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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050827
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】通気部品
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/30 20180101AFI20240403BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F21S45/30
H05K5/06 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016779
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2021564008の分割
【原出願日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019222104
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
(72)【発明者】
【氏名】笠置 智之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓見
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高圧の水流を受けたときに筐体の内部への水の浸入を防止できる通気部品を提供する。
【解決手段】通気部品1は、筐体2の内部空間2uと外部空間2sとの間を通気するため通気路10を有する。通気路10は、通気部品1が縁2fに装着されたときに内部空間2uと外部空間2sとの間を通気するための経路である。通気部品1は、支持部12と、通気膜11と、突出部13と、シール部材14とを備えている。支持部12は、通気路10を取り囲んでいる。通気膜11は、支持部12に固着されており、通気路10を通気可能に塞いでいる。突出部13は、支持部12から突出して通気路10の一端を取り囲むように形成されており、通気部品1が縁2fに装着されたときに縁2fに接触する筒状の部位である。通気部品1は、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部空間と外部空間とを連通させる開口の縁に装着される通気部品であって、
当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記内部空間と前記外部空間との間を通気するための通気路を有し、
前記通気路を取り囲む支持部と、
前記支持部に固着され、前記通気路を通気可能に塞ぐ通気膜と、
前記支持部から突出して前記通気路の一端を取り囲むように形成され、当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記縁に接触する筒状の突出部と、
前記突出部の周りに配置され、当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記筐体の外表面と当該通気部品との隙間をシールするシール部材と、を備え、
前記突出部に接する前記支持部の外面を平面視したときの前記外面における外側の端から前記突出部と前記支持部との境界までの距離D及び前記シール部材の線径Wは、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たす、
通気部品。
【請求項2】
前記線径Wは、2.8mm以上6.0mm以下である、請求項1に記載の通気部品。
【請求項3】
前記距離Dは、1.96mm以上7.8mm以下である、請求項1又は2に記載の通気部品。
【請求項4】
前記突出部は、前記筐体に係合する係合部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の通気部品。
【請求項5】
前記通気膜を覆うとともに前記通気膜との間に当該通気部品の外部空間に連通している空間を形成するカバーをさらに備えた、請求項1~4のいずれか1項に記載の通気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口を有する筐体の開口の縁に装着される通気部品が知られている。通気部品は、例えば、自動車用ランプ、インバーター、コンバーター、電子制御装置(ECU)、バッテリーパック、ミリ波レーダー、及び車載カメラ等の機器において温度変化に伴い機器の内部に発生する差圧を解消するために使用されうる。このような機器において、異物、水、油、及び塩等の物質が機器の内部に侵入することを阻止することが要求されうる。このような要求に応じて、通気部品が機器の筐体に装着される。
【0003】
例えば、特許文献1には、筐体の開口に取り付けられる通気部材と、シール部材と、ワッシャとを備えた通気ユニットが記載されている。シール部材は、筐体と通気部材との間のギャップをシールする。ワッシャは、シール部材を取り囲むリング状の部材である。このような構成によれば、自動車電装部品への高圧水の噴射等の理由により、高い外圧が作用する環境下でも通気部材と筐体の間から筐体内に異物が侵入することを防止できる。
【0004】
特許文献2には、筐体と、通気部材と、シール部材とを備えた通気構造が記載されている。筐体には開口が設けられている。通気部材は、筐体の開口に取り付けられている。シール部材は、通気部材に保持されている。開口は、テーパー面を有する。通気部材は、通気路を有する支持体、通気路を塞ぐ防水通気膜、防水通気膜を覆うカバーを含む。シール部材は、通気路の周囲で筐体と支持体との間のギャップをシールする。支持体は、シール部材をテーパー面に押圧する押圧部を有する。このような構成によれば、シール部材が開口内に収められるので、自動車電装部品への高圧水の噴射等の理由により外部からの水等がシール部材に直接かかることを防止できる。
【0005】
特許文献3には、筐体の開口部と、通気部材と、遮蔽体とを備えた通気構造が記載されている。通気部材は、開口部に固定されており、通気膜を備える。遮蔽体は、筐体の表面に形成された突起状である。特許文献3に記載の通気構造によれば、自動車のエンジンルームにおけるECUにこの通気構造を適用した場合、エンジンルームの高圧洗浄において水流に対する耐久性が向上する。遮蔽体が水流の一部を遮るので、通気部材に加わる水圧を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-231089号公報
【特許文献2】特開2012-243536号公報
【特許文献3】特開2007-048585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に記載の技術では、ワッシャ、テーパー面を有する開口、又は遮蔽体が必要であり、これらは、通気構造の設計及び製造において制約を生じさせる。
【0008】
そこで、本発明は、設計及び製造における制約を少なくしつつ、高圧の水流を受けたときに筐体の内部への水の浸入を防止できる通気部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
筐体の内部空間と外部空間とを連通させる開口の縁に装着される通気部品であって、
当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記内部空間と前記外部空間との間を通気するための通気路を有し、
前記通気路を取り囲む支持部と、
前記支持部に固着され、前記通気路を通気可能に塞ぐ通気膜と、
前記支持部から突出して前記通気路の一端を取り囲むように形成され、当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記縁に接触する筒状の突出部と、
前記突出部の周りに配置され、当該通気部品が前記縁に装着されたときに前記筐体の外表面と当該通気部品との隙間をシールするシール部材と、を備え、
前記突出部に接する前記支持部の外面を平面視したときの前記外面における外側の端から前記突出部と前記支持部との境界までの距離D及び前記シール部材の線径Wは、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たす、
通気部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記の通気部品によれば、通気構造の設計及び製造における制約を少なくできる。加えて、上記の通気部品は、高圧の水流を受けたときに筐体の内部への水の浸入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る通気部品の一例を示す断面図である。
図2A図2Aは、図1に示す通気部品によって提供される通気構造の一例を示す断面図である。
図2B図2Bは、比較例に係る通気部品によって提供される通気構造の一例を示す断面図である。
図3図3は、図1に示す通気部品の特定部分を示す平面図である。
図4図4は、図1に示す通気部品の一部を示す断面図である。
図5図5は、本発明に係る通気部品の別の一例を示す断面図である。
図6図6は、実施例及び比較例で用いた通気部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
図1及び図2Aに示す通り、通気部品1は、筐体2の内部空間2uと外部空間2sとを連通させる開口21の縁2fに装着される。通気部品1は、通気路10を有する。通気路10は、通気部品1が縁2fに装着されたときに内部空間2uと外部空間2sとの間を通気するための経路である。通気部品1は、支持部12と、通気膜11と、突出部13と、シール部材14とを備えている。支持部12は、通気路10を取り囲んでいる。通気膜11は、支持部12に固着されており、通気路10を通気可能に塞いでいる。突出部13は、支持部12から突出して通気路10の一端を取り囲むように形成されており、通気部品1が縁2fに装着されたときに縁2fに接触する筒状の部位である。シール部材14は、突出部13の周りに配置され、通気部品1が縁2fに装着されたときに筐体2の外表面2gと通気部品1との隙間をシールする。通気部品1は、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たす。図3は、突出部13に接する支持部12の外面12gを平面視したときの外面12gにおける外側の端12eと、突出部13と支持部12との境界12bとの間の支持部12の部分の平面図である。図3に示す通り、Dは、外側の端12eから境界12bまでの距離である。図4に示す通り、Wは、シール部材14の線径である。
【0014】
図2Aに示す通り、通気部品1を筐体2の開口21の縁2fに装着させることにより、通気構造50を提供できる。図2Bは、比較例に係る通気部品1aを用いて提供される通気構造50aを示す。通気部品1aは、特に説明する部分を除き、通気部品1と同様に構成されている。通気部品1の構成要素と同一又は対応する通気部品1aの構成要素には、同一の符号を付している。
【0015】
例えば、ドイツ工業規格DIN 400 50 Part 9には、製品に対して30°及び60°の角度での高温高圧水の噴射を伴う防水試験が記載されている。通気構造50aにおいて、このような斜め方向の水流J1からシール部材14を保護する観点から、シール部材14は通気構造50の外部から奥まった位置に配置されている。このため、通気部品1aにおいて、D/Wは1.3より大きな値に調節されている。これにより、シール部材14が水流J1を直接受けにくくなる。このように、従来、通気部品において、高温高圧水の噴射に対する防水性の観点からD/Wの値が1.3を大きく超えるように定めることが当然と考えられていた。
【0016】
一方、本発明者らの検討によれば、通気部品1aのシール部材14に向かって高圧の水流J2が生じたときに、D/Wの値が大きいことは、シール部材14の周囲からの排水を促すうえで有利であるとは言い難いことが分かった。なぜなら、シール部材14の周囲における通気部品1aの支持部12と筐体2の外表面2gとの間の空間が長くなり、シール部材14に向かって高圧の水流J2が生じたときにその空間に高い水圧が加わり続けるからである。シール部材14に高い水圧が加わり続けると、シール部材14に意図せぬ変形が生じ、筐体2の内部に水が浸入する可能性がある。
【0017】
シール部材が高い水圧を受けることを防止するために、特許文献1~3に記載の技術を適用することも考えられる。しかし、特許文献1~3に記載の技術では、ワッシャ、テーパー面を有する開口、又は遮蔽体が必要であり、通気構造の設計及び製造において制約が生じる。例えば、特許文献1~3に記載の技術は、高い設計自由度及び製造コストの低減の観点から有利とは言い難い。そこで、本発明者らは、通気構造の設計及び製造において制約を少なくしつつ、高圧の水流を受けたときに筐体の内部への水の浸入を防止できる通気部品を新たに開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、通気部品におけるD/Wの値を上記の範囲に調整することにより、設計及び製造における制約を少なくしつつ、高圧の水流を受けたときに筐体の内部への水の浸入を防止できることを新たに見出した。
【0018】
通気部品1は、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たすので、通気構造50において、シール部材14に向かって高圧の水流が生じたときに、図2Aに示す通り、シール部材14の周囲から水が逃げやすく、シール部材14の周囲において排水を促すことができる。その結果、シール部材14に高い水圧が加わり続けることを避けることができ、筐体2の内部に水が浸入することを防止できる。
【0019】
通気部品1の軸線A1周りにおいて、Dの値は、一定であってもよいし、変動していてもよい。軸線A1周りにおいてDの値が変動する場合、例えば、軸線A1周りの全周360°の50%以上の領域で0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。この領域は、軸線A1周りに連続して存在していてもよいし、複数の領域に分かれて存在していてもよい。望ましくは、軸線A1周りの全周360°の60%以上の領域で0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。より望ましくは、軸線A1周りの全周360°の70%以上の領域で0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。さらに望ましくは、軸線A1周りの全周360°の80%以上の領域で0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。特に望ましくは、軸線A1周りの全周360°の90%以上の領域で0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。とりわけ望ましくは、軸線A1周りの全周360°において0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる。
【0020】
線径Wは、典型的には、軸線A1に垂直な方向において、軸線A1を含む平面に沿ったシール部材14の断面の最大寸法に相当する。線径Wの値は、典型的には、軸線A1周りにおいて一定である。なお、軸線A1周りにおける線径Wの最大値と最小値との差がその最小値の10%未満である場合、線径Wの値は、軸線A1周りにおいて一定であるとみなしてもよい。
【0021】
D/Wの値は、0.7≦D/W≦1.3の条件を満たす限り、特定の値に限定されない。図4に示す通り、Dは、W以上であってもよいし、図5に示す通り、Dは、W未満であってもよい。D/Wの値は、0.75以上であってもよく、0.8以上であってもよく、0.85以上であってもよい。D/Wの値は、1.25以下であってもよく、1.2以下であってもよく、1.15以下であってもよい。
【0022】
線径Wの値は、0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる限り、特定の値に限定されない。線径Wの値は、例えば、2.8mm以上6.0mm以下である。この場合、通気構造50において、シール部材14と支持部12との接触面積及びシール部材14と筐体2の外表面2gとの接触面積が大きくなりやすい。このため、通気構造50において、シール部材14に向かって高圧の水流が生じたときに、より確実に、筐体2の内部に水が浸入することを防止できる。
【0023】
線径Wは、2.9mm以上であってもよく、3.0mm以上であってもよく、3.2mm以上であってもよく、3.4mm以上であってもよく、3.6mm以上であってもよく、4.0mm以上であってもよく、4.5mm以上であってもよい。線径Wは、5.9mm以下であってもよく、5.6mm以下であってもよく、5.3mm以下であってもよく、4.8mm以下であってもよい。
【0024】
距離Dの値は、0.7≦D/W≦1.3の条件が満たされる限り、特定の値に限定されない。距離Dの値は、例えば、1.96mm以上7.8mm以下である。
【0025】
距離Dの値は、2.2mm以上であってもよく、2.4mm以上であってもよく、2.6mm以上であってもよく、2.8mm以上であってもよく、3.0mm以上であってもよく、3.2mm以上であってもよく、3.5mm以上であってもよい。距離Dの値は、7.5mm以下であってもよく、7.0mm以下であってもよく、6.5mm以下であってもよく、6.0mm以下であってもよい。
【0026】
シール部材14の形状は、特定の形状に限定されない。シール部材14は、典型的には、環状の部材である。シール部材14の軸線を含む平面に沿ってシール部材14を切断して得られる断面は、例えば、円、楕円、又は角を有する平面である。角を有する平面は、多角形であってもよいし、曲線と直線とが組み合わせられた図形であってもよい。シール部材14は、環状の内部空間を有する中空構造を有していてもよい。
【0027】
図4に示す通り、シール部材14は、例えば、傾斜部14kを有する。傾斜部14kは、シール部材14の外周部に位置する第一位置14fと第二位置14sとの間で斜面をなす。第二位置14sは、第一位置14fよりも支持部12に近い位置に存在し、かつ、第一位置14fよりも境界12bに近い位置に存在する。このような構成によれば、通気構造50において、シール部材14に向かって高圧の水流が生じたときに、水流が傾斜部14kに衝突した後、水流が筐体2の外表面2gから離れる方向に導かれやすい。このため、シール部材14の周囲において排水を促しやすい。第一位置14fは、例えば、シール部材14の軸線に垂直な方向においてシール部材14の外側の端に存在する。
【0028】
図1に示す通り、突出部13は、例えば、複数の脚部13aを含む。複数の脚部13aは、突出部13の先端から突出部13の中心軸に沿って延びているスリット13sによって突出部13の中心軸周りに離れて配置されている。複数の脚部13aの少なくとも1つは、筐体2に係合する係合部13kを有する。係合部13kは、突出部13の中心軸に垂直な方向において外方に突出している。このような構成によれば、突出部13の開口21への挿入を含む通気部品1の筐体2への装着において、突出部13の先端部が縁2fに接触したときに脚部13aが内側に弾性変形する。その後、係合部13kが開口21を通過すると、脚部13aの変形が解消され、係合部13kが、例えば、筐体2の内表面2nに接触する。このように、係合部13kがスナップフィットにより筐体2に係合し、通気部品1が筐体2の縁2fに装着される。
【0029】
支持部12及び突出部13は一体的に成形された部品であってもよいし、支持部12及び突出部13は別々に作製された部品であってもよい。支持部12及び突出部13の材料は、例えば、成形性の観点から、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及び熱可塑性エラストマーでありうる。支持部12及び突出部13の材料は、熱硬化性樹脂であってもよく、金属であってもよい。支持部12及び突出部13の材料は、ゴムであってもよい。ゴムは、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、又は水素化ニトリルゴムである。
【0030】
図1に示す通り、支持部12は、典型的には、通気膜11が取り付けられた被着面12sを有する。被着面12sは、例えば、環状の面である。通気膜11は、例えば、突出部13の中心軸に垂直な方向に沿って配置されている。
【0031】
通気膜11は、所望の通気性を有する限り特定の通気膜に限定されない。通気膜11は、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。通気膜11が多層膜である場合、各層は、多孔質膜、不織布、クロス、及びメッシュからなる群より選ばれる1つでありうる。通気膜11は、多孔質膜及び不織布を含んでいてよく、クロス及びメッシュの少なくとも1つと多孔質膜とを含んでいてもよく、複数の不織布を含んでいてもよい。通気膜11は、典型的には、有機高分子材料(樹脂)によって構成されている。多孔質膜の材料は、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体を使用できる。多孔質膜の材料は、エチレン、プロピレン、及び4-メチルペンテン-1,1ブテン等のモノマーの単体の重合体又は共重合体等のポリオレフィンであってもよい。多孔質膜は、ポリアクリロニトリル、ナイロン、又はポリ乳酸等のナノファイバーの多孔膜であってもよい。多孔質膜は、公知の延伸法又は抽出法によって製造できる。不織布、クロス、及びメッシュの材料は、例えば、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、アラミド、又はエチレン酢酸ビニル共重合体である。
【0032】
通気膜11は、望ましくは、PTFE多孔質膜を含む。PTFE多孔質膜は、小面積でも通気性を確保でき、異物の侵入を効果的に阻止できる。PTFE多孔質膜は、不織布などの通気性支持材に積層されていてもよい。
【0033】
通気膜11は、必要に応じて撥液処理されていてもよい。撥液処理は、例えば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤を含む撥液性の被膜を通気膜11に形成することによってなされる。撥液性の被膜の形成は、特定の方法に限定されない。撥液性の被膜の形成は、例えば、エアスプレイ法、静電スプレイ法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、又は含浸法等の方法により、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤の溶液又はディスパージョンで樹脂多孔質膜をコーティングすることによりなされる。また、電着塗装法又はプラズマ重合法によって、撥液性の被膜を形成してもよい。
【0034】
通気膜11は、例えば、被着面12sに対して接着されている。通気膜11は、被着面12sに対して溶着されていてもよい。溶着の方法としては、熱溶着、超音波溶着、及びレーザー溶着を利用できる。また、支持部12を成形するときに、成形のための金型の内部の所定の位置に通気膜11を配置した状態で樹脂を金型に流し込んでインサート成形を行い、通気膜11を被着面12sに取り付けてもよい。通気膜11は、被着面12sに対して両面テープによって取り付けられていてもよい。
【0035】
シール部材14の材料は、所望のシール性を発揮できる限り、特定の材料に限定されない。例えば、支持部12及び突出部13の材料として例示した材料をシール部材14の材料として使用できる。シール部材14は、典型的には、弾性変形可能な弾性体であり、シール部材14の材料は、天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー等のエラストマーでありうる。
【0036】
図1に示す通り、通気部品1は、例えば、カバー16をさらに備えている。カバー16は、支持部12に連結されている。カバー16は、通気膜11を覆うとともに通気膜11との間に通気部品1の外部空間に連通している空間17を形成する。空間17は、通気路10の一部をなしている。これにより、通気膜11が適切に保護される。
【0037】
カバー16は、支持部12と一体的に成形された部品であってもよいし、支持部12とは別に作製された部品であってもよい。カバー16の材料として、例えば、支持部12の材料として例示された材料を使用できる。
【0038】
支持部12及びカバー16の少なくとも一方は、空間17の外周に配置された側壁18を有していてもよい。側壁18は、周方向に所定の間隔で離れて配置された複数の側壁を含みうる。支持部12及びカバー16のそれぞれは、周方向に所定の間隔で離れて配置された複数の側壁を有していてもよい。この場合、支持部12が有する側壁とカバー16が有する側壁とが周方向において部分的に重なっていてもよい。
【0039】
通気構造50において、筐体2は、例えば、電子機器の筐体である。電子機器は、例えば、自動車用ランプ、電子制御装置(ECU)、電力システム(EPS)、バッテリーパック、インバーター、コンバーター、ミリ波レーダー、及び車載カメラ等の自動車用の電子機器である。電子機器は、自動車用以外の用途に使用されるものであってもよい。通気構造50によれば、温度変化によって筐体2の内部空間2uと外部空間2sとの間に発生する差圧を通気路10により解消させることができる。加えて、通気膜11が通気路10を通気可能に塞いでいるので、内部空間2uに異物が侵入することを阻止でき、例えば、通気構造50は防塵性を有する。また、通気構造50により、水、油、及び塩等が内部空間2uに侵入することが阻止されうる。
【実施例0040】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
図6に示す、日東電工社製の通気部品TEMISH Zシリーズ Z3-NTF210SEの支持部の外面となる部分を加工することによって、支持部の外面の外側の端から突出部と支持部との境界までの距離Dが1.5mm、1.8mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、及び5.0mmである通気部品をそれぞれ準備した。図6に示す通り、加工前の通気部品において、突出部の外径は10mmであり、係合部の外径は12.4mmであった。TEMISHは日東電工社の登録商標である。線径W2.40mmのOリングα及び線径W3.85mmのOリングβを準備した。タイプAデュロメータを用いて、Oリングα及びOリングβの硬度を測定した結果、Oリングαの硬度は70であり、Oリングβの硬度は50であった。加工後の各通気部品に、Oリングα又はOリングβを装着して、表2に示す通り、実施例1~4に係るサンプル及び比較例1~4に係るサンプルを準備した。
【0042】
<耐水試験>
実施例1~4及び比較例1~4に係る各サンプルの突出部を、直径10.4mmの円形の開口を有する筐体に差し込んで固定した。各サンプルを筐体に固定したときのOリングα又はOリングβの圧縮率(Oリングの圧縮率[%]=Oリング潰し代(圧縮時の圧縮方向の長さ)/Oリングの線径W×100)は15%であった。ドイツ工業規格DIN400 50 Part9において表1の条件に変更したこと以外、当該規格の内容に準拠して、実施例1~4及び比較例1~4のサンプルのそれぞれについて、耐水試験(本試験)を行い、浸水の有無を目視にて確認した。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6