(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050926
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】原盤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20240403BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20240403BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20240403BHJP
G02B 3/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
B29C59/04 C
B29C33/42
B29C33/38
G02B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021676
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2020057913の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正尚
(57)【要約】
【課題】異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤を製造する。
【解決手段】原盤1の製造方法は、基材10の一面に第1の平均ピッチを有する微細凹凸構造23を形成する第1の形成ステップと、微細凹凸構造23が形成された基材10の一面に、第1の平均ピッチよりも大きい第2の平均ピッチを有する主凹部21または主凸部22を形成するステップであって、主凹部21または主凸部22における微細凹凸構造23の少なくとも一部の形状を維持しつつ主凹部21または主凸部22を形成する第2の形成ステップと、を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面に第1の平均ピッチを有する微細凹凸構造を形成する第1の形成ステップと、
前記微細凹凸構造が形成された前記基材の一面に、前記第1の平均ピッチよりも大きい第2の平均ピッチを有する主凹部または主凸部を形成するステップであって、前記主凹部または前記主凸部における前記微細凹凸構造の少なくとも一部の形状を維持しつつ前記主凹部または前記主凸部を形成する第2の形成ステップと、を含む原盤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の原盤の製造方法において、
前記第1の形成ステップは、
前記基材の一面に無機レジスト層を成膜する第1の成膜ステップと、
熱リソグラフィーにより、前記無機レジスト層を露光して、前記微細凹凸構造に対応する潜像を形成する第1の露光ステップと、
前記潜像が形成された無機レジスト層を現像する第1の現像ステップと、
現像後の前記無機レジスト層を第1のエッチングマスクとして前記基材をエッチングして前記微細凹凸構造を形成する第1のエッチングステップと、を含み、
前記第2の形成ステップは、
前記微細凹凸構造が形成された前記基材の一面に有機レジスト層を成膜する第2の成膜ステップと、
光リソグラフィーにより、前記有機レジスト層を露光して、前記主凹部または前記主凸部に対応する潜像を形成する第2の露光ステップと、
前記潜像が形成された有機レジスト層を現像する第2の現像ステップと、
現像後の前記有機レジスト層を第2のエッチングマスクとして前記基材をエッチングして前記主凹部または前記主凸部を形成する第2のエッチングステップと、を含む原盤の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の原盤の製造方法において、
第2のエッチングステップでは、
前記有機レジスト層のエッチングレートが、前記基材のエッチングレートよりも大きい、原盤の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の原盤の製造方法において、
前記第1の平均ピッチは、可視光の波長以下であり、
前記第2の平均ピッチは、可視光の波長より大きい、原盤の製造方法。
【請求項5】
一面に主凹部または主凸部が形成され、前記主凹部または前記主凸部に微細凹凸構造が形成された基材を備え、
前記微細凹凸構造は、第1の平均ピッチで形成され、
前記主凹部または前記主凸部は、前記第1の平均ピッチよりも大きい第2の平均ピッチで形成される、原盤。
【請求項6】
請求項5に記載の原盤の前記基材の一面に形成された凹凸構造の形状または前記凹凸構造の形状の反転形状が転写された転写物。
【請求項7】
請求項6に記載の転写物を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原盤の製造方法、原盤、転写物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細加工技術の一つとして、表面に微細なパターンが形成された平板形状、円柱形状または円筒形状の原盤を樹脂シートなどに押し当てることで、原盤上の微細なパターンを樹脂シートなどに転写するナノインプリント技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、リソグラフィーにより基材上にエッチングマスクを形成し、エッチングマスクが形成された基材のエッチングを行うことで、基材に所定のパターンの凹凸構造を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-28867号公報
【特許文献2】特開2019-111786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導光板、光拡散板、マイクロレンズアレイ、反射防止(AG:Anti-Glare)フィルムおよび細胞培養シートなど種々の物品において、異なる波長の光(例えば、可視光および可視光よりも長い波長の光)それぞれに対して優れた光学性能を有することが求められることがある。このような要求に応えるために、ナノインプリント技術により、異なる波長の光それぞれに対応する平均ピッチを有する凹凸構造を重畳して樹脂シートなどに転写することが考えられる。しかしながら、特許文献1,2に記載の技術では、略一定の形状の凹凸構造しか形成することができず、上述したような、異なる平均ピッチを有する凹凸構造を重畳して形成することは困難である。
【0006】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤の製造方法、原盤、転写物および物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る原盤の製造方法は、基材の一面に第1の平均ピッチを有する微細凹凸構造を形成する第1の形成ステップと、前記微細凹凸構造が形成された前記基材の一面に、前記第1の平均ピッチよりも大きい第2の平均ピッチを有する主凹部または主凸部を形成するステップであって、前記主凹部または前記主凸部における前記微細凹凸構造の少なくとも一部の形状を維持しつつ前記主凹部または前記主凸部を形成する第2の形成ステップと、を含む。
【0008】
一実施形態に係る原盤は、一面に主凹部または主凸部が形成され、前記主凹部または前記主凸部に微細凹凸構造が形成された基材を備え、前記微細凹凸構造は、第1の平均ピッチで形成され、前記主凹部または前記主凸部は、前記第1の平均ピッチよりも大きい第2の平均ピッチで形成される。
【0009】
一実施形態に係る転写物は、上記の原盤の前記基材の一面に形成された凹凸構造の形状または前記凹凸構造の形状の反転形状が転写される。
【0010】
一実施形態に係る物品は、上記の転写物を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤の製造方法、原盤、転写物および物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る原盤の外観を模式的に示す図である。
【
図2A】
図1に示す原盤の外周面に形成された凹凸構造の一例を示す図である。
【
図2B】
図1に示す原盤の外周面に形成された凹凸構造の他の例を示す図である。
【
図3】
図1に示す原盤を用いて転写物を製造する転写装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図1に示す原盤の製造に用いられる露光装置の構成例を示す図である。
【
図5A】比較例1に係る原盤の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5B】比較例1に係る原盤の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5C】比較例1に係る原盤の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図5D】比較例1に係る原盤の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図6A】比較例2に係る原盤の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図6B】比較例2に係る原盤の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6C】比較例2に係る原盤の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6D】比較例2に係る原盤の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その1)である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その2)である。
【
図7C】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その3)である。
【
図7D】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その4)である。
【
図7E】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その5)である。
【
図7F】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その6)である。
【
図7G】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その7)である。
【
図7H】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の一例を示す断面図(その8)である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の他の例を示す断面図(その1)である。
【
図8B】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の他の例を示す断面図(その2)である。
【
図8C】本発明の一実施形態に係る原盤の製造方法の他の例を示す断面図(その3)である。
【
図9A】実施例1に係る原盤による転写物を撮像したSEM画像図である。
【
図9B】実施例2に係る原盤による転写物を撮像したSEM画像図である。
【
図10A】比較例1に係る原盤による転写物を撮像したSEM画像図である。
【
図10B】比較例2に係る原盤による転写物を撮像したSEM画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る原盤1の外観を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る原盤1は、例えば、一面である外周面11に凹凸構造20が形成された、円柱形状の基材10により構成される。
【0016】
原盤1は、例えば、ロールツーロール(roll-to-roll)方式のインプリント技術に用いられる原盤である。ロールツーロール方式のインプリント技術では、原盤1を回転させながら、原盤1の外周面11をシート状基材などに押圧することで、原盤1の外周面11に形成された凹凸構造20をシート状基材などに転写することができる。このようなインプリント技術によれば、原盤1の外周面11に形成された凹凸構造20を転写した転写物を効率良く製造することができる。
【0017】
凹凸構造20が転写された転写物は、様々な用途に用いることができる。例えば、凹凸構造20が転写された転写物は、導光板、光拡散板、マイクロレンズアレイ、反射防止フィルムまたは細胞培養シートなどの物品に用いることができる。
【0018】
基材10は、例えば、円筒形状または円柱形状の部材である。基材10の形状は、
図1に示すように、内部に空洞を有する中空の円筒形状であってよい。基材10の形状は、内部に空洞を有さない中実の円柱形状であってもよい。基材10は、平板形状の部材であってもよい。基材10は、例えば、溶融石英ガラスまたは合成石英ガラスなどのSiO
2を主成分とするガラス材料で形成されてよい。基材10は、ステンレス鋼などの金属で形成されてよい。基材10の外周面11は、SiO
2などで被覆されていてよい。以下では、基材10は、円筒形状または円柱形状の部材であるとして説明する。
【0019】
基材10は、少なくとも外周面11がSiO2を主成分とするガラス材料で形成されることが好ましい。基材10は、全体がSiO2を主成分とするガラス材料で形成されることがより好ましい。基材10の主成分がSiO2である場合、フッ素化合物を用いたエッチングにより、基材10を容易に加工することができる。例えば、凹凸構造20に対応したパターンを形成したレジスト層をマスクパターンとして、フッ素化合物を用いたエッチングを行うことにより、基材10の外周面11に凹凸構造20を容易に形成することができる。
【0020】
基材10が円柱形状である場合、基材10は、例えば、円柱形の高さ(軸方向の長さ)が100mm以上であり、円柱形状の底面または上面の円の直径(軸方向と直交する径方向の長さ)が50mm以上300mm以下であってよい。基材10が円筒形状である場合、円筒の径方向の厚みは2mm以上50mm以下であってよい。ただし、基材10の大きさは、上記に限定されるものではない。
【0021】
凹凸構造20は、基材10の一面である外周面11に形成される。
図2Aは、凹凸構造20の一例を示す図である。
【0022】
図2Aに示すように、凹凸構造20は、基材10の一面である外周面11に形成された主凹部21と、主凹部21に形成された微細凹凸構造23とを含む。
【0023】
主凹部21は、基材10の外周面11から、基材10の径方向内側に向かって落ち込んだ構造を有する。主凹部21は、所定の平均ピッチP2(第2の平均ピッチ)を有する。主凹部21の平均ピッチP2とは、所定の範囲において隣り合う主凹部21同士の間隔(例えば、隣り合う主凹部21の中心間の距離)の統計的平均のことである。
【0024】
微細凹凸構造23は、主凹部21に形成される。より具体的には、微細凹凸構造23は、主凹部21の底面付近に形成される。微細凹凸構造23は、所定の平均ピッチP1(第1の平均ピッチ)を有する。微細凹凸構造23の平均ピッチP1とは、所定の範囲おいて隣り合う、微細凹凸構造を構成する凹凸の間隔の統計的平均のことである。
【0025】
基材10には、
図2Aに示すような、底面付近に微細凹凸構造23が形成された主凹部21が、規則的あるいは不規則に複数形成される。
【0026】
微細凹凸構造23の平均ピッチP1は、例えば、可視光の波長以下である。主凹部21の平均ピッチP2は、例えば、可視光の波長より大きい。したがって、主凹部21の平均ピッチP2は、微細凹凸構造23の平均ピッチP1よりも大きい。
【0027】
微細凹凸構造23を構成する凹部の深さH1の範囲は、例えば、50nmから300nm程度である。また、微細凹凸構造23を構成する凹部の開口の幅W1の範囲は、例えば、50nmから500nm程度である。主凹部21の深さH2の範囲は、例えば、1μmから20μm程度である。また、主凹部21の開口の幅W2の範囲は、例えば、5μmから200μm程度である。このように、微細凹凸構造23のサイズは、主凹部21のサイズと比べて、10分の1から4000分の1程度である。したがって、1つの主凹部21に対して、微細凹凸構造23を構成する凹凸を100個から1600万個の単位で形成することができる。
【0028】
図2Aにおいては、凹凸構造20として、主凹部21の底面付近に微細凹凸構造23が形成された例を示しているが、これに限られるものではない。
図2Bに示すように、凹凸構造20は、基材10の径方向外側に向かって突出した主凸部22の頂面付近に微細凹凸構造23が形成された構成であってもよい。この場合、基材10は、
図2Bに示すような、頂面付近に微細凹凸構造23が形成された主凸部22が、規則的あるいは不規則に複数形成される。
【0029】
このように、原盤1は、一面である外周面11に主凹部21または主凸部22が形成され、主凹部21または主凸部22に微細凹凸構造23が形成された基材10を備える。微細凹凸構造23は、平均ピッチP1(第1の平均ピッチ)で形成され、主凹部21または主凸部22は、微細凹凸構造23の平均ピッチP1よりも大きい平均ピッチP2(第2の平均ピッチ)で形成される。すなわち、原盤1は、外周面11に平均ピッチP2で複数の主凹部21または主凸部22が形成され、主凹部21または主凸部22それぞれに、微細凹凸構造23が平均ピッチP1(P1<P2)で形成された基材10を備える。したがって、原盤1は、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成されている。
【0030】
なお、本実施形態においては、
図2A,2Bに示すように、主凹部21あるいは主凸部22にのみ微細凹凸構造23が形成されている。すなわち、主凹部21あるいは主凸部22以外の部分には、微細凹凸構造が形成されていない。このように、主凹部21あるいは主凸部22にのみ微細凹凸構造23を形成することで、例えば、モスアイ構造のような微細凹凸構造を形成し、局所的に反射防止効果を付与することができる。また、微細凹凸構造の有無による濡れ性の違いを応用した印刷インクのパターニング(Wenzelモデル)への応用が考えられる。
【0031】
次に、本実施形態に係る原盤1の使用例を説明する。本実施形態に係る原盤1を用いることにより、原盤1の外周面11に形成された凹凸構造20の形状を転写した転写物を製造することができる。
図3は、本実施形態に係る原盤1を用いて転写物を製造する転写装置5の構成例を示す図である。
【0032】
図3に示すように、転写装置5は、原盤1と、基材供給ロール51と、巻取ロール52と、ガイドロール53,54と、ニップロール55と、剥離ロール56と、塗布装置57と、光源58とを備える。
図3に示す転写装置5は、ロールツーロール方式のインプリント装置である。
【0033】
基材供給ロール51は、例えば、シート状基材61がロール状に巻かれたロールである。巻取ロール52は、原盤1の凹凸構造20が転写された樹脂層62を積層した転写物を巻き取るロールである。ガイドロール53,54は、転写前後で、シート状基材61を搬送するロールである。ニップロール55は、樹脂層62が積層されたシート状基材61を原盤1に押圧するロールである。剥離ロール56は、凹凸構造20を樹脂層62に転写した後、樹脂層62が積層されたシート状基材61を原盤1から剥離するロールである。
【0034】
塗布装置57は、コーターなどの塗布手段を備え、光硬化性樹脂組成物をシート状基材61に塗布し、樹脂層62を形成する。塗布装置57は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーターまたはダイコーターなどであってよい。光源58は、光硬化性樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源である。光源58は、例えば、紫外線ランプなどであってよい。
【0035】
光硬化性樹脂組成物は、所定の波長の光が照射されることにより硬化する樹脂である。光硬化性樹脂組成物は、例えば、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などの紫外線硬化樹脂であってよい。光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電抑制剤または増感色素などを含んでよい。
【0036】
樹脂層62は、熱硬化性樹脂組成物で形成されてよい。この場合、転写装置5には、光源58に変えてヒータが備えられる。ヒータにより樹脂層62を加熱することで樹脂層62を硬化させ、凹凸構造20を転写することができる。熱硬化性樹脂組成物は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂または尿素樹脂などであってよい。
【0037】
図3に示す転写装置5では、基材供給ロール51からガイドロール53を介して、シート状基材61が連続的に送出される。送出されたシート状基材61に対して、塗布装置57により光硬化性樹脂組成物が塗布され、シート状基材61に樹脂層62が積層される。樹脂層62が積層されたシート状基材61は、ニップロール55により原盤1に押圧される。これにより、原盤1の外周面11に形成された凹凸構造20が樹脂層62に転写される。凹凸構造20が転写された樹脂層62は、光源58からの光の照射により硬化される。これにより、原盤1の凹凸構造20の反転構造が樹脂層62に形成される。凹凸構造20が転写されたシート状基材61は、剥離ロール56により原盤1から剥離され、ガイドロール54を介して巻取ロール52に送出され、巻き取られる。
【0038】
このような転写装置5によれば、原盤1の外周面11に形成された凹凸構造20をシート状基材61に効率的に転写することができる。なお、原盤1の凹凸構造20が転写された転写物に形成された凹凸構造をさらに転写して、原盤1と同様の凹凸構造を有する転写物を製造してもよい。すなわち、本実施形態に係る原盤1を用いて製造される転写物には、原盤1の基材10の一面である外周面11に形成された凹凸構造20の形状が転写された転写物および凹凸構造20の形状の反転形状が転写された転写物(原盤1と同様の凹凸構造を有する転写物)を含む。原盤1と同様の凹凸構造を有する転写物は、例えば、レプリカ原盤として用いることができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る原盤1の製造方法について説明する。
【0040】
本実施形態においては、リソグラフィーにより、原盤1の外周面11に成膜したレジスト層を露光して潜像を形成し、潜像の形成後に現像したレジスト層をエッチングマスクとして基材10をエッチングすることで基材10に凹凸構造20を形成する。以下では、
図4を参照して、上述したレジスト層を露光するための露光装置3の構成について説明する。
【0041】
図4に示すように、露光装置3は、レーザ光源31と、第1ミラー33と、フォトダイオード(Photo Diode:PD)34と、集光レンズ36と、コリメータレンズ38と、電気光学偏光素子(Electro-Optic Deflector:EOD)39と、第2ミラー41と、ビームエキスパンダ(Beam expander:BEX)43と、対物レンズ44とを備える。
【0042】
レーザ光源31は、制御機構47が生成した露光信号により制御される。レーザ光源31から出射されたレーザ光30は、ターンテーブル46上に載置された基材10に照射される。基材10が載置されたターンテーブル46は、露光信号と同期する回転制御信号により制御されるスピンドルモータ45により回転する。
【0043】
レーザ光源31は、基材10の外周面11に成膜されたレジスト層を露光するレーザ光30を出射する光源である。レーザ光源31は、例えば、400nm~500nmの青色光帯域に属する波長のレーザ光を出射する半導体レーザ光源であってよい。レーザ光源31から出射されたレーザ光30は、平行ビームのまま直進し、第1ミラー33で反射される。
【0044】
第1ミラー33にて反射されたレーザ光30は、集光レンズ36により電気光学偏光素子39に集光された後、コリメータレンズ38により再度、平行ビーム化される。平行ビーム化されたレーザ光30は、第2ミラー41により反射され、ビームエキスパンダ43に水平に導かれる。
【0045】
第1ミラー33は、偏光ビームスプリッタで構成され、偏光成分の一方を反射させ、偏光成分の他方を透過させる機能を有する。第1ミラー33を透過した偏光成分は、フォトダイオード34により光電変換され、光電変換された受光信号は、レーザ光源31に入力される。これにより、レーザ光源31は、入力された受光信号によるフィードバックに基づいて、レーザ光30の出力の調整などを行うことができる。
【0046】
電気光学偏光素子39は、レーザ光30の照射位置をナノメートル程度の距離で制御することが可能な素子である。露光装置3は、電気光学偏光素子39により、基材10に照射されるレーザ光30の照射位置を微調整することが可能である。
【0047】
ビームエキスパンダ43は、第2ミラー41により導かれたレーザ光30を所望のビーム形状に整形し、対物レンズ44を介して、レーザ光30を基材10の外周面11に形成されたレジスト層に照射する。
【0048】
ターンテーブル46は、基材10を支持し、スピンドルモータ45により回転されることで、基材10を回転させる。ターンテーブル46は、基材10を回転させながら、基材10の軸方向(すなわち、矢印R方向)にレーザ光30の照射位置を移動させることで、基材10の外周面11にスパイラル状に露光を行うことができる。レーザ光30の照射位置の移動は、レーザ光源31を含むレーザヘッドをスライダに沿って移動させることで行ってもよい。
【0049】
制御機構47は、レーザ光源31を制御することで、レーザ光30の出力強度および照射位置を制御する。制御機構47は、フォーマッタ48と、ドライバ49とを備える。
【0050】
ドライバ49は、フォーマッタ48が生成した露光信号に基づいてレーザ光源31によるレーザ光30の出射を制御する。例えば、ドライバ49は、露光信号の波形振幅が大きくなるほど、レーザ光30の出力強度が大きくなるようにレーザ光源31を制御してよい。ドライバ49は、露光信号の波形形状に基づいてレーザ光30の出射タイミングを制御することで、レーザ光30の照射位置を制御してよい。レーザ光30の出力強度が大きくなるほど、レジスト層に形成される潜像の大きさおよび深さを大きくすることができる。
【0051】
スピンドルモータ45は、回転制御信号に基づいて、ターンテーブル46を回転させる。スピンドルモータ45は、回転制御信号によって所定の数のパルスが入力された場合に、ターンテーブル46が1回転するように回転を制御してよい。回転制御信号は、露光信号と共通の基準クロック信号から生成されることで、露光信号と同期するように生成され得る。
【0052】
図4に示す露光装置3によれば、基材10の外周面11に、任意のパターンの潜像を高精度および高再現性で形成することが可能である。
【0053】
次に、本実施形態に係る原盤1の製造方法について説明する。本実施形態に係る原盤1の製造方法においては、熱リソグラフィーによる無機レジスト層の露光及び現像によるエッチングマスクの形成と、光リソグラフィーによる有機レジスト層の露光および現像によるエッチングマスクの形成とを組み合わせることで、上述した平均ピッチの異なる2つの凹凸パターンを重畳した形状の凹凸構造20を原盤1の外周面11に形成する。まず、比較のために、光リソグラフィーによる有機レジスト層の露光および現像によりエッチングマスクを形成する、原盤の製造方法を、
図5Aから
図5Dを参照して説明する。
【0054】
図5Aに示すように、基材10の一面である外周面11上に、有機系材料からなる有機レジスト層26が成膜される。有機レジスト層26を構成する有機系材料としては、例えば、ノボラック系レジストまたは化学増幅型レジストなどを用いることができる。上述したような有機系材料は、例えば、スピンコート法を用いることで、有機レジスト層26として成膜することができる。本実施形態においては、有機レジスト層26は、ポジ型レジストであるとする。
【0055】
次に、
図5Bに示すように、基材10の外周面11上に形成された有機レジスト層26にレーザ光30が照射され、光リソグラフィーにより有機レジスト層26が露光される。露光は
図4を参照して説明した露光装置3により行うことができる。光リソグラフィーでは、有機レジスト層26は、レーザ光30の照射により変質し、潜像26aが形成される。レーザ光30の波長は特に限定されないが、400nm~500nmの青色光帯域に属する波長であってよい。レーザ光30の制御信号を変調させることで、レーザ光30の出力強度および照射位置を制御し、有機レジスト層26に形成される潜像26aの大きさおよび位置を制御することができる。そのため、レーザ光30を出射する光源は、例えば、出力の調整が容易な、半導体レーザ光源であってよい。
【0056】
照射されるレーザ光30のスポットSP(照射範囲)の中心程、光の強度が大きいので、潜像26aの深さは、
図5Bに示すように、断面視において、レーザ光30のスポットSPの中心程、深くなる。すなわち、潜像26aは、半円状に形成される。また、有機レジスト層26はレーザ光30のスポットSPだけでなく、スポットSPの周辺部分も感光する。そのため、潜像26aの範囲は、レーザ光30のスポットSPの範囲よりも広くなる。
【0057】
次に、潜像26aが形成された有機レジスト層26を現像することで、
図5Cに示すように、有機レジスト層26に、潜像26aに対応する凹部26bが形成される。有機レジスト層26の現像には、TMAH(TetraMethylAmmonium Hydroxide:水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液などのアルカリ系溶液、あるいは、エステルまたはアルコールなどの各種有機溶剤を用いることができる。有機レジスト層26がポジ型レジストである場合、レーザ光30で露光された露光部は、レーザ光30で露光されていない非露光部と比較して、現像液に対する溶解速度が増加する。そのため、現像処理により露光部が除去される。これにより、潜像26aが除去された有機レジスト層26が形成される。なお、有機レジスト層26がネガ型レジストである場合、レーザ光30で露光された露光部は、レーザ光30で露光されていない非露光部と比較して、現像液に対する溶解速度が低下する。そのため、現像処理により非露光部が除去される。これにより、潜像26aを残存させることも可能である。
【0058】
次に、現像後の有機レジスト層26をエッチングマスク(第1のエッチングマスク)として、基材10のエッチングが行われる。こうすることで、
図5Dに示すように、基材10には、潜像26aに対応する凹部24が形成される。基材10のエッチングは、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれで行ってもよい。基材10がSiO
2を主成分とするガラス材料(例えば、石英ガラスなど)である場合、基材10のエッチングは、フッ化炭素ガスを用いたドライエッチングまたはフッ化水素酸などを用いたウェットエッチングにより行うことができる。
【0059】
図5Aから
図5Dを参照して説明した原盤の製造方法では、レーザ光30のスポットSPの範囲よりも広い凹部24が凹凸構造として基材10に形成されるだけである。そのため、
図5Aから
図5Dを参照して説明した原盤の製造方法では、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤1を製造することは困難である。
【0060】
次に、熱リソグラフィーによる無機レジスト層の露光および現像によりエッチングマスクを形成する、原盤の製造方法を、
図6Aから
図6Dを参照して説明する。
【0061】
図6Aに示すように、基材10の一面である外周面11上に、無機系材料からなる無機レジスト層27が成膜される。無機レジスト層27を構成する無機系材料としては、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの1種または2種以上の遷移金属を含む金属酸化物を用いることができる。上述したような無機系材料は、例えば、スパッタ法などを用いることで、無機レジスト層27として成膜することができる。本実施形態においては、無機レジスト層27は、ポジ型レジストであるとする。
【0062】
次に、
図6Bに示すように、基材10の外周面11上に形成された無機レジスト層27にレーザ光30が照射され、熱リソグラフィーにより無機レジスト層27が露光される。露光は
図4を参照して説明した露光装置3により行うことができる。熱リソグラフィーでは、無機レジスト層27は、照射されるレーザ光30の熱により変質し、潜像27aが形成される。レーザ光30としては、
図5Bを参照して説明した光リソグラフィーにおいて使用したレーザ光30と同じものを用いることができる。
【0063】
照射されるレーザ光30のスポットSP(照射範囲)内で、温度分布は均一ではなく、偏りがある。そのため、レーザ光30のスポットSPのうち温度が高い部分で、無機レジスト層27が変質し、潜像27aが形成される。また、潜像27aの深さは、温度が高い部分ほど深くなる。そのため、潜像27aの範囲は、レーザ光30のスポットSPの範囲よりも狭くなり、また、潜像27a内においても、深さにばらつきが生じる。
【0064】
次に、潜像27aが形成された無機レジスト層27を現像することで、
図6Cに示すように、無機レジスト層27に、潜像27aに対応する凹部27bが形成される。無機レジスト層27の現像には、例えば、TMAH水溶液などのアルカリ系溶液を用いることができる。
【0065】
次に、現像後の無機レジスト層27をエッチングマスクとして、基材10のエッチングが行われる。こうすることで、
図6Dに示すように、基材10には、潜像27aに対応する凹部25が形成される。基材10のエッチングは、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれで行ってもよい。
【0066】
図6Aから
図6Dを参照して説明した原盤の製造方法では、レーザ光30のスポットSPの範囲よりも小さい凹部25が凹凸構造として基材10に形成されるだけである。そのため、
図6Aから
図6Dを参照して説明した原盤の製造方法では、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤1を製造することは困難である。
【0067】
次に、本実施形態に係る原盤1の製造方法について説明する。以下では、
図2Aに示す、主凹部21に微細凹凸構造23が形成された凹凸構造20を有する原盤1を製造する例を用いて説明する。
【0068】
本実施形態に係る原盤1の製造方法は、第1の形成ステップと、第2の形成ステップとを含む。第1の形成ステップでは、基材10の一面である外周面11に所定の平均ピッチP1(第1の平均ピッチ)を有する微細凹凸構造23を形成する。第2の形成ステップでは、微細凹凸構造23が形成された基材10の外周面11に、平均ピッチP1よりも大きい所定の平均ピッチP2(第2の平均ピッチ)を有する主凹部21または主凸部22を形成する。ここで、第2の形成ステップでは、主凹部21または主凸部22における微細凹凸構造23の少なくとも一部の形状を維持しつつ主凹部21または主凸部22を形成する。以下では、第1の形成ステップおよび第2の形成ステップについてより詳細に説明する。
【0069】
まず、第1の形成ステップについて、
図7Aから
図7Dを参照して説明する。
【0070】
図7Aに示すように、基材10の一面である外周面11上に、無機レジスト層27が成膜される。無機レジスト層27は、例えば、
図6Aを参照して説明した方法により、成膜することができる。
【0071】
次に、
図7Bに示すように、基材10の外周面11上に形成された無機レジスト層27にレーザ光30(不図示)が照射され、熱リソグラフィーにより無機レジスト層27が露光される。露光は
図4を参照して説明した露光装置3により行うことができる。無機レジスト層27は、照射されるレーザ光30の熱により変質し、潜像27aが形成される。上述したように、熱リソグラフィーにより形成される潜像27aは、レーザ光30のスポットSPよりも小さいサイズにすることができる。潜像27aは、微細凹凸構造23に対応して形成される。
【0072】
次に、潜像27aが形成された無機レジスト層27を現像することで、
図7Cに示すように、無機レジスト層27に、潜像27aに対応する凹部27bが形成される。無機レジスト層27の現像は、例えば、
図6Cを参照して説明した方法により行うことができる。
【0073】
次に、現像後の無機レジスト層27をエッチングマスク(第1のエッチングマスク)として、基材10のエッチングが行われる。こうすることで、
図7Dに示すように、基材10には、潜像27aに対応する凹部23aが形成される。凹部23aは、微細凹凸構造23に相当するものである。基材10のエッチングは、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれで行ってもよい。
【0074】
このように、第1の形成ステップは、第1の成膜ステップ(
図7A)と、第1の露光ステップ(
図7B)と、第1の現像ステップ(
図7C)と、第1のエッチングステップ(
図7D)とを含む。
【0075】
第1の成膜ステップでは、基材10の一面である外周面11に無機レジスト層27を成膜する。第1の露光ステップでは、熱リソグラフィーにより、無機レジスト層27を露光して、微細凹凸構造23に対応する潜像27aを形成する。第1の現像ステップでは、潜像27aが形成された無機レジスト層27を現像する。第1のエッチングステップでは、現像後の無機レジスト層27をエッチングマスク(第1のエッチングマスク)として基材10をエッチングして、微細凹凸構造23を形成する。
【0076】
次に、第2の形成ステップについて、
図7Eから
図7Hを参照して説明する。
【0077】
図7Eに示すように、凹部23a(微細凹凸構造23)が形成された基材10の外周面11上に、有機レジスト層26が成膜される。有機レジスト層26は、例えば、
図5Aを参照して説明した方法により、成膜することができる。
【0078】
次に、
図7Fに示すように、基材10の外周面11上に形成された有機レジスト層26にレーザ光30(不図示)が照射され、光リソグラフィーにより有機レジスト層26が露光される。露光は
図4を参照して説明した露光装置3により行うことができる。有機レジスト層26は、レーザ光30の照射により変質し、潜像26aが形成される。上述したように、光リソグラフィーにより形成される潜像26aは、レーザ光30のスポットSPよりも大きいサイズである。潜像26aは、主凹部21に対応して形成される。
【0079】
次に、潜像26aが形成された有機レジスト層26を現像することで、
図7Gに示すように、有機レジスト層26に、潜像26aに対応する凹部26bが形成される。有機レジスト層26の現像は、例えば、
図5Cを参照して説明した方法により行うことができる。
【0080】
次に、現像後の有機レジスト層26をエッチングマスク(第2のエッチングマスク)として、基材10のエッチングが行われる。こうすることで、
図7Hに示すように、基材10には、主凹部21が形成される。
図7Hに示す工程では、基材10のエッチングは、有機レジスト層26のエッチングレートが、基材10のエッチングレートよりも大きくなるように行われる。有機レジスト層26および基材10のエッチングレートをこのように調整することで、主凹部21における凹部23a(微細凹凸構造23)の少なくとも一部の形状を維持しつつ主凹部21を形成することができる。また、主凹部21以外に形成された微細凹凸構造23を除去することができる。その結果、主凹部21に対応する位置に形成された凹部23aの少なくとも一部が、微細凹凸構造23として主凹部21に形成される。すなわち、一面(外周面11)に主凹部21が形成され、主凹部21に微細凹凸構造23が形成された基材10が作製される。
【0081】
このように、第2の形成ステップは、第2の成膜ステップ(
図7E)と、第2の露光ステップ(
図7F)と、第2の現像ステップ(
図7G)と、第2のエッチングステップ(
図7H)とを含む。
【0082】
第2の成膜ステップでは、凹部23a(微細凹凸構造23)が形成された基材10の一面である外周面11に有機レジスト層26を成膜する。第2の露光ステップでは、光リソグラフィーにより、有機レジスト層26を露光して、主凹部21に対応する潜像26aを形成する。第2の現像ステップでは、潜像26aが形成された有機レジスト層26を現像する。第2のエッチングステップでは、現像後の有機レジスト層26をエッチングマスク(第2のエッチングマスク)として基材10をエッチングして、主凹部21を形成する。ここで、第2のエッチングステップでは、主凹部21における凹部23a(微細凹凸構造23)の少なくとも一部の形状を維持しつつ主凹部21を形成する。
【0083】
なお、有機レジスト層26の露光および現像により形成する潜像26aは、
図7Fに示す示す例に限られるものではない。
【0084】
図8Aに示すように、潜像26aは、有機レジスト層26の表面から基材10の外周面11に達するように形成されてもよい。この場合、潜像26aの壁面が、基材10の外周面11に対して概ね垂直となるように形成されてもよい。有機レジスト層26の成膜までの工程は、
図7Aから
図7Eを参照して説明した工程と同じであるので、説明を省略する。
【0085】
図8Aに示す潜像26aが形成された後、有機レジスト層26の現像を行うことで、
図8Bに示すように、有機レジスト層26には、基材10に達する凹部26bが形成される。凹部26bの壁面は、基材10の外周面11に対して概ね垂直となる。
【0086】
現像後の有機レジスト層26をエッチングマスクとしたエッチングを行うことで、
図8Cに示すように、主凹部21に微細凹凸構造23が形成された基材10を製造することができる。すなわち、一面(外周面11)に主凹部21が形成され、主凹部21に微細凹凸構造23が形成された基材10を備える原盤1を作製することができる。なお、
図8Cに基材10では、
図7Hに示す基材10とは異なり、主凹部21の壁面は、基材の外周面11に対して概ね垂直となる。
【0087】
図8Bに示す有機レジスト層26の現像において、有機レジスト層26をネガ型レジストとすることで、潜像26a以外の部分を除去することができる。その後、基材10のエッチングを行うことで、潜像26a以外の部分からエッチングが進むので、
図2Bに示すような、主凸部22に微細凹凸構造23が形成された基材10を作製することができる。
【0088】
このように本実施形態に係る原盤1の製造方法は、第1の形成ステップと、第2の形成ステップとを含む。第1の形成ステップでは、基材10の一面(外周面11)に平均ピッチP1(第1の平均ピッチ)を有する微細凹凸構造23を形成する。第2の形成ステップでは、微細凹凸構造23が形成された基材10の一面(外周面11)に、平均ピッチP1よりも大きい平均ピッチP2(第2の平均ピッチ)を有する主凹部21または主凸部22を形成する。第2の形成ステップでは、主凹部21または主凸部22における微細凹凸構造23の少なくとも一部の形状を維持しつつ主凹部21を形成する。
【0089】
主凹部21または主凸部22における微細凹凸構造23の形状を維持しつつ主凹部21または主凸部22を形成することで、異なる平均ピッチを有する凹凸構造が重畳して形成された原盤1を製造することができる。また、このような原盤1を用いることで、異なる平均ピッチの凹凸構造が重畳して形成された転写物、および、そのような転写物を備える物品を製造することができる。
【実施例0090】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0091】
[原盤の製造]
(実施例1)
以下の工程により、実施例1に係る原盤を作製した。まず、円筒形状の石英ガラスにて構成された基材(軸方向の長さ100mm、直径φ132、肉厚4.5mm)の外周面に、スパッタ法でタングステン酸化物を55nmの厚さで成膜し、無機レジスト層を形成した。次に、
図4に示す露光装置3を用いて、波長405nmの半導体レーザ光源からのレーザ光により熱リソグラフィーを行い、無機レジスト層に微細凹凸構造23に対応する潜像を形成した。基材の回転数は900rpmとした。
【0092】
次に、TMAH2.38質量%水溶液(東京応化工業製)を用いて、露光後の基材を27℃、900秒で現像処理することにより、潜像部分の無機レジスト層を溶解し、無機レジスト層に凹部を形成した。次に、現像後の無機レジスト層をエッチングマスクとして、CHF3ガス(30sccm)を用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力150Wにて反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を行い、基材を30分間エッチングした。その後、残存した無機レジスト層を除去した。
【0093】
次に、無機レジスト層を除去した基材の外周面に、ディップコート法でAZ4210ポジ型レジストを5μmの厚さで成膜し、有機レジスト層を形成した。次に、
図4に示す露光装置を用いて、波長405nmの半導体レーザ光源からのレーザ光により光リソグラフィーを行い、有機レジスト層に主凹部21に対応する潜像を形成した。基材の回転数は900rpmとした。本実施例では、
図7Fに示すように、断面視で半円状の潜像を形成した。
【0094】
次に、TMAH2.38質量%水溶液(東京応化工業製)を用いて、露光後の基材を27℃、180秒で現像処理することにより、潜像部分の有機レジスト層を溶解し、有機レジスト層に凹部を形成した。次に、現像後の有機レジスト層をエッチングマスクとして、CHF3ガス(30sccm)を用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力150Wにて反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を行い、基材を300分間エッチングした。その後、残存した有機レジスト層を除去した。
【0095】
以上の工程により、外周面に凹凸構造が形成された原盤を製造した。
【0096】
(実施例2)
本実施例では、有機レジスト層に形成する潜像として、
図7Fに示す、断面視で半円状の潜像の代わりに、
図8Aに示す、基材の外周面に達し、壁面が基材の外周面に対して概ね垂直となる潜像を形成した。その他の工程は実施例1と同様の方法により、実施例2に係る原盤を製造した。
【0097】
(比較例1)
比較例1では、
図5Aから
図5Dを参照して説明した工程により、原盤を作製した。
【0098】
具体的には、実施例1と同じ基材の外周面に、実施例1と同様の方法により無機レジスト層を形成した。次に、実施例1と同様の方法により熱リソグラフィーを行い、無機レジスト層に潜像を形成した。次に、実施例1と同様の方法により、無機レジスト層に対する現像およびエッチングを行い、比較例1に係る原盤を製造した。
【0099】
(比較例2)
比較例2では、
図6Aから
図6Dを参照して説明した工程により、原盤を作製した。
【0100】
具体的には、実施例1と同じ基材の外周面に、実施例1と同様の方法により有機レジスト層を形成した。次に、実施例1と同様の方法により光リソグラフィーを行い、有機レジスト層に潜像を形成した。次に、実施例1と同様の方法により、有機レジスト層に対する現像およびエッチングを行い、比較例2に係る原盤を製造した。
【0101】
[転写物の製造]
実施例1,2および比較例1,2に係る原盤を用いて転写物を製造した。具体的には、
図3に示す転写装置5を用いて、原盤の外周面に形成された凹凸構造を紫外線硬化樹脂に転写した。転写物のシート状基材には、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)フィルムを用いた。紫外線硬化樹脂は、メタルハライドランプにより、1000mJ/cm
2の紫外線を1分間照射することで硬化させた。
【0102】
[評価結果]
実施例1,2および比較例1,2を用いて製造した転写物を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)にて観察した画像を
図9A,9B,10A,10Bに示す。
図9Aは、実施例1に係る原盤を用いて製造した転写物を拡大倍率1000倍にて撮像したSEM画像図である。
図9Bは、実施例2に係る原盤を用いて製造した転写物を拡大率10000倍にて撮像したSEM画像図である。
図10Aは、比較例1に係る原盤を用いて製造した転写物を拡大倍率1000倍にて撮像したSEM画像図である。
図10Bは、比較例2に係る原盤を用いて製造した転写物を拡大率10000倍にて撮像したSEM画像図である。
【0103】
図9Aおよび
図9Bを参照すると、実施例1,2に係る原盤を用いて製造した転写物では、数μmの高さの複数の主凸部それぞれの上に、数百nmの高さの微細凹凸構造が形成された。例えば、実施例1に係る原盤を用いて製造した転写物では、高さ約2.6μmの主凸部の頂部に、高さ約200nmの微細凹凸構造が形成された。したがって、実施例1,2に係る原盤を用いて製造した転写物には、異なる平均ピッチの凹凸構造が重畳して形成されていることが分かった。
【0104】
一方、
図10Aを参照すると、比較例1に係る原盤を用いて製造した転写物では、高さ約3.2μmの凸部が形成されていただけであり、当該凸部と平均ピッチの異なる凹凸構造が形成されることはなかった。また、
図10Bを参照すると、比較例2に係る原盤を用いて製造した転写物では、高さ約200nmの凸部が形成されていただけであり、当該凸部と平均ピッチの異なる凹凸構造が形成されることはなかった。
【0105】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。