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特開2024-50947位相差層付き偏光板および有機EL表示装置
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  • 特開-位相差層付き偏光板および有機EL表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050947
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】位相差層付き偏光板および有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240403BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240403BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240403BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
C09J7/38
C09J133/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022802
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2019061379の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2018081256
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】小島 理
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 丈治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 寛教
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れる位相差層付き偏光板を提供する。
【解決手段】本発明の位相差層付き偏光板は、偏光板と、第1の位相差層と、第1の粘着剤層と、第2の位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順に有し、第1および第2の位相差層が液晶化合物を含み、第1の粘着剤層は、厚みが8μm以下であり、25℃における弾性率が10Pa~10Paであり、第2の粘着剤層は、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含む粘着剤で構成され、25℃における弾性率が5.0×10Pa以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板と、第1の位相差層と、第1の粘着剤層と、第2の位相差層と、第2の粘着剤層とをこの順に有し、
前記第1の位相差層および前記第2の位相差層が液晶化合物を含み、
前記第1の粘着剤層は、厚みが8μm以下であり、25℃における弾性率が10Pa~1.9×10Paであり、
前記第2の粘着剤層は、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含む粘着剤で構成され、25℃における弾性率が5.0×10Pa以下である、
位相差層付き偏光板。
【請求項2】
前記偏光板の視認側に表面保護フィルムをさらに有し、該表面保護フィルムの厚みが40μm~90μmである、請求項1に記載の位相差層付き偏光板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位相差層付き偏光板を有する、有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付き偏光板および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載した画像表示装置(有機EL表示装置)が提案されている。有機ELパネルは反射性の高い金属層を有しており、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、位相差層付き偏光板(円偏光板)を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。しかしながら、このような位相差層付き偏光板の位相差層として、液晶化合物を含む2層の位相差層を粘着剤で貼り合せた積層体を用い、この位相差層付き偏光板を、粘着剤を介して有機ELパネルに貼り合せた場合、耐熱性が低く、位相差層にクラックが発生したり、ムラが発生したりするなどの問題が生じる場合がある。さらに、位相差層付き偏光板にキズが入りやすく、カールしたりするなどの問題が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、耐熱性に優れ、キズが入りにくく、カールしにくい位相差層付き偏光板、および、そのような位相差層付き偏光板を用いた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の位相差層付き偏光板は、偏光板と、第1の位相差層と、第1の粘着剤層と、第2の位相差層と、第2の粘着剤層と、をこの順に有し、上記第1の位相差層および上記第2の位相差層が液晶化合物を含み、上記第1の粘着剤層は、厚みが8μm以下であり、25℃における弾性率が10Pa~10Paであり、上記第2の粘着剤層は、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含む粘着剤で構成され、25℃における弾性率が5.0×10Pa以下である。
1つの実施形態においては、位相差層付き偏光板は、上記偏光板の視認側に、表面保護フィルムをさらに有し、該表面保護フィルムの厚みが40μm~90μmである。
本発明の別の局面によれば、有機EL表示装置が提供される。この有機EL表示装置は、上記位相差層付き偏光板を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1の粘着剤層の厚みが8μm以下であり、25℃における弾性率が10Pa~10Paであり、第2の粘着剤層が、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含み、25℃における弾性率が5.0×10Pa以下であることにより、耐熱性に優れ、キズが入りにくく、カールしにくい位相差層付き偏光板を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態に係る位相差層付き偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.位相差層付き偏光板
図1は、本発明の1つの実施形態に係る位相差層付き偏光板の概略断面図である。図1に示すように、位相差層付き偏光板100は、偏光板10と、第1の位相差層20と、第1の粘着剤層30と、第2の位相差層40と、第2の粘着剤層50とをこの順に有する。すなわち、第1の位相差層20と第2の位相差層40とは、第1の粘着剤層30を介して積層されている。第1の位相差層20および第2の位相差層40は、液晶化合物を含んで構成されている。第1の粘着剤層30は、25℃における弾性率が10Pa~10Paである。第1の粘着剤層30は、1つの実施形態においては厚みが5μm~30μmであり、別の実施形態においては厚みが8μm以下である。第2の粘着剤層50は、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含む粘着剤で構成される。1つの実施形態においては、第2の粘着剤層50は、25℃における弾性率が9.0×10Pa以下であり、別の実施形態においては、25℃における弾性率が5.0×10Pa以下である。位相差層付き偏光板は、偏光板の視認側に、表面保護フィルム(図示せず)をさらに有していてもよい。この場合、該表面保護フィルムの厚みは40μm~90μmである。上記位相差層付き偏光板100は耐熱性に優れ、カールが発生しにくく、第1の位相差層20および/または第2の位相差層40のキズの発生、クラックの発生、さらには、ムラの発生が抑制され得る。
【0010】
以下、位相差層付き偏光板100を構成する各層について、詳細に説明する。
【0011】
B.偏光板
偏光板10は、代表的には、偏光子と、偏光子の片側に配置された第1の保護層と、偏光子のもう一方の側に配置された第2の保護層とを有する。偏光子は、代表的には吸収型偏光子である。第1の保護層および第2の保護層のうち一方は省略されてもよい。
【0012】
B-1.偏光子
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0013】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0014】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0015】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0016】
偏光子の厚みは、例えば1μm~35μmである。1つの実施形態においては、偏光子の厚みは、好ましくは1μm~15μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0017】
B-2.保護層
第1および第2の保護層は、偏光子を保護するフィルムとして使用できる任意の適切な保護フィルムで形成される。当該保護フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0018】
保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm~100μmである。保護フィルムは、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていてもよく、偏光子に密着(接着層を介さずに)積層されていてもよい。接着剤層は、任意の適切な接着剤で形成される。接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、金属化合物コロイドをさらに含有し得る。金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり得、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものであり得る。金属化合物コロイドを形成する微粒子の平均粒子径は、偏光特性等の光学特性に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な値であり得る。好ましくは1nm~100nm、さらに好ましくは1nm~50nmである。微粒子を接着剤層中に均一に分散させ得、接着性を確保し、かつクニックを抑え得るからである。なお、「クニック」とは、偏光子と保護フィルムの界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。粘着剤層は、任意の適切な粘着剤で構成される。
【0019】
C.位相差層
上記のとおり、第1および第2の位相差層は、液晶化合物を含んで構成されている。代表的には、第1および第2の位相差層は、液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層により構成され得る。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。液晶化合物の配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された配向固化層は、位相差層付き偏光板を構成する他の層の表面に転写され得る。液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0020】
1つの実施形態においては、第1の位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、第2の位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~150nmである。したがって、この場合、第1の位相差層はλ/2板として機能し得、第2の位相差層はλ/4板として機能し得る。偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度は、好ましくは5°~25°であり、特に好ましくは約15°である。偏光子の吸収軸と第2の位相差層の遅相軸とのなす角度は、好ましくは65°~85°であり、特に好ましくは約75°である。別の実施形態においては、第1の位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは120nm~160nmであり、第2の位相差層は、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を満たす。したがって、この場合、第1の位相差層はλ/4板として機能し得、第2の位相差層はいわゆるポジティブCプレートとして機能し得る。偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度は、好ましくは39°~51°であり、特に好ましくは約45°である。
【0021】
C-1.第1の位相差層
1つの実施形態においては、第1の位相差層は、実質的に垂直に配向させたディスコティック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層により構成され得る。本明細書において、「ディスコティック液晶化合物」とは、分子構造中に、円板状のメソゲン基を有し、該メソゲン基に2~8本の側差が、エーテル結合やエステル結合で放射状に結合しているものをいう。第1の位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは1μm~12μmである。上記のディスコティック液晶化合物を含有する液晶性組成物は、ディスコティック液晶化合物を含み、液晶性を示すものであれば特に制限はない。上記液晶性組成物中のディスコティック液晶化合物の含有量は、液晶性組成物の全固形分100重量部に対して、好ましくは40重量部以上100重量部未満である。上記実質的に垂直に配向させたディスコティック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層からなる位相差フィルムとしては、特開2001-56411号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0022】
別の実施形態においては、第1の位相差層は、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向した(ホモジニアス配向)配向固化層により構成され得る。液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。第1の位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは1μm~6μmである。
【0023】
C-2.第2の位相差層
λ/4板として機能し得る第2の位相差層は、第1の位相差層について上記C-1項で説明した材料および方法により形成され得る。
【0024】
ポジティブCプレートとして機能し得る第2の位相差層は、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を満たす限り、任意の適切な液晶化合物で構成され得る。このような液晶化合物の詳細は、特許第4186980号公報および特許第6055569号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。1つの実施形態においては、第2の位相差層は、下記化学式(I)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマーと、ネマチック液晶相を示す重合性液晶とにより構成され得る。
【0025】
【化1】
【0026】
D.第1および第2の粘着剤層
第1の粘着剤層は、25℃における弾性率が10Pa~10Paである。第1の粘着剤は、1つの実施形態においては厚みが5μm~30μmであり、好ましくは10μm~25μmである。別の実施形態においては、第1の粘着剤層は、厚みが8μm以下であり、好ましくは5μm~8μmである。上記弾性率は、好ましくは1.1×10Pa~1.9×10Paであり、より好ましくは1.2×10Pa~1.8×10Paである。
【0027】
第2の粘着剤層は、ベースポリマー中にアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含む粘着剤で構成される。第2の粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマー中のアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは75重量%~99重量%であり、より好ましくは80重量%~95重量%である。第2の粘着剤層は、1つの実施形態においては、25℃における弾性率が9.0×10Pa以下であり、好ましくは1.0×10Pa~9.0×10Paであり、より好ましくは1.0×10Pa~8.5×10Paである。別の実施形態においては、上記弾性率は、5.0×10Pa以下であり、好ましくは1.0×10Pa~2.0×10Paであり、より好ましくは1.0×10Pa~1.6×10Paである。
【0028】
第1および第2の粘着剤層のゲル分率は、好ましくは40%~95%であり、より好ましくは50%~95%であり、さらに好ましくは65%~93%であり、特に好ましくは80%~93%である。粘着剤層のゲル分率が小さい場合には凝集力に劣り、加工性やハンドリング性に問題が出る場合がある。また、粘着剤層を形成した直後のゲル分率は、糊打痕等の外観不具合を防止する観点から、60%以上であることが好ましく、63%以上であることがより好ましく、66%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
【0029】
第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層を構成する粘着剤は、目的および用途に応じて、粘着剤組成物中に架橋剤、紫外線吸収剤、色素化合物などを含み得る。
【0030】
D-1.ベースポリマー
第1および第2の粘着剤層(以下、単に「粘着剤層」と称する場合がある)を構成する粘着剤は、上記の特性を満足する限り、任意の適切な材料により形成される。1つの実施形態においては、粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、ベースポリマーは(メタ)アクリル系ポリマーである。
【0031】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~24のアルキル基をエステル末端に有するものが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいう。
【0032】
第1の粘着剤層を構成する粘着剤について、炭素数1~24のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。第2の粘着剤層を構成する粘着剤について、上記のとおり、アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して70重量%以上である。
【0033】
上記モノマー成分には、単官能性モノマー成分として、アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合モノマーが含まれ得る。共重合モノマーは、モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの残部として用いることができる。共重合モノマーとしては、例えば、環状窒素含有モノマーを含み得る。上記環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。環状窒素含有モノマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、好ましくは0.5~50重量%であり、より好ましくは0.5~40重量%であり、さらにより好ましくは0.5~30重量%である。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、その他の官能基含有モノマーが含まれ得る。このようなモノマーとして、例えば、カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーを含有する場合、含有量は、好ましくは0.05~10重量%であり、より好ましくは0.1~8重量%であり、さらに好ましくは0.2~6重量%である。カルボキシル基含有モノマーを含むことにより、粘着剤層のゲル分率を好ましい範囲内の値とすることができ、その結果、位相差層におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0035】
また、上記モノマー成分には、ヒドロキシル基含有モノマーが含まれ得る。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。上記ヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、接着力、凝集力を高める点から、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上である。一方、ヒドロキシル基含有モノマーの含有量の上限は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、好ましくは30重量%であり、より好ましくは27重量%であり、さらに好ましくは25重量%である。ヒドロキシル基含有モノマーが多くなりすぎると、粘着剤層が固くなり、接着力が低下する場合があり、また、粘着剤の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、上述の単官能性モノマーの他に、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて、任意の適切な多官能性モノマーを含有することができる。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が50万~300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万~270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工に適した粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。第1の粘着剤層を構成する粘着剤の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは150万~250万であり、より好ましくは180万~230万である。第2の粘着剤層を構成する粘着剤の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは100万~200万であり、より好ましくは120万~180万である。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法として、溶液重合、紫外線(UV)重合等の放射線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合等の任意の適切な方法を採用することができる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。
【0039】
(メタ)アクリル系ポリマーをラジカル重合により製造する場合には、モノマー成分に、ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等を適宜添加して、重合を行うことができる。ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜その使用量が調整される。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーを放射線重合により製造する場合には、モノマー成分に、電子線、紫外線(UV)等の放射線を照射することにより重合して製造することができる。これらの中でも、紫外線重合が好ましい。紫外線重合を行う際には、重合時間を短くすることができる利点等から、モノマー成分に光重合開始剤を含有させることが好ましい。
【0041】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤であることが好ましい。このような光重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、製品名「Irgacure819」)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社製、「LUCIRIN TPO」)等を挙げることができる。
【0042】
光重合開始剤には、波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤を含有することができる。このような光重合開始剤としては、紫外線によりラジカルを発生し、光重合を開始するものであって、波長400nm未満に吸収帯を有するものであれば特に制限されず、通常用いられる光重合開始剤をいずれも好適に用いることができる。例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。
【0043】
D-2.架橋剤
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤の架橋剤が含まれる。架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせることができる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。
【0044】
粘着剤において、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート架橋剤の含有量は、好ましくは0.1重量部~12重量部である。
【0045】
イソシアネート架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。イソシアネート架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0046】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社製、製品名「D110N」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社製、製品名「D160N」);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等が挙げられる。中でも、第1の粘着剤層を構成する粘着剤の架橋剤として、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートが好適に用いられ、第2の粘着剤層を構成する粘着剤の架橋剤として、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネートが好適に用いられ、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネートが好適に用いられる。
【0047】
D-3.紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、好ましくは、分子構造中に水酸基を0個~3個有する。具体的には、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤、及び、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤であることが、アクリル系粘着剤組成物の形成に用いられるモノマーへの溶解性が良好であり、かつ、波長380nm付近での紫外線吸収能力が高いため好ましい。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
D-4.色素化合物
色素化合物は、好ましくは、吸収スペクトルの最大吸収波長が380nm~430nmの波長領域に存在する。このような色素化合物と紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることで、有機EL素子の発光に影響しない領域(波長380nm~430nm)の光を十分に吸収することができ、かつ、有機EL素子の発光領域(430nmよりも長波長側)は十分に透過することができる。
【0049】
色素化合物の半値幅は、好ましくは80nm以下であり、より好ましくは5nm~70nmであり、さらに好ましくは10nm~60nmである。これにより、有機EL素子の発光に影響しない領域の光を十分に吸収しつつ、430nmよりも長波長側の光は十分に透過させることができる。
【0050】
D-5.その他の成分
粘着剤組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤などの他の成分を含み得る。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、イオウ系、アミン系の酸化防止剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤、アセトアセチル基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0051】
E.表面保護フィルム
上記のとおり、位相差層付き偏光板は、偏光板の視認側に表面保護フィルムをさらに有していてもよい。表面保護フィルムは、代表的には、基材と粘着剤層とを含む。表面保護フィルムの基材および粘着剤層は業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0052】
表面保護フィルムの厚み(基材と粘着剤層の合計厚み)は、好ましくは40μm~90μmであり、より好ましくは60μm~90μmである。表面保護フィルムの厚みがこのような範囲であれば、キズが入りにくい位相差層付き偏光板が得られ得る。
【0053】
F.有機EL表示装置
上記AからD項に記載の位相差層付き偏光板は、画像表示装置に用いられ得る。したがって、本発明は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置(有機EL表示装置)は、上記A項からD項に記載の光学積層体を備える。
【実施例0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚み
位相差層の厚みを、干渉膜厚計(大塚電子株式会社製、MCPD2000)を用いて測定した。また、位相差層以外の層の厚みを、デジタルマイクロメーター(アンリツ株式会社製、KC-351C)を用いて測定した。
(2)位相差値
位相差層の屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA-WPR)により計測し、面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rthを算出した。
(3)粘着剤層の弾性率
実施例および比較例で用いた粘着剤について、動的粘弾性測定装置(商品名:ARES、レオメトリックス社製)により、貯蔵弾性率G´の温度依存性を測定し、25℃における測定値G´(25℃)を弾性率とした。
【0055】
<製造例1>
(偏光板の作製)
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ製 製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長尺方向に5.9倍になるように長尺方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は作製される偏光膜の透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムとを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
得られた偏光子の両面に、それぞれ、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、コニカミノルタ株式会社製のTACフィルム(製品名:KC2UA 厚み:25μm)及び当該TACフィルムの片面にHC層を有するHC-TACフィルム(厚み:32μm)を貼り合せて偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされた偏光板1を得た。
【0056】
<製造例2>
(位相差層Aの作製)
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製、商品名「PaliocolorLC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化2】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)の表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の条件は、ラビング回数(ラビングロール個数)は1、ラビングロール半径rは76.89mm、ラビングロール回転数nrは1500rpm、フィルム搬送速度vは83mm/secであり、ラビング強度RSおよび押し込み量Mは表1に示すような5種類の条件(a)~(e)で行った。
【0057】
【表1】
【0058】
配向処理の方向は、偏光板と貼り付ける際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て-75°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。条件(a)~(c)では液晶化合物の配向状態が非常に良好であった。条件(d)および(e)では液晶化合物の配向に若干の乱れが生じたが、実用上は問題のないレベルであった。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に位相差層Aを形成した。位相差層Aの厚みは2μm、面内位相差Reは270nmであった。さらに、位相差層Aは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。位相差層Aを第1の位相差層とした。
【0059】
<製造例3>
(位相差層Bの作製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板と貼り付ける際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て-15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記と同様の液晶塗工液を塗工し、上記と同様に液晶を配向および硬化させて、PETフィルム上に位相差層Bを形成した。位相差層Bの厚みは1.2μm、面内位相差Reは140nmであった。さらに、位相差層Bは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。位相差層Bを第2の位相差層とした。
【0060】
<製造例4>
(粘着剤Aの作製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.1部、及びジベンゾイルパーオキシドをモノマー(固形分)100部に対して0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30重量%)を得た。前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、製品名「コロネートL」)と、0.075部のγ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名「KBM-403」)を配合して、粘着剤組成物(溶液)を得た。
上記粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で表面処理したポリエステルフィルムからなるセパレータに塗工し155℃で3分間加熱処理して所定厚みの粘着剤Aを得た。粘着剤Aの25℃における弾性率は1.4×10Paであった。
【0061】
<製造例5>
(粘着剤Bの作製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1.0部および2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)を得た。前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.15部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂株式会社製、製品名「ナイパーBO-Y」)と、0.1部のトリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社、製品名「タケネートD110N」)と、0.2部のシランカップリング剤(綜研化学株式会社製、製品名「A-100」、アセトアセチル基含有シランカップリング剤)を配合して、粘着剤組成物(溶液)を得た。
上記粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で表面処理したポリエステルフィルムからなるセパレータに塗工し155℃で3分間加熱処理して所定厚みの粘着剤Bを得た。粘着剤Bの25℃における弾性率は8.1×10Paであった。
【0062】
[実施例1]
上記の偏光板のTACフィルム面と第1の位相差層とを、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸の角度が75°となるように紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。次に、第1の位相差層と第2の位相差層とを、偏光板の吸収軸と第2の位相差層の遅相軸の角度が15°となるように厚さ5μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせた。さらに、第2の位相差層の表面に厚み10μmの粘着剤A(第2の粘着剤層)を貼り合わせ、さらに偏光板の視認側に表面保護フィルム(日東電工社製、E-MASK RP109F、基材(PET)の厚み38μm、粘着剤層の厚み10μm)を貼り合わせ、位相差層付き偏光板1を得た。
【0063】
[実施例2]
第2の位相差層の表面に厚み15μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板2を得た。
【0064】
[実施例3]
第2の位相差層の表面に厚み15μmの粘着剤A(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板3を得た。
【0065】
[実施例4]
第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板4を得た。
【0066】
[実施例5]
第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤A(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板5を得た。
【0067】
[実施例6]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み8μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板6を得た。
【0068】
[参考例7]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み10μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板7を得た。
【0069】
[参考例8]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み12μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板8を得た。
【0070】
[参考例9]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板9を得た。
【0071】
[参考例10]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み15μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板10を得た。
【0072】
[参考例11]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み15μmの粘着剤A(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板11を得た。
【0073】
[参考例12]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板12を得た。
【0074】
[参考例13]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤A(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板13を得た。
【0075】
[参考例14]
特許第6258681号の実施例1と同様の手法を用いて、基材(PET)の厚みを75μm、粘着剤層の厚みを10μmとした表面保護フィルムを得た。
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたこと、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたことおよび、上記表面保護フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板14を得た。
【0076】
[比較例1]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤B(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板15を得た。
【0077】
[比較例2]
粘着剤層C(第1の粘着剤層)に代えて厚み1μmの紫外線硬化型接着剤(25℃における弾性率:1.0×10Paより大きい)を用いて第1の位相差層と第2の位相差層とを貼り合せたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板16を得た。
【0078】
[参考例1]
第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板17を得た。さらに、後述するキズ試験においては、表面保護フィルムを積層せずに、キズ試験に供した。
【0079】
[参考例2]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤A(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板18を得た。さらに、後述するキズ試験においては、表面保護フィルムを積層せずに、キズ試験に供した。
【0080】
[参考例3]
第1の位相差層と第2の位相差層とを、厚み20μmの粘着剤B(第1の粘着剤層)を介して貼り合わせたことおよび、第2の位相差層の表面に厚み20μmの粘着剤B(第2の粘着剤層)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の方法で位相差層付き偏光板19を得た。さらに、後述するキズ試験においては、表面保護フィルムを積層せずに、キズ試験に供した。
【0081】
(評価)
実施例および比較例で得られた位相差層付き偏光板について、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
<キズ試験>
スライドガラス(S200423 65×165mm、松浪硝子工業社製)上に、位相差層付き偏光板を、ハンドローラを用いて貼り合わせて試験サンプルとした。この試験サンプルを電子天秤の上にのせた。鉛筆引っかき値試験用の鉛筆(三菱鉛筆社製)を用いて、偏光板表面から荷重をかけた。荷重を150g、300gおよび500gと変化させた。評価はn=10で行った。荷重をかけた後の上記試験サンプルをバックライト上で観察した。試験に用いた円偏光板の逆円偏光板(NZD-UFQAMEGQ1773VDUHC)を、バックライトと試験サンプルとの間に挟み、円偏光をキャンセルした。この状態で直交状態となるため、光抜けする輝点をキズとして評価した。キズの数が0~3個のものを〇、4個以上のものを×とした。
荷重150gにおいては、いずれの位相差層付き偏光板も、キズの数は0~3個であった。荷重300gにおいては、位相差層付き偏光板1~7、14および16~17においてはキズの数は0~3個であり、位相差層付き偏光板8~13、15および18~19についてはキズの数は4個以上であった。さらに、荷重500gにおいては、位相差層付き偏光板16のみキズの数が0~3個であり、位相差層付き偏光板1~15および17~19はキズの数が4個以上であった。
<カール試験>
位相差層付き偏光板において、表面保護フィルムおよび、偏光板の保護層を剥離した。当該試験に供する偏光板の大きさは、120mm×60mmとした。偏光板を水平な面上に置き、中央部の水平面からの高さ(カール値)を、鋼製金尺を用いて測定した。カール値が10mm以内であれば〇、10mmを超えれば×とした。
位相差層付き偏光板16には、カールの発生が確認されたが、位相差層付き偏光板1~15および17~19にはカールの発生は確認されなかった。
<耐ヒートショック性>
位相差層付き偏光板を120mm×60mmのサイズに裁断し、最表面の粘着剤層Bを介してガラスに貼り合せて試験サンプルとした。この試験サンプルをヒートショック試験機に投入し、-40℃で30分間保持した後85℃で30分間保持することを100サイクル繰り返すヒートショック試験を行った後、光学顕微鏡で位相差層におけるクラックの有無を確認した。
位相差層付き偏光板15および19には、位相差層にクラックの発生が確認されたが、位相差層付き偏光板1~14および16~18には位相差のクラックは確認されなかった。
<耐熱性>
位相差層付き偏光板を120mm×60mmのサイズに裁断し、最表面の粘着剤層Bを介してガラスに貼り合せて試験サンプルとした。この試験サンプルを85℃のオーブンに投入して500時間保管後に、反射板の上に置いた状態で、目視でムラの有無を確認した。
位相差層付き偏光板16には、周辺の色が赤くなるムラが強く視認されたが、位相差層付き偏光板1~15および17~19については、ムラは視認されなかった。
【0082】
【表2】
【0083】
表2から明らかなように、実施例の位相差層付き偏光板は、キズが発生しにくく、カールが抑制され、位相差層のクラックが抑制され、かつ、ムラの発生が抑制されている。さらに、位相差層付き偏光板は、第1の粘着剤層の厚みが薄いほどキズが入りにくく、表面保護フィルムの厚みが厚いほどキズが入りにくいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の光学積層体は、有機EL表示装置などの画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0085】
10 偏光板
20 第1の位相差層
30 粘着剤層
40 第2の位相差層
50 粘着剤層
100 位相差層付き偏光板
図1