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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005100
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20240110BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240110BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105118
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周藤 勝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA35
5K067AA41
(57)【要約】
【課題】無線通信装置間の接続に関し、通信回線の確立に至る処理効率を向上させる。
【解決手段】無線通信装置は、無線通信資源を所定範囲に限定する第1の接続方法による相手装置との接続処理を開始することと、第1の接続方法による相手装置との接続処理において、無線通信資源を所定範囲に限定しない第2の接続方法による相手装置との接続処理で用いるパラメータを相手装置と調整することと、第1の接続方法による相手装置との接続処理において調整されたパラメータを用いて第2の接続方法による相手装置との接続を確立することと、を実行する制御部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信資源を所定範囲に限定する第1の接続方法による相手装置との接続処理を開始することと、
前記第1の接続方法による前記相手装置との接続処理において、前記無線通信資源を前記所定範囲に限定しない第2の接続方法による前記相手装置との接続処理で用いるパラメータを前記相手装置と調整することと、
前記第1の接続方法による前記相手装置との接続処理において調整された前記パラメータを用いて前記第2の接続方法による前記相手装置との接続を確立することと、を実行する制御部を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記第1の接続方法は、Wi-Fi Aware(登録商標)による接続であり、前記第2の接続
方法は、SAP(アクセスポイントモード)/STA(ステーションモード)による接続である請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記調整することは、前記Wi-Fi Aware(登録商標)におけるService Discovery Frameを用いて、IEEE 802.11規格の無線LAN接続におけるCapability情報のうちの少なくと
も1つの種類の情報を調整することを含む請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記調整することは、前記Wi-Fi Aware(登録商標)におけるService Discovery Frameを用いて、無線LAN接続においてビーコンで通知される情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を調整することを含む請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記調整することは、前記Wi-Fi Aware(登録商標)におけるService Discovery Frameを用いて、無線LAN接続におけるSecurity情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を授受することを含む請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記調整することは、前記Wi-Fi Aware(登録商標)におけるService Discovery Frameを用いて、無線LAN接続におけるプローブ要求と応答、アソシエーション要求と許可応答、または、4ウェイハンドシェイクで用いられる情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を授受することを含む請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記調整することは、前記相手装置との距離を測定することと、
前記測定された距離に基づいて前記相手装置との接続の可否を判断することとを含む請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
無線通信資源を所定範囲に限定する第1の接続方法による相手装置との接続処理を開始することと、
前記第1の接続方法による前記相手装置との接続処理において、前記無線通信資源を前記所定範囲に限定しない第2の接続方法による前記相手装置との接続処理で用いるパラメータを前記相手装置と調整することと、
前記第1の接続方法による前記相手装置との接続処理において調整された前記パラメータを用いて前記第2の接続方法による前記相手装置との接続を確立することと、を実行する無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE 802.11に準拠する無線通信装置間でWi-Fi(Wireless Fidelity
)接続が行われる際には、例えば、SAP(Service Access Point)モード/STA(Station)モードによる接続手順を経て通信回線が確立される。
【0003】
なお、本明細書で説明する技術に関連する技術が記載されている先行技術文献としては、以下の特許文献が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-520580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信装置間の接続手順においては、通信回線を利用するための共通のパラメータが双方の無線通信装置のそれぞれに事前に設定されていることが条件となる。このため、双方の無線通信装置のそれぞれに共通するパラメータを設定するための手間が生じていた。この結果、無線通信装置間の接続手順において、消費電流、接続時の通信速度等で例示される様々な観点で改善の余地がある。
【0006】
本開示は、無線通信装置間の接続に関し、通信回線の確立に至る処理効率の向上が可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面における無線通信装置は、無線通信資源を所定範囲に限定する第1の接続方法による相手装置との接続処理を開始することと、第1の接続方法による相手装置との接続処理において、無線通信資源を所定範囲に限定しない第2の接続方法による相手装置との接続処理で用いるパラメータを相手装置と調整することと、第1の接続方法による相手装置との接続処理において調整されたパラメータを用いて第2の接続方法による相手装置との接続を確立することと、を実行する制御部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、通信回線の確立に至る処理効率の向上が可能な技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、比較例1における無線通信装置間のWi-Fi接続に関する接続手順を説明する図である。
図2図2は、比較例2のWi-Fi Aware(登録商標)機能による無線通信装置間の接続手順を説明する図である。
図3図3は、実施形態に係る無線通信装置間のWi-Fi接続に関する接続手順を説明する図である。
図4図4は、実施形態に係る無線通信装置のハードウェア構成を示す図である。
図5図5は、SDFを介して授受されるSAP/STA接続に関する情報の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る通信方式の特性と他の通信方式の特性との比較を説明する図である。
図7図7は、SAPとして機能する無線通信装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、STAとして機能する無線通信装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例に係る無線通信装置間において、Wi-Fi Awareを介してSecurity情報が授受される形態を説明する図である。
図10図10は、変形例に係る無線通信装置間において、Wi-Fi Awareを介してCapability情報が授受される形態を説明する図である。
図11図11は、変形例に係る各無線通信装置に設定されているCapability情報の一例を示す図である。
図12図12は、変形例に係る無線通信装置間において、Wi-Fi Awareを介してRanging情報が授受される形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態に係る無線通信装置および無線通信方法を例示する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0011】
<比較例1>
先ず、図1を参照し、比較例1における無線通信装置間のWi-Fi接続に関する接続手順を説明する。図1において、「Device A」および「Device B」で表される無線通信装置101、無線通信装置102のそれぞれは、IEEE 802.11に準拠する無線通信装置である。「Device B」である無線通信装置102は、無線LAN(Local Area Network)接続における親機であり、アクセスポイント(Access Point)として機能する。「Device A」である無線通信装置101は、無線通信装置102が提供する無線LANを利用するクライアント(子機)として機能する。アクセスポイントとして機能する無線通信装置102は、例えば、企業、法人、公共施設、自宅等に設けられた中継器(ルータ等)である。クライアントとして機能する無線通信装置101は、例えば、無線LANデバイスを搭載したスマートフォン等である。但し、テザリング機能を有するスマートフォン等が親機として機能し、Wi-Fi接続されたノートPC(Personal Computer)、タブレ
ットPC、ゲーム機等を子機として、当該子機をインターネット等のネットワークに接続させる形態をも含み得る。
【0012】
「Device A」である無線通信装置101と、「Device B」である無線通信装置102とがWi-Fi接続されるためには、手順Z101に示されるように、それぞれの無線通信装置で当該接続に関するパラメータを予め設定しておくことが条件となる。このようなパラメータとして、例えば、SSID(Service Set Identifier)を含む無線ネットワーク名称、認証方式、暗号化方式、暗号化キー(パスワード)等のセキュリティ情報が例示される。以下、「Device A」である無線通信装置101を「子機101」、「Device B」である無線通信装置102を「親機102」ともいう。このようなパラメータの設定は、例えば、親機102においては、当該親機を管理する管理者等、子機101においては当該子機を利用する利用者(ユーザ)によって行われる。
【0013】
子機101、親機102のそれぞれは、予め設定された接続に関するパラメータにしたがって起動し、STAモードおよびSAPモードに移行する(手順Z102、Z103)。そして、SAPモードに移行した親機102は、例えば、自身が管理するSAP情報をビーコン(Beacon)信号に含め、一定間隔(例えば100ms間隔)で発信する(手順Z106)。ビーコン信号を通じて報知されるSAP情報には、例えば、親機102に設定
されたSSID、セキュリティ設定(暗号化機能の有効の有無、暗号化方式、認証方式等)等が含まれる。STAモードに移行した子機101では、例えば、無線周波数帯域をスキャンし、親機102が発信するビーコン信号に含まれるSSIDを受信する(手順Z105)。そして、子機101は、受信したSSIDと予め自身に設定されたSSIDとが一致するかを判別し、一致する場合には親機102に対して認証要求を行う(パッシブスキャン)。なお、子機101では、例えば、一定期間内に親機102が発信するビーコン信号が受信されなかった場合等において、自身に設定されたSSIDが含まれるプローブリクエストを発信するアクティブスキャンが行われる。アクティブスキャンでは、例えば、プローブリクエストを受信した親機102は、受信したSSIDが自身に設定されたSSIDと同一である場合には、当該リクエストに応答する。親機102からプローブリクエストに対する応答を受信した子機101では、親機102に対して認証要求が行われる。
【0014】
このように、手順Z104では、親機102と子機101との間でそれぞれに設定されたSSIDが合致することを条件として、相互に設定された認証方式にしたがって認証が行われる。そして認証後、子機101から親機102に対して接続要求が行われ、当該接続要求に対する許可応答が親機102から子機101に送信されると、親機102と子機101との間のWi-Fi接続が完了し、通信を行うことが可能になる(手順Z107)。
【0015】
図1に示される接続手順では、例えば、手順Z104において、親機102によるSAP情報の報知は、ビーコン信号に含まれるSSIDを受信した子機101からの認証要求が受信されるまで継続されることになる。アクティブスキャンが行われる場合でも、子機101から発信されるプローブリクエストは、当該リクエストに含まれるSSIDを受信した親機102からのリクエスト応答が受信されるまで定期的に継続されることになる。このため、実線吹き出しZ108に示されるように、親機102、子機101のそれぞれでは認証要求が行われるまでの待ち受け電力が消費されることになる。
【0016】
また、Wi-Fi接続後に行われる、子機101と親機102との通信では、それぞれの無線通信装置がサポート可能なCapability(例えば、IEEE802.11の異なる世代におけるQos、周波数帯を含むサポートチャンネル等)について事前に調整する手段がない。このため、実線吹き出しZ109に示されるように、Wi-Fi接続後の通信では、一部のパラメータを除きSAP/STAのそれぞれのCapabilityが考慮されない。すなわち、授受されるパラメータが固定のため、子機101と親機102と間の能力差異によるオーバヘッドが発生する可能性がある。例えば、親機102の対応可能なIEEE802.11の世代が「a」、「b」、「g」、「n」であり、子機101のIEEE802.11の対応世代が「g」である場合、親機102から通知される「a」、「b」、「n」に関する情報が通信のオーバヘッドになり得る。また、法人向け等にオプションで提供される音声優先といったQoS(Quality of Service)情報の通知は、当該QoSを使用しない子機101においては通信のオーバヘッドになる。親機102がサポート可能な周波数帯等の情報通知(2.4GHz、5GHz)等についても同様である。
【0017】
<比較例2>
次に、図2を参照し、比較例2の、Wi-Fi Aware(登録商標)機能による無線通信装置
間の接続手順を説明する。比較例2の形態では、近接認識ネットワーキング(NAN:Neighbor Awareness Networking)により、IEEE 802.11規格に準拠する無線通信装置101で
ある「Device A」および無線通信装置102である「Device B」が接続される。近接認識ネットワーキングによる無線通信装置間のWi-Fi Aware接続により、無線LANの電波が
届く距離(例えば、数mから数十m)内の双方向通信が可能になる。
【0018】
図2の手順Z110、Z111に示されるように、Wi-Fi Awareによる接続が行われる
場合、「Device A」および「Device B」のそれぞれは、自身のWi-Fi Aware機能を起動しWi-Fi Awareモードに移行する。Wi-Fi Awareモードに移行した「Device A」と「Device B
」との間では、サブスクライブ/パブリッシュ(Subscribe/Publish)方式による接続手
順が開始される(手順Z112)。「Device A」および「Device B」のそれぞれは、例えば、2.4GHz内の特定のチャンネルで接続対象を検出するための待ち受けを行うとともに、特定のサービスID(Service ID)を非同期で相互に送信する。「Device A」または「Device B」の何れかが、接続対象が発信する特定のサービスIDを検出した場合には、当該サービスIDを指定してサブスクライブ/パブリッシュの交換が行われる。なお、「Device A」および「Device B」の何れがサブスクライブであるかパブリッシュであるかは、予め設定される。
【0019】
サブスクライブ/パブリッシュ交換後、手順Z113に示されるように、「Device A」と「Device B」との間ではサービスディスカバリィフレーム(Service Discovery Frame
、以下、「SDF」ともいう)を介して、通信を確立するための種々の情報交換(例えば、スロット等の特定)が行われる。そして、サービスディスカバリィフレーム(SDF)を介した情報交換後、手順Z114に示されるように、「Device A」と「Device B」との間では、特定された通信に関するチャンネル、スロットを用いてWi-Fi Aware通信が行わ
れる。
【0020】
比較例2の形態では、「Device A」および「Device B」のそれぞれは、特定のチャンネルで接続対象を検出するための待ち受けを行うため、比較例1のSAP/STAモードによる待ち受け時に比べて消費電力は少ない。一方、比較例2の形態では、手順Z114で行われる通信は、サービスIDが指定された「Device A」と「Device B」との間でデータ送受の必要性が生じたときに行われることを想定したものであり、データ量、通信速度等が制限されている。このため、実線吹き出しZ115に示されるように、Wi-Fi Aware通
信はSAP/STAモードによる通信と比べて通信速度が低下することになる。
【0021】
<実施形態1>
図3は、本実施形態に係る無線通信装置間のWi-Fi接続に関する接続手順を説明する図である。図3において、「Device A」および「Device B」で表される無線通信装置10、無線通信装置11のそれぞれは、本実施形態に係る無線通信装置である。
【0022】
本実施形態に係る各無線通信装置は、SAP/STAによるWi-Fi接続が行われる前に、Wi-Fi Aware機能を起動し、Wi-Fi Awareモードの状態で特定のサービスIDを指定する通信対象との間の接続処理を開始する。そして、本実施形態に係る無線通信装置間においては、サービスディスカバリィフレーム(SDF)を介して、Capability、Security等のSAP/STA接続に関する情報が授受される。本実施形態においては、SDFを介して授受された情報に基づいて「Device A」である無線通信装置10は子機として機能するSTAモード、「Device B」である無線通信装置11は親機として機能するSAPモードに移行し、Wi-Fi接続を確立する。
【0023】
この結果、本実施形態に係る無線通信装置間では、Wi-Fi接続が確立されるまでの待ち受けに関する消費電力の改善、Capability等の調整による不要なオーバヘッドの改善が可能になる。本実施形態によれば、通信回線の確立に至る処理効率の向上が可能になる。なお、本実施形態において、Wi-Fi Awareは「無線通信資源を所定範囲に限定する第1
の接続方法」の一例であり、SAP/STAは「無線通信資源を所定範囲に限定しない第2の接続方法」の一例である。また、無線通信装置10、無線通信装置11のそれぞれは、本実施形態の接続手順によって接続される「相手装置」ともいえる。
【0024】
本実施形態に係る無線通信装置10、11は、IEEE 802.11規格に準拠する無線通信装
置である。ここで、無線通信装置10、11は、例えば、図4に示されるハードウェア構成で実現される。以下、無線通信装置10を説明例としてハードウェア構成を説明する。図4に示されるように、無線通信装置10は、接続バス206によって相互に接続されたプロセッサ201、主記憶部202、補助記憶部203、入出力部204、通信部205を構成要素に含むコンピュータである。主記憶部202および補助記憶部203はメモリを構成し、無線通信装置10が読み取り可能な記録媒体である。上記の構成要素はそれぞれ複数に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0025】
プロセッサ201は、無線通信装置10全体の制御を行う中央処理演算装置である。プロセッサ201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。プロセッサ201は
、制御部の一例である。プロセッサ201は、例えば、補助記憶部203に記憶されたプログラムを主記憶部202の作業領域に実行可能に展開し、当該プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことで所定の目的に合致した機能を提供する。
【0026】
主記憶部202は、プロセッサ201が実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶部202は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶部203は、可搬記録媒体、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))
を含むシリコンディスク、ソリッドステートドライブ装置、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置等である。可搬記録媒体は、例えば、USBメモリ、SDカード等の記録媒体である。補助記憶部203は、各種のプログラムおよび各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部203は、主記憶部202を補助する記憶領域として使用され、プロセッサ201が実行するプログラム、プロセッサ201が処理するデータ等を記憶する。補助記憶部203には、例えば、オペレーティングシステム(OS:Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部205を介して接続された機器との間でデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。ここで、無線通信装置10は、単一のコンピュータであってもよいし、複数台のコンピュータが連携したものであってもよい。また、補助記憶部203に格納される情報は主記憶部202に格納されてもよく、主記憶部202に格納される情報が補助記憶部203に格納されてもよい。なお、無線通信装置10で実行される一連の処理については、上述のように、プロセッサ201がプログラムにより実行する。ただし、一連の処理の少なくとも一部はデジタル回路等のハードウェアにより実行させることもできる。
【0027】
入出力部204は、無線通信装置10に接続される機器との間でデータの入出力を行うインターフェースである。入出力部204には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイスが接続される。入出力部204を介し、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等が受け付けられる。また、入出力部204には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro luminescence)パネル、有機ELパネル等の表示デバイス、スピーカ等の出力デバイスが接続される。入出力部204を介して、プロセッサ201で処理されるデータや情報、主記憶部202、補助記憶部203に記憶されるデータや情報が出力される。通信部205は、通信ネットワークとの通信インターフェースである。通信部205は、通信ネットワークとの接続方式に応じて適宜の構成を採用できる。通信部205として、LAN(Local Area Network)インターフェースボード、無線通信のための無線通信回路等が例示される。
【0028】
図3に戻り、「Device A」および「Device B」のそれぞれは、Wi-Fi Aware機能を起動
し、Wi-Fi Awareモードに移行する(手順Z2、Z3)。そして、Wi-Fi Awareモードに移行した「Device A」と「Device B」との間では、比較例2で説明したように、サブスクライブ/パブリッシュ(Subscribe/Publish)方式による接続手順が開始される(手順Z4
)。手順Z4において、「Device A」および「Device B」のそれぞれは、所定の周波数帯(例えば、2.4GHz)の特定のチャンネルで接続対象を検出するための待ち受けを行うとともに、特定のサービスID(Service ID)を非同期で相互に送信する。待ち受け時の「Device A」または「Device B」の何れかが、接続対象が発信する特定のサービスIDを検出した場合には、当該サービスIDを指定してサブスクライブ/パブリッシュの交換が行われる。例えば、SAPとして機能する「Device B」がパブリッシャ、STAとして機能する「Device A」がサブスクライバに設定される。但し、サブスクライブ/パブリッシュ(Subscribe/Publish)方式による接続手順では、「Device A」および「Device B」
の何れがサブスクライバとなるかパブリッシャとなるかは、予め適宜に設定される。
【0029】
なお、実線吹き出しZ9に示されるように、「Device A」および「Device B」のそれぞれがWi-Fi Awareモードに移行した状態(手順Z1)では、特定のチャンネルで接続対象
を検出する待ち受けが行われるため、消費電力を抑制する効果が期待できる。
【0030】
「Device A」と「Device B」との間では、サービスIDが指定されたサブスクライブ/パブリッシュの交換後、サービスディスカバリィフレーム(SDF:Service Discovery Frame)を介して、通信を確立するための種々の情報の授受が行われる(手順Z5)。実
線吹き出しZ10に示されるように、サービスディスカバリィフレームを介して「Device
A」と「Device B」との間でSAP/STA接続に関する情報がWi-Fi接続前に授受できるため、Capability、Security等の相互調整が可能になる。
【0031】
図5は、サービスディスカバリィフレームを介して授受されるSAP/STA接続に関する情報の一例を説明する図である。図5に示されるように、サービスディスカバリィフレームを介して授受されるSAP/STA接続に関する情報(SAP/STA情報)として、IEEE 802.11規格の無線LAN接続におけるCapability、Security、Rangingといった情報が例示される。
【0032】
Capabilityとして、例えば、「Device A」と「Device B」のそれぞれがサポート可能なIEEE802.11の世代規格(Supported Technology(11a/b/g/n/…))、QoS、サポートチャンネル(Supported Channel)等が例示される。このようなCapabilityが、Wi-Fi接
続前に「Device A」と「Device B」との間でやり取りされることで、Wi-Fi接続確立後の通信では、不要なCapabilityを削除した状態で通信できる。このため、オーバヘッドに伴うスループット、消費電力等が改善できる。例えば、STAとして機能する「Device
A」のIEEE802.11の対応世代が「a」であり、SAPとして機能する「Device B」のサポート可能な対応世代が「a」、「b」、「g」、「n」とする。SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device A」に不要な対応世代情報(「b」、「g」、「n」)を除外してWi-Fi接続確立と、その後の通信を行うことができる。同様にして、法人向け等にオプションで提供される音声優先といったQoSが「Device A」に対応しない場合では、「Device B」は、当該情報を除外して通信を行うことができる。また、サポートチャンネルが2.4GHzの周波数帯である「Device A」に対しては、「Device B」はサポートチャンネルの通知から5GHzの周波数帯を削除して通信できる。Wi-Fi接続後において、SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device A」の能力に応じた最適な通信が可能になる。
【0033】
また、Securityとして、「Device A」と「Device B」のそれぞれがサポート可能な暗号化方式、認証方式(Supported Auth./Encryption)、ID/Pass(識別情報とパスワードの認証方式等)、SSID、ステルスの有無、MAC情報等が例示される。これらの
SecurityがWi-Fi接続前に「Device A」と「Device B」との間でやり取りされることで、Wi-Fi接続確立後の通信では、Securityの向上、簡易接続が可能になる。例えば、STAとして機能する「Device A」が相対的にセキュリティレベルの高い暗号化方式をサポートしている場合では、当該暗号化方式を用いてWi-Fi通信を行うことで、セキュリティが向上できる。また、SSIDにやり取りにより、STAとして機能する「Device A」は、SAPとして機能する「Device B」のSSIDを把握できる。このため、SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device A」との接続に関し、STA側からSAPのSSIDを指定したプローブリクエストによるアクティブスキャン方式に限定することができる。SAP側では自身のSSIDに関し、不要な通知を抑制できる。ステルスの有無についても同様である。ステルス有の場合には、SAP側は自身のSSIDを含まないビーコン信号、あるいは、ビーコン信号自体を発信しないステルスモードを使用することで、不要なSSIDの通知が抑制できる。また、例えば、STAとして機能する「Device A」のMACアドレス情報をフィルタリング登録することで、SAPとして機能する「Device B」では当該MACアドレスに限定して接続許可できるため、接続処理が簡便になる。なお、Securityは、無線LAN接続におけるプローブ要求と応答、アソシエーション要求と許可応答、または、4ウェイハンドシェイクで用いられる情報ということもできる。
【0034】
さらに、Rangingとして、通信相手にデータを送信してから応答が返ってくるまでの時
間(通信の往復時間)であるRTT(Round Trip Time)、SAPからの電波の強さを示
すRSSI(Received Signal Strength Indicator)情報等が例示される。例えば、SAPとして機能する「Device B」は、SDFを介してRTTを計測することで、STAとして機能する「Device A」との間の距離を推定することができる。そして、SAP側では、「Device A」との間の距離が通信品質を確保するために十分な距離になることを条件としてWi-Fi接続が確立できる。また、SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device A」において検出されたRSSIを取得することで、接続対象側の電波強度が把握できる。この場合においても、SAP側では、STA側の電波強度が通信品質を確保するために十分な電波強度になることを条件としてWi-Fi接続が確立できる。これらのRangingがWi-Fi接続前に「Device A」と「Device B」との間でやり取
りされることで、低品質な通信接続が回避できる。
【0035】
図3に戻り、SAP/STA接続に関する情報の授受後、「Device A」はSTAモード、「Device B」はSAPモードに移行する(手順Z8、Z7)。なお、STAモードは「ステーションモード」ともいえ、SAPモードは「アクセスポイントモード」ともいえる。そして、SAPモードに移行した「Device B」とSTAモードに移行した「Device A」との間では、SDFを介して授受されたSecurity情報に基づいて調整された認証処理、接続処理が行われ、Wi-Fi接続が確立される(手順Z8)。実線吹き出しZ1Aに示されるように、Wi-Fi接続後の「Device A」と「Device B」との間では、SDFを介して調整されたSAP/STA接続に関する情報に基づくWi-Fi通信により、通信速度が高速化される。
【0036】
図6は、本実施形態に係る通信方式の特性と他の通信方式の特性との比較を説明する図である。図6において、通信方式カラムの「SAP/STA通信」は比較例1、「Wi-Fi Aware通信」は比較例2で説明した通信方式である。同様にして、「実施例による通信」
は本実施形態における通信方式である。
【0037】
図6に示されるように、比較例1の「SAP/STA通信」では、待ち受け時のWi-Fi
消費電流は、STA側では12mA(Scan間隔は10secを想定)、SAP側では107
mA(Beacon Intervalは100msを想定)である。また、通信速度は、IEEE802.11の
世代規格を「n」(2.4GHz)、MIMO(Multiple Input Multiple Output)を想
定した場合、最大144Mbpsが可能である。また、比較例2の「Wi-Fi Aware通信」では
、待ち受け時のWi-Fi消費電流は、SAP/STAのそれぞれに9mAであり、最大54Mbpsの通信速度が可能である。これらに対し、本実施形態に係る通信方式では、待ち受け
時のWi-Fi消費電流は、SAP/STAのそれぞれに9mAであり、最大144Mbpsの通
信速度が提供可能になる。すなわち、本実施形態においては、待ち受け時のWi-Fi消費電
流に関し「Wi-Fi Aware通信」の優位点、通信速度に関し「SAP/STA通信」の優位
点を取り入れることができる。本実施形態に係る無線通信装置間においては、SDFを介して授受されたSAP/STA接続に関する情報に基づいて各無線通信装置の能力間の差異をWi-Fi接続前に調整できるため、各無線通信装置の能力に応じた最適なWi-Fi接続が提供できる。
【0038】
(処理の流れ)
次に、図7から図8を参照して、本実施形態に係る無線通信装置(10、11)の処理を説明する。図7は、SAPとして機能する無線通信装置11の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8は、STAとして機能する無線通信装置10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、SAPとして機能する無線通信装置11は、図3に示される「Device B」であり、手順Z4におけるサブスクライブ/パブリッシュ(Subscribe/Publish)ではパブリッシャに設定されるものとする。同様にして、STAとし
て機能する無線通信装置10は、図3に示される「Device A」であり、手順Z4におけるサブスクライブ/パブリッシュではサブスクライバに設定されるものとする。
【0039】
図7において、SAPとして機能する無線通信装置11は、Wi-Fi Aware機能を起動さ
せてWi-Fi Awareモードに移行する(Wi-Fi Aware起動)と、処理はステップS1に進む。ステップS1では、無線通信装置11は所定の周波数帯の特定のチャンネルで、サブスクライバに設定されたSTAとして機能する無線通信装置10が発信する特定のサービスID(Service ID=xx)を待ち受ける。ステップS1において、特定のサービスIDが指定
されたサブスクライブ(Subscribe)を検出された場合には(ステップS1、“Yes”
)、処理はステップS2に進み、そうでない場合には(ステップS1、“No”)、処理はステップS1を繰り返す。
【0040】
ステップS2では、サービスディスカバリィフレーム(SDF:Service Discovery Frame)を介してSAP/STA接続に関する情報が授受される。このような情報として、
図5を用いて説明したように、Capability、Security、Ranging等の情報が例示される。
【0041】
ステップS2において、例えば、パブリッシャに設定された無線通信装置11は、サブスクライバに設定された無線通信装置10に対して、サポート可能なIEEE802.11の世代規格(Supported Technology(11a/b/g/n/…))等をSAP側のCapability情報として通知する。同様にして、無線通信装置11は、SAP側のSecurity情報として、サポート可能な暗号化方式、認証方式(Authentication、Password)等を無線通信装置10に通知する。
【0042】
また、サブスクライバである無線通信装置10は、パブリッシャである無線通信装置11に対して、サポートチャンネル(Supported Channel)、IEEE802.11の対応世代(Selected Technology)、MACアドレス等をSTA側のCapability情報として通知する。同様にして、無線通信装置10は、無線通信装置11に対して、RSSI等をSTA側のRanging情報として通知する。但し、このようなパブリッシャ/サブスクライバ間のSAP/
STA接続に関する情報のやり取りは一例であり、適宜に設定できる。例えば、サブスクライバがSTA側のCapability情報として、サポート可能なIEEE802.11の世代規格(Supported Technology(11a/b/g/n/…))等をパブリッシャに通知してもよい。同様にして、サブスクライバがパブリッシャに対して、STA側のSecurity情報を通知してもよく、パブリッシャがサブスクライバに対してRanging情報の通知を要求してもよい。少なくとも、
パブリッシャ/サブスクライバ間で、サービスディスカバリィフレームを介したSAP/STA接続に関する情報が授受されればよい。ステップS2の処理後、処理はステップS3に進む。
【0043】
ステップS3では、無線通信装置11は、サービスディスカバリィフレームを介して授受されたSAP/STA接続に関する情報に基づき調整されたパラメータにしたがってSAPモードに移行すると、処理はステップS4に進む。ステップS4では、無線通信装置11は、一定期間内におけるSTAからの接続要求の有無を判定する。ステップS4において、一定期間内にSTAからの接続要求が有る場合には(ステップS4、“Yes”)、無線通信装置11は、当該STAに対するSAP/STA接続を確立する。そうでない場合には(ステップS4、“No”)、処理はステップS1に戻る。SAP/STA接続の確立後、無線通信装置11は、本ルーチンを一旦終了する。
【0044】
次に図8を説明する。図8において、STAとして機能する無線通信装置10は、Wi-Fi Aware機能を起動させてWi-Fi Awareモードに移行する(Wi-Fi Aware起動)と、処理は
ステップS11に進む。ステップS11では、無線通信装置10は所定の周波数帯の特定のチャンネルで、パブリッシャに設定されたSAPとして機能する無線通信装置11に対して特定のサービスID(Service ID=xx)を送信すると、処理はステップS12に進む
【0045】
ステップS12では、パブリッシャに設定されたSAPとして機能する無線通信装置11からの受信応答(Publish受信)の有無が判定される。ステップS12において、パブ
リッシャからの受信応答が検出された場合には(ステップS12、“Yes”)、処理はステップS13に進み、そうでない場合には(ステップS12、“No”)、処理はステップS11に進む。
【0046】
ステップS13では、図7のステップS2と同様の処理が行われる。すなわち、パブリッシャに設定されたSAPとして機能する無線通信装置11との間で、サービスディスカバリィフレーム(SDF:Service Discovery Frame)を介してSAP/STA接続に関
する情報が授受される。ステップS13の処理後、処理はステップS14に進む。ステップS14では、無線通信装置10は、サービスディスカバリィフレームを介して授受されたSAP/STA接続に関する情報に基づき調整されたパラメータにしたがってSTAモードに移行し、処理はステップS15に進む。
【0047】
ステップS15では、無線通信装置10は、一定期間内にSAPとの接続が成功したかを判定する。STAとして機能する無線通信装置10は、例えば、サービスディスカバリィフレームを介して授受された無線通信装置11のSSIDをプローブリクエストで送信する。無線通信装置10は、SAPとして機能する無線通信装置11からの応答(プローブレスポンス)を受信すると、サービスディスカバリィフレームを介して調整された認証方式にしたがって認証要求を行う。無線通信装置10は、SAPとして機能する無線通信装置11との間での相互認証、接続許可が成立すると、SAPとの接続が成功したものと判定する。ステップS15において、一定期間内にSAPとの接続が成功した場合には(ステップS15、“Yes”)、無線通信装置10はSAP/STA接続を確立する。そうでない場合には(ステップS15、“No”)、処理はステップS11に戻る。SAP/STA接続の確立後、無線通信装置10は、本ルーチンを一旦終了する。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態に係る無線通信装置間においては、SAP/STAによるWi-Fi接続が行われる前に、Wi-Fi AwareによるSAP/STA接続に関する
情報が授受できる。SAP/STA接続に関する情報として、Capability情報、Security情報、Ranging情報が授受できる。Capability情報の授受により、SAP側では、Capabil
ity情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を調整できる。例えば、STA側に不要なCapability情報を削除した状態で、Wi-Fi接続確立後の通信が可能になる。この結果
、不要なCapability情報の通知に起因するオーバヘッド、電力消費が改善でき、通信に係るスループットが向上できる。
【0049】
また、Security情報の授受により、SAP側では、Security情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を調整できるため、接続の簡易化、セキュリティの向上が可能になる。例えば、SAP側はSTAのMACアドレス情報をフィルタリング登録することで、当該MACアドレスに限定した接続許可が可能になる。また、例えば、STA側がセキュリティレベルの高い暗号化方式をサポートしている場合には、当該暗号化方式を用いることで通信に関するセキュリティが向上できる。
【0050】
さらに、Ranging情報の授受により、SAP/STA間の相対的な距離の推定が可能に
なり、STAにおける電波強度の度合いが把握できる。例えば、SAPは、STAとの間の距離が通信品質を確保するために十分な距離になることを条件としてWi-Fi接続を確立できる。同様にして、SAPは、STAの電波強度が通信品質を確保するために十分な電波強度になることを条件としてWi-Fi接続を確立できる。この結果、SAP/STA間の低品質な通信接続が回避できる。本実施の形態では、Wi-Fi Awareにより、Ranging情報を低消費電力で授受できる。したがって、従来よりも、短い時間間隔で、Ranging
情報の授受が可能となり、SAPは、STAとの間の距離が通信品質を確保するために十分な距離になったか否かをタイムリーに判断できる。
【0051】
本実施形態においては、Wi-Fi Awareを介して授受されたSAP/STA接続に関する
情報に基づいて、SAP/STAの能力間の差異をWi-Fi接続前に調整できるため、SAP/STAのそれぞれの能力に応じた最適なWi-Fi接続が提供できる。本実施形態によれば、無線通信装置間の接続に関し、通信回線の確立に至る処理効率が向上できる。
【0052】
<変形例>
Wi-Fi Awareを介して授受されるSAP/STA接続に関する情報(Capability情報、Security情報、Ranging情報等)は、個別に、あるいは個々の情報を組合せてやり取りを行うこともできる。以下の変形例の形態では、無線通信装置間において、Capability情報、Security情報、Ranging情報のそれぞれを個別に授受する形態を説明する。なお、変形例
においても、「Device A」および「Device B」で表される無線通信装置10、無線通信装置11のそれぞれは、IEEE 802.11に準拠する無線通信装置であり、前者はSTA、後者はSAPとして機能するものとして説明する。同様にして、SAPとして機能する「Device B」がパブリッシャ、STAとして機能する「Device A」がサブスクライバに設定されるものとして説明する。ただし、「Device B」がサブスクライバ、「Device A」がパブリッシャであってもよい。
【0053】
図9は、変形例に係る無線通信装置間において、Wi-Fi Awareを介してSecurity情報が
授受される形態を説明する図である。図9において、手順Z11に示されるように、SAPとして機能する無線通信装置11には、管理者等によりSAP/STA接続に関するSecurity情報が事前に設定されている。図5を用いて説明したように、Security情報にはSSID、サポート可能な暗号化方式、認証方式の種別、Password、ステルスの有無、IP設定(DHCP、固定)等が含まれている。
【0054】
実施形態1と同様にして、「Device A」および「Device B」のそれぞれは、Wi-Fi Aware機能を起動し、Wi-Fi Awareモードに移行する(手順Z12、Z13)。Wi-Fi Awareモ
ードに移行した「Device A」と「Device B」との間では、サブスクライブ/パブリッシュ
(Subscribe/Publish)方式による接続手順が開始される(手順Z14)。「Device A」
および「Device B」のそれぞれは、所定の周波数帯(例えば、2.4GHz)の特定のチャンネルで接続対象を検出するための待ち受けを行うとともに、特定のサービスID(Service ID)を非同期で相互に送信する。待ち受け時の「Device A」または「Device B」の何れかが、接続対象が発信する特定のサービスIDを検出した場合には、当該サービスIDを指定してサブスクライブ/パブリッシュのやり取りが行われる。そして、サービスディスカバリィフレーム(SDF:Service Discovery Frame)を介して、SAP/STA
接続に関するSecurity情報が授受される(手順Z15)。
【0055】
SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device A」のSecurity情報に応じて、SAP/STA接続に関するSecurityのパラメータを調整する。例えば、「Device B」は、暗号化規格としてWPA(Wi-Fi Protected Access)、WPA2、WPA3のそれぞれに対応可能であり、「Device A」の暗号化規格がWPA2に限定されている場合には、「Device B」の暗号化規格をWPA2に調整する。また、「Device A」の対応可能な暗号化規格がWPA2、WPA3である場合には、「Device B」は、暗号化規格をセキュリティの高いWPA3に調整する。
【0056】
サービスディスカバリィフレームを介してSAP/STA接続に関するSecurityの授受後、「Device A」はSTAモード、「Device B」はSAPモードに移行する(手順Z16、Z17)。そして、SAPモードに移行した「Device B」とSTAモードに移行した「Device A」との間では、サービスディスカバリィフレームを介して授受されたSecurity情報に基づいて調整された認証処理、接続処理が行われ、Wi-Fi接続が確立される(手順Z18、Z19、Z20)。例えば、「Device A」と「Device B」との間では、「Device B」のSSIDを指定したプローブ要求/応答(Probe Request/Response)が行われ、この後、「Device A」からアソシエーション要求(Association Request)が行われる。
「Device B」は「Device A」からのアソシエーション要求に対して許可応答(Association Response)を行い、「Device B」と「Device A」との間のアソシエーション手続きが完了する。そして、4ウェイハンドシェイク(4way Handshake)により、手順Z15で授受されたSecurity情報によって調整された暗号化規格にしたがって、通信に関する暗号鍵が相互に設定され、「Device B」と「Device A」との間のWi-Fi接続が確立される。
【0057】
「Device B」と「Device A」との間のWi-Fi接続が確立されると、「Device B」は、手順Z11で設定されているSecurity情報を、「Device A」との間で調整されたSecurity情報で更新する(手順Z21)。これにより、「Device B」は「Device A」との間で再度に接続されるときには、当該更新されたSecurity情報を用いて接続することが可能になる。
【0058】
以上により、変形例のWi-Fi Awareを介してSecurity情報が授受される形態では、Wi
-Fi接続確立後の通信におけるセキュリティの向上が可能であり、更新されたSecurity情報を用いることで接続手続(管理者、利用者等の入力)が簡易化できる。以上のように、変形例の形態の無線通信装置10、無線通信装置11は、Wi-Fi Aware(登録商標)に
おけるService Discovery Frameを用いて、無線LAN接続におけるプローブ要求と応答
、アソシエーション要求と許可応答、または、4ウェイハンドシェイクで用いられる情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を授受する。したがって、無線通信装置10、無線通信装置11は、低消費電力による通信で、セキュリティを向上し、簡易に相互に接続できる。また、無線通信装置10、無線通信装置11は、無線LAN接続においてビーコンで通知される情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を調整するので、セキュリティを向上し、簡易に相互に接続できる。
【0059】
次に、Wi-Fi Awareを介してCapability情報が授受される形態を説明する。図10は、
変形例に係る無線通信装置間において、Wi-Fi Awareを介してCapability情報が授受され
る形態を説明する図である。図10において、手順Z31からZ33は、実施形態1の手順Z2からZ4と同様であるため説明を省略する。図10の形態では、「Device B」と「Device A」との間で、サービスディスカバリィフレームを介して、SAP/STA接続に関するCapability情報が授受される(手順Z34)。
【0060】
図11は、「Device B」および「Device A」に設定されているCapability情報を説明する図である。図11(a)は、「Device B」に設定されているCapability情報の一例であり、図11(b)は「Device A」に設定されているCapability情報の一例である。図11(a)、(b)に示されるように、各デバイスに設定されるCapability情報は、所定の書式情報を含むヘッダーと、Capabilityパラメータが記述されたタグ情報から構成されている。そして、SAPとして機能する「Device B」のCapabilityパラメータが記述されたタグ情報は216バイトであり、STAとして機能する「Device A」のタグ情報は148バイトであることがわかる。
【0061】
SAPとして機能する「Device B」のCapabilityパラメータの内訳は、「Device A」と共通するパラメータが記述されたタグ領域Z40と、「Device A」に対して不要なパラメータ(機種に依存する機能に関する情報等)が記述されたタグ領域Z41から構成される。既に説明したように、タグ領域Z40には、「Device A」のタグ領域Z42に記述されたパラメータが、共通するパラメータとして記述される。タグ領域Z40には、例えば、SSID、対応周波数帯、対応チャンネル、通信時におけるデータレート、チャンネル、パワーセーブ関連、変調方式、アソシエーション手続きのセキュリティ、QoS関連のパラメータが含まれる。なお、これらのパラメータは、そのときどきの「Device A」と「Device B」に依存するものであり、必ずしも、常時、これらが共通のパラメータとなる訳ではない。
【0062】
また、タグ領域Z41には、「Device A」と「Device B」がIEEE802.11の異なる世代規格をサポートする場合における、世代の違いに依存する機能に関する情報が記述される。SAPとして機能する「Device B」は、IEEE802.11における多様な種別に対する世代規格をサポートするため、「Device A」にとっては不要な世代規格の要素が含まれることになる。例えば、「Device A」のIEEE802.11の対応世代が「g」であり、「Device B」のサポート可能な対応世代が「a」、「b」、「g」、「n」の場合、「Device A」に対してIEEE802.11「a」、「b」、「n」の機能に関する情報は不要となる。
【0063】
図10に戻り、STAとして機能する「Device A」は、STAモードに移行する(手順Z35)。また、SAPとして機能する「Device B」は、STAとして機能する「Device
A」のCapability情報に応じて、SAP/STA接続に関するCapability情報のパラメータを調整し、SAPモードに移行する(手順Z36)。その後、「Device A」と「Device
B」との間では、「Device B」のSSIDを指定したプローブ要求/応答(Probe Request/Response)が行われ、この後、「Device A」からアソシエーション要求(Association Request)が行われる。「Device B」は「Device A」からのアソシエーション要求に対し
て許可応答(Association Response)を行い、「Device B」と「Device A」との間のアソシエーション手続きが完了する。そして、4ウェイハンドシェイク(4way Handshake)により、サポート可能な暗号化規格にしたがって、通信に関する暗号鍵が相互に設定され、「Device B」と「Device A」との間のWi-Fi接続が確立される(手順Z37からZ39)。
【0064】
以上により、変形例のWi-Fi Awareを介してCapability情報が授受される形態では、S
TAの機能に応じたより適切なモードでSAPを起動できる。また、手順Z37からZ39においては、SAP側は、STAに通知不要なデータを削除した状態で一連の処理を行
うことができるため、処理に関するオーバヘッドを減らすことができる。この結果、処理に関する通信速度の向上、消費電力の抑制が期待できる。以上のように、変形例の形態の無線通信装置10、無線通信装置11は、Wi-Fi Aware(登録商標)におけるService Discovery Frameを用いて、無線LAN接続におけるアソシエーション要求と許可応答、または、4ウェイハンドシェイクで用いられる情報のうちの少なくとも1つの種類の情報を授受する。したがって、低消費電力による通信で、不要なCapability情報の授受を抑制できる。
【0065】
次に、Wi-Fi Awareを介してRanging情報が授受される形態を説明する。図12は、変形例に係る無線通信装置間において、Ranging情報としてFTM(Fine-Time-Measurement)による距離計測が行われる形態を説明する図である。ここで、FTMは、IEEE 802.11mc
以降の規格で規定される機能であり、パケットがデバイス間を往復する時間を測定し、測定された時間に光速を乗じることによって2つのデバイス間の距離を算出する。FTMでは、精度の高い時間計測が可能になる。当変形例の「Device B」および「Device A」は、FTMによって計測された距離に基づいて、相手装置との接続の可否を判断することが可能になる。
【0066】
図12において、手順Z51からZ53は、実施形態1の手順Z2からZ4と同様であるため説明を省略する。図12の形態では、「Device B」と「Device A」との間で、サービスディスカバリィフレームを介して、Ranging情報が授受される(手順Z54)。なお
、STAとして機能する「Device A」が、FTMによる距離計測をサポートしていないときには、授受される情報は、他のRanging情報(例えば、RSSI)に変更される。
【0067】
手順Z55に示されるFTMでは、「Device B」と「Device A」との間で、距離計測のためのパケット授受が行われる。このようなパケット授受は、複数回にわたって繰り返し行われ、それぞれで計測された距離の平均により、「Device B」と「Device A」との間の距離が算出される。「Device B」および「Device A」は、通信品質が確保できる一定の距離に到達するまで、FTMによる距離計測処理を継続する。
【0068】
FTMによって計測された距離が、通信品質が確保できる一定の距離に到達すると、「Device A」はSTAモードに移行し(手順Z56)、「Device B」はSAPモードに移行する(手順Z57)。その後、「Device A」と「Device B」との間では、「Device B」のSSIDを指定したプローブ要求/応答(Probe Request/Response)が行われ、この後、「Device A」からアソシエーション要求(Association Request)が行われる。「Device B」は「Device A」からのアソシエーション要求に対して許可応答(Association Response)を行い、「Device B」と「Device A」との間のアソシエーション手続きが完了する。
そして、4ウェイハンドシェイク(4way Handshake)により、サポート可能な暗号化規格にしたがって、通信に関する暗号鍵が相互に設定され、「Device B」と「Device A」との間のWi-Fi接続が確立される(手順Z58からZ60)。
【0069】
以上により、変形例のWi-Fi Awareを介してRanging情報が授受される形態では、通信品質が確保できる距離に到達することを契機として、Wi-Fi接続が確立できる。これにより、SAP/STAの低品質な通信接続が回避できる。
【0070】
<その他の実施形態>
上記の実施形態、変形例はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0071】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行
されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0072】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0073】
10、11、101、102 無線通信装置
201 プロセッサ
202 主記憶部
203 補助記憶部
204 入出力部
205 通信部
206 接続バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12