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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050843
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G02B6/36
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017189
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2020565642の分割
【原出願日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2019001154
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 哲
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化が小さく、接続損失の少ない、光コネクタの製造方法が提供される。
【解決手段】光コネクタは、ガラスファイバとガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、光ファイバを保持するフェルールとを備える。製造方法は、貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する工程と、被覆樹脂から露出したガラスファイバを貫通孔に挿入する工程と、ガラスファイバの先端とフェルールの先端との間の端面間距離が1mm以下となるように、光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する工程と、ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する工程と、前熱硬化樹脂を硬化させる工程と、ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する工程と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって、
前記光ファイバは、偏波保持光ファイバであり、
前記製造方法は、
前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、
前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、
前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、
前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、
前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、
前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、
を含み、
前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、
前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む、光コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記第6の工程では、前記ガラスファイバを研磨する長さが1.5mm以下である、請求項1に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項3】
前記第6の工程では、前記ガラスファイバの先端面と前記フェルールの先端面とが同一面となるように前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とが研磨される、請求項1または請求項2に記載の光コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタの製造方法に関する。
本出願は、2019年1月8日に出願された日本国特許出願(特願2019-001154号)に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の情報通信の普及による通信の高速化や情報量の増大に加え、双方向通信と大容量通信に対応するために、光ネットワークの構築が進展している。光ファイバの伝送容量を増大する手段として、例えば、複数のコアを有するマルチコアファイバ(以下、「MCF」という。)が提案されている。MCFで光ネットワークを構築する場合は、MCFの接続を容易に行うための光コネクタが必要になる。その際、MCFの全てのコア同士を接続するために、MCFをその中止軸の周りに回転させ、MCFの回転方向の位置を合わせる(回転調心する)必要がある。
【0003】
特許文献1には、MCFを接続するための光コネクタの回転調心を含む製造方法が開示されている。この製造方法では、まず、マスタMCFが固定されたマスタMCFコネクタに対向するように、フェルールに固定されたMCFを配置し、フェルールに固定されたMCFとマスタMCFとの中心位置を合わせる。次に、マスタMCFまたはMCFの一方のコアに光を導入し、フェルールを、マスタMCFコネクタに対して相対的に回転させて、マスタMCFまたはMCFの他方のコアから光を検出し、光強度が最大となる位置でフェルールを保持する。その後、回転調心されたMCFのフェルールに、位置決め機構を有するフランジを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2013-238692号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって、前記光ファイバは、偏波保持光ファイバであり、前記製造方法は、前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、を含み、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示に係る光コネクタの外観斜視図である。
図2図1の光コネクタが含むフェルールの斜視図である。
図3図2のフェルールをプラグフレームに収容した後の状態を示す断面図である。
図4】本開示の光コネクタの製造方法を示すフロー図である。
図5A】本開示の光コネクタの一製造方法における熱硬化樹脂硬化工程までを説明するための図である。
図5B】本開示の光コネクタの一製造方法における研磨工程後を示す図である。
図6】本開示の光ファイバのコア位置のずれ量と接続損失の関係を示す図である。
図7】バンドルファイバを説明するための図である。
図8】熱硬化接着時と研磨後における光ファイバ端面の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本願開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって、前記光ファイバは、偏波保持光ファイバであり、前記製造方法は、前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、を含み、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む。
これにより、熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化が小さく、接続損失の少ない光コネクタを得ることができる。
また、ガラスファイバの研磨量を少なくできるため、熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化を確実に小さくすることもできる。
さらに、光ファイバが偏波保持ファイバである場合にも、熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化を確実に小さくできる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
(2)前記第6の工程では、前記ガラスファイバを研磨する長さが1.5mm以下であってもよい。
【0012】
(3)前記第6の工程では、前記ガラスファイバの先端面と前記フェルールの先端面とが同一面となるように前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とが研磨されてもよい。
【0013】
【0014】
[本願開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光コネクタの製造方法の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0015】
特許文献1に開示された製造方法では、フェルールにMCFを固定した後、回転調心を行い、その後、フランジを固定しているが、フランジ付きフェルールにMCFを挿入し、MCFを回転させて回転調心を行った後に、MCFをフェルールに固定する方法がある。この場合、フランジに対してMCFが軸回転方向に所定の角度になるよう回転調心したうえで、MCFをフェルールに熱硬化接着する必要がある。回転調心の手段として、例えば、フランジ付きフェルールにMCFを挿入した後に、MCFの端面を観察しながら回転させ熱硬化する手法が考えられる。
【0016】
しかし、ガラスファイバの端面とフェルールの端面の間の端面間距離を管理しない状態で回転調心を行った後、MCFをフェルールに熱硬化接着して研磨などの後工程に進むと、研磨後のコネクタ端面でのコア位置が回転調心時のガラスファイバ端面におけるコア位置とずれる場合がある。図8は、熱硬化接着時と研磨後における光ファイバ端面の状態を示す図である。図8では、回転調心後の熱硬化接着時における光ファイバFのガラスファイバ2の端面のコア4の位置、すなわち、研磨前のガラスファイバ2の端面のコア4の位置と、フェルール本体11から突出したガラスファイバ2を除去し、フェルール本体11とともに研磨した後の光ファイバFの端面のコア4の位置とがずれ量rだけずれている。すなわち、ガラスファイバ2の先端から長さdの位置では先端に比べてコアがずれ量rだけずれていることを示している。
【0017】
このようなずれが生じる原因としては、次の2つの理由があげられる。その理由の1つは、フェルールに設けたファイバ用の貫通孔とMCF間のクリアランスが1μm未満と小さいために、フェルール内でMCFがねじれていることがあげられる。また他の理由としては、MCFの線引き時に加わる一定のねじれによって、MCFの内部でコア位置の変動が生じていることがあげられる。
【0018】
本開示は、軸の回転方向にコア位置を制御する必要がある光ファイバである偏波保持光ファイバを有する光コネクタの製造方法において、接続損失の少ない光コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
図1は、本開示の一態様に係る光コネクタ1の外観斜視図であり、図2は、光コネクタ1が含むフェルール10の斜視図であり、図3は、フェルール10をプラグフレーム20に収容した後の状態を示す断面図である。なお、以下の実施形態では、光コネクタ1として、LCコネクタを例に説明するが、例えば、SCコネクタやMUコネクタを含む他の形式の光コネクタにも適用できる。
【0020】
光コネクタ1は、フェルール10を収容したプラグフレーム20を備え、プラグフレーム20の後端には、光ファイバFを保護するブーツ34が設けられている。フェルール10は、図示のX軸方向に延びたフェルール本体11を有する。フェルール本体11は、例えばジルコニア製で円筒状の部品で、フェルール本体11の内部には、X軸方向に貫通孔があり、光ファイバFの先端部分の樹脂被覆から露出したガラスファイバが保持されている。光ファイバFは、例えば、複数コアを有するMCFであり、フェルール10の後端13側から挿入され、先端面が前端12から露出し、フェルール10の中心軸周りの所定の位置に複数コアが配置された状態で、フェルール10に固定されている。図示のX軸方向が光ファイバFの光軸方向に相当する。
【0021】
フェルール本体11の略中央位置の外側には、金属製のフランジ14が設けられている。フランジ14は、本実施形態では、断面視略四角形状で、各面の境界位置は面取りされている。フランジ14は、フランジ14のいずれかの面を基準に、フェルール10をプラグフレーム20に位置決め固定する機能を有している。
【0022】
プラグフレーム20は、図示のX軸方向に延びた角筒状のフロントハウジング21を有する。フロントハウジング21は、例えば樹脂製であり、フランジ14付きのフェルール10を受け入れ可能な後端開口と、フェルール本体11の前端12を突出させる開口24を有する。フロントハウジング21は断面視略四角筒形状で、フロントハウジング21内に挿入したフェルール10のフランジ14をYZ方向に位置決めできるようになっている。また、フランジ14の前端面に当接する位置決め突起23が設けられている。さらに、フロントハウジング21の外周面には、可撓性を有したラッチアーム22が設けられている。
【0023】
また、プラグフレーム20は、フロントハウジング21の後方に、リアハウジング31を有する。リアハウジング31は、例えば樹脂製で、フェルール10の後端部分やコネクタ押圧用ばね35を収容可能な円筒状のばね収容部33を有する。コネクタ押圧用ばね35は、フェルール10の後方に配置され、フランジ14の後端面に当接することによってフェルール10を前方(図示のX軸の正方向、以下同じ。)に付勢可能となっている。また、リアハウジング31の外周面には、ラッチアーム22に係合可能なクリップ32が設けられている。
【0024】
光コネクタ1を組み立てるためには、フェルール10の後端部分及びコネクタ押圧用ばね35をリアハウジング31に収容し、フェルール10の先端部分をフロントハウジング21に挿入する。次いで、クリップ32がラッチアーム22に乗り上がると、フロントハウジング21がリアハウジング31にラッチされる。同時に、フランジ14は、コネクタ押圧用ばね35の付勢力によって前方に押される。これにより、フランジ14の前端面はフロントハウジング21の位置決め突起23に当接するため、フェルール10のX軸方向の位置決めがなされる。この状態では、フランジ14が前方に移動し、フェルール10は、その先端部分がフロントハウジング21から突出する。
【0025】
次に、光ファイバFをフェルール10に装着する方法について説明する。図4は、光コネクタ1の製造方法を示すフロー図である。図5Aは、光コネクタ1の一製造方法における熱硬化樹脂硬化工程までを説明するための図であり、図5Bは、光コネクタ1の一製造方法における研磨工程後を示す図である。
【0026】
まず、フランジ14付きのフェルール10を準備し、フェルール本体11の貫通孔15の内壁に熱硬化樹脂41を塗布する(ステップS1の熱硬化樹脂塗布工程)。次に、樹脂被覆3の一部を除去することでガラスファイバ2の先端を露出させ、樹脂被覆3から露出したガラスファイバ2をフェルール10の貫通孔15に後端部(X軸方向マイナス側)から挿入する(ステップS2の光ファイバ挿入工程)。ここで、ガラスファイバ2とフェルール本体11の貫通孔15の内壁との間のクリアランス(間隙)は略1μm未満である。
【0027】
次に、ガラスファイバ2の端面とフェルール10の端面との間の距離(以下では「突出長さ」とも呼び、ガラスファイバ2の端面がフェルール10の端面から突出している場合は正値で表し、ガラスファイバ2の先端が貫通孔15内に位置する場合は負値で表す。)を測定し(ステップS3の突出長さ測定工程)、突出長さが1mm以下となるように光ファイバFとフェルール10の相互位置関係を調整する(ステップS4の突出長さ調整工程)。図6は、光ファイバ1のコア位置のずれ量と接続損失の関係を示す図である。接続損失は製品で許容される0.5dB以下に抑えることが望ましく、この場合、コア位置のずれは、図6のグラフから1.6μm以下に抑える必要がある。光ファイバFの端面の長手方向の位置が2mm変動すると、コア位置は1.6μmのずれが生じる恐れがあるため、光ファイバ1の先端の除去及び研磨量は、2mm以下とする必要があり、1.5mm以下とすることが好ましい。
【0028】
そして、光ファイバの先端とともに研磨するフェルール10の研磨代Bは、フェルール10の製品寸法を維持するために0.5mm以下とすることが望ましい。このため、図5Aに示すように、ガラスファイバ2がフェルール10の前端(先端部端面)12から突出する突出長さAは、1mm以下であることが好ましい。なお、ガラスファイバ2の先端がフェルール10の前端12よりも引き込んだ状態になるように調整してもよい。この場合の突出長さは、フェルール10の研磨代Bを考慮して、0.5mmより大きくしておくことが好ましい。
【0029】
尚、ガラスファイバ2がフェルール10の先端から突出している場合には、フェルール10から突出したガラスファイバ2の一部の突出長さは、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離に相当する。このように、図4のステップS4に示す突出長さ調整工程は、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離を調整する工程に相当する。一方、ガラスファイバ2の先端がフェルール10の先端よりも後退している場合(換言すれば、ガラスファイバ2の先端が貫通孔15内に位置する場合)には、ガラスファイバ2の引き込み長さは、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離に相当する。この場合でも同様に、図4のステップS3おいて、ガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離(引き込み長さ)が測定されると共に、ステップS4において当該距離が調整される。
【0030】
また、従来の製造方法では、ガラスファイバ2の突出部を切断した際に、残りのガラスファイバ2がフェルール10の先端に残っており、この残りのガラスファイバ2の除去のために研磨粒子が粗い研磨紙で研磨を行う場合があった。この粗研磨ではガラスファイバ2だけでなくフェルール10を余分に削ってしまっていた。一方、本実施形態では、フェルール10の先端から突出するガラスファイバ2の突出長さは小さいため、粗研磨の工程を短縮または省略することができる。したがって、本実施形態においてはフェルール10の削り量を少なくすることが可能である。
【0031】
ステップS4の後は、ステップS5に移り、光ファイバFの回転調心を行う(ステップS5の回転調心工程)。回転調心は、フランジ14の外周側の所定面を基準面として、ガラスファイバ2を矢印R方向に回転させることによって、先端部のガラスファイバ2が所定の回転角度となるように行う。回転調心の具体的方法は、例えば、特許文献1に開示された方法、あるいは、既存の種々の方法を採用することができる。
【0032】
その後、光ファイバFを挿入したフェルール10を加熱し、フェルール本体11内の熱硬化樹脂41を硬化する(ステップS6の熱硬化樹脂硬化工程)。ステップS6の後は、図5Bに示すように、ガラスファイバ2の先端部とフェルール本体11の先端部の端面を研磨する(ステップS7の研磨工程)。研磨工程でのガラスファイバ2の研磨量は、ガラスファイバ2がフェルール10の先端部端面から突出する突出長さAよりも長く、突出長さAと研磨代Bを加えた長さよりも短い。なお、研磨工程においては、ガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端とが、例えば、同一平面となるように行う。また、ガラスファイバ2の長手方向(X軸方向)に対して、所定の角度を持たせてもよく、凸球面状に研磨してもよい。なお、フェルール本体11の軸方向の研磨長は、先述したように0.5mm以下となるように抑えられる。研磨工程の後、フェルール本体11の先端面は研磨面12’となり、フェルール本体11は研磨前よりも短くなる。
【0033】
次に、光ファイバFを実装したフェルール10をプラグフレーム20やコネクタ押圧用ばね35などと組み合わせることで光コネクタ1が得られる(ステップS8のコネクタ化工程)。コネクタの組み立て方法については、先述したとおりである。
【0034】
以上、上記実施形態では、光コネクタをLCコネクタの例で説明したが、本発明は、SCコネクタやMUコネクタを含む他の形式の光コネクタにも適用できる。さらに、光ファイバFをMCFの例で説明したが、本開示の光ファイバFは、例えば、偏波保持ファイバ、あるいは、バンドルファイバであってもよい。MCF、偏波保持ファイバ、バンドルファイバは、光学的に接続させる際に、中心軸周りの回転角度の調整が必要な光ファイバである。
【0035】
バンドルファイバは、マルチコアファイバと光学的に接続させるために、複数のシングルコアファイバを集めたファイバである。詳しくは、例えばガラス径125μmのマルチコアファイバの先端を化学エッチングして例えばガラス径45μmに細径化にしたものを準備し、図7に示すように、複数本(例えば7本)を接着剤でまとめてフェルール10に挿入している。この例の場合、コア間の距離が45μmになるように配置できる。このように、本開示では、光ファイバFとしてマルチコアファイバ、偏波保持ファイバ、バンドルファイバが用いられた場合にも、確実に光ファイバFを位置決めできるので、光コネクタ1の接続損失の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0036】
1…光コネクタ、2…ガラスファイバ、3…樹脂被覆、4…コア、10…フェルール、11…フェルール本体、12…前端、12’…研磨面、13…後端、14…フランジ、20…プラグフレーム、21…フロントハウジング、22…ラッチアーム、23…位置決め突起、24…開口、31…リアハウジング、32…クリップ、33…ばね収容部、34…ブーツ、35…コネクタ押圧用ばね、41…熱硬化樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって
記製造方法は、
前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、
前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、
前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、
前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、
前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、
前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、
を含み、
前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、
前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む、光コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記光ファイバが、マルチコアファイバ、または、バンドルファイバである、請求項1に記載の光コネクタの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタの製造方法に関する。
本出願は、2019年1月8日に出願された日本国特許出願(特願2019-001154号)に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の情報通信の普及による通信の高速化や情報量の増大に加え、双方向通信と大容量通信に対応するために、光ネットワークの構築が進展している。光ファイバの伝送容量を増大する手段として、例えば、複数のコアを有するマルチコアファイバ(以下、「MCF」という。)が提案されている。MCFで光ネットワークを構築する場合は、MCFの接続を容易に行うための光コネクタが必要になる。その際、MCFの全てのコア同士を接続するために、MCFをその中止軸の周りに回転させ、MCFの回転方向の位置を合わせる(回転調心する)必要がある。
【0003】
特許文献1には、MCFを接続するための光コネクタの回転調心を含む製造方法が開示されている。この製造方法では、まず、マスタMCFが固定されたマスタMCFコネクタに対向するように、フェルールに固定されたMCFを配置し、フェルールに固定されたMCFとマスタMCFとの中心位置を合わせる。次に、マスタMCFまたはMCFの一方のコアに光を導入し、フェルールを、マスタMCFコネクタに対して相対的に回転させて、マスタMCFまたはMCFの他方のコアから光を検出し、光強度が最大となる位置でフェルールを保持する。その後、回転調心されたMCFのフェルールに、位置決め機構を有するフランジを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2013-238692号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって、前記製造方法は、前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、を含み、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示に係る光コネクタの外観斜視図である。
図2図1の光コネクタが含むフェルールの斜視図である。
図3図2のフェルールをプラグフレームに収容した後の状態を示す断面図である。
図4】本開示の光コネクタの製造方法を示すフロー図である。
図5A】本開示の光コネクタの一製造方法における熱硬化樹脂硬化工程までを説明するための図である。
図5B】本開示の光コネクタの一製造方法における研磨工程後を示す図である。
図6】本開示の光ファイバのコア位置のずれ量と接続損失の関係を示す図である。
図7】バンドルファイバを説明するための図である。
図8】熱硬化接着時と研磨後における光ファイバ端面の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本願開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)ガラスファイバと前記ガラスファイバを覆う樹脂被覆とを含み、前記ガラスファイバの端部が前記樹脂被覆から露出した光ファイバと、貫通孔を有し、前記光ファイバを保持するフェルールとを備えた光コネクタの製造方法であって、前記製造方法は、前記貫通孔の内壁に熱硬化樹脂を塗布する第1の工程と、前記被覆樹脂から露出したガラスファイバを前記貫通孔に挿入する第2の工程と、前記ガラスファイバの先端が前記フェルール内に位置している場合に前記端面間距離が0.5mm以下となるように、前記光ファイバと前記フェルールとの相互位置関係を調整する第3の工程と、前記ガラスファイバを前記フェルールに対して回転調心する第4の工程と、前記熱硬化樹脂を硬化させる第5の工程と、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端とを研磨する第6の工程と、を含み、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程、前記第6の工程の順で実行され、前記ガラスファイバの先端と前記フェルールの先端との間の端面間距離を測定する工程を前記第2の工程と前記第3の工程との間に含む。
これにより、熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化が小さく、接続損失の少ない光コネクタを得ることができる。
また、ガラスファイバの研磨量を少なくできるため、熱硬化接着時と研磨後とで、光コネクタの端面における光ファイバのコア位置の変化を確実に小さくすることもできる。
【0008】
(2)前記光ファイバが、マルチコアファイバ、または、バンドルファイバであってもよい。
【0009】
[本願開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光コネクタの製造方法の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0010】
特許文献1に開示された製造方法では、フェルールにMCFを固定した後、回転調心を行い、その後、フランジを固定しているが、フランジ付きフェルールにMCFを挿入し、MCFを回転させて回転調心を行った後に、MCFをフェルールに固定する方法がある。この場合、フランジに対してMCFが軸回転方向に所定の角度になるよう回転調心したうえで、MCFをフェルールに熱硬化接着する必要がある。回転調心の手段として、例えば、フランジ付きフェルールにMCFを挿入した後に、MCFの端面を観察しながら回転させ熱硬化する手法が考えられる。
【0011】
しかし、ガラスファイバの端面とフェルールの端面の間の端面間距離を管理しない状態で回転調心を行った後、MCFをフェルールに熱硬化接着して研磨などの後工程に進むと、研磨後のコネクタ端面でのコア位置が回転調心時のガラスファイバ端面におけるコア位置とずれる場合がある。図8は、熱硬化接着時と研磨後における光ファイバ端面の状態を示す図である。図8では、回転調心後の熱硬化接着時における光ファイバFのガラスファイバ2の端面のコア4の位置、すなわち、研磨前のガラスファイバ2の端面のコア4の位置と、フェルール本体11から突出したガラスファイバ2を除去し、フェルール本体11とともに研磨した後の光ファイバFの端面のコア4の位置とがずれ量rだけずれている。すなわち、ガラスファイバ2の先端から長さdの位置では先端に比べてコアがずれ量rだけずれていることを示している。
【0012】
このようなずれが生じる原因としては、次の2つの理由があげられる。その理由の1つは、フェルールに設けたファイバ用の貫通孔とMCF間のクリアランスが1μm未満と小さいために、フェルール内でMCFがねじれていることがあげられる。また他の理由としては、MCFの線引き時に加わる一定のねじれによって、MCFの内部でコア位置の変動が生じていることがあげられる。
【0013】
本開示は、軸の回転方向にコア位置を制御する必要がある光ファイバを有する光コネクタの製造方法において、接続損失の少ない光コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
図1は、本開示の一態様に係る光コネクタ1の外観斜視図であり、図2は、光コネクタ1が含むフェルール10の斜視図であり、図3は、フェルール10をプラグフレーム20に収容した後の状態を示す断面図である。なお、以下の実施形態では、光コネクタ1として、LCコネクタを例に説明するが、例えば、SCコネクタやMUコネクタを含む他の形式の光コネクタにも適用できる。
【0015】
光コネクタ1は、フェルール10を収容したプラグフレーム20を備え、プラグフレーム20の後端には、光ファイバFを保護するブーツ34が設けられている。フェルール10は、図示のX軸方向に延びたフェルール本体11を有する。フェルール本体11は、例えばジルコニア製で円筒状の部品で、フェルール本体11の内部には、X軸方向に貫通孔があり、光ファイバFの先端部分の樹脂被覆から露出したガラスファイバが保持されている。光ファイバFは、例えば、複数コアを有するMCFであり、フェルール10の後端13側から挿入され、先端面が前端12から露出し、フェルール10の中心軸周りの所定の位置に複数コアが配置された状態で、フェルール10に固定されている。図示のX軸方向が光ファイバFの光軸方向に相当する。
【0016】
フェルール本体11の略中央位置の外側には、金属製のフランジ14が設けられている。フランジ14は、本実施形態では、断面視略四角形状で、各面の境界位置は面取りされている。フランジ14は、フランジ14のいずれかの面を基準に、フェルール10をプラグフレーム20に位置決め固定する機能を有している。
【0017】
プラグフレーム20は、図示のX軸方向に延びた角筒状のフロントハウジング21を有する。フロントハウジング21は、例えば樹脂製であり、フランジ14付きのフェルール10を受け入れ可能な後端開口と、フェルール本体11の前端12を突出させる開口24を有する。フロントハウジング21は断面視略四角筒形状で、フロントハウジング21内に挿入したフェルール10のフランジ14をYZ方向に位置決めできるようになっている。また、フランジ14の前端面に当接する位置決め突起23が設けられている。さらに、フロントハウジング21の外周面には、可撓性を有したラッチアーム22が設けられている。
【0018】
また、プラグフレーム20は、フロントハウジング21の後方に、リアハウジング31を有する。リアハウジング31は、例えば樹脂製で、フェルール10の後端部分やコネクタ押圧用ばね35を収容可能な円筒状のばね収容部33を有する。コネクタ押圧用ばね35は、フェルール10の後方に配置され、フランジ14の後端面に当接することによってフェルール10を前方(図示のX軸の正方向、以下同じ。)に付勢可能となっている。また、リアハウジング31の外周面には、ラッチアーム22に係合可能なクリップ32が設けられている。
【0019】
光コネクタ1を組み立てるためには、フェルール10の後端部分及びコネクタ押圧用ばね35をリアハウジング31に収容し、フェルール10の先端部分をフロントハウジング21に挿入する。次いで、クリップ32がラッチアーム22に乗り上がると、フロントハウジング21がリアハウジング31にラッチされる。同時に、フランジ14は、コネクタ押圧用ばね35の付勢力によって前方に押される。これにより、フランジ14の前端面はフロントハウジング21の位置決め突起23に当接するため、フェルール10のX軸方向の位置決めがなされる。この状態では、フランジ14が前方に移動し、フェルール10は、その先端部分がフロントハウジング21から突出する。
【0020】
次に、光ファイバFをフェルール10に装着する方法について説明する。図4は、光コネクタ1の製造方法を示すフロー図である。図5Aは、光コネクタ1の一製造方法における熱硬化樹脂硬化工程までを説明するための図であり、図5Bは、光コネクタ1の一製造方法における研磨工程後を示す図である。
【0021】
まず、フランジ14付きのフェルール10を準備し、フェルール本体11の貫通孔15の内壁に熱硬化樹脂41を塗布する(ステップS1の熱硬化樹脂塗布工程)。次に、樹脂被覆3の一部を除去することでガラスファイバ2の先端を露出させ、樹脂被覆3から露出したガラスファイバ2をフェルール10の貫通孔15に後端部(X軸方向マイナス側)から挿入する(ステップS2の光ファイバ挿入工程)。ここで、ガラスファイバ2とフェルール本体11の貫通孔15の内壁との間のクリアランス(間隙)は略1μm未満である。
【0022】
次に、ガラスファイバ2の端面とフェルール10の端面との間の距離(以下では「突出長さ」とも呼び、ガラスファイバ2の端面がフェルール10の端面から突出している場合は正値で表し、ガラスファイバ2の先端が貫通孔15内に位置する場合は負値で表す。)を測定し(ステップS3の突出長さ測定工程)、突出長さが1mm以下となるように光ファイバFとフェルール10の相互位置関係を調整する(ステップS4の突出長さ調整工程)。図6は、光ファイバ1のコア位置のずれ量と接続損失の関係を示す図である。接続損失は製品で許容される0.5dB以下に抑えることが望ましく、この場合、コア位置のずれは、図6のグラフから1.6μm以下に抑える必要がある。光ファイバFの端面の長手方向の位置が2mm変動すると、コア位置は1.6μmのずれが生じる恐れがあるため、光ファイバ1の先端の除去及び研磨量は、2mm以下とする必要があり、1.5mm以下とすることが好ましい。
【0023】
そして、光ファイバの先端とともに研磨するフェルール10の研磨代Bは、フェルール10の製品寸法を維持するために0.5mm以下とすることが望ましい。このため、図5Aに示すように、ガラスファイバ2がフェルール10の前端(先端部端面)12から突出する突出長さAは、1mm以下であることが好ましい。なお、ガラスファイバ2の先端がフェルール10の前端12よりも引き込んだ状態になるように調整してもよい。この場合の突出長さは、フェルール10の研磨代Bを考慮して、0.5mmより大きくしておくことが好ましい。
【0024】
尚、ガラスファイバ2がフェルール10の先端から突出している場合には、フェルール10から突出したガラスファイバ2の一部の突出長さは、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離に相当する。このように、図4のステップS4に示す突出長さ調整工程は、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離を調整する工程に相当する。一方、ガラスファイバ2の先端がフェルール10の先端よりも後退している場合(換言すれば、ガラスファイバ2の先端が貫通孔15内に位置する場合)には、ガラスファイバ2の引き込み長さは、X軸方向におけるガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離に相当する。この場合でも同様に、図4のステップS3おいて、ガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端との間の距離(引き込み長さ)が測定されると共に、ステップS4において当該距離が調整される。
【0025】
また、従来の製造方法では、ガラスファイバ2の突出部を切断した際に、残りのガラスファイバ2がフェルール10の先端に残っており、この残りのガラスファイバ2の除去のために研磨粒子が粗い研磨紙で研磨を行う場合があった。この粗研磨ではガラスファイバ2だけでなくフェルール10を余分に削ってしまっていた。一方、本実施形態では、フェルール10の先端から突出するガラスファイバ2の突出長さは小さいため、粗研磨の工程を短縮または省略することができる。したがって、本実施形態においてはフェルール10の削り量を少なくすることが可能である。
【0026】
ステップS4の後は、ステップS5に移り、光ファイバFの回転調心を行う(ステップS5の回転調心工程)。回転調心は、フランジ14の外周側の所定面を基準面として、ガラスファイバ2を矢印R方向に回転させることによって、先端部のガラスファイバ2が所定の回転角度となるように行う。回転調心の具体的方法は、例えば、特許文献1に開示された方法、あるいは、既存の種々の方法を採用することができる。
【0027】
その後、光ファイバFを挿入したフェルール10を加熱し、フェルール本体11内の熱硬化樹脂41を硬化する(ステップS6の熱硬化樹脂硬化工程)。ステップS6の後は、図5Bに示すように、ガラスファイバ2の先端部とフェルール本体11の先端部の端面を研磨する(ステップS7の研磨工程)。研磨工程でのガラスファイバ2の研磨量は、ガラスファイバ2がフェルール10の先端部端面から突出する突出長さAよりも長く、突出長さAと研磨代Bを加えた長さよりも短い。なお、研磨工程においては、ガラスファイバ2の先端とフェルール10の先端とが、例えば、同一平面となるように行う。また、ガラスファイバ2の長手方向(X軸方向)に対して、所定の角度を持たせてもよく、凸球面状に研磨してもよい。なお、フェルール本体11の軸方向の研磨長は、先述したように0.5mm以下となるように抑えられる。研磨工程の後、フェルール本体11の先端面は研磨面12’となり、フェルール本体11は研磨前よりも短くなる。
【0028】
次に、光ファイバFを実装したフェルール10をプラグフレーム20やコネクタ押圧用ばね35などと組み合わせることで光コネクタ1が得られる(ステップS8のコネクタ化工程)。コネクタの組み立て方法については、先述したとおりである。
【0029】
以上、上記実施形態では、光コネクタをLCコネクタの例で説明したが、本発明は、SCコネクタやMUコネクタを含む他の形式の光コネクタにも適用できる。さらに、光ファイバFをMCFの例で説明したが、本開示の光ファイバFは、例えば、偏波保持ファイバ、あるいは、バンドルファイバであってもよい。MCF、偏波保持ファイバ、バンドルファイバは、光学的に接続させる際に、中心軸周りの回転角度の調整が必要な光ファイバである。
【0030】
バンドルファイバは、マルチコアファイバと光学的に接続させるために、複数のシングルコアファイバを集めたファイバである。詳しくは、例えばガラス径125μmのマルチコアファイバの先端を化学エッチングして例えばガラス径45μmに細径化にしたものを準備し、図7に示すように、複数本(例えば7本)を接着剤でまとめてフェルール10に挿入している。この例の場合、コア間の距離が45μmになるように配置できる。このように、本開示では、光ファイバFとしてマルチコアファイバ、偏波保持ファイバ、バンドルファイバが用いられた場合にも、確実に光ファイバFを位置決めできるので、光コネクタ1の接続損失の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0031】
1…光コネクタ、2…ガラスファイバ、3…樹脂被覆、4…コア、10…フェルール、11…フェルール本体、12…前端、12’…研磨面、13…後端、14…フランジ、20…プラグフレーム、21…フロントハウジング、22…ラッチアーム、23…位置決め突起、24…開口、31…リアハウジング、32…クリップ、33…ばね収容部、34…ブーツ、35…コネクタ押圧用ばね、41…熱硬化樹脂。