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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005084
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】マイクロ波加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/72 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H05B6/72 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105093
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】須田 保
(72)【発明者】
【氏名】浦山 健一朗
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AB20
3K090DA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイクロ波を用いて加熱対象を加熱するにあたり、空洞共振器の中心軸近傍でマイクロ波磁界又はマイクロ波電界を均一に分布させることにより、マイクロ波加熱対象を均一に加熱することを目的とする。
【解決手段】マイクロ波磁界又はマイクロ波電界を中心軸上に集中する空洞共振器1と、マイクロ波加熱対象を空洞共振器1の中心軸上に収容する収容容器2と、空洞共振器1の内部及び側壁に90度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差90度で励振される2個の励振ループ3、又は、空洞共振器1の内部及び側壁に360/n度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差360/n度で励振されるn個の励振ループ3(nは3以上)と、を備え、マイクロ波磁界分布又はマイクロ波電界分布は、時間変化につれて空洞共振器1の中心軸まわりに回転することを特徴とするマイクロ波加熱装置Mである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波磁界又はマイクロ波電界を中心軸上に集中する空洞共振器と、
マイクロ波加熱対象を前記空洞共振器の前記中心軸上に収容する収容容器と、
前記空洞共振器の内部及び側壁に90度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差90度で励振される2個の励振器、又は、前記空洞共振器の内部及び側壁に360/n度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差360/n度で励振されるn個の励振器(nは3以上)と、
を備え、マイクロ波磁界分布又はマイクロ波電界分布は、時間変化につれて前記空洞共振器の前記中心軸まわりに回転することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
前記n個の励振器は、3個以上の奇数個の励振器である
ことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
前記2個の励振器又は前記n個の励振器は、所定幅で掃引される周波数で励振され、隣接するもの同士が位相差±90度若しくは±360/n度で切り替えて励振され、所定幅で掃引される位相で励振され、又は、以上の動作を組み合わせて励振される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロ波を用いて加熱対象を加熱する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を用いて加熱対象を加熱する技術が、特許文献1等に開示されている。例えば、水素を発生させるために、マイクロ波を用いて触媒を加熱している。特許文献1では、空洞共振器の基本モード(TM01モード等)を用いて、マイクロ波電界を空洞共振器の中心軸上に集中させ、マイクロ波加熱対象(誘電体等)を中心軸上の収容容器に収容している。その一方で、空洞共振器の高次モード(TM11モード等)を用いて、マイクロ波磁界を空洞共振器の中心軸上に集中させ、マイクロ波加熱対象(導電体等)を中心軸上の収容容器に収容してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-072221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のマイクロ波加熱装置の構成を図1に示す。マイクロ波加熱装置Mは、空洞共振器1、収容容器2及び励振ループ3を備える。空洞共振器1は、高次モード(TM11モード等)を用いてマイクロ波磁界を中心軸上に集中する。収容容器2は、マイクロ波加熱対象(導電体等)を空洞共振器1の中心軸上に収容する。1個の励振ループ3(励振器の一例であり、励振アンテナでもよい。)は、空洞共振器1の内部及び側壁に設置される。
【0005】
従来技術のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図2に示す。図2の左欄では、空洞共振器1の全体的なマイクロ波磁界分布を示す。図2の右欄では、空洞共振器1の中心軸近傍のマイクロ波磁界分布を示す。すると、空洞共振器1の中心軸近傍のうち、励振ループ3に近い側でマイクロ波磁界が集中し、励振ループ3から遠い側でマイクロ波磁界が弱まる。つまり、マイクロ波加熱対象の一部が極度に加熱される、ホットスポットが発生する。
【0006】
従来技術のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図3にも示す。図3の左欄では、収容容器2(ガラス管)をシミュレーション上で空気に置換する。すると、図2の右欄と同様に、空洞共振器1の中心軸近傍のうち、励振ループ3に近い側でマイクロ波磁界が集中する。図3の中欄では、マイクロ波加熱対象(導体としてカーボン触媒)をシミュレーション上で空気に置換する。すると、図2の右欄と異なり、空洞共振器1の中心軸近傍のうち、励振ループ3から遠い側でマイクロ波磁界が集中する。図3の右欄では、収容容器2(ガラス管)及びマイクロ波加熱対象(導体としてカーボン触媒)をシミュレーション上で空気に置換する。すると、図3の中欄と同様に、空洞共振器1の中心軸近傍のうち、励振ループ3から遠い側でマイクロ波磁界が集中する。つまり、マイクロ波加熱対象(導体としてカーボン触媒)が、収容容器2(ガラス管)と比べて、ホットスポットの発生に大きく影響する。
【0007】
図1~3では、空洞共振器1がマイクロ波磁界を中心軸上に集中するときに、ホットスポットが発生することを示している。その一方で、空洞共振器1がマイクロ波電界を中心軸上に集中するときに、ホットスポットが発生することが考えられる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、マイクロ波を用いて加熱対象を加熱するにあたり、空洞共振器の中心軸近傍でマイクロ波磁界又はマイクロ波電界を均一に分布させることにより、マイクロ波加熱対象を均一に加熱することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、マイクロ波加熱対象を均一に加熱するために、複数の励振器を空洞共振器の内部及び側壁に設置する。そして、円偏波アンテナの原理をマイクロ波加熱装置に適用したうえで、複数の励振器を同位相で励振せず所定の位相差で励振する。
【0010】
具体的には、本開示は、マイクロ波磁界又はマイクロ波電界を中心軸上に集中する空洞共振器と、マイクロ波加熱対象を前記空洞共振器の前記中心軸上に収容する収容容器と、前記空洞共振器の内部及び側壁に90度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差90度で励振される2個の励振器、又は、前記空洞共振器の内部及び側壁に360/n度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差360/n度で励振されるn個の励振器(nは3以上)と、を備え、マイクロ波磁界分布又はマイクロ波電界分布は、時間変化につれて前記空洞共振器の前記中心軸まわりに回転することを特徴とするマイクロ波加熱装置である。
【0011】
この構成によれば、各時刻において、空洞共振器の中心軸近傍でマイクロ波磁界又はマイクロ波電界をほぼ均一に分布させることができる。そして、時間平均をとれば、空洞共振器の中心軸近傍でマイクロ波磁界又はマイクロ波電界をさらに均一に分布させることができる。よって、マイクロ波加熱対象を均一に加熱することができる。
【0012】
また、本開示は、前記n個の励振器は、3個以上の奇数個の励振器であることを特徴とするマイクロ波加熱装置である。
【0013】
この構成によれば、空洞共振器の中心軸を介して励振器同士を対向させないため、励振器同士の結合を抑圧することができ、励振器間の電力流入を防止することができる。
【0014】
また、本開示は、前記2個の励振器又は前記n個の励振器は、所定幅で掃引される周波数で励振され、隣接するもの同士が位相差±90度若しくは±360/n度で切り替えて励振され、所定幅で掃引される位相で励振され、又は、以上の動作を組み合わせて励振されることを特徴とするマイクロ波加熱装置である。
【0015】
この構成によれば、励振周波数を掃引することにより、マイクロ波磁界又はマイクロ波電界が強い方向を回転させることができ、左旋・右旋を切り替えることにより、マイクロ波磁界又はマイクロ波電界が強い方向を切り替えることができ、励振位相を掃引することによっても、マイクロ波磁界又はマイクロ波電界が強い方向を回転させることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本開示は、マイクロ波を用いて加熱対象を加熱するにあたり、空洞共振器の中心軸近傍でマイクロ波磁界又はマイクロ波電界を均一に分布させることにより、マイクロ波加熱対象を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来技術のマイクロ波加熱装置の構成を示す図である。
図2】従来技術のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図3】従来技術のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図4】第1実施形態のマイクロ波加熱装置の構成を示す図である。
図5】第1実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図6】第1実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図7】第1実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図8】第2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図9】第2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図10】第1、2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0019】
(第1実施形態のマイクロ波加熱装置)
第1実施形態のマイクロ波加熱装置の構成を図4に示す。マイクロ波加熱装置Mは、空洞共振器1、収容容器2及び複数の励振ループ3(図4では、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3)を備える。空洞共振器1は、高次モード(TM11モード等)を用いてマイクロ波磁界を中心軸上に集中する。収容容器2は、マイクロ波加熱対象(導電体等)を空洞共振器1の中心軸上に収容する。複数の励振ループ3(励振器の一例であり、励振アンテナでもよい。)は、空洞共振器1の内部及び側壁に、図5、6に示す所定の間隔で設置される。
【0020】
つまり、マイクロ波加熱対象を均一に加熱するために、複数の励振ループ3を空洞共振器1の内部及び側壁に設置する。そして、円偏波アンテナの原理をマイクロ波加熱装置Mに適用したうえで、複数の励振ループ3を同位相で励振せず所定の位相差で励振する。
【0021】
ここで、複数の励振ループ3が同位相で励振されるときには、図2に示したマイクロ波磁界分布が複数の励振ループ3の分だけ重畳され、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布が割れてしまう。一方で、複数の励振ループ3が所定の位相差で励振されるときには、図5、6に示すマイクロ波磁界分布が円偏波アンテナの原理を用いて実現され、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布がほぼ均一になる。
【0022】
第1実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図5、6に示す。図5では、空洞共振器1の全体的なマイクロ波磁界分布を示す。図6では、空洞共振器1の中心軸近傍のマイクロ波磁界分布を示す。図5、6の左上欄では、1個の励振ループ3は、空洞共振器1の内部及び側壁に設置される。図5、6の中上欄では、2個の励振ループ3-1、3-2は、空洞共振器1の内部及び側壁に90度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差90度で励振される。図5、6の右上欄、左下欄、中下欄及び右下欄では、n個の励振ループ3-1、・・・、3-n(n≧3)は、空洞共振器1の内部及び側壁に360/n度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差360/n度で励振される。
【0023】
図5、6の左上欄(1個の励振ループ3)では、空洞共振器1の中心軸近傍のうち、励振ループ3に近い側でマイクロ波磁界が集中し、励振ループ3から遠い側でマイクロ波磁界が弱まる。図5、6の中上欄(2個の励振ループ3-1、3-2)では、図5、6の左上欄(1個の励振ループ3)と比べて、空洞共振器1の中心軸近傍でマイクロ波磁界がほぼ均一に分布する。しかし、2個の励振ループ3-1、3-2によるループ近傍の磁界分布が乱れており、2個の励振ループ3-1、3-2による円偏波状の磁界分布がそのまま重畳されず、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布の均一性が低くなる。
【0024】
図5、6の右上欄、左下欄、中下欄及び右下欄(3個、4個、5個及び6個の励振ループ3-1、・・・、3-n)では、図5、6の中上欄(2個の励振ループ3-1、3-2)と比べて、空洞共振器1の中心軸近傍でマイクロ波磁界がほぼ均一に分布する。つまり、3個、4個、5個及び6個の励振ループ3-1、・・・、3-nによるループ近傍の磁界分布が乱れておらず、3個、4個、5個及び6個の励振ループ3-1、・・・、3-nによる円偏波状の磁界分布がそのまま重畳され、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布の均一性が高くなる。そして、図5、6の左下欄、中下欄及び右下欄(4個、5個及び6個の励振ループ3-1、・・・、3-n)では、図5、6の右上欄(3個の励振ループ3-1、3-2、3-3)と比べて、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布がほぼ同様となる。
【0025】
第1実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図7にも示す。図7では、空洞共振器1の全体的なマイクロ波磁界分布を示す。図5、6では、空洞共振器1の各時刻のマイクロ波磁界分布を示したが、図7では、空洞共振器1のマイクロ波磁界分布の時間変化を示す。図7では、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3は、空洞共振器1の内部及び側壁に120度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差120度で励振されるが、n個の励振ループ3-1、・・・、3-n(n≠3)が設置される場合でもほぼ同様となる。
【0026】
ここで、円偏波アンテナの原理が、マイクロ波加熱装置Mに適用されている。よって、図7の左欄、中欄及び右欄の順序を繰り返すように、マイクロ波磁界分布は、時間変化につれて空洞共振器1の中心軸まわりに回転する。つまり、図7の左欄、中欄及び右欄の順序を繰り返すように、マイクロ波磁界が強い方向(各時刻のマイクロ波磁界分布は、若干の不均一性も含む。)は、時間変化につれて空洞共振器1の中心軸まわりに回転する。
【0027】
このように、図5、6に示したように、各時刻において、空洞共振器1の中心軸近傍でマイクロ波磁界をほぼ均一に分布させることができる。そして、図7に示したように、時間平均をとれば、空洞共振器1の中心軸近傍でマイクロ波磁界をさらに均一に分布させることができる。よって、マイクロ波加熱対象を均一に加熱することができる。
【0028】
図4~7では、空洞共振器1がマイクロ波磁界を中心軸上に集中するときに、マイクロ波磁界が均一に分布することを示している。その一方で、空洞共振器1がマイクロ波電界を中心軸上に集中するときに、マイクロ波電界が均一に分布することが考えられる。
【0029】
(第2実施形態のマイクロ波加熱装置)
図5、6の右上欄、左下欄、中下欄及び右下欄(3個以上の励振ループ3-1、・・・、3-n)では、空洞共振器1の中心軸近傍でのマイクロ波磁界分布がほぼ同様となる。しかし、複数の励振ループ3は、4個以上の偶数個の励振ループ3-1、・・・、3-nであるよりは、3個以上の奇数個の励振ループ3-1、・・・、3-nであると望ましい。
【0030】
つまり、4個以上の偶数個の励振ループ3-1、・・・、3-nを設置したときには、空洞共振器1の中心軸を介して励振ループ3同士を対向させるため、励振ループ3同士の結合を抑圧することができず、励振ループ3間の電力流入を防止することができない。一方で、3個以上の奇数個の励振ループ3-1、・・・、3-nを設置したときには、空洞共振器1の中心軸を介して励振ループ3同士を対向させないため、励振ループ3同士の結合を抑圧することができ、励振ループ3間の電力流入を防止することができる。
【0031】
第2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図8に示す。図8では、空洞共振器1の中心軸近傍のマイクロ波磁界分布+空洞共振器1の励振周波数の変化によるマイクロ波磁界分布の変化を示す。そして、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3は、空洞共振器1の内部及び側壁に120度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差120度で励振されるが、n個の励振ループ3-1、・・・、3-n(n≠3)が設置される場合でもほぼ同様となる。
【0032】
一般的には、2個の励振ループ3-1、3-2又はn個の励振ループ3-1、・・・、3-nは、所定幅で掃引される周波数で励振される。図8では、励振周波数は、基本的には2.45GHzであるが、掃引周波数幅は、5~10kHzとしている。すると、励振周波数を掃引することにより、マイクロ波磁界が強い方向を回転させることができる。
【0033】
第2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図9にも示す。図9では、空洞共振器1の全体的なマイクロ波磁界分布+空洞共振器1の励振位相の変化によるマイクロ波磁界分布の変化を示す。そして、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3は、空洞共振器1の内部及び側壁に120度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差120度で励振されるが、n個の励振ループ3-1、・・・、3-n(n≠3)が設置される場合でもほぼ同様となる。
【0034】
一般的には、2個の励振ループ3-1、3-2又はn個の励振ループ3-1、・・・、3-nは、隣接するもの同士が位相差±90度又は±360/n度で切り替えて励振される。図9では、ある期間では、励振ループ3-1の励振位相と比べて、励振ループ3-2の励振位相差は120度であり、励振ループ3-3の励振位相差は240度である。一方で、他の期間では、励振ループ3-1の励振位相と比べて、励振ループ3-2の励振位相差は240度であり、励振ループ3-3の励振位相差は120度である。すると、左旋・右旋を切り替えることにより、マイクロ波磁界が強い方向を切り替えることができる。
【0035】
そして、2個の励振ループ3-1、3-2又はn個の励振ループ3-1、・・・、3-nは、所定幅で掃引される位相で励振されてもよい。すると、励振位相を掃引することによっても、マイクロ波磁界が強い方向を回転させることができる。さらに、2個の励振ループ3-1、3-2又はn個の励振ループ3-1、・・・、3-nは、以上の3種類の動作を組み合わせて励振されてもよい。ただし、励振周波数の掃引が最も容易であり、励振位相の掃引が最も複雑であり、左旋・右旋の切り替えはこれらの中間となる。
【0036】
第1、2実施形態のマイクロ波加熱装置の磁界分布のシミュレーション結果を図10に示す。図10では、ループ状のプローブ(50Ω終端)が、収容容器2の直近及び外側に設置され、空洞共振器1の中心軸周りに360度回転され、励起電力を測定する状況をシミュレーションした。ここで、励振振幅軸の単位は、dBA/mであり、空洞共振器1の中心軸周りの方位軸の単位は、deg.(度)である。
【0037】
すると、1個の励振ループ3が、空洞共振器1の内部及び側壁に設置されるときには、プローブの励起電力は、空洞共振器1の中心軸周りの角度に大きく依存し、励起電力の最大値と最小値との差分は、21dBであった。これは、図5、6の左上欄(1個の励振ループ3)に示したマイクロ波磁界分布と整合する結果であった。
【0038】
一方で、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3が、空洞共振器1の内部及び側壁に120度間隔で設置され、隣接するもの同士が位相差120度で励振されるときには、プローブの励起電力は、空洞共振器1の中心軸周りの角度にほぼ依存せず、励起電力の最大値と最小値との差分は、4dBであった。これは、図5、6の右上欄(3個の励振ループ3-1、3-2、3-3)に示したマイクロ波磁界分布と整合する結果であった。
【0039】
図10に示していないが、3個の励振ループ3-1、3-2、3-3が、所定幅で掃引される周波数で励振されるときには、マイクロ波磁界が強い方向が回転した。
【0040】
図8~10では、空洞共振器1がマイクロ波磁界を中心軸上に集中するときに、マイクロ波磁界が均一に分布することを示している。その一方で、空洞共振器1がマイクロ波電界を中心軸上に集中するときに、マイクロ波電界が均一に分布することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示のマイクロ波加熱装置は、水素等を発生させるために、マイクロ波を用いて触媒等を加熱するにあたり、触媒等をホットスポットなしで均一に加熱することができる。
【符号の説明】
【0042】
M:マイクロ波加熱装置
1:空洞共振器
2:収容容器
3、3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6:励振ループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10