは、より少ないプラスミドを使用して複製欠損AAVウイルスを産生する能力を保持する。(C)代替的2-プラスミドアプローチ。ヘルパープラスミドは(A)と同様であるが、トランスファープラスミドとパッケージングプラスミドを1つの機能的プラスミドに統合し、Rep/Cap機能およびITR隣接ゲノムの両方がAAVビリオンに挿入されるが、AAVベクターは、依然として複製欠損である。これは、ヘルパープラスミドが律速であるため、力価を維持しながらはるかに少量のトランスファー/パッケージングプラスミドの利用を可能にする。それはまた、Cap遺伝子と内部にパッケージ化されるGOIの間の完全な一致を保証する。
図8】Cre-レコンビナーゼにより修飾された読み出し2因子選択レジメンを、新規AAVカプシドバリアントのin vivo選択に使用でき、それをここに例示する。第1の因子は、選択した特定の神経核への全身性心室内注射(systemic,intraventriular injection)または実質内注射などの、送達の部位である。第2の因子は、Creリコンビナーゼなどのリコンビナーゼ、またはCas9、Cas13、またはCPF1などのDNAまたはRNAを改変するタンパク質である。このタンパク質は、トランスジェニック動物の生成またはウイルスベクターを介してのいずれかにより供給され得る。これは、ウイルスベクターとして、特定の二次脳核に送達されて、カプシドスクリーニングのために選択された求心性のみを標識できる。本明細書では、このアプローチは、mRNAからシーケンスされたバーコードに基づきオンターゲットおよびオフターゲットのマッピングを可能にする、新規戦略を示す。mRNAシーケンスの価値は、感染が成功した場合にのみmRNAが形成されるため、偽陽性(組織内に保持される非感染性粒子)が除外されることである。(1)送達されたウイルスベクターライブラリは、以下の主要成分を含むゲノムを含む。i)In vitroルックアップテーブルに基づきカプシド構造を識別できる分子バーコード(BC)。ii)シーケンシング用のライブラリ由来のmRNAの濃縮および増幅を可能にする、固有のシーケンシングプライマー結合部位(SPBS)。iii)順方向でのみ転写を停止する、合成ポリアデニル化部位(spA)。iv)存在量の少ない標的の場合のオンターゲット選択のためのマーカー遺伝子。v)Cre-リコンビナーゼの存在下で不可逆的な再配向をもたらす、2組の非互換性loxP組換え部位。vi)オフターゲット細胞でのシーケンシングのためにmRNAからバーコードを選択的に増幅することを可能にする、固有の5’非翻訳領域(5’UTR)。vii)オンターゲット細胞における同じタイプの増幅のための3’UTR配列。(2)Cre-リコンビナーゼが存在しない場合、すなわち、オフターゲット感染後に、5’UTRおよびSPBS部位を標的とするプライマーを使用して、mRNAからバーコードを回収し、シーケンスできる。これは、幅広い非選択的感染力を有するカプシドバリアントのマッピングを可能にする。(3)ビリオンが目的の細胞、すなわちCre発現細胞に感染すると、組換えが2組のloxP部位間で生じる。これは、マーカー遺伝子、バーコード、およびSPBS配列の配向を逆にする。(4)オンターゲット細胞では、mRNAの発現は、マーカー遺伝子のタンパク質への翻訳を可能にするが、spA配列が逆配向で活性でないため、SPBSおよびバーコードをmRNA 3’UTRの一部として保持する。このmRNAから、SPBSおよび3’UTR配列を標的とするプライマーを使用して、バーコードを選択的に濃縮し、増幅できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、改変ウイルス粒子をコードする改変ウイルスベクターのライブラリを設計し、製造するための合理化された体系的なアプローチを提供し、ここで改変ウイルス粒子は、選択されたタンパク質のポリペプチド断片を提示する改変カプシドを含む。適応させたスクリーニングを使用して、ウイルス粒子に所望の特性を付与するために有用である上記タンパク質の断片を同定できる。これらは、適応させた特性を有する改変カプシド、すなわち、同定された断片の1つを提示するカプシドを設計するために使用できる。実施例に見られるように、方法は、例えば、所与の細胞型に対してトロピズムが増大されたウイルス粒子を設計するために使用できる。
定義
【0023】
発現:ポリペプチドをコードする核酸配列またはポリペプチドの「発現」という用語は、mRNAとしてのその核酸またはポリペプチド配列の転写、および/または、ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の産生をもたらすその核酸配列またはポリペプチドの転写および翻訳を意味する。
【0024】
遺伝子治療:本明細書で使用される「遺伝子治療」という用語は、疾患を治療するために個体の細胞および組織に遺伝子を挿入することを指す。
【0025】
挿入:「挿入」という用語は、本明細書では、それぞれカプシド遺伝子またはタンパク質に挿入されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指すために使用される。カプシド遺伝子に挿入されるポリヌクレオチドは、カプシド遺伝子に「付加して」、所定の位置に挿入される。親カプシド遺伝子のポリヌクレオチド断片は、ポリヌクレオチドによって置き換えられず、したがって、ポリヌクレオチドが挿入されるカプシド遺伝子の長さは、挿入されたポリヌクレオチドの長さを親カプシド遺伝子の長さに足したものに等しい。同様に、所定のポリペプチドを提示するカプシドタンパク質の長さは、提示されるポリペプチドの長さに親カプシドタンパク質の長さを加えたものに等しい。
【0026】
改変:改変という用語は、ウイルス粒子、ウイルスベクター、カプシド遺伝子またはカプシドに関して本明細書で使用される。改変カプシドは、本明細書に記載のスクリーニング方法によって同定されるポリペプチドを提示するカプシドである。したがって、カプシドは、このポリペプチドの挿入によって変更された特性を有し得る。拡張すると、改変カプシド遺伝子は、ポリヌクレオチドが挿入されたカプシド遺伝子を指し、カプシド上に提示されたときにその特性を潜在的に変化させるポリペプチドをコードする。同様に、ウイルスベクターは、それが由来するウイルスベクターと比較して、ウイルスカプシド上に提示されたときにカプシド特性を変化させ得るポリペプチドをコードする追加のポリヌクレオチド配列を含む場合、改変される。ウイルス粒子は、改変カプシドを含む場合、改変される。
【0027】
作動可能に連結される:2つのポリヌクレオチドに言及するときに本明細書で使用される「作動可能に連結される」という用語は、2つのポリヌクレオチドの一方の同定が、2つのポリヌクレオチドの他方の同定を可能にすることを示す。作動可能に連結される2つのポリヌクレオチドは、物理的に同じ核酸分子の一部であり得るか、または異なる核酸分子上にあり得、すなわち、それらはトランスで作動可能に連結され得る。
【0028】
プロモーター:本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、特定の遺伝子の転写を促進するDNAの領域を指す。プロモーターは典型的には、それらが制御する遺伝子の近くで、同じ鎖および上流に位置する。
【0029】
導入遺伝子:本明細書において用語「導入遺伝子」は、宿主細胞または標的細胞に導入することが望ましく、かつその細胞において天然または自然に発現しない、ポリヌクレオチドを指す。
【0030】
ウイルスゲノム:本明細書においてこの用語は、末端反復(TR)が隣接し、その結果ビリオン内にパッケージ化されるポリヌクレオチド領域(DNAまたはRNA)を指す。DNAウイルスの場合、末端反復は反転しており、反転末端反復(ITR)と呼ばれる。レトロウイルスおよびレントウイルスは通常、長い末端反復(LTR)を有する。したがって、ウイルスゲノムの外側にあるカプシド遺伝子などの遺伝子は、ウイルスゲノムと同じポリヌクレオチド分子上にあってもよいが、TR配列が隣接しておらず、したがってビリオン内にパッケージされない。
ウイルスベクターまたは粒子のライブラリ
【0031】
本発明者らは、ウイルスベクターまたはウイルス粒子のライブラリを製造する方法を開発し、そのライブラリから、所望の特性を有するウイルスベクターまたはウイルス粒子を選択できる。この方法は、所望の特性を有することが知られているまたは有することが推測される複数の候補ポリペプチドを選択すること、およびウイルス粒子上に提示された場合、このように改変されたウイルス粒子に所望の特性を付与する、それらの断片を同定することに基づく。
【0032】
したがって、本発明の方法を使用して、所望の特性を有するウイルス粒子、例えば改善されたトロピズムを有するウイルス粒子、または特定のタイプの細胞を選択的に標的とするウイルス粒子、をコードするウイルスベクターを設計することが可能である。こうしたウイルス粒子は、複数の用途、例えば遺伝子治療、特に中枢神経系(CNS)への遺伝子導入および薬物スクリーニングに有用であり得る。
【0033】
したがって、本明細書では、以下のステップを含む、ウイルスベクターのライブラリを製造する方法が提供される:
i)所望の特性を有するかまたは有することが推測されるポリペプチドの群から1つ以上の候補ポリペプチドを選択し、そのポリペプチドの配列を検索するステップと;
ii)複数の候補ポリヌクレオチドを提供するステップであって、各候補ポリヌクレオチドは、候補ポリペプチドの1つのポリペプチド断片をコードし、これにより転写および翻訳時に各候補ポリペプチドは、各候補ポリペプチドの1つ以上のポリペプチド断片によって表される、ステップと;
iii)複数のバーコードポリヌクレオチドを提供するステップと;
iv)各候補ポリヌクレオチドをバーコードポリヌクレオチドと共に、カプシド遺伝子およびウイルスゲノムを含むウイルスベクターに挿入し、これによりそれぞれがバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される単一の候補ポリヌクレオチドを含む複数のウイルスベクターを得るステップであって、候補ポリヌクレオチドは、カプシド遺伝子内に挿入され、カプシド遺伝子は、ウイルスゲノムの外側にあり、バーコードポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に挿入され、ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む、ステップと、
v)ステップiv)で得られた複数のウイルスベクターを増幅系で増幅することであって、各ウイルスベクターは、増幅系において複数のコピーで存在する、ステップと、
a)参照系において、ステップv)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも第1の部分を検索し、転送するステップであって、これにより各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングする、ステップと、
b)増幅系において複数のウイルスベクターの第2の部分を維持し、複数のウイルス粒子を得るために産生系において第2の部分の全部または一部を任意により移すステップ。
【0034】
ウイルスベクターのライブラリも提供され、各ウイルスベクターは:
i)宿主細胞でウイルスベクターを発現させるための骨格;
ii)カプシド遺伝子およびその中に挿入され、候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチド;
iii)マーカーポリヌクレオチド;および
iv)バーコードポリヌクレオチド
を含み、
候補ポリペプチドは、所望の特性を有するかまたは有することが推測される1つ以上のポリペプチドを含む所定の群から選択され、
転写および翻訳時に、各候補ポリペプチドは、ライブラリ中の1つ以上のポリペプチド断片によって提示され、
候補ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターのカプシド遺伝子内に挿入され、これによりカプシド上に提示されるポリペプチド断片に転写および翻訳され、ウイルスゲノム内に挿入されたバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結され、
マーカーポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に含まれ、カプシド遺伝子は、ウイルスゲノムの外側にある。
候補ポリペプチドおよびポリヌクレオチド
【0035】
第1のステップでは、1つ以上の候補ポリペプチドを選択し、それらの配列を検索する。候補ポリペプチドは、カプシド表面に提示されたときにウイルス粒子に所望の特性を付与することが予想されるかまたは推測されるポリペプチドである。1つ以上の候補ポリペプチドは、例えば、本明細書で以下に記載される方法でポリペプチドの機能ドメインをマッピングすることを望む場合、1つのポリペプチドであってよく、または以下に詳述されるとおり、いくつかのポリペプチドであってもよい。
【0036】
したがって、候補ポリペプチドは、所与の特性が関与していることが知られているかまたは推測される可能性がある。例えば、カプシド上に提示されたときに所与のタイプの細胞のトロピズムを増大させる可能性のあるポリペプチドを選択するために、このタイプの細胞に輸送されることがわかっている第1のポリペプチドを選択できる。残りの候補ポリペプチドは、第1のポリペプチドとモチーフを共有する、潜在的に他のエンティティから、他のポリペプチドを同定するためのブラストクエリを実行することによって同定され得る。「エンティティ」という用語は、ここでは最も広い意味で解釈されるべきであり、生物ならびにウイルス、プリオンなどを包含する。あるいは、少なくともいくつかの条件で所望の特性を有することが知られているか推測される所与のエンティティ由来のすべてのポリペプチドを選択できる。選択された候補ポリペプチドの配列は、当業者に既知の方法により検索される。候補ポリペプチドの配列が不明である場合、これらの配列を決定するための方法が当業者に利用可能である。
【0037】
あるいは、候補ポリペプチドは、合成ライブラリ、例えばランダムペプチドライブラリなどのペプチドライブラリに由来し得る。いくつかの実施形態では、候補ポリペプチドは、それらが提示されるウイルスベクターに由来しない。いくつかの実施形態では、候補ポリペプチドには、変異体ライブラリに由来する。特定の実施形態では、変異体ライブラリは、ポリペプチドが提示されるウイルスベクターに対して天然であるポリペプチドに由来する変異体を含まない。
【0038】
次のステップでは、複数の候補ポリヌクレオチドが提供される。候補ポリヌクレオチドは、候補ポリペプチドの断片をコードする。複数の候補ポリヌクレオチドは、商業的供給業者に注文するか、使用者が設計し、合成できる。例えば、候補ポリヌクレオチドの配列は、紙にまたはインシリコで描かれ、商業的供給業者から注文されるか、または実施例1に示すように、例えばアレイ上で当技術分野で公知の方法により合成され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、候補ポリヌクレオチドの配列は、当技術分野で知られているように、所与の宿主細胞における転写のためにコドン最適化される。
【0040】
各候補ポリペプチドは、候補ポリヌクレオチドによってそれぞれコードされる1つ以上のポリペプチド断片によって表示される。いくつかの実施形態では、各候補ポリペプチドは、少なくとも3つのポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも3つの重複するポリペプチド断片などの、少なくとも2つのポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも2つの重複するポリペプチド断片によって表される。したがって、ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドも重複する。当業者にとって明らかであるように、異なる候補ポリペプチドに対しポリペプチド断片の数は異なる場合がある。これは単に、すべてが同じ長さを有する候補ポリヌクレオチドを設計する方が簡便であり得る場合があるためであり、同じポリペプチドの重複ポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチドの数はしたがって、対応する候補ポリペプチドの長さに対応する。他の実施形態では、候補ポリペプチドあたりのポリペプチド断片の数は、すべての候補ポリペプチドについて同じであり得るが、それらの長さは異なり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、所与の候補ポリペプチドに対し、所与の長さのすべての可能なポリペプチド断片が及ぶことが望ましい場合がある。そのような実施形態では、候補ポリヌクレオチドは、同じ候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードするすべての候補ポリヌクレオチドが、少なくともその長さの一部にわたって、例えば少なくとも1つのコドンにわたって重複するように設計される。多様性が最大となるように、同じ候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチドは、1つのコドンを除いて重複することが好ましく、その結果、同じ候補ポリペプチドのすべてのポリペプチド断片は1つのアミノ酸残基を除いて重複する。このようなアプローチを、実施例に例示する。
【0042】
他の実施形態では、同じ候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチドは、2つのコドン、3つのコドン、4つのコドン、5つのコドン、またはそれより多くを除いて重複する。好ましくは、同じ候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのコドン、例えば、少なくとも2つのコドンなど、少なくとも3つのコドンなどにわたって重複する。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド断片は、5~36のアミノ酸残基、例えば5~30アミノ酸残基の長さを有する。一実施形態では、ポリペプチド断片は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または36残基の長さを有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド断片はすべて同じ長さを有する。他の実施形態では、ポリペプチド断片は異なる長さを有する。
【0045】
候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチド断片が提示されるウイルス粒子をコードするウイルスベクターに挿入される。好ましくは、候補ポリヌクレオチドはカプシド遺伝子内に挿入される。好ましくは、カプシド遺伝子はウイルスゲノムの外側にある、すなわち、TRまたはITR配列が隣接していない。したがって、得られた改変カプシドはそれぞれ、ポリペプチド断片を提示する。カプシドは長い間徹底的に研究されており、当業者は、カプシド上に提示されるポリペプチド断片を挿入するための好適な位置を特定するのに苦労しないであろう。
【0046】
当業者には公知であるように、ウイルス粒子がAAVである実施形態では、挿入部位は、好ましくは、VP1のリパーゼドメインの外側にある。また、挿入部位は好ましくは、組織活性化タンパク質(AAP)の外側にあるべきである。挿入部位は、VP2のN末端にあってもよい。またそれは、組み立てられたカプシドの頂点にある、例えば、AAV2のCap遺伝子のアミノ酸残基587またはAAV9 cap遺伝子のアミノ酸残基588を中心とする場合もある。
【0047】
好ましい実施形態では、候補ポリペプチドを提示するカプシドは、他の方法では改変されていない、すなわち、そのアミノ酸配列は、他の点では天然または野生型カプシドと同一であるか、または本質的に同一である。したがって、ポリペプチドを提示するカプシドタンパク質の長さは、いくつかの実施形態では、天然の未改変カプシドタンパク質の長さより常に長い。こうした実施形態では、天然カプシドのポリペプチド断片は、候補ポリペプチドによって置き換えられず、天然カプシドのすべての残基は、候補ポリペプチドを提示する改変カプシドにも存在する。
【0048】
ウイルスベクターがAAV2である実施形態では、候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドは、例えば、得られるポリペプチド断片がVP1カプシドタンパク質の残基N587とR588との間に挿入されるように設計され得る。
バーコードポリヌクレオチド
【0049】
ポリペプチド断片の数、したがって候補ポリヌクレオチドの数が決定されると、複数のバーコードポリヌクレオチドがもたらされる。以下に詳述するように、バーコードポリヌクレオチドは固有のものである。当業者であれば、バーコードポリヌクレオチドは好ましくは、候補ポリヌクレオチドのいずれにも見出されない配列を有することを認識するであろう。バーコードポリヌクレオチドはまた、後のステップでのバックグラウンドノイズを回避するために、産生系として使用される細胞に天然では存在しないことが好ましい。さらに、バーコードポリヌクレオチドはまた、ライブラリが本開示の方法において発現されスクリーニングされる宿主細胞に天然に存在しない。固有のバーコードポリヌクレオチドの最小の長さは、当業者に明らかであるように、候補ポリヌクレオチドの数に依存するであろう。各候補ポリヌクレオチドは、単一のバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される。したがって、バーコードポリヌクレオチドの数は、候補ポリヌクレオチドまたは断片の数に少なくとも等しい。「作動可能に連結された」は、各単一候補ポリヌクレオチド断片が直接または間接的に単一バーコードポリヌクレオチドに接続され、それにより各候補ポリペプチド断片と対応する固有のバーコードポリヌクレオチドの間の連結ももたらすことを意味する。したがって、バーコードの同定は、対応するポリヌクレオチド断片またはポリペプチド断片の同定を可能にする。いずれのバーコードポリヌクレオチド断片も、2つの異なる候補ポリヌクレオチド(かつ、これにより間接的に2つの異なる候補ポリペプチド断片)に連結され得ない。
【0050】
バーコードポリヌクレオチドを合成する方法は、当技術分野で公知である。これらはまた、商業的供給業者から注文され得る。
【0051】
候補ポリヌクレオチドおよびバーコードポリヌクレオチドの固有のペアが得られると、各ペアをウイルスベクターに挿入して、バーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結された単一の候補ポリヌクレオチドをそれぞれ含む複数のウイルスベクターを得る。ウイルスベクターは、少なくとも一つのカプシド遺伝子を含み、それはウイルスゲノムの外側に、またはトランスで提供され得る。「ウイルスゲノム」とは、DNA分子の末端を区切る反転末端反復(ITR)内に位置するウイルス粒子内にパッケージされるウイルスDNAの部分、またはRNA分子の末端を区切る長い末端反復(LTR)などの末端反復(TR)内に位置する、ウイルス粒子内にパッケージされるウイルスRNAの部分を意味する。ウイルスベクターはまたrep遺伝子を含み、それはトランスで提供され得る。したがって、カプシド遺伝子(cap)および/またはrep遺伝子は、パッケージングプラスミドにおいて、またはヘルパープラスミドの一部として提供され得る(図7)。
【0052】
候補ポリヌクレオチドおよびバーコードポリヌクレオチドのペアは、ウイルスベクター中に同時にまたは順次挿入され得る。上で説明したように、この方法は、ウイルス粒子に所望の特性を付与するポリペプチドを同定するためにポリペプチド断片を提示する改変カプシドをスクリーニングすることを目的としているため、候補ポリヌクレオチドは、ウイルスゲノムの外側にあるカプシド遺伝子内に挿入されることが好ましい。対照的に、バーコードポリヌクレオチドは好ましくは、ウイルスゲノム内に、すなわち、長い末端反復または反転末端反復などの末端反復間に挿入される。理論に縛られることなく、この設計は、クローンの濃縮を回避し、PCRによって導入されるバイアス(配列に依存し得る)を取り除く。RNAからバーコードをシーケンシングすることにより、潜在的なPCRバイアスは低減され、改変カプシドの配列から独立である。また、バーコードあたりのコピー数は、読み取りに影響しない。
【0053】
バーコードポリヌクレオチドは、マーカーポリヌクレオチドについて以下に記載されるように、プロモーターの制御下にあってもよい。好ましくは、バーコードポリヌクレオチドは、ウイルス粒子が細胞に感染したときに、それが転写され、かつ任意により翻訳され得るように、ウイルスゲノムに導入される。
【0054】
上記から、バーコードポリヌクレオチドおよび候補ポリヌクレオチドが作動可能に連結されていても、それらが同じ核酸分子上で隣接している必要はないことは明らかであろう。
マーカーポリヌクレオチド
【0055】
ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む。検出可能なマーカーは、ウイルス粒子の発現パターンをモニターすることを可能にする。
【0056】
マーカーポリヌクレオチドは、以下に詳述するとおり、所望の特性に関与する候補ポリペプチドを同定するために、転写時に、ウイルスベクターのライブラリが導入される宿主細胞において天然で生成されない安定なmRNA分子を生じる、任意のポリヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、マーカーポリヌクレオチドは、蛍光マーカーなどの検出可能なマーカーをコードでき、それは発現時に視覚化され得るか、または他の方法で検出できる。マーカーポリヌクレオチドはまた、いくつかの実施形態では、バーコード自体であってもよい。これは、例えば、リコンビナーゼ系を発現する細胞に感染できるウイルスベクターを、本明細書において以下に記載される方法によって同定することが望ましい場合に関連し得る。リコンビナーゼ系は、loxP部位と組み合わせたCreリコンビナーゼ、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cas13、またはCRISPR/Cpf1などのCRISPR/Cas系であり得る。
【0057】
これは、一例として、図8に例示され、ここでリコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。反対方向でloxP部位の2つのペアの間にバーコード(BC)配列を含むウイルスベクター(ここではAAVベクター)が示される。loxP部位内に含まれる領域は、ユニバーサルシーケンスプライマーの結合部位(SPBS)も含む。当技術分野で公知であるように、そのようなベクターがCreリコンビナーゼを発現する細胞で転写される場合、loxP部位間の組換えが、それらの間に含まれる配列の反転をもたらす。対照的に、Creの発現がない場合、組換えおよび反転は生じない。2つのイベントは、SPBSに結合するプライマーおよび5’UTRに結合するプライマーまたは3’UTRに結合するプライマーを用いるシーケンシングにより、mRNAレベルで区別できる。5’UTRおよびSPBSに結合するプライマーでバーコードの配列決定を行うことにより、幅広い非選択的感染力を有するカプシドバリアントをマッピングできる。
【0058】
ポリアデニル化部位は、図8に例示されるように、マーカー遺伝子の下流に挿入され得る。これにより、転写は、ポリアデニル化部位が順方向転写である場合にのみ終結する。すなわち転写は、組換えがない場合、Creリコンビナーゼがない場合のみ終結する。したがって、そのような細胞から生じる転写物は、バーコードを欠く。対照的に、Creが発現される場合、転写は終結せず、転写物はバーコードを含む。したがって、転写物の配列決定は、Creリコンビナーゼを発現する細胞に由来する転写物と、Creリコンビナーゼの発現のない細胞に由来する転写物とを区別できる。
【0059】
Creリコンビナーゼは、プラスミドなどのビヒクルを介して細胞中に提供され得る。Creリコンビナーゼは、ウイルスベクター自体の中に含まれてもよい。対応するウイルス粒子に実際に感染した細胞のみが、Creリコンビナーゼを発現する。Creリコンビナーゼはまた、例えば、トランスジェニック動物においてライブラリをスクリーニングするときに、宿主自体によって発現され得る。
【0060】
図において「マーカー遺伝子」とマークされたボックスは任意であることを理解されたい。上で説明したように、バーコード自体がマーカーの機能を果たし得る。バーコードとは異なるマーカーが存在する実施形態では、マーカーの発現は、図に例示されるように、マーカーがプロモーターの下流で正しい方向であるように、組換えが起こる必要があり得ることに留意されたい。
【0061】
いくつかの実施形態では、マーカーポリヌクレオチドは、マーカーポリペプチドをコードする。マーカーポリペプチドは、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、抗生物質耐性遺伝子、細胞毒性遺伝子、表面受容体、β-ガラクトシダーゼ、TVA受容体(サブグループAのトリ白血病ウイルスの細胞受容体)、有糸分裂/癌遺伝子、トランス活性化因子、転写因子およびCasタンパク質からなる群から選択できる。好適なマーカーポリペプチドまたはポリヌクレオチドの多数の例は、当業者に公知である。
【0062】
いくつかの実施形態では、バーコードポリヌクレオチドは、マーカーポリヌクレオチドとは異なり、マーカーポリヌクレオチドの3’非翻訳領域(3’-UTR)に位置する。バーコードポリヌクレオチドは、メインマーカーとして使用されない場合であっても、追加的マーカーポリヌクレオチドの機能をなお果たす。
【0063】
いくつかの実施形態では、マーカーポリヌクレオチドは、ウイルスベクターのライブラリがスクリーニングされる標的細胞のコドン優先に基づいてコドン最適化される。
【0064】
マーカーポリヌクレオチドは、プロモーターの制御下にあってよい。したがって、いくつかの実施形態では、マーカーポリヌクレオチドは、プロモーター配列をさらに含む。プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。バーコードポリヌクレオチドがマーカーポリヌクレオチドでない場合、バーコードポリヌクレオチドは、マーカーポリヌクレオチドと同じプロモーターの制御下にあってよい。
【0065】
マーカーポリヌクレオチドは、細胞がリコンビナーゼ系を発現する場合にのみ、上記で説明したとおり、転写が可能であるように、プロモーターに対して配向され得る。マーカーポリヌクレオチドは、ポリアデニル化部位を含み得、これは、図8について上で説明したとおり、それが一方向でのみ転写を終結させるように配向され得る。
【0066】
プロモーターの選択は、それについてライブラリをスクリーニングしたい所望の特性の性質によって指示され得る。プロモーターの例は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ニワトリベータアクチン(CBA)、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)、ハイブリッドCBA(CBh)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)、血小板由来成長因子(PDGF)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーL1(ALDH1L1)、シナプシン-1、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒストン1(H1)、U6スプライソソームRNA(U6)、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CamKII)、伸長因子1-アルファ(Ef1a)、フォークヘッドボックスJ1(FoxJ1)、またはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターである。CMV、H1、U6、CamKII、Ef1a、FoxJ1およびGFAPプロモーターは、中枢神経系でのポリヌクレオチドの発現に好適であることが公知である。
ウイルスベクター
【0067】
本明細書に開示される方法による改変に好適であるウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ボカウイルスおよび狂犬病ウイルスに由来するベクターを含む。好ましくは、ウイルスベクターは、導入遺伝子を標的細胞に送達するのに好適であるウイルスに由来する。導入遺伝子は、遺伝子治療方法で使用される遺伝子であり得るか、または、標的細胞で産生されることが望ましい目的産物をコードする遺伝子であり得る。
増幅系
【0068】
複数のウイルスベクターが構築されると、それは増幅系に導入される。これは、各ウイルスベクターの複数のコピーが産生されることを可能にする。増幅系は、当業者に公知であるように、目的に適した任意の細胞集団である。好ましくは、増幅系は、原核細胞集団、例えば、細菌系、例えば大腸菌である。
【0069】
増幅系は、ライブラリを維持するために使用され得る。すなわちそれは、増幅系からウイルスベクターを検索できるような条件で、ライブラリのウイルスベクターのそれぞれの少なくとも1つを含むライブラリの一部を保存するために使用できる。例えば、ライブラリを含む増幅系の細胞を、凍結し、-80℃で保存できる。保存された増幅系からアリコートを採取して、ライブラリをさらに増幅し、当技術分野で公知の方法によりウイルスベクターを任意により検索できる。
参照系
【0070】
各候補ポリヌクレオチド(したがって各ポリペプチド断片)がどのようにバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結されるかを決定するために、複数のウイルスベクターの第1の部分が上記の増幅系から検索され、参照系に転送される。参照系は、そこからウイルスベクターをさらに分析できる細胞集団である。好ましくは、参照系は細菌性細胞集団である。参照系は、候補ポリヌクレオチドとバーコードポリヌクレオチドとの間の対応をマッピングするために使用される。このマッピングステップは、いくつかの方法で実行され得る。例えば、参照系からウイルスベクターを検索し、その後各ウイルスベクターの領域の配列を決定する。ここで配列決定された領域は好ましくは、少なくともバーコードポリヌクレオチドおよび候補ポリヌクレオチドを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、ルックアップテーブルが作製され、どのバーコードポリヌクレオチドがどの候補ポリヌクレオチドに、したがってどのポリペプチド断片に連結されるかを列挙する。これを行う方法の例を実施例1および図1Bに示す。Cre組換えの後、emPCRベースのイルミナシーケンスアダプターを追加した後、ランダムバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結された候補ポリヌクレオチドのプール全体を、ペアエンドシーケンシングにより配列決定し、これにより各ポリペプチド断片を固有のバーコードポリヌクレオチドに連結するルックアップテーブルを得る。ルックアップテーブルを作製する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0072】
したがって、増幅系および参照系の並行使用は、各バーコードと各ポリペプチド断片の間の対応のマッピングと同時にウイルスベクタープレップの生成を可能にする。
産生系
【0073】
ウイルスベクターのライブラリからウイルス粒子のライブラリを製造するために、産生系が必要とされ得る。当技術分野で知られるように、産生系は、細胞を含み、ウイルス粒子を複製および/または産生するために必要なエレメントがウイルスベクター自体に含まれない場合、これらのエレメントを含むプラスミドまたはベクターをさらに含み得る。したがって、複数のウイルスベクターの一部は、上記の増幅系から検索され得、その結果この一部は、ライブラリのウイルスベクターの各々の少なくとも1つを含み、その後、産生系に移されて、複数のウイルス粒子を得ることができる。
【0074】
産生系は、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞、SF9細胞などの昆虫細胞、またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞などの酵母細胞を含むか、またはこれらから構成され得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒーラ細胞、初代ニューロン、誘導ニューロン、線維芽細胞、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、または胚性腎臓細胞などの胚性細胞、例えばHEK293細胞である。
【0075】
産生系は、さらにベクター、例えば細胞中でウイルス粒子を産生するために必要なプラスミドを含み得る。図7は、DNAウイルスの産生のために例示されるいくつかのそのようなプラスミド系を示す。典型的な系は、3つのプラスミドに基づく:
-産生されたビリオンにパッケージ化された遺伝子配列を含むトランスファープラスミド。配列は、反転末端反復に隣接されて複製されカプシド中に挿入される。このプラスミドは、プロモーター、3’非翻訳領域(3’UTR)、およびポリアデニル化配列によって駆動される目的遺伝子も含んでよい。
-多くの場合強力なプロモーターの制御下にある、RepおよびCap遺伝子を含むパッケージングプラスミド。
-ウイルスの産生に必要な残りの遺伝子を供給するヘルパープラスミド。AAVの場合、これらはE4、E2aおよびVA、任意によりE1aおよびE1bであり得る。しかし、これらの遺伝子のいくつかは、宿主細胞において直接発現され得る。
【0076】
2つのプラスミドに基づく他の系は、上記のトランスファープラスミドと、ヘルパープラスミドおよびパッケージングプラスミドの両方に対応する1つのプラスミドとを含む。このような系は、簡易な方式で複製欠損ウイルスの産生を可能にする。
【0077】
本発明者らによって開発された第3のアプローチは、本明細書に開示されるスクリーニング方法に特に適している。パッケージングプラスミドおよびトランスファープラスミドは、1つの機能的プラスミドに組み合わされる。これは、Rep遺伝子およびCap遺伝子およびビリオンに挿入されるTRまたはITR隣接ゲノムをもたらすが、それでもベクターは、確実に複製欠損である。ヘルパープラスミドは、上記のとおりであり、すなわち、それは、ウイルス産生に必要な残りの遺伝子を供給する。したがって、特定の実施形態では、産生系は、細胞、Rep遺伝子およびCap遺伝子ならびにTRまたはITR隣接ゲノムをもたらすプラスミド、およびウイルスの産生に必要な残りの遺伝子をもたらすヘルパープラスミドを含む。
多様性
【0078】
したがって、本方法を使用して、実施例1に例解されるように、高い多様性を有するライブラリを設計することが可能である。多様性は典型的には、候補ポリペプチドのポリペプチド断片の数に比例して増加する。各ポリペプチド断片に対して異なるポリヌクレオチドを設計することにより、ライブラリの多様性をさらに高めることも可能である。同様に、天然ポリペプチドと比較して1つ以上の変異残基を含む候補ポリペプチドに対応する変異ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドも、ライブラリに含めることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、タンパク質の機能的ドメインを系統的にマッピングするために、たった1つのタンパク質ほどの小さいサブセットのタンパク質のポリペプチド断片を含むウイルス粒子のライブラリを得ることが望ましい場合がある。このアプローチは、実施例3に示すとおり、アルツハイマー病に関与することがわかっており、逆行性輸送をもたらすタンパク質であるAPPおよびタウの領域を同定するために、発明者らによって上手く使用された。
所望の特性を有するウイルスベクターおよびウイルス粒子の設計および製造
【0080】
したがって、本開示はまた、所望の特性を有するウイルスベクターを設計し製造するための方法を提供し、本方法は、本明細書において上記のとおりステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む:
vi)上記のステップv)b)の増幅系からウイルスベクターの一部を検索するか、または上記のステップv)b)の産生系からウイルス粒子の少なくとも一部を検索し、かつ細胞集団を上記検索したウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
vii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
viii)ステップvii)で選択された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
ix)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップviii)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ。
【0081】
いくつかの実施形態では、ステップix)のウイルスベクターは、本明細書で上記のとおり、増幅系で増幅される。
【0082】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、宿主細胞に送達される導入遺伝子をさらに含み、これは産生系で産生され、これにより所望の特性を有するウイルス粒子を得る。
【0083】
所望の特性を有するウイルス粒子を製造する方法も提供され、本方法は、上記のステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む:
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)細胞集団を、ステップvi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
ix)ステップviii)で同定された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップと;
xi)ステップx)のウイルスベクターを増幅系または産生系で産生するステップであって、それにより所望の特性を有するウイルス粒子を得る、ステップ。
【0084】
したがって、所望の特性に関与する候補ポリペプチドを同定し、この候補ポリペプチドを使用して所望の特性を有するウイルスベクターおよび粒子を設計し製造する方法が提供される。
所望の特性
【0085】
以下の実施例から明らかなように、所望の特性は、所与の用途に望ましい任意の特性であり得る。したがって、本方法は、カプシドに導入された場合に以下の特性の1つ以上を付与する候補ポリペプチドの同定に基づき、対応するウイルスベクターおよびウイルス粒子の同定ならびにその後の設計および産生を可能にする:
-シナプスなどの特定の種類の細胞に固有の構造などの、特定の細胞構造への親和性、または細胞分裂、細胞分化、ニューロンの活性化、炎症、または組織損傷などの、特定の細胞イベントに固有の構造への親和性;
-宿主細胞を取り巻く環境における輸送の改善または血液脳関門を通過する輸送の改善などの、輸送特性の改善;
-代謝肝臓を回避する能力の向上;
-免疫系を回避する能力の向上;
-免疫系を誘発する能力の向上。
【0086】
したがって、本発明の方法は、ウイルス粒子のカプシドに挿入されたときに、例えば、粒子のトロピズム、その感染力、または注射部位を取り巻く環境におけるその輸送を改変し得るポリペプチド断片を同定するために使用され得る。
【0087】
本発明者らは、本方法を使用してかつ実施例に例解されるように、ウイルスベクターライブラリを設計するためにシナプスに対して親和性を有することが知られるポリペプチドを選択した。次に、ライブラリをスクリーニングして、in vitroにおいてHEK293T細胞のトロピズムを失った変異カプシドと比較して、有意に改善された感染力を付与するポリペプチドを同定した。同じライブラリから、改変カプシドは、初代皮質ニューロンに対して改善された感染力を有するか、または改善された逆行性輸送容量を有することが確認された。
【0088】
したがって、本開示は、ポリペプチドを挿入することによって改変されたカプシドを含むウイルス粒子に対し所望の特性を改善するための方法も提供し、この方法は、上記のステップi)~v)を含み、さらに以下のステップを含む:
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞においてマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)所望の特性の改善に対応するマーカーの発現プロファイルを有する標的細胞において候補ポリヌクレオチドを同定するステップ。
【0089】
参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子は好ましくは、カプシドの明らかな例外を除いて、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子と同一であり得る。好ましくは、参照ウイルスベクターまたは粒子のカプシドは改変されていない。
細胞集団および標的細胞
【0090】
次のステップでは、ウイルス粒子ライブラリを細胞集団において試験する。所望の特性の性質は、所望の特性を有する粒子を同定するために、ライブラリの複数のウイルス粒子と接触させる細胞集団の性質を決定するために重要であろう。例えば、所望の特性が、特定のタイプの細胞、例えば、中枢神経系に対して増大されたトロピズムである場合、細胞集団は、この特定のタイプの細胞を含まなければならない。
【0091】
粒子のライブラリは、in vitroまたはin vivoで細胞集団と接触され得る。ウイルス粒子のライブラリは、例えば動物またはヒトに、例えば特定の注射部位で注射でき、または単に細胞培養物と接触されてよい。
【0092】
次に、マーカー発現をモニターし、マーカー発現が期待されるパターンまたは望ましいパターンに従う細胞を選択することが可能である。これは、当技術分野で公知である方法によって行うことができる。例えば、蛍光マーカーが使用される場合、細胞は蛍光発光についてモニターされ得、その後、発現されたバーコードを同定するために細胞からRNAを抽出する。RNAはまた、標的細胞から単に抽出され得、その後、バーコードポリヌクレオチドは、配列決定によって同定され得る。
【0093】
バーコードポリヌクレオチドは、それぞれ単一のポリペプチド断片に作動可能に連結されるので、バーコードポリヌクレオチドの同定は、所望の発現パターンに関与するポリペプチド断片の同定を可能にする。次に、このポリペプチド断片を使用して、関連するポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドをカプシドに挿入することにより、改変カプシドを有する改変ウイルス粒子をコードするウイルスベクターを設計できる。このため、それは粒子の表面に提示されるようになり、これにより本明細書で上述のとおり、天然のカプシドの特性を変化させる。改変されたウイルスベクターまたは粒子は、バーコードポリヌクレオチドの存在を必要としない。あるいは、所望の特性を提示するウイルスベクターまたはウイルス粒子は、それらが試験される細胞集団から直接検索され得る。
【0094】
次に、改変ウイルス粒子は、本明細書で上述したとおり、増幅系で増幅され、かつ/または産生系で産生されてよい。
導入遺伝子の標的細胞への送達
【0095】
したがって、本明細書に開示される方法は、所望の特性を付与するポリペプチドを挿入することによって改変されたカプシド含む改変ウイルス粒子を設計するために使用され得、ここで改変ウイルス粒子は特に、導入遺伝子の標的細胞への送達によく適している。
【0096】
「導入遺伝子」という用語は、ある生物から単離され、かつ異なる生物に導入される遺伝子を含むポリヌクレオチドを指すと理解されるべきである。したがって、導入遺伝子は標的細胞に対し天然ではない。
【0097】
したがって、本改変ウイルス粒子は、標的細胞に送達される導入遺伝子を封入し得る。改変ウイルスベクターまたはウイルス粒子が注射部位に注射されると、または標的細胞を含む細胞集団と接触すると、導入遺伝子が標的細胞に送達される。改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子が注射部位から標的細胞へと輸送され得るならば、標的細胞は注射部位の近くにある必要はないことに留意されたい。「注射部位」という用語は、その広い意味で理解されるべきであり、すなわち、それは、ベクターまたは粒子が注射される、ある生物のある部位を指し得るか、または単に、ベクターまたは粒子との接触時にベクターまたは粒子を感染させることが望ましい標的細胞を含む細胞集団を指し得る。
【0098】
したがって、標的細胞に送達される改変カプシド遺伝子および導入遺伝子を含む、標的細胞に導入遺伝子を送達するための改変ウイルス粒子も本明細書に開示される。こうしたウイルス粒子をコードするウイルスベクターも開示される。
【0099】
したがって、遺伝子治療のステップを含むかまたはそのステップからなる治療方法のための、本明細書に開示される改変ウイルス粒子(以下にさらに詳述するとおり、改変カプシドを含み得る)の使用も提供される。
【0100】
好ましくは、改変ウイルス粒子は、非改変ウイルス粒子、すなわち、天然の非改変カプシド遺伝子を含むウイルス粒子と比較して、改善された特性を呈する。改善された特性は、本明細書で上記に列挙された特性のいずれかであり得る。
【0101】
改変ウイルス粒子は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ボカウイルスまたは狂犬病ウイルスに由来し得る。
【0102】
改変ウイルス粒子は、本明細書に開示される改変カプシド、特に、配列番号1~配列番号50のバリアントを含むかまたはこれらのバリアントからなるポリペプチドを含むかまたはこれらからなる改変カプシドを含んでよく、最大でも1つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも2つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも3つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。バリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50のバリアントであってよい。
導入遺伝子
【0103】
導入遺伝子の性質は典型的には、望まれる結果によって指示される。
【0104】
導入遺伝子は、遺伝子治療に有用な遺伝子、例えば、個体において欠損している遺伝子を置換する「置換」または「修正」遺伝子であり得る。また、導入遺伝子は、発現時に標的細胞における欠損メカニズムを補償し得る、タンパク質または転写物をコードしてもよい。導入遺伝子はまた、疾患を引き起こす遺伝子の発現をノックダウンするかまたは低減するために使用され得る。これは、導入遺伝子がサイレンシングRNAをコードする場合、阻害によるものであり得る。例示として、神経系の疾患の症状を治療または緩和するために本ベクターを使用して導入遺伝子により標的化され得る遺伝子のいくつかの例を以下に列挙する。
【0105】
導入遺伝子は、ドーパミンの合成に関与する遺伝子であってよく、それはパーキンソン病の症状を緩和するのに有用であってよく、例えば、チロシンヒドロキシラーゼ、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、GTP-シクロヒドロラーゼ1(GCH1)、または小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)をコードする遺伝子であり得る。導入遺伝子は神経保護遺伝子でもあり得(例えば、Nurr1、GDNF、neurturin(NRTN)、CNDFまたはMANF)、これは、例えば、パーキンソン病に罹患している患者で発現することが望ましい場合がある。導入遺伝子は、発現時に、パーキンソン病を引き起こす遺伝子(例えば、α-シヌクレイン(SNCA)、LRRK2、Pink1、PRKN、GBA、DJ1、UCHL1、MAPT、ATP13A2またはVPS35など)のノックダウンまたは修正をもたらし得る。
【0106】
アルツハイマー病患者でノックダウンされるかまたは修正される可能性のある遺伝子の例は、APP、MAPT、SPEN1およびPSEN2である。ハンチントン病の患者では、HTT遺伝子(ハンチンチンをコードする)が導入遺伝子の送達によってノックダウンされるかまたは修正され得る。脊髄小脳失調症を患っている患者では、アタキシン1、2、3、7、または10、PLEKHG4、SPTBN2、CACNA1A、IOSCA、TTBK2、PPP2R2B、KCNC3、PRKCG、ITPR1、TBP、KCND3、またはFGF14が、導入遺伝子の送達時および発現時にノックダウンされるかまたは修正され得る。複数の系の萎縮では、SNCAまたはCOQ2が、ノックダウンまたは修正の関連標的であり得る。筋萎縮性側索硬化症では、導入遺伝子がC9orf72、SOD1、TARDBPまたはFUSの過剰発現または修正をもたらし得る。SMN1、SMN2、UBA1、DYNC1H1、またはVAPBは、脊髄性筋萎縮症患者のノックダウンまたは修正の標的である。DMDは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの過剰発現または修正の標的である。導入遺伝子は、統合失調症患者において、ABCA13、C4A、DGCR2、DGCR8、DRD2、MIR137、NOS1AP、NRXN1、OLIG2、RTN4R、SYN2、TOP3B、YWHAEまたはZDHHC8の修正を可能にし得る。ガラニン、NPY、ソマトスタチンまたはKCNA1は、てんかん患者における過剰発現の標的であり得る。導入遺伝子は、うつ病に罹患している個体において、p11、PDE11a、チャネルロドプシンまたは化学遺伝学的受容体の過剰発現を可能にし得る。
【0107】
導入遺伝子は、他の実施形態では、免疫原性物質であってよく、例えば、改変ウイルス粒子を使用して、免疫系の細胞を標的とし、所定のエピトープに対して個体を免疫化できる。
【0108】
本明細書に開示されるのは、改変カプシドを含む改変ウイルス粒子であり、ここで改変カプシドは、配列番号1~配列番号50からなる群から選択される配列を含むかまたはそれらからなるポリペプチドを含むかまたはそれらからなる。改変ウイルス粒子をコードする改変ウイルスベクターも開示される。一実施形態では、改変カプシドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50を含むかまたはこれらからなるポリペプチドを含む。
【0109】
こうした改変カプシドは、上記のポリペプチド断片またはそのバリアント、すなわち改変ポリペプチド断片のいずれかを含んでもよく、最大で1個(最大で2個、最大で3個など)のアミノ酸残基が欠失、改変または置換されている。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントを含むかまたはそれらからなるポリペプチドを含み、最大で1つのアミノ酸残基が欠失、改変または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも2つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも3つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。バリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50のバリアントであってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号51~配列番号100からなる群から選択される配列を含むかまたはそれらからなるポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99または配列番号100から選択される配列を含むかまたはこれらからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0112】
当技術分野で知られているように、導入遺伝子は、ウイルスゲノム、すなわち、ウイルスゲノムを区切る長い末端反復または反転末端反復配列などの末端反復配列の間に挿入できる。
標的細胞
【0113】
導入遺伝子送達の標的とされる細胞は好ましくは、導入遺伝子の発現が望まれる細胞である。標的細胞は、例えば、海馬および/もしくは嗅内皮質および/もしくは小脳および/もしくは脊髄および/もしくはてんかん焦点および/もしくは側坐核および/もしくは手綱核の皮質ニューロンおよび/もしくはニューロンのニューロン;グリア細胞(特に、尾状核被殻および/もしくは黒質および/もしくは大脳皮質および/もしくは梗塞領域における);DAニューロン(特に黒質および腹側被蓋野における);または筋細胞であってよい。
【0114】
改変ウイルスベクターのライブラリは、上記のようにスクリーニングでき、ここで選択される改善された特性は、標的細胞、特に上記に列挙された標的細胞に対する増大された感染性および/またはトロピズムである。
治療の方法
【0115】
障害の治療または予防の方法で使用するための、本明細書において開示される改変ウイルスベクター、または本明細書に開示される改変ウイルス粒子も本明細書に提供される。
【0116】
改変ウイルス粒子は、例えば、障害の治療または予防に有用であり得る導入遺伝子を送達するために標的化される細胞の感染性の増大をもたらし得る、ポリペプチドを提示する。
【0117】
したがって、それを必要とする対象に本明細書に記載の改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を投与するステップを含む、疾患または障害の治療または予防の方法が本明細書に開示され、この改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子は、導入遺伝子を含む。好ましくは、改変ウイルス粒子は、未改変カプシドを有する対応する非改変ウイルス粒子と比較して、導入遺伝子が送達される標的細胞に対する増大されたトロピズムおよび/または感染力を有する。
【0118】
改変ウイルス粒子は、本明細書に開示される改変カプシド、特に、配列番号1~配列番号50のバリアントを含むかまたはこれらのバリアントからなるポリペプチドを含むかまたはこれらからなる改変カプシドを含んでよく、最大でも1つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも2つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも3つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。バリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50のバリアントであってよい。
【0119】
必要としている対象は、疾患または障害に罹患しているか、これらに罹患している疑いがある、または罹患するリスクがある対象であり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、疾患は、パーキンソン病である。導入遺伝子は、チロシンヒドロキシラーゼ、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、GTP-シクロヒドロラーゼ1(GCH1)、または小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)をコードし得る。そのような実施形態に好ましい標的細胞は、尾状核被殻および/または黒質におけるニューロンおよび/またはグリア細胞である。導入遺伝子は、神経保護遺伝子(例えば、Nurr1、GDNF、neurturin(NRTN)、CNDFまたはMANF)の過剰発現をもたらし得る;そのような実施形態に好ましい標的細胞は、尾状核被殻および/または黒質におけるニューロンおよび/またはグリア細胞である。導入遺伝子は、α-シヌクレイン(SNCA)、LRRK2、Pink1、PRKN、GBA、DJ1、UCHL1、MAPT、ATP13A2、VPS35のノックダウンまたは修正をもたらし得る。そのような実施形態に好ましい標的細胞は、黒質および腹側被蓋野のDAニューロンである。
【0121】
他の実施形態では、疾患はアルツハイマー病であり、導入遺伝子は、APP、MAPT、SPEN1またはPSEN2のノックダウンまたは修正をもたらす。そのような実施形態の好ましい標的細胞は、海馬および嗅内皮質のニューロンである。
【0122】
他の実施形態では、疾患はハンチントン病であり、導入遺伝子はHTTをノックダウンするかまたは修正する。そのような実施形態に好ましい標的細胞は、尾状核被殻および/または大脳皮質のニューロンおよび/またはグリア細胞である。
【0123】
他の実施形態では、疾患は脊髄小脳失調症であり、導入遺伝子は、アタキシン1、2、3、7、または10、PLEKHG4、SPTBN2、CACNA1A、IOSCA、TTBK2、PPP2R2B、KCNC3、PRKCG、ITPR1、TBP、KCND3、またはFGF14をノックダウンするかまたは修正する。こうした実施形態に好ましい標的細胞は、小脳のニューロンである。
【0124】
他の実施形態では、疾患は多系統萎縮症であり、導入遺伝子はSNCAまたはCOQ2をノックダウンするかまたは修正する。そのような実施形態に好ましい標的細胞は、尾状核被殻および/または黒質および/または大脳皮質のニューロンおよび/またはグリア細胞である。
【0125】
他の実施形態では、障害は筋萎縮性側索硬化症であり、導入遺伝子はC9orf72、SOD1、TARDBPまたはFUSの過剰発現または修正をもたらす。こうした実施形態に好ましい標的細胞は、脊髄のニューロンである。
【0126】
他の実施形態では、障害は脊髄性筋萎縮症であり、導入遺伝子は、SMN1、SMN2、UBA1、DYNC1H1またはVAPBのノックダウンまたは修正をもたらす。こうした実施形態に好ましい標的細胞は、脊髄のニューロンである。
【0127】
他の実施形態では、障害はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、導入遺伝子はDMDの過剰発現または修正をもたらす。こうした実施形態に好ましい標的細胞は、筋細胞である。
【0128】
他の実施形態では、障害は統合失調症であり、導入遺伝子はABCA13、C4A、DGCR2、DGCR8、DRD2、MIR137、NOS1AP、NRXN1、OLIG2、RTN4R、SYN2、TOP3B、YWHAEまたはZDHHC8の修正をもたらす。このような実施形態に好ましい標的細胞は、皮質ニューロンである。
【0129】
他の実施形態では、障害はてんかんであり、導入遺伝子はガラニン、NPY、ソマトスタチンまたはKCNA1の過剰発現をもたらす。こうした実施形態に好ましい標的細胞は、てんかん焦点にあるニューロンである。
【0130】
他の実施形態では、障害はうつ病であり、導入遺伝子はp11、PDE11aの過剰発現をもたらす。そのような実施形態に好ましい標的細胞は側坐核のニューロンであるか、または導入遺伝子は、チャネルロドプシンまたは化学発生受容体の過剰発現をもたらし、そのような実施形態に好ましい標的細胞は手綱核のニューロンである。
薬物スクリーニング
【0131】
本明細書に開示された方法により得られる改変ウイルスベクターおよび粒子はまた、薬物スクリーニングを含む、複数のさらなる用途に有用であり得る。
【0132】
一態様では、所望の効果を有する薬物を同定するための方法が提供され、本方法は、以下のステップを含み:
a)候補薬物を提供するステップ;
b)候補薬物を細胞に投与するステップ;
c)b)の細胞へのウイルス粒子の送達を可能にする改変カプシドおよびマーカーポリヌクレオチドを含む改変ウイルス粒子を提供するステップ;
d)候補薬物の存在下および非存在下でマーカーポリペプチドの発現および/または局在化をモニターするおよび比較するステップ;
これにより、候補薬物がマーカーポリヌクレオチドの発現に影響を有するか否かを決定する。
【0133】
改変ウイルス粒子は、本明細書に開示される改変カプシド、特に、配列番号1~配列番号50のバリアントを含むかまたはこれらのバリアントからなるポリペプチドを含むかまたはこれらからなる改変カプシドを含んでよく、最大でも1つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも2つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。他の実施形態では、改変カプシドは、配列番号1~配列番号50のバリアントであるポリペプチドを含み、最大でも3つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている。バリアントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50のバリアントであってよい。
タンパク質ドメインの機能マッピング
【0134】
本明細書に記載された方法により入手可能な改変ウイルスベクターおよび粒子は、タンパク質ドメインの機能的マッピングを実施するために使用され得る。これを、実施例5で例示する。

本方法により、所与のメカニズムまたは障害に関与することが知られているかまたは推測されるポリペプチドのポリペプチド断片を使用して、改変カプシドのライブラリを製造でき、ここで改変カプシドはポリペプチドの異なる領域を提示する。
【0135】
したがって、本明細書に開示されるのは、ポリペプチドの挿入により改変されたカプシドを含むウイルス粒子に所望の特性を付与するポリペプチドの1つ以上の領域を同定する方法であって、この方法は、上記のステップi)~v)を含み、
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞においてマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)所望の特性に対応するマーカーの発現プロファイルを有する標的細胞において候補ポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより、この特性に関与するポリペプチドの領域を同定する、ステップ
をさらに含む。
【0136】
そのような用途では、当業者には明らかであるように、カプシドライブラリによって提示されるポリペプチド断片の数が多いほど、かつ/または個々のポリペプチド断片間の重複が大きいほど、機能的マッピングはより正確である。したがって、いくつかの実施形態では、各ポリペプチドは、ポリペプチド断片が1つを除くすべてのアミノ酸残基によって重複するような方法で、複数のポリペプチド断片により提示される。
実施例
実施例1-非常に多様なAAVライブラリの設計および生成、ならびに逆行性輸送機能のスクリーニング
材料および方法
AAVライブラリ骨格プラスミドクローニング
【0137】
バーコード化された改変AAVカプシドのクローニングに使用される骨格プラスミドを、GFP(pscAAV-GFP24)およびpDG25(アデノウイルス遺伝子VA、E2AおよびE4の欠失を含む)を発現する自己相補的AAV(scAAV)ベクターから開発した。最終的なプラスミドは、CMVプロモーターによって駆動されるeGFP発現カセット、およびマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーターを含む野生型AAV2ゲノムを含んだ。まず、XbaI、BsiWI、およびMluI部位を、pscAAV-GFP[Addgene#32396]のXhoI部位とHindIII部位との間に挿入した。次に、NheI部位を、鋳型として改変pDGを使用する重複拡張PCR26により、VP1カプシドタンパク質のN587とR588の配列の間に導入した。NheI部位の他に、最終的なPCR産物は、その後のクローニングおよびLoxP-JTZ17の挿入を容易にするため(Cre組換えおよび最終ライブラリの次世代シーケンシング用)に、BsiWI部位とMluI部位も含んだ。最後に、改変pscAAV-GFPを、XbaIおよびMluIを使用して消化し、重複拡張PCR産物を、MluIおよびBsiWIによって消化し、pDGを、BsiWIおよびXbaIによって消化した。次に、3つのDNA断片をライゲーションして、AAVライブラリの最終的な骨格プラスミドを得た。
ペプチド提示のためのタンパク質の選択
【0138】
挿入されるペプチドの候補は、既知のニューロン関連タンパク質に由来した。5つのカテゴリー、神経向性ウイルス、レクチン、ニューロトロフィン、神経毒、および神経タンパク質、に属する131のタンパク質を選択した。候補タンパク質の選択は、結合におけるタンパク質とニューロンとの間の既知の相互作用、ならびにAAV感染および複製プロセスの様々な段階(内在化、エンドソーム輸送、核内移行など)に基づいた。ペプチドを、大きいペプチド14,27の挿入が可能でありかつヘパラン硫酸プロテオグリカン結合12,13をブロックするとこれまでに報告された部位である、VP1カプシドタンパク質のN587とR588との間に組み込まれるように設計した11。4つの異なるペプチド構造を、A-14aa-A、A-22aa-A、A5-14aa-A5、G4S-14aa-G4Sとして設計した。これらは14または22アミノ酸(aa)残基の2つの長さのペプチドを含み、アラニン(A)の1つのアミノ酸のスペーサーまたは短いリンカー(A5またはG4S)のいずれかが隣接した28,29。候補タンパク質からの14aaまたは22aaのすべての可能な固有のペプチドを、同定し、Rプログラムを使用するスライディングウィンドウアプローチによって生成した。ペプチドライブラリを、HEK293細胞内での高レベル発現のためにコドン最適化を使用してオリゴヌクレオチドに逆翻訳した。
アレイオリゴヌクレオチドの合成および増幅
【0139】
92,918個の固有のオリゴヌクレオチドを含む最終的なオリゴヌクレオチドプールを、A-14aa-Aからのすべての可能な固有のペプチドをコードする90k DNAアレイ(カスタムアレイ)を使用して合成し、他の3つのペプチド構造からペプチドを選択した。
【0140】
オリゴヌクレオチドプールを、PCRアーティファクトを低減させる長い伸長時間でのエマルジョンPCRで増幅しギブソンアセンブリ用に調製した17,30
【0141】
PCRミックスを、0.5μg/μl BSA(NEB)を添加することを除いて製造業者の推奨に従いPhusion(商標) Hot Start II High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermofisher)を使用して調製した。簡潔に言うと、9容量の油性界面活性剤混合物(92.95%の鉱油、7%のABIL WEおよび0.05%のTriton X-100)をPCR混合物に加え、MP FastPrep-24 Tissue and Cell Homogenizer(MP Biomedicals)を使用して、4m/sの速度で5分間ホモジナイズしてエマルジョンを作製した。エマルジョンPCRに使用したPCRプログラムは、98℃で30秒の1サイクル、98℃で5秒の30サイクル、65℃で30秒、および72℃で2分(通常の伸長時間の8倍)、最後に72℃で5分の1サイクル、であった。PCR後に、各チューブに2容量のイソブタノールを追加することによりエマルジョンを破壊し、PCR産物を含む水相を短時間の遠心分離(16,000gで2分間)により分離し、最後にEZNA(商標)Cycle Pure Kit(Omega)を使用して精製した。
AAVライブラリのクローニングおよびバーコード化
【0142】
ギブソンアセンブリを使用して、オリゴヌクレオチドプール(ITRの外側に位置するカプシド遺伝子中に)およびバーコード(ITRの内側にあるGFPの下流に)を挿入して、バーコード化されたAAVプラスミドライブラリを生成した(図1)。1サイクルのPCRを実行して、ギブソンアセンブリのためのオーバーハングを有するバーコード化された断片を生成した。バーコード長は20ヌクレオチドであり、5回繰り返され結合のために静的配列が隣接する配列V-H-D-B(IUPAC曖昧性コード)を使用して、曖昧性ヌクレオチドとして定義した。オリゴは、その後のCre組換えを容易にするために、LoxP-JTZ17部位も含んだ。40μlのギブソンアセンブリ反応(NEB)を実施して、オリゴヌクレオチドプールおよびバーコード化断片を、1.3:1.3:1のモル比で200ngの消化ベクターに挿入した。反応物を50℃で1時間インキュベートし、DNA Clean&Concentrator-5(Zymo Research)を使用して精製した。1μl(37.4ng)の精製されたギブソンアセンブリ産生物を、製造業者のプロトコルに従い20μlのMegaX DH10B(商標)T1R Electrocomp(商標)(Thermo Fischer Scientific)細胞に形質転換した。5つの個別の形質転換を実施し、1つのチューブにプールした。形質転換された細菌の小分画を寒天プレートにプレーティングして、形質転換の有効性を検証した。プレートから10クローンを選択し、オリゴヌクレオチドおよびバーコードの挿入を、Bsp120I、BsrGI、およびSpeI(Fastdigest、Thermo Fischer Scientific)を使用する制限酵素消化により検証した。プレーティングされていない形質転換細菌を、マキシプレップとして一晩成長させ、ZymoPURE Plasmid Maxiprep Kit(ZYMO Research)を使用して精製した。
AAV産生-ライブラリ
【0143】
HEK293T細胞を175cmの細胞培養フラスコに播種して、トランスフェクション前に60~80%の培養密度に到達させた。25μg、250ngまたは25ngのAAVプラスミドライブラリ、および46μgのpHGTI-adeno118をリン酸カルシウムを使用してトランスフェクトした。AAVプラスミドライブラリ:pHGTI-adeno1のモル比は、それぞれ1:1、0.01:1(30cpc)、または0.001:1(3cpc)であった。1:1の比率は、各単一の粒子がキメラ変異カプシドタンパク質を含む可能性が高い、キメラAAVライブラリを受け取ると予想された。0.01:1および0.001:1の比率は、細胞がAAVプラスミドライブラリから約1つのメンバーを受け取り、その後を受け取るようにすると仮定された。クリーンなAAVライブラリ中で、各単一粒子は、同じ変異カプシドタンパク質および一貫したバーコードで構成された。ウイルスライブラリを、以前に記述されているように、イオジキサノール勾配を使用して回収し、精製した31。AAVゲノム力価を、リアルタイムPCRを使用して、記載されるようにベクターDNAの定量化により決定した32
AAVプラスミドライブラリの配列決定
【0144】
プラスミドライブラリのペアエンドイルミナシーケンスを容易にするために、AAVプラスミドの一部をCre-リコンビナーゼにより切り出して、挿入されたペプチド配列およびバーコードを共に近づけた(図1)。1.5μgのDNAを、6UのCre-レコンビナーゼ(NEB)と共に100μlの容量で37℃で1時間インキュベートした。反応を70℃で10分間停止し、DNA Clean&Concentrator-5(ZYMO Research)により精製した。産生物をBsiWIおよびMunIを使用して消化し、アガロースゲルで泳動し、所望の断片を選択し、Zymoclean Gel DNA Recovery(Zymo Research)を使用して精製した。ゲル抽出産生物を、PreCR Repair Mix(NEB)を使用してPreCR Repairに供した。50μlの反応液中で、50ngのDNA、100μMのdNTPおよび1X NADを1XのThermoPolバッファーにて37℃で20分間インキュベートした。5μlのPreCR修復DNAを、Phusion HSII(Thermo Fischer Scientific)を使用して、P5/P7イルミナプライマーP11と、P12、P13、P14、P15の混合物によりPCRした。この場合も、PCRにおける断片間の組換えを減らすために、エマルジョンPCRを実施した。エマルションは前述のように作製した。PCRサイクルは、98℃で30秒を1サイクル、98℃で5秒、63℃で15秒、および72℃で3分(通常の伸長時間の8倍)を18サイクル、ならびに72℃で5分を1サイクルであった。エマルションを破壊し、産生物を前述のように精製し、PreCR Repairを実行した。前のステップからの5μlのPreCR修復DNAを、Nextera(商標)XTインデックスキット(Illumina)を使用して、次のエマルジョンPCRで使用してNextera XTインデックスを追加した。PCRプログラムは、98℃で1分を1サイクル、98℃で15秒、65℃で20秒、および72℃で3分(通常の伸長時間の8倍)を10サイクル、ならびに72℃で5分を1サイクルであった。Nextera XTインデックスエマルジョンPCRからの産物を精製し、SPRIselectキット(Beckman Culter)を使用してサイズ選択した。精製されインデックス化されたPCR産物を、150bpペアエンドシーケンシングによるIllumina MiSeq Reagent Kit v2(Illumina)を使用して配列決定した。
RNA由来のバーコードの配列決定
【0145】
全RNAを、製造業者のプロトコルに従いPureLink(商標)RNA Mini Kit(Thermo Fischer Scientific)を使用して、脳組織、初代ニューロンおよびHEK293T細胞から単離した。RNAサンプルをDNase I(NEB)とインキュベートして、DNA混入を除去した。5μgのRNAを1ユニットのDNase Iと1X DNase I反応バッファー中でインキュベートして、最終容量を50μlにし、37℃で10分間インキュベートした。その後、0.5μlの0.5M EDTAを加え、次いで75℃で10分間熱失活させた。DNase Iで処理されたRNAを、製造業者の推奨に従いqScript cDNA合成キット(Quanta)を使用してcDNAに逆転写した。2μlのcDNAを次に、プライマーP16およびP17を使用するPCRにより増幅した。PCRプログラムは、98℃で30秒の1サイクル、98℃で5秒の35サイクル、65℃で15秒、72℃で30秒、続いて72℃で5分を1サイクルであった。バーコードを含むPCR産物を、Zymoclean Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research)を使用してゲル抽出により精製した。20ngの精製されたDNAを、プライマーP18と、P12、P13、P14、P15の等しい混合液を使用するP5/P7 IlluminaアダプターPCRに供した。PCRサイクルは、98℃で30秒を1サイクル、98℃で5秒を10サイクル、65℃で15秒、72℃で30秒、続いて72℃で5分間の1サイクルであった。PCR産物を、前述のとおりゲル抽出により精製した。続いて、Nextera(商標)XT Index Kit(Illumina)を使用してNextera XT Index PCRを実施した。PCRプログラムは、98℃で1分の1サイクル、98℃で15秒の6サイクル、65℃で20秒、72℃で1分、続いて72℃で5分の1サイクルであった。PCR産物を、SPRIselect(Beckman Coulter)を使用して精製した。精製したPCR産物を、75bpのペアエンドリードによるIllumina NextSeq(商標)500/550 Mid Output Kit v2(Illumina)を使用して配列決定した。
ウイルスライブラリの配列決定
【0146】
2つのAAVバッチを産生した(産生方法については、「AAV産生カプシド検証研究」を参照のこと)、カプシドおよびバーコードを含むプラスミドの100倍希釈(30cpc)を含む1つのバッチと、同じプラスミドの1000倍希釈(3cpc)(「AAV 産生-ライブラリ」中の250ngおよび25ngに対応)。産生、精製および滴定の後に、両方のバッチをDNaseIで処理し、Proteinase Kにより溶解させた。ウイルス溶解物を2ラウンドのPCRに供して、Illumina互換のP5/P7配列およびNexteraXTインデックスを追加し、SPRIselect(Beckman Culter)を使用して精製した。精製しインデックス化したサンプルを、75bpのペアエンドリードによるIllumina NextSeq(商標)500/550 Mid Output Kit v2(Illumina)を使用して配列決定した。
ヒトES細胞の形質導入
【0147】
ヒトES細胞をドーパミン作動性前駆細胞に分化させた36。分化が開始して42日後に、細胞を、5x10gc/ウェルを使用してscAAV-GFPで形質導入し、一晩インキュベートした。形質導入の72時間後に、細胞を4%PFAで固定し、Map-2、チロシンヒドロキシラーゼ、およびDAPIについて染色した(免疫組織化学を参照)。合計で29の異なるAAVカプシドを検証した。細胞をCellomics rophos Plate runnerおよび共焦点顕微鏡で分析した。
データ評価ワークフロー
【0148】
完全な相互作用のないワークフローを、Bioconductorリポジトリからの複数のパッケージと共にR統計パッケージを使用して実装した。これらのスクリプトから、様々なユーティリティの外部アプリケーション(bbmap、Blast、Starcode37、bowtie2、samtools、Weblogo3、およびHammock38)を呼び出し、出力を、さらなる分析のためにRに返した。これは、https://bitbucket.org/MNM-LU/aav-libraryのGitリポジトリとして、および自己維持型のDockerイメージBjorklund/aavlib:v0.2として公開されている。
【0149】
簡潔に言うと、バーコードおよび配列の同定、トリミング、ならびに品質のフィルタリングを、既知の骨格配列とリードのkmereマッチングを可能にする、bbmapソフトウェアパッケージ39を使用して行った。バーコードのリードの大多数を20の長さに対して配列決定し、長さが異なるバーコードのほとんどが19bpの長さとなるため、この研究におけるすべての分析では、18≦BC≦22の長さフィルターを適用した。
【0150】
ペプチド配列断片を、bbmapソフトウェアパッケージを使用して同様に単離したが、今回はいずれの長さ制限も適用せず、次いでblastnを使用して参照ペプチドにアラインした。
【0151】
Rベースの分析フレームワークの主要コンポーネントは、MapReduceプログラミング哲学の並列化された実装である40,41。このプロセスの詳細については、17を参照のこと。このプロセスでは、最初にBowtie2を使用して、合成ペプチドストレッチをタンパク質参照配列にアラインし、次に、blastnを使用して、配列決定された断片をペプチドにマッピングし、最後に、専用のRワークフローを実装して、PCRベースのサンプル調製において鋳型の切り替えを介して生成された誤ったリードをフィルタ処理した純粋なシーケンス結果を選択して、CustonArrayオリゴヌクレオチド合成から生じる変異を同定した。
【0152】
In vitroおよびin vivoのサンプルから、AAV由来のバーコードをターゲットシーケンシングによって同定し、選択されたタンパク質内のそれぞれの断片およびその起源に戻ってマッピングした。次に、輸送の有効性を定量化し、最も効率的な候補を特定してマッピングした。並行して、バーコードカウントをペプチドaa配列と共にHammockツール38に送り、コンセンサスモチーフを、Weblogo3を使用して視覚化した。
結果
ウイルスベクターライブラリの作製
【0153】
第1のステップとして、シナプスへの親和性が実証されている131のタンパク質を文献から特定した(図1A)。これらは4つの主要な群、ウイルス由来(カプシドおよびエンベロープ)タンパク質、宿主由来タンパク質(ニューロトロフィンおよび疾患関連タンパク質、例えばタウ)、神経毒およびレクチン、に分類される。131のタンパク質のNCBI参照配列を、アミノ酸配列に翻訳し、1aaシフティングスライディングウィンドウアプローチにより計算的に14aaの長いポリペプチドに消化した(図1Bの1)。合計で生成された61314個のペプチドは、44708個の固有のポリペプチドを含んだ。3つの代替的リンカー:単一のアラニン(14aaと呼ばれる)、5つのアラニン残基(14aaA5)を有するリッジリンカー、およびaa配列GGGGS(14aaG4S)を有する柔軟なリンカー、をポリペプチドに追加した(図1Bの2)。aaペプチドの最後の群を、22aaの長さおよび単一のアラニンリンカーを有して同様に生成した(22aaと呼ぶ)。合計92343のaa配列を次に、ヒト細胞での発現用にコドン最適化し、末端にオーバーハングを付加して、N587位でAAV2 Cap遺伝子中への、方向性があり瘢痕(scar)のないギブソンアセンブリクローニングを可能にした(図1Bの3)。全長170bpの得られたオリゴをすべて、CustomArrayオリゴヌクレオチドアレイ上で並行して合成した。
BRAVEアプローチのための非常に多様なAAVカプシドライブラリの作製
【0154】
ペプチドがN587で提示され、かつペプチド関連バーコードが同時にAAVゲノムUTRに挿入されるBRAVEアプローチ用のAAVライブラリを開発するために、最初に新しい骨格プラスミドを生成した。この骨格プラスミドにおいて、MMTVプロモーターの制御下にあるAAVパッケージング遺伝子(Rep、Cap、およびAAP)と、変異された反転末端反復(ITR)が隣接するGFP発現カセットとを組み合わせ、破壊された(gutted)自己相補的AAVゲノムを形成した15,16
【0155】
ペプチド配列を組み込むために、オリゴヌクレオチドプールが挿入されたVP1カプシドタンパク質のアミノ酸N587にNheI部位を導入した11。この制限部位の付加は、野生型AAV2ヘパラン硫酸プロテオグリカンの結合特性を変異させ12、このバリアントを、これ以降、AAV-MNMnullと呼ぶ。
【0156】
得られたオリゴヌクレオチドのプールを、AAV産生骨格に組み込んだ(図1Bの4)。20bpランダム分子バーコード(BC)を、4断片ギブソンアセンブリ反応を使用して、GFP遺伝子の3’UTRに同時に挿入した。一方向のCre組換えアプローチを使用し、その後、emPCRベースのイルミナシーケンスアダプターを付加し、次に、ペプチドのプール全体を、ランダムバーコードをルックアップテーブル(LUT)のそれぞれのペプチドに連結するペアエンドシーケンスを使用して、配列決定した(図1B5a)。このアプローチは、PCR中の鋳型の切り替えを回避し、挿入された断片に対しバーコードをほぼ完全に一致させることができる(図示せず)17。結果として得られたライブラリは、ペプチドおよびバーコードの3934570の固有の組み合わせを含み、90635の設計された断片(したがって、98%を超える回収率)を含みバーコードによる50Xのオーバーサンプリングに近かった。後者は、以下のバイオインフォマティクスプロセスにおけるノイズフィルタリング、エラー修正、および変異のマッピング(カスタムアレイで生成)に不可欠である。LUTの作製と並行して、同じプラスミドライブラリを使用して、複製欠損AAVウイルスベクターのプレップを生成する。この場合、ペプチドはカプシド表面に提示され、バーコードはAAVゲノムの一部としてパッケージ化される(図1Bの5b)。次に、複数の並行スクリーニング実験をin vitroおよびin vivoの両方で実行し、適切な選択(例えば、標的脳領域の切開)を行った後、mRNAを抽出し、発現したバーコードを配列決定した。配列決定したバーコードとLUTとの組み合わせにより、効果を、元の131のタンパク質(図1Bの6)に戻ってマッピングでき、かつコンセンサスモチーフを、Hammock、隠れマルコフモデル(HMM)ベースのクラスター化アプローチ(図1Bの7)を使用して決定できる。
AAVライブラリの作製
【0157】
AAV粒子ライブラリを作製するために、AAVプラスミドライブラリをアデノウイルスヘルパープラスミド(pHGTI-adeno1)と共にHEK293T細胞に同時トランスフェクションした18。AAVライブラリプラスミドを、非常に低濃度で供給して、プロデューサー細胞がAAVプラスミドライブラリからの少数(または単一)のカプシドバリアントを確実に生成すること6、19、すなわち、生成された各単一のビリオンは、同じ突然変異カプシドタンパク質のみで構成され正しいバーコードをパッケージ化することを、確実にする。1細胞あたり3または30コピー(cpc)のAAVプラスミドライブラリを産生に使用し、力価2.5x1012および4.4x1010GC/mlを有する2つのAAVライブラリ(それぞれAAV-MNMlib[30cpc]およびAAV-MNMlib[3cpc])を得た。いずれのペプチドが正しいアセンブリおよびゲノムのパッケージ化を可能にするかを評価するために、両方のバッチをDNase処理し(パッケージ化されていないゲノムを削除するため)、バッチを溶解し、プレップからバーコードを個別にシーケンスした。発現されたバーコードの多様性が非常に高いため、バーコードにおける重複は、産生物間で小さかった(図1C)。しかし、3cpcバッチにパッケージ化されたすべてのペプチドの絶対的な大部分も、30cpcバッチで回収した(図1C)。AAV-MNMlib[30cpc]ライブラリの成体ラットの前脳への注射は、挿入されたペプチドが、AAV2-WTベクターと比較して、形質導入の広範な広がりと接続求心性領域への逆行性輸送の両方を伴う、形質導入パターンにおける著しい変化をもたらすことを明らかにした(図1D)。ニューロンのin vivoでの効率的な逆行性輸送を可能にする個々の新規AAVカプシド構造をスクリーニングするために、動物がAAV-MNMlib[30cpc]またはAAV-MNMlib[3cpc]ライブラリプレップのいずれかから線条体に同じライブラリ注射を受ける、大規模な実験を実施した(図1E)。注射後8週間で、全RNAを線条体組織、眼窩前頭皮質(PFC)、視床(Thal)、中脳領域(SNpc)と注射された線条体(Str)組織から抽出し、その後転写されたバーコードからのcDNAのRT-PCRおよび超並列シーケンスを行った。異なる解剖領域において回収された固有のペプチドの分析は、挿入されたペプチドの約13%がin vivoにおいて効率的な形質導入を促進し、約4%が逆行性輸送を促進することを明らかにした。
【0158】
この実施例は、本明細書に記載の方法によって生成されたライブラリを使用して、カプシド上に提示されたときにウイルス粒子に所望の特性を潜在的に付与するペプチドを同定できることを示す。
実施例2-in vitroおよびin vivoでの単一世代BRAVEスクリーニング
材料および方法
AAV産生-カプシド検証研究
【0159】
HEK293T細胞を175cmの細胞培養フラスコに播種して、トランスフェクション前に60~80%の培養密度に到達させた。トランスフェクションの2時間前に、培地を27mlの新鮮なダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%FBS+P/Sと交換した。AAVを、3プラスミド系(トランスファーベクター、改変AAVカプシド、pHGT-1アデノウイルスヘルパープラスミド、比率1.2:1:1)を使用する標準PEIトランスフェクション33を使用して産生した。PEIおよびプラスミドを、3ml DMEM中で混合し、15分間インキュベートした後、細胞に添加した。トランスフェクションの16時間後に、27mlの培地を除去し、等量のOptiPRO無血清培地(Thermo Fischer Scientific)+P/Sを加えた。AAVを、トランスフェクションの72時間後に、ポリエチレングリコール8000(PEG8000)沈殿およびクロロホルム抽出を使用して採取し、その後、Amicon Ultra-0.5遠心フィルター(Merck Millipore)でPBS交換した34。精製されたAAVを、プロモーターまたは導入遺伝子に特異的なプライマーによるqPCRを使用して力価測定した。
In vitro感染
【0160】
HEK293T細胞を、DMEM+10%FBSおよびP/S中で培養した。初代皮質ニューロンを、前述35のように胚性ラット(E18)または1日齢の新生児マウスから単離し、黒い96ウェル平底培養プレート(Greiner Bio One)でNeurobasal/B27培地中にて培養した。細胞を、2x10、2x10および2x10gc/ウェルで形質導入した。AAVを培地に加え、細胞を一晩インキュベートした。翌日、AAV含有培地を新しい培地と交換した。細胞を、Cellomics(Thermo Fisher Scientific)およびPlate Runner(Trophos)を使用して、トランスフェクションの72時間後に分析した。
研究動物
【0161】
この研究で使用した成体の雌Sprague Dawleyラット(225~250g)は、Charles River(Germany)から購入し、温度制御された部屋で12時間の明サイクル/12時間の暗サイクル下で食物および水を自由に摂取できる状態で飼育した。この研究で実施されたすべての実験手順は、Lund-Malmo地域の実験動物の使用に関する倫理委員会によって承認された。
定位AAV注射
【0162】
すべての外科的処置を、腹腔内注射された、クエン酸フェンタニル(フェンタニル)と次亜塩素酸メデトミジン(Dormitor)の20:1混合液による全身麻酔下で行った。すべての定位注入のターゲット座標を、ブレグマに関連して識別した。頭蓋骨に小さい穴を開け、ベクター溶液を、ガラス毛細管(内径60~80μmおよび外径120~160μm)を備え自動注入ポンプに接続される25μlハミルトンシリンジで注射した。注射を、片側(右側)または両側のいずれかで行った。AAVライブラリを、線条体の片側におよび次の座標で注射した:前後+1.2mm、内側外側-2.4mm;背腹-5.0/-4.0mm;歯棒、-3.2mm。候補AAVベクターは、前後+1.2mm、内側外側-2.4mm;背腹-5.0/-4.0mm、および前後+0.0mm;中外側-3.5mm;背腹-5.0/-4.0mm;歯棒-3.2mm。MNM-004-GFPとAAV-2 Retro-mCherryの比較ベクター分析、およびMNM-004-GFPとMNM-004 mCherryの左右の比較は、前後+1.2mm、中外側-2.4/+2.4mm;背腹、-5.0/-4.0mmで注射した。MNM-008、AAV-Retro、およびAAV-2の間の線条体から中脳ドーパミン作動性ニューロンへの逆行性輸送の比較分析のために、TH-cre動物に次の座標の2つの部位でCTE-GFPベクターを一方的注射した:前後+0.8/-0.2mm;内側外側-3.0/-3.7mm;背腹、-5.0/-5.0/-4.0mm。BLA修飾動物には、MNM-004ベクターを前後+1.2mm、内側外側-2.4mm、背腹-5.0/-4.0mm;歯棒-3.2mmに、AAV-8ベクターを前後-2.2mm、内側外側+/-4.8mm、背腹-7.4mm、歯棒-3.2mmで注射した。AAVライブラリ動物の場合、各ラットは5μlの、AAVプラスミドライブラリの30cpcまたは3cpcのカプシド濃度を有するAAVライブラリの2.5x1010または4.4x10のベクターゲノムの用量でのベクター溶液、および通常量のpHGTI-adeno1プラスミドを受けた。候補ベクター動物は、注入部位ごとに2μlのベクターを受け、BLA修飾動物の動物には、線条体において3μlのMNM-004およびBLAにおいて3μlのCre誘導性DREADD AAV-8 DIO-hM3Dq/rM3Dを注射した。線条体に注射されたベクター間の比較分析では、2.3x1012のベクターゲノムのウイルス量を、デポジット部位あたり合計量1μlで注射した。すべての注入を、0.2ml/分の速度で行い、針を、さらに3分間留置した後ゆっくりと引き抜いた。手術後に、外科用ステープルを使用して創傷を閉じ、覚醒するまで動物を加熱マットの上に置いた。
組織処理
【0163】
注射8週間後に、脳を、その後の死後分析に従って処理した。RNA抽出では、COを使用して動物を屠殺し、脳を取り出し、脳モールドを使用して厚さ2ミリメートルのスライス片へと、冠状軸でスライスした。線条体組織、眼窩前頭皮質、視床および中脳領域を迅速に解剖し、個別にドライアイスで凍結し、RNA抽出まで-80℃で保存した。免疫組織化学的分析のために、動物を、ペントバルビタールナトリウムの過剰摂取(Apoteksbolaget,Sweden)によって深く麻酔し、50mlの生理食塩水、その後新たに調製した氷冷4%パラホルムアルデヒド(PFA)を含む、pH=7.4に調整した0.1Mリン酸緩衝液250mlで経心臓的に灌流した。次に、脳を取り出し、冷PFAでさらに2時間後固定した後、さらなる処理まで少なくとも24時間にわたり凍結保護用の25%緩衝ショ糖中に保存した。残りのPFA固定脳を、凍結ミクロトーム(Leica SM2000R)を使用して35mmの厚さの冠状切片に切断し、8シリーズに収集し、-20℃にて不凍液(0.5Mリン酸ナトリウムバッファー、30%グリセロール、および30%エチレングリコール)中で保存した。
免疫組織化学
【0164】
免疫組織化学分析のために、組織切片をTBS(pH7.4)で洗浄(3x)し、内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチし組織透過性を高めるために、0.5%TBS Triton溶液中の3%H2O2中で1時間インキュベートした。別の洗浄ステップの後、切片を5%ウシ血清でブロックし、1時間インキュベートした後、一次モノクローナル抗体と一晩インキュベートした。GFP発現を評価するために、ニワトリ抗GFPの一次抗体(1:20000;ab13970、Abcam)を使用して、脳切片に対して免疫組織化学を実施した。rM3D発現ニューロンを、HAタグ(マウス抗HA、Covance Research Products Inc、カタログ番号MMS-101R-200 RRID:AB_10064220、1:2000)の染色によって識別した。hM3D発現ニューロンを、mCherryの染色によって識別した(ヤギ抗mCherry、LifeSpan Biosciences Cat#LS-C204207、1:1000)。一晩インキュベートした後、TBS(x3)を使用して一次抗体を洗い流し、二次抗体と2時間インキュベートした。3、30-ジアミノベンジジン(DAB)免疫組織化学では、ビオチン化抗マウス(Vector Laboratories Cat#BA-2001 RRID:AB_2336180、1:250)、抗ヤギ(Jackson ImmunoResearch Labs Cat#705-065-147 RRID:AB_2340397、1:250)および抗ニワトリ(Vector Laboratories Cat#BA-9010 RRID:AB_2336114、1:250)二次抗体を使用した。蛍光顕微鏡分析またはビオチン化ヤギ抗ニワトリ(1:250;BA9010、Vector laboratories)を使用した。DAB免疫組織化学では、ABCキット(Vectorlabs)を二次抗体のインキュベーション後に使用して、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲートを介して染色強度を増幅した後、0.01%H中で発色させた。
一次グリアおよび最終分化ニューロンの免疫細胞化学
【0165】
hESCから分化した一次グリアおよびニューロンにおけるベクター形質導入効率の分析は、免疫蛍光検出を利用した。最初に培地を除去し、細胞を1xPBSで洗浄した。次に、細胞を含む各ウェルに100μlの4%PFAを加え、37度で10分間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞をPBSで洗浄した。次に、固定した細胞培養物を、ウェルあたり5%BSAおよび0.25%トリトン-xを含むKPBSからなる100μlのブロッキング溶液を使用して、室温で1時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去し、一次抗体を含むPBSに置き換え、4℃で一晩インキュベートした。グリア細胞を、次の抗体を使用して識別した:ウサギ抗GFAP(1:1000;ab7260、Abcam)およびウサギ抗IBA-1(1:2000;019-19741、Wako)。一晩インキュベートした後、ウェルをKPBSで2回洗浄し、次に、KPBSで二次抗体と共に、室温で合計2時間インキュベートした。使用した二次抗体は、Alexa結合抗ウサギ(Jackson ImmunoResearch Labs Cat#711-165-152 RRID:AB_2307443、1:250)を含んだ。最後に、細胞をKPBS中で2回洗浄し、画像分析のためにKBPS溶液に残した。
レーザー走査型共焦点顕微鏡
【0166】
すべての免疫蛍光分析を、Leica SP8顕微鏡を使用して行った。共焦点画像を常に、レーザーが順次モードでアクティブになるように設定されたHyD検出器を使用してキャプチャし、蛍光信号の漏れを回避した。405、488、552、および650nmの波長で固体レーザーを使用して、それぞれのフルオロフォアを励起した。ピンホールを、すべての画像取得で常にAiry1で保持した。取得後、デコンボリューションを、Richardson-Lucyアルゴリズムを利用するImageJの「Deconvolution」プラグイン(Biomedical Imaging Group[BIG]-EPFL-Switzerlandによって開発された、http://bigwww.ep.ch/)を使用して、かつPSF Generator(BIG,EPFL-Switzerland http://bigwww.ep.ch/algorithms/psfgenerator/)でギブソンモデルおよびランニモデルを使用して特定のイメージング機器について計算した点像分布関数(PSF)を適用して、実行した。
結果
【0167】
次に、BRAVE技術を利用して、HS結合がAAV-MNMnullカプシドで変異されたときに喪失した、in vitroでのHEK293T細胞に対するトロピズムの再導入(図2B)をスクリーニングした(図2B’)。400万個の独自にバーコード化されたカプシドバリアントのスクリーニングで、親AAV-MNMnullカプシド構造よりも大幅に改善された感染力が付与された131の含有タンパク質からいくつかの領域を発見した(図示せず)。HSV-2表面タンパク質pUL44から1つのペプチドを選択し、AAV-MNM001と名付けた最初の新規カプシドを生成した(図2A)。このカプシドは、個別にCMV-GFPパッケージ化に使用した場合、HEK293T細胞に対して著しく増加したトロピズムを示した(図2B’’)。2番目の実験で、BRAVE技術を使用して、in vitroでの初代皮質ラットニューロンの感染力を改善した。AAV2-WTおよびAAV-MNMnullの両方のベクターは、非常に低い初代ニューロンの感染力を呈し(図2D~D’)、AAV-MNM001は、ある程度の改善(図2D’’)を示す。BRAVEスクリーニングを介して、HSV-2 pUL1タンパク質のC末端領域に集まる複数のペプチドを確認し(図2C)、それは、新規のAAVカプシド(AAV-MNM002)で単独で使用された場合に、培養中の一次ニューロンの感染力を劇的に改善した(図2D’’’)。単一世代のBRAVEスクリーニングの有効性を実証する、これらの2つの概念実証研究の後で、逆行性輸送能力が改善された新規AAVカプシドを発見するために、フルスケールのin vivo BRAVEスクリーニングを確立した(図示せず)。このスクリーニングから、すべてが複数のバーコードで表され複数の動物で見つかった19のタンパク質から23のペプチドを選択した。25個のde novo AAVカプシド構造の23個は、AAV2-WTと同等であるかまたはそれより高いパッケージング効果を可能にした(図2E)。逆行性輸送能力を有するすべてのペプチドのHammockの隠れマルコフモデルに基づくクラスター化を使用して、23の血清型のそれぞれについて推定コンセンサスモチーフを決定し、指向最適化の基礎を提供できた。
In vivoでの逆行性輸送のためのAAV-MNM004カプシドの特徴付け
【0168】
HSV pUL22タンパク質のバイオインフォマティクス分析で、タンパク質のC末端領域は、すべての求心性領域(皮質、視床および黒質)への再現可能な輸送を示し、一方で線条体の注射部位では、同じバイアスを示さない(図3A)。これらの特性を呈するすべてのペプチドのHMMクラスター化は、2つの重複するコンセンサスモチーフを明らかにした(図3C)。これらは、AAV-MNM004およびAAV-MNM023カプシド構造内にそれぞれ生成され、いずれもin vivoで同様の輸送パターンを呈し(図示せず)、AAV-MNM004カプシドはより強力な輸送能力および注射部位でのより少ない広がりを示す。AAV-MNM004カプシドは、内側嗅内皮質まで遡るすべての求心性領域への逆行性輸送を促進し、親AAV2-カプシドは、注射部位において効率的な形質導入を促進したが、ベクターの逆行性輸送は、ごくわずかであった(図3D)。この作業をまとめている間に、AAV2カプシド表面(AAV2-Retro)の同じ場所に提示されると強い逆行性輸送を促進する、別のペプチドが公開された。In vivoで比較すると、AAV-MNM004カプシドは、同じ動物の反対側の線条体にレトロペプチド(Retro)を注射したAAV2カプシドと比較して、非常に類似した逆行性輸送特性を呈した(図示せず)。この2つのフルオロフォアの両側注射アプローチにより、PFC、視床の層内核、および扁桃体基底外側(BLA)を形成する十字形対同側突出を効率的に視覚化できた。
【0169】
この実施例は、カプシド上に提示されたときに改変カプシドに所望の特性を付与するタンパク質の断片を同定することによって、改善された特性を有する改変カプシドを設計できることを示す。
実施例3-in vivoおよびin vitroの両方で、アルツハイマー病に関与するタンパク質の機能をマッピングし理解するためのBRAVEアプローチの利用
【0170】
BRAVEアプローチは、in vivoで体系的にタンパク質機能をマッピングする固有の可能性を提供する。したがって、このアプローチを利用して、アルツハイマー病に関与する内因性タンパク質(APPおよびタウ)からのペプチドを提示し、これらのタンパク質由来のいずれかのペプチドがAAVカプシドの逆行性輸送を促進できしたがってアルツハイマー病におけるこれらのタンパク質の提唱された細胞間コミュニケーションの根底にあるメカニズムへの洞察を提供できるかを調べた(図4)。APPのマッピングで、sAAP N末端領域に1つおよびアミロイドβ領域(図示せず)に1つ、逆行性輸送を付与する2つの領域を発見した。興味深いことに、sAPP領域は、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)由来のVP1タンパク質の領域と有意な配列相同性を共有し、それはその軸索を取り込みおよび感染力を駆動していると考えられる(図4A)。微小管関連タンパク質タウに由来するペプチドの機能的特性は、さらに顕著であった。このタンパク質では、中央領域が非常に効率的な逆行性輸送を伝達した。より深い特徴付けの後、この領域は、3つの隣接する保存モチーフで構成され、3番目のモチーフは、VSV-G糖タンパク質(ニューロントロピズムを改善するためにレンチウイルスをシュードタイプするのによく使用される)およびHIV gp120タンパク質(図4B~C、E)と有意な相同性を共有する。2つの新規カプシド構造、AAV-MNM009およびAAV-MNM017を、この領域から生成した。新規カプシドはいずれも、in vivoにおいて逆行性輸送を促進したが、AAV-MNM017はさらなる興味深い特性も呈した。AAV-MNM017は、in vitroで非常に高い有効性で初代ニューロンおよび初代グリア細胞の両方に感染した。この特性を使用して、AAV-MNM017をタウ関連ペプチドから生成されないニューロトロフィン系AAV-MNM002カプシド(図示せず)と比較する置換実験を行った。一次ニューロン集団の3つの群を、様々な組換えタウバリアント(T44、T39、およびK18)で前処理した。T44バリアントは、MNM017対MNM002の感染力の比に明らかな影響を持たず、一方、K18はMNM017の感染力を高め、T39バリアントはAAM-MNM002と比較して感染力を効率的にブロックした。これは、AAV表面の提示されたタウ由来のペプチドが、全長ヒトタウタンパク質の結合活性も有するニューロンの受容体を利用していること、しかしタウの翻訳後改変がこの機能にとって重要であり得ることを示唆する。生成された24のde novoカプシド構造(AAV-MNM001-024)のin vitro評価で、in vitroにおいて一次グリア細胞への改善されたトロピズムを呈するそれらのサブセット(5つ)を発見した(図示せず)。感染力のほとんどはGFAP陽性星状膠細胞であったが、そのうちのいくつかはIBA1陽性ミクログリアにも感染した。動物モデルを使用するde novoカプシド設計の主要な障害は、ヒト細胞への翻訳に関して予測不可能であることであった。BRAVEアプローチは、人間の脳において既知の機能を有するウイルスおよびタンパク質から天然に生じるペプチドの使用によりこれを改善すると期待される。ヒト初代グリアでは、AAV-MNM017はその優れたトロピズムを保持する(図4D~D’’)。
【0171】
この実施例は、本明細書に開示された方法によって得られた改変ウイルス粒子を使用して、タンパク質機能を研究し、機能ドメインを一致させることができることを示している。
実施例4-BRAVEを使用したAAVカプシドの再シャッフルの評価およびDAニューロンに感染するカプシドの生成
【0172】
成功した複数の研究は、血清型間でのAAVカプシドの再シャッフリングを利用して、指向性進化を使用する新規カプシドを生成している。ここでは、BRAVEを利用して、他のAAV血清型からAAV2カプシドへペプチドが挿入される可能性を研究した(図5)。興味深いことに、N587 aaに及ぶ同じ領域AAV1、2および8からのペプチドの挿入は、AAV2カプシド中に効率よく挿入された。しかし、AAV9由来の同じ領域は、同じ機能を付与しなかった。さらに、VP1のN末端ドメイン(AAVカプシド表面に提示されることがまた知られる)由来の4つの追加領域も効率的に挿入できた。これらのドメインの3つはAAV1、6、8、9間で保存され、4つ目はAAV8には存在しなかった。最後のBRAVEスクリーニング実験で、線条体出力領域への注射からの黒質のドーパミンニューロンへの効率的な逆行性輸送を備える新規AAVカプシドバリアントを開発することを目的とした。このスクリーニングで、近接したCAV-2カプシドタンパク質の2つの領域を同定した(図5A~B)。興味深いことに、最初のペプチドは同じタンパク質の3番目の領域と有意な相同性を共有し(図5A)、2番目のペプチド(図5B)は、レクチン大豆凝集素(SA)由来のペプチドモチーフを共有している。SAもまた、シナプスからニューロンの細胞体へ効率的に輸送されるため、逆行性トレーサーとして使用できる20。CAV-2は、in vivoで終点からDAニューロンを標的化するためによく使用されるウイルスベクターであり21、したがってこの特性が、得られたAAV-MNM008カプシドバリアントで保持されたかどうかを確認する実験を行った。TH-Creノックインラットの線条体に注射されたCre誘導性AAVゲノム(CMV-loxP-GFP)を使用して、AAV-MNM008が、同じゲノムを運搬するAAV2-WTカプシド(図示せず)と比較して、黒質ニューロンの感染においてより効率的であることを見出した。この特性がげっ歯類のDAニューロンに限定されないことを確認するために、次いでDA除神経、半パーキンソン病、免疫不全ラットにおいて実験を行った。これらの動物は最初に、Cre発現ヒト胚性幹細胞(hESC)の分化により生成された、DA富化神経細胞移植を受けた。ニューロン移植の6か月後に、AAV-MNM008ベクターを動物の前頭皮質に注射し、それはこの領域を支配する移植ニューロンに効率的に輸送され、パッケージされた(図5C~C’’)。二重蛍光免疫組織化学により、これらの細胞の大部分が実際にTH陽性であり、それによりDA産生性であると推定されたことを確認できた(図5C’~C’’)。同じin vitro hESC分化プロトコルを使用して、de novoカプシドバリアントのin vitroニューロントロピズムがヒト起源のニューロンでも維持されるかを評価した。実際に、初代げっ歯類ニューロンにおいて高いトロピズムを呈したいずれのバリアント(AAV-MNM002、008、および010)も、野生型AAVバリアントよりはるかに高いトロピズムを示した(図示せず)。注目すべきは、AAV-MNM004カプシドバリアントは、in vivoでは効率的であるが、in vitroでの形質導入にはまったく適していなかったことである(図示せず)。また、ヒト起源のHEK293T細胞内でBRAVEによりスクリーニングしたAAV-MNM001は、初代ラットニューロンでは効率的でなかったが、ヒトニューロンでは非常に効率的であったことも興味深く(図示せず)、げっ歯類とヒトの細胞の受容体発現または構造に差があることを示唆し、したがってヒト細胞でまたはin vivoのヒト化系において直接スクリーニングすることの価値を示している。
【0173】
この実施例は、ウイルス粒子のトロピズムを改善するために本方法を使用できることを示している。
実施例5-扁桃体基底外側の機能的解剖および不安の発症におけるその関与
材料および方法
条件付け場所選好テスト
【0174】
条件付け場所嫌悪におけるBLAの選択的DREADD活性化を評価するために、2チャンバーボックスを使用し、そのボックスでは各チャンバーが、閉じられたドアを有する壁によって区切られた。各チャンバーは、同じ光強度を維持しながら、壁に視覚的な手がかりおよびチャンバーの床の触覚を用いて、他のチャンバーと異なるようにした。すべてのテストを、赤外線照明CCDカメラを使用して記録し、動物の位置を、Stoelting ANY-maze 5.2ソフトウェアパッケージを使用して記録した。1日目に動物を、生理食塩水を注射した後で最初に2つのチャンバーの一方に合計3時間適応させ、チャンバー内のあらゆるバイアスを制御するために群内で2つのチャンバーを交互にした。この試験を「対照」と呼ぶ。2日目に、動物を、CNO(3mg/kg)を皮下注射後に1日目とは反対側のチャンバーに入れ、チャンバー内で3時間放置した。この試験を「条件付け」試験と呼ぶ。3日目に、チャンバーを隔てているドアを外し、動物を、いかなる薬物投与なしにボックスの中に入れ、「選好テスト」と呼ぶ、あらゆる明らかな好ましいチャンバーの条件付けについて合計3時間記録した。
高架式十字迷路
【0175】
DREADDを使用してBLAの選択された活性化後の不安レベルをアッセイするために、高架式十字迷路(EPM)を使用した。EPMでペース調整された全動物を、Stoelting ANY-maze 5.2ソフトウェアを使用して記録した。EPMは黒のプレキシガラス製であり、十字形状の4本のアームで構成された。アームの2つ(互いに反対側)は開放され、すなわち壁がなく、残りの2つのアームは閉鎖され、すなわち壁を有した。テスト開始1時間半前に、動物にCNO(3mg/kg)を注射した。テスト開始時に、動物を迷路の中心に配置し、合計5分間記録しながら、迷路の開閉アームを自由に探索できるようにした。次に、動物の不安レベルを決定するために、動物がオープンアームまたはクローズアームのいずれかを探索している時間を記録から定量化した。
結果
【0176】
BRAVEにより生成したAAV-MNM004カプシドバリアントを利用して、扁桃体基底外側から背側線条体への求心性神経の機能的寄与に関する未解決の問題に答えた(図6)。これは、逆行性誘導化学療法(DREADD)アプローチを使用して行った。背側線条体においてCre-レコンビナーゼを発現するAAV-MNM004ベクター、およびCre誘導性(DIO)化学遺伝学的(DREADD)ベクターを、野生型ラットの扁桃体基底外側(BLA)に両側から注射した(図6A)。DREADDリガンドCNOを使用して背側線条体に突出しているBLAニューロンの活性を選択的に誘導した後、高架式十字迷路(EPM)を使用して例証された著しい恐怖および不安の表現型を発見した。ここで動物は、対照動物(Cre遺伝子がGFPに置換されている)と比較して、オープンアームで大幅に短かい時間を費やした(図6B)。これは、正の刺激を促進する腹側線条体へのBLAの突出の信じられている機能とは全く対照的であることを示す。これは、不安表現型を増加させ、オープンフィールドアリーナでの有意な過剰運動と、過度の掘り込み、激しい発汗、および凍結エピソードを含む恐怖表現型を伴った(図6C)。CNOチャレンジ後に、動物を屠殺し、免疫組織化学を使用して、BLAをHAタグ(hM3Dq DREADD発現を同定する)またはmCherry(rM3Ds DREADDを視覚化する)のいずれかで染色し、DABペルオキシダーゼ反応を使用して茶色の沈殿染色に発展させた(図6D~E)。
【0177】
この実施例は、本明細書に開示される方法により得られる改変ウイルスベクターおよび粒子が、複雑な細胞メカニズムの解明を助けるために使用され得ることを示す。
【表1】
引用文献
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項目
【項目1】
【0178】
ウイルスベクターのライブラリを製造する方法であって、
i)所望の特性を有するかまたは有することが推測されるポリペプチドの群から1つ以上の候補ポリペプチドを選択し、そのポリペプチドの配列を検索するステップと;
ii)複数の候補ポリヌクレオチドを提供するステップであって、各候補ポリヌクレオチドは、候補ポリペプチドの1つのポリペプチド断片をコードし、これにより転写および翻訳時に、各候補ポリペプチドは、各候補ポリペプチドの1つ以上のポリペプチド断片によって表される、ステップと;
iii)複数のバーコードポリヌクレオチドを提供するステップと;
iv)各候補ポリヌクレオチドをバーコードポリヌクレオチドと共に、カプシド遺伝子およびウイルスゲノムを含むウイルスベクターに挿入し、これによりそれぞれがバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される単一の候補ポリヌクレオチドを含む複数のウイルスベクターを得るステップであって、候補ポリヌクレオチドは、カプシド遺伝子内に挿入され、カプシド遺伝子は、ウイルスゲノムの外側にあり、バーコードポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に挿入され、ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む、ステップと、
v)ステップiv)で得られた複数のウイルスベクターを増幅系で増幅することであって、各ウイルスベクターは、増幅系において複数のコピーで存在する、ステップと、
a)参照系において、ステップv)の増幅系からの複数のウイルスベクターの少なくとも第1の部分を検索し、転送するステップであって、これにより各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングする、ステップと、
b)増幅系において複数のウイルスベクターの第2の部分を維持し、複数のウイルス粒子を得るために産生系において第2の部分の全部または一部を任意により移すステップ、
を含む、方法。
【項目2】
【0179】
1つ以上のポリペプチド断片が、少なくとも2つの重複するポリペプチド断片である、項目1に記載の方法。
【項目3】
【0180】
ウイルスベクターが、プラスミドである、項目1または2に記載の方法。
【項目4】
【0181】
各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングすることが、複数のウイルスベクターの各ウイルスベクターの領域の配列を決定することによって行われ、この領域は少なくともバーコードポリヌクレオチドおよび候補ポリヌクレオチドを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【項目5】
【0182】
配列決定が、領域のイルミナ配列決定などの次世代配列決定によって行われる、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【項目6】
【0183】
所望の特性を有するウイルスベクターを設計する方法であって、項目1~5のいずれか一項に記載の方法を含み、さらに以下のステップを含む方法;
vi)項目1のステップv)b)の増幅系からウイルスベクターの一部を検索するか、または項目1のステップv)b)の産生系からウイルス粒子の少なくとも一部を検索し、かつ細胞集団を上記検索したウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
vii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
viii)ステップvii)で選択された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
ix)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップviii)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップ。
【項目7】
【0184】
増幅系において、ステップix)で得られたウイルスベクターを増幅するステップをさらに含む、項目6に記載の方法。
【項目8】
【0185】
所望の特性を有するウイルス粒子を製造する方法であって、項目1~5に記載のいずれか一項に記載の方法を含み、さらに以下のステップを含む方法:
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)細胞集団を、ステップvi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)マーカー発現をモニターし、マーカー発現が所望のパターンに従う細胞を選択するステップと;
ix)ステップviii)で同定された細胞で発現されるバーコードポリヌクレオチドを同定するステップであって、これにより所望の特性に対応する候補ポリヌクレオチドおよび対応する候補ポリペプチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含むウイルスベクターを設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された候補ポリヌクレオチドの1つを含む、ステップと;
xi)ステップx)のウイルスベクターを産生系で産生するステップであって、それにより所望の特性を有するウイルスベクターまたはウイルス粒子を得るステップ。
【項目9】
【0186】
導入遺伝子を標的細胞に送達する方法であって、
a)改変カプシドを含み、かつ導入遺伝子を封入する改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を提供するステップであって、改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子は、項目8のステップxi)で定義されたウイルスベクターまたはウイルス粒子である、ステップと;
b)改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子を注射部位に注射するステップ
を含む、方法。
【項目10】
【0187】
改変ウイルス粒子が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50のバリアントを含むかまたはこれらからなるポリペプチドを含むかまたはこれらからなる改変カプシドを含み、最大で1つ、2つ、または3つのアミノ酸残基が欠失、改変、または置換されている、項目9に記載の方法。
【項目11】
【0188】
ウイルスベクターのライブラリであって、各ウイルスベクターが:
i)宿主細胞でウイルスベクターを発現させるための骨格;
ii)カプシド遺伝子およびその中に挿入され、候補ポリペプチドのポリペプチド断片をコードする候補ポリヌクレオチド;
iii)マーカーポリヌクレオチド;および
iv)バーコードポリヌクレオチド
を含み、
候補ポリペプチドは、所望の特性を有するかまたは有することが推測される1つ以上のポリペプチドを含む所定の群から選択され、
転写および翻訳時に、各候補ポリペプチドは、ライブラリ中の1つ以上のポリペプチド断片によって提示され、
候補ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターのカプシド遺伝子内に挿入され、これによりカプシド上に提示されるポリペプチド断片に転写および翻訳され、ウイルスゲノム内に挿入されたバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結され、
マーカーポリヌクレオチドは、ウイルスゲノム内に含まれ、カプシド遺伝子は、ウイルスゲノムの外側にある。
【項目12】
【0189】
1つ以上のポリペプチド断片が、少なくとも2つの重複するポリペプチド断片である、項目1~11のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目13】
【0190】
マーカーポリヌクレオチドが、バーコードポリヌクレオチドである、項目1~12のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目14】
【0191】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ボカウイルスまたは狂犬病ウイルスであり、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目1~13のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目15】
【0192】
ウイルスベクターが、少なくとも1つの複製遺伝子をさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目16】
【0193】
ウイルスベクターが、少なくとも1つのアセンブリー遺伝子をさらに含む、項目1~15のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目17】
【0194】
候補ポリヌクレオチドが、カプシド遺伝子の5’末端とカプシド遺伝子の3’末端の間に位置する、項目1~16のいずれか一項によるウイルスベクターのライブラリ。
【項目18】
【0195】
マーカーポリペプチドが、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、抗生物質耐性遺伝子、細胞毒性遺伝子、表面受容体、β-ガラクトシダーゼ、TVA受容体、有糸分裂/癌遺伝子、トランス活性化因子、転写因子およびCasタンパク質からなる群から選択される、項目1~17のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目19】
【0196】
マーカーポリヌクレオチドが、プロモーター配列をさらに含む、項目1~18のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目20】
【0197】
プロモーターが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、項目1~19のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目21】
【0198】
プロモーターが、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ニワトリベータアクチン(CBA)、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)、ハイブリッドCBA(CBh)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)、血小板由来成長因子(PDGF)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーL1(ALDH1L1)、シナプシン-1、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒストン1(H1)、U6スプライソソームRNA(U6)、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CamKII)、伸長因子1-アルファ(Ef1a)、フォークヘッドボックスJ1(FoxJ1)、またはグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターである、項目1~20のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目22】
【0199】
バーコードポリヌクレオチドが、マーカーポリヌクレオチドの3’非翻訳領域(3’-UTR)に位置する、項目1~21のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目23】
【0200】
宿主細胞が、ヒト細胞などの哺乳動物細胞、SF9細胞などの昆虫細胞、またはサッカロミセス・セレビシエ細胞などの酵母細胞である、項目1~22のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目24】
【0201】
宿主細胞が、ヒーラ細胞、初代ニューロン、誘導されたニューロン、線維芽細胞、胚性幹細胞、誘導された多能性幹細胞、SF9細胞などの昆虫細胞、酵母細胞または胚細胞、例えば胚性腎細胞など、例えば、HEK293細胞である、項目1~23のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目25】
【0202】
候補ポリペプチドが、カプシドポリペプチドまたはエンベロープポリペプチドなどのウイルスポリペプチド;疾患または障害に関連するポリペプチド;共通の機能を共有するポリペプチド;神経毒およびレクチンから選択される、項目1~24のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目26】
【0203】
候補ポリペプチドが、所望の特性を有することが知られているかまたは有することが推測されるポリペプチドである、項目1~25のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目27】
【0204】
所望の特性が以下の1つ以上である、項目1~26のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ:
-シナプスなどの特定の種類の細胞に固有の構造などの特定の細胞構造への親和性、または細胞分裂、細胞分化、ニューロンの活性化、炎症、または組織損傷などの、特定の細胞イベントに固有の構造への親和性;
-宿主細胞を取り巻く環境における輸送の改善または血液脳関門を通過する輸送の改善などの、輸送特性の改善;
-代謝肝臓を回避する能力の向上;
-免疫系を回避する能力の向上;
-免疫系を誘発する能力の向上。
【項目28】
【0205】
候補ポリヌクレオチド、マーカーポリヌクレオチドおよび/またはバーコードポリヌクレオチドが、コドン最適化される、項目1~27のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリ。
【項目29】
【0206】
項目11~28のいずれか一項に記載のウイルスベクターのライブラリを含む、細胞または複数の細胞。
【項目30】
【0207】
導入遺伝子を標的細胞に送達するためのウイルス粒子をコードするウイルスベクターであって、改変カプシド遺伝子および標的細胞に送達される導入遺伝子を含み、
改変カプシド遺伝子はウイルスゲノムの外側にあり、導入遺伝子の送達を改善するかつ/または標的細胞への標的化を改善するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか、またはそれらからなる、
ウイルスベクター。
【項目31】
【0208】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ボカウイルスまたは狂犬病ウイルスである、項目30に記載のウイルスベクター。
【項目32】
【0209】
ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50を含むかまたはこれらからなる、項目30または31に記載のウイルスベクター。
【項目33】
【0210】
ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50からなる群から選択される、項目30~32のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【項目34】
【0211】
導入遺伝子が、ウイルスゲノムの末端反復(TR)配列間に挿入される、項目30~33のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【項目35】
【0212】
注射部位への注射時に注射部位への求心性領域への逆行性輸送を促進する、項目30~34のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【項目36】
【0213】
項目30~35のいずれか一項に記載のウイルスベクターによりコードされるウイルス粒子。
【項目37】
【0214】
導入遺伝子を標的細胞に送達するための改変ウイルスベクターまたはウイルス粒子であって、改変カプシド遺伝子および標的細胞に送達される導入遺伝子を含み、
改変カプシドは、天然のカプシド遺伝子および導入遺伝子を含む未改変ウイルス粒子と比較して、次の:標的細胞への導入遺伝子の送達、標的細胞への標的化、改変ウイルスベクターもしくは改変ウイルス粒子の感染性、および/または改変ウイルスベクターもしくは改変ウイルス粒子の逆行性輸送、の1つ以上を改善する、
改変ウイルスベクターまたはウイルス粒子。
【項目38】
【0215】
改変カプシドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49または配列番号50を含むかまたはこれらからなるポリペプチドを含むかまたはこれらからなる、項目37に記載の改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子。
【項目39】
【0216】
ペプチドが、改変カプシド上に提示される、項目37または38に記載の改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子。
【項目40】
【0217】
遺伝子治療のための、項目30~36のいずれか一項に記載のウイルスベクターまたはウイルス粒子、または項目37~40のいずれか一項に記載の改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子の使用。
【項目41】
【0218】
神経系の障害などの、障害の治療方法で使用するための、項目30~35のいずれか一項に記載のウイルスベクターまたはウイルス粒子、または項目36~40のいずれか一項に記載の改変ウイルスベクターまたは改変ウイルス粒子。
【項目42】
【0219】
障害が、酵素欠乏症、代謝障害、凝集症(aggregopathy)、発癌性、ニューロンの活性亢進または活性低下、タンパク質の調節不全および誤った遺伝子スプライシングからなる群から選択される、項目41に記載の使用のためのウイルスベクターもしくは粒子または改変ウイルスベクターもしくは粒子。
【項目43】
【0220】
疾患が、ハンチントン病、小脳失調症、多系統萎縮症、うつ病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、血友病、脊髄性筋萎縮症、筋ジストロフィーからなる群から選択される、項目41または41に記載の使用のためのウイルスベクターもしくは粒子または改変ウイルスベクターもしくは粒子。
【項目44】
【0221】
所望の効果を有する薬物を同定するための方法であって、以下のステップ:
a)候補薬物を提供するステップ;
b)候補薬物を細胞に投与するステップ;
c)b)の細胞へのウイルス粒子の送達を可能にする改変カプシドおよびマーカーポリヌクレオチドを含む改変ウイルス粒子を提供するステップ;
d)候補薬物の存在下および非存在下でマーカーポリペプチドの発現および/または局在化をモニターしおよび比較するステップ;
を含み、これにより候補薬物がマーカーポリヌクレオチドの発現に影響を有するか否かを決定し、
改変ウイルス粒子および/または改変カプシドは、項目1~43のいずれか一項で定義されたとおりである、
方法。
【項目45】
【0222】
ウイルスベクターまたは粒子の標的細胞へのトロピズムを改善するための方法であって、項目1~5のいずれか一項に記載の方法を含み、
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞においてマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子からの発現と比較して、マーカーの発現の増加を有する標的細胞中の候補ポリヌクレオチドを同定するステップと;
x)改変カプシド遺伝子を含む、トロピズムが改善されたウイルスベクターまたはウイルス粒子を設計するステップであって、改変カプシド遺伝子は、ステップix)で同定された候補ポリヌクレオチドのうちの1つを含む、ステップ、
をさらに含む、方法。
【項目46】
【0223】
ポリペプチドを挿入することによって改変されたカプシドを含むウイルス粒子に所望の特性を付与するポリペプチドの1つ以上の領域を同定する方法であって、項目1~5のいずれか一項に記載の方法を含み、
vi)ステップv)b)の増幅系から複数のウイルスベクターの少なくとも一部を検索するステップ、またはステップv)b)の産生系から複数のウイルス粒子の少なくとも一部を検索するステップと;
vii)標的細胞を含む細胞集団を、vi)で得られた検索されたウイルスベクターまたはウイルス粒子、およびマーカーを含む参照ウイルスベクターまたは参照ウイルス粒子と接触させるステップと;
viii)標的細胞においてマーカー発現をモニターし、比較するステップと;
ix)所望の特性に対応するマーカーの発現プロファイルを有する標的細胞における候補ポリヌクレオチドを同定するステップであって、これによりこの特性に関与するポリペプチドの領域を同定する、ステップ
をさらに含む、方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
【配列表】
2024050766000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターのライブラリを製造する方法であって、
i)所望の特性を有するかまたは有することが推測されるポリペプチドの群から1つ以上の候補ポリペプチドを選択すること、および前記ポリペプチドの配列を検索することと;
ii)複数の候補ポリヌクレオチドを提供することであって、各候補ポリヌクレオチドは前記候補ポリペプチドの1つのポリペプチド断片をコードし、これにより転写および翻訳時に各候補ポリペプチドは各候補ポリペプチドの1つ以上のポリペプチド断片によって表される、提供することと;
iii)複数のバーコードポリヌクレオチドを提供することと;
iv)カプシド遺伝子およびウイルスゲノムを含む、ウイルスベクター中にバーコードポリヌクレオチドと共に各候補ポリヌクレオチドを挿入すること、これによりそれぞれがバーコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される単一の候補ポリヌクレオチドを含む複数のウイルスベクターを得ることであって、前記候補ポリヌクレオチドは、前記カプシド遺伝子内に挿入され、前記カプシド遺伝子は、前記ウイルスゲノムの外側にありかつ前記バーコードポリヌクレオチドは、前記ウイルスゲノム内に挿入され、前記ウイルスベクターは、検出可能なマーカーをコードするマーカーポリヌクレオチドを含む、挿入することと、
v)ステップiv)で得られた前記複数のウイルスベクターを増幅系で増幅することであって、各ウイルスベクターは、前記増幅系において複数のコピーで存在する、増幅することと、
a)参照系においてステップv)の前記増幅系から前記複数のウイルスベクターの少なくとも第1の部分を検索することおよび転送することであって、これにより各バーコードポリヌクレオチドを1つの候補ポリヌクレオチドにマッピングする、検索することおよび転送することと、
b)前記増幅系において前記複数のウイルスベクターの第2の部分を維持すること、および複数のウイルス粒子を得るために産生系において前記第2の部分の全部または一部を任意により移すこと、
を含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024050766000001.xml