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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050785
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】有孔虫由来の骨移植材
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/12 20060101AFI20240403BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61L27/12
A61L27/40
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015378
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2022513518の分割
【原出願日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0107653
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522074338
【氏名又は名称】セルコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボム ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ホ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特有の構造を有し、顕著な細胞増殖能、細胞付着能及び造骨細胞分化能を有し、新たに形成された骨を支持することができる構造を含む骨移植材を提供する。
【解決手段】ヒドロキシアパタイトを含む骨移植材であり、前記ヒドロキシアパタイトは、隔壁によって区分された複数のチャンバを含み、前記隔壁は、多数のポアを含む、骨移植材を提供する。好ましくは、前記ヒドロキシアパタイトは、有孔虫に由来するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアパタイトを含む骨移植材であり、前記ヒドロキシアパタイトは、隔壁によって区分された複数のチャンバを含み、前記隔壁は、多数のポアを含む、骨移植材。
【請求項2】
前記ヒドロキシアパタイトは、有孔虫に由来するものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項3】
前記有孔虫は、Baculogypsina sphaerulata、Baculogypsina bonarellii、Baculogypsina gallowayi、Baculogypsina lenticulate、Baculogypsina meneghinii、Baculogypsina
saonekiまたはBaculogypsina sphaericaである、請求項2に記載の骨移植材。
【請求項4】
複数のヒドロキシアパタイトは、粒子を含み、前記粒子のサイズは、100ないし4,000μmである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項5】
前記チャンバの直径は、10ないし80μmであるか、前記隔壁の厚みは、5ないし15μmであるか、前記ポアは、0.1ないし3μmである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項6】
ヒドロキシアパタイト表面の1cm当たり20,000ないし100,000個の均一なチャンバを有するものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項7】
前記ヒドロキシアパタイト粒子は、マグネシウムイオンを0.5ないし10重量%、ケイ素イオンを0.2ないし10重量%、またはストロンチウムイオンを0.1ないし5重量%で含む、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項8】
前記ヒドロキシアパタイトは、前処理された有孔虫の外骨格を、30ないし600℃で2ないし40時間水熱反応させて製造されたものであるか、300MHzないし300GHz波長の範囲のマイクロウェーブを100ないし1,500Wの量で0.5分ないし48時間処理して製造されたものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項9】
骨欠損治療のためのものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項10】
有孔虫を前処理する段階と、
前記前処理された外骨格を、30ないし600℃で2ないし40時間水熱反応させるか、あるいは300MHzないし300GHz波長の範囲のマイクロウェーブを、100ないし1,500Wの量で0.5分ないし48時間処理し、ヒドロキシアパイトを製造する段階と、
前記ヒドロキシアパタイトを焼結する段階と、を含む請求項1に記載の骨移植材を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有孔虫由来の骨移植材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、外傷、奇形または生理学的現象などにより、骨組織が損傷された場合、その部位に骨移植材を充填し、遮蔽膜を被せ、軟組織の介入を防ぎ、新生骨を生成させる骨誘導再生術(GBR:guided bon regeneration)を施術する。そのような骨欠損部の回復のための最も普遍的な骨誘導再生術方法は、他の部位の自身の骨を一部採取して移植する自家移植方法(autograft)、他者の骨を化学処理して移植する同種移植方法(allograft)、動物の骨を化学処理して移植する異種移植方法(xenograft)などがある。
【0003】
一般的に、自身の骨を一部採取して移植する自家移植方法に使用されるザが骨移植材の場合には、自家海綿骨(ACB:autogenous cancellous bone)を移植するために、免疫拒否反応もほとんどなく、骨吸収もほとんどなく、骨伝導能及び骨誘導能が良好であるという長所があり、同種移植方法及び異種移植方法に使用される、同種骨移植材と異種骨移植材との場合には、移植者本人ではない他者の骨を利用する同種移植や、他動物の骨を利用する異種移植を行うために、自家骨移植材の短所である移植者(graftee)本人の骨損失部位以外の部位に二次的な手術をしなくてもよいという長所がある。
【0004】
同種骨は、遺体や、生存している他の供与者から得るものであり、移植材を凍結させるか凍結乾燥させ、脱灰凍結乾燥させ、そして放射線照射を加えた形態で、抗原性を除去して使用することになり、骨形成に必要な期間が長く、新たに生成される骨量も少ないけれが、必要量をいつでも使用することができ、付加的手術部位を作らないという長所がある。そのような同種骨の種類としては、凍結乾燥骨のうち、非脱灰形態(DFDBA:demineralized freeze dried bone allografts)、脱灰形態(FDBA:freeze dried bone allografts)、及び放射線照射海綿骨形態(ICB:irradiated cancellous bone)がある。
【0005】
異種骨は、牛や豚のような動物から骨を採取した後、さまざまな過程を経て、免疫反応を弱化させ、骨伝導能を期待する移植材であり、さらなる手術部位を作らなくてもよいという長所と、所望する量ほど十分に使用することができるという長所とがあるが、吸収されて置き換えられるのに長時間がかかるという関係で、骨誘導よりは骨伝導のメカニズムと理解されるところが現在の流れである。そのような異種骨の種類としては、Bio-Oss、ABM/P-15及びBioCeraTMなどがある。
【0006】
合成骨は、実際の骨ではなく、人工的に合成して作った骨であるために、他の骨移植材に比べ、最も質に劣り、骨形成に必要な期間が長いが、低廉であるという長所があり、HAp(non-porous hydroxyapatite)、ヒドロキシアパタイトセメント(hydroxyapatite cement)、多孔質ヒドロキシアパタイト(porous hydroxyapatite)、ベータ型リン酸三
カルシウム(beta tricalcium phosphate)、PMMA(polymethlymethacrylate)、H
EMA(hydroxyet-hylmethacrylate)ポリマー及び生体活性ガラス(bioactive glass)などが臨床で使用されている。HA、PMMA及びHEMAポリマーは、非吸水性であり、リン酸三カルシウムとbioactiveは、吸水性であるが、そのような合成骨の種類は、第3リン酸カルシウム、硬組織個体重合体及び生活性ガラス質セラミックスなどがある。なお、ヒドロキシアパタイト(HAp)は、骨移植及び歯科装置において、骨代替物で広く使用されてきた。該HApは、骨伝導特性を有した生体適合性、及び生体活性物質における化学的組成は、天然骨組織と類似している。該HApは、一種のリン酸カルシウムバイオセラミックスであり、カルシウムイオンとリン酸イオンとを含む化学物質を原料として使用して合成することができる。水熱反応を介する海洋藻類からHApセラミックスを製造することに係わるいくつかの報告があった。
【0007】
従って、骨移植材として使用するために、さらに高い細胞増殖及び付着能を有する材料の開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、特有の構造を有し、顕著な細胞増殖能、細胞付着能及び造骨細胞分化能を有し、新たに形成された骨を支持することができる構造を含む骨移植材を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記骨移植材を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、ヒドロキシアパタイトを含む骨移植材であり、前記ヒドロキシアパタイトは、隔壁によって区分された複数のチャンバを含み、前記隔壁は、多数のポアを含むものである骨移植材を提供する。
【0011】
前記ヒドロキシアパタイトは、有孔虫(foraminifera)由来(例えば、有孔虫の外骨格由来)のものでもある。
【0012】
前記有孔虫は、殻がある根足虫類の原生動物を意味しうる。前記有孔虫の例は、グロビゲリナ(globigerina)属、カメリナ(camerina)属、エルフィジウム(elphidium)属、ミオジプシナ(miyogipsina)属またはバキュロジプシナ(baculogypsina)属を含んでもよい。さらに詳細には、前記バキュロジプシナ属は、Baculogypsina sphaerulata、Baculogypsina bonarellii、Baculogypsina gallowayi、Baculogypsina lenticulate、Baculogypsina meneghinii、Baculogypsina saonekiまたはBaculogypsina sphaericaでもある。
【0013】
本明細書で使用される用語「骨移植材(bone graft)」は、骨欠損の保全、骨形成の刺激、関節癒合、関節の制動及び脱臼防止にも使用される材料であり、骨移植術(bone grafting)にも使用されるものを意味しうる。従って、本明細書において、該骨移植材は、骨欠損治療用のものでもある。
【0014】
本明細書において、骨移植材は、例えば、篩骨(ethmoid)、前頭骨(frontal)、鼻骨(nasal)、後頭骨(occipital)、頭頂骨(parietal)、側頭骨(temporal)、下顎骨(mandible)、上顎骨(maxilla)、頬骨(zygomatic)、子宮頸部の脊椎骨(cervical vertebra)、胸部の脊椎骨(thoracic vertebra)、腰椎脊椎骨(lumbar vertebra)、仙骨(sacrum)、肋骨(rib)、胸骨(sternum)、鎖骨(clavicle)、肩甲骨(scapula)、上膊骨(humerus)、橈骨(radius)、尺骨(ulna)、手首骨(carpal bones)、中手骨(metacarpal bones)、指骨(phalanges)、腸骨(ilium)、座骨(ischium)、恥骨(pubis)、大腿骨(femur)、脛骨(tibia)、腓骨(fibula)、膝蓋骨(patella)、踵骨(calcaneus)、足根骨(tarsal)及び中足骨(metatarsal bones)に適用することができる。
【0015】
また、本明細書において、骨移植材は、歯科(歯牙インプラント)、成形外科または整形外科などにおいても使用される。
【0016】
本明細書で使用される用語「骨形成能」は、骨芽細胞(osteoblast)による骨基質形成及び骨再生(osteoanagensis)を誘導したり促進したりする機能を意味し、軟骨性骨形成、結合組織性骨形成及び転造式骨形成をいずれも含むものである。
【0017】
本明細書で使用される用語「骨伝導能」は、骨芽細胞を引き寄せ、骨芽細胞の骨基質形成を誘導したり促進させたりする機能を意味する。
【0018】
本発明で使用される用語「骨誘導能」は、骨組織再生に有用な細胞及び物質のみを欠損部に接近させ、所望する骨組織における再生を誘導する機能を意味する。
【0019】
用語「投与する」、用語「導入する」及び用語「移植する」は、相互交換的に使用され、一具体例による組成物の所望する部位への、少なくとも部分的局所化をもたらす方法または経路による個体内への、一具体例による組成物の配置を意味しうる。一具体例による組成物の細胞または細胞成分の少なくとも一部を生存する個体内において、所望する位置に伝達する任意の適切な経路によっても投与される。
【0020】
一具体例において、前記骨移植材は、複数のヒドロキシアパタイト粒子を含むものでもある。前記粒子のサイズは、50ないし4,000μm、50ないし3,000μm、50ないし2,000μm、80ないし2,000μm、100ないし4,000μm、100ないし2,000μm、100ないし1、500μm、100ないし1、200μm、100ないし1,000μm、100ないし700μm、または120ないし600μmのものでもある。
【0021】
一具体例において、前記チャンバの直径は、5ないし200μm、5ないし180μm、5ないし150μm、5ないし120μm、10ないし100μm、10ないし80μm、10ないし60μm、または15ないし60μmでもある。前記チャンバの断面積は、楕円形でもあり、前記直径は、楕円の短い直径、または長い直径のいずれも意味しうる。
【0022】
一具体例において、前記ポアの直径は、0.05ないし5μm、0.05ないし4.5μm、0.05ないし4μm、0.08ないし3μm、0.08ないし2μm、0.1ないし3μm、0.1ないし2μm、または0.2ないし2μmでもある。
【0023】
他の具体例において、前記隔壁の厚みは、1ないし50μm、1ないし45μm、1ないし40μm、2ないし40μm、4ないし40μm、4ないし30μm、5ないし30μm、5ないし20μm、または5ないし15μmでもある。
【0024】
他の具体例において、前記ヒドロキシアパタイト表面の1cm当たり20,000ないし100,000個、20,000ないし80,000個、25,000ないし80,000個、30,000ないし80,000個、30,000ないし750,000個、30,000ないし70,000個、または40,000ないし60,000個の均一なチャンバを有するものでもある。
【0025】
他の具体例において、前記ヒドロキシアパタイト粒子は、マグネシウムイオンを0.5ないし10重量%(atomic%)、ケイ素イオンを0.2ないし10重量%(at%)、またはストロンチウムイオンを0.1ないし5重量%(at%)で含むものでもある。本明細書において、重量%は、重量百分率を示し、典型的には、総重量の重量百分率によって表現される
一具体例において、前記ヒドロキシアパタイトは、有孔虫の外骨格を水熱反応させて製造されたものでもある。
【0026】
本明細書で使用される用語「水熱合成(hydrothermal synthesis)」は、水熱反応とも言い、高温の水、または高温、高圧の水の存在下でなされる物質の合成反応を意味する。
【0027】
本明細書による骨移植材において、ヒドロキシアパタイトは、前処理された有孔虫の外骨格を、少なくとも30℃、50℃、80℃または100℃以上で、例えば、30ないし600℃、80ないし600℃、100ないし600℃、100ないし500℃、100ないし400℃、または100ないし300℃で、2ないし40時間、2ないし30時間、10ないし40時間、または12ないし36時間水熱反応させて製造されたものでもある。
【0028】
他の具体例において、本明細書による骨移植材において、ヒドロキシアパタイトは、前処理された有孔虫の外骨格にマイクロウェーブを処理して製造されたものでもある。
【0029】
一具体例において、前記骨移植材は、TCP(tricalcium phosphate)を含んでもよく、含まなくともよい。
【0030】
前述の「含まない」というのは、「実質的に含まない」という意味であり、ここにおいて、「実質的に」とは、骨移植材の活性に影響を及ぼさないほどの量で含むものであるということを意味する。
【0031】
他の具体例において、前記骨移植材は、細胞増殖能、細胞付着能または造骨細胞分化能を有するものでもある。
【0032】
一具体例において、前記移植材は、細胞、例えば、体細胞または幹細胞をさらに含んでもよい。
【0033】
本明細書において用語「幹細胞」は、他の細胞への分化能を有する未分化細胞を意味しうる。前記幹細胞は、胚芽幹細胞、成体幹細胞、誘導万能幹細胞または間葉系幹細胞でもある。前記間葉系幹細胞は、多様な組織、多様な人種、または多様な年齢の人々から分離されたものでもある。例えば、前記間葉系幹細胞は、脂肪組織由来、胎盤由来、臍帯血由来、筋肉組織由来、角膜組織由来または骨髄組織由来の間葉系幹細胞でもある。また、例えば、前記間葉系幹細胞は、脂肪幹細胞、骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞、神経幹細胞、胎盤幹細胞または臍帯血幹細胞でもある。
【0034】
本明細書の骨移植材は、結合剤(binding agent)をさらに含んでもよい。本発明において結合剤は、前記ヒドロキシアパタイトを物理的に固定、結合または凝集させることにより、骨移植材を骨欠損部に適用するとき、骨移植材が骨欠損部からすぐに離脱させない材料を意味しうる。該結合剤の例としては、歯科用レジンセメント(dental resin cement);ガラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement);コラーゲン接着剤(collagen based glues);リン酸亜鉛(zinc phosphate)、リン酸マグネシウム(magnesium phosphate)のようなリン酸セメント(phosphate-based cements);カルボキシル亜鉛(zinc carboxylate);フィブリングルー(fibrin glues)、接着蛋白質(mussel-derived adhesive proteins)のような蛋白質結合剤(protein-based binders);のような公知の生体適合性物質を含んでもよい。
【0035】
本明細書の骨移植材は、添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、骨欠損部の感染を防止するか、あるいは骨移植材の骨形成能、骨伝導能または骨誘導能をさらに向上させるために添加される医学的に許容される追加成分でもある。該添加剤の例としては、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗生物質、抗癌剤、血管生成剤(angiogenic drugs)のような薬物;
多糖類水溶液;アミノ酸;ペプチド;ビタミン;蛋白質合成に係わる補助因子;ソマトトロピン(somatotropin)のような成長ホルモン;内分泌組織断片;コラゲナーゼ(collagenase)、ペプチダーゼ(peptidases)、オキシダーゼ(oxidases)のような酵素;軟骨断片(cartilage fragments)、軟骨細胞(chondrocytes)、骨髄細胞(bone marrow cells)のような生きている細胞;免疫抑制剤;脂肪酸エステル;及び核酸;を含むが、それらに限定されるものではなく、当業者であるならば、骨欠損部位、及び適用対象の状態により、適する添加剤を1種以上選択することができる。
【0036】
本明細書の骨移植材は、通常の方法により、散剤、懸濁液、エマルジョン、軟膏剤または注射剤の形態に剤形化され、骨欠損部位または周辺部位にも適用される。本明細書において「投与量」は、それを必要とする対象部位に適用されることにより、骨の形成または再生を誘導するか、あるいは促進するのに十分な量を意味する。本発明による骨移植材の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態及び骨欠損程度によっても異なり、当業者により、適切に選択されうる。
【0037】
また、本明細書は、前記骨移植材製造用組成物を提供する。
【0038】
本明細書による骨移植材製造用組成物は、水、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、カルシウムカーボネート、デキストリン、プロピレングリコール及びリキッドパラフィンからなる群のうちから選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0039】
他の態様は、前記骨移植材を製造する方法を提供する。
【0040】
前記方法は、有孔虫を前処理する段階;前記前処理された外骨格を、120ないし400℃で2ないし40時間水熱反応させ、ヒドロキシアパイトを製造する段階/または前記前処理された外骨格にマイクロウェーブを処理し、ヒドロキシアパタイトを製造する段階;及び/または前記ヒドロキシアパタイトを焼結する段階を含んでもよい。
【0041】
前記前処理する段階は、有孔虫を洗浄する段階;及び/または前記洗浄された有孔虫を、リン酸を提供することができる化合物を含む水溶液に添加する段階を含んでもよい。
【0042】
前記リン酸を提供することができる化合物の例は、(NH)HPO、HPO、NaPOまたはNaHPOなどを含んでもよい。
【0043】
また、前記水熱反応させ、ヒドロキシアパタイトを製造する段階は、少なくとも、30℃、50℃、80℃または100℃以上において、例えば、30ないし600℃、80ないし600℃、100ないし600℃、100ないし500℃、100ないし400℃、または100ないし300℃において、2ないし40時間、2ないし30時間、10ないし40時間、または12ないし36時間水熱反応させることを含んでもよい。
【0044】
また、前記マイクロウェーブを処理し、ヒドロキシアパタイトを製造する段階は、300MHzないし300GHz波長の範囲のマイクロウェーブを、100ないし1,500Wの量で、0.5分ないし48時間処理することを含んでもよい。
【0045】
また、前記焼結する段階は、製造されたヒドロキシアパタイトを、200ないし1,500℃に昇温させる段階;及び/または冷却させる段階を含んでもよい。前記昇温は、少なくとも複数回以上行われるものでもある。例えば、前記昇温させる段階は、1ないし20℃/minの速度で、400ないし800℃まで昇温させた後、一定時間(例えば、1時間ないし8時間)維持後、さらに1ないし20℃/minの速度で、600ないし1,500℃まで昇温させる段階を含んでもよい。また、前記冷却は、少なくとも常温まで進められるものでもある。
【発明の効果】
【0046】
一態様による有孔虫由来の骨移植材によれば、顕著な細胞増殖能、細胞付着能及び造骨細胞分化能を有し、新たに形成された骨を支持することができる構造を含んでおり、骨移植材として有用に使用されうる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子の構造を示した走査電子顕微鏡イメージである:1,000X、10,000X。
図1B】一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子の構造を示した走査電子顕微鏡イメージである100X、1,000X、3,000X。
図2】一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子のチャンバ及びポアの大きさを測定した走査電子顕微鏡イメージである。
図3】一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子のXRD回折分析結果を、対照群HApと比較した結果を示した図面である。
図4】一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞毒性測定結果を示したイメージである。
図5】一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞増殖測定結果を示したグラフである。
図6】一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞接着及び細胞浸潤の結果を示した走査電子顕微鏡イメージである。
図7】一具体例によるヒドロキシアパタイトのALP活性分析結果を示したグラフである。
図8】一具体例によるヒドロキシアパタイトの造骨細胞マーカー遺伝子発現レベルを示したグラフである。
図9A】一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内移植8週目のマイクロCT結果を示した図面である。
図9B】一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内移植8週目のマイクロCT結果を定量化して示したグラフである。
図10】一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内骨再生効果を示したH&E染色結果である。
図11】一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内骨再生効果を示したGoldner’s Masson trichrome染色結果である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0049】
参照例1.細胞培養
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を使用し、有孔虫由来HApの生体適合性を評価した。具体的には、細胞を、5% CO及び37℃の条件下で、10%牛胎児血清(FBS、Gibco-BRL)を含むα-MEM(Gibco-BRL、MD;Gaithersburg、MD)で培養
し、4~6段階の継代培養したhMSCを使用し、in vitro実験を行った。
【0050】
造骨細胞分化を誘導するために、骨形成刺激剤(0.1mMのデキサメタゾン、0.1Mのβ-グリセロリン酸(glycerophosphate)、及び50μg/mLのアスコルビン酸)が添加された培地で細胞を培養した。骨形成刺激剤が含有された培地に使用した全ての化合物は、細胞培養等級の試薬(Sigma Aldrich、セントルイス、MO、米国)を使用した
。正常成長培地及び骨形成刺激剤含有培地は、実験の間、2日ごとに交換して使用した。
【0051】
細胞培養実験前、HAp粒子を、まず、70%アルコールで30分間滅菌し、リン酸緩衝溶液(PBS)で10分間3回洗浄した。滅菌後、20mgの滅菌された純粋HAp及び有孔虫由来HAp粒子を、48ウェル培養プレートに入れた。細胞(5x10細胞/ウェル濃度)をシーディング(seeding)し、2時間培養(incubation)し、初期細胞を各HAp粒子に付着させた。前述の細胞が付着されたHAp粒子を、新たな培養プレートウェルに移した後、in vitro実験のために培養した。
【0052】
参照例2.細胞増殖
細胞増殖は、CellTiter96(登録商標) Aqueous One solution(MTS assay、Invitrogen、Carlsbad、CA、米国)を利用したミトコンドリア活性基盤分析で評価した。前述のように、hMSCを、1日、3日間、6日間、9日間及び12日間シーディングして培養した。事前に決定された時点において、50μLのCellTiter96(R)試薬溶液を、250μLの正常培地と混合した後、各ウェルに添加した。細胞培養4時間後、上澄み液を収集し、ELISA plate reader(SpectraMAX M3、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用し、490nmで吸光度を測定した。
【0053】
参照例3.細胞生存力及び細胞毒性
細胞生存力及び細胞毒性は、Live/Dead(登録商標)及びViability/Cytotoxicityキット
(Invitrogen、Carlsbad、CA、米国)を利用した蛍光染色法によって評価された。製造プロトコルにより、細胞培養されたHAp粒子を、PBS緩衝剤で30分間洗浄した。次に、キットのカルセインAM(calcein acetoxymethyl ester及びEthD-1(ethidium homodimer-1)を使用して細胞を染色した後、逆蛍光顕微鏡(DM IL LED Fluo、Leica Microsystems、Wetzlar、ドイツ)で観察した。
【0054】
参照例4.細胞付着及び細胞浸潤のin vitro評価
表面上の細胞付着、及びそれぞれのHAp粒子への細胞浸潤を観察するために、細胞を5日間培養した。サンプルをPBS緩衝液で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド溶液に、4℃で2時間固定させた後、0.1%四酸化オスミウム溶液で後固定(post-fixed)させた。次に、サンプルをgraded ethanol series(30%、50%、75%、85%、95%、100%、それぞれ10分)で脱水(dehydration)させた。次に、金でスパッタコーティング(sputter-coated)した後、EM(EM-30)で観察した。細胞浸潤を観察するために、HAp粒子を鋭いランセット(lancet)でスライスし、断面を露出させた後、SEM分析を行った。
【0055】
参照例5.ALP(alkaline phosphatase)活性測定
造骨細胞分化は、ALP(alkaline phosphatase)活性分析で評価した。ALP活性分析は、p-NPP(p-nitrophenylphosphate)を基質として使用して行った。詳細には、hMSCを粒子上にシーディングした後、骨形成刺激剤含有培地で培養した。細胞培養5日後、接着性細胞を、アイスボックス条件で、10分間1% Triton X-100/PBS溶液に、超音波処理(sonication)して溶解させた。粒子及び残骸物を除去するために、サンプルを、4℃で12,000rpmで遠心分離した。上澄み液を、ALP活性分析及び蛋白質濃度分析に使用した。本研究において、ALP活性は、総蛋白質含量で正規化(normalized)された。
【0056】
参照例6.リアルタイム重合酵素連鎖反応
HAp粒子上で培養されたhMSCの造骨細胞分化を測定するために、ALP、Col1αI(collagen type Iα1)、OCN(osteocalcin)及びBSP(bone sialoprotein)のようないくつかの骨形成マーカー遺伝子を、定量的リアルタイム重合酵素連鎖反応(RPCR)を使用して測定した。骨形成刺激剤含有培地で7日間培養した後、総mRNAを細胞から単離し、cDNAを、逆転写酵素(Invitrogen)及びオリゴ(dT)プライマーに転写した。cDNAは、TaqManUniversal PCR Master mix(Applied Biosystem)、及びALP(Hs01029144_m1)、Col1αI(Hs00164004_m1)、OCN(Hs01587814_g1)、BSP(Hs00173720_m1)、18S(Hsscience)に係わるプライマー&TaqManプローブセットで増幅させた。全てのTaqMan PCRは、StepOne Plus RPCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、米国)を介して行い、18S rRNA遺伝子を内部標準として共同増幅させた。
【0057】
参照例7.動物モデル
筋肉内用量のケタミン(35mg/kg、柳韓洋行、ソウル)及びキシラジン(5mg/kg、バイエルコリア、ソウル)を使用し、成体雄(年齢>3ヵ月以上)ニュージーランド白兎(2.5~3.0kg)4匹に麻酔を施した。そして、2%リドカイン溶液を使用し、局所麻酔を施した。組織切除後、外径が6mmであるトレフィン(trephine)を使用し、分離された3個の円形頭蓋骨欠陥を作った。1つの欠陥は、対照群として使用され、他の1つの欠陥は、純粋HAp粒子で充填し、3番目欠陥は、有孔虫由来HAp粒子で充填した。移植後8週において、治癒過程を観察し、欠陥を周辺の骨と共に、宿主の骨から切開した。そして、追加分析前、標本(specimens)を除去し、4℃で7日間固定液(phosphate buffered 4%パラホルムアルデヒド溶液(paraformaldehydesolution)、pH7.2)に置いた。
【0058】
参照例8.マイクロCT骨分析
新たに形成された骨は、マイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)(Sky-Scan 1172TM、Skyscan、Kontich、ベルギー)によって病理学的に評価された。
移植後8週目、サンプルを、0.5mmアルミニウムフィルタを使用し、60kVの電圧及び167μAの電流の条件でセッティングされたX線を利用して分析した。マイクロCT結果を基に、3Dソフトウェア(CTVol、Skyscan)基盤の3D再構成イメージで
、欠陥の定性的イメージを観察し、イメージ分析ソフトウェア(CT-analyzerTM、Skyscan)を使用し、骨体積の比率(BV:bone volume)を次のように計算した。
【0059】
BV(%)=(新生骨体積)-(残余移植材の体積)/総欠陥体積
参照例9.組織学的分析
移植後8週目、組織学的分析を行った。鼠(rat)頭蓋骨の固定された試片に対し、8%ギ酸/8% HClで石灰質を除去した後、graded alcohol series(70~100%)で脱水させた。最後に、試片をパラフィンに入れた。ロータリミクロトーム(rotary microtome)(HM 325TM、Microm、Walldorf、ドイツ)を使用し、5μm区画で切断した。各サンプルの中央部分から5個の区画を、HE(hematoxylin-eosin)及びGoldner’s MT(masson trichrom)で染色した。そして、サンプルをランダム選択し、顕微鏡で新たな骨形成を観察した(DMR、Leica、Nussloch、ドイツ)。
【0060】
参照例10.統計分析
数値は、平均±標準偏差(SD)で表され、統計的分析は、一元分散分析(ANOVA:one-way analysis of variance)で行った後、GraphPadPrism version 5.3(GraphPad Software、サンディエゴ、CA、米国)を使用したDunnett’s post-hoc testを利用して行った;P<0.05は、統計的に有意であると見なされた。
【0061】
実施例 ヒドロキシアパタイト粒子の製造及び分析
1.有孔虫を利用したヒドロキシアパタイト(HAp)粒子製造
有孔虫を利用したヒドロキシアパタイトは、下記のように製造した。
【0062】
まず、有孔虫(Baculogypsina sphaerulata、沖縄)は、市場で購入した。残留汚染物
質及び有機成分を除去するために、サンプルを、4%過塩素酸ナトリウム(NaClO)で煮た後、蒸溜水で洗浄した。詳細には、サンプルを、第1リン酸アンモニウム((NH)HPO)水溶液に添加した後、Ca:Pのモル比が10:6になるようにした。
【0063】
次に、サンプルをテフロン(登録商標)ラインド(Teflon-lined)ステンレス圧力容器に入れ、200℃で24時間加熱した。変換されたサンプルを沸騰水で洗浄し、60℃で乾燥させた。次に、HAp粒子をランセット(lancet)で細切りにした後、ステンレスシーブを使用し、200~500μm範囲の粒子を分離した。その後、前記粒子につき、焼結(sintering)工程を遂行し、結晶化を進めた。該焼結は、電気炉(Muffle furnace、SH-FU-4MH)内で行い、5℃/minの昇温速度で600℃まで昇温させた後、600℃で2時間維持した。その後、さらに5℃/minの昇温速度で800℃まで昇温させた後、800℃で4時間維持した。その後、常温まで温度を低くし、焼結過程を進めた。
【0064】
対照群としては、化学量論的に合成したHAp粒子(純粋HAp、200~500μm範囲の粒子サイズ)を、Dio Implant Inc.(釜山、韓国)から入手して使用した。
【0065】
2.化学的及び形態学的な特性
前述の実施例1.で製造された有孔虫由来HAp組成を分析するために、CuKα放射線を利用したX線回折分析(XRD、D8、Bruker AXS、Karlsruhe、ドイツ)を行い、スキャン速度0.02°/分、50kV、10~80°範囲の30mÅの条件で分析した。サンプルのイオン組成は、X線蛍光分光法(XRF、Bruker)で評価した。有孔虫由来HAp粒子のマイクロ構造及び表面形態は、走査電子顕微鏡(SEM)(EM-30、COXEM、大田、韓国)を使用し、真空下で観察された。
【0066】
前記走査電子顕微鏡イメージは、図1及び図2に示され、前記XRD回折分析結果は、図3に示され、サンプルのイオン組成は、下記表1に示されている。
【0067】
【表1】
【0068】
図1は、一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子の構造を示した走査電子顕微鏡イメージである。図2は、一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子のチャンバ及びポアの大きさを測定した走査電子顕微鏡イメージである。
【0069】
図3は、一具体例によるヒドロキシアパタイト粒子のXRD回折分析結果を、対照群HApと比較した結果を示した図面である。
【0070】
図1及び図2から分かるように、純粋HAp粒子のSEMイメージは、きつく圧縮されたHApブロックと、非ミクロンサイズの多孔性がほとんどである表面形態を示している。一方、一具体例によるヒドロキシアパタイトは、ポアを有する隔壁によって区分された複数のチャンバを有しており、内部が相互連結された多数のチャンバに分けられたマクロ(macro)サイズのポア構造を有する。また、粒子表面に、ポアが均一に分布されていることが分かった。また、有意な形態学的変化は、見られず、そのような形態学的特性は、HApへの転換がなされる間維持された。
【0071】
また、図2から分かるように、1cm当たり約53,300個ほどの均一なチャンバ数を有し、その大きさは、約50μm*25μmであった。また、隔壁のポアサイズは、~2μmであった。
【0072】
図3から分かるように、水熱反応後のピークパターンが、一具体例によるヒドロキシアパタイトと、商業的に購入可能な純粋HApとが一致することが分かった。それは、有孔虫が水熱反応により、HApに首尾よく変形されたことを意味する。
【0073】
実験例1.細胞毒性測定
有孔虫由来HAp粒子の細胞毒性を評価するために、前記参照例に記載されているように、live/dead染色分析を施し、その結果を図4に示した。
【0074】
図4は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞毒性測定結果を示したイメージである。
【0075】
図4から分かるように、生存したhMSCは、緑色に染色されているが、粒子上に存在するほとんどの細胞が緑色に染色されており、赤色に染色された死滅細胞は、観察されていない。そのような結果は、有孔虫由来HAp粒子が細胞毒性を示さないということを意味する。
【0076】
実験例2.細胞増殖評価
前述の参照例に記載されているように、MTSミトコンドリア活性基盤分析(mitochondrial activity based assay)を使用し、有孔虫由来HApにおけるhMSCの細胞増殖を測定した。前記結果は、図5に示されている。
【0077】
図5は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞増殖測定結果を示したグラフである。
【0078】
図5から分かるように、hMSCs細胞が、純粋HAp及び有孔虫由来HApのいずれにおいても、経時的に良好に育つところを示している。特に、培養1日後、有孔虫由来HApで培養された細胞光学密度数値(0.25±0.10)は、純粋HApにおける光学密度数値(0.07±0.01)より顕著に高かった。そのような結果は、有孔虫由来HApが、純粋HApより、初期細胞接着にさらに有利でもあるということを意味する。また、有孔虫由来HAp粒子に係わるhMSCの光学密度は、全ての実験時点において、純粋HApの光学密度より顕著に高かった。
【0079】
実験例3.細胞接着及び細胞浸潤の観察
前述の参照例に記載された方法を使用し、純粋HAp粒子及び有孔虫由来HAp粒子に係わるhMSCの細胞付着及び細胞浸潤は、細胞培養5日目にSEMで観察し、その結果を図6に示した。
【0080】
図6は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの細胞接着及び細胞浸潤の結果を示した
走査電子顕微鏡イメージである。
【0081】
図6に示されているように、hMSCが、純粋HApの表面でのみ、まれに付着されて成長するところを示している。それに反し、有孔虫由来HApの表面には、純粋HApより多数の細胞が付着されている。また、浸潤及び付着されたhMSCが、有孔虫由来HApのチャンバ内においても観察された。そのような結果は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの粒子構造が、細胞の接着に有利な環境を提供するということを意味する。
【0082】
実験例4.造骨細胞分化能分析
造骨細胞分化能を分析するために、前述の参照例に記載されているように、ALP活性及びqRT-PCRを遂行し、ALP、ColIa1、OCN及びBSPのような造骨細胞マーカー遺伝子を検出した。前記結果は、図7及び図8に示されている。
【0083】
図7は、一具体例によるヒドロキシアパタイトのALP活性分析結果を示したグラフである。
【0084】
図8は一具体例によるヒドロキシアパタイトの造骨細胞マーカー遺伝子発現レベルを示したグラフである。
【0085】
図7から分かるように、骨形成刺激剤含有培地で細胞が培養されるとき、ALP活性は、有孔虫由来HAp粒子上において、19.59±3.06nmol/mgの蛋白質として測定され、それは、純粋HAp上で培養された細胞(5.69±0.68nmol/mgの蛋白質)より、およそ3.4倍さらに高い数値であることが分かった。
【0086】
また、図8から分かるように、有孔虫由来HAp粒子上のALP、ColIa1、OCN及びBSPのmRNA発現レベルは、純粋HAp粒子対比で、それぞれ、約6.6倍、約10.5倍、約2.6倍、約16.5倍さらに高かった。
【0087】
そのような結果は、一具体例によるヒドロキシアパタイトが、純粋ヒドロキシアパタイトに比べ、顕著な造骨細胞分化能を有するということを意味する。
【0088】
実験例5.生体内骨再生能分析
前述の実施例で製造した有孔虫由来HApの生体内骨再生能を分析するために、マイクロCT評価及び組織学的評価を行った。
【0089】
具体的には、前述の参照例に記載されているように、移植後8週目、三次元マイクロCTイメージを獲得し、その結果を図9に示し、移植後8週目、骨欠損部位につき、H&E染色及びGoldner’s Masson trichrome染色を行い、その結果を、それぞれ図10及び図
11に示した。
【0090】
図9は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内移植8週目のマイクロCT結果を示した図面(図9A)、及びそれを定量化して示したグラフ(図9B)である。
【0091】
図10は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内骨再生効果を示したH&E染色結果である。
【0092】
図11は、一具体例によるヒドロキシアパタイトの生体内骨再生効果を示したGoldner
’s Masson trichrome染色結果である。
【0093】
図9Aから分かるように、対照群グループ(empty group;移植せず)において、欠損
部位縁に、新たな骨が再生するところを示している。しかし、純粋HAp及び有孔虫由来HApを移植したグループにおける新たな骨再生は、欠陥の縁部位だけではなく、移植されたHApの粒子内部においても観察された。特に、有孔虫由来HAp移植群において、新たに形成された骨は、有孔虫欠陥部位の表面を覆った。また、図9Bから分かるように、有孔虫由来HAp(31.54±3.61%)の骨体積百分率は、対照群グループ(empty group)(8.43±0.52%)及び純粋HAp(21.18±2.61%)の骨体積より顕著に高かった。
【0094】
また、図10から分かるように、対照群(empty;移植せず)グループ、純粋HAp移植したグループ、有孔虫由来HAp移植したグループのいずれにおいても、欠陥部位の縁において、新たな骨の形成が観察され、移植された全てのグループにおいて、新たに形成された骨と欠陥とが合わされる傾向を示した。特に、純粋HAp及び有孔虫由来HApが移植されたグループにおいて、新たな骨は、縁欠陥部位において形成されるところが観察され、またHAp粒子の外表面上に、新たな骨が発生しながら、骨髄の空洞と類似した形態(bone marrow cavity-like morphology)に観察された。成熟された新たな骨は、有孔虫移植グループにおいて、はるかに厚いということが分かった。
【0095】
また、図11から分かるように、純粋HAp及び有孔虫由来HApが移植されたグループにおいては、周辺部位だけではなく、中央領域においても、新たに形成された骨が観察された。一方、対照群グループ(empty group;移植せず)の中央領域においては、緩い
結合組織のみが示された。また、他のグループと比較したとき、有孔虫由来HAp移植グループにおいて、成熟した骨が多量に有意に形成されていることが分かった。また、有孔虫由来HApを移植したグループにおいてのみ、多孔性チャンバ内に内増殖(ingrowth)する組織と類似するように、新たな骨が形成されるということが分かった。そのような結果は、有孔虫由来HAp粒子が、新たな骨の形成を刺激するだけではなく、それらチャンバ構造内において、新たに形成された骨の浸潤を支持(support)するということを示している。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアパタイトを含む骨移植材であり、前記ヒドロキシアパタイトは、隔壁によって区分された複数のチャンバを含み、前記隔壁は、多数のポアを含み、
前記ヒドロキシアパタイトは、
有孔虫を前処理する段階と、
前記前処理された有孔虫の外骨格を、30ないし600℃で2ないし40時間水熱反応させ、ヒドロキシアパタイトを製造する段階と、
前記ヒドロキシアパタイトを焼結する段階と、
を含む方法で製造され、
前記焼結する段階は、
前記ヒドロキシアパタイトを、1ないし20℃/minの速度で、400ないし800℃まで昇温させた後、1時間ないし8時間温度を保持する段階と、
その後、前記ヒドロキシアパタイトを、1ないし20℃/minの速度で、600ないし1,500℃まで昇温させた後、温度を保持する段階と、
その後、常温まで冷却させる段階と、を含む、
骨移植材。
【請求項2】
前記ヒドロキシアパタイトは、有孔虫に由来するものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項3】
前記有孔虫は、Baculogypsina sphaerulata、Baculogypsina bonarellii、Baculogypsina gallowayi、Baculogypsina lenticulate、Baculogypsina meneghinii、Baculogypsina saonekiまたはBaculogypsina sphaericaである、請求項2に記載の骨移植材。
【請求項4】
前記骨移植材が、複数のヒドロキシアパタイト粒子を含み、前記粒子のサイズは、100ないし4,000μmである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項5】
前記チャンバの直径は、15ないし60μmであ、前記隔壁の厚みは、5ないし15μmであ、前記ポアの直径は、0.2ないしμmである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項6】
前記骨移植材は、ヒドロキシアパタイト表面の1cm当たり40,000ないし60,000のチャンバを有するものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項7】
前記ヒドロキシアパタイト粒子は、マグネシウムイオンを0.5ないし10重量%、ケイ素イオンを0.2ないし10重量%、またはストロンチウムイオンを0.1ないし5重量%で含む、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項8】
骨欠損治療のためのものである、請求項1に記載の骨移植材。
【請求項9】
有孔虫を前処理する段階と、
前記前処理された外骨格を、30ないし600℃で2ないし40時間水熱反応させるか、あるいは300MHzないし300GHz波長の範囲のマイクロウェーブを、100ないし1,500Wの量で0.5分ないし48時間処理し、ヒドロキシアパタイトを製造する段階と、
前記ヒドロキシアパタイトを焼結する段階と、を含む請求項1に記載の骨移植材を製造する方法。
【請求項10】
前記焼結する段階は、前記ヒドロキシアパタイトを、1ないし20℃/minの速度で、400ないし800℃まで昇温させた後、1時間ないし8時間温度を保持する段階と、
前記ヒドロキシアパタイトを、1ないし20℃/minの速度で、600ないし1,500℃まで昇温させた後、温度を保持する段階と、
常温まで冷却させる段階と、
を含む、請求項9に記載の骨移植材を製造する方法。