(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050902
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】化粧方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240403BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240403BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240403BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240403BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240403BHJP
C09D 201/10 20060101ALI20240403BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240403BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240403BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
E04G23/02 E
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D7/20
C09D7/61
C09D201/10
B05D7/00 L
B32B9/00 A
B32B27/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019970
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020062516の分割
【原出願日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019071527
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
(72)【発明者】
【氏名】山本 育恵
(57)【要約】
【課題】凹凸模様を有し、高耐久既存被膜を備えた既存壁面に対し、美麗な新設被膜が形成でき、その仕上り状態を長期にわたり保持することができる化粧方法を提供する。
【解決手段】本発明は、経年劣化した既存壁面の化粧方法であって、上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、無機質被膜、有機無機複合被膜、フッ素樹脂被膜から選ばれる少なくとも1種の既存被膜を備えたものであり、上記既存壁面に対し、上記既存壁面とは色調及び/または光沢度が異なる被膜を形成する下塗材を塗付し、その被膜の乾燥後、上塗材を塗付することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経年劣化した既存壁面の化粧方法であって、
上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、
無機質被膜、有機無機複合被膜、フッ素樹脂被膜から選ばれる少なくとも1種の既存被膜を備えたものであり、
上記既存壁面に対し、
上記既存壁面とは色調及び/または光沢度が異なる被膜を形成する下塗材を塗付し、
該下塗材は、
着色顔料及び/または体質顔料を含み、顔料体積濃度は3~30%であり、
不揮発分は45~90重量%であり、
アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含む非水系下塗材であり、
その被膜の乾燥後、上塗材を塗付することを特徴とする化粧方法。
【請求項2】
上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えた複数の板状壁材によって構成されたものである請求項1に記載の化粧方法。
【請求項3】
上記下塗材は、上記体質顔料を樹脂成分の固形分100重量部に対し、10~200重量部含むものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧方法。
【請求項4】
上記下塗材は、樹脂成分として、反応性シリル基を有する化合物を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に適用可能な化粧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等の壁面には、コンクリート、モルタル、各種の板状壁材等が用いられている。このうち、例えば板状壁材としては、その表面に凹凸模様を設けて立体感を付与するとともに、保護と美装のためにコーティングを施したもの等が多く使用されている。このようなコーティングに供される材料としては、長寿命化、メンテナス軽減化等の観点から、無機質被膜、有機無機複合被膜、フッ素樹脂被膜等の高耐久被膜が形成可能なものが好まれている。
【0003】
このような板状壁材で構成された壁面は、長期間屋外に曝されることから、板状壁材の表面では、太陽光、降雨、粉塵等の影響によって劣化が進行し、板状壁材の当初の美観性は経年により低下してしまう。高耐久被膜を備えた壁面においても、経年による劣化や美観性低下は避けることが難しい。
【0004】
特開2016-117795号公報には、アクリルシリコン樹脂等の被膜に対し、エポキシ樹脂、アミン化合物、シランカップリング剤等を含む下塗り塗料を塗装することが記載されている。当該特許公報では、このような下塗り塗料が、アクリルシリコン樹脂等の高耐久被膜に良好な密着性を示すことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、凹凸模様を有する板状壁材等の劣化面に対し、上記特許文献の方法を用いて化粧を施しても、経時的に膨れ、剥れ等が生じるおそれがあり、実用上満足な結果は得られ難い。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、凹凸模様を有し、高耐久既存被膜を備えた既存壁面に対し、美麗な新設被膜が形成でき、その仕上り状態を長期にわたり保持することができる化粧方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、上述のような既存壁面に対し、特定の下塗材及び上塗材を順に塗付する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.経年劣化した既存壁面の化粧方法であって、
上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、
無機質被膜、有機無機複合被膜、フッ素樹脂被膜から選ばれる少なくとも1種の既存被膜を備えたものであり、
上記既存壁面に対し、
上記既存壁面とは色調及び/または光沢度が異なる被膜を形成する下塗材を塗付し、
該下塗材は、
着色顔料及び/または体質顔料を含み、顔料体積濃度は3~30%であり、
不揮発分は45~90重量%であり、
アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含む非水系下塗材であり、
その被膜の乾燥後、上塗材を塗付することを特徴とする化粧方法。
2.上記既存壁面は、表面に凹凸模様を有し、既存被膜を備えた複数の板状壁材によって構成されたものである1.に記載の化粧方法。
3.上記下塗材は、上記体質顔料を樹脂成分の固形分100重量部に対し、10~200重量部含むものであることを特徴とする1.に記載の化粧方法。
4.上記下塗材は、樹脂成分として、反応性シリル基を有する化合物を含むものであることを特徴とする1.に記載の化粧方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凹凸模様を有し、既存被膜を備えた既存壁面に対し、美麗な新設被膜が形成でき、その仕上り状態を長期にわたり保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明は、建築物、土木構造物等の既存壁面に適用することができる。このような既存壁面は、少なくとも基材と既存被膜で構成される。基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、金属、木材、ガラス等、あるいは各種板状壁材等が挙げられる。このうち板状壁材としては、例えばセメント、珪酸カルシウム、石灰、石膏等のいずれかを主成分する無機質硬化体が挙げられる。このような板状壁材の具体例としては、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、硬質木片セメント板等が挙げられる。
【0013】
本発明では、既存壁面として、その表面に凹凸模様を有するものを対象とする。既存壁面における凹凸模様としては、種々のものが挙げられ、例えばタイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、縞模様、格子模様、水玉模様、砂壁模様、ゆず肌模様、さざ波模様等の他、動植物等をデザイン化した図形模様等が挙げられる。具体的に、凹凸模様を正面から見たときの凸部の形状としては、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、菱形、多角形、不定形等の形状が挙げられる。また、凹凸模様における凸部の断面形状としては、例えば台形、正方形、長方形、半円形、波形、階段形、三角形、山形等が挙げられる。凹凸模様における凹部としては、例えば、平坦で目地を形成するもの等が挙げられる。凹部と凸部との高低差は、各々の部位で一定であっても相違していてもよいが、好ましくは20mm以下、より好ましくは1~15mm程度である。このような凹凸模様は、基材、既存被膜のいずれか一方または両方に付されたものであればよい。
【0014】
本発明における既存壁面では、基材の表面に、無機質被膜、有機無機複合被膜、フッ素樹脂被膜から選ばれる少なくとも1種の既存被膜(以下「高耐久既存被膜」ともいう)が設けられている。この既存被膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の高耐久被膜である。このような既存被膜としては、着色被膜(エナメル系被膜、印刷被膜等)、クリヤー被膜、あるいはこれらの積層被膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗布・硬化させ、形成された被膜である。このようなコーティング材は、例えば、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれのものであってもよい。
【0015】
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、シリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材、あるいは、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明は、特に、最表面の既存被膜が、無機質被膜(上記無機質結合材を含む被膜)、有機無機複合被膜(上記有機無機複合結合材を含む被膜)、フッ素樹脂被膜(上記フッ素樹脂を含む被膜)等から選ばれる1種以上である場合に好適であり、さらには、これらのクリヤー被膜に好適に適用できる。このような既存被膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
【0017】
本発明は、上述のような既存壁面が経年劣化した際の改装方法として適用できる。経年劣化の程度は、特に限定されるものではないが、壁面として概ね5年以上(さらには8年以上)使用されたものは、本発明の対象とすることができる。
【0018】
本発明の既存壁面としては、表面に凹凸模様を有すると共に高耐久既存被膜を備えた板状壁材が、複数併設されることによって構成されたものが好適である。本発明は、このような複数の板状壁材で構成された既存壁面を対象とした場合に、有利な効果を得ることができる。凹凸模様は、少なくとも板状壁材自体に付されていることが望ましい。板状壁材どうしの連結部にはシーリング材または乾式目地材が充填されていてもよい。
【0019】
本発明の化粧方法は、上述のような経年劣化した既存壁面に対し、下塗材及び上塗材を順に塗付(塗装)するものである。
【0020】
本発明では、下塗材として、既存壁面とは色調及び/または光沢度が異なる被膜を形成する下塗材を使用する。本発明では、このような下塗材の使用により、既存壁面の凹凸模様全体、すなわち、凹凸模様の凹部、凸部、さらに凹部と凸部との境界部等を含む既存壁面全体に、既存壁面の凹凸に沿って満遍なく下塗材被膜が形成されたことを確認することができ、その後に上塗材を塗付することで、既存壁面の凹凸模様を活かしつつ、美麗な新設被膜が形成でき、その仕上り状態を長期にわたり保持することができる。
【0021】
既存壁面とは色調が異なる被膜を形成する下塗材は、下塗材塗付後に形成された被膜(下塗材被膜)の色調が、既存壁面の色調に対し異色であることが目視にて認識できるものであればよい。このような下塗材としては、既存壁面と下塗材被膜との色差(△E)が3以上であるものが好ましく、5以上であるものがより好ましく、10以上であるものがさらに好ましい。なお、色調が異なる領域が複数混在する既存壁面(例えば斑点状模様、格子状模様等)に対しては、それら領域のうち、最も大面積を占める領域の色調に対し、下塗材被膜の色調が異色であればよい。
【0022】
色差(△E)は、色彩色差計を用いて測定される値である。具体的には、既存壁面、下塗材被膜それぞれのL*値、a*値、b*値(測定点10箇所の平均値)より下記式にて算出することができる。なお、下塗材被膜のL*値、a*値、b*値は、既存壁面上に形成された下塗材被膜について測定すればよい。
<式>△E={(L*
2-L*
1)2+(a*
2-a*
1)2+(b*
2-b*
1)2}0.5
(式中、L*
1、a*
1、b*
1はそれぞれ既存壁面のL*、a*、b*。L*
2、a*
2、b*
2はそれぞれ下塗材被膜のL*、a*、b*)
【0023】
このような下塗材としては、例えば、樹脂成分、及び着色剤を含むものが使用できる。このうち着色剤としては、例えば、着色顔料、染料等が使用できる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、鉄-銅-マンガン複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マンガン-クロム複合酸化物、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、金属顔料、パール顔料等が挙げられる。染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、カチオン染料、直接染料、可溶性建染染料、酸性媒染染料、酒精浴染料、反応性染料等が挙げられる。これら着色剤の1種または2種以上を適宜使用することにより、下塗材を所望の色調に着色することができる。下塗材における着色剤の混合量は、上記樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~500重量部、より好ましくは5~200重量部、さらに好ましくは10~150重量部である。
【0024】
既存壁面とは光沢度が異なる被膜を形成する下塗材は、その被膜(下塗材被膜)の光沢度が、既存壁面の光沢度に対し異なることが目視にて認識できるものであればよい。このような下塗材としては、既存壁面と下塗材被膜との光沢度の差が5以上であるものが好ましく、10以上であるものがより好ましく、15以上であるものがさらに好ましい。なお、光沢度が異なる領域が複数混在する既存壁面に対しては、それら領域のうち、最も大面積を占める領域の光沢度に対し、下塗材被膜の光沢度が異なるものであればよい。
【0025】
光沢度は、光沢計を用いて測定される値である。具体的には、既存壁面、下塗材被膜それぞれの60度鏡面光沢度(測定点10箇所の平均値)より求めることができる。なお、下塗材被膜の光沢度は、既存壁面上に形成された下塗材被膜について測定すればよい。
【0026】
このような下塗材としては、例えば、樹脂成分、及び必要に応じ艶消し剤を含むものが使用できる。下塗材被膜の光沢度は、例えば、樹脂成分の種類、比率等を調整することにより設定できる。2種以上の樹脂を複合化することによって、光沢度を調整することもできる。下塗材が艶消し剤を含む場合は、艶消し剤の種類、比率等を調整することによって、光沢度を設定することができる。
【0027】
艶消し剤としては、例えば、体質顔料等が使用でき、具体的には、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、寒水石、陶土、チャイナクレー、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0028】
下塗材が艶消し剤を含む場合、艶消し剤の混合量は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは10~200重量部であり、好ましくは20~120重量部、より好ましくは35~95重量部である。艶消し剤の混合量がこのような範囲内であれば、艶調整効果に加え、凹凸模様の表面に満遍なく下塗材被膜を形成する効果がいっそう高まり、また凹凸模様を活かしつつ下塗材被膜を形成しやすくなり、好適である。
【0029】
下塗材が、着色顔料及び/または体質顔料等の顔料を含む場合、下塗材の顔料体積濃度は、好ましくは1~30%であり、より好ましくは3~25%、さらに好ましくは5~23%、特に好ましくは8~20%である。顔料体積濃度が上記範囲内であることにより、下地の形状を活かしつつ、密着性に優れた下塗材被膜を形成する効果を高めることができる。なお、顔料体積濃度は、乾燥塗膜中に含まれる顔料の体積百分率であり、下塗材を構成する樹脂成分と顔料の重量部数及び比重から計算により求められる値である。なお、樹脂成分の比重は1とする。
【0030】
下塗材における樹脂成分としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂等の水性樹脂、溶剤可溶性樹脂、非水分散性樹脂等の非水系樹脂、あるいは無溶剤型樹脂等が使用できる。
【0031】
このうち、樹脂成分として水性樹脂を用いた場合には、水性下塗材を得ることができる。水性下塗材は、媒体として水を含むものであり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤をさらに含むものであってもよい。
【0032】
樹脂成分として、非水系樹脂を用いた場合には、非水系下塗材を得ることができる。非水系下塗材は、媒体として非水系溶剤を含むものである。非水系溶剤としては、例えば、n-へプタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等の脂肪族炭化水素溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶剤、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等の他、イソパラフィン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0033】
非水系下塗材は、アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含むことが望ましい。このような非水系溶剤は、既存被膜を若干膨潤ないし溶解することにより、密着性向上に寄与しているものと考えられる。アニリン点12~70℃の非水系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等から選ばれる1種以上が好適である。なお、アニリン点は、JIS K2256の方法で測定される値である。
【0034】
下塗材における樹脂成分は、1種または2種以上の化合物からなり、当該化合物のうち少なくとも1種は反応性シリル基を有する化合物であることが望ましい。このような反応性シリル基を有する化合物は、その架橋反応性によって密着性に寄与しているものと考えられ、本発明の効果向上の点で好適である。
【0035】
反応性シリル基は、例えば、アルコキシル基、水酸基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等から選ばれる1種以上の官能基が珪素原子に結合したものである。この中でも、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基、及び/または、珪素原子に水酸基が結合したシラノール基が好適である。
【0036】
反応性シリル基を有する化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン化合物、アルキルアルコキシシラン化合物、シランカップリング剤、反応性シリル基含有ビニル化合物等、あるいは、これらに由来する化合物(例えば、縮合物、変性物、重合物、共重合物等)が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0037】
このうち、テトラアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
アルキルアルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルトリエトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤の他、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、酸無水物基(カルボキシル基)含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0040】
反応性シリル基含有ビニル化合物としては、例えば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。このような反応性シリル基含有ビニル化合物は、これ以外のモノマーとの共重合により得られる樹脂(例えば、アクリルシリコン樹脂等)の態様にて使用することができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、フッ素含有モノマー、芳香族モノマー、紫外線吸収性基含有モノマー、光安定性基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0041】
下塗材における樹脂成分は、反応性シリル基を有する化合物以外の化合物を含むことができる。このような化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の各種樹脂、あるいはこれら樹脂を生成することが可能な各種化合物等を挙げることができる。
【0042】
下塗材の樹脂成分の態様の一例として、態様(1)~(4)を以下に示す。
【0043】
(1)樹脂構成成分中に反応性シリル基含有ビニル化合物を含む樹脂として、例えば、少なくとも反応性シリル基含有ビニル化合物及び水酸基含有モノマーを共重合して得られる樹脂を用いる場合、このような樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物(後述)等と併せて使用することができる。
【0044】
(2)樹脂構成成分中に反応性シリル基含有ビニル化合物を含む樹脂として、例えば、少なくとも反応性シリル基含有ビニル化合物及びエポキシ基含有モノマーを共重合して得られる樹脂を用いる場合、このような樹脂は、例えば、ポリアミン化合物(後述)等と併せて使用することができる。
【0045】
(3)下塗材における樹脂成分として、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び反応性シリル基を有する化合物を含む態様(3)が挙げられる。
【0046】
この態様(3)におけるポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリイソプレンポリオール、カーボネートポリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。ポリオール化合物の水酸基価は、好ましくは10~200KOHmg/g、より好ましくは20~100KOHmg/gである。水酸基価は、樹脂固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0047】
態様(3)では、ポリオール化合物としてアクリルポリオール(水酸基含有アクリル樹脂)を含むことが望ましい。アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマーと、必要に応じその他のモノマーとを樹脂構成成分として含み、これらを重合したものが使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマーとしては、上述したものと同様のものが使用できる。上記その他のモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー、紫外線吸収性基含有モノマー、光安定性基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するものであり、上記ポリオール化合物と架橋反応してポリウレタン樹脂被膜を形成するものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(pure-MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらの誘導体(例えば、ウレタン化反応、アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応等によって得られる化合物)が挙げられ、アロファネート基を有するもの、アロファネート基及びイソシアヌレート基を有するもの等も使用することができる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0049】
ポリイソシアネート化合物の混合比率は、水酸基含有樹脂の水酸基に対する、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比、すなわちNCO/OH比を考慮して設定すればよい。NCO/OH比は、好ましくは0.6~1.4、より好ましくは0.8~1.2である。このような比率であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0050】
態様(3)における反応性シリル基を有する化合物としては、上述したものと同様のものが使用できる。
【0051】
(4)下塗材における樹脂成分として、エポキシ樹脂、ポリアミン化合物、及び反応性シリル基を有する化合物を含む態様(4)が挙げられる。
【0052】
この態様(4)では、エポキシ樹脂を使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、可とう性エポキシ樹脂、硬質エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂が、少なくとも可とう性エポキシ樹脂を含む態様であれば、本発明の効果向上の点で好ましく、既存壁面が、板状壁材どうしの連結部にシーリング材が充填されたものである場合等においても有利な効果を得ることができる。
【0053】
可とう性エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族変性エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリオール変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。この中でも、脂肪酸変性エポキシ樹脂が好適である。
【0054】
態様(4)のエポキシ樹脂中に占める可とう性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、下地への密着性、追従性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
【0055】
脂肪酸変性エポキシ樹脂は、脂肪族多塩基酸化合物をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるものである。付加反応には、例えば、エステル化反応等が使用できる。ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、その他後述の硬質エポキシ樹脂等で例示するような各種エポキシ樹脂が使用できる。脂肪族多塩基酸化合物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドカン2酸、ダイマー酸等が挙げられる。この中でも、ダイマー酸が好適である。
【0056】
ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の二量体である。ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸等が挙げられる。
【0057】
ダイマー酸をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるダイマー酸変性エポキシ樹脂は、下塗材のエポキシ樹脂として好適なものである。下塗材のエポキシ樹脂中に占めるダイマー酸変性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、下地への密着性、追従性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
【0058】
硬質エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールFエポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グシシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0059】
態様(4)のエポキシ樹脂は、そのエポキシ当量(固形分当たり)が好ましくは300~3000g/eq、より好ましくは400~2000g/eq、さらに好ましくは450~1500g/eq、特に好ましくは500~1100g/eqである。エポキシ当量が上記下限以上であることにより、下地への追従性、密着性等の点で好適である。エポキシ当量が上記上限以下であることにより、耐膨れ性、密着性、上塗材適性等の点で好適である。なお、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の分子量をエポキシ基の数で除した値である。
【0060】
態様(4)におけるポリアミン化合物は、1分子中に2以上のアミノ基を有するものであり、上記エポキシ樹脂と架橋反応してエポキシ樹脂被膜を形成するものである。ポリアミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等のポリアミン化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。この中でも、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミンから選ばれる1種以上のポリアミン化合物を好適に使用することができる。
【0061】
このようなポリアミン化合物は、活性水素当量(固形分当たり)が好ましくは40~200g/eq、より好ましくは50~150g/eq、さらに好ましくは60~95g/eqである。活性水素当量が上記範囲内であることにより、密着性等において十分な効果を得ることができる。なお、活性水素当量とは、ポリアミン化合物の分子量をアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0062】
態様(4)では、エポキシ樹脂とポリアミン化合物について、ポリアミン化合物の活性水素当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量が、[ポリアミン化合物の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.01~0.3、さらに好ましくは0.03~0.25、特に好ましくは0.05~0.2の組み合わせになるように各材料を設定して使用することができる。エポキシ樹脂、ポリアミン化合物として、このような条件を満たす材料を組み合わせて使用することにより、密着性等の点でより好ましい効果を得ることができる。
【0063】
エポキシ樹脂とポリアミン化合物の配合比は、[(ポリアミン化合物の配合量/ポリアミン化合物の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で1.0以下となるように設定することが好ましく、より好ましくは0.2~1.0、さらに好ましくは0.4~0.98、特に好ましくは0.6~0.95、最も好ましくは0.7~0.9である。なお、アミン硬化剤の配合量及び活性水素当量、並びにエポキシ樹脂の配合量及びエポキシ当量は、いずれも固形分を基準とするものである。エポキシ樹脂とポリアミン化合物の配合比が上記上限以下であることにより、密着性、下地追従性、上塗材適性等の点で好適であり、上記下限以上であることにより、硬化性、密着性等の点で好適である。
【0064】
態様(4)における反応性シリル基を有する化合物としては、上述したものと同様のものが使用できる。態様(4)では、シランカップリング剤が好適であり、特に、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤から選ばれる1種以上を好適に使用することができる。
【0065】
態様(4)では、ポリアミン化合物とシランカップリング剤との固形分重量比(ポリアミン化合物:シランカップリング剤)が、10:90~90:10であることが好ましく、より好ましくは12:88~80:20、さらに好ましくは14:86~65:35、特に好ましくは15:85~50:50である。このような比率で両成分を使用することにより、密着性をいっそう高めることができる。とりわけ水性下塗材において好適である。
【0066】
本発明における下塗材は、樹脂成分の固形分中、SiO2換算で好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.2~25重量%、さらに好ましくは0.3~20重量%となる範囲内で、反応性シリル基を有する化合物を含むことができる。反応性シリル基を有する化合物の混合比率が、このような範囲内であることにより、既存被膜と下塗材被膜との密着性、下塗材被膜と上塗材被膜との密着性を一層高めることができ、下塗材被膜及び上塗材被膜の割れ防止等の点でも好適である。
【0067】
なお、SiO2換算とは、Si-O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO2)となって残る重量分にて表したものである。一般に、テトラアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO2)となる。これらの反応は、
RO(Si(OR)2O)nR+(n+1)H2O→nSiO2+(2n+2)ROH
(Rはアルキル基を示す。nは整数。)
という反応式で表される。本発明におけるSiO2換算は、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0068】
下塗材は、増粘剤を含むことができる。増粘剤としては、例えば、有機ベントナイト、微粉シリカ、表面処理炭酸カルシウム、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、ベンジリデンソルビトール、金属石鹸、酸化ポリエチレン、重合植物油、ポリカルボン酸アミン塩、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリル酸化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ウレタン変性ポリエーテル化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0069】
増粘剤の混合量(固形分)は、樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部である。増粘剤の混合量がこのような範囲内であれば、下塗材が既存壁面の凹凸に沿って満遍なく塗着しやすくなり、十分な密着性を確保することもでき、本発明の効果を安定的に得ることができる。
【0070】
下塗材の不揮発分(塗装時)は、好ましくは30~90重量%であり、好ましくは40~80重量%、より好ましくは45~75重量%である。下塗材の不揮発分がこのような比率であることにより、既存壁面の凹凸に沿って、下塗材を満遍なく塗着する効果を高めることができる。なお、不揮発分は、JIS K5601-1-2の方法にて測定される値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分である。
【0071】
下塗材は、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、骨材、染料、脱水剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、硬化触媒等が挙げられる。このうち硬化触媒としては、例えば、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、酸性化合物、アミン化合物、アルカリ性化合物等が挙げられる。本発明の下塗材は、上記各種成分を常法によって均一に混合することで製造できる。下塗材の形態は、例えば、1液型、2液型、またはそれ以上の多液型とすることができる。
【0072】
下塗材は、既存壁面に対し直接塗装することができるが、必要に応じ各種前処理を行っておくこともできる。前処理としては、例えば、劣化の著しい既存被膜の除去、高圧水洗等による汚染物質等の除去、パテ、フィラー等による補修、表面形状の復元等が挙げられる。既存壁面において、新たにシーリング材を打設した場合は、シーリング材の打設後、概ね2~10日後に下塗材を塗付することが望ましい。
【0073】
下塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。
下塗材の塗付け量は、既存壁面の表面形状、使用する塗装器具等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.03~0.5kg/m2、より好ましくは0.05~0.3kg/m2である。塗装時には下塗材を適宜希釈することもできる。
【0074】
塗装時の下塗材の粘度は、好ましくは0.1~10Pa・s、より好ましくは0.2~5Pa・sである。下塗材の粘度がこのような範囲内であることにより、本発明の効果を安定して得ることができる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値であり、測定温度は23℃である。
【0075】
下塗材の乾燥時間は、常温(0~40℃)で好ましくは1時間以上、より好ましくは2~200時間程度である。
【0076】
本発明では、上述の下塗材の塗付・乾燥後に、上塗材を塗付する。本発明における上塗材としては、既存壁面の凹凸模様を活かすことができる材料が好適である。具体的に使用可能な上塗材としては、例えば、透明上塗材、着色上塗材等が使用できる。透明上塗材は、樹脂成分を含み、その被膜が透明性を示すものである。透明上塗材は、着色透明被膜を形成するものであってもよく、このような透明上塗材は、樹脂成分に加え、透明性を損わない範囲内で着色顔料等を含むものであればよい。着色上塗材としては、樹脂成分、及び着色顔料を含むものが挙げられる。
【0077】
上塗材における樹脂成分としては、各種樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等から選ばれる1種または2種以上が好適である。また、このような樹脂成分の形態としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、非水分散形樹脂から選ばれる1種以上が好適である。また、これら樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。架橋反応性を有する樹脂成分を使用した場合は、被膜の耐久性、耐水性、耐候性、耐薬品性、密着性等を向上させることができる。
【0078】
着色顔料としては、例えば公知の無機着色顔料、有機着色顔料等が使用できる。これら着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、上塗材を所望の色調に設定することができる。着色上塗材における着色顔料の混合比率は、上記樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~500重量部、より好ましくは5~200重量部、さらに好ましくは10~150重量部である。
【0079】
このような上塗材は、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、体質顔料、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。本発明の上塗材は、上記樹脂成分、着色顔料、及び必要に応じ上述の各種成分を常法によって均一に混合することで製造できる。上塗材の形態は、例えば、1液型、2液型、またはそれ以上の多液型とすることができる。また、上塗材の光沢の程度としては、例えば、艶有り、7分艶、5分艶、3分艶、艶消し等が挙げられる。
【0080】
上塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等を使用することができる。
上塗材の塗付け量は、既存壁面の表面形状、上塗材の種類や塗装器具の種類等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.05~0.5kg/m2、より好ましくは0.1~0.4kg/m2である。塗装時には、必要に応じ上塗材を適宜希釈することもできる。
【0081】
本発明において、上塗材は1種または2種以上使用できる。2種以上の上塗材を使用する場合、色調の異なる上塗材を用いて、塗り分け等を行うことにより、2色以上の多色の外観に仕上げることも可能である。
【実施例0082】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0083】
[試験例1]
試験例1では、下塗材として、以下の下塗材1-1~1-4を用意し、これら下塗材を用いて試験を行った。
【0084】
(下塗材1-1)
非水分散型アクリルポリオール{水酸基価:50KOHmg/g、重量平均分子量:70000、ガラス転移温度:38℃、固形分:50重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)}、着色剤(酸化チタン、比重:4.2)、アマイドワックス、ソルベントナフサ(アニリン点:13℃)、及びシリコーン系消泡剤を含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物(1,6-ジイソシアナトヘキサン誘導体、固形分:100重量%)、テトラアルコキシシラン化合物(テトラメトキシシラン縮合物のイソブチルアルコール変性物)、及びミネラルスピリット(同上)を含む硬化剤との混合物(NCO/OH比1.0)。
顔料体積濃度13%、下塗材の不揮発分:58重量%、樹脂固形分中反応性シリル基を有する化合物の比率(SiO2換算):3重量%、着色剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し60重量部、増粘剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し1重量部。
【0085】
(下塗材1-2)
非水分散型アクリルポリオール(同上)、艶消し剤(ホワイトカーボン、比重:2.0)、アマイドワックス、ソルベントナフサ(同上)、及びシリコーン系消泡剤を含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物(同上)、テトラアルコキシシラン化合物(同上)、及びミネラルスピリット(同上)を含む硬化剤との混合物(NCO/OH比:1.0)。
顔料体積濃度16%、下塗材の不揮発分:53重量%、樹脂固形分中反応性シリル基を有する化合物の比率(SiO2換算):3重量%、艶消し剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し38重量部、増粘剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し1重量部。
【0086】
(下塗材1-3)
非水分散型アクリルポリオール(同上)、着色剤(同上)、アマイドワックス、ソルベントナフサ(同上)、及びシリコーン系消泡剤を含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物(同上)、テトラアルコキシシラン化合物(同上)、及びミネラルスピリット(同上)を含む硬化剤との混合物(NCO/OH比:1.0)。
顔料体積濃度13%、下塗材の不揮発分:58重量%、樹脂固形分中反応性シリル基を有する化合物の比率(SiO2換算):0.2重量%、着色剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し60重量部、増粘剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し1重量部。
【0087】
(下塗材1-4)
非水分散型アクリルポリオール(同上)、アマイドワックス、ソルベントナフサ、及びシリコーン系消泡剤を含む主剤と、
ポリイソシアネート化合物(同上)、テトラアルコキシシラン化合物(同上)、及びミネラルスピリットを含む硬化剤との混合物(NCO/OH比:1.0)。
顔料体積濃度0%、下塗材の不揮発分:58重量%、樹脂固形分中反応性シリル基を有する化合物の比率(SiO2換算):0.2重量%、増粘剤量:樹脂成分の固形分100重量部に対し1重量部。
【0088】
(試験例1-1)
○試験i
既存壁面として、屋外曝露により劣化した褐色の窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層塗膜として無機質クリヤー被膜を有するもの)を用意した。この既存壁面の全面に対し、下塗材1-1を塗付け量0.1kg/m2にてスプレー塗装し乾燥させた。ここで、下塗材1-1の被膜は、既存壁面とは色調が異なるもの(色差38)であり、既存壁面の凹凸模様全体に、満遍なく下塗材被膜が形成されたことを容易に確認することができた。次いで、上塗材(褐色アクリルシリコン樹脂塗料)を塗付け量0.2kg/m2にてスプレー塗装し、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。なお、塗装ないし養生の工程は、すべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
【0089】
上記方法で作製した試験体について、促進耐候性試験機(メタルウェザー;ダイプラウィンテス株式会社製)による曝露を500時間行い、試験体表面の外観変化(浮き、剥れの状態)を観察した。次いで、凹凸模様の各部位の被膜にカッターナイフでクロスカットを入れ、このクロスカット部分にテープを貼り付けて剥ぐことにより密着性を確認した。その結果、試験例1-1では、促進耐候性試験による外観変化がなく、どの部位でも剥れが認められなかった。
【0090】
○試験ii
既存壁面として、屋外曝露により劣化した褐色の窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層被膜としてフッ素樹脂クリヤー被膜を有するもの)を用意した。この既存壁面を用いて、試験iと同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。
【0091】
○試験iii
既存壁面として、屋外曝露により劣化した褐色の窯業系サイディングボート(表面にタイル目地調の凸部と凹部(目地)、凸部にはさらに不定形の凹凸模様を有し、最表層被膜としてアクリルシリコン樹脂着色被膜を有するもの)を用意した。この既存壁面を用いて、試験iと同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。
【0092】
試験結果を表1に示す。表1において、下塗材塗装後の状態については、既存壁面と下塗材被膜との色差が10以上または光沢度差が15以上のものを「A」、既存壁面と下塗材被膜との色差が5以上10未満または光沢度差が10以上15未満のものを「B」、既存壁面と下塗材被膜との色差が3以上5未満または光沢度差が5以上10未満のものを「C」、既存壁面と下塗材被膜との色差が3未満または光沢度差が5未満のものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)とした。促進耐候性試験での評価は、外観変化がなく、どの部位でも剥れが認められなかったものを「A」、外観変化が明らかに認められたもの、または剥れが多く認められたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)とした。
【0093】
(試験例1-2)
下塗材1-1に替えて下塗材1-2を用いた以外は、試験例1-1と同様の方法で試験体を作製した。下塗材1-2の塗装後、下塗材1-2の被膜は、既存壁面とは光沢度が異なるもの(光沢度の差42)であり、既存壁面の凹凸模様全体に、満遍なく下塗材被膜が形成されたことを容易に確認することができた。また、試験例1-2では、促進耐候性試験による外観変化がなく、どの部位でも剥れが認められなかった。
【0094】
(試験例1-3)
下塗材1-1に替えて下塗材1-3を用いた以外は、試験例1-1と同様の方法で試験体を作製した。下塗材1-3の塗装後、下塗材1-3の被膜は、既存壁面とは色調が異なるもの(色差38)であり、既存壁面の凹凸模様全体に、満遍なく下塗材被膜が形成されたことを容易に確認することができた。また、試験例1-3では、促進耐候性試験において外観変化がなく、概ね良好であったが一部剥れが認められた。
【0095】
(試験例1-4)
下塗材1-1に替えて下塗材1-4を用いた以外は、試験例1-1と同様の方法で試験体作製を試みたところ、既存被膜と、下塗材1-4塗装後に形成された被膜とは、色調や光沢度の違いが認められず、既存壁面の凹凸模様全体に、満遍なく下塗材被膜が形成されたことの確認は容易ではなかった。また、試験例1-4では、促進耐候性試験において剥れが認められた。
【0096】
試験例1-1~1-3は、実施例に相当するものであり、試験例1-4(比較例に相当)に比べ、総じて良好な結果であった。
【0097】
【0098】
[試験例2]
試験例2では、下塗材として、以下の主剤Q1~Q7と硬化剤R1~5を組合せて、下塗材2-1~2-12を用意し、これら下塗材を用いて試験を行った。
【0099】
(主剤Q1)
エポキシ樹脂a{ダイマー酸変性エポキシ樹脂溶液、固形分:60重量%、エポキシ当量(固形分当たり):780g/eq、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)及びソルベントナフサ(アニリン点13℃)}75重量部、着色剤(酸化チタン、比重:4.2)18重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q1を製造した。
【0100】
(主剤Q2)
エポキシ樹脂a(同上)62重量部、着色剤(同上)30重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q2を製造した。
【0101】
(主剤Q3)
エポキシ樹脂a(同上)55重量部、着色剤(同上)35重量部、ソルベントナフサ(同上)6重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q3を製造した。
【0102】
(主剤Q4)
エポキシ樹脂a(同上)38重量部、着色剤(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(比重2.7)30重量部、ソルベントナフサ(同上)12重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)5重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q4を製造した。
【0103】
(主剤Q5)
エポキシ樹脂a(同上)65重量部、ソルベントナフサ(同上)29重量部、添加剤(増粘剤、及び消泡剤)6重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q5を製造した。
【0104】
(主剤Q6)
エポキシ樹脂a(同上)40重量部、ソルベントナフサ(同上)50重量部、添加剤(増粘剤、及び消泡剤)10重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q6を製造した。
【0105】
(主剤Q7)
エポキシ樹脂b{水性エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水分散体)、固形分:45重量%、エポキシ当量(固形分当たり)510g/eq、媒体:水}60重量部、着色剤(同上)25重量部、エーテル系溶剤3重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)2重量部を常法にて均一に混合し、主剤Q7を製造した。
【0106】
(硬化剤R1)
ポリアミン化合物a{脂肪族ポリアミドアミン、固形分:100重量%、活性水素当量(固形分当たり):80g/eq}15重量部、シラン化合物{N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン}4重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)65重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤R1を製造した。
【0107】
(硬化剤R2)
ポリアミン化合物a(同上)15重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)69重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤R2を製造した。
【0108】
(硬化剤R3)
ポリアミン化合物b{脂肪族ポリアミドアミン、固形分:100重量%、活性水素当量(固形分当たり):180g/eq}25重量部、シラン化合物(同上)4重量部、アルコール系溶剤11重量部、ソルベントナフサ(同上)60重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤R3を製造した。
【0109】
(硬化剤R4)
ポリアミン化合物c{水可溶型変性脂肪族ポリアミン樹脂、固形分:80重量%、活性水素当量(固形分当たり):140g/eq、媒体:水}35重量部、シラン化合物(同上)65重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤R4を製造した。
【0110】
(硬化剤R5)
ポリアミン化合物c(同上)75重量部、シラン化合物(同上)25重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤R5を製造した。
【0111】
(下塗材2-1)
上記主剤Q1(100重量部)と上記硬化剤R1(25重量部)とを均一に混合して、下塗材2-1を作製した。この下塗材の各特性値は表1に示す通りであり、
エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比[(ポリアミン化合物の配合量/ポリアミン化合物の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)](表1では「配合比」と表記)が0.81、
顔料体積濃度が8%、
下塗材の不揮発分(表2では「不揮発分」と表記)が54重量%、
樹脂固形分中反応性シリル基を有する化合物の比率(SiO2換算、表2では「SiO2換算量」と表記)が0.5重量%、
着色剤量が樹脂成分の固形分100重量部に対し36重量部、
増粘剤量(固形分)が樹脂成分の固形分100重量部に対し1.6重量部である。
【0112】
(下塗材2-2)
上記主剤Q2(100重量部)と上記硬化剤R1(20重量部)とを均一に混合して、下塗材2-2を作製した。この下塗材2-2の各特性値は、表2に示す通りである。
【0113】
(下塗材2-3)
上記主剤Q3(100重量部)と上記硬化剤R1(18重量部)とを均一に混合して、下塗材2-3を作製した。この下塗材2-3の各特性値は、表2に示す通りである。
【0114】
(下塗材2-4)
上記主剤Q2(100重量部)と上記硬化剤R1(22重量部)とを均一に混合して、下塗材2-4を作製した。この下塗材2-4の各特性値は、表2に示す通りである。
【0115】
(下塗材2-5)
上記主剤Q2(100重量部)と上記硬化剤R1(30重量部)とを均一に混合して、下塗材2-5を作製した。この下塗材2-5の各特性値は、表2に示す通りである。
【0116】
(下塗材2-6)
上記主剤Q2(100重量部)と上記硬化剤R2(20重量部)とを均一に混合して、下塗材2-6を作製した。この下塗材2-6の各特性値は、表2に示す通りである。
【0117】
(下塗材2-7)
上記主剤Q2(100重量部)と上記硬化剤R3(28重量部)とを均一に混合して、下塗材2-7を作製した。この下塗材2-7の各特性値は、表2に示す通りである。
【0118】
(下塗材2-8)
上記主剤Q4(100重量部)と上記硬化剤R3(16重量部)とを均一に混合して、下塗材2-8を作製した。この下塗材2-8の各特性値は、表2に示す通りである。
【0119】
(下塗材2-9)
上記主剤Q5(100重量部)と上記硬化剤R3(28重量部)とを均一に混合して、下塗材2-9を作製した。この下塗材2-9の各特性値は、表2に示す通りである。
【0120】
(下塗材2-10)
上記主剤Q6(100重量部)と上記硬化剤R3(17重量部)とを均一に混合して、下塗材2-10を作製した。この下塗材2-10の各特性値は、表2に示す通りである。
【0121】
(下塗材2-11)
上記主剤Q7(100重量部)と上記硬化剤R4(20重量部)とを均一に混合して、下塗材2-11を作製した。この下塗材2-11の各特性値は、表2に示す通りである。
【0122】
(下塗材2-12)
上記主剤Q7(100重量部)と上記硬化剤R5(10重量部)とを均一に混合して、下塗材2-12を作製した。この下塗材2-12の各特性値は、表2に示す通りである。
【0123】
(試験例2-1~2-12)
下塗材1-1に替えて、下塗材2-1~2-12をそれぞれを用いた以外は、試験例1-1と同様の方法で試験体を作製し、試験を行った。試験結果を表3に示す。このうち、試験例2-1~2-8、2-11、及び2-12(実施例に相当)については、下塗材被膜の色調が既存壁面の色調とは異なるものであり、既存壁面の凹凸模様全体に、満遍なく下塗材被膜が形成されたことを容易に確認することができ、試験例2-9及び2-10(比較例に相当)に比べ、総じて良好な結果であった。
【0124】
【0125】