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特開2024-5099フィラメント製造装置、フィラメントの製造方法、フィラメント、三次元構造物の製造装置、三次元構造物
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  • 特開-フィラメント製造装置、フィラメントの製造方法、フィラメント、三次元構造物の製造装置、三次元構造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005099
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フィラメント製造装置、フィラメントの製造方法、フィラメント、三次元構造物の製造装置、三次元構造物
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/088 20060101AFI20240110BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240110BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240110BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240110BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20240110BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240110BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   B65H 54/70 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D01D5/088
B29C64/118
B33Y30/00
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/209
B29C48/40
B29C48/88
D01D7/00 Z
B65H54/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105117
(22)【出願日】2022-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物名 DESIGNシンポジウム2021予稿 2.発行日 令和3年6月29日 3.公開者 佐藤浩一郎、寺内文雄、都淳朗、武藤稜介 〔刊行物等〕 1.集会名 DESIGNシンポジウム2021 2.開催日 令和3年7月16日 3.公開者 佐藤浩一郎、寺内文雄、都淳朗、武藤稜介 〔刊行物等〕 1.刊行物名 DESIGNシンポジウム2021講演論文集 2.掲載日 令和3年10月1日 3.公開者 佐藤浩一郎、寺内文雄、都淳朗、武藤稜介
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】寺内 文雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩一郎
【テーマコード(参考)】
4F207
4F213
4L045
【Fターム(参考)】
4F207AA03
4F207AA45
4F207AR08
4F207AR09
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KM16
4F213AA03
4F213AA11
4F213AA45
4F213AC02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL24
4F213WL26
4F213WL27
4L045AA05
4L045BA02
4L045BA32
4L045CA01
4L045CA06
4L045CB09
4L045CB14
4L045DA23
4L045DC02
4L045DC05
4L045DC21
(57)【要約】
【課題】三次元構造物の物性を連続的に変化させる。
【解決手段】フィラメント5は、2種以上の樹脂の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化している。フィラメント5の最大の線幅と最小の線幅との差は、0.1mm以下である、
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の異なる樹脂材料を溶融混合して押出口からフィラメントを連続的に押し出す二軸押出機と、
前記押出口から押し出された前記フィラメントを冷却する冷却ファンと、
前記フィラメントを巻き取るスプールと、
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度を調節するフィラメントワインダーと、を備える、フィラメント製造装置。
【請求項2】
前記冷却ファンは、前記フィラメントの鉛直方向の下方に配置されている、請求項1に記載のフィラメント製造装置。
【請求項3】
前記冷却ファンの回転数は、2500rpm以上3000rpm以下である、請求項1に記載のフィラメント製造装置。
【請求項4】
鉛直方向において、前記スプールが前記フィラメントを巻き取る位置は、前記押出口より高い、請求項1に記載のフィラメント製造装置。
【請求項5】
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度は、3m/分以上5m/分以下である、請求項1に記載のフィラメント製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載のフィラメント製造装置を用いたフィラメントの製造方法であって、
前記二軸押出機が溶融混合する2種以上の異なる樹脂材料の割合を連続的に変化させながら、前記フィラメントを押し出す工程を含む、フィラメントの製造方法。
【請求項7】
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る工程を含み、
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度は、前記フィラメントワインダーによって、前記二軸押出機が前記フィラメントを押し出す速度に対応する速度に調節される、請求項6に記載のフィラメントの製造方法。
【請求項8】
2種以上の樹脂の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化しているフィラメントであって、
当該フィラメントの最大の線幅と最小の線幅との差は、0.1mm以下である、フィラメント。
【請求項9】
前記2種以上の樹脂は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンと、を含む、請求項8に記載のフィラメント。
【請求項10】
当該フィラメントの長手方向の任意の位置において、前記熱可塑性エラストマーの割合は、80質量%以下である、請求項9に記載のフィラメント。
【請求項11】
請求項8に記載のフィラメントを用いた三次元構造物の製造装置であって、
前記フィラメントが巻き取られたスプールを支持するスタンドと、
前記フィラメントを射出するノズルと、を備える、三次元構造物の製造装置。
【請求項12】
前記ノズルの内部は、テフロンで被覆されている、請求項11に記載の三次元構造物の製造装置。
【請求項13】
前記スタンドは、回転可能であり、且つ前記ノズルに対して近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能である、請求項11に記載の三次元構造物の製造装置。
【請求項14】
請求項8に記載のフィラメントを用いて製造された三次元構造物であって、
当該三次元構造物に含まれる2種以上の樹脂の混合割合が、第1方向に沿って連続的に変化している、三次元構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィラメント製造装置、フィラメントの製造方法、フィラメント、フィラメントを用いた三次元構造物の製造装置、及びフィラメントを用いて製造される三次元構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元構造物を製造する装置として、いわゆる3Dプリンタが知られている。3Dプリンタを用いることで、複雑な形状の三次元構造物を容易に製造できる。3Dプリンタは、例えば樹脂等からなる線状のフィラメントを溶融させて重ねることで、三次元構造物を製造する。
【0003】
製造される三次元構造物の物性は、フィラメントの物性に依存する。三次元構造物の物性を改良するために、フィラメントの物性を調整することが検討されている。例えば、非特許文献1では、フィラメントの製造過程においてフィラメントをなす樹脂の硬さを変化させる方法が検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】上野新葉、宮下芳明、“日本ソフトウェア科学会・インタラクティブシステムとソフトウェア研究会、第24回WISS2016”,309-310,2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィラメントをなす樹脂の硬さ等のフィラメントの物性が変化している場合、当該フィラメントを用いて適切に三次元構造物を製造できないことがある。本件発明者らが検討した結果、フィラメントを用いて適切に三次元構造物を製造するためには、フィラメントの線幅が略一定であることが重要であることが判明した。物性が連続的に変化しているフィラメントの線幅を略一定にすることが困難である。
【0006】
本開示は、三次元構造物の製造装置を用いて製造される三次元構造物の物性を連続的に変化させることを可能にするフィラメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[14]に関する。
[1]
2種以上の異なる樹脂材料を溶融混合して押出口からフィラメントを連続的に押し出す二軸押出機と、
前記押出口から押し出された前記フィラメントを冷却する冷却ファンと、
前記フィラメントを巻き取るスプールと、
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度を調節するフィラメントワインダーと、を備える、フィラメント製造装置。
[2]
前記冷却ファンは、前記フィラメントの鉛直方向の下方に配置されている、[1]に記載のフィラメント製造装置。
[3]
前記冷却ファンの回転数は、2500rpm以上3000rpm以下である、[1]または[2]に記載のフィラメント製造装置。
[4]
鉛直方向において、前記スプールが前記フィラメントを巻き取る位置は、前記押出口より高い、[1]乃至[3]のいずれかに記載のフィラメント製造装置。
[5]
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度は、3m/分以上5m/分以下である、[1]乃至[4]のいずれかに記載のフィラメント製造方法。
[6]
[1]乃至[5]のいずれかに記載のフィラメント製造装置を用いたフィラメントの製造方法であって、
前記二軸押出機が溶融混合する2種以上の異なる樹脂材料の割合を連続的に変化させながら、前記フィラメントを押し出す工程を含む、フィラメントの製造方法。
[7]
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る工程を含み、
前記スプールが前記フィラメントを巻き取る速度は、前記フィラメントワインダーによって、前記二軸押出機が前記フィラメントを押し出す速度に対応する速度に調節される、[6]に記載のフィラメントの製造方法。
[8]
2種以上の樹脂の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化しているフィラメントであって、
当該フィラメントの最大の線幅と最小の線幅との差は、0.1mm以下である、フィラメント。
[9]
前記2種以上の樹脂は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンと、を含む、[8]に記載のフィラメント。
[10]
当該フィラメントの長手方向の任意の位置において、前記熱可塑性エラストマーの割合は、80質量%以下である、[9]に記載のフィラメント。
[11]
[8]乃至[10]のいずれかに記載のフィラメントを用いた三次元構造物の製造装置であって、
前記フィラメントが巻き取られたスプールを支持するスタンドと、
前記フィラメントを射出するノズルと、を備える、三次元構造物の製造装置。
[12]
前記ノズルの内部は、テフロンで被覆されている、[11]に記載の三次元構造物の製造装置。
[13]
前記スタンドは、回転可能であり、且つ前記ノズルに対して近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能である、[11]または[12]に記載の三次元構造物の製造装置。
[14]
[8]乃至[10]に記載のフィラメントを用いて製造された三次元構造物であって、
当該三次元構造物に含まれる2種以上の樹脂の混合割合が、第1方向に沿って連続的に変化している、三次元構造物。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、三次元構造物の物性を連続的に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、三次元構造物の一例を示す斜視図である。
図2図2は、フィラメントの一例を示す正面図である。
図3図3は、フィラメントが巻き取られたスプールを示す斜視図である。
図4図4は、フィラメント製造装置を概略的に示す正面図である。
図5図5は、二軸押出機の内部を示す断面図である。
図6図6は、三次元構造物の製造装置の正面図である。
図7図7は、フィラメントが巻き取られたスプールを支持するスタンドを示す斜視図である。
図8図8は、三次元構造物の製造工程の一例を示す正面図である。
図9図9は、片持ち試験に用いられる三次元構造物を示す斜視図である。
図10図10は、片持ち梁曲げ試験の工程を説明するための図である。
図11図11は、片持ち梁曲げ試験の工程を説明するための図である。
図12図12は、片持ち梁曲げ試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付された図面における縮尺及び縦横の寸法比等は、図示と理解のしやすさのため、実物のそれらから変更され誇張されている。
【0011】
本明細書において用いられる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語ならびに長さや角度の値等は、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0012】
図1には、本開示の一実施の形態に係る三次元構造物の一例が示されている。図1に示されている三次元構造物1は、いわゆるコップである。より詳細には、図1に示されている三次元構造物1は、第1方向d1に延びる円筒形状であり、第1方向d1に互いに対向する底部と開口部とを有する。三次元構造物1は、図1に示された例に限らず、任意の形状であってもよい。図1に示されている三次元構造物1は、第1方向d1に沿って、物性が連続的に変化している。具体的には、図1に示されている三次元構造物1は、第1方向d1に沿って硬さが連続的に変化している。より具体的には、図1に示されている三次元構造物1は、底部から開口部に向かって、柔らかくなっている。図1に示されている三次元構造物1には、液体を収容できる。底部の近傍が硬くなっているため、三次元構造物1は、液体を安定して収容できる。開口部の近傍が柔らかくなっているため、開口部の近傍を変形させることができる。開口部の近傍を適切な形状に変形させることにより、三次元構造物1に収容された液体を外部に容易に注ぐことができる。三次元構造物1は、強度と柔軟性を両立している。さらに、図1に示されている三次元構造物1は、第1方向d1に沿って底部から開口部に向かって、色彩が連続的に変化している。三次元構造物1にグラデーション状の優れた意匠が付与されている。三次元構造物1は、その色彩によって硬さを視覚的に認識させることができる。
【0013】
三次元構造物1は、樹脂を重ねることで製造される。三次元構造物1は、2種以上の樹脂を含んでいる。第1方向d1に沿って物性が連続的に変化するよう、具体的には第1方向d1に沿って柔らかくなり且つ色彩が連続的に変化するよう、図1に示されている三次元構造物1は、2種以上の樹脂の混合割合が第1方向d1に沿って連続的に変化している。樹脂の混合割合が連続的に変化していることで、三次元構造物1において、樹脂の混合割合の違いによる層間剥離が生じにくい。
【0014】
図1に示された三次元構造物1は、図2に示すようなフィラメント5を用いて製造できる。フィラメント5は、2種以上の樹脂を含む線状の成形体である。図2に示されたフィラメント5は、2種以上の樹脂の混合割合が長手方向dLに沿って連続的に変化している。樹脂の混合割合が連続的に変化していることで、フィラメント5において、樹脂の混合割合の違いによる層間剥離が生じにくい。樹脂の混合割合の連続的な変化により、フィラメント5の物性が長手方向dLに沿って連続的に変化している。例えば、フィラメント5の硬さや色彩が、長手方向dLに沿って連続的に変化している。フィラメント5は、その色彩によって硬さを視覚的に認識させることができる。フィラメント5の線幅は、例えば1.7mm以上1.8mm以下である。フィラメント5の線幅は、略一定となっている。具体的には、フィラメント5の最大の線幅と最小の線幅との差は、例えば0.1mm以下であり、好ましくは0.05mm以下である。フィラメント5の線幅とは、フィラメント5の長手方向dLに直交する方向におけるフィラメント5の長さである。
【0015】
三次元構造物1及びフィラメント5は、粘弾性特性が異なる2種以上の樹脂から構成されていることが好ましい。フィラメント5が粘弾性特性の異なる2種以上の樹脂から構成されており、それらの構成割合を変えたフィラメント5を用いて三次元構造物1を製造することによって、上記のような硬さが連続的に変化する三次元構造物1を得ることができる。粘弾性特性が異なる2種以上の樹脂は、例えば熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との組み合わせである。
【0016】
熱可塑性エラストマーは、例えば、α-オレフィン由来の構成単位と該α-オレフィンと異なる他のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体である。α-オレフィンは、通常、炭素数2~20のα-オレフィンを1種単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。好ましいα-オレフィンは、炭素数が3以上であるα-オレフィンであり、炭素数3~8のα-オレフィンが特に好ましい。炭素数2~8のα-オレフィン由来の構成単位と炭素数2~3のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体は、後述する熱可塑性樹脂(特に、ポリプロピレン)との相溶性に優れるため、三次元構造物とした場合に層間剥離をより一層生じにくく、好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体(PP)等)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(AS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)等の汎用プラスチック;ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリング・プラスチック;ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等のスーパーエンジニアリング・プラスチック;であり、ポリエチレンやポリプロピレン系重合体等のポリオレフィンであることが好ましく、特に、上記した熱可塑性エラストマーを使用する場合は、ポリプロピレン系重合体を併用することが好ましい。プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンと他の単量体との共重合体であってもよい。
【0018】
三次元構造物1及びフィラメント5は、上記した樹脂の他に、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、整色剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、つや消し剤、衝撃強度改良剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0019】
フィラメント5及びフィラメント5を用いて三次元構造物1を適切に製造できるよう、熱可塑性エラストマーの割合は多すぎないようになっている。フィラメントの長手方向dLの任意の位置において、熱可塑性エラストマーの割合は、用いる熱可塑性エラストマーの種類にもよるが、例えば80質量%以下である。言い換えると、フィラメント5からどの部分を取り出しても、フィラメント5に含まれている熱可塑性エラストマーの割合は、例えば80質量%以下である。フィラメント5を用いて製造される三次元構造物1の任意の位置においても、熱可塑性エラストマーの割合は、例えば80質量%以下である。言い換えると、三次元構造物1からどの部分を取り出しても、三次元構造物1に含まれている熱可塑性エラストマーの割合は、例えば80質量%以下である。
【0020】
熱可塑性エラストマーの割合は、用いる熱可塑性エラストマーの種類によって適宜に変更され得る。用いる熱可塑性エラストマーの種類は、用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜に選択され得る。
【0021】
図3には、フィラメント5が巻き取られたスプール40が示されている。スプール40に巻き取られていることで、フィラメント5を容易に取り扱うことができる。
【0022】
スプール40に巻き取られたフィラメント5を製造するフィラメント製造装置10について説明する。図4には、フィラメント製造装置10が概略的に示されている。図4に示されている例では、フィラメント製造装置10は、二軸押出機20と、冷却ファン30と、スプール40と、フィラメントワインダー50と、を有している。
【0023】
二軸押出機20は、2種以上の樹脂材料を溶融混合して連続的に押し出す。押し出された樹脂がフィラメント5となる。図5には、二軸押出機20の内部が示されている。図4及び図5に示されているように、二軸押出機20は、投入口21と、シリンダ22と、2つのスクリュー23と、押出口24と、を有している。投入口21は、二軸押出機20が押し出すフィラメント5の材料となる樹脂組成物のペレットが投入される入口である。投入口21には、2種以上の樹脂材料をその割合を連続的に変化させながら投入できる。投入口21は、シリンダ22に通じている。シリンダ22は、円筒形状であり、その内部に投入口21から投入された樹脂組成物が入る。シリンダ22には、図示しない電熱線等の加熱手段が設けられている。加熱手段は、シリンダ22の内部を加熱し、樹脂組成物を溶融させる。加熱手段により、シリンダ22の内部は、例えば150℃以上200℃以下に加熱される。スクリュー23は、回転することで溶融した樹脂組成物をシリンダ22の内部において押出口24に向かって進める。2つのスクリュー23が、シリンダ22の内部に配置されている。2つのスクリュー23が回転することにより、異なる種類の樹脂材料を適切に混合できる。スクリュー23は、図示しない駆動部によって回転駆動される。スクリュー23の回転速度を制御することにより、二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度を制御できる。押出口24は、シリンダ22の先端に設けられている。混合した樹脂が、押出口24から線状のフィラメント5となって連続的に押し出される。押し出されるフィラメント5の線幅は、押出口24の内径に依存する。押出口24の内径は、例えば1.7mm以上1.8mm以下である。
【0024】
冷却ファン30は、空気を送風することで、二軸押出機20の押出口24から押し出されたフィラメント5を冷却する。空気の送風によって冷却することで、フィラメントを水中に入れて冷却することに比べて、フィラメント5が湿気によって劣化することを抑制できる。冷却ファン30は、二軸押出機20の押出口24から押し出されたフィラメント5を素早く冷却できるよう、押出口24の近傍にフィラメント5の進行方向に沿って配置されている。冷却ファン30は、フィラメント5を十分に冷却できるよう、フィラメント5に沿って十分な長さにわたって配置されている。冷却ファン30が配置されている長さは、例えば300mm以上500mm以下である。十分な長さにわたって配置されるよう、複数の冷却ファン30が配置されていてもよい。図4に示されている例では、4つの冷却ファン30が配置されている。冷却ファン30は、フィラメント5の鉛直方向の下方に配置されている。冷却ファン30は、フィラメント5に鉛直方向の下方から空気を送風する。冷却ファン30は、回転することで空気を送風する。冷却ファン30の回転速度は、例えば2500rpm以上3000rpm以下である。
【0025】
スプール40は、冷却ファン30によって冷却されたフィラメント5を巻き取る。スプール40は、フィラメント5を周回させながら巻き取ることができる円盤状の巻き筒である。スプール40が一方向に回転することで、スプール40の円周に沿ってフィラメント5を巻き取ることができる。スプール40がフィラメント5を巻き取る位置は、鉛直方向において、二軸押出機20の押出口24より高い。スプール40がフィラメント5を巻き取る位置とは、巻き取られるフィラメント5がスプール40またはスプール40に巻き取られているフィラメント5に接触する位置のことを意味する。
【0026】
フィラメントワインダー50は、スプール40の回転する速度を調節して、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を調節する。フィラメントワインダー50は、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対応するように調節する。より詳しくは、フィラメントワインダー50は、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度と等しくなるように調節する。フィラメントワインダー50が調節することにより、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を、例えば3m/分以上5m/分以下にできる。
【0027】
上述したフィラメント製造装置10によるフィラメントの製造方法の一例について説明する。フィラメントの製造方法は、樹脂材料となる樹脂組成物を投入する工程と、樹脂材料を溶融混合して押し出す工程と、フィラメント5を冷却する工程と、フィラメント5をスプール40が巻き取る工程と、を含む。
【0028】
樹脂材料となる樹脂組成物を二軸押出機20の投入口21に投入する。樹脂組成物はペレットとなっている。2種以上の異なる樹脂材料が投入口21に投入される。例えば、ポリオレフィンのペレットと熱可塑性エラストマーのペレットとが投入される。投入される異なる樹脂材料の割合は、フィラメント5が製造されるにつれて連続的に変化させる。投入される異なる樹脂材料の割合は、目視で確認しながら手作業で変化させてもよいし、装置を用いて自動的に変化させてもよい。
【0029】
投入された樹脂材料を溶融混合して押し出す。投入口21に投入された樹脂組成物は、二軸押出機20のシリンダ22の内部に入る。シリンダ22の内部において、樹脂組成物は、熱によって溶融されながら2つのスクリュー23によって混合され、押出口24に向かう。投入される異なる材料の割合が連続的に変化することで、二軸押出機20が溶融混合する異なる材料の割合が連続的に変化する。押出口24において、押出口24の内径に依存した線幅で、線状に連続して延びるフィラメント5が押し出される。
【0030】
押出口24から押し出されたフィラメント5を冷却ファン30によって冷却する。冷却ファン30は、フィラメント5の下方から送風することでフィラメント5を冷却する。冷却ファン30は、例えば2500rpm以上3000rpm以下の回転数で回転している。冷却ファン30は、フィラメント5に沿って適切な長さで配置されている。適切に冷却することで、フィラメント5の延びが抑制されて、フィラメント5の線幅が略一定に保たれる。
【0031】
冷却されたフィラメント5をスプール40が巻き取る。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、フィラメントワインダー50によって調節できる。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対応する速度に調節される。より詳しくは、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度と等しくなるように調節される。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、例えば3m/分以上5m/分以下である。スプール40が適切な速度でフィラメント5を巻き取ることで、フィラメント5の線幅が略一定に保たれる。
【0032】
以上の工程により、スプール40に巻き取られたフィラメント5が製造される。製造されるフィラメント5は、長手方向dLに沿って樹脂材料の割合を連続的に変化させているため、長手方向dLに沿って物性が異なっている。製造されるフィラメント5の線幅は、略一定に保たれる。
【0033】
フィラメント5を用いた三次元構造物の製造装置60について説明する。三次元構造物の製造装置60は、いわゆる3Dプリンタである。図6には、三次元構造物の製造装置60が概略的に示されている。図6に示されている例では、三次元構造物の製造装置60は、スプール40と、スタンド70と、ノズル80と、を有している。スプール40は、上述したフィラメント製造装置10によって製造されたフィラメント5を巻き取ったものである。スプール40が回転することで、フィラメント5を送り出すことができる。
【0034】
スタンド70は、スプール40を適切に支持する。スタンド70は、ノズル80より鉛直方向の上方に位置する。図7には、スプール40を支持しているスタンド70が示されている。図7に矢印で示すように、スタンド70は、スプール40からノズル80に延びるフィラメント5の位置を適切に調節できる。具体的には、スタンド70は、鉛直方向を軸とする回転方向dRに回転可能であり、且つノズル80に対して近づく方向及び遠ざかる方向dxに移動可能である。スタンド70の回転及び移動によってスプール40が適切な位置に移動することで、スプール40からノズル80にフィラメント5を容易に送り出すことができる。
【0035】
ノズル80は、フィラメント5を溶融させて射出する。フィラメント5を溶融させるよう、ノズル80の内部は加熱される。フィラメント5がスプール40からノズル80に延びている。ノズル80には、フィラメント5が連続的に供給される。ノズル80から射出されたフィラメント5が重ねられることで、三次元構造物1が製造される。製造される三次元構造物1の形状に対応した位置にフィラメント5を重ねられるよう、ノズル80は移動可能である。ノズル80が溶融したフィラメント5を射出する射出孔の内径は、例えば0.4mm以上0.6mm以下である。ノズル80の内部においてフィラメント5が詰まることを抑制するため、ノズル80の内部は、テフロンで被覆されていることが好ましい。
【0036】
上述した三次元構造物の製造装置60による、スプール40に巻き取られた上述したフィラメント5を用いた三次元構造物の製造方法の一例について説明する。三次元構造物の製造方法は、フィラメント5を溶融させる工程と、溶融したフィラメント5をノズル80から押し出しながら、ノズル80を移動させる工程と、を含む。
【0037】
フィラメント5を溶融させる。フィラメント5は、ノズル80の温度が上昇することで、ノズル80において溶融する。ノズル80の内部がテフロンで被覆されていることで、溶融したフィラメント5が詰まることが抑制される。
【0038】
溶融したフィラメント5をノズル80から押し出しながら、ノズル80を移動させる。ノズル80を移動させることで、所望の位置にフィラメント5を押し出すことができる。図8には、ノズル80からフィラメント5を押し出す工程が示されている。図8に示すように、押し出されたフィラメント5が第1方向d1に重なっていくことで、三次元構造物1が製造される。三次元構造物1の製造工程において、第1方向d1は、例えば鉛直方向である。
【0039】
ノズル80が移動すると、スプール40の回転方向に対するノズル80の方向が連続的に変化し得る。スプール40を支持するスタンド70が回転方向dRに回転することで、スプール40から送り出されるフィラメント5がノズル80の方向を向くことができる。フィラメント5がスプール40から送り出される際にフィラメント5が受ける抵抗を小さくできる。スプール40から延びるフィラメント5の向きによっては、フィラメント5が他の部材に接触して抵抗を受け得る。フィラメント5が三次元構造物の製造装置60の他の部材に接触することを抑制するよう、スプール40を支持するスタンド70がノズル80に対して近づく方向又は遠ざかる方向dxに移動できる。フィラメント5が他の部材に接触して抵抗を受ける可能性を小さくできる。
【0040】
従来のフィラメントは、物性が連続的に変化していると、三次元構造物を製造するのに適さないものとなることがある。例えば、フィラメントの一部が柔らかすぎる場合、フィラメントの柔らかい部分が用いられると、三次元構造物を製造する際に三次元構造物の製造装置のノズルが詰まってしまう。
【0041】
本実施の形態のフィラメント5は、2種以上の樹脂の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化しており、フィラメント5の最大の線幅と最小の線幅との差は、0.1mm以下である。本実施の形態のフィラメント5は、樹脂の混合割合が連続的に変化することで、物性が連続的に変化しており、且つ、線幅が略一定である。このようなフィラメント5を用いることで三次元構造物の製造装置60によって三次元構造物1を適切に製造でき、且つ製造される三次元構造物1の物性を連続的に変化させることができる。
【0042】
フィラメント5は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンと、を含んでいる。ポリオレフィンは比較的硬い樹脂であり、熱可塑性エラストマーは比較的柔らかい樹脂である。これらの樹脂の混合割合が連続的に変化することで、フィラメント5の物性を適切に連続的に変化させることができる。
【0043】
フィラメント5の長手方向の任意の位置において、熱可塑性エラストマーの割合は、80質量%以下である。フィラメント5において熱可塑性エラストマーが多すぎると、フィラメント5が柔らかくなりすぎて、ノズル80の内部でフィラメント5が詰まってしまう。本件発明者らが確認したところ、フィラメント5の長手方向の任意の位置において、熱可塑性エラストマーの割合は、80質量%より多いと、ノズル80の内部でフィラメント5が詰まった。フィラメント5において熱可塑性エラストマーが80質量%以下であると、ノズル80の内部でフィラメント5が詰まることなく、三次元構造物1を製造できる。
【0044】
本実施の形態のフィラメント5を製造するフィラメント製造装置10は、二軸押出機20と、冷却ファン30と、スプール40と、フィラメントワインダー50と、を有している。二軸押出機20は、2種以上の異なる樹脂材料を溶融混合して押出口24からフィラメント5を押し出す。樹脂材料の割合を連続的に変化させることで、製造されるフィラメント5の物性を適切に連続的に変化させることができる。冷却ファン30は、押出口24から押し出されたフィラメント5を冷却する。押出口24から押し出されたフィラメント5を素早く冷却することで、フィラメント5が延びることを抑制できる。フィラメントワインダー50は、スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を調節する。フィラメント5が適切な速度で巻き取られることで、フィラメント5が延びることを抑制できる。フィラメント5が延びて線幅が細くなくことが抑制される。本実施の形態のフィラメント製造装置10により、物性が連続的に変化しており、且つ、線幅が略一定であるフィラメント5を製造できる。
【0045】
冷却ファン30は、フィラメント5の鉛直方向の下方に配置されている。冷却ファン30は、フィラメント5に鉛直方向の下方から空気を送風することでフィラメント5を冷却する。送風された空気により、フィラメント5は、鉛直方向の上方への力を受ける。フィラメント5が重力によって鉛直方向の下方に延びることが低減される。フィラメント5が延びて線幅が細くなることが抑制される。
【0046】
冷却ファン30の回転数は、2500rpm以上3000rpm以下である。冷却ファン30の回転数が大きすぎないため、送風された空気によってフィラメント5が揺れてしまい、スプール40によるフィラメント5の巻き取りが不安定になることが抑制される。冷却ファン30の回転数が小さすぎないため、フィラメント5の冷却が不十分でスプール40に巻き取られる際にフィラメント5が延びて線幅が細くなることが抑制される。
【0047】
鉛直方向において、スプール40がフィラメント5を巻き取る位置は、押出口24より高い。押出口24から押し出されたフィラメント5がスプール40に巻き取られるまでの間で撓んで線幅が細くなることが抑制される。
【0048】
スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対応する速度に調節される。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度が二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対して速すぎて、フィラメント5が延びて線幅が小さくなることが抑制される。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度が二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対して遅すぎて、押し出されたフィラメント5が塊になって線幅が大きくなることが抑制される。
【0049】
スプール40がフィラメント5を巻き取る速度は、3m/分以上5m/分以下である。スプール40がフィラメント5を巻き取る速度を二軸押出機20がフィラメント5を押し出す速度に対応した適切な速度にできる。
【0050】
三次元構造物の製造装置60において、ノズル80の内部は、テフロンで被覆されている。テフロンは滑り性に優れるため、溶融したフィラメント5がノズル80の内部で詰まることが抑制される。特に、フィラメント5が柔らかい場合、言い換えるとフィラメント5が含む熱可塑性樹脂の割合が大きい場合、ノズル80の内部がテフロンで被覆されていることで、溶融したフィラメント5がノズル80の内部で詰まることが抑制される効果を顕著に奏することができる。
【0051】
三次元構造物の製造装置60において、スタンド70は、回転可能であり、且つノズル80に対して近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能である。スプール40から送り出されるフィラメント5がノズル80の方向を向くよう、スプール40を支持するスタンド70が回転することで、フィラメント5がスプール40から送り出される際にフィラメント5が受ける抵抗を小さくできる。スプール40を支持するスタンド70がノズル80に対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動することで、フィラメント5が他の部材に接触して抵抗を受ける可能性を小さくできる。フィラメント5をスプール40からノズル80に適切に送ることができる。
【0052】
三次元構造物の製造装置60によってフィラメント5を用いて製造される三次元構造物1に含まれる2種以上の樹脂の混合割合は、第1方向d1に沿って連続的に変化している。フィラメント5を用いることで、第1方向d1に沿って物性が連続的に変化している三次元構造物1を得ることができる。例えば、第1方向d1に沿って硬さや色彩が連続的に変化した三次元構造物1を得ることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態のフィラメント5は、2種以上の樹脂の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化しており、フィラメント5の最大の線幅と最小の線幅との差は、0.1mm以下である。フィラメント5を用いて三次元構造物1を製造することで、三次元構造物1の物性を連続的に変化させることができる。
【0054】
本開示の態様は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した実施の形態に係る内容に限定されない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される各開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【実施例0055】
以下、実施例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。例えばフィラメント5を製造する条件やフィラメント5に含まれる熱可塑性エラストマーの割合等は、用いられる熱可塑性エラストマーの種類やポリオレフィンの種類等によって適宜に選択され得る。
【0056】
フィラメント製造装置を用いて、以下の条件でフィラメントを製造した。フィラメント製造装置の二軸押出機の投入口に、ポリオレフィンの一種であるポリプロピレン(プライムポリマー社製 Prime Polypro J105G)のペレット及び/又は熱可塑性樹脂であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学社製 オレフィン系熱可塑性エラストマーミラストマー6030NS)のペレットを投入した。投入する材料の割合は、実施例及び比較例によって異なる。二軸押出機のシリンダの内部の温度は180℃であり、スクリューの回転速度は10rpmとした。押出口の内径は1.75mmであった。
【0057】
二軸押出機から押し出されるフィラメントを冷却するよう冷却ファン(Mauknci社製 MU-8CM2KI)を配置した。フィラメントが延びる方向に沿って、直径80mmの冷却ファンを4つ並べた。冷却ファンの間隔は30mmとした。冷却ファンは、フィラメントの鉛直方向の下方に配置した。冷却ファンの回転数は、2800rpmであった。
【0058】
フィラメントを任意の速度でスプールに巻き取るよう、フィラメントワインダー(noztek社製 Noztek Filament Winder 1.0)を配置した。フィラメントワインダーの巻き取り速度は、4m/分であった。
【0059】
フィラメント製造装置の二軸押出機に投入する樹脂材料の割合を連続的に変化させて、実施例及び比較例に係るフィラメントを製造した。実施例1のフィラメントは、二軸押出機に投入するポリプロピレンとオレフィン系熱可塑性エラストマーとの割合を10:0から2:8に連続的に変化させて製造した。実施例2のフィラメントは、二軸押出機に投入するポリプロピレンとオレフィン系熱可塑性エラストマーとの割合を2:8から10:0に連続的に変化させて製造した。比較例1のフィラメントは、ポリプロピレンのみを二軸押出機に投入して製造した。比較例2のフィラメントは、二軸押出機に投入するポリプロピレンとオレフィン系熱可塑性エラストマーとの割合を2:8で一定にして製造した。
【0060】
各実施例及び各比較例のフィラメントを用いて、三次元構造物の製造装置(Raise3D Pro 2)によって、図9に示す試験用三次元構造物3を製造した。三次元構造物の製造装置において、ノズル(Raise 3D 純正ノズル J3D0F7)の内部の温度は240℃、ノズルからフィラメントを射出する速度は30mm/秒とした。ノズルの射出孔の内径は、0.5mmである。ノズルの内部は、テフロンで被覆されている。
【0061】
フィラメントが巻き取られているスプールは、スタンド(Raise 3D 首振りスタンド RSJP3D-02)に支持されている。スタンドは、回転可能であり、且つノズルに対して近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能である。スタンドが適切に回転及び移動しながら、フィラメントがスプールからノズルに送り出される。
【0062】
製造される試験用三次元構造物3は、高さ20mm、幅40mm、長さ200mm、厚さ5mmの筒型であった。各実施例及び各比較例のフィラメントを用いた試験用三次元構造物に対して、試験装置90(卓上試験機 株式会社島津製作所製 EZ-S)を用いて、片持ち梁曲げ試験を行った。
【0063】
片持ち梁曲げ試験では、図10に示すように試験用三次元構造物3の長さ方向における一端を治具91に固定し、図11に示すように他端に加重部95によって上方から下方に力を加えて、他端の変位Xを測定した。実施例1の試験用三次元構造物3では、治具91に固定された一端に近い部分おいてポリプロピレンが多く含まれており、加重部95によって力を加えられる他端に近い部分において、オレフィン系熱可塑性エラストマーが多く含まれている。実施例2の試験用三次元構造物3では、治具91に固定された一端に近い部分おいてオレフィン系熱可塑性エラストマーが多く含まれており、加重部95によって力を加えられる他端に近い部分において、ポリプロピレンが多く含まれている。加重が適切に加わるよう、試験用三次元構造物3の他端には、図示しない蓋が設けられいる。
【0064】
各実施例及び各比較例の試験用三次元構造物3について、他端の変位Xと加重部95が加えた力との関係を図12のグラフに示す。
【0065】
図12において、実施例1,2と比較例1,2との比較から、固定された一端に近い部分における樹脂によって他端に加重を加えたときの物性の傾向が異なることが理解される。実施例1と比較例1との比較及び実施例2と比較例2との比較から、三次元構造物の製造に用いられるフィラメントに含まれる材料の混合割合が長手方向に沿って連続的に変化していることで、三次元構造物の物性が連続的に変化していることが理解される。実施例1と実施例2との比較から、三次元構造物の物性が同様に連続的に変化していても、固定された一端に近い部分における樹脂が異なると物性が大きく異なることが理解される。
【符号の説明】
【0066】
1 三次元構造物
3 試験用三次元構造物
5 フィラメント
10 フィラメント製造装置
20 二軸押出機
21 投入口
22 シリンダ
23 スクリュー
24 押出口
30 冷却ファン
40 スプール
50 フィラメントワインダー
60 三次元構造物の製造装置
70 スタンド
80 ノズル
90 試験装置
91 治具
95 加重部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12