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特開2024-50905マイクロデバイスの位置特定を可能にする該マイクロデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050905
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】マイクロデバイスの位置特定を可能にする該マイクロデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/07 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B5/07 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024020099
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2023533254の分割
【原出願日】2021-11-23
(31)【優先権主張番号】20211518.4
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラマー ユルゲン エルウィン
(57)【要約】
【課題】改良されたマイクロデバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、人体に挿入される医療用マイクロデバイス100に関連し、マイクロデバイスは、空間における医療用マイクロデバイスの位置および/または医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、医療用マイクロデバイスは、ケーシング111と、ケーシング内の磁気機械式回転子110とを備え、磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体113と、磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受112とを含み、磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、回転軸受に対する磁性体の機械的回転に変換する。したがって、マイクロデバイスは信号伝送の改善およびさらなる小型化を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に挿入される医療用マイクロデバイスであって、前記マイクロデバイスは、空間における前記医療用マイクロデバイスの位置および/または前記医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、前記医療用マイクロデバイスは、ケーシングと、前記ケーシング内の磁気機械式回転子とを備え、前記磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体と、前記磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受とを含み、前記磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、前記回転軸受に対する前記磁性体の機械的回転に変換する、医療用マイクロデバイス。
【請求項2】
前記回転軸受は、鞍点を提供するように保持磁場を生成する保持磁場生成器を含み、前記磁性体は実質的に前記鞍点に位置し、前記鞍点は、前記回転軸受に関して予め定められた空間的平面について、前記磁性体が前記空間的平面内で前記鞍点から遠ざかるとき、前記磁性体が、前記磁性体を前記鞍点の方向に戻す前記保持磁場によって提供される磁気復元力を受けるように定められる、請求項1に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項3】
前記回転軸受は、前記予め定められた空間的平面に垂直な空間的方向に保持面を有し、前記垂直な空間的方向における前記磁性体の移動が制限される、請求項2に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項4】
前記保持磁場生成器は、前記磁性体の両側に配置された2つの保持永久磁性体を含み、前記鞍点は前記保持永久磁性体の間に設けられる、請求項2または3に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項5】
前記保持磁場生成器はさらに2つの軟磁性体を備え、前記2つの軟磁性体は、前記保持永久磁性体が配置されている前記磁性体の前記両側に配置され、前記2つの保持永久磁性体は、前記軟磁性体よりも前記磁性体から遠くに配置される、請求項4に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項6】
複数の保持永久磁性体が前記磁性体の各側に配置される、請求項4または5に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項7】
前記医療用マイクロデバイスが、前記磁性体と同様の回転軸受を有する追加の磁性体を含み、前記追加の磁性体は前記磁性体と同様であり、前記磁性体は互いに距離を置いて配置されており、前記2つの磁性体の回転軸は平行である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項8】
前記医療用マイクロデバイスは信号変調器をさらに備え、前記信号変調器は、励起時に前記磁気機械式回転子によって生成される応答磁場を変調し、前記変調された応答磁場は前記医療用マイクロデバイスデバイスの位置特定を可能にする、請求項1から7のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項9】
前記信号変調器によって、前記医療用マイクロデバイスの前記環境における物理パラメータの変化が、前記応答磁場の前記変調の変化を導入し、前記導入される前記変調の前記変化は、前記変調された応答磁場の測定から前記物理パラメータの前記変化を求めることを可能にする、請求項8に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項10】
前記信号変調器によって、前記物理パラメータの変化が前記信号変調器の内部構造を変化させ、前記信号変調器の前記内部構造の前記変化が前記応答磁場の前記変調の変化を導入する、請求項9に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項11】
前記信号変調器は機械式共振器を含み、前記機械式共振器は、前記磁性体の前記回転運動によって生成される前記応答磁場によって励起され、前記機械式共振器は、前記物理パラメータの変化が、前記機械式共振器の前記共振周波数の変化をもたらすように構成されており、前記生成された応答磁場による前記機械式共振器の前記励起は、前記物理パラメータに依存した前記応答磁場の前記変調の変化を導入する、請求項10に記載の医療用マイクロデバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイスを無線で読み出すための読み取りシステムであって、前記読み取りシステムは、
前記医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成する場生成器であって、前記磁性体の前記回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、場生成器と、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するトランスデューサと、
前記電気応答信号を処理するプロセッサとを備える、読み取りシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記電気応答信号に基づいて、前記医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求める、請求項12に記載の読み取りシステム。
【請求項14】
前記場生成器は、2kHz~200kHzの励起場を生成する少なくとも1つの空芯コイルを含み、前記トランスデューサは、最大で前記励起場の周波数の2倍を超える周波数の磁気信号を感知して変換する、請求項12または13に記載の読み取りシステム。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイスの位置を特定する、かつ/または前記医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを求める方法であって、前記方法は、
前記医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成するステップであって、前記磁性体の前記回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、生成するステップと、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するステップと、
前記電気応答信号を処理し、前記電気応答信号に基づいて、前記医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求めるステップとを含む、方法。
【請求項16】
コンピュータプログラムコードを備えたコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項12に記載の読み取りシステムを制御するコンピュータ上で実行されると、前記プログラムコードは、前記読み取りシステムに、請求項15に記載の方法のステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用マイクロデバイスであって、空間内での該医療用マイクロデバイスの位置特定を可能にする、医療用マイクロデバイスと、マイクロデバイスから信号を読み取るための読み取りシステムとに関する。さらに、本発明は、医療用マイクロデバイスの位置を特定し、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを決定するための方法と、医療用マイクロデバイスの位置を特定するためのおよび/または物理パラメータを求めるためのコンピュータプログラム製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の内部での医療用途など、サイズに厳しい制約が課される用途に好適に利用可能な非常に小型の機械装置が、例えばマイクロボットの形態で開発されている。このようなマイクロデバイスは、位置特定またはセンサデバイスとして特に有用である。約1ミリメートル未満のサイズを有するマイクロデバイスが既に存在しているが、位置特定用途やセンサ用途では、これらのマイクロデバイスは信号強度が低くなるため、さらなる小型化ができないことがしばしばある。したがって、改善された信号伝送を提供し、さらなる小型化を可能にするマイクロデバイスを提供することが望ましい。
【0003】
WO2019/243098A1は、磁性体に取り付けられたサスペンションワイヤを利用する磁気機械式発振器を備えるマイクロデバイスを開示している。サスペンションワイヤの利用は、サスペンションワイヤを磁性体に取り付けるのに必要となる複雑な製造工程のために非常に高コストで生産歩留まりが低いだけでなく、マイクロデバイスのさらなる小型化を妨げる。特に、このようなマイクロデバイスのサイズは、利用可能なサスペンションワイヤの直径に依存し、したがって、マイクロデバイスの小型化は、より小さい直径のサスペンションワイヤの開発に大きく依存する。したがって、さらなる小型化、高い生産歩留まり、および安価な生産を可能にする、はるかに単純な設計を備えたマイクロデバイスを提供することが望ましいであろう。また、文献WO2019/243098A1に記載されているマイクロデバイスによって提供される信号は、磁気機械式発振器によって実現可能な共振周波数に限定される。この周波数は磁気機械式発振器の磁性体のサイズおよび磁気モーメントに依存し、実際には10kHz未満に限定される。しかし、より高い信号周波数、例えば50kHzの信号を提供できるマイクロデバイスを提供することが望ましい。より高い信号周波数は、より高い信号対雑音比およびより高い測定周波数を意味し、これは例えば、心臓インプラント内の圧力センサとしての用途を可能にする。したがって、WO2019/243098A1のマイクロデバイスと比較して、改良された信号対雑音比を有する信号を提供すると同時に、さらなる小型化を可能にしつつ、製造が容易である改良されたマイクロデバイスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、特に信号伝送の改善およびさらなる小型化を可能にする、位置特定および/またはセンサ用の改良されたマイクロデバイスを提供することである。さらに、より容易で低コストの製造を可能にする改良されたマイクロデバイスを提供することを目的とする。本発明は独立請求項によって定義される。従属請求項は、好適な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面によれば、人体に挿入される医療用マイクロデバイスが提示され、マイクロデバイスは、空間における医療用マイクロデバイスの位置および/または医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、医療用マイクロデバイスは、ケーシングと、ケーシング内の磁気機械式回転子とを備え、磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体と、磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受とを含み、磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、回転軸受に対する磁性体の機械的回転に変換する。
【0006】
磁気機械式回転子は、応答磁場が生成されるように回転軸受に対して回転可能な磁性体を備えているため、回転軸受は磁性体の安定化を可能にし、したがって、磁気機械式回転子の励起後の高速かつ安定した回転を可能にする。このような安定した回転は、マイクロデバイスの位置を特定したり、または信号内に符号化された情報を伝達したりするために使用可能な、より高い周波数および信号強度の磁気信号を生成する。したがって、このマイクロデバイスは信号伝送の改善およびさらなる小型化を可能にする。
【0007】
一般に、マイクロデバイスとは、少なくとも1つの空間的方向において1ミリメートル未満のデバイスを指す。好ましくは、医療用マイクロデバイスは、少なくとも2つの直交する空間的方向において1ミリメートル未満である。さらに好ましくは、医療用マイクロデバイスは、全ての空間的方向、すなわち各空間的方向において1ミリメートル未満である。好ましくは、医療用マイクロデバイスは人間の循環系に導入可能なサイズを有する。しかし、医療用マイクロデバイスのサイズがさらに小さくてもよい。医療用マイクロデバイスによって測定される物理パラメータとは、好ましくは医療用マイクロデバイスの環境内の圧力を指す。しかし、物理パラメータは温度などの任意の他の物理パラメータを指す場合もある。
【0008】
ケーシングは、磁気機械式回転子を取り囲む任意のケーシングとすることができ、マイクロデバイスの具体的な用途に合わせることができる。好ましくは、ケーシングは、好ましくは生体適合性コーティングを指すコーティングを含む。さらに、医療用マイクロデバイスが、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを感知するためのセンサとして利用される場合、ケーシングは、そのような感知動作を可能にするように構成され得る。例えば、医療用マイクロデバイスが圧力センサとして利用される場合、ケーシングは、外圧の変化をケーシングの内側に伝達ことを可能にする可撓性部分を備えることが好ましい。医療用マイクロデバイスの環境における温度変化が測定される場合、ケーシングは、そのような温度変化をケーシングの内部に容易に伝達するように構成され得る。
【0009】
磁性体は永久磁気モーメントを提供するため、一度導入された磁気モーメントを維持できる硬磁性材料で作製されることが好ましい。好ましくは、磁性体は、N52より大きい、すなわち1.42Tより大きい高い残留磁気を有するネオジム磁石を指す。80℃を超える温度の環境での用途では、磁性体は、一般的なネオジム磁石識別システムに従うH、SH、EH、またはAH特性を有するネオジム磁石を指すことが好ましい。磁性体としてCoSm(コバルトサマリウム)磁石を使用することもできる。
【0010】
好ましくは、磁性体は、医療用マイクロデバイスの信頼性を向上させる上で有利な球形状を有する。しかし、別の好ましい実施形態では、磁性体は、より高い回転安定性を可能にするが、回転軸受との非対称相互作用に起因して信頼性が低くなる可能性がある、偏球形状を有し得る。あるいは、磁性体は長球形状を有し得る。一般に、磁性体は、磁性体の回転軸に垂直な平面内において、すなわち、磁性体の回転面内の方向においてまたは磁性体の回転面内の軸に沿って最も高い慣性モーメントを有する回転楕円体形状を有することが好ましい。回転軸受は、一般に、回転磁性体の位置および回転運動を安定させるために使用される。回転軸受とは、磁性体の回転を可能にし、回転する磁性体の回転運動に機械的な制約を与えない、任意の機械式または磁気式の回転軸受を指し得る。また、回転軸受とは、回転する磁性体をケーシングまたはケーシングの一部に取り付ける機械的な取り付けアセンブリを指すものではない。したがって、ひもやベローズのような取り付け手段は回転軸受とは見なされない。
【0011】
磁気機械式回転子は、外部励起磁場または電磁場を、回転軸受に対する磁性体の機械的回転に変換するように構成されている。特に、外部励起磁場または電磁場は、ケーシング内の磁性体の回転運動を励起するための一定の周波数またはチャープ周波数を有する振動場を指す。外部励起磁場または電磁場によって励起される回転運動とは、完全な回転運動、すなわち、同じ方向に360°回転する繰り返し回転、または磁性体がある方向に360°未満だけ回転した後、反対方向に再び360未満だけ回転する回転振動を指し得る。
【0012】
完全な回転を行う磁性体を備えた実施形態では、磁気機械式回転子は、1mT/μの励起磁場を印加したとき、磁性体が5kHzより高い回転周波数、より好ましくは50kHzの最大回転周波数で回転できるように構成されることが好ましい。ここで、最大回転周波数は印加される磁場の強度に依存する。人間の体内または人間の近くで使用される医療用途の場合、細胞の刺激を避けるため、励起磁場の強度は4mT/μに制限されることが好ましい。最大回転周波数は、磁性体に作用する減衰の影響に依存して、印加される磁場の強度の0.1~0.5乗で変化することが分かった。
【0013】
磁性体が回転振動を行うように構成されている場合、磁気機械式回転子は、500Hz×mmより高い、好ましくは8000Hz×mmより高い、さらにより好ましくは最大50000Hz×mmの振動周波数を許容するように構成されていることが好ましい。この場合、振動周波数は磁性体のサイズに依存し、例えば、半径1mmの磁性体の場合、振動周波数は例えば少なくとも500Hzであるが、0.1mmの磁性体の場合、振動周波数は例えば少なくとも5kHzである。一般に、磁気機械式回転子の磁性体の振動周波数の実践的な限界は、50000Hz×mmの振動周波数を指すことが分かった。
【0014】
磁気機械式回転子、具体的には磁性体および回転軸受は、磁性体の励起後、磁性体が回転軸受に対して回転し、周期的に変化する応答磁場が磁性体によって生成されるように構成される。生成された応答磁場により、医療用マイクロデバイスの位置特定が可能になることが好ましい。特に、磁性体の生成応答磁場は、例えば、医療用マイクロデバイスの位置を特定するために、外部磁気コイル内に生成された磁場によって誘導される電流および/または電圧に基づいて測定され得る。特に、異なる位置で磁性体の応答磁場を測定するために複数の磁気コイルを使用することができる。異なる測定値に基づいて、特に異なる信号強度に基づいて、医療用マイクロデバイスの位置を非常に正確に特定することができる。
【0015】
一実施形態では、回転軸受は、鞍点を提供するように保持磁場を生成する保持磁場生成器を含み、磁性体は実質的に鞍点に位置し、鞍点は、回転軸受に関して予め定められた空間的平面について、磁性体が空間的平面内で鞍点から遠ざかるとき、磁性体が、磁性体を鞍点の方向に戻す保持磁場によって提供される磁気復元力を受けるように定められる。したがって、鞍点は磁性体に少なくとも二次元での安定した位置を提供する。磁性体が配置され得る鞍点を提供するように保持磁場を設けることにより、磁性体と回転軸受との間の物理的接触を最小限に抑えながら、磁性体の安定した回転が可能になる。これに関連して、磁性体を実質的に鞍点に配置するとは、磁性体の磁気中心が実質的に鞍点に配置されることを意味する。外部の影響により、磁性体が常に直接鞍点に配置されているわけではなく、鞍点の近くに位置する。磁性体を鞍点に戻そうとする復元力は、磁性体が鞍点から離れるほど大きくなる。好ましくは、実質的に鞍点に位置するとは、磁性体の磁気中心から鞍点までの距離が磁性体の寸法よりも小さくなるように、磁性体が鞍点に配置されていることを意味する。一部の実施形態では、磁場生成器は2つ以上の鞍点を生成するように構成されてもよく、その場合、磁性体はこれらの鞍点のうちの1つに配置されてもよく、または、設けられた他の鞍点に追加の磁性体が配置されてもよい。
【0016】
一般に、上記のような鞍点を有する保持磁場を提供する保持磁場生成器の配置は、1つ以上の磁性体の配置によって引き起こされる磁場および/または磁気エネルギーをシミュレートすることができる既知の数値シミュレーションアルゴリズムを利用することによって見つけることができる。例えば、このような数値シミュレーションでは、一般に次のアルゴリズムを利用することができる。まず、例えば、保持磁場生成器を形成する永久または軟磁性体の位置によって、保持磁場生成器の可能な配置が定められる。次に、1つ以上の磁性体が保持軟磁場生成器に対して配置され、既知の物理法則を使用してシステム全体の磁気エネルギーが計算される。次のステップでは、1つ以上の磁性体が任意の方向にわずかに変位され、新しい配置について全体の磁気エネルギーが再度計算される。この最後のステップは、各磁性体の位置のエネルギー地形が求められるまで繰り返され得る。エネルギー地形は、保持磁場生成器の配置が少なくとも1つの適切な鞍点を含むかを判断することを可能にする。さらに、保持磁場生成器によって生成される磁場の数値シミュレーションは、各磁性体の所与の配置が、上記で定義したような鞍点を有する磁場を形成すると見なせるかをテストするために利用することもできる。しかし、数値シミュレーションの代わりに、例えば、保持磁場生成器を形成する他の磁性体に対して配置された磁性体の起こり得る変位を測定して、その磁性体が、保持磁場生成器によって形成された鞍点に位置するかを判定する実験を使用することもできる。
【0017】
ある好ましい実施形態では、回転軸受は、予め定められた空間的平面に垂直な空間的方向に保持面を有し、垂直な空間的方向における磁性体の移動が制限される。したがって、保持面は、磁性体が実質的に鞍点に保持されるように配置される。好ましくは、保持磁場生成器は保持面を提供するように構成される。これにより、追加の部品を設けることなく回転軸受を提供することができる。しかし、磁性体が実質的に鞍点に保持されるように保持磁場生成器に対して配置される追加の要素によって保持面が提供されてもよい。鞍点は二次元では安定した位置を提供するが、第3の次元では磁性体を安定させることができない可能性があるため、保持面が、この第3の次元に関して磁性体を鞍点に保持することを可能にする。好ましくは、保持面は、磁性体が保持面にできるだけ少なく接触するように、より好ましくは一点でのみ接触するように配置および構成される。ここでの「一点」とは、保持面と磁性体との間の現実的に到達可能な接触表面積を指す。現実的に到達可能な接触表面積とは、物理的に可能な最小の接触面積の100倍、好ましくは物理的に可能な最小の接触面積の10倍より小さい面積を指す。物理的に可能な最小の接触面積は、接触表面積に作用する物理法則によって決定され、また、保持面および磁性体に使用される材料、保持面の方向において磁性体に作用する力、および磁性体の形状に依存する。
【0018】
保持面は、少なくとも可能な接触表面領域において、好ましくは10GPaより高い圧縮強度を有する。さらに、保持面は、少なくとも可能な接触領域において、好ましくは少なくとも10GPa、より好ましくは少なくとも50GPaのヤング率を有する。これらの特性を備える材料は、例えば、ガラス、DLC、ダイヤモンドなどである。そのような材料は、例えば別の材料の上の層として、潜在的な表面接触領域にて保持表面に設けることができる。しかし、保持面全体を1つ以上のそのような材料で作製することもできる。
【0019】
ある好ましい実施形態では、保持磁場生成器は、磁性体によって保持面に加えられる垂直効力が、磁性体に作用する重力の1000倍、好ましくは100倍より小さくなるように構成される。垂直効力は、表面上の垂直な空間的方向に沿って作用する力として定義される。一般に、垂直効力は、鞍点にて安定していない次元、すなわち、保持面に対して好ましくは垂直な方向に沿って、接触点で発生する可能性がある。垂直抗力を減少させると、磁性体と保持面との間の摩擦も減少し、回転する磁性体の回転運動のQ値が向上する。Q値は、発振器または共振器の減衰の程度を表す無次元のパラメータである。Q値は、振動サイクル中に共振器に蓄積されるピークエネルギーと、サイクルのラジアンあたりの損失エネルギーとの比として定義され、Q値が低いほど振動または回転の減衰が高くなる。好ましい低い垂直効力は、例えば以下の実施形態で説明するように磁場生成器および保持面を配置することによって達成することができる。さらに、磁性体の配置の磁気エネルギー地形をシミュレートするための上記シミュレーションは、保持面に作用する垂直抗力をシミュレートするためにも使用することができる。したがって、鞍点を有する磁場を提供する磁性体の適切な配置が見つかれば、磁性体を保持するために配置された保持面に作用する垂直抗力をシミュレートすることができる。このようなシミュレーションに基づいて、保持磁場生成器のサイズや磁場強度などのパラメータを最適化することで垂直抗力を最適化できる。さらに、そのようなシミュレーションは、所与の配置が上記の垂直抗力の要件を満たすかをテストするために使用することもできる。
【0020】
好ましい実施形態では、保持磁場生成器は、磁性体の両側に配置された2つの保持永久磁性体を含み、鞍点は保持永久磁性体の間に設けられる。好ましい実施形態では、2つの保持永久磁性体はそれぞれ、回転楕円体、より好ましくは球体の形状を有する。永久磁性保持体を永久磁性球の形態で提供することにより、永久磁性保持体の製造及び配置がより容易になる。あるいは、保持永久磁性体の形状は円柱または直方体であってもよく、これらの形状には、2つの保持永久磁性体によって生成される保持磁場をより正確に較正できるという利点がある。この配置の安定性を高めるために、保持永久磁性体は回転磁性体よりも大きなサイズ、例えば球形の場合には回転磁性体よりも大きな直径を有することが好ましい。好ましくは、保持永久磁性体は、N52より大きい、すなわち1.42Tより大きい残留磁気を有するネオジム磁石を指す。80℃を超える温度の環境での用途では、磁性体は、一般的なネオジム磁石識別システムに従うH、SH、EH、またはAH特性を有するネオジム磁石を指すことが好ましい。H、SH、EH、またはAHタイプのネオジム磁石はまた、磁気共鳴用途で存在するような高磁場に磁気機械式回転子がさらされることが予想される用途において、永久磁性体を保持するために有利に使用される。保持永久磁性体としてCoSm(コバルトサマリウム)磁石を使用することもできる。
【0021】
好ましい実施形態では、2つの保持永久磁性体は、各保持永久磁性体が、磁性体の動きを制限するための所定の空間的平面に垂直な空間方向に保持面を形成するように配置される。したがって、保持磁場生成器の保持永久磁性体は、同時にそれぞれ保持表面を提供し、これによりマイクロデバイスの構築がより容易になる。回転磁性体は、垂直空間的方向が回転磁性体の回転軸を指すように配置されることが好ましい。しかし、他の実施形態では、回転磁性体の回転軸は他の方向を指すこともでき、特に、磁性体の回転軸は時間とともに変化する可能性がある。好ましい実施形態では、2つの保持永久磁性体の磁気モーメントが、磁性体の回転を安定させるように構成されるように、2つの保持永久磁性体が配置される。一実施形態では、保持磁場生成器は、1つ以上の追加の保持永久磁性体、特に、2つの保持永久磁性体よりも小さい追加の保持永久磁性体を備え得る。これにより、2つの保持永久磁性体の配置における小さな誤差を補償することができ、また、磁性体の回転軸の向きを求めることができる。
【0022】
好ましくは、保持永久磁性体および任意選択で追加の保持磁性体は、磁性体の回転軸の向きの変化が所定の閾値未満になるように構成される。好ましくは、回転軸の向きの変化は、回転軸が回転磁性体の表面と交差する点のうちの1つとして定義される空間内の交点の変化、すなわち移動によって定義される。言い換えれば、磁性体の地理極の位置の変化によって定義される。好ましくは、保持永久磁性体および任意選択の追加の保持磁性体は、回転磁性体の地理極が、10°、2°未満、好ましくは0.2°未満移動するように構成される。さらに、磁性体の回転軸の安定性は、永久磁性体の接点に関して、すなわち、永久磁性体が保持面に接触する理想的な点と、回転磁性体および保持面の間の現実的な平均接触表面積を指す接触面積とに関して定義することもできる。これら2つの定義によれば、2つの保持永久磁性体および任意選択の追加の保持永久磁性体は、磁性体の回転中に接点が接触表面積の10倍未満、好ましくは接触表面積の5倍未満、より好ましくは接触表面積未満だけ空間移動するように配置されることが好ましい。しかし、他の実施形態では、2つの保持永久磁性体および任意選択の追加の磁性体は、接点の摩耗運動が防止される一方、回転運動が許容されるように配置される。
【0023】
一般に、磁性体の回転を安定させること、特に保持面上の接点の移動を最小限に抑えることにより、回転する磁性体に作用する摩擦力を最小限に抑えることができる。摩擦力の低減により、角運動量の損失も最小限に抑えられ、磁気機械式回転子のQ値が最大化され、より安定した磁気信号を提供できるようになる。
【0024】
さらにこれに関連して、2つの永久磁性体は、永久磁性体の磁気モーメントの向きが、磁性体の機械的回転の時間スケールと同等の時間スケールにわたってケーシングに対して固定されるように配置されることが好ましい。したがって、回転する磁性体は、磁性体の回転中に安定した保持磁場を受ける。磁場の全体的な向きは、例えば、磁気共鳴デバイスによって生成される磁場のような外部磁気の影響に適応するために、より長い時間スケールでは変化する可能性がある。
【0025】
一実施形態では、保持磁場生成器はさらに2つの軟磁性体を備え、2つの軟磁性体は、保持永久磁性体が配置されている磁性体の両側に配置され、2つの保持永久磁性体は、軟磁性体よりも磁性体から遠くに配置される。さらに好ましくは、保持永久磁性体および軟磁性体は全て、回転する磁性体の回転軸に実質的に沿うように配置される。追加の軟磁性体を設けることで、磁性体の完全な回転振動が可能になる。好ましくは、2つの軟磁性体は2つの軟磁性ディスクであり、「ディスク」という用語は円柱形状を指し得る。軟磁性ディスクによって提供される平面の少なくとも1つは、回転する磁性体のための保持面として配置される。さらに、2つの軟磁性体は、保持面として凹形状の表面を備えることができる。この実施形態では、軟磁性体は、少なくとも1つの凹形状の表面を有するディスク形状を指し得、よって、ボウル形状であり得る。
【0026】
一実施形態では、磁気機械式回転子は、回転軸受によって安定化され、回転軸受に対して回転するように追加の回転磁性体を備える。好ましくは、追加の回転磁性体は上記した磁性体と同様である。したがって、磁気機械式回転子は、回転軸受によって安定化され、回転軸受に対して回転する2つの回転磁性体を備えることが好ましい。2つの回転磁性体の回転軸が同じであることがさらに好ましい。特に、この場合、2つの回転磁性体の回転は回転振動を指す。また、この実施形態では、回転軸受は保持磁場生成器を有し得、各磁性体が、実質的に保持磁場生成器の鞍点に位置すると見なすことができる。特に、2つの回転磁性体が存在する場合、一方の回転磁性体から見て、他方の回転磁性体は、一方の回転磁性体が位置する鞍点の生成に寄与する保持磁場生成器の一部と見なすことができる。2つの回転磁性体は移動する可能性があることから、鞍点をより動的に解釈することができる。特に、この場合の鞍点は、2つの回転磁性体の6つの並進自由度によって定義することができる。この場合、保持磁場生成器は、少なくとも4つの自由度において2つの磁性体の並進自由度を制限する鞍点を提供するように構成され、保持面は、制限されていない自由度の方向のうちの少なくとも1つに位置し得る。
【0027】
2つの回転磁性体を備える医療用マイクロデバイスは、特に、医療用マイクロデバイスの位置を特定するためだけでなく、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを感知するためのセンサとしても利用することができる。このような実施形態では、回転軸受および2つの回転磁性体は、環境物理パラメータが、2つの回転磁性体間の磁気相互作用に影響を与える(例えば、2つの回転磁性体間の距離に影響を与えることによって)ことができるように配置される。一般に、2つの回転磁性体の相互に対する磁気的影響の変化は、2つの回転磁性体によって生成される応答磁場にも影響を及ぼす(例えば、周波数を変化させるか、または磁気機械式回転子によって生成される応答磁場に高調波を追加することによって)。応答磁場のこれらの変化は、例えば医療用マイクロデバイスの位置を特定するために設けられた磁気コイルによって測定することができ、分析して医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化を求めることができる。さらに、例えば較正測定中に、医療用マイクロセンサの環境における物理パラメータのベースラインを測定することもでき、その後、このベースライン測定に基づいて、例えば現在の測定結果とベースラインとの比較に基づいて、物理パラメータを求めることができる。したがって、磁気機械式回転子によって生成される応答磁場に基づいて、物理パラメータの変化だけでなく、物理パラメータの絶対値も求めることができる。
【0028】
好ましい実施形態では、2つの回転する磁性体のための回転軸受は上記したように構築される。好ましくは、追加の回転磁性体は、2つの保持永久磁性体の間に、2つの回転磁性体の回転軸が同一となるように配置される。より好ましくは、各磁性体の両側の回転軸に軟磁性ディスクが配置され、2つの保持永久磁性体は、回転軸に沿って磁性体から軟磁性ディスクよりも遠くに配置される。上記したように、軟磁性ディスクとは磁気ディスクを指す可能性がある。この実施形態における2つの保持磁性体は回転磁性体よりも小さいことが好ましく、例えば球体の場合には、回転磁性体の直径よりも小さい直径を有することが好ましい。これには、システムが回転磁性体間の距離変化に対してより敏感になり、したがって医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化の感知がより敏感になるという利点がある。さらに、2つの回転磁性体が互いに直接接触できないように両者を分離する分離部を設けることもできる。一実施形態では、分離部は、上記2つの軟磁性ディスクの一方または両方によって形成され得る。しかし、分離部は軟磁性ディスクから独立していてもよい。例えば、分離部は、ケーシングによって、またはケーシングの一部として提供することができる。好ましくは、分離部は、回転磁性体の一方または両方の少なくとも1つの保持面として利用される。
【0029】
一実施形態では、複数の保持永久磁性体が磁性体の各側に配置される。磁性体の側方に配置された追加の保持永久磁性体は、好ましくは同じ形状、例えば球形状を有する。しかし、他の実施形態では、磁性体の片側に保持される永久磁性体は互いに異なっていてもよく、例えば、異なる形状を有し得る。磁性体の一方の側に位置する保持永久磁性体は、回転磁性体の主要回転軸に対して垂直であることが好ましい共通の軸に沿って配置され得る。しかし、他の実施形態では、保持永久磁性体は互いに関して他の配置を有してもよい。複数の保持永久磁性体の所望の配置を安定させるために、保持永久磁性体の配置を囲むハウジング内に永久磁性体を設けることができる。しかし、ハウジング以外の他の要素を使用して配置を安定させることも可能であり、例えば、保持永久磁性体間の片側に可撓性または剛性の接続部が使用されてもよい。好ましい実施形態では、磁性体側の複数の保持永久磁性体は、相互に移動できるように配置されている。好ましくは、永久磁性体の移動は、保持永久磁性体が互いに対する磁気モーメントの方向を再配置することを可能にする。したがって、永久磁性体の互いに対する移動は、好ましくは、保持永久磁性体の位置が互いに対して固定された状態での保持永久磁性体の自由回転を指す。この配置は、軟磁性材料内の磁性領域の再配置と同様に、外部磁気の影響に応じて磁気モーメントを再配置する保持永久磁性体の能力により、保持永久磁性体の配置の擬似軟磁性効果をもたらす。このような実施形態は、例えば、保持永久磁性体の互いに対する動きを所望の動き、例えば回転運動に制限するハウジング内に保持永久磁性体を設けることによって実現できる。保持永久磁性体の互いに対する移動、特に、保持永久磁性体の回転を可能にすることにより、医療用マイクロデバイスは、デバイスを破壊することなく、保持永久磁性体によって生成される磁場を外部環境に適応させることができる。例えば、磁気共鳴環境で見られるような強い磁場にさらされた場合、保持永久磁性体は、医療用マイクロデバイスを傷つけることなくこの環境に適応することができる。外部の影響が無くなると、保持永久磁性体は再び自らを再配置し、保持磁場を形成する。好ましくは、保持永久磁性体の動きを減衰するために、保持永久磁性体の間に高粘性流体が提供される。特に、高粘性流体は、保持永久磁性体が配置されるハウジングを満たす可能性がある。保持永久磁性体の動きを減衰するために保持永久磁性体の磁性体側に高粘性流体を設けることにより、所定強度の外部磁気の影響のみが保持永久磁性体の再配置を生じさせるように、保持永久磁性体の動きを安定化させることができる。一方、医療用マイクロデバイスの磁気環境の小さな変動は、保持永久磁性体によって生成される保持磁場に影響を及ぼさない。高粘性流体は、一般に8000mPasを超える粘度を有する。好ましくは、高粘性流体はシリコーンオイルを指すが、糖溶液も利用できる。一般に、高粘性流体は磁気機械式回転子の用途に応じて選択できる。例えば、磁気機械式回転子が、典型的な磁束密度1Tを有する磁気共鳴イメージングシステムの環境でも使用される場合、10kPas~1000kPasの粘度を有する流体を設けることで、保持永久磁性体が損傷することなく外部磁場の中で自身を方向付けることができる。
【0030】
一実施形態では、保持磁場生成器は保持永久磁性体と保持軟磁性体とを備える。好ましくは、保持永久磁性体および保持軟磁性体は回転磁性体の反対側に配置される。さらに、保持永久磁性体は回転楕円体の形状を有し、軟磁性体はディスク形状を有することが好ましい。この場合でも、ディスク形状は円柱形状またはボウル形状を包含し得る。好ましくは、保持軟磁性体のディスク形状によって提供される平らな表面のうちの1つは、回転磁性体を保持するための保持面を形成する。また、この配置は回転永久磁性体の回転軸を良好に安定させることを可能にし、さらに、構築が容易である。
【0031】
一実施形態では、保持磁場生成器は、磁性体の両側に配置された2つの軟磁性体、好ましくは2つの軟磁性ディスクを含み、鞍点は軟磁性体の間に設けられる。2つの軟磁性体は任意の形状を有することができ、例えば軟磁性シートによって形成することができる。しかし、好ましくは、2つの軟磁性体は2つの軟磁性ディスクを指す。また、この実施形態では、「ディスク」という用語は円柱形状およびボウル形状を包含し得る。好ましくは、軟磁性ディスクは、軟磁性ディスクが提供する平らな表面が回転磁性体の回転軸に垂直になり、軟磁性ディスクが回転磁性体の回転軸に配置されるように配置される。好ましい実施形態では、2つの軟磁性ディスクによって提供される平らな表面のうちの少なくとも1つが保持面を形成する。しかし、2つの軟磁性ディスクは凹面領域を有してもよく、この領域が保持面を提供してもよい。例えば、軟磁性ディスクは、一方の平らな表面にボウルのような形状または凹状のくぼみを備えることができる。好ましくは、軟磁性ディスクは任意の軟磁性材料から形成することができ、または任意の軟磁性材料を含むことができる。好ましくは、軟磁性ディスクは電気鋼、ニッケル系材料、およびアモルファスまたはナノ結晶材料のうちの任意の1つを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、回転軸受は、磁性体の周囲および2つの軟磁性ディスクの間に配置された補助磁気リングをさらに備え、補助磁気リングは、軟磁性体の平らな表面によって提供される平面に平行な平面内に配置される。この実施形態では、補助磁気リングに関して使用される「平面内に配置される」という用語は、磁気リングの少なくとも3つの点が対応する平面内に存在しなければならないことを定義する。具体的には、補助磁気リングは軟磁性材料を含み、2つの軟磁性ディスク間の中央に配置される。したがって、リングは回転磁性体の赤道領域の周囲に配置されることが好ましい。補助磁性リングにより、回転磁性体が外部の変動する磁場にさらされたとき、回転磁性体の回転軸をさらに安定させることができる。
【0033】
好ましい実施形態では、回転軸受は、保持磁性ディスクが配置される磁性体の各側に少なくとも1つの追加の軟磁性シートを備え、追加の磁性シートの平らな表面は、磁性体の平らな表面と平行に配置される。追加の磁性シートは任意の形状、例えば円形または四角形を有することができる。好ましくは、磁性シートは、磁性シートの横方向寸法の1/10未満の厚さを有する。シートの横方向寸法は、磁性体の直径の40%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。好ましくは、追加の磁気シートは、保持磁性ディスクの平らな表面に平行に配置された追加の磁性ディスクの形態を有する。したがって、少なくとも2つの軟磁性ディスクが磁性体の両側に配置されることが好ましい。追加の軟磁性ディスクは、保持磁性ディスクよりも小さい直径を有することが好ましい。一般に、磁性体の両側に配置された1つ以上の磁性ディスクは、所望の鞍点を有する保持磁場が提供されるように、および回転磁性体の回転軸の所望の安定化が得られるような直径および互いへの距離を有する。
【0034】
また、保持永久磁性体と、1つまたは2つの保持軟磁性ディスクとを含む上記実施形態の場合、上記したように、間に追加の回転磁性体を設けることができる。また、これらの実施形態では、追加の磁性体、すなわち設けられた2つの回転磁性体により、例えば、環境内の物理パラメータの変化に基づいて2つの回転磁性体の間の距離を変更することによって、医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータを感知するセンサとして医療用マイクロデバイスを利用することが可能になる。あるいは、2つの回転磁性体のそれぞれに独自の回転軸受、例えば独自の保持軟磁性ディスクを設けることもできる。
【0035】
好ましい実施形態では、医療用マイクロデバイスは、それぞれが独自の回転軸受を有する2つの回転磁性体を備え、2つの回転磁性体のそれぞれに関連付けられた回転軸受は互いに同様である。したがって、両方の回転軸受が、例えば、保持磁場生成器として2つの永久磁性球を、または保持磁界生成器として2つの保持軟磁性ディスクを有することが好ましい。この実施形態は、ケーシング内に2つの磁気機械式回転子を備える医療用マイクロデバイスを指していると見なすことができる。好ましくは、これらの磁気機械式回転子はそれぞれ、互いに物理的に直接接触できないように、独自のサブケーシング内に設けられる。さらに、各磁気機械式回転子にサブケーシングを設けることは、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの影響を、例えば、一方のサブケーシングの他方のサブケーシングに対する位置を変えることによって、少なくとも1つのサブケーシングに与えることができるという利点を提供する。特に好ましい実施形態では、サブケーシングのうちの1つをベローズまたは弾性フォイルに接続することができ、これらは、医療用マイクロデバイスの環境における圧力変化に基づいてサブケーシング間の距離を変化させることを可能にする。しかし、他の実施形態では、サブケーシングは省かれてもよく、2つの磁気機械式回転子は他の方法で医療用マイクロデバイスのケーシングに少なくとも部分的に接続され得、例えば、回転軸受を利用してケーシング内の磁気機械式回転子を配置および接続することによって接続され得る。
【0036】
一実施形態では、回転軸受は、平らな表面と、この平らな表面の下に平行に配置された磁性フォイルとを備え、磁性フォイルの磁化方向は磁性体の回転軸に垂直である。この実施形態においても、表面の下に配置された磁性フォイルによって提供される磁場により、回転磁性体の位置および回転軸を安定させることができる。
【0037】
一実施形態では、回転軸受は、回転軸受の表面と磁性体の表面との間の摩擦を低減するように構成された潤滑流体を含む。回転軸受の表面と磁性体の表面との間、特に回転軸受と磁性体との間の接触領域の表面間の摩擦を低減するために潤滑流体を提供することにより、磁性体が励起磁場によって励起された後、回転磁性体のより長く安定した回転が可能となる。結果として、磁気機械式回転子は、医療用マイクロデバイスの位置特定のために測定され得る改善された磁気信号を提供する。一般に、回転軸受の表面と磁性体の表面との間の摩擦の低減は、潤滑流体を含まない回転軸受に関する低減に関連する。好ましくは、潤滑流体は磁性流体である。磁性流体の利用には、磁性体が磁性流体によって浮遊し、したがって保持面と直接接触せず、磁性体が受ける摩擦がさらに減少するという利点がある。しかし、他の潤滑流体も使用することができる。例えば、水、エーテル、またはアルコールを潤滑流体として使用することができる。しかし、この場合、例えばこれらの流体と接触する表面に防食層を設けることによって、これらの流体の腐食性を考慮することが好ましい。あるいは、潤滑流体は、磁性体または保持面に対して腐食性のない、ペンタンのような短鎖アルカンを主に含む流体を指すこともできる。
【0038】
一実施形態では、医療用マイクロデバイスは信号変調器をさらに備え、信号変調器は励起時に磁気機械回転子によって生成される応答磁場を変調するように構成され、変調された磁場はデバイスの位置特定を可能にする。一般に、信号変調器は、励磁フェーズの後、すなわち磁気機械式回転子の自由回転中に磁気機械式回転子によって生成される応答磁場に所定の影響を与える任意の構造、特に、任意の硬磁性または軟磁性構造を指すことができる。信号変調器は、応答磁場に対する信号変調器の影響が周期的な影響を指し、したがって応答磁場の変調を指すように構成されている。磁気機械式回転子によって提供される応答磁場を変調すると、磁気機械式回転子の回転速度を増加させることなく、より高い周波数の磁気信号を提供できるため、デバイスの位置特定がより正確かつ容易になるという利点がある。さらに、応答磁場の変調により、同じ励起場によって励起され、実質的に同じ応答磁場を提供する複数の医療用マイクロデバイスを使用することが可能になる。医療用マイクロデバイスごとに異なる変調を適用することにより、異なる医療用マイクロデバイスによって提供される異なる応答磁場を区別し、個別に位置を特定することができる。好ましくは、信号変調器は、磁気機械式回転子の回転磁性体が、励起場を完全な回転運動、すなわち同じ方向に360°磁性体が繰り返し回転する回転に変換する実施形態に提供される。例えば、1つの回転磁性体と、そのような完全な回転を可能にする保持磁場生成器、例えば、1つ以上の軟磁性ディスクを含む保持磁場生成器とを備える上記実施形態に信号変調器を設けることは有利である。磁気機械式回転子が位置特定の目的のみに適用される場合、信号変調器は、回転磁性体の応答磁場の変調が提供されるように、固定位置に配置された軟磁性バンドを指すことが好ましい。あるいは、回転磁性体の応答磁場の変調が提供されるように、永久磁石が固定位置に配置されてもよい。軟磁性バンドまたは永久磁性体の位置および配置に応じて、変調特性を磁気機械式回転子ごとに個別に調整できるため、異なる磁気機械式回転子を異なる変調信号によって区別できる。
【0039】
好ましくは、信号変調器は軟磁性材料を有する少なくとも一部を含む。磁気機械式回転子によって生成される応答磁場によって引き起こされる磁化および消磁を可能にする軟磁性材料を信号変調器に少なくとも部分的に設けることにより、生成される応答磁場を非常に効果的に変調することができる。
【0040】
一実施形態では、信号変調器によって、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化が、応答磁場の変調の変化を導入し、導入される変調の変化は、変調された応答磁場の測定から物理パラメータの変化を求めることを可能にする。したがって、この実施形態では、医療用マイクロデバイスを、その環境における物理パラメータの変化を感知するためのセンサとして利用することができる。物理パラメータは、環境内の任意の物理パラメータ、例えば温度、圧力、湿度などを指すことができる。例えば、信号変調器の一部は、環境中の水の存在に基づいてその特性、例えば、その広がりを変化させるポリマーを含むことができる。このような変化により、磁気信号の変化した変調に基づいて医療用マイクロデバイスの環境内の湿度を求めることが可能になる。さらに、物理パラメータは化学パラメータを指すこともできる。例えば、信号変調器は、医療用マイクロデバイスの環境における特定の物質の存在または濃度に基づいて特性を変化させるように構成され得る。変化する特性は、応答磁場の変調の変化をもたらす。
【0041】
この実施形態では、ケーシングは具体的には、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化を信号変調器に伝送できるように構成され得る。例えば、ケーシングは、医療用マイクロデバイスの環境における温度または圧力などの物理パラメータの変化により特性を変化させる構造、例えば弾性膜を有し得る。信号変調器は、ケーシングのこの構造の変化に応答し得、例えば、医療用マイクロデバイスの環境内の圧力が変化すると磁気機械式回転子までの距離が変化するように、信号変調器が弾性膜に接続され得る。しかし、他の実施形態では、信号変調器は、例えば信号変調器の環境における温度変化に起因して、例えばその特性の1つ以上を変化させることによって、環境の変化に直接反応することができる。
【0042】
一実施形態では、物理パラメータの変化が信号変調器の内部構造を変化させ、信号変調器の内部構造の変化が応答磁場の変調の変化を導入する。例えば、好ましい実施形態では、物理パラメータは医療用マイクロデバイスの環境内の温度を指し、信号変調器は、信号変調器の内部構造の変化が、温度に依存した信号変調器の磁気飽和の変化を指すように構成される。この実施形態における信号変調器は、少なくとも軟磁性部分を備え得、軟磁性部分は物理パラメータに基づいて磁気飽和を変化させる。温度変化により信号変調器の磁気飽和が変化すると、生成される応答磁場に対する信号変調器の影響も温度に応じて変化する。したがって、変調信号は、例えば、生成された磁気信号の変調における変化を認識することによって、または生成された応答磁場の現在の変調と、所定の温度での較正測定中に測定された生成された応答磁場の変調との比較を利用することによって、医療用マイクロデバイスが経験する温度変化を推定することを可能にする。有利には、信号変調器は、予想される測定温度範囲を含む所定の温度範囲内のキュリー温度を有する軟磁性材料を含む少なくとも部分を含む。したがって、信号変調器内に設けられる軟磁性材料は、医療用マイクロデバイスが適用される環境で予想される温度範囲に基づいて選択することができる。好ましくは、医療用マイクロデバイスが人間の体内の温度を測定する場合、軟磁性材料は、そのキュリー温度が36℃~41℃+好ましくは20℃、より好ましくは50℃のそれぞれの許容誤差の温度範囲内、例えば、16℃~61℃の温度範囲内にあるように選択することができる。このような許容誤差は温度測定の品質に影響を及ぼさないことが認められた。したがって、医療用マイクロデバイスの所望の用途のために、医療用マイクロデバイスの異なるバージョンを提供することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、物理パラメータは医療用マイクロデバイスの環境内の温度を指し、信号変調器は、信号変調器の内部構造の変化が、温度に依存した信号変調器の残留磁気の変化を指すように構成される。この場合も信号変調器の影響は温度に依存する。目的の用途に基づいて、残留磁気と温度との間の異なる関数的関係が異なる材料を使用できる。
【0044】
一実施形態では、信号変調器は機械式共振器を含み、機械式共振器は、磁性体の回転運動によって生成される応答磁場によって励起され、機械式共振器は、物理パラメータの変化が、機械式共振器の共振周波数の変化をもたらすように構成されており、生成された応答磁場による機械式共振器の励起は、物理パラメータに依存した応答磁場の変調の変化を導入する。したがって、機械式共振器は、磁性体の回転運動によって生成される応答磁場が一般に機械式共振器の励起を可能にするように構成される。したがって、機械式共振器のそのような励起は、生成される応答磁場と、励起時に機械式共振器によって生成される磁場との重ね合わせに起因して、生成される応答磁場の変調をもたらす。機械式共振器は、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化が機械式共振器の共振周波数の変化をもたらすように構成される。共振周波数は、例えば、物理パラメータの変化前に生成された応答磁場が機械式共振器を実質的に励起できなかった場合、機械式共振器が生成された応答磁場の影響を受けやすくなるように変化する可能性がある。しかし、共振周波数は、生成された応答磁場によって機械式共振器が励起され得るように、または物理パラメータの変化後に機械式共振器が生成された応答磁場の影響を受けにくくなる、すなわち励起されにくくなるように変化してもよい。したがって、機械式共振器は、機械式共振器の共振周波数が、物理パラメータが医療用マイクロデバイスの特定の用途について予想される範囲内にあるときに回転磁性体によって生成される応答磁場の周波数に対応するように構成されることが好ましい。
【0045】
好ましい実施形態では、機械式共振器は、a)磁性体の影響に依存して内部構造を変化させる磁気コンポーネントと、b)内部構造の変化に対抗する復元力を提供するベローズとを備える。一般に、ベローズとは、自身の特性を変化させることによって、例えば、曲がることによって、縮小することによって、または拡張することによって、力に反応できる柔軟な構造を指す。ベローズの特性の変化は、ベローズの特性の変化に対抗するように作用する復元力が生じさせる。ベローズの特性の変化は、機械式共振器の内部構造の変化を意味するため、ベローズは内部構造の変化に対抗する復元力を提供する。外力、特に機械式共振器の磁気コンポーネントに作用する生成された応答磁場によって提供される磁力と、ベローズによって与えられる復元力との間の相互作用は、平衡状態を中心とした機械式共振器の振動を引き起こし、したがって、機械式共振器の励起をもたらす。機械式共振器の共振周波数は、例えば、磁気コンポーネントに変化を導入することによって、またはベローズによって与えられる復元力に変化を導入することによって、変化させることができる。例えば、外部物理パラメータは磁気コンポーネントの磁化に影響を及ぼし、磁性体の磁気コンポーネントへの影響に応じて内部構造の変化に差異をもたらす可能性がある。特に、磁化の変化は機械式共振器の共振周波数の変化をもたらす。別の例では、内部構造の変化によって引き起こされるベローズの特性の変化は物理パラメータに依存し得、したがって、内部構造の変化に対抗する、ベローズによって与えられる復元力も変化する。これはさらに、共振周波数の変化をもたらす。
【0046】
好ましい実施形態では、磁気コンポーネントは、所定のオフセットを有するように、かつ互いに距離を置いて配置された軟磁性要素と磁束コンセントレータとを備え、機械式共振器の共振周波数は、軟磁性要素と磁束コンセントレータとの間の距離に依存し、ベローズは、物理パラメータの変化に基づいて、軟磁性要素と磁束コンセントレータとの間の距離が変化するように構成されており、磁束コンセントレータは、信号変調器の位置において磁性体によって提供される応答磁場および磁場勾配を増幅するように構成された、軟磁性材料の剛性の構造を指す。例えば、圧力変化によりベローズが圧縮または膨張し、軟磁性コンポーネントと磁束コンセントレータとの間の平衡距離が変化するようにベローズを設けることができる。この平衡距離の変化は、異なる振動、すなわち異なる平衡点を中心とした振動を引き起こし、同時に異なる共振周波数を引き起こす。軟磁性コンポーネントと磁束コンセントレータとのオフセットとは、軟磁性コンポーネントと磁束コンセントレータとの間の距離と直交する方向において磁束コンセントレータと軟磁性コンポーネントとが対向する表面間の距離を指す。好ましくは、軟磁性コンポーネントに対する磁束コンセントレータの配置のオフセットは、磁束コンセントレータが軟磁性コンポーネントに面する表面の直径を指す。例えば、磁束コンセントレータが軟磁性コンポーネントに面する表面の直径が50μmである場合、オフセットも50μmである。このオフセットは、磁束の変化、この場合では磁気環境の変化をより効果的に機械式共振器の振動に伝達することを可能にする。
【0047】
一実施形態では、磁気コンポーネントは、音叉の形態の軟磁性材料の磁気要素を少なくとも2つ備える。音叉は、音叉の先端部が互いに向かい合うように配置されており、かつ、機械式共振器の共振周波数が先端部の間の距離に依存するように配置されている。ベローズは、物理パラメータの変化に基づいて2つの磁気音叉間の距離が変化させるように構成されている。音叉の形態とは、2つ以上の先端部と、2つ以上の先端部を接続するコンポーネントとを備えた形態を指す。したがって、音叉としての磁気要素への言及は、その機能ではなく幾何学的形状を指す。この磁気共振器の実施形態の機能原理は、軟磁性コンポーネントおよび磁束コンセントレータを含む磁気コンポーネントに関して上記した機能原理と同様である。特に、音叉の形態の2つの磁気コンポーネントのうちの1つを特定の磁束コンセントレータと見なし、他方を特定の軟磁性コンポーネントと見なすこともできる。好ましくは、少なくとも2つの音叉は、先端部が、先端部に対して垂直な方向に関して所定の距離だけ互いにオフセットされるように配置される。好ましくは、この実施形態においても、オフセットは先端部の直径を指す。
【0048】
別の実施形態では、前述のパラメータを測定するために摩擦軸受が使用されてもよい。この実施形態では、例示的な3つの磁性体を使用することができる。好ましくは、磁性体は互いに隣り合って配置され、一部の実施形態ではガラス板によって分離され得る。好ましくは、中央の磁性体は他の磁性体よりも小さい。例示的かつ非限定的な実施形態では、中央の磁性体(内側の磁性体)は0.5mmの直径を有し、他の磁性体(外側の磁性体)は0.63mmの直径を有することができる。内側の磁性体の直径は0.3mmから1mmまで変化し得、外側の磁性体の直径は0.4mmから1.5mmまで変化し得る。動作中、振動は、高い信号振幅の繰り返されるパルス列として開始され得る。
【0049】
一実施形態では、信号変調器は、物理パラメータの変化が、信号変調器の少なくとも一部と磁性体との間の距離の変化をもたらすように構成される。例えば、信号変調器は、医療用マイクロデバイスの環境内で多かれ少なかれ圧力を受けると圧縮または膨張するケーシングの一部と接するか、またはケーシングの一部を含み得る。さらに、医療用マイクロデバイスの環境内の温度も、例えば、信号変調器をケーシングまたはケーシング内の他の構造に取り付けるアセンブリの長さに影響を与え、信号変調器と磁性体との間の距離を変化させ得る。好ましい実施形態では、信号変調器は軟磁性フォイルを備え、距離の変化により軟磁性フォイルの磁化が変化する。特に、軟磁性フォイルは、フォイルの平らな表面が回転磁性体に面するように配置される。好ましくは、軟磁性フォイルと、は非対称な軟磁性フォイル、すなわち、ある方向において垂直方向よりも長い磁性フォイル、例えば、長方形または楕円形の軟磁性フォイルを指す。好ましくは、軟磁性フォイルは高いアスペクト比を有し、この文脈における高いとは、1:5、好ましくは1:7、より好ましくは1:10を超えるアスペクト比と見なされる。好ましい実施形態では、軟磁性フォイルの減磁率は0.5未満であり、好ましくは0.1より未満である。このような減磁率は、例えば高いアスペクト比で実現できる。しかし、このような小さな減磁率は、軟磁性材料の選択や、軟磁性フォイルの形態の他の特性などの他の手段によっても実現できる。別の実施形態では、信号変調器は円柱状の棒の形状を有し得る。この場合、軟磁性の円柱状の棒の丸い側面が回転磁性体に面する。この場合も、円柱状の棒の減磁率が0.5未満、好ましくは0.1未満であると有利である。この場合、例えば、棒の長さが棒の直径よりも大きくなるように円柱状の棒を選択することによって、そのような小さな減磁係数を実現することができる。
【0050】
一実施形態では、信号変調器は、信号変調器の位置で磁性体によって提供される応答磁場および応答磁場勾配を増幅するように構成された軟磁性材料の剛性の構造を指す磁束コンセントレータをさらに備える。
【0051】
本発明のさらなる側面では、医療用マイクロデバイスが取り付けられる物体の位置を特定するための、および/または医療用マイクロデバイスが取り付けられる物体の環境における物理パラメータを感知するための医療用マイクロデバイスの使用法が提示される。好ましくは、物理パラメータは温度または圧力を指し、物体は、人体または動物の体内で使用されるデバイス、特に埋め込み型デバイスを指す。好ましい実施形態では、物体はガイドワイヤまたはカテーテルを指す。別の好ましい実施形態では、医療用マイクロデバイスは血圧を感知するように構成され、心臓弁の一部として提供される。さらに、医療用マイクロデバイスは、肺動脈圧センサであるか、または肺動脈圧センサの一部であるように構成されてもよい。
【0052】
別の好ましい実施形態では、医療用マイクロデバイスは、電離放射線を物理パラメータとして感知し、放射線測定デバイスとして人間または動物に埋め込むことができるように構成されている。医療用マイクロデバイスの放射線感度は、例えば、それぞれの放射線によって重合してケーシングの体積変化をもたらす材料を含むケーシングを医療用マイクロデバイスに設けることによって提供することができる。そして、医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子は、例えば、上記のような信号変調器を使用することによって、ケーシングの体積変化に基づいて磁気機械式回転子の信号を変調するように構成され得る。
【0053】
本発明のさらなる側面では、上記医療用マイクロデバイスを無線で読み出すための読み取りシステムが提供され、読み取りシステムは、a)医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成する場生成器であって、磁性体の回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、場生成器と、b)応答磁場を感知して電気応答信号に変換するトランスデューサと、c)電気応答信号を処理するプロセッサとを備える。場生成器とは、一般に、所定の周波数で周期的に変化する磁場または電磁場を発生させることができる場生成器を指す可能性がある。トランスデューサは、磁場を電気応答信号と見なすことが可能な電流に変換できる1つ以上の磁気コイルを指す。好ましくは、プロセッサは、電気応答信号を処理し、電気応答信号に基づいて、医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求める。好ましい実施形態では、場生成器は、2kHz~200kHzの励起場を生成する少なくとも1つの空芯コイルを含み、トランスデューサは、最大で励起場の周波数の2倍を超える周波数の磁気信号を感知して変換する。好ましくは、トランスデューサは、銅またはアルミニウム製の少なくとも1つの、好ましくは3つより多くの空芯コイルを備える。
【0054】
本発明のさらなる側面では、上記医療用マイクロデバイスの位置を特定する、かつ/または上記医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを求める方法が提供され、方法は、a)医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成するステップであって、磁性体の回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、生成するステップと、b)応答磁場を感知して電気応答信号に変換するステップと、c)電気応答信号を処理し、電気応答信号に基づいて、医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求めるステップとを含む。
【0055】
本発明の別の側面では、コンピュータプログラムコードを備えたコンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムが、上記読み取りシステムを制御するコンピュータ上で実行されると、プログラムコードは、読み取りシステムに、上記位置特定方法および/または測定方法のステップを実行させる。
【0056】
上記医療用マイクロデバイス、上記読み取りシステム、上記方法、および上記コンピュータプログラムは、特に従属請求項に記載されているような類似するおよび/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0057】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項または上記実施形態と、独立請求項との任意の組み合わせとすることもできることを理解されたい。
【0058】
本発明の上記および他の態様は、以下に記載される実施形態を参照しながら説明され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、磁気機械式回転子を備える医療用マイクロデバイスの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図2図2は、医療用マイクロデバイスにおける潤滑を計算するためのモデルを概略的かつ例示的に示す。
図3-15】図3図15は、医療用マイクロデバイスの異なる有利な実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図16図16は、医療用マイクロデバイスの磁気信号を測定する方法のフローチャートを概略的かつ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、磁気機械式回転子を備える医療用マイクロデバイスの実施形態を概略的かつ例示的に示す。医療用マイクロデバイス100は、ケーシング111と、ケーシング内の磁気機械式回転子110とを備える。磁気機械式回転子110は、例えば、図1の破線で示すように、個別の筐体構造(ケーシング111の構造的な部分であってもよい)内に磁気機械式回転子を設けることによって、ケーシング111内に配置されている。しかし、回転軸受112をケーシング111内の安定した位置に取り付けて安定させることを可能にする取り付け構造を提供することによって、磁気機械式回転子110をケーシング111内に配置することもできる。取り付け構造は、回転軸受112および/または磁気機械式回転子110の他の構成要素をケーシングに接着するための接着剤を含むことができる。あるいは、ケーシングは、回転軸受112および/または他の構成要素を所定の位置にクランプするためのクランプとして機能する取り付け構造を備え得る。磁気機械回転子110は、永久磁性体113と、磁性体113の回転運動を安定させるように構成された回転軸受112とを備える。図1に示される実施形態では、永久磁性体113は、図1および以下において磁性体113内の矢印によって示される永久磁気モーメントを提供する。また、この実施形態では、磁性体113は球として示されている。しかし、磁性体113の他の形状も好適に利用され得る。例えば、長球または扁球も使用することができる。磁性体113は、その回転軸を中心として最大の慣性モーメントを提供するように構成されることが特に好ましい。これは、例えば、対応する形状を選択するか、または磁性体の内部の質量分布を調整することによって実現され得る。
【0061】
この実施形態における回転軸受112は、磁性体113の両側に配置された2つの磁性ディスクを備え、磁性体113の磁気モーメントは、特に、各磁性ディスクによって提供される表面と平行になることができる。この種類の回転軸受112は、回転軸受112に対する回転運動を可能にしつつ、回転運動中に磁性体113を安定させるための1つの可能性に過ぎない。
【0062】
一般に、回転軸受112は保持磁場生成器を備えることが好ましく、これは図1に示される例では、磁性体113の周りに配置された2つの軟磁性ディスクによって形成される。保持磁場生成器は、磁性体113の運動自由度の鞍点を提供する保持磁場を生成するように構成されている。このような鞍点は、磁性体113が実質的に鞍点に配置されているときに、磁性体113の鞍点から離れる二次元での並進運動を妨げるように定義される。特に、磁性体130がこれらの次元の1つにおいて、すなわち、回転軸受112に対して事前に定義された空間的平面において鞍点から離れるときに、保持磁場生成器、この例では2つの軟磁性ディスクによって磁気復元力が提供される。したがって、鞍点を提供する磁場は、磁性体113の位置を少なくとも二次元で安定させるように選択される。しかし、三次元において、したがって磁性体113の第3の並進自由度においては、鞍点を提供する磁場は安定化力、すなわち磁気復元力を提供しない可能性がある。
【0063】
したがって、上述したように、磁場を提供する保持磁場生成器を備える実施形態では、磁性体の第3の並進自由度に係る磁性体113の動き、すなわち、所定の空間的平面に垂直な空間的方向、したがって磁性体113の動きが妨げられる方向に垂直な空間的方向における動きを保持する保持面がさらに設けられることが好ましい。一般に、図1の例示的な実施形態に示されるように、保持磁場生成器は磁性体113と直接接触し得る保持面をさらに提供することが好ましい。
【0064】
図1に示す回転軸受112は、上述したように、2枚の軟磁性ディスクによって実現される。形状異方性に起因して、軟磁性ディスクはディスク平面内で磁化されることが好ましい。これにより、磁性体113とディスク表面との良好な位置合わせが可能になる。特に、鞍点がデバイスの中央にある場合、磁気アライメントは図1のようになる。しかし、この実施形態では、真の安定位置は中心からわずかにずれており、向きは軟磁性ディスクに対して完全に平行でも垂直でもない。しかし、外部磁場120、例えば、磁性体113を励起、すなわち回転させるために使用される外部励起磁場が提供されれば、中心位置およびアライメントは安定化される。磁性体113が十分に速く回転すると、中心位置が安定位置になる。
【0065】
一般に、また、保持磁場生成器を備える回転軸受の以下に説明する全ての実施形態についても、保持磁場および鞍点は次のように較正することができる。例えば、保持磁場生成器が軟磁性体または永久磁性体として実現される場合、軟磁性体または永久磁性体は、所望の設計に従って、磁性体と一緒に、例えばチューブなどのケーシング内に設けられ得る。物体のうちの1つの磁化を操作するには、例えば、レーザーまたは熱生成器を利用して、3つ以上の磁性体によって形成される磁気システムの距離および磁場特性を調整することができる。あるいは、磁性体によって提供される磁化および全般的な磁場を操作するために、システムの軟磁性体または永久磁性体を機械的に操作することも可能であり、例えば研磨されてもよい。所望の構成に達した後、例えばケーシングに接着することによって、磁性体をこの構成内に固定することができ、任意選択で潤滑流体を充填した後、ケーシングが閉じられ得る。あるいは、一般に適切な構成には、ケーシングの外側に1つ以上の追加の磁石が設けられ得、例えば、接着されるか、または他の方法で外側からケーシングに取り付けられ得る。ケーシングの外側に設けられたこのような追加の磁石により、ケーシングの外側の追加の磁石の位置および方向に基づいて、ケーシング内の磁性体によって生成される磁場の補正および/または較正が可能になる。この選択肢は、一般に機能する磁気機械式回転子を既に設けた後で医療用マイクロデバイスを較正するために使用できるため、実施がはるかに容易である。
【0066】
一般に、較正プロセスでは、較正プロセスによって最適化する必要がある測定可能なパラメータが選択される。典型的には、パラメータは、磁性体が振動回転を行う場合は振動周波数を指し、かつ/または回転もしくは振動の品質係数を指す。これらのパラメータの測定に基づいて、上記方法を使用して、所望のパラメータまたはパラメータ範囲に達するように全ての磁気コンポーネントの構成を操作することができる。このようにして決定された構成は、例えばコンポーネントをケーシングに接着することによって固定され得る。そして、同様の磁気機械式回転子を製造するために、この正確な構成を使用することができる。さらに、磁気コンポーネントの構成の数値シミュレーションを利用することで、較正プロセスをサポートおよび加速させることができる。
【0067】
図1はさらに、医療用マイクロデバイス100を無線で読み出すための読み取りシステム130を示す。読み取りシステム130は、磁気機械式回転子110を励起するために使用可能な励起磁場または電磁場120を生成するための場生成器131を少なくとも備える。さらに、読み取りシステム130は、磁気機械式回転子の生成された応答磁場を測定し、生成された応答磁場を電気応答信号に変換可能な1つ以上のトランスデューサ132を備える。一部の実施形態では、場生成器131は、図1に示されるトランスデューサ132に加えて、またはその代わりにトランスデューサとして利用され得る。トランスデューサ132は、医療用マイクロデバイス100によって生成された応答磁場を電気応答信号に変換するコイルとして実現することができる。電気応答信号は、例えば医療用マイクロデバイスの位置を特定するため、または医療用マイクロデバイスの環境内で医療用マイクロデバイスによって測定される物理パラメータを求めるために、電気応答信号を処理するように構成されたプロセッサ133に提供され得る。特に、プロセッサ133は、異なるトランスデューサの応答信号を比較し、この比較に基づいて三角測量アルゴリズムを使用して医療用マイクロデバイスの位置を求めるように構成され得る。さらに、プロセッサ133は、応答信号の周波数スペクトルを分析し、その周波数スペクトルを、予め記憶されている(例えば、先行する時間範囲または較正測定からの)周波数スペクトルと比較するように構成され得る。この比較に基づいて、プロセッサ133は、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータまたは物理パラメータの変化を求めることができる。しかし、医療用マイクロデバイスの位置を特定するため、および/または応答信号に基づいて物理パラメータを求めるために他の方法を利用することもできる。
【0068】
一般に、医療用マイクロデバイスの全ての実施形態について、回転磁性体113の最小システムQ値が100より高いことが好ましい。図1に示す実施形態のような保持磁場生成器を備えた実施形態の場合、磁性体113の位置は主に磁力によって安定化されるため、システムのQ値に影響を与える可能性のある摩擦源は、保持面と磁性体113との間の接触のみである。したがって、この接触を最適化することによって、例えば、この接触点に作用する力および/またはこの接触点における摩擦を最小限に抑えることによって、システムのQ値をさらに有利に改善することができる。
【0069】
以下、磁性体と保持面との間の接触点における摩擦を減少させるための一般的な考慮事項を説明する。一般に、摩擦は磁性体と保持面との間の接触面積に依存する。したがって、接触面積は物理的に可能な最小の接触面積に近く維持されることが好ましい。球体として実現される磁性体の物理的に可能な最小の接触面積は、例えば、次のようにして導出することができる。磁力によって生じる接触面に対する垂直抗力は、下式によって求めることができる。
【数1】
ここで、rは、この例では球体である磁性体の半径であり、ρは磁性体の密度であり、gは重力加速度であり、nは、磁性体の垂直抗力と磁性体の重量との比である。材料内の反対圧力から生じる垂直抗力は下式によって与えられる。
【数2】
ここで、Pは材料の硬さを指し、Aは物理的に可能な最小の接触面積であり、Rは、球状の磁性体の場合に物理的に可能な最小の接触半径である。2つの力は互いに等しいため、物理的に可能な最小の接触半径については、次式のように求めることができる。
【数3】
例えば、接触面がDLC(diamond-like carbon)を備え、P=100GPaを有し、磁性体の密度がρ=7500kg/m、半径がr=250μmである場合、物理的に可能な最小の接触半径はR=39nmとなる。接触面が鋼またはガラスを備え、約P=10GPaを有する場合、物理的に可能な最小の接触半径はR=124nmとなる。現実的に可能で適切な接触面積とは、物理的に可能な最小の接触面積の約100倍、好ましくは10倍を指す。接触面に一定の圧力がかかると仮定した場合、摩擦によって回転する磁性体に作用するトルクは次のように求められる。
【数4】
ここで、μは摩擦係数である。さらに、TはT=I・ωと表現することもでき、ここで、Iは慣性モーメントを指し、ωは磁性体の角速度を指す。これから、それぞれの接触面積に対する摩擦も求めることができる。これらの原理に基づいて、磁性体の回転の物理的に可能な減衰時間は、DCLを備えた保持面の場合は約20秒であり、ガラスの場合は約6秒と計算できる。ガラスの場合、摩擦を低減するためのさらなる措置を講じなくても、約0.5秒という現実的な減衰時間が可能である。
【0070】
さらに、図2を参照して説明するように、潤滑油を回転軸受112の一部として設けることができる。特に、磁性体113と保持面との間の接触点の領域に設けることができるが、回転する磁性体113と表面との接触が生じる可能性がある他の領域にも設けられることが好ましい。以下では、このような潤滑油を設けることが磁性体113と保持面との間の摩擦に有利な影響を与えることを示す、簡略化された潤滑モデルに基づく近似が提供される。この簡略化されたモデルでは、粘性抵抗は円柱、すなわちリング内でのみ作用し、横方向の相互作用はないものと仮定される。球体であると仮定される磁性体は、このモデルではさらに次のように記述される。
【数5】
【0071】
ここで、hは、接触点から距離xだけ離れた保持面の上方の磁性体の高さを指し、rは磁性体の半径を指す。1つのリングによる力は次の式のように見なすことができる。
【数6】
【0072】
ここで、ηは粘度であり、ωは回転角周波数であり、v=ωxはリングの速度であり、A=2πxΔxはリングの表面である。トルクは、力と距離との積として次のように表すことができる。
【数7】
【0073】
この方程式を積分すると、半径xの油滴の場合の総トルクT=2πωηrxが得られる。磁性体に作用する磁力によってもたらされるトルクは次のように見なすことができる。
【数8】
【0074】
ここで、mは磁気双極子モーメントであり、Mは球の磁化であり、Bは外部磁束密度である。したがって、T=Tの場合の可能な最大回転周波数は次のようになる。
【数9】
【0075】
ここで、α=r/xは油滴の相対的サイズである。この式のパラメータの一般的な値は、例えばη=3mPas、M=1T、B=1mTである。これらの値に基づいて、周波数f=42kHzαを計算することができる。有用な潤滑油の相対的液滴サイズは、例えば、α<0.1である。これは、典型的な球の直径である0.5mmの場合、潤滑は高速回転を妨げず、デバイス内の空気に起因した減衰程度であることを意味する。一般に、球に相当する磁性体が高速で回転すると、遠心力によって潤滑油が飛散する。しかし、これには、表面の濡れ性が正しく選択されていれば、自動的に適切な量の潤滑がシステムに残るという利点がある。好ましくは、潤滑油は磁性流体である。これにより、磁性の球体と保持面との間に距離が生じる可能性がある。この距離により、摩擦をさらに低減することができる。さらに、磁性体や保持面など、潜在的な接触領域を有する全てのコンポーネントに、コンポーネント間の摩擦をさらに低減するように構成された追加の層が設けられてもよい。
【0076】
以下、例えば、回転軸受112に対する磁性体113の位置の安定性を改善することによって、接触点に作用する垂直抗力をさらに低減するためのいくつかの例示的な実施形態を示し、詳細に説明する。また、それぞれの実施形態によって他の利点が提供される可能性がある。
【0077】
図3は、図1に関して上述した構成と同様の構成を示している。この場合では、補助軟磁性リング114が回転軸受112の一部として追加されている。補助軟磁性リング114は、好ましくは、軟磁性ディスク112の間に配置され、かつ軟磁性ディスク112の平らな表面によって提供される平面に平行な平面内に配置される。したがって、補助軟磁性リング114は磁性体113の回転赤道の周りに配置される。補助磁性リング114は、軟磁性ディスク112に対する磁性体113の向きおよび位置をさらに安定させる効果を有する。
【0078】
図4にさらなる有利な実施形態が示されている。この実施形態では、追加軟磁性シート115が保持磁気ディスク112の上下に追加されている。好ましくは、追加軟磁性シート115も軟磁性ディスクの形態を有する。しかし、軟磁気ディスク112の表面に平行な平面内で他の任意の二次元形状を有することもできる。また、これらの追加軟磁性シート115は、磁性体113の向きおよび位置の追加の安定化を提供することができる。
【0079】
図5は、上記実施形態のうちの任意のものと組み合わせることができる好ましい変形例を示している。この実施形態では、医療用マイクロデバイスは、第1の磁性体113のために設けられた回転軸受112と同様の独自の回転軸受112’を備える追加の磁性体113’を有する。特に、この実施形態では、医療用マイクロデバイスが追加の磁気機械式回転子を有すると見なすことができる。好ましくは、各磁気機械式回転子は、磁気機械式回転子への直接接触を避けるために、各自のケーシング構造を有する。しかし、2つの磁気機械式回転子の接触を防止する他の構造を設けることも可能であり、例えば、回転軸受112、112’の位置を決定すること、したがって、磁性体113、113’の位置も決定することを可能にする構造物が回転軸受112、112’に取り付けられてもよい。この実施形態は、回転磁性体113、113’の回転向きおよび位置の非常に良好な安定化を可能にする。一般に、この構成は、2つの磁性体113、113’の回転振動を可能にする。回転振動の振動周波数は、2つの磁性体113、113’間の距離に強く依存する。したがって、この実施形態は、医療用マイクロデバイスの位置特定を可能にするだけでなく、情報(例えば、医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータ、または識別情報)を生成される応答磁場に符号化することを可能にする、周期的に変化する応答磁場を生成するために有利に利用することができる。例えば、磁気機械式回転子のうちの少なくとも1つは、医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータの変化に応じて2つの磁気機械式回転子の間の距離を変化させることを可能にするアタッチメント、例えばベローズを有し得る。一例では、アタッチメントは環境内の温度および/または圧力の変化に敏感であり、そのような変化に反応して伸縮することによって、磁気機械式回転子の距離の変化、したがって振動集周波数の変化を引き起こす。2つの磁気機械式回転子の生成応答磁場の周波数のこのような変化は、例えば、物理パラメータのそれぞれの変化に関連付けられた較正測定またはシミュレーションに基づいて、容易に検出することができる。正確に定義された環境で医療用マイクロデバイスを使用して実行される較正測定、および生成応答磁場の実際の測定値と較正中に取得された測定値との比較に基づいて、医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータの絶対値さえも求めることができる。このような測定を容易にするために、および、この実施形態において2つの磁気機械式回転子間のエネルギーがゼロの一次磁化(first order magnetization)変化を伴う「サイレント」振動モードに伝達されるという問題を回避するために、サイズの異なる2つの磁性体113、113’を設けることが有利である可能性がある。
【0080】
図6は、保持磁場生成器が、2つの保持永久磁性体として2つの永久磁性球210を備える磁気機械式回転子の実施形態を示す。また、この実施形態では、保持面は2つの保持永久磁性球210によって提供される。この実施形態における磁性体113は、2つの永久磁性球210の間で回転振動を実行し、少なくとも、磁性体113の回転運動に相当する時間スケールではケーシングに対して安定した磁気モーメントを提供する。この実施形態の利点は、磁性体113と、保持永久球210によって提供される保持面との間の接触点における垂直抗力および摩擦をさらに低減できることであり、これにより、磁気機械式回転子のQ値をさらに改善することができる。磁性体113と2つの保持永久磁性球210との間の接触点に作用する垂直抗力をさらに低減させるために、この実施形態では、2つの保持永久磁性球210の直径を磁性体113よりも大きくすることが好ましい。さらに、2つの保持永久磁性球210の直径を磁性体113よりも大きくすることは、等しいサイズの磁性体を有する実施形態と比較して、より高い振動周波数が得られるという利点を有する。一般に、振動周波数が高いほど信号は良好になる。
【0081】
図6に関して説明した実施形態は、図7に示すようにさらに変形することができる。この実施形態では、追加の回転磁性体113’が2つの保持永久磁性体210の間に設けられている。これにより、2つの回転磁性体113、113’の回転振動について、トルクのバランスがとれた構成が得られる。好ましくは、このシステムの安定性を高めるために、回転磁性体113、113’よりも大きい永久磁性体210が設けられ、例えば、球体の場合はより大きな直径を有するものが設けられる。磁性体113、113’が互いにくっつく傾向を避けるために、ホールド構造を設けることがさらに好ましい。ホールド構造は、2つの回転磁性体113、113’間に単純な隔壁を設けることによって、または、回転振動を可能にし、また任意選択で回転磁性体113、113’間の距離の変化を可能にするが、回転磁性体113、113’間の直接接触を防ぐベローズを2つの回転磁性体の間に設けることによって実現することができる。距離の変化はこのシステムの磁気相互作用を必然的に変化させるため、生成応答磁気信号における医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータの変化を符号化するために利用できる。物理パラメータの影響は、例えば、回転磁性体113、113’のうちの少なくとも1つを、環境内の物理パラメータの変化に反応して距離を変化させるベローズ構造に取り付けることによって提供することができる。
【0082】
図8に示すように、保持磁場生成器の一部として、さらなる軟磁性ディスク212、212’を各回転磁性体113、113’に追加することによって、上記実施形態をさらに有利に変形することができる。追加軟磁気ディスク212、212’は、上記した原理、例えば図1に示される実施形態に関して上記した原理に従って提供され得る。好ましくは、追加軟磁性ディスク212、212’は、2つの回転磁性体113、113’を安定させるためのホールド構造の一部として設けることができる。この実施形態では、回転磁性体113、113’のうちの1つの両側にある2つの保持磁性ディスク212、212’が同じサイズを有さない、すなわち同じ直径を有さないことがさらに好ましい。特に、構成の安定性を高めるために、互いに直接対向する保持用軟磁性ディスク212、212’の直径が、回転磁性体と保持永久磁性体210との間の2つの保持軟磁性ディスク212、212’の直径よりも小さいことが好ましい。追加軟磁性ディスク212、212’は、磁性体113、113’と、上記したようにここでは軟磁性ディスク212、212’によって形成される保持面との間の接触点にかかる垂直抗力を有利に調整することを可能にすると同時に、磁性体113、113’と比較して、2つの保持永久磁性体210のサイズをさらに縮小することを可能にする。特に、この実施形態では、回転磁性体113、113’のサイズより小さいサイズ、例えば直径を有する2つの保持永久磁性体210を提供することはさらに有利であり得る。このような変形により、回転磁性体113、113’の完全な回転運動が可能になる。この場合、回転磁性体113、113’間の距離は、磁性体113、113’の振動周波数ではなく、生成応答磁場の形状、すなわち高調波スペクトルに符号化される。これにより、距離をより正確に求めることが可能になり、したがって、回転磁性体113、113’間の距離に影響を与える可能性のある物理パラメータをより正確に求めることができる。
【0083】
図9は、上記実施形態のさらなる有利な変形を示す。この実施形態は、保持永久磁性体の代わりに軟磁性ディスク212、212’および擬似軟磁性永久磁性球アセンブリ220、220’が追加された、トルクのバランスがとれた構成を提供する。擬似軟磁性永久磁性球アセンブリ220、220’は、互いに対して移動できるように、特に互いに対する磁気モーメントの向きを調整できるように構成された少なくとも2つの永久磁性体221、221’を備える。他の動きは、少なくとも2つの永久磁性体221、221’をケーシング構造223、223’に関して収容することによって阻止することができる。ケーシング構造223、223’は、少なくとも2つの永久磁性体221、221’の回転運動を(したがって、磁気モーメントの調整を)妨げることなく、少なくとも2つの永久磁性体221、221’の位置的な配置を実質的に固定する。しかし、筐体構造223、223’の代わりに、回転運動を妨げることなく位置的な配置を固定する他の構造を設けることもできる。このアセンブリの利点は、強い磁場が印加されても破壊されないため、医療用マイクロデバイスをMRIに対応可能にすることである。保持磁場生成器として軟磁性材料を提供することに対する利点は、これらのアセンブリ220、220’は永久磁化を保持することである。この構成では、非常に高粘度の流体222が永久磁性体221、221’間に提供される。流体は潤滑剤として機能するが、同時に球体を、磁性体113、113’の回転運動の時間スケール上で固定された状態に保つことにより、エネルギーの散逸を防ぐ。最も単純な構成は、左側に示すような2つの球体のアセンブリ220であるが、右側に示すような屈曲したチェーンからなるより複雑なアセンブリ220’を使用することもできる。
【0084】
図10は、磁気機械式回転子に加えて信号変調器310を備える医療用マイクロデバイスの好ましい実施形態を示す。信号変調器310、または後述する図に関して説明されるその変形例の任意のものを、磁気機械式回転子の上記実施形態の任意のものと組み合わせることができる。しかし、磁性体113が励起場を完全な回転運動に変換するように構成された磁気機械式回転子を備える医療用マイクロデバイスの実施形態では、信号変調器310を設けることが特に好ましい。外部励起場が回転振動に変換されるように構成された磁気機械式回転子を備えた実施形態でも信号変調器310を設けることができるが、完全な回転運動を有する実施形態ほど有利ではない。
【0085】
一般に、信号変調器310は、回転磁性体113によって生成される応答磁場を変調できる任意の構成を指し得る。図10は、信号変調器310の単純な実施形態を示す。この実施形態では、信号変調器は、軟磁性要素311、および軟磁性要素311と磁気機械式回転子との間の距離を変更することを可能にするベローズ312とを備える。この構成では、信号変調器310は磁性体113の回転軸に沿って配置されることが好ましい。これにより、回転磁性体の向きに影響を与える横方向の力を小さく保つことができる。しかし、磁性体113に対する信号変調器310の他の配置も一般に可能であり、いくつかの用途にとって有利であり得る。特に、完全な回転運動を提供する磁性体113を備えた磁気機械回転子を備える実施形態では、生成応答磁場の変調により、物理パラメータまたは医療用マイクロデバイスの識別情報などの情報を生成応答磁場に符号化することができる。例えば、信号変調器310は、高調波を生成したり、または共振を変調として生成応答磁場に組み込んだりすることができる。信号変調器310は、大きな信号変調を生成するために、回転磁性体113によって引き起こされた応答磁場変化に匹敵する磁化変化を有することが好ましい。好ましくは、信号変調器310は、(例えば、トランスデューサによって受信される)信号の少なくとも1%、より好ましくは10%が信号変調器310によって引き起こされるように、回転磁性体113によって生成される信号を変調するように構成される。信号周波数が磁性体113の回転周波数と同様でなければならない場合、信号変調器310は、回転磁性体113と同様のサイズを有することが好ましい。一方、信号変調器310が生成応答磁場内により高次の高調波を生成する必要がある場合、信号変調器310は回転磁性体113よりも小さいことが好ましい。
【0086】
回転磁性体を信号変調器とともに使用することには2つの利点がある。第一に、医療用マイクロデバイスがより低い強度の磁場において動作できるようになる。例えば、2mTを超える外部磁場は患者にとってほとんど耐えられない一方、医療用マイクロデバイス内で、すなわち回転磁性体と磁場変調器との間で、50mTの局所的動作磁場強度が容易に得られる。第2に、変調された信号の測定がより容易であり、測定された変調された信号は、物理パラメータまたは医療用マイクロデバイスの識別情報を示す信号を容易に特定することを可能にする。特に、信号変調器が、医療用マイクロデバイスの環境内の物理パラメータに結合されることが好ましい。例えば、物理パラメータは信号変調器の動きに変換され得る。信号変調器への最も単純な結合は、信号変調器から回転磁性体までの距離を変えることによって実現される。しかし、さらに効果的であり得る他の結合も可能である。例えば、信号変調器の内部構造が物理パラメータに基づいて機械的に変更されてもよい。特に温度測定の場合、信号変調器は、例えば飽和磁化の値を変更することによって、物理量に直接反応し得る。
【0087】
上記実施形態の好ましい変形例では、変形された信号変調器310’の軟磁性要素311は、図11に示されるような軟磁性フォイル311’を指す。好ましくは、軟磁性フォイル311’は非対称な形状を有する。形状異方性により、フォイルは磁化に抵抗し、その抵抗は長手方向よりも短手方向の方が高くなる。したがって、フォイルが回転磁性体113に近い場合、全ての向きで飽和状態にあり、高調波は生成されない。距離が増加すると、磁性球の双極子がフォイルの短辺と整列すると飽和状態ではなくなる。したがって、生成される応答磁場には高調波が発生する。高調波スペクトルの正確な形状は、フォイル311’の材料および形状に敏感に依存し、所望の用途に合わせて調整することができる。
【0088】
図12は、信号変調器310の上記の単純な実施形態のさらなる変形例を示しており、このさらなる変形例では、信号変調器310”は磁束コンセントレータ313を追加で備える。磁束コンセントレータ313は、好ましくは、磁性体113によって生成される応答磁場、および磁性体113によって生成される応答磁場の磁場勾配を増幅する軟磁性材料の剛性の構造を指す。磁束コンセントレータ313の追加は、信号変調器311”の既に非常に小さな動き、すなわち非常に小さな距離変化が、測定可能な信号変化を生成するという利点を有する。したがって、磁束コンセントレータ313を備える信号変調器310”は、磁束コンセントレータを有さない信号変調器を備える医療用マイクロデバイスと比較して、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化を測定するためのより高い感度を可能にする。
【0089】
信号変調器のさらなる実施形態が図13に示されている。信号変調器410は、磁気機械式回転子によって生成される応答磁場によって励起され得る機械式共振器を指す。好ましい実施形態では、図13に示すように、機械式共振器410は、a)L字形の永久または軟磁性要素412および磁束コンセントレータ411を含む磁気コンポーネントと、b)ベローズ413とを備える。ここに示される例示的な実施形態では、ベローズ413は、好ましくは軟磁性材料を含む磁束コンセントレータ411と磁性要素412とを互いに接続する。磁束コンセントレータ411および磁性要素412は両者間の距離を変えることができ、したがって、互いに対する平衡位置を変更することができる。さらに、磁束コンセントレータ411と磁性要素412との間の距離の変化に対抗して作用するベローズ(蛇腹)413によって提供される復元力は、回転磁性体113によって生成される応答磁場による機械式共振器の共振励起の場合、磁性要素412および磁束コンセントレータ411の平衡位置を中心とした振動をもたらす。特に、機械式共振器410は、医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータの変化が、機械式共振器410の内部構造の変化をもたらすように構成され得、この例示的な実施形態では、ベローズ413の収縮または伸張を引き起し、ひいては磁性要素412および磁束コンセントレータ411の平衡点の変化をもたらすように構成され得る。この変化およびベローズ413の状態は、機械式共振器410の共振周波数の変化をもたらす。
【0090】
共振周波数を求めることは、パラメータを正確に求める上で非常に望ましいので、この実施形態は信号をより高い周波数の発振に変換することを可能にする。回転磁性体113は、高周波かつ高強度の応答磁場を提供する。好ましくは高アスペクト比の軟磁性材料を使用することにより、飽和に達することができ、高次高調波が生成される。これらの高次高調波は、機械式共振器410を励起することができる。ベローズ413の幾何学的変化により共振周波数を変化させることができる。この場合、測定すべき量、すなわち物理パラメータは、励起磁場と、生成応答磁場の高調波との間の位相差に符号化される。回転磁性体113は、両信号を同時に測定することがかなり容易であるという追加の利点を有する。100kHzの信号から20次高調波を生成することができ、したがって、回転磁性体113の動的磁気双極子と比べて機械式共振器410の動的磁気双極子を小さくすることができ、それでも検出可能である。
【0091】
同様に図13に関して説明した原理に基づく、より洗練された実施形態が図14に示されている。この実施形態では、ベローズ413’は、例えば圧力缶、すなわち、環境内の圧力変化を受けたときに一方向の圧縮または伸張する構造の形態で提供される。この実施形態では、機械式共振器410’は、ベローズ構造413’内に、少なくとも2本の叉の音叉の形態を含む少なくとも1つの軟磁性要素を磁気コンポーネントとして備える。ここで、「音叉」という用語は、磁気要素の幾何学的形状を説明するためにのみ使用されており、その機能を説明するものではないことに留意されたい。図14に示す好ましい実施形態では、音叉は4本の先端部を備えるが、2または3本の先端部を有する音叉、または4本を超える先端部を有する音叉も使用することができる。この実施形態では、磁束コンセントレータ411’も磁気要素と見なすことができ、磁気要素411’と同じ形態を備え、2つの磁気要素、すなわち磁気要素412’および磁束コンセントレータ411’は、音叉の先端部が向かい合うように配置されている。一般に、上記医療用マイクロデバイスにおいて信号変調器として利用される機械式共振器の原理は、この実施形態にも同様に適用され得る。音叉の形態の磁気要素は、共振周波数が低くなるように、部分的に非常に薄いおよび/または可撓性の材料からなることが好ましい。2つの音叉がほぼ接触する部分では、音叉は複数のポールに分かれており、これにより引力が比較的大きくなり、磁化状態でのアセンブリ全体の共振周波数が大幅に増加する。引力はポールが互いに近い場合にのみ大きくなるため、共振周波数は距離に強く依存し、距離は例えば圧力缶に加えられる圧力によって変化する。振動中、実効ギャップの幅が変化する。外部励起磁場が十分に低い場合、軟磁性材料の磁化が変化し、よって磁気双極子モーメントが変化する。変化する磁場が励起力を生成するように、音叉は互いに少し位置がずれていることが好ましい。音叉の同じ軟材料によって高調波が生成され、回転磁性体の強い磁場変化によって、磁化変化の適切な条件が周期的に満たされる。
【0092】
図15は、磁気機械式回転子の回転軸受の別の実施形態を示しており、ここでは、回転軸受510は鞍点を備えていない。この実施形態では、磁気機械式回転子は、接触面512を備える回転軸受510を有する。接触面512は上記接触面と同様の特性を有し得、磁性体113と接触する。磁性体113を接触面512の下に固定するために、回転軸受510はさらに、接触面512の下に配置された永久または軟磁性フォイル511を有する。好ましくは、磁性フォイル511は接触面512と平行に配置される。すると、磁性体113は、磁性体113の磁気モーメントが接触面412に平行になり、かつ回転軸が接触面512に実質的に垂直になるように、自身を実質的に配置する。一般に、鞍点を有するように保持磁場を生成するように構成された保持磁場生成器を備えない実施形態は、安定性が低いが、製造が容易であり、一部の用途では依然として有用である。この実施形態において回転磁性体113を安定させるために、および接触面512の垂直抗力を減少させるために、接触面512は、磁性体113の少なくとも一部を取り囲む凹形状を少なくとも部分的に有し得る。この場合、磁性体113を接触面512に固定する磁力を低減することができ、結果として垂直抗力を低減することができる。さらに、磁性体113の横方向の安定性が向上する。
【0093】
一般に、本発明の主要な概念は、第1のコンポーネントとして、高速回転する永久磁性体を含む磁気機械式回転子に関する。このために、回転磁性体(場合によっては球体)は何らかの回転軸受を有する。上記したように、回転軸受は複数の方法で好適に実現することができる。最も簡単な方法の1つは、磁性体を磁性フォイルによって平らな接触面上の所定の位置に固定することである。磁性フォイルの磁化は回転軸に対して垂直であることが好ましい。そのようにすることで、振動または回転する外部磁場は、例えば低周波数から高周波数への適切なスイープ(すなわち、チャープ磁場)を使用することによって、磁性体の回転を増加させることができる。回転磁性体の最大回転速度はその材料の強度によって制限され、縁部で約100m/sである。0.5mmの球体として実現される磁性体の場合、この近似により、少なくとも64kHzの最大回転速度が与えられる。回転磁性体によって提供される信号を正確に検出できるようにするには、励起後に信号を記録できる程度に摩擦が低いことが好ましい。したがって、例えば数十回の回転の間、高速を維持する必要がある。図面に関して説明される詳細な実施形態は、そのような低摩擦および信号の正確な検出をどのように達成するかの例を提供する。
【0094】
一般に、高速で回転する磁性体のための単純かつ効率的な回転軸受は、回転磁性体に接近する軟磁性材料を備え得る。すると、材料は磁気飽和に達することができ、この飽和は、特に適切な異方性が維持される場合、生成応答磁場内に高調波を生成することができる。最も単純な実施形態は、回転磁性体の回転軸について対称かつ垂直な磁針を設けることを指すことができる。十分に近づくと針が飽和状態になり、その結果生成される応答磁場には高調波が含まれる。そして、これらの高調波を評価することによって、例えば物理パラメータを復号したり、または医療用マイクロデバイスを識別したりすることができる。技術的には、磁気飽和に達する必要さえない。このような場合、医療用マイクロデバイスが生成する回転対称な応答磁場は、より楕円形の磁場に歪むだけである。このような歪みも、例えば、応答磁場を複数の方向からの電気応答信号に変換するための複数のトランスデューサを使用して、記録することができる。高い信号強度を得るには、針の飽和磁気双極子モーメントが回転永久磁性体の双極子モーメントに近いことが好ましい。これにより、高調波の信号を可能な限り最大にできる。
【0095】
軟磁性材料の導入による高調波の生成はまた、励起磁場による励起中の医療用マイクロデバイスの検出を可能にする。例えば、測定中、適切なフィルタリングによって受信経路内の励起周波数帯域を抑制し、高調波のスペクトルのみを検出および位置特定に使用することができる。
【0096】
上記構成によれば、非常に正確に位置を特定できる効率的なマーカー、すなわち医療用マイクロデバイスを構築することができる。マーカーは、生成された信号内に符号化された独自の構造を有することもでき、これは、数千種類の医療用マイクロデバイスを区別することを可能にする。医療用マイクロデバイスをセンサに変換するために、外部物理パラメータによって高調波スペクトルが変更され得る。例えば、温度を測定するには、所望の測定温度に近いキュリー温度が軟磁性針に与えられる。生成される高調波は温度を示す。圧力を測定するには、ベローズによって、回転する磁性体に針を近づけるのが最も容易な方法である。距離が変化すると局所的な磁場が変化し、したがって高調波スペクトルが変化する。しかし、より高い感度を得るには、第1の軟磁性針に対して第2の軟磁性針を移動させ、それによって高調波スペクトルを変化させることが好ましい。これらの物体の互いへの距離は磁性体への距離よりもはるかに近くすることができ、より小さな動きを検出できる。他の選択肢は、軟磁性針に対して硬磁性体を移動させ、それによって高調波スペクトルを変調することである。
【0097】
図16は、医療用マイクロデバイスの位置を特定する方法、および/または医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを求めるための方法を概略的かつ例示的に示す。方法600は、例えば上記の実施形態で説明したように、磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を引き起こすための励起磁場または電磁場を生成する第1のステップ610を含む。磁気機械式回転子の磁性体の回転により、周期的に変化する応答磁場が生成される。次のステップ620では、周期的に変化する応答磁場が電気応答信号に変換される。次いで、ステップ630において、例えばプロセッサによって電気応答信号が処理され、電気応答信号に基づいて、医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化が求められる。
【0098】
上記実施形態では磁性体は永久磁性球として示されているが、他の実施形態では、磁性体は長球または扁球、円柱などの他の形状を有し得る。また、上記実施形態では回転磁場生成器として軟磁性ディスクおよび/または永久磁性球が示されているが、他の実施形態では、保持磁場を提供するために軟磁性円柱、永久磁性ディスクまたは円柱、永久磁性立方体、異なる形状の回転楕円体などを利用することもできる。
【0099】
図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、開示の実施形態の他の変形例が、クレームされる発明を実施する当業者によって理解および実現され得る。
【0100】
特許請求の範囲において、「備える」や「含む」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を除外しない。
【0101】
単一のユニットまたはデバイスが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせを好適に使用することができないとは限らない。
【0102】
1つ以上のユニットまたはデバイスによって生成磁場などに基づいて実行される、マイクロデバイスの位置、物理パラメータの変化、または物理パラメータ自体を求めることは、他の任意の数のユニットまたはデバイスによって実行することもできる。これらのプロセスは、コンピュータプログラムのプログラムコードとして、および/または専用ハードウェアとして実施することができる。
【0103】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともにまたは他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体またはソリッドステート媒体などの適切な媒体上で保存および/または配布されてもよいし、インターネットまたは他の有線もしくは無線テレコミュニケーションシステムを介してなどの他の形態で配布されてもよい。
【0104】
特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0105】
本発明は、人体に挿入される医療用マイクロデバイスに関連し、マイクロデバイスは、空間における医療用マイクロデバイスの位置および/または医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、医療用マイクロデバイスは、ケーシングと、ケーシング内の磁気機械式回転子とを備え、磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体と、磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受とを含み、磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、回転軸受に対する磁性体の機械的回転に変換する。したがって、マイクロデバイスは信号伝送の改善およびさらなる小型化を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内のマーカーマイクロデバイスの位置及び/又はマーカーマイクロデバイスの環境における物理的パラメータの少なくとも1つを測定することを可能にする該マーカーマイクロデバイスであって、
前記マーカーマイクロデバイスは、ケーシングと、前記ケーシング内の磁気機械回転子と、を有し、前記磁気機械回転子は、永久磁気モーメントを提供する少なくとも1つの磁性体と、少なくとも2つの保持永久磁性体と、を有し、前記少なくとも2つの保持永久磁性体は、前記マーカーデバイスの前記ケーシングに少なくとも部分的に接続されており、
前記磁気機械回転子は、前記少なくとも1つの磁性体の回転運動を安定させるように適応される少なくとも1つの回転軸受を更に有する、マーカーマイクロデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも2つの保持永久磁性体は、当該少なくとも2つの保持永久磁性体の間に鞍点が設けられるように、前記磁性体の両側に配されている、請求項1に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの回転軸受が、所定の空間平面に垂直な空間方向に保持面を有する、請求項1又は2に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項4】
前記保持面との最小限の接触が提供されるように又は前記保持面との最小限の接触が1点のみにおいて提供されるように、前記保持面が構成され適応される、請求項3に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項5】
前記保持面が、少なくとも可能な接触領域において、10GPaを超える圧縮強度を有する、請求項3又は4に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項6】
保持磁場生成器を更に有し、前記保持磁場生成器は、前記磁性体によって前記保持面に加えられる垂直力が、前記磁性体に作用する重力の1000倍であるか、又は1000倍より低くなるように適応される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの保持永久磁性体は、実質的に円筒形状である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも2つの保持永久磁性体は、当該保持永久磁性体の磁気モーメントの向きが、前記磁性体の機械的回転の時間スケールと同等である時間スケールにわたって、前記ケーシングに対し固定されるように構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス
【請求項9】
前記磁気機械回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場又は外部励起電磁場を、前記回転軸受に対する前記磁性体の機械的回転に変換するように適応される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項10】
前記ケーシングの外側に付加の磁石が配され、前記付加の磁石は、前記ケーシング内の前記磁性体によって生成される磁場の補正及び/又は較正を可能にするように構成される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項11】
少なくとも2つの磁性体が使用され、前記少なくとも2つの磁性体は、それらが互いに対して移動可能であるように構成される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項12】
前記2つの磁性体を安定させるように、前記磁性体のそれぞれに取り付けられる軟磁性ディスクを更に有する、請求項11に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項13】
前記磁性体が、回転振動、回転運動、又は振動運動を行うように適応される、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイスをワイヤレスで読み取る読み取りシステムであって、
前記マーカーデバイスの磁気機械回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場又は励起電磁場を生成する磁場生成器であって、前記磁性体の機械的回転が、周期的に変化する応答磁場を生成する、磁場生成器と、
前記応答磁場を感知して電気的応答信号に変換するトランスデューサと、
前記電気的応答信号を処理するプロセッサと、
を有する読み取りシステム。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のマーカーマイクロデバイスを位置特定する方法及び/又は前記マーカーマイクロデバイスの環境における物理的パラメータを決定する方法、を実行するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、
前記マーカーマイクロデバイスの磁気機械回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場又は励起電磁場を生成するステップであって、前記磁性体の機械的回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、ステップと、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するステップと、
前記電気応答信号に基づいて、前記マーカーマイクロデバイスの位置及び/又は前記マーカーマイクロデバイスの環境における物理的パラメータ及び/又は前記物理的パラメータの変化を決定するよう前記電気応答信号を処理するステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項16】
マイクロデバイスをワイヤレスで読み取るためのコンピュータプログラムであって、前記マイクロデバイスは、ケーシングと、前記ケーシング内の磁気機械回転子と、を有し、前記磁気機械回転子は、永久磁気モーメントを提供する少なくとも1つの磁性体と、前記マイクロデバイスの前記ケーシングに少なくとも部分的に接続される少なくとも2つの保持永久磁性体と、前記少なくとも1つの磁性体の回転運動を安定させるように適応される少なくとも1つの回転軸受と、を有し、前記コンピュータプログラムは、
前記マイクロデバイスの磁気機械回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場又は励起電磁場を生成するステップであって、前記磁性体の機械的回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、ステップと、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するステップと、
前記電気応答信号を処理するステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
本発明は、人体に挿入される医療用マイクロデバイスに関連し、マイクロデバイスは、空間における医療用マイクロデバイスの位置および/または医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、医療用マイクロデバイスは、ケーシングと、ケーシング内の磁気機械式回転子とを備え、磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体と、磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受とを含み、磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、回転軸受に対する磁性体の機械的回転に変換する。したがって、マイクロデバイスは信号伝送の改善およびさらなる小型化を可能にする。
以下、本願発明の各種形態を付記する。
(付記1)
人体に挿入される医療用マイクロデバイスであって、前記マイクロデバイスは、空間における前記医療用マイクロデバイスの位置および/または前記医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータのうちの少なくとも1つの測定を可能にし、前記医療用マイクロデバイスは、ケーシングと、前記ケーシング内の磁気機械式回転子とを備え、前記磁気機械式回転子は、永久磁気モーメントを提供する磁性体と、前記磁性体の回転運動を安定化させる回転軸受とを含み、前記磁気機械式回転子は、周期的に変化する応答磁場が生成されるように、外部励起磁場または電磁場を、前記回転軸受に対する前記磁性体の機械的回転に変換する、医療用マイクロデバイス。
(付記2)
前記回転軸受は、鞍点を提供するように保持磁場を生成する保持磁場生成器を含み、前記磁性体は実質的に前記鞍点に位置し、前記鞍点は、前記回転軸受に関して予め定められた空間的平面について、前記磁性体が前記空間的平面内で前記鞍点から遠ざかるとき、前記磁性体が、前記磁性体を前記鞍点の方向に戻す前記保持磁場によって提供される磁気復元力を受けるように定められる、付記1に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記3)
前記回転軸受は、前記予め定められた空間的平面に垂直な空間的方向に保持面を有し、前記垂直な空間的方向における前記磁性体の移動が制限される、付記2に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記4)
前記保持磁場生成器は、前記磁性体の両側に配置された2つの保持永久磁性体を含み、前記鞍点は前記保持永久磁性体の間に設けられる、付記2または3に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記5)
前記保持磁場生成器はさらに2つの軟磁性体を備え、前記2つの軟磁性体は、前記保持永久磁性体が配置されている前記磁性体の前記両側に配置され、前記2つの保持永久磁性体は、前記軟磁性体よりも前記磁性体から遠くに配置される、付記4に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記6)
複数の保持永久磁性体が前記磁性体の各側に配置される、付記4または5に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記7)
前記医療用マイクロデバイスが、前記磁性体と同様の回転軸受を有する追加の磁性体を含み、前記追加の磁性体は前記磁性体と同様であり、前記磁性体は互いに距離を置いて配置されており、前記2つの磁性体の回転軸は平行である、付記1から6のいずれか一つに記載の医療用マイクロデバイス。
(付記8)
前記医療用マイクロデバイスは信号変調器をさらに備え、前記信号変調器は、励起時に前記磁気機械式回転子によって生成される応答磁場を変調し、前記変調された応答磁場は前記医療用マイクロデバイスデバイスの位置特定を可能にする、付記1から7のいずれか一つに記載の医療用マイクロデバイス。
(付記9)
前記信号変調器によって、前記医療用マイクロデバイスの前記環境における物理パラメータの変化が、前記応答磁場の前記変調の変化を導入し、前記導入される前記変調の前記変化は、前記変調された応答磁場の測定から前記物理パラメータの前記変化を求めることを可能にする、付記8に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記10)
前記信号変調器によって、前記物理パラメータの変化が前記信号変調器の内部構造を変化させ、前記信号変調器の前記内部構造の前記変化が前記応答磁場の前記変調の変化を導入する、付記9に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記11)
前記信号変調器は機械式共振器を含み、前記機械式共振器は、前記磁性体の前記回転運動によって生成される前記応答磁場によって励起され、前記機械式共振器は、前記物理パラメータの変化が、前記機械式共振器の前記共振周波数の変化をもたらすように構成されており、前記生成された応答磁場による前記機械式共振器の前記励起は、前記物理パラメータに依存した前記応答磁場の前記変調の変化を導入する、付記10に記載の医療用マイクロデバイス。
(付記12)
付記1から11のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイスを無線で読み出すための読み取りシステムであって、前記読み取りシステムは、
前記医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成する場生成器であって、前記磁性体の前記回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、場生成器と、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するトランスデューサと、
前記電気応答信号を処理するプロセッサとを備える、読み取りシステム。
(付記13)
前記プロセッサは、前記電気応答信号に基づいて、前記医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求める、付記12に記載の読み取りシステム。
(付記14)
前記場生成器は、2kHz~200kHzの励起場を生成する少なくとも1つの空芯コイルを含み、前記トランスデューサは、最大で前記励起場の周波数の2倍を超える周波数の磁気信号を感知して変換する、付記12または13に記載の読み取りシステム。
(付記15)
付記1から11のいずれか一項に記載の医療用マイクロデバイスの位置を特定する、かつ/または前記医療用マイクロデバイスの環境における物理パラメータを求める方法であって、前記方法は、
前記医療用マイクロデバイスの磁気機械式回転子の磁性体の機械的回転を誘導するための励起磁場または電磁場を生成するステップであって、前記磁性体の前記回転は、周期的に変化する応答磁場を生成する、生成するステップと、
前記応答磁場を感知して電気応答信号に変換するステップと、
前記電気応答信号を処理し、前記電気応答信号に基づいて、前記医療用マイクロデバイスの環境における位置および/または物理パラメータおよび/または物理パラメータの変化を求めるステップとを含む、方法。
(付記16)
コンピュータプログラムコードを備えたコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、付記12に記載の読み取りシステムを制御するコンピュータ上で実行されると、前記プログラムコードは、前記読み取りシステムに、付記15に記載の方法のステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【外国語明細書】