(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050873
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルムとその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240403BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240403BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20240403BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240403BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240403BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240403BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240403BHJP
【FI】
C08J5/18
G09F9/30 310
G09F9/30 349E
C08J7/043 A CFD
C09D5/00 D
C09D201/00
B32B27/36
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018015
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2022517012の分割
【原出願日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2020075937
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 芽衣
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(57)【要約】
【課題】量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイの提供のために、折りたたみ部にクラックが発生することのない、折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】厚みが10~125μmのポリエステルフィルムであって、屈曲方向の高温ホールド角が70°以上の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム;
ここで、高温ホールド角とは、屈曲部分の両表面にそれぞれ1.7%のひずみがかかるように85℃加熱化で18時間固定した後につく折れあとのなす角度を指す。また、屈曲方向とは、折りたたみ部と直交する方向を指す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲方向の屈折率が1.644以上1.730以下であり、折りたたみ部の方向の屈折率が1.770以上1.854以下であり、厚み方向の屈折率が1.486以上1.508以下であり、密度が1.349g/cm3以上であるポリエチレンナフタレートフィルムであって、
屈曲方向の高温ホールド角が70°以上である折りたたみ型ディスプレイ用ポリエチレンナフタレートフィルム:
ここで、高温ホールド角とは、屈曲部分の両表面にそれぞれ1.7%のひずみがかかるように85℃加熱化で18時間固定した後につく折れあとのなす角度を指す。また、屈曲方向とは、折りたたみ部と直交する方向を指す。
【請求項2】
厚みが10~125μmである請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエチレンナフタレートフィルム。
【請求項3】
全光線透過率が85%以上である請求項2に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエチレンナフタレートフィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレンナフタレートフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエチレンナフタレートフィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエチレンナフタレートフィルムと偏光子とを有し、ポリエチレンナフタレートフィルムが、偏光子の少なくとも視認側の面に配置された折りたたみ型ディスプレイであって、
前記ポリエチレンナフタレートフィルムが、折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のポリエチレンナフタレートフィルムとして配置されている、折りたたみ型ディスプレイ。
【請求項6】
請求項5に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム、折りたたみ型ディスプレイ用ハードコートフィルム、折りたたみ型ディスプレイ、及び携帯端末機器に関し、繰り返し折りたたんでも、フィルムの変形による画像の乱れの起こり難い折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器、及び前記の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末機器の薄膜軽量化が進み、スマートフォンに代表される携帯端末機器が広く普及している。携帯端末機器には様々な機能が求められている反面、利便性も求められている。そのため普及している携帯端末機器は、簡単な操作は片手ででき、さらに衣服のポケットなどに収納することが前提であるため6インチ程度の小さな画面サイズとする必要がある。
【0003】
一方、7インチ~10インチの画面サイズであるタブレット端末では、映像コンテンツ、音楽のみならず、ビジネス用途、描画用途、読書などが想定され、機能性の高さを有している。しかし、片手での操作はできず、携帯性も劣り、利便性に課題を有する。
【0004】
これらを達成するため、複数のディスプレイをつなぎ合わせることでコンパクトにする手法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1の発明は、ベゼルの部分が残るため、映像が切れたものとなり、視認性の低下が問題となり普及していない。
【0005】
一方、近年、フレキシブルディスプレイ、折りたたみ型ディスプレイを組み込んだ携帯端末が提案されている。この方式であれば、画像が途切れることなく、大画面のディスプレイを搭載した携帯端末機器として利便性よく携帯できる。
【0006】
ここで、従来の折りたたみ構造を有しないディスプレイや携帯端末機器については、そのディスプレイの表面はガラスなど可撓性を有しない素材で保護することができた。しかし、折りたたみ型ディスプレイにおいて、折りたたみ部分を介して一面のディスプレイとする場合には、可撓性があり、かつ、表面を保護できるハードコートフィルムなどを使用する必要がある。
しかしながら、折りたたみ型ディスプレイでは、一定の折りたたみ部分に当たる箇所が繰り返し折り曲げられるため、当該箇所のフィルムが経時的に変形し、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。また、表面保護フィルムだけでなく、折りたたみ型ディスプレイには、偏光板、位相差板、タッチパネル基材、有機ELなどの表示セルの基材、背面の保護部材など、様々な部位にフィルムが用いられ、これらのフィルムに対しても繰り返し折りたたみに対する耐久性が求められていた。
【0007】
そこで、部分的に膜厚を変える手法も提案されている。(特許文献2参照)。しかし、特許文献2の発明では、膜厚を変化させるために製造工程が複雑になり、量産性に乏しい問題がある。
【0008】
また、ポリエステルフィルムの屈曲方向の屈折率を調整する手法も提案されている(特許文献3参照)。しかし、ポリエチレンテレフタレートを用いたフィルムでは、より信頼性(高温領域)が必要とされる用途では使用できない懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-228391号公報
【特許文献2】特開2016-155124号公報
【特許文献3】国際公開第2018/150940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような従来のディスプレイの部材が有する課題を解決しようとするものであって、量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイと、そのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器を提供することを可能にする、折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを提供する。
更に、本発明は、高温度域で折りたたみ部に折り跡が発生することのない、折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 厚みが10μm以上125μm以下のポリエステルフィルムであって、屈曲方向の高温ホールド角が70°以上の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム。
(ここで、高温ホールド角とは、屈曲部分の両表面にそれぞれ1.7%のひずみがかかるように85℃加熱化で18時間固定した後につく折れあとのなす角度を指す。また、屈曲方向とは、折りたたみ部と直交する方向を指す)
2.密度が1.349g/cm3以上の第1に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム。
3.ポリエステルがポリエチレンナフタレートである第1または2に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム。
4.前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する上記第1から3のいずれか1に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルム。
5.上記第1から4のいずれか1に記載の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムが、裏面保護フィルムとして配置された折りたたみ型ディスプレイであって、折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のポリエステルフィルムが配されている折りたたみ型ディスプレイ。
6.上記第5に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、そのポリエステルフィルムが、高温度領域でも繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさず、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないものである。前記のようなポリエステルフィルム用いた折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径を示すための模式図である。
【
図2】本発明における折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムの屈曲方向を示すための模式図である。
【
図3】屈曲方向のホールド角の測定方法を説明するための模式図である。
【
図4】2枚のPTFE板の間に挟まれた状態の試料フィルム(符号4)の拡大模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ディスプレイ)
本発明で言うディスプレイとは、表示装置を全般に指すものであり、ディスプレイの種類としては、LCD、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED、FEDなどある。例えば、折曲げ可能な構造を有するLCD、有機EL、無機ELが好ましい。特に層構成を少なくすることができる有機EL、無機ELが特に好ましく、色域の広い有機ELがさらに好ましい。
【0015】
(折りたたみ型ディスプレイ)
折りたたみ型ディスプレイは、連続した1枚のディスプレイが、携帯時は2つ折りなどに折りたたむことができるものである。折りたたむことでサイズを半減させ、携帯性を向上させることができる。折りたたみ型ディスプレイの屈曲半径は5mm以下が好ましく、3mm以下がさらに好ましい。屈曲半径が5mm以下であれば、折りたたんだ状態での薄型化が可能となる。屈曲半径は小さいほど良いと言える。本発明であれば、このような屈曲半径であっても、折跡を抑制できる。
屈曲半径は0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上であってもよく、1mm以上であってもよい。屈曲半径が0.1mmであっても、携帯時には実用的に十分な薄型化を達成することができる。
折りたたんだ際の屈曲半径とは、
図1の模式図における、折りたたみ型ディスプレイ1のうち、符号11の箇所を測定した値であり、折りたたんだ際の折りたたみ部分の内側の半径を意味している。なお、後述する表面保護フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの折りたたんだ外側に位置していてもよいし、内側に位置していてもよい。
また、折りたたみ型ディスプレイは3つ折り、4つ折りであってもよく、さらに、ローラブルといわれる巻き取り型であってもよく、これらいずれも本発明でいう折りたたみ型ディスプレイの範囲に入るものとする。
また、本発明のポリエステルフィルムであれば、
図1に示すような長手方向での折り曲げだけでなく、幅方向での折り曲げも可能である。
【0016】
本発明の折りたたみディスプレイ用ポリエステルフィルムは、折りたたみ型ディスプレイの構成部材であればどのような部分に用いられてもよい。以下に、有機ELディスプレイを例として、折りたたみディスプレイの代表的構成と本発明のポリエステルフィルムが用いられうる部分を説明する。なお、以下、本発明の折りたたみディスプレイ用ポリエステルフィルムを単に本発明のポリエステルフィルムという場合がある。
【0017】
(折りたたみ型有機ELディスプレイ)
折りたたみ型有機ELディスプレイの必須構成としては、有機ELモジュールであるが、さらに必要に応じて、円偏光板、タッチパネルモジュール、表面保護フィルム、裏面保護フィルムなどが設けられる。
(有機ELモジュール)
有機ELモジュールの一般的な構成は、電極/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/透明電極からなる。電極を設け、さらに電子輸送層、発光層、ホール輸送層を設ける基材として、本発明のポリエステルフィルムを用いることができる。特に、透明電極の基材として好ましく用いることができる。この場合、基材フィルムは高い水蒸気や酸素のバリア性が求められるため、本発明のポリエステルフィルムには、金属酸化物層などのバリア層が設けられることが好ましい。バリア性を上げるため、バリア層は複数設けられていてもよく、バリア層が設けられたポリエステルフィルムを複数枚用いても良い。
【0018】
(タッチパネルモジュール)
携帯端末機器にはタッチパネルを有することが好ましい。有機ELディスプレイを用いた場合、有機ELディスプレイの上部、もしくは有機ELモジュール/円偏光板間にタッチパネルモジュールが配置されていることが好ましい。タッチパネルモジュールはフィルムなどの透明基材とその上に配置された透明電極を有する。本発明のポリエステルフィルムはこの透明基材として用いることができる。タッチパネルの透明基材として用いる場合、ポリエステルフィルムにはハードコート層や屈折率調整層を設けることが好ましい。
【0019】
(円偏光板)
円偏光板は、ディスプレイ内部の部材によって外光が反射され、画質が低下することを抑制する。円偏光板は直線偏光板と位相差板を有する。直線偏光板は偏光子の少なくとも視認側の面に保護フィルムを有する。偏光子の視認側とは反対の面にも保護フィルムを有していてもよく、偏光子に位相差板が直接積層されていてもよい。位相差板はポリカーボネートや環状オレフィンなどの位相差を有する樹脂フィルムや樹脂フィルムに液晶化合物からなる位相差層が設けられたものが用いられる。本発明のポリエステルフィルムは、偏光子保護フィルムや位相差板の樹脂フィルムとして用いることができる。これらの場合、本発明のポリエステルフィルムはポリエステルフィルムの遅相軸方向が偏光子の吸収軸方向と平行または直交となることが好ましい。なお、この平行または直交に対して10度、好ましくは5度までのずれは許容される。
【0020】
(表面保護フィルム)
ディスプレイに上部から衝撃が加わると、有機ELモジュールやタッチパネルモジュールの回路が断線するおそれがあるため、多くの場合、表面保護フィルムが設けられている。本発明のポリエステルフィルムはこの表面保護フィルムとして用いられる。表面保護フィルムはディスプレイの最表面に組み込まれたカバーウインドウと呼ばれるものや、使用者自身で貼り合わせ、剥離ができ、交換可能なアフターと呼ばれるものがあるが、いずれであっても本発明のポリエステルフィルムが用いられる。本発明のポリエステルフィルムを表面保護フィルムとして用いる場合、ポリエステルフィルムの少なくとも表面側にはハードコート層が積層されたものであることが好ましい。ハードコート層を視認側にして折りたたみ型ディスプレイの表面に設けられる。なお、ハードコート層は両面に設けられていてもよい。
【0021】
(裏面保護フィルム)
ディスプレイの裏面側にも保護フィルムが設けられることも好ましい。具体的には有機ELモジュールの非視認側に接着層を設け、貼り合せた構成となる。本発明のポリエステルフィルムはこの裏面側の保護フィルムとして用いることができる。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、折りたたみ型ディスプレイの構成部材で折りたたまれる箇所に使用されるものであれば、上記以外の用途にも使用できる。
これらの中でも、本発明のポリエステルフィルムは、カバーウインドウ表面保護フィルム、アフター表面保護フィルム、タッチパネルモジュールの基材フィルム、裏面保護フィルムに用いられることが好ましい。さらには、カバーウインドウ表面保護フィルム、アフター表面保護フィルムに用いられることが好ましい。
【0023】
また、折りたたみ型ディスプレイとしては上記のすべてに本発明のポリエステルフィルムが使用される必要はない。折りたたみ型ディスプレイでは、本発明のポリエステルフィルム以外にも、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、本発明のポリエステルフィルムではないポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリメチルペンテンフィルムなど、適宜適性に合わせて用いることができる。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、1種類以上のポリエステル樹脂からなる単層構成のフィルムでもよいし、2種類以上のポリエステルを使用する場合、多層構造フィルムでも良いし、繰り返し構造の超多層積層フィルムでもよい。
【0025】
ポリエステルフィルムに使用されるポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、例えば、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性などの点から、ポリエチレンナフタレートフィルム、特に、延伸されたポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。
ポリエチレンナフタレート樹脂を主成分とする態様であって、他のポリエステルを混合する場合、ポリエステルフィルムにおける樹脂100重量%に対して、他のポリエステル樹脂は、40重量%以下であってよく、例えば10重量%以下であり、5重量%以下であってよく、5重量%未満が好ましい。
一方、ポリエチレンナフタレート樹脂は、ポリエステルフィルムにおける樹脂100重量%に対して、60重量%以上であってよく、90重量%以上でよく、95重量%以上であってよく、例えば、95重量%超で含まれることが好ましい。
他のポリエステル樹脂が5重量%未満であることにより、ポリエステルフィルムの結晶性を高く保持でき、高温ホールド角を良好に保持できる。
一実施態様において、ポリエステルフィルムの原料比率におけるポリエチレンナフタレートの割合は、100重量%である。
なお、本発明において、ポリエステルフィルムは、特性の異なるポリエチレンナフタレートを複数種含んでもよい。
ポリエチレンナフタレートの割合を高くすることで、ポリエステルフィルムが、高温度領域でも繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさず、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを抑制できる。更に、本発明のポリエステルフィルム用いた折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものとなる。
【0026】
ポリエステルフィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p-キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150~20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の質量比率は3質量%未満である。3質量%未満の場合には、フィルム強度、透明性、耐熱性が保持されて好ましい。
【0027】
また、ポリエステルフィルムの製造において、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.40~1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.40dl/g以上であると、得られたフィルムの耐衝撃性が向上し、外部衝撃によるディスプレイ内部回路の断線が発生しづらく好ましい。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。
例えば、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.40~0.8dl/gであり、極限粘度は、0.40~0.7dl/gであってもよい。
【0028】
ポリエステルフィルムの厚みは、10μm以上125μmであり、例えば、25μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると鉛筆硬度向上効果と耐衝撃性向上効果が見られ、厚みが125μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの表面は、平滑であっても凹凸を有していても良い。、ディスプレイの表面カバー用途に用いる場合、平滑なフィルム表面を有することが好ましい。
ヘイズは、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズの下限は小さいほどよいが、安定した生産の面からは0.1%以上が好ましく、0.3%以上であってもよい。
【0030】
前記のようにヘイズを低下させる目的からはあまりフィルム表面の凹凸は大きくない方がよいが、ハンドリング製の観点から程度な滑り性を与えるために、凹凸を有してもよい。
表面凹凸を形成する方法としては、表層のポリエステル樹脂層に粒子を配合する方法で形成でき、また、粒子入りのコート層を製膜途中でコーティングすることで形成できる。
【0031】
ポリエステル樹脂層に粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0032】
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
【0033】
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
【0034】
また、ポリエステルフィルムは、全光線透過率の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
【0035】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、安定した生産の面からは99%以下が好ましく、97%以下であってもよい。
【0036】
ポリエステルフィルムの150℃30分熱処理後の最大熱収縮率は、2%以下が好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、例えば、1.2%以下である。
2%以下の熱収縮率あれば、有機ELディスプレイ自体の発熱による寸法変化を抑制することができる。熱収縮率は低いほどよいと言えるが、-1%以上であることが好ましく、0%以上であることが好ましい。ここでのマイナスは加熱後に膨張したことを意味し、-1%を下回る場合も平面不良となる場合がある。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムの表面に、ハードコート層などを形成する樹脂との密着性を向上させるための処理を行うことができる。
【0038】
表面処理による方法としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が挙げられ、特に限定なく使用できる。
【0039】
また、易接着層などの接着性向上層により、密着性を向上させることもできる。易接着層としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用でき、一般的なコーティング手法、好ましくはいわゆるインラインコート処方により形成できる。
【0040】
上述のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルを、フィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程を経て、製造することができる。
【0041】
次に、2軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す場合がある)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。また、単層構成、多層構成など層数を限定するものではない。
なお、PETフィルムの代わりにポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いる態様においても、同様の方法で、本発明に係るポリエステルフィルムを製造できる。
【0042】
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。単層の場合は1台の押し出し機でよいが、多層構成のフィルムを製造する場合には、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成する複数のフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成することができる。
【0043】
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約300℃程度に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
【0044】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
【0045】
(屈曲方向の屈折率について)
本発明において、ポリエステルフィルムの長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率は1.610以上1.750以下であることが好ましく、例えば、1.610以上1.710以下であり、更に好ましくは、1.630以上1.680以下である。
一態様において、ポリエステルフィルムの長手方向の屈折率が1.610以上であることにより、結晶化度を効率的に向上させることができ、高温ホールド角を向上させることができる。1.750以下であると屈曲時の応力を下げることができ、室温時のホールド角、高温ホールド角どちらも向上させることができる。
また、この態様とは逆に、ポリエステルフィルムの幅方向の屈折率が上記範囲内である場合、ポリエステルフィルムの長手方向の屈折率は、ポリエステルフィルムの幅方向の屈折率よりも高いことが望ましい。
ポリエステルフィルムの屈曲方向の屈折率は、1.610以上1.750以下であることが好ましく、例えば、1.610以上1.710以下であり、1.630以上1.680以下であることがより好ましい。
ここで、屈曲方向とは、
図2のポリエステルフィルム(符号2)上の符号22に示すように、折りたたみ型ディスプレイの用途において想定される折りたたみ部(符号21)と直交する方向を指している。
長手方向及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率が1.610以上1.750以下であると、繰り返し折りたたんだ際の変形が少なく、折りたたみ型ディスプレイの画質を低下させるおそれがなく好ましい。
ポリエステルフィルムの屈曲方向の屈折率は、1.630~1.680であることがより好ましい。もちろん、その方向は前記の屈曲方向であることが好ましい。1.610以上であると結晶化度を効率的に向上させることができ高温ホールド角を向上させることができる。1.750以下であると屈曲時の応力を下げることができ、室温時のホールド角、高温ホールド角どちらも向上させることができる。
ポリエステルフィルムの屈折率は、延伸倍率、延伸温度を調節することで効果的に調節することができる。また、屈折率の調整のために延伸方向の緩和工程、多段延伸を用いても良い。多段延伸を行う場合には、1段目の延伸倍率よりも2段目以降の延伸倍率を高くすることが好ましい。
【0046】
ポリエステルフィルムの長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率を上記範囲で制御すること、より好ましくは、屈曲方向の屈折率を上記範囲で制御することで、折りたたみ時に折りたたみの内側にかかる圧縮応力による疲労を低減することができる。圧縮応力による疲労は主に結晶部において起こると考えられており、屈曲方向に結晶が少ないほうが疲労しにくい。したがって、屈曲方向の屈折率が、屈曲方向に対して垂直方向の屈折率と比べて小さくなることにより屈曲方向の配向結晶量が低減され、圧縮疲労を抑制されていると考えられる。
【0047】
また、折りたたみ時に折りたたみの外側にかかる引張応力によって生じるクリープ現象を屈折率の低減で抑えることができる。引張応力による疲労は主に非晶部において起こると考えられており、繰り返しかかる応力による分子鎖の引き揃えが発生し変形が生じる。屈曲方向に並んでいる分子鎖が少ないほうが引き揃えによる変形が少ないと推測できる。また、非晶部が少ない方が引張による疲労は抑制できるため、結晶化度すなわち密度が高い方が好ましい。
【0048】
本発明においては、未延伸ポリエステルシートを長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の延伸倍率を1.0倍以上3.4倍以下とすることが好ましく、1.4倍以上2.3倍以下がさらに好ましい。そして、当該延伸方向は前記の屈曲方向であることが好ましい。延伸倍率が3.4倍以下であるとフィルムの厚みムラが生じないため好ましい。延伸温度としては、120℃以上150℃以下が好ましく、125℃以上145℃以下が更に好ましい。なお延伸時の加熱方法は、熱風加熱方式、ロール加熱方式、赤外加熱方式など従来公知の手段を採用することができる。延伸温度を125℃以上145℃以下にすることで、上記延伸倍率での延伸による大きな厚みムラを防ぐことができる。
【0049】
(折りたたみ部の方向の屈折率について)
上記のポリエステルフィルムの屈折率が1.610以上1.750以下である方向と直交する方向の屈折率は、1.750~1.870であることが好ましい。即ち、屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)の屈折率が1.750以上1.870以下であることが好ましい。1.750以上1.870以下にすることで屈曲方向に折りたたんだ際の変形を少なくすることができる。1.870以下にすることで折りたたみ部の方向にクラックが入ることを抑制でき、更に破断することを抑制できる。また、延伸後の巻取り工程における破断を抑制することができる。1.750以上にすることで密度を上げることができ、高温ホールド角を向上させることができる。
例えば、ポリエステルフィルムの長手方向が屈曲方向である場合、屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)は、ポリエステルフィルムの幅方向が、屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)に該当する。
屈曲方向と直交する方向の屈折率は、1.770~1.830がより好ましい。
また、屈曲方向の屈折率と、屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)の屈折率とを比較した場合、屈曲方向の屈折率が低いことが望ましい。
この態様により、屈曲方向に折りたたんだ際の変形を少なくすることができる。また、折りたたみ部の方向にクラックが入ることを抑制でき、更に破断することを抑制できる。その上、延伸後の巻取り工程における破断を抑制することができる。加えて、密度を上げることができ、高温ホールド角を向上させることができる。
屈曲方向と直交する方向の屈折率を調整する方法として、延伸倍率、延伸予熱温度、延伸温度、多段延伸、フィルム弛緩が挙げられる。延伸倍率は3.3~5.0倍であることが好ましく、より好ましくは3.5~4.5倍である。また、屈曲方向と直交する方向の延伸予熱温度は125~145℃であることが好ましい。屈曲方向と直交する方向に多段延伸する場合、1段目より2段目以降の延伸倍率を高くする方が好ましい。フィルム弛緩は機械流れ方向(長手方向)、垂直方向(幅方向)に何れにおいても0~10%行っても良い。
【0050】
(厚みの方向の屈折率について)
厚み方向の屈折率は1.520以下であることが好ましい。より好ましくは1.515以下、更に好ましくは1.510以下、特に好ましくは1.505以下、最も好ましくは1.500以下である。厚み方向の屈折率は低いことが好ましいが、安定した生産の面で1.3以上が好ましく、さらには1.4以上であってもよい。特に好ましくは1.410以上である。
【0051】
(ポリエステルフィルムの密度について)
ポリエステルフィルムの密度は1.349g/cm3以上であることが好ましい。1.350g/cm3以上であることがより好ましい。1.350g/cm3以上にすることで高温ホールド角を向上させることができる。密度は高いほど好ましく、フィルム中の粒子の有無等によっても多少左右されるが、1.40g/cm3以下であることが好ましく、さらには1.395g/cm3以下がより好ましい。
ポリエステルフィルムの密度が1.349g/cm3以上であることで、本発明のポリエステルフィルムの結晶化を十分にでき、85℃での変形を抑制できる。また、熱収縮率が高くなることを抑制でき、デバイスの発熱による寸法変化を抑制できる。
製膜時の熱固定温度を210~270℃に設定することで結晶化を進行させ、上記範囲内で密度を効果的に増大させることができる。
【0052】
ポリエステルフィルムの屈曲方向は、長手方向(機械流れ方向)に対応させることが好ましい。こうすることで、2軸延伸目で屈曲方向の屈折率を下げやすく屈曲性を向上させやすい。即ち、未延伸ポリエステルシートを長手方向に1.0~2.3倍、より好ましくは1.4~2.1倍の延伸倍率で延伸することが好ましいポリエステルフィルムを得られる。そして、幅方向には、3.3~5.0倍、より好ましくは3.5~4.5倍の延伸倍率で延伸することが好ましい態様であると言える。
【0053】
本発明のポリエステルフィルムは、屈曲方向の高温ホールド角が70°以上である。ここで、高温ホールド角とは、屈曲部分の両表面にそれぞれ1.7%のひずみがかかるように85℃加熱化で18時間固定した後につく折れあとのなす角度を指す。また、屈曲方向とは、折りたたみ部と直交する方向を指す。
屈曲方向の高温ホールド角は、71°以上、例えば、72°以上である。高ければ高いほうがよく、180°が最も好ましいが、屈曲方向の高温ホールド角は、180°以下であってよく、例えば170°以下でも十分な機能を有する。
屈曲方向の高温ホールド角が上記範囲内であることにより、85℃での変形を抑制できる。また、熱収縮率が高くなることを抑制でき、デバイスの発熱による寸法変化を抑制できる。このため、本発明であれば、高温度領域でも繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさず、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを抑えることができる。更に、ポリエステルフィルム用いた折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
なお、屈曲方向の高温ホールド角の測定方法は、実施例において例示する。
【0054】
(易接着層)
本発明において、ポリエステルフィルムとハードコート層などとの接着性を向上させるため、本発明のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、易接着層を積層することも好ましい。易接着層は、易接着層形成のための塗布液を未延伸又は縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、必要に応じて熱処理乾燥し、さらに延伸されていない少なくとも一方向に延伸して得ることができる。二軸延伸後にも熱処理することができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.005~0.20g/m2に管理することが好ましい。塗布量が0.005g/m2以上であると、接着性が得られて好ましい。一方、塗布量が0.20g/m2以下であると、耐ブロッキング性が得られて好ましい。
【0055】
易接着層の積層に用いられる塗布液に含有させる樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等、特に限定なく使用できる。易接着層形成用塗布液に含有させる架橋剤としては、メラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。それぞれ2種以上を混合して使用することもできる。これらはインラインコートの性質上、水系塗布液によって塗工されることが好ましく、前記の樹脂や架橋剤は水溶性又は水分散性の樹脂や化合物であることが好ましい。
【0056】
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が易接着層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
【0057】
また、塗布液を塗布する方法としては、上記の塗布層と同様に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0058】
(ハードコート層)
本発明のポリエステルフィルムを折りたたみ型ディスプレイの表面に位置させてディスプレイを保護する表面保護フィルムとして用いる場合は、その少なくとも一方の表面にハードコート層を有していることが好ましい。ハードコート層は、ポリエステルフィルム上のディスプレイ表面側に位置させてディスプレイにおいて用いられることが好ましい。ハードコート層を形成する樹脂としては、アクリル系、シロキサン系、無機ハイブリッド系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシ系など特に限定なく使用できる。また、2種類以上の材料を混合して用いることもできるし、無機フィラーや有機フィラーなどの粒子を添加することもできる。
【0059】
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚としては、1~50μmが好ましい。1μm以上であると十分に硬化し、鉛筆硬度が高くなり好ましい。また厚みを50μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
【0060】
(塗布方法)
ハードコート層の塗布方法としては、マイヤーバー、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーターなど特に限定なく使用でき、粘度、膜厚に応じて適宜選択できる。
【0061】
(硬化条件)
ハードコート層の硬化方法としては、紫外線、電子線などのエネルギー線や、熱による硬化方法など使用でき、フィルムへのダメージを軽減させるために、紫外線や電子線などによる硬化方法が好ましい。
【0062】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、3H以上が好ましく、4H以上が更に好ましい。3H以上の鉛筆硬度があれば、容易に傷がつくことはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが9H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
【0063】
(ハードコート層の特性)
本発明におけるハードコート層は、上述のような表面の鉛筆硬度を高めてディスプレイの保護をする目的に使用できるものであり、透過率が高いことが好ましい。ハードコートフィルムの全光線透過率としては、87%以上が好ましく、88%以上がさらに好ましい。透過率が87%以上あれば、十分な視認性が得られる。ハードコートフィルムの全光線透過率は、一般的に高いほど好ましいが、安定した生産の面から99%以下が好ましく、97%以下であってもよい。また、ハードコートフィルムのヘイズは、一般的に低いことが好ましく、3%以下が好ましい。ハードコートフィルムのヘイズは2%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズは一般的には低いほどよいが、安定した生産の面から0.1%以上が好ましく、0.3%以上であってもよい。
【0064】
ハードコート層には、さらに、他の機能が付加されたものであってもよい。例えば、上記のような一定の鉛筆硬度を有する防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層、低反射層および帯電防止層などの機能性が付加されたハードコート層も本発明おいては好ましく適用される。
【0065】
またタッチパネルモジュールの基材フィルムとして用いられる場合にもハードコート層が設けられていても良い。タッチパネルモジュールの透明電極層として例えばITO層が用いられる場合には、電極パターンを見えにくくするため、基材フィルムと透明電極層の間に鬱せ津率調整層が設けられることが好ましい。この場合、ハードコート層自体が屈折率調整層を兼ねていてもよく、さらに別途屈折率調整を積層してもよい。
【0066】
別の態様において、本発明の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムは、裏面保護フィルムとして配置された折りたたみ型ディスプレイに使用できる。例えば、折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のポリエステルフィルムに、本発明の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを配置できる。
【0067】
別の態様において、本発明のポリエステル折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器を提供する。
【実施例0068】
次に、本発明について実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で実施した特性値の評価方法を下記に示す。
【0069】
(1)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれにも同じ計算式を用いて評価した。
【0070】
(2)屈折率
メトリコン社製レーザー屈折計(モデル2010プリズムカプラ-)を用いて、1枚のサンプルフィルムを内蔵圧力計40目盛の圧力で挟み、波長633nmのレーザー光にて測定を行い、スペクトラムチャートを得た。得られたスペクトラムチャート上で、検知器出力が急激に低下する点を読み取り、この値を屈折率とした。測定モードTEにて長手方向と幅方向の屈折率、TMにて厚み方向の屈折率を測定した。
【0071】
(3)全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。
【0072】
(4)密度
JIS K 7112:1999準拠の方法(密度勾配管法)に従って密度を測定した。(単位:g/cm3)。
【0073】
(5)最大熱収縮率
試料フィルムをタテ10mm×ヨコ250mmにカットし、長辺を測定したい方向に合わせて、200mm間隔で印をつけ、5gの一定張力下で印の間隔Aを測った。続いて、試料フィルムを無荷重で150℃の雰囲気のオーブン中で30分間放置した後、オーブンから取り出し室温まで冷却した。その後、5gの一定張力下で印の間隔Bを求め、下記式により熱収縮率(%)を求めた。なお、上記熱収縮率は試料フィルムの幅方向に3等分した位置で測定し、3点の平均値を熱収縮率(%)とする
熱収縮率(%)=[(A-B)×100]/A
屈曲方向と折りたたみ方向の双方向についてそれぞれ別個に試料フィルムのタテ、ヨコが異なるようにカットして測定し、測定値が大きい方向のデータを最大熱収縮率(%)とする。
【0074】
(6)高温ホールド角
屈曲部分の両表面にそれぞれ1.7%のひずみがかかるよう固定したときにつく折れあとの強さを評価する。
図3は、屈曲方向のホールド角の測定方法を説明するための模式図であり、試料フィルム(符号3)を幅方向10mm、流れ方向50mmにカットした。PTFE板2枚(符号31)を重ね合わせ、50μmの試料フィルムの場合、スペーサーとして厚さ3mmのPTFE板(符号32)を間にはさむことですきまを作った。試料の両端に両面テープを貼り、屈曲させた状態でPTFE板の3mmのすきまにはさみ、両端を両面テープで固定した。85℃dry環境下に18時間置いた後、2枚のPTFE板(符号31)の間から取り出した後5分後にフィルムについた折れ痕のなす角度(符号33)を測定した。この角度を高温ホールド角とする。
ひずみを一定とするため、フィルムの厚みのよってスペーサーとして用いるPTFE板の厚み32を変更する。
図4に、2枚のPTFE板(
図3の符号31)の間に挟まれた状態の試料フィルム(符号3)の拡大模式図を示す。上記の圧縮応力、引張応力ともにかからない中立面を厚み方向の中心(図中の破線)と定め、中立面と両表面の差をひずみとする。つまり両表面にかかるひずみは以下の式で表すことができる。
なお、
図4において、符号41は、試料フィルムにおける最外面の直径であり、符号42は、試料フィルムにおける上記中立面の直径であり、符号43は、試料フィルムにおける最内面の直径を示す。
【0075】
高温ホールド角の評価において、ひずみ(1.7%)は以下の方法で表すことができる。
ひずみ(1.7%)
=(|最外面または最内面の半円周-中立面の半円周|/中立面の半円周)×100
ここで半円周は試料フィルムの厚みt(mm)、屈曲直径(最外面の直径)即ち、用いるスペーサーの厚みをd(mm)としたとき以下の式でそれぞれ求めることができる。
最外面の半円周=d×π/2
中立面の半円周=(d-t)×π/2
最内面の半円周=(d-2t)×π/2
以上より、ひずみ1.7%に定めるとき、試料フィルムの厚みt(mm)、屈曲直径つまり用いるスペーサーの厚みをd(mm)とし、用いるスペーサー(PTFE板)の厚みは以下の式より決定する。代表的なフィルム厚みに対するスペーサー厚みは、例えば、以下のように示される。
スペーサー厚みd(mm)=フィルム厚み(mm)×60
例えば、上記の厚みが50μmの試料フィルムの場合、最外面の直径(符号41)はスペーサーの厚みdと同一であって3mmである。最内面の直径(符号43)は2.9mmであり、中立面の直径(符号42)は、2.95mmである。ここで、上記ひずみを示す式において、最外面の半円周、最内面の半円周は適宜選択できる。
【0076】
(ポリエチレンナフタレートペレットの調製)
ナフタレン-2,6-ジカルボン酸ジメチル100部およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点でリン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間、0.11~0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液として添加:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加し、エステル交換反応終了後、三酸化アンチモン0.024部を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行い、固有粘度が0.48dl/gの、実質的に粒子を含有しない、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0077】
(ポリエチレンテレフタレートペレットの調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。
次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.58dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(a)を得た。
【0078】
(ウレタン樹脂の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部、ネオペンチルグリコール11.74質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール112.70質量部、及び溶剤としてアセトニトリル85.00質量部、N-メチルピロリドン5.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマーD溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水溶性ポリウレタン樹脂(A)を調製した。
【0079】
(水溶性カルボジイミド化合物の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコにイソホロンジイソシアネート200質量部、カルボジイミド化触媒の3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド4質量部を投入し、窒素雰囲気下、180℃において10時間撹拌し、イソシアネート末端イソホロンカルボジイミド(重合度=5)を得た。次いで、得られたカルボジイミド111.2g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)80gを100℃で24時間反応させた。これに水を50℃で徐々に加え、固形分40質量%の黄色透明な水溶性カルボジイミド化合物(B)を得た。
【0080】
(易接着層形成用塗布液の調製)
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。
水 16.97質量部
イソプロパノール 21.96質量部
ポリウレタン樹脂(A) 3.27質量部
水溶性カルボジイミド化合物(B) 1.22質量部
粒子 0.51質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量部
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0081】
(実施例1)
ポリエチレンナフタレートのペレットを押出機に供給し、310℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度60℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。未延伸フィルムに上記の易接着層形成用塗布液をロールコート法で両面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.06g/m2になるように調整した。その後、テンターに導き140℃で予熱後、135℃で4.2倍に横延伸し、幅固定して240℃で5秒間の熱固定を施し、さらに180℃で幅方向に1%緩和させることにより、厚み50μmポリエチレンナフタレートフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0082】
(実施例2~6)
実施例1と同様に未延伸フィルムを得た後、未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて120℃に均一加熱し、非接触ヒーターで135℃に加熱して表1に記載のMD倍率でのロール延伸(縦延伸)を行った。表1に記載の長手方向の延伸倍率に変更した他は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0083】
(実施例7)
実施例1と同様に未延伸フィルムを得た後、未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて120℃に均一加熱し、非接触ヒーターで140℃に加熱して表1に記載のMD倍率でのロール延伸(縦延伸)を行った。表1に記載の長手方向の延伸倍率に変更した他は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0084】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートのペレットを押出機に供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで85℃に加熱して1.4倍のロール延伸(縦延伸)を行った。
得られた一軸延伸フィルムに上記の易接着層形成用塗布液をロールコート法で両面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.06g/m2になるように調整した。その後、テンターに導き105℃で予熱後、95℃で4.0倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱固定を施し、さらに180℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み50μmポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0085】
(比較例2)
表1のように長手方向の延伸倍率を1.4倍に変更した他は比較例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0086】
得られたポリエステルフィルムを、25μm厚の粘着層を介して有機ELモジュールの非視認側に貼合し、
図1における屈曲半径の相当する半径が3mmの全体の中央部で二つ折りにできるスマートフォンタイプの折りたたみ型ディスプレイを作成した。ポリエステルフィルムは折りたたみ部分を介して連続した1枚のディスプレイの非視認側に配され、有機EL基板であるバリア層を有するポリイミドフィルムに張り合わされている。各実施例のポリエステルフィルムを用いたものは、中央部で二つ折りに折りたたんで携帯できるスマートフォンとして動作及び視認性を満足するものであった。また、高温化においても動作及び視認性に問題はなかった。
一方、各比較例のポリエステルフィルムを同じ用途で使用した折りたたみ型ディスプレイは、高温化での使用頻度が増えるに従って、ディスプレイの折りたたみ部で画像の歪を生じてきたように感じ、あまり好ましいものではなかった。また、表面に凹み、キズが確認されるものもあった。
【0087】
【0088】
本発明の折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、例えば、折りたたみ型ディスプレイの裏面に位置しているポリエステルフィルムが繰り返し折りたたまれた後の変形を起こさないため、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じることがない。特に本発明のポリエステルフィルムを裏面保護フィルムとして使用した折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器または画像表示装置は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れ、信頼性が高いものある。