(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005091
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】消泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
B01D 19/04 20060101AFI20240110BHJP
D21H 21/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01D19/04 B
D21H21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105105
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 理生
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕貴
【テーマコード(参考)】
4D011
4L055
【Fターム(参考)】
4D011CB02
4D011CB04
4D011CB06
4D011CB11
4D011CB12
4D011CB13
4D011CC01
4L055AG08
4L055AG34
4L055AG35
4L055AG43
4L055AG45
4L055AH29
4L055AH35
4L055FA08
(57)【要約】
【課題】発泡液に添加した場合に、初期消泡性と消泡持続性との双方の消泡性に優れており、かつ、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として使用した場合に、前記消泡性に加えて、得られる紙パルプのサイズ度の低下を十分に抑制することが可能な消泡剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)レシチンと、
(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤、(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤、及び(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤と
を含有することを特徴とする消泡剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)レシチンと、
(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤、(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤、及び(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤と
を含有することを特徴とする消泡剤組成物。
【請求項2】
(F)ポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールと脂肪酸とのエステル化物のうちの少なくとも一方のポリプロピレングリコール系化合物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
【請求項3】
前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
R1-(A1O)a-R2 (1)
(一般式(1)中、R1は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或はR3O-であり、R3は、水素原子又はR4C(=O)-であり、R2は、水素原子又は-C(=O)R5であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、aは、A1Oの繰り返し単位の数で、1~200の整数であり、aが2以上の場合は、複数のA1Oは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
R6-(A2O)b-H (2)
(一般式(2)中、R6は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、A2Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、bは、A2Oの繰り返し単位の数で、1~200の整数であり、bが2以上の場合は、複数のA2Oは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
R7O-(EO)c(PO)d(EO)e-R8 (3)
(一般式(3)中、R7は、水素原子又はR9C(=O)-であり、R8は、水素原子又は-C(=O)R10であり、R9及びR10は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、c及びeは、EOの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~199の整数であり、dは、POの繰り返し単位の数で、0~198の整数であり、c+d+eは、2~200である。)
R11O-(PO)f(EO)g(PO)h-R12 (4)
(一般式(4)中、R11は、水素原子又はR13C(=O)-であり、R12は、水素原子又は-C(=O)R14であり、R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、f及びhは、POの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~198の整数であり、gは、EOの繰り返し単位の数で、1~198の整数であり、f+g+hは、3~200である。)
【請求項6】
前記(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤が、少なくとも1つの窒素原子に下記一般式(5)で表される基が少なくとも1つ結合している化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
-(A3O)i-H (5)
(一般式(5)中、A3Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、iは、A3Oの繰り返し単位の数で、1~147の整数であり、iが2以上の場合は、複数のA3Oは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
【化1】
(一般式(6)中、R
15は、下記一般式(7)で表される基或は炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、R
16は、炭素数2~4のアルキレン基であり、A
4O、A
5O及びA
6Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、jは、下記一般式(8)で表される基の繰り返し単位の数で、1~3の整数であり、k、l及びmは、それぞれA
4O、A
5O及びA
6Oの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~147の整数であり、kが2以上の場合は、複数のA
4Oは同一でも異なっていてもよく、lが2以上の場合は、複数のA
5Oは同一でも異なっていてもよく、mが2以上の場合は、複数のA
6Oは同一でも異なっていてもよく、R
15が下記一般式(7)で表される基の場合、k+l+m+nは4~200であり、R
15が炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基の場合、k+l+mは3~200である。)
-(A
7O)
n-H (7)
(一般式(7)中、A
7Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、nは、A
7Oの繰り返し単位の数で、1~147の整数であり、nが2以上の場合は、複数のA
7Oは同一でも異なっていてもよい。)
【化2】
(一般式(8)中、R
16、A
6O及びmはそれぞれ前記一般式(6)中のものと同義である。)
【請求項8】
前記(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤が、下記一般式(9)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
R17-X―SO3Y (9)
(一般式(9)中、R17は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は炭素数8~22の1価の芳香族炭化水素基であり、Xは、酸素原子又は下記一般式(10)で表される基であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基である。)
-(A8O)p- (10)
(一般式(10)中、A8Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、pは、A8Oの繰り返し単位の数で、0~10の整数であり、pが2以上の場合は、複数のA8Oは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が、下記一般式(11)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
【化3】
(一般式(11)中、R
18は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、R
19は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数2~22の直鎖状又は分岐状の不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(12)で表される基であり、R
20は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(13)で表される基であり、R
21は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、ベンジル基或はヒドロキシエチル基であり、T
q-は、対イオンであり、qは、1~3の整数である。)
-(A
9O)
r-H (12)
(一般式(12)中、A
9Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、rは、A
9Oの繰り返し単位の数で、1~5の整数であり、rが2以上の場合は、複数のA
9Oは同一でも異なっていてもよい。)
-(A
10O)
s-H (13)
(一般式(13)中、A
10Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、sは、A
10Oの繰り返し単位の数で、1~5の整数であり、sが2以上の場合は、複数のA
10Oは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤であることを特徴とする請求項1に記載の消泡剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製紙パルプ工業、塗料工業、繊維工業、合成樹脂工業、樹脂エマルジョン工業、セメント・コンクリート工業、食品工業及び発酵工業等の製造工程や、屎尿処理及び廃水処理等の処理工程においては、発泡障害のために生産性、処理能力の低下が問題になっている。特に近年は、前記の工業分野の製造・処理工程に分散剤、脱墨剤、サイズ剤、及びラテックス等の発泡の原因になる物質が多く用いられる傾向にあり、従来以上に発泡が問題になっている。このような発泡を防止するため、従来から様々な消泡剤が提案されており、例えば、一般的には、高級アルコール系エマルション消泡剤、又はシリコーン系消泡剤が使用されている。
【0003】
特開2003-71207号公報(特許文献1)には、高級アルコール系エマルション消泡剤において、ウエランガム及び/又は構成単糖がモル比でフコース:グルコース:グルクロン酸:ラムノース=1~2:1~4:1~2:1~2である多糖類と、ザンサンガムと、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの中から選ばれた少なくとも1種、を含むことを特徴とするエマルション安定性が改善された高級アルコール系エマルション消泡剤が開示されている。しかしながら、高級アルコール系エマルション消泡剤においてはエマルション相分離、増粘・ゲル化が発生し十分な消泡効果が発揮されないという問題があった。
【0004】
また、特開2001-212403号公報(特許文献2)には、消泡性成分としてシリコーン系ブロック交互共重合体、微粉末無機化合物、乳化剤および水を含有する水中油型エマルジョンのシリコーン系消泡剤が開示されている。しかしながら、消泡性成分としてシリコーン系ブロック交互共重合体は、分散性が悪く、消泡効果が低下する恐れがあり、また、製紙パルプ工業に使用した場合、シリコーン系ブロック交互共重合体が部分的に小滴となり小斑点となる、いわゆるオイルスポットによって、得られる紙の品質を著しく損なう恐れがあり、そのことによる印刷適正が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-71207号公報
【特許文献2】特開2001-212403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、発泡液に添加した場合に、初期消泡性と消泡持続性との双方の消泡性に優れており、かつ、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として使用した場合に、前記消泡性に加えて、得られる紙パルプのサイズ度の低下を十分に抑制することが可能な消泡剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、レシチンと、特定の界面活性剤とを用いることによって、前記目的を達成することが可能な消泡剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0009】
[1](A)レシチンと、(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤、(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤、及び(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤とを含有する、消泡剤組成物。
【0010】
[2](F)ポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールと脂肪酸とのエステル化物のうちの少なくとも一方のポリプロピレングリコール系化合物を更に含有する、[1]に記載の消泡剤組成物。
【0011】
[3]前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の消泡剤組成物。
【0012】
R1-(A1O)a-R2 (1)
(一般式(1)中、R1は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或はR3O-であり、R3は、水素原子又はR4C(=O)-であり、R2は、水素原子又は-C(=O)R5であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、aは、A1Oの繰り返し単位の数で、1~200の整数であり、aが2以上の場合は、複数のA1Oは同一でも異なっていてもよい。)。
【0013】
[4]前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(2)で表される化合物である、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0014】
R6-(A2O)b-H (2)
(一般式(2)中、R6は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、A2Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、bは、A2Oの繰り返し単位の数で、1~200の整数であり、bが2以上の場合は、複数のA2Oは同一でも異なっていてもよい。)。
【0015】
[5]前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物である、[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0016】
R7O-(EO)c(PO)d(EO)e-R8 (3)
(一般式(3)中、R7は、水素原子又はR9C(=O)-であり、R8は、水素原子又は-C(=O)R10であり、R9及びR10は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、c及びeは、EOの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~199の整数であり、dは、POの繰り返し単位の数で、0~198の整数であり、c+d+eは、2~200である。)
【0017】
R11O-(PO)f(EO)g(PO)h-R12 (4)
(一般式(4)中、R11は、水素原子又はR13C(=O)-であり、R12は、水素原子又は-C(=O)R14であり、R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、f及びhは、POの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~198の整数であり、gは、EOの繰り返し単位の数で、1~198の整数であり、f+g+hは、3~200である。)。
【0018】
[6]前記(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤が、少なくとも1つの窒素原子に下記一般式(5)で表される基が少なくとも1つ結合している化合物である、[1]~[5]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0019】
-(A3O)i-H (5)
(一般式(5)中、A3Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、iは、A3Oの繰り返し単位の数で、1~147の整数であり、iが2以上の場合は、複数のA3Oは同一でも異なっていてもよい。)。
【0020】
[7]前記(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤が、下記一般式(6)で表される化合物である、[1]~[6]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0021】
【0022】
(一般式(6)中、R15は、下記一般式(7)で表される基或は炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、R16は、炭素数2~4のアルキレン基であり、A4O、A5O及びA6Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、jは、下記一般式(8)で表される基の繰り返し単位の数で、1~3の整数であり、k、l及びmは、それぞれA4O、A5O及びA6Oの繰り返し単位の数で、それぞれ独立に、1~147の整数であり、kが2以上の場合は、複数のA4Oは同一でも異なっていてもよく、lが2以上の場合は、複数のA5Oは同一でも異なっていてもよく、mが2以上の場合は、複数のA6Oは同一でも異なっていてもよく、R15が下記一般式(7)で表される基の場合、k+l+m+nは4~200であり、R15が炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基の場合、k+l+mは3~200である。)
【0023】
-(A7O)n-H (7)
(一般式(7)中、A7Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、nは、A7Oの繰り返し単位の数で、1~147の整数であり、nが2以上の場合は、複数のA7Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0024】
【0025】
(一般式(8)中、R16、A6O及びmはそれぞれ前記一般式(6)中のものと同義である。)。
【0026】
[8]前記(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤が、下記一般式(9)で表される化合物である、[1]~[7]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0027】
R17-X―SO3Y (9)
(一般式(9)中、R17は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は炭素数8~22の1価の芳香族炭化水素基であり、Xは、酸素原子又は下記一般式(10)で表される基であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基である。)
【0028】
-(A8O)p- (10)
(一般式(10)中、A8Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、pは、A8Oの繰り返し単位の数で、0~10の整数であり、pが2以上の場合は、複数のA8Oは同一でも異なっていてもよい。)。
【0029】
[9]前記(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が、下記一般式(11)で表される化合物である、[1]~[8]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【0030】
【0031】
(一般式(11)中、R18は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基であり、R19は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数2~22の直鎖状又は分岐状の不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(12)で表される基であり、R20は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(13)で表される基であり、R21は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、ベンジル基或はヒドロキシエチル基であり、Tq-は、対イオンであり、qは、1~3の整数である。)
【0032】
-(A9O)r-H (12)
(一般式(12)中、A9Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、rは、A9Oの繰り返し単位の数で、1~5の整数であり、rが2以上の場合は、複数のA9Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0033】
-(A10O)s-H (13)
(一般式(13)中、A10Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、sは、A10Oの繰り返し単位の数で、1~5の整数であり、sが2以上の場合は、複数のA10Oは同一でも異なっていてもよい。)。
【0034】
[10]紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤である、[1]~[9]のうちのいずれか1項に記載の消泡剤組成物。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、発泡液に添加した場合に、初期消泡性と消泡持続性との双方の消泡性に優れており、かつ、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として使用した場合に、前記消泡性に加えて、得られる紙パルプのサイズ度の低下を十分に抑制することが可能な消泡剤組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明及びその適用物を制限することを意図するものではない。
【0037】
本発明の消泡剤組成物は、(A)レシチン(以下、「(A)成分」ともいう)と、(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤(以下、「(B)成分」ともいう)、(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤(以下、「(C)成分」ともいう)、(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤(以下、「(D)成分」ともいう)、及び(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(以下、「(E)成分」ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤とを含有するものである。また、本発明の消泡剤組成物は、(F)ポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールと脂肪酸とのエステル化物のうちの少なくとも一方のポリプロピレングリコール系化合物(以下、「(F)成分」ともいう)を更に含んでいることが好ましい。
【0038】
(A)レシチン
本発明に用いられる(A)レシチンは、下記式(A)で表される化合物である。
【0039】
【0040】
このような(A)レシチンとしては、植物や動物、微生物等の生体から抽出され、必要に応じて精製したものを使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。これらの中でも、動物由来のレシチン、植物由来のレシチンが好ましく、動物由来のレシチンとしては、卵黄や乳等由来のレシチンが挙げられ、植物由来のレシチンとしては、大豆、菜種、小麦、米、コーン、綿実、紅花、アマニ、ゴマ、ひまわり種子等由来のレシチンが挙げられる。また、本発明においては、これらのレシチンの水素添加物(水素添加レシチン)、酵素分解物(酵素分解レシチン)、分別物(分別レシチン)等を(A)成分として使用することもできる。
【0041】
(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤
本発明に用いられる(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤としては特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
R1-(A1O)a-R2 (1)
前記一般式(1)中、R1は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或はR3O-であり、R3は、水素原子又はR4C(=O)-であり、R2は、水素原子又は-C(=O)R5であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。
【0042】
A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、「EO」と略すこともある)単独、又はエチレンオキシ基(EO)/プロピレンオキシ基(以下、「PO」と略すこともある)の混合構造がより好ましく、EO/PO混合構造が更に好ましい。また、EO/POのモル比としては、1/99~100/0が好ましい。
【0043】
aは、A1Oの繰り返し単位の数で、1~200の整数であり、aが2以上の場合は、複数のA1Oは同一でも異なっていてもよい。
【0044】
このような(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有するアルコール型非イオン界面活性剤、プルロニック(登録商標)型界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル化物が挙げられる。
【0045】
(アルコール型非イオン界面活性剤)
前記ポリオキシアルキレン基を有するアルコール型非イオン界面活性剤(以下、単に「アルコール型非イオン界面活性剤」ともいう)としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
R6-(A2O)b-H (2)
前記一般式(2)中、R6は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。また、サイズ度の低下を抑制するという観点から、前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては12~22が好ましく、14~22がより好ましい。
【0046】
A2Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、「EO」と略すこともある)単独、又はエチレンオキシ基(EO)/プロピレンオキシ基(以下、「PO」と略すこともある)の混合構造がより好ましく、EO/PO混合構造が更に好ましい。また、EO/POのモル比としては、1/99~100/0が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~80/20が更に好ましい。
【0047】
bは、A2Oの繰り返し単位の数であり、1~200の整数であり、10~80の整数が好ましく、20~70の整数がより好ましい。また、bが2以上の場合は、複数のA2Oは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
(プルロニック(登録商標)型界面活性剤、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル化物)
前記プルロニック(登録商標)型界面活性剤、前記ポリエチレングリコール、前記ポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル化物としては、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物が挙げられる。
R7O-(EO)c(PO)d(EO)e-R8 (3)
前記一般式(3)中、R7は、水素原子又はR9C(=O)-であり、R8は、水素原子又は-C(=O)R10であり、R9及びR10は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。c及びeは、EOの繰り返し単位の数であり、それぞれ独立に、1~199の整数であり、dは、POの繰り返し単位の数であり、0~198の整数であり、c+d+eは、2~200である。
R11O-(PO)f(EO)g(PO)h-R12 (4)
前記一般式(4)中、R11は、水素原子又はR13C(=O)-であり、R12は、水素原子又は-C(=O)R14であり、R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数9~21の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。EOは、エチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。f及びhは、POの繰り返し単位の数であり、それぞれ独立に、1~198の整数であり、gは、EOの繰り返し単位の数であり、1~198の整数であり、f+g+hは、3~200である。
【0049】
前記一般式(3)において、R7及びR8が水素原子の場合、c+d+eとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、15~80が好ましく、30~70がより好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~99/1が好ましく、10/90~40/60がより好ましい。
【0050】
また、前記一般式(3)において、R7がR9C(=O)-であり、R8が-C(=O)R10である場合、R9及びR10の炭素数としては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、それぞれ独立に、11~21が好ましく、13~21がより好ましい。c+d+eとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、10~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~100/0が好ましく、10/90~100/0がより好ましい。また、前記一般式(3)で表される化合物のHLBとしては、0~14が好ましい。
【0051】
さらに、前記一般式(3)において、R7がR9C(=O)-であり、R8が水素原子の場合、R9の炭素数としては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、11~21が好ましく、13~21がより好ましい。c+d+eとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、10~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~100/0が好ましく、10/90~100/0がより好ましい。また、前記一般式(3)で表される化合物のHLBとしては、0~14が好ましい。
【0052】
このような前記一般式(3)で表される化合物のうち、消泡性の観点から、前記一般式(3)において、R7がR9C(=O)-であり、R8が水素原子である化合物、R7がR9C(=O)-であり、R8が-C(=O)R10である化合物が好ましく、R7がR9C(=O)-であり、R8が-C(=O)R10である化合物がより好ましい。
【0053】
前記一般式(4)において、R11及びR12が水素原子の場合、f+g+hとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、15~80が好ましく、30~70がより好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~99/1が好ましく、10/90~40/60がより好ましい。
【0054】
また、前記一般式(4)において、R11がR13C(=O)-であり、R12が-C(=O)R14である場合、R13及びR14の炭素数としては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、それぞれ独立に、11~21が好ましく、13~21がより好ましい。f+g+hとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、10~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~100/0が好ましく、10/90~100/0がより好ましい。また、前記一般式(4)で表される化合物のHLBとしては、0~14が好ましい。
【0055】
さらに、前記一般式(4)において、R11がR13C(=O)-であり、R12が水素原子の場合、R13の炭素数としては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、11~21が好ましく、13~21がより好ましい。f+g+hとしては、サイズ度の低下を抑制するという観点から、10~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~100/0が好ましく、10/90~100/0がより好ましい。また、前記一般式(3)で表される化合物のHLBとしては、0~14が好ましい。
【0056】
このような前記一般式(4)で表される化合物のうち、消泡性の観点から、前記一般式(4)において、R11がR13C(=O)-であり、R12が水素原子である化合物、R11がR13C(=O)-であり、R12が-C(=O)R14である化合物が好ましく、R11がR13C(=O)-であり、R12が-C(=O)R14である化合物がより好ましい。
【0057】
(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤
本発明に用いられる(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤としては特に制限はないが、例えば、少なくとも1つの窒素原子に下記一般式(5)で表される基が少なくとも1つ結合している化合物が挙げられる。
-(A3O)i-H (5)
前記一般式(5)中、A3Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、EO単独、又はEO/POの混合構造がより好ましく、EO/PO混合構造が更に好ましい。また、EO/POのモル比としては、1/99~100/0が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~80/20が更に好ましい。
【0058】
iは、A3Oの繰り返し単位の数であり、1~147の整数であり、iが2以上の場合は、複数のA3Oは同一でも異なっていてもよい。
【0059】
このような少なくとも1つの窒素原子に前記一般式(5)で表される基が少なくとも1つ結合している化合物の中でも、消泡性の観点から、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0060】
【0061】
前記一般式(6)中、R15は、下記一般式(7)で表される基或は炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。
-(A7O)n-H (7)
前記一般式(7)中、A7Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、「EO」と略すこともある)単独、又はエチレンオキシ基(EO)/プロピレンオキシ基(以下、「PO」と略すこともある)の混合構造がより好ましく、EO/PO混合構造が更に好ましい。
【0062】
前記一般式(7)中、nは、A7Oの繰り返し単位の数であり、1~147の整数であり、nが2以上の場合は、複数のA7Oは同一でも異なっていてもよい。
【0063】
前記一般式(6)中、R16は、炭素数2~4のアルキレン基であり、炭素数2~3のアルキレン基が好ましい。A4O、A5O及びA6Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、それぞれ独立に、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、「EO」と略すこともある)単独、又はエチレンオキシ基(EO)/プロピレンオキシ基(以下、「PO」と略すこともある)の混合構造がより好ましく、EO/PO混合構造が更に好ましい。
【0064】
前記一般式(6)中、jは、下記一般式(8)で表される基の繰り返し単位の数で、1~3の整数である。
【0065】
【0066】
前記一般式(8)中、R16、A6O及びmはそれぞれ前記一般式(6)中のものと同義である。
【0067】
前記一般式(6)中、k、l及びmは、それぞれA4O、A5O及びA6Oの繰り返し単位の数であり、それぞれ独立に、1~147の整数であり、kが2以上の場合は、複数のA4Oは同一でも異なっていてもよく、lが2以上の場合は、複数のA5Oは同一でも異なっていてもよく、mが2以上の場合は、複数のA6Oは同一でも異なっていてもよい。
【0068】
前記一般式(6)において、R15が前記一般式(7)で表される基の場合、k+l+m+nは4~200であり、サイズ度の低下を抑制するという観点から、30~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~99/1が好ましく、10/90~40/60がより好ましい。また、前記一般式(6)で表される化合物のHLBとしては、0~7が好ましい。
【0069】
前記一般式(6)において、R15が炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基の場合、k+l+mは3~200であり、サイズ度の低下を抑制するという観点から、3~90が好ましい。EO/POのモル比としては、消泡性の観点から、1/99~100/0が好ましく、10/90~80/20がより好ましい。また、前記一般式(6)で表される化合物のHLBとしては、0~10が好ましい。
【0070】
このような前記一般式(6)で表される化合物のうち、消泡性の観点から、前記一般式(6)において、R15が前記一般式(7)で表される基である化合物が好ましい。
【0071】
なお、前記「HLB」とは、Hydrophilic-Lipophilic Balanceの略語であり、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示し、親水性親油性バランスを表すものである。前記(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤及び前記(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤のHLBは、以下のグリフィン(Griffin)の式により求められる。なお、プロピレンオキシ基は疎水基とする。
【0072】
【0073】
(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤
本発明に用いられる(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤としては特に制限はないが、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
R17-X―SO3Y (9)
前記一般式(9)中、R17は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は炭素数8~22の1価の芳香族炭化水素基であり、Xは、酸素原子又は下記一般式(10)で表される基である。
-(A8O)p- (10)
前記一般式(10)中、A8Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、消泡性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、「EO」と略すこともある)単独、又はエチレンオキシ基(EO)/プロピレンオキシ基(以下、「PO」と略すこともある)の混合構造がより好ましい。pは、A8Oの繰り返し単位の数であり、0~10の整数であり、pが2以上の場合は、複数のA8Oは同一でも異なっていてもよい。
【0074】
前記一般式(9)中、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基であり、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、有機塩基としては、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸等が挙げられる。
【0075】
前記一般式(9)において、Xが酸素原子の場合、R17の炭素数としては、消泡性の観点から、12~22が好ましい。Xが前記一般式(10)で表される基であり、前記一般式(10)中のpが0の場合、R17の炭素数としては、消泡性の観点から、12~22が好ましく、14~12がより好ましい。Xが前記一般式(10)で表される基であり、前記一般式(10)中のpが1~10(好ましくは1~5)の場合、R17の炭素数としては、消泡性の観点から、12~22が好ましい。
【0076】
(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤
本発明に用いられる(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては特に制限はないが、例えば、下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【0078】
前記一般式(11)中、R18は、炭素数8~22の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の1価の脂肪族炭化水素基である。
【0079】
R19は、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数2~22の直鎖状又は分岐状の不飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(12)で表される基である。
-(A9O)r-H (12)
前記一般式(12)中、A9Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、rは、A9Oの繰り返し単位の数であり、1~5の整数である。また、rが2以上の場合は、複数のA9Oは同一でも異なっていてもよい。
【0080】
R20は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基或は下記一般式(13)で表される基である。
-(A10O)s-H (13)
前記一般式(13)中、A10Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、sは、A10Oの繰り返し単位の数であり、1~5の整数である。また、sが2以上の場合は、複数のA10Oは同一でも異なっていてもよい。
【0081】
R21は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状の飽和の1価の脂肪族炭化水素基、ベンジル基或はヒドロキシエチル基である。
【0082】
Tq-は、対イオンであり、無機アニオン、有機アニオンであれば特に制限はないが、例えば、無機アニオンとしては、硫酸イオン;硝酸イオン;リン酸イオン;塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオン等が挙げられ、有機アニオンとしては、有機カルボン酸イオン、リン酸エステルイオン、アルキルカーボネートイオン、アニオン性ポリマーが挙げられる。
【0083】
(F)ポリプロピレングリコール系化合物
本発明に用いられる(F)ポリプロピレングリコール系化合物は、ポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールと脂肪酸とのエステル化物のうちの少なくとも一方である。このような(F)ポリプロピレングリコール系化合物の分子量としては、消泡性の観点から、500~5000が好ましい。
【0084】
〔消泡剤組成物〕
本発明の消泡剤組成物は、前記(A)成分と、前記(B)成分~前記(E)成分からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するものであるが、保管安定性の観点から、前記(A)成分と、前記(B)成分及び前記(C)成分からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するものが好ましく、印刷品質を著しく損なうオイルスポットの発生を抑制するという観点から、前記(A)成分と、前記アルコール型非イオン界面活性剤以外の(B)成分(例えば、プルロニック(登録商標)型界面活性剤、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル化物)及び前記(C)成分からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するものがより好ましく、前記(A)成分と前記アルコール型非イオン界面活性剤以外の(B)成分(例えば、プルロニック(登録商標)型界面活性剤、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル化物)とを含有するものが更に好ましい。
【0085】
本発明の消泡剤組成物において、前記(A)成分の含有量と、前記(B)成分~前記(E)成分の合計含有量の質量比〔(A)/(B)~(E)〕としては、消泡性の観点から、1/99~99/1が好ましく、50/50~99/1がより好ましい。
【0086】
また、本発明の消泡剤組成物が、前記(F)成分を含む場合、前記(A)成分及び前記(B)成分~前記(E)成分の合計含有量と前記(F)成分の含有量の質量比〔(A)~(E)/(F)〕としては、消泡性とサイズ度低下の抑制の観点から、99/1~1/99が好ましく、90/10~10/90がより好ましい。
【0087】
本発明の消泡剤組成物は、そのままの状態で使用してもよいが、水や有機溶媒を配合して、溶解、乳化又は分散させた状態で使用することができる。前記有機溶媒としては特に制限はないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、等が挙げられる。
【0088】
また、本発明の消泡剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、消泡剤の技術分野で、消泡剤組成物に配合することが知られている他の成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、防腐剤、消臭剤、芳香剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
また、本発明の消泡剤組成物は、泡の種類に係わらず優れた消泡性を示すことから、ほとんどの業種で発生する泡の消泡に使用することが可能である。例えば、紙パルプ工業、塗料工業、繊維工業、合成樹脂エマルジョン工業、セメント・コンクリート工業、食品工業、屎尿・廃水処理等の水を多量に使用する製造処理工程に用いることができる。このような用途の中でも、本発明の消泡剤組成物で処理して得られた紙パルプにおいてサイズ度の低下が十分に抑制されることから、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として用いることが特に好ましい。
【0090】
本発明の消泡剤組成物の具体的な使用方法は特に制限されないが、例えば、発泡箇所または発泡箇所の上流に添加すればよく、定量ポンプ等で間欠添加または連続添加して使用することができる。その際、本発明の消泡剤組成物は、原液で使用しても希釈してもよく、消泡に際して適宜決定される。
【0091】
また、本発明の消泡剤組成物の添加量も特に制限されないが、消泡性とコストの観点から、発泡性水溶液を基準に、好ましくは0.00001~1.0質量%であり、より好ましくは0.0001~0.1質量%であり、更に好ましくは0.0001~0.01質量%である。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した化合物を以下に示す。以下の記載において、EO及びPOは、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、それらの数字は付加モル数を示す。
【0093】
〔化合物A〕
レシチン(試薬名:レシチン(大豆由来)、東京化成工業株式会社製)。
【0094】
〔化合物B1~B14〕
前記一般式(2)で表される化合物として、以下の表1に示す構造を有するものをそれぞれ合成した。
R6-(A2O)b-H (2)
【0095】
【0096】
(合成例B1)
耐熱反応容器に、オクタデシルアルコール100gと水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシド33gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成した。次に、プロピレンオキシド129gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間の熟成を行うことで化合物B1を得た。
【0097】
(合成例B2)
導入したエチレンオキシドを49g、プロピレンオキシドを193gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B2を得た。
【0098】
(合成例B3)
導入したエチレンオキシドを81g、プロピレンオキシドを322gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B3を得た。
【0099】
(合成例B4)
オクタデシルアルコールをオクチルアルコールに変更し、導入したエチレンオキシドを338g、プロピレンオキシドを1338gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B4を得た。
【0100】
(合成例B5)
オクタデシルアルコールをドデシルアルコールに変更し、導入したエチレンオキシドを237g、プロピレンオキシドを935gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B5を得た。
【0101】
(合成例B6)
導入したエチレンオキシドを163g、プロピレンオキシドを644gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B6を得た。
【0102】
(合成例B7)
導入したエチレンオキシドを489g、プロピレンオキシドを215gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B7を得た。
【0103】
(合成例B8)
導入したエチレンオキシドを244g、プロピレンオキシドを967gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B8を得た。
【0104】
(合成例B9)
導入したエチレンオキシドを81g、プロピレンオキシドを752gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B9を得た。
【0105】
(合成例B10)
導入したエチレンオキシドを49g、プロピレンオキシドを795gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B10を得た。
【0106】
(合成例B11)
導入したエチレンオキシドを570g、プロピレンオキシドを107gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B11を得た。
【0107】
(合成例B12)
導入したエチレンオキシドを603g、プロピレンオキシドを64gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B12を得た。
【0108】
(合成例B13)
導入したエチレンオキシドを326g、プロピレンオキシドを1289gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B13を得た。
【0109】
(合成例B14)
導入したエチレンオキシドを407g、プロピレンオキシドを1611gに変更した以外は、合成例B1と同様にして化合物B14を得た。
【0110】
〔化合物B15~B37〕
前記一般式(3)で表される化合物として、以下の表2に示す構造を有するものをそれぞれ合成した。
R7O-(EO)c(PO)d(EO)e-R8 (3)
【0111】
【0112】
(合成例B15)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド424gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド72gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことで化合物B15を得た。
【0113】
(合成例B16)
導入したプロピレンオキシドを610g、エチレンオキシドを92gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B16を得た。
【0114】
(合成例B17)
導入したプロピレンオキシドを1208g、エチレンオキシドを82gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B17を得た。
【0115】
(合成例B18)
導入したプロピレンオキシドを1208g、エチレンオキシドを158gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B18を得た。
【0116】
(合成例B19)
導入したプロピレンオキシドを1208g、エチレンオキシドを341gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B19を得た。
【0117】
(合成例B20)
導入したプロピレンオキシドを1208g、エチレンオキシドを883gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B20を得た。
【0118】
(合成例B21)
導入したプロピレンオキシドを2324g、エチレンオキシドを282gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B21を得た。
【0119】
(合成例B22)
導入したプロピレンオキシドを2324g、エチレンオキシドを621gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B22を得た。
【0120】
(合成例B23)
導入したプロピレンオキシドを2324g、エチレンオキシドを1632gに変更した以外は、合成例B15と同様にして化合物B23を得た。
【0121】
(合成例B24)
反応容器に、分子量400のポリエチレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸を71g当量を投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B24を得た。
【0122】
(合成例B25)
オクタデカ-9-エン酸を142gに変更した以外は、合成例B24と同様にして化合物B25を得た。
【0123】
(合成例B26)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド303gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド89gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことでポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを得た。反応容器に、得られたポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸86gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B26を得た。
【0124】
(合成例B27)
分子量400のポリエチレングリコールを分子量600のポリエチレングリコールに変更し、オクタデカ-9-エン酸を47gに変更した以外は、合成例B24と同様にして化合物B27を得た。
【0125】
(合成例B28)
オクタデカ-9-エン酸をデカン酸57gに変更した以外は、合成例B27と同様にして化合物B28を得た。
【0126】
(合成例B29)
オクタデカ-9-エン酸をドデカン酸67gに変更した以外は、合成例B27と同様にして化合物B29を得た。
【0127】
(合成例B30)
オクタデカ-9-エン酸を94gに変更した以外は、合成例B27と同様にして化合物B30を得た。
【0128】
(合成例B31)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド571gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した後。次に、エチレンオキシド985gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことでポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを得た。反応容器に、得られたポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸25gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B31を得た。
【0129】
(合成例B32)
分子量400のポリエチレングリコールを分子量3000のポリエチレングリコールに変更し、オクタデカ-9-エン酸を19gに変更した以外は、合成例B25と同様にして化合物B32を得た。
【0130】
(合成例B33)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド2736gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド148gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことでポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを得た。反応容器に、得られたポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸14gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B33を得た。
【0131】
(合成例B34)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド2588gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド299gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことでポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを得た。反応容器に、得られたポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸14gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B34を得た。
【0132】
(合成例B35)
耐熱反応容器に、ジプロピレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド1108gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド1776gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことでポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを得た。反応容器に、得られたポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール100gとオクタデカ-9-エン酸14gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物B35を得た。
【0133】
(合成例B36)
分子量400のポリエチレングリコールを分子量4000のポリエチレングリコールに変更し、オクタデカ-9-エン酸を7gに変更した以外は、合成例B25と同様にして化合物B36を得た。
【0134】
(合成例B37)
オクタデカ-9-エン酸を14gに変更した変更した以外は、合成例B36と同様にして化合物B37を得た。
【0135】
〔化合物B38〕
前記一般式(4)で表される化合物として、以下の表3に示す構造を有するものを合成した。
R11O-(PO)f(EO)g(PO)h-R12 (4)
【0136】
【0137】
(合成例B38)
耐熱反応容器に、ジエチレングリコール100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシド452gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成した。次に、プロピレンオキシド2216gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成を行うことで化合物B38を得た。
【0138】
〔化合物C1~C18〕
前記一般式(6)で表される化合物として、以下の表4及び表5に示す構造を有するものをそれぞれ合成した。
【0139】
【0140】
(R15は、炭素数8~22の炭化水素基(表4)又は-(A7O)n-H(表5)である。)
【0141】
【0142】
【0143】
(合成例C1)
耐熱反応容器に、オクタデシルプロピレンジアミン100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシド40gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことで化合物C1を得た。
【0144】
(合成例C2)
耐熱反応容器に、オクタデシルプロピレンジアミン100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシド404gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成した。次に、プロピレンオキシド178gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成を行うことで化合物C2を得た。
【0145】
(合成例C3)
オクタデシルプロピレンジアミンをオクチルプロピレンジアミンに変更し、導入したエチレンオキシドを236g、プロピレンオキシドを1027gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C3を得た。
他はC2合成例と同様に操作した。
【0146】
(合成例C4)
オクタデシルプロピレンジアミンをドデシルプロピレンジアミンに変更し、導入したエチレンオキシドを182g、プロピレンオキシドを790gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C4を得た。
【0147】
(合成例C5)
導入したエチレンオキシドを135g、プロピレンオキシドを590gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C5を得た。
【0148】
(合成例C6)
導入したエチレンオキシドを202g、プロピレンオキシドを888gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C6を得た。
【0149】
(合成例C7)
導入したエチレンオキシドを404g、プロピレンオキシドを888gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C7を得た。
【0150】
(合成例C8)
導入したエチレンオキシドを674g、プロピレンオキシドを888gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C8を得た。
【0151】
(合成例C9)
導入したエチレンオキシドを1212g、プロピレンオキシドを888gに変更した以外は、合成例C2と同様にして化合物C9を得た。
【0152】
(合成例C10)
耐熱反応容器に、アデカカーポールMD-100(株式会社ADEKA製)100g、水酸化カリウム0.6gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、プロピレンオキシド258gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成した。次に、エチレンオキシド45gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成を行うことで化合物C10を得た。
【0153】
(合成例C11)
導入したプロピレンオキシドを258g、エチレンオキシドを151gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C11を得た。
【0154】
(合成例C12)
導入したプロピレンオキシドを377g、エチレンオキシドを45gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C12を得た。
【0155】
(合成例C13)
導入したプロピレンオキシドを536g、エチレンオキシドを75gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C13を得た。
【0156】
(合成例C14)
導入したプロピレンオキシドを536g、エチレンオキシドを271gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C14を得た。
【0157】
(合成例C15)
導入したプロピレンオキシドを775g、エチレンオキシドを90gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C15を得た。
【0158】
(合成例C16)
導入したプロピレンオキシドを874g、エチレンオキシドを241gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C16を得た。
【0159】
(合成例C17)
導入したプロピレンオキシドを953g、エチレンオキシドを693gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C17を得た。
【0160】
(合成例C18)
導入したプロピレンオキシドを1867g、エチレンオキシドを196gに変更した以外は、合成例C10と同様にして化合物C18を得た。
【0161】
〔化合物D1~D8〕
前記一般式(9)で表される化合物として、以下の表6に示す構造を有するものをそれぞれ合成した。
R17-X―SO3Y (9)
(Xは、-(A8O)p-である。)
【0162】
【0163】
(合成例D1)
耐熱反応容器に、ドデシルアルコール100g、水酸化カリウム0.2gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシドを487gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間の熟成を行うことで反応物を得た。反応容器に、得られた反応物を100g投入し、窒素通入しながら110℃で脱水した後、120~130℃に加熱した。ここに、スルファミン酸を35g導入し3時間反応を行うことで化合物D1を得た。
【0164】
(合成例D2)
導入したエチレンオキシドを71g、スルファミン酸を31gに変更した以外は、合成例D1と同様にして化合物D2を得た。
【0165】
(合成例D3)
ドデシルアルコールをオクタデシルアルコールに変更し、導入したエチレンオキシドを49g、スルファミン酸を24gに変更した以外は、合成例D1と同様にして化合物D3を得た。
【0166】
(合成例D4)
耐熱反応容器に、ドデシルアルコール100g、水酸化カリウム0.2gを加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し、脱水を行った後、120~130℃に加熱した。ここに、エチレンオキシド47gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成した。次に、プロピレンオキシド62gを120~140℃で導入し、同温度にて9時間の熟成を行うことで反応物を得た。反応容器に、得られた反応物を100g投入し、窒素通入しながら110℃で脱水した後、120~130℃に加熱した。ここに、スルファミン酸を25g導入し3時間反応を行うことで化合物D4を得た。
【0167】
(合成例D5)
ドデシルアルコールをデシルアルコールに変更し、導入したエチレンオキシドを84g、スルファミン酸を33gに変更した以外は、合成例D1と同様にして化合物D5を得た。
【0168】
(合成例D6)
導入したエチレンオキシドを142g、スルファミン酸を22gに変更した以外は、合成例D1と同様にして化合物D6を得た。
【0169】
(合成例D7)
ドデシルアルコールをオクタデシルデシルアルコールに変更し、エチレンオキシドを163g、スルファミン酸を22gに変更した以外は、合成例D1と同様にして化合物D7を得た。
【0170】
(合成例D8)
テイカパワーL121(テイカ株式会社製)を水酸化ナトリウムで中和して化合物D8を得た。
【0171】
〔化合物E1~E4〕
前記一般式(11)で表される化合物として、以下の表7に示す構造を有するものをそれぞれ合成した。
【0172】
【0173】
【0174】
(合成例E1)
反応容器に、オクチルジメチルアミン100g、水181gを加えて85~95℃に加熱した。ここに、窒素通入しながら塩化ベンジル81gを滴下し、4級化反応を行うことで化合物E1を得た。
【0175】
(合成例E2)
反応容器に、ドデシルジメチルアミン100g、水159gを加えて85~95℃に加熱した。ここに、窒素通入しながら塩化ベンジル59gを滴下し、4級化反応を行うことで化合物E2を得た。
【0176】
(合成例E3)
反応容器に、オクタデカ-9-エン-ジメチルアミン100g、水143gを加えて85~95℃に加熱した。ここに、窒素通入しながら塩化ベンジル43gを滴下し、4級化反応を行うことで化合物E3を得た。
【0177】
(合成例E4)
反応容器に、ジドデシルメチルアミン100g、水135gを加えて85~95℃に加熱した。ここに、窒素通入しながら塩化ベンジル35gを滴下し、4級化反応を行うことで化合物E4を得た。
【0178】
〔化合物F1~F4〕
ポリプロピレングリコール系化合物として、以下の表8に示すポリプロピレングリコールを準備し、また、ポリプロピレングリコールと脂肪酸とのエステル化物を合成した。
【0179】
【0180】
(合成例F4)
反応容器に、アデカポリエーテルP-3000(株式会社ADEKA製)100g、オクタデシル脂肪酸18gを投入し、窒素通入しながら180℃~230℃にて約20時間反応を行うことで化合物F4を得た。
【0181】
〔ポリオキシシエチレン(13)ポリオキシプロピレン(15)グリコール大豆油脂肪酸エステル〕
(合成例)
耐熱反応容器に、大豆油100g、オクタデカ-9-エン酸9g、水酸化カリウム0.9を加えて窒素置換を行った。100℃にて減圧し1時間脱水を行った後、120~130℃に加熱したエチレンオキシド59gを120~140℃で導入し、同温度にて3時間熟成した。次に、プロピレンオキシド90gを120~140℃で導入し、同温度にて12時間熟成を行うことでポリオキシシエチレン(13)ポリオキシプロピレン(15)グリコール大豆油脂肪酸エステルを得た。
【0182】
〔その他の化合物〕
サポニン:試薬、東京化成工業株式会社製。
大豆油:大豆白絞油(S)、日清オイリオグループ株式会社製。
ひまわり油:ハイオレックヒマワリ油、横関油脂工業株式会社製。
キャデリンワックス:TOWAX-4F4、東亜化成株式会社製。
カルナバワックス:TOWAX-1F6、東亜化成株式会社製。
【0183】
<消泡性の評価>
(1)発泡試験液1の作成
ステンレス容器にイオン交換水840g及びポリビニルアルコール(PVA-117、株式会社クラレ製)100gを投入した後、加熱溶解した。カオリン60gを投入し、均一に混合した後、室温まで冷却して発泡試験液1を得た。
【0184】
(2)発泡試験液2の作成
10Lパルパー(熊谷理機工業株式会社製、パルプ離解機)にダンボール古紙500gを投入し、40℃の温水10Lを加え、10分間攪拌離解した。離解後のパルプスラリーを100メッシュの金網を用いてろ過を行い、パルプを取り除いた後、エマルジョンサイズ剤[星光PMC株式会社製「AL-120F」]を2g添加して発泡試験液2を作成した。
【0185】
(3)消泡性の評価
以下の循環落下法を用いて消泡性を評価した。
【0186】
〔装置〕
二重構造で下部がゴム栓で閉じられている円筒状のガラス製シリンダー装置(内側Φ100mm、外側Φ130mm、高さ1000mm)の内側に発泡試験液を充填し、ポンプ(メーカー:株式会社イワキ製)にて装置下部より装置上部に発泡試験液を吸い上げ、落とし循環することにより泡を発生する装置。この装置はガラス製シリンダーの外側と内側の間に温調用の熱媒を循環し、試験中も温度を一定に保つことができる。装置上部から液面の落差は600mmで、発泡試験液出口のノズル径はΦ8mmである。
【0187】
〔試験方法〕
ガラス製シリンダーの上部の管からガラス製シリンダー内の液面に循環液を落下させることで発泡を促し、液面からの泡上部までの高さを測定し、消泡性を評価した。
【0188】
〔試験条件〕
ガラス製シリンダーに発泡試験液1又は2を1L入れ、40℃に温調した。ポンプにて循環すると同時にマイクロピペット(GILSON社製、容量200μl)にて所定量の消泡剤をイオン交換水で希釈した液を添加した。次に、循環流量5L/分にて循環し、30秒後、5分後の泡高さを測定した。30秒後の泡高さが初期消泡性を表し、5分後の泡高さが消泡持続性を表す。泡の高さが低いほど消泡性が高い。
【0189】
(4)サイズ度の評価
〔試験紙の作成〕
広葉樹晒しクラフトパルプと針葉樹晒しクラフトパルプを質量比70/30に配合した混合パルプ250gに水10Lを加えたパルプスラリーをナイアガラビーター(熊谷理機工業株式会社製)で叩解する。ろ水度は、カナダ標準形ろ水度試験機(株式会社東洋精機製作所製)にて測定した値が420mlになるように調製した。
【0190】
このパルプスラリー64gをケミスターラーを用いて撹拌し、5分後にマイクロピペット(GILSON社製、容量200μl)にてエマルジョンサイズ剤[星光PMC株式会社製「AL-120F」]32μlを添加し、その5分後に硫酸バンド(硫酸アルミニウム:試薬)を用いてpHを4.7に調整し、さらにその5分後にマイクロピペット(GILSON製、容量1000μl)にて所定量の消泡剤をイオン交換水で希釈した液を添加した。その後、5分間撹拌を継続して紙料の調製を終了した。
【0191】
この紙料を、試験用角型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)を用いて坪量80g/m2に抄紙した。次いで、プレス機を用いて300kPaで5分間プレス処理を行い、さらに試験用のヤンキードライヤー(熊谷理機工業株式会社製)を用いて105℃で3分間乾燥し、試験紙を得た。
【0192】
〔サイズ度測定方法〕
JIS P 8122(JISハンドブック 紙・パルプ 2020)にしたがってサイズ度を測定した。5点測定し、その平均値(秒)から求めた。サイズ度は、紙の吸水性の強弱を表すものであり、測定時間が長いほどサイズ度が高いことを表す。
【0193】
(実施例1~77)
レシチン(化合物A)と表9~表15に示した化合物B1~B14、B15~B38、C1~C18、D1~D8、E1~E4、F1~F4を表9~表15に示した配合比で混合した消泡剤を調製した。これらの消泡剤をそれぞれ用いて、前記方法により、消泡性及びサイズ度を評価した。なお、実施例1~39、42~77の消泡性の評価においては、1mgの消泡剤をイオン交換水で100倍に希釈した液100μlを添加(発泡試験液に対する消泡剤の添加量:1ppm)し、サイズ度の評価においては、0.1gの消泡剤をイオン交換水で100倍に希釈した液640μlを添加(パルプ絶乾に対する消泡剤の添加量:400ppm)した。また、実施例40の消泡性の評価においては、1mgの消泡剤をイオン交換水で100倍に希釈した液10μlを添加(発泡試験液に対する消泡剤の添加量:0.1ppm)し、サイズ度の評価においては、0.01gの消泡剤をイオン交換水で100倍に希釈した液640μlを添加(パルプ絶乾に対する消泡剤の添加量:40ppm)した。さらに、実施例41の消泡性の評価においては、1mgの消泡剤をイオン交換水で10倍に希釈した液100μlを添加(発泡試験液に対する消泡剤の添加量:10ppm)し、サイズ度の評価においては、1gの消泡剤をイオン交換水で100倍に希釈した液640μlを添加(パルプ絶乾に対する消泡剤の添加量:4000ppm)した。得られた結果を表9~表15に示す。
【0194】
(比較例1)
消泡剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、消泡性及びサイズ度を評価した。得られた結果を表16に示す。
【0195】
(比較例2~14)
消泡剤として、表16に示した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、消泡性及びサイズ度を評価した。なお、比較例9においては、化合物B30と化合物F3とを質量比B30/F3=90/10で混合したものを消泡剤として用いた。得られた結果を表16に示す。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
表9~16に示した結果から明らかなように、(A)レシチンと、(B)ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤、(C)ポリアルキレンポリアミン型非イオン界面活性剤、(D)硫酸塩型アニオン界面活性剤、及び(E)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤とを含有する消泡剤組成物は、初期消泡性と消泡持続性との双方の消泡性に優れており、かつ、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として使用した場合に、前記消泡性に加えて、得られる紙パルプのサイズ度の低下を十分に抑制することが可能であることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、発泡液に添加した場合に、初期消泡性と消泡持続性との双方の消泡性に優れており、かつ、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として使用した場合に、前記消泡性に加えて、得られる紙パルプのサイズ度の低下を十分に抑制することが可能な消泡剤組成物を得ることが可能となる。
したがって、本発明の消泡剤組成物は、例えば、紙パルプ工業、塗料工業、繊維工業、合成樹脂エマルジョン工業、セメント・コンクリート工業、食品工業、屎尿・廃水処理等の水を多量に使用する製造処理工程等の様々な業種で発生する泡の消泡に有用であり、中でも、本発明の消泡剤組成物で処理して得られた紙パルプはサイズ度の低下が抑制されることから、紙パルプ製造工業の抄紙工程用消泡剤として特に有用なものである。