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特開2024-51010反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置
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  • 特開-反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051010
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240403BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240403BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240403BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240403BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
H05B33/14 Z
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025133
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2020076440の分割
【原出願日】2020-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】池嶋 裕美
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】尾込 大介
(57)【要約】
【課題】色相ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の反射防止層付円偏光板は、偏光子を含む偏光板と、偏光板の一方の側に配置された反射防止層と、偏光板のもう一方の側に配置された位相差層と、を有する。反射防止層は、屈折率が1.29~1.38であり、厚みが70nm~120nmであり、および、波長380nm~780nmの範囲において最低反射率が得られる波長が400nm~600nmの範囲内に存在する。位相差層のRe(550)は136nm~200nmである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された反射防止層と、該偏光子のもう一方の側に配置された位相差層と、を有し、
該反射防止層は、屈折率が1.29~1.38であり、厚みが70nm~120nmであり、および、波長380nm~780nmの範囲において最低反射率が得られる波長が400nm~600nmの範囲内に存在し、
該位相差層のRe(550)が136nm~200nmである、
反射防止層付円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止層付円偏光板および該反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、偏光板と位相差板とを含む円偏光板が用いられる場合がある。しかし、円偏光板を低反射率の画像表示装置(特に、有機EL表示装置)に適用した場合、色相ムラが視認されやすいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5876441号
【特許文献2】特開2014-026266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による反射防止層付円偏光板は、偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された反射防止層と、該偏光子のもう一方の側に配置された位相差層と、を有する。該反射防止層は、屈折率が1.29~1.38であり、厚みが70nm~120nmであり、および、波長380nm~780nmの範囲において最低反射率が得られる波長が400nm~600nmの範囲内に存在する。該位相差層のRe(550)は136nm~200nmである。
1つの実施形態においては、上記反射防止層の反射率は1.5%以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は40°~50°または130°~140°である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)/Re(550)が0.97~1.03である。ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の反射防止層付円偏光板を視認側に備える。反射防止層付円偏光板は、上記反射防止層が視認側となるように配置されている。画像表示装置の反射率は40%以下である。
1つの実施形態においては、上記画像表示装置は、有機エレクトロルミネセンス表示装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、円偏光板において、画像表示装置に適用された場合に視認側となる側に反射防止層を設け、かつ、反射防止層の屈折率、厚み、および可視光領域において最低反射率が得られる波長を組み合わせて最適化し、さらに位相差層の面内位相差を最適化することにより、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現し得る反射防止層付円偏光板を得ることができる。さらに、当該反射防止層付円偏光板は、上記の効果に加えて、高い透過率も実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による反射防止層付円偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.反射防止層付円偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による反射防止層付円偏光板の概略断面図である。図示例の反射防止層付円偏光板100は、偏光板10と、偏光板10の一方の側(例えば、画像表示装置に適用された場合に画像表示セルと反対側、すなわち視認側)に配置された反射防止層30と、偏光板10のもう一方の側(例えば、画像表示装置に適用された場合に画像表示セル側)に配置された位相差層40と、を有する。反射防止層30および位相差層40は、それぞれ、任意の適切な接着剤層または粘着剤層(図示せず)を介して偏光板10に貼り合わせられている。偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の一方の側(反射防止層側)に配置された第1の保護層12と、偏光子11のもう一方の側(位相差層側)に配置された第2の保護層13とを含む。目的に応じて、第1の保護層12および第2の保護層13の一方または両方が省略されてもよい。例えば、位相差層30は偏光子11の保護層としても機能し得るので、第2の保護層13は省略されてもよい。また例えば、反射防止層は後述するように代表的には基材上に形成されるところ、基材/反射防止層の積層体が保護層として機能する場合がある。この場合、第1の保護層12は省略され得る。基材/反射防止層の積層体はハードコート層をさらに含んでいてもよい。したがって、反射層付偏光板は、両方の保護層が省略されて、偏光子11と、偏光子11の一方の側に配置された反射防止層30と、偏光子11のもう一方の側に配置された位相差層40と、を有する構成であってもよい(このような構成は、偏光子の一方または両方に保護層を含む構成を包含する)。実用的には、位相差層40の偏光板10と反対側には最外層として任意の適切な粘着剤層50が設けられ、反射防止層付円偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。
【0011】
本発明の実施形態においては、反射防止層は、屈折率が1.29~1.38であり、厚みが70nm~120nmであり、および、波長380nm~780nmの範囲において最低反射率が得られる波長(以下、ボトム波長と称する場合がある)が400nm~600nmの範囲内に存在する。このように、反射防止層の屈折率、厚み、およびボトム波長を組み合わせて最適化することにより、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。反射防止層の詳細についてはE項で後述する。
【0012】
位相差層40は、代表的には樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。位相差層40のRe(550)は、代表的には136nm~200nmである。位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.97~1.03である。位相差層の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°であり;あるいは、好ましくは130°~140°であり、より好ましくは132°~138°であり、さらに好ましくは134°~136°であり、特に好ましくは約135°である。
【0013】
1つの実施形態においては、反射防止層付円偏光板は、位相差層40と粘着剤層50との間に別の位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。別の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0014】
1つの実施形態においては、反射防止層付円偏光板は、導電層または導電層付等方性基材(図示せず)をさらに有していてもよい。導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、反射防止層付円偏光板は、画像表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層40と粘着剤層50との間に設けられる。別の位相差層が設けられる場合、別の位相差層ならびに導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層40側からこの順に設けられる。
【0015】
反射防止層付円偏光板は、さらなる位相差層(図示せず)を有していてもよい。さらなる位相差層は、別の位相差層と組み合わせて設けられてもよく、単独で(すなわち、別の位相差層を設けることなく)設けられてもよい。さらなる位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0016】
反射防止層付円偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の反射防止層付円偏光板は、ロール状に巻回可能である。
【0017】
実用的には、粘着剤層50の表面には、反射防止層付円偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、反射防止層付円偏光板のロール形成が可能となる。
【0018】
以下、反射防止層付円偏光板の構成要素について説明する。
【0019】
B.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0020】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0021】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0022】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0023】
偏光子は、好ましくは単層の樹脂フィルムから構成され得る。このような構成であれば、第1粘着剤層および第2の粘着剤層の最適化との相乗的な効果により、高温環境下における位相差ムラが抑制された反射防止層付円偏光板が得られ得る。
【0024】
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~30μm程度であり、より好ましくは5μm~25μm程度である。特に、厚みが10μm以下の偏光子を得るためには、特開2012-73580号公報、特許第6470455号公報等に開示された、上記ポリビニルアルコール系フィルムとして、熱可塑性樹脂基材上に製膜されたポリビニルアルコール系フィルムを含む積層体を用いる薄型の偏光子の製造方法が適用できる。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0025】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0026】
C.保護層
第1の保護層12および第2の保護層13は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0027】
反射防止層付円偏光板は、後述するように代表的には画像表示装置の視認側に配置され、第1の保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、第1の保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、第1の保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、反射防止層付円偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0028】
第1の保護層の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、外側保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0029】
第2の保護層13は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0030】
D.位相差層
位相差層の面内位相差Re(550)は、上記のとおり代表的には136nm~200nmであり、好ましくは136nm~180nmであり、より好ましくは136nm~160nmであり、さらに好ましくは136nm~150nmである。すなわち、位相差層は、いわゆるλ/4板として機能し得る。さらに、位相差層のRe(550)が136nm以上であることにより、非常に優れた反射色相を有し、かつ、視感反射率(Y値)が小さい画像表示装置を実現することができる。
【0031】
位相差層は、代表的には、位相差値が測定光の波長にかかわらず実質的に一定であるフラットな波長依存性を示す。位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.97~1.03であり、より好ましくは0.98~1.02である。位相差層のRe(650)/Re(550)は、好ましくは0.97~1.03であり、より好ましくは0.98~1.02である。
【0032】
位相差層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。位相差層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。このような関係を満たすことにより、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0033】
位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは70μm以下であり、好ましくは45μm~60μmである。位相差層の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、貼り合わせ時のカールを良好に調整することができる。
【0034】
位相差層は、その光弾性係数の絶対値が好ましくは20×10-12(m/N)以下であり、より好ましくは1.0×10-12(m/N)~15×10-12(m/N)であり、さらに好ましくは2.0×10-12(m/N)~12×10-12(m/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に適用した場合に表示ムラを抑制することができる。
【0035】
位相差層は、上記の特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。位相差層は、代表的には、環状オレフィン系樹脂あるいはポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)で構成され得る。
【0036】
環状オレフィン系樹脂の代表例としては、ノルボルネン系樹脂が挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを重合単位として重合される樹脂である。当該ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5-メチル-2-ノルボルネン、5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3-ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-クロロ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-シアノ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-ピリジル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-メトキシカルボニル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3~4量体、例えば、4,9:5,8-ジメタノ-3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9-トリメタノ-3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0037】
ノルボルネン系樹脂における重合単位として、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0038】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000~200,000、さらに好ましくは30,000~100,000、最も好ましくは40,000~80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0039】
上記環状オレフィン系樹脂フィルムとして市販のフィルムを用いてもよい。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0040】
上記ポリカーボネート系樹脂は、代表的には、下記式(I)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。
【化1】
【0041】
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。このようなジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化2】
【0042】
上記ジヒドロキシ化合物と別のジヒドロキシ化合物とを組み合わせて用いてもよい。別のジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH-R-CHOH ・・・(III)
式(III)中、Rは、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。脂環式ジヒドロキシ化合物は、例えば、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールであり得る。これらは、式(III)においてRが下記式(IV)(式中、nは0または1を示す)で表される種々の異性体を包含する。
【化3】
【0043】
1つの実施形態においては、ポリカーボネート系樹脂は、下記式(V)で表される構造単位を含む。すなわち、ポリカーボネート系樹脂は、ジフェニルカーボネートとイソソルビドとトリシクロデカンジメタノールとの共重合体であり得る。
【化4】
【0044】
このようなポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-031370号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0046】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の下限は、通常0.30dL/gが好ましく、より好ましは0.35dL/g以上である。還元粘度の上限は、通常1.20dL/gが好ましく、より好ましくは1.00dL/g、更に好ましくは0.80dL/gである。還元粘度が前記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる場合がある。一方、還元粘度が前記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0047】
ポリカーボネート系樹脂フィルムとして市販のフィルムを用いてもよい。市販品の具体例としては、帝人社製の商品名「ピュアエースWR-S」、「ピュアエースWR-W」、「ピュアエースWR-M」、日東電工社製の商品名「NRF」が挙げられる。
【0048】
位相差層は、例えば、上記樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。樹脂フィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記のとおり、多くの樹脂フィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0049】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、位相差層の所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0050】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-30℃~Tg+60℃であることが好ましく、より好ましくはTg-10℃~Tg+50℃である。
【0051】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0052】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍~3.5倍である。
【0053】
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して上記の角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより作製され得る。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して角度θの配向角(角度θの方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光膜との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、角度θは、位相差層付偏光板において偏光膜の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。角度θは、上記のとおり、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。
【0054】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0055】
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する位相差層(実質的には、長尺状の位相差フィルム)が得られ得る。
【0056】
上記フィルムの延伸温度は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg-15℃~Tg+20℃、最も好ましくはTg-10℃~Tg+15℃である。このような温度で延伸することにより、本発明において適切な特性を有する位相差層が得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0057】
E.反射防止層
反射防止層30は、代表的には、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化層である。反射防止層を設けることにより、円偏光板単独では実現困難な高い透過率を実現することができる。
【0058】
反射防止層の屈折率は、上記のとおり1.29~1.38であり、好ましくは1.30~1.37であり、より好ましくは1.30~1.36である。反射防止層の屈折率がこのような範囲であれば、厚みおよびボトム波長を組み合わせて最適化することにより、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。
【0059】
反射防止層の厚みは、上記のとおり70nm~120nmであり、好ましくは75nm~110nmであり、より好ましくは75nm~100nmである。反射防止層の厚みがこのような範囲であれば、屈折率およびボトム波長を組み合わせて最適化することにより、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。反射防止層の厚みが大きすぎると、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に適用した場合に、反射色相が青くなりすぎる、および/または、視感反射率(Y値)が大きくなりすぎる場合がある。
【0060】
反射防止層は、ボトム波長が上記のとおり400nm~600nmの範囲内、好ましくは410nm~580nmの範囲内、より好ましくは420nm~550nmの範囲内に存在する。反射防止層のボトム波長がこのような範囲内にあれば、厚みおよび屈折率を組み合わせて最適化することにより、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。ボトム波長が範囲を外れると、反射防止層付円偏光板を画像表示装置に適用した場合に、反射色相が青くなりすぎる、および/または、視感反射率(Y値)が大きくなりすぎる場合がある。
【0061】
反射防止層のボトム波長における反射率は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。反射率は小さいほど好ましく、その下限は例えば0.2%であり得る。反射率がこのような範囲であれば、外光の映り込み等を防止することができる。
【0062】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含む。電離放射線硬化性樹脂組成物は、目的に応じて、反応性希釈剤、フッ素元素含有添加剤、中空粒子、および/または中実粒子をさらに含んでいてもよい。
【0063】
電離放射線硬化性樹脂としては、代表的には、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、光(可視光)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂が挙げられる。例えば、電離放射線硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂が挙げられる。また例えば、電離放射線硬化性樹脂は、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基および/またはメタクリレート基を有する硬化型化合物であり得る。具体例としては、多価アルコールのような多官能化合物のアクリレートおよび/またはメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
電離放射線硬化性樹脂は、硬化前の重量平均分子量が、例えば、100以上、300以上、500以上、1000以上、または2000以上であってもよく、100000以下、70000以下、50000以下、30000以下、または10000以下であってもよい。硬化前の重量平均分子量が大きければ、硬度は低下する一方で、屈曲させた際に割れが起こり難くなる傾向がある。硬化前の重量平均分子量が小さければ、分子間架橋密度が向上し、硬度が高くなる傾向がある。
【0065】
反応性希釈剤は、代表的には、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含む。反応性希釈剤としては、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤の具体例としては、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレートが挙げられる。好ましくは、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートである。反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等も挙げられる。反応性希釈剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
フッ素元素含有添加剤としては、任意の適切な化合物が用いられ得る。フッ素元素含有添加剤は、例えば、分子中にフッ素を含む有機化合物または無機化合物であり得る。有機化合物としては、例えば、フッ素含有防汚コーティング剤、フッ素含有アクリル化合物、フッ素/ケイ素含有アクリル化合物等があげられる。有機化合物は、市販品を用いてもよい。具体例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KY-1203」、DIC株式会社製の商品名「メガファック」があげられる。無機化合物としては、任意の適切なフッ素含有無機化合物が用いられ得る。
【0067】
フッ素元素含有添加剤の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.15重量部以上、0.20重量部以上、または0.25重量部以上であってもよく、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下であってもよい。
【0068】
中空粒子としては、任意の適切な中空粒子が用いられ得る。具体例としては、シリカ粒子、アクリル粒子、アクリル-スチレン共重合粒子が挙げられる。中空粒子は、市販品を用いてもよい。シリカ粒子の市販品の具体例としては、日揮触媒化成工業株式会社製の商品名「スルーリア5320」、「スルーリア4320」が挙げられる。中空粒子の重量平均粒子径は、例えば、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、または70nm以上であってもよく、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、または110nm以下であってもよい。中空粒子の形状としては、任意の適切な形状が採用され得る。中空粒子の形状は、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよい。好ましくは略球形であり、より好ましくはアスペクト比が1.5以下の略球形であり、さらに好ましくは実質的に真球形である。中空粒子を配合することにより、低屈折率かつ良好な反射防止特性を有する反射防止層が得られ得る。中空粒子の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、30重量部以上、50重量部以上、70重量部以上、90重量部以上、または100重量部以上であってもよく、300重量部以下、270重量部以下、250重量部以下、200重量部以下、または180重量部以下であってもよい。配合量がこのような範囲であれば、機械的特性に優れ、かつ、屈折率が低い反射防止層が得られ得る。
【0069】
中実粒子としては、任意の適切な中実粒子が用いられ得る。具体例としては、シリカ粒子、酸化ジルコニウム粒子、チタン粒子が挙げられる。中実粒子は、市販品を用いてもよい。シリカ粒子の市販品の具体例としては、日産化学工業株式会社製の商品名「MEK-2140Z-AC」、「MIBK-ST」、「IPA-ST」が挙げられる。中実粒子の重量平均粒子径は、例えば、5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、または25nm以上であってもよく、3300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、または100nm以下であってもよい。中実粒子の形状としては、任意の適切な形状が採用され得る。中実粒子の形状は、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよい。好ましくは略球形であり、より好ましくはアスペクト比が1.5以下の略球形であり、さらに好ましくは実質的に真球形である。中実粒子を配合することにより、フッ素元素含有添加剤が反射防止層表面に偏在しやすくなり、結果として、低屈折率かつ良好な反射防止特性を有する反射防止層が得られ得る。中実粒子の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、または25重量部以上であってもよく、150重量部以下、120重量部以下、重量部以下、100重量部以下、または80重量部以下であってもよい。配合量がこのような範囲であれば、機械的特性、屈折率および透明性のバランスに優れた反射防止層が得られ得る。
【0070】
反射防止層は、代表的には、以下の製造方法により形成され得る:電離放射線硬化性樹脂組成物を希釈溶媒で希釈した反射防止層形成用塗工液を塗工する;塗工膜を乾燥する;および、乾燥した塗工膜を硬化させる。
【0071】
希釈溶媒としては、電離放射線硬化性樹脂に応じて任意の適切な溶媒が用いられ得る。希釈溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、TBA(ターシャリーブチルアルコール)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。希釈溶媒は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。複数の溶媒を目的に応じた任意の適切な比率で混合することにより、極性を調整することができる。
【0072】
希釈溶媒は、例えば、MIBKおよびPMAを含む混合溶媒であり得る。この場合の混合比率は目的に応じて適切に設定され得る。混合比率は、MIBK100重量部に対して、PMAが、例えば、20重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、150重量部以上、または200重量部以上であってもよく、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、または250重量部以下であってもよい。
【0073】
希釈溶媒は、例えば、MIBKおよびPMAに加え、さらにTBAを含む混合溶媒であり得る。この場合の混合比率も目的に応じて適切に設定され得る。混合比率は、MIBK100重量部に対して、PMAが、例えば、10重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、80重量部以上、または100重量部以上であってもよく、200重量部以下、180重量部以下、150重量部以下、130重量部以下、または110重量部以下であってもよく;TBAが、例えば、10重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、80重量部以上、または100重量部以上であってもよく、200重量部以下、180重量部以下、150重量部以下、130重量部以下、または110重量部以下であってもよい。
【0074】
塗工液の固形分濃度は、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、または1.5重量%以上となるようにしてもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下となるようにしてもよい。固形分濃度がこのような範囲であれば、塗工性(例えば、ヌレ、レベリング)と塗工膜の外観不良(例えば、風乾ムラ、白化)防止とを両立することができる。
【0075】
塗工液には、必要に応じて硬化剤が添加されてもよい。硬化剤としては、任意の適切な重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等)を用いることができる。硬化剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上、1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、または2.5重量部以上であってもよく、15重量部以下、13重量部以下、10重量部以下、7重量部以下、または5重量部以下であってもよい。
【0076】
反射防止層は、代表的には、任意の適切な基材に形成された後、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して偏光子または偏光板に積層される。まず、基材上に塗工液を塗工する。塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法が挙げられる。塗工液の塗工量は、形成される反射防止層の厚みに応じて適切に設定され得る。形成される反射防止層の厚みは、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、または2.0μm以上であってもよく、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下であってもよい。
【0077】
次に、塗工した塗工液を乾燥させて塗膜を形成する。乾燥温度は、目的に応じて適切に設定され得る。乾燥温度は、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間もまた、目的に応じて適切に設定され得る。乾燥時間は、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0078】
次に、塗膜を硬化させる。硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。光照射に用いられる光は、例えば、紫外線、可視光であり得る。光照射の光源は、例えば、高圧水銀ランプであり得る。紫外線硬化におけるエネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50mJ/cm~500mJ/cmが好ましい。照射量が50mJ/cm以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される反射防止層の硬度が高くなりやすい。照射量が500mJ/cm以下であれば、形成される反射防止層の着色を防止することができる。
【0079】
F.画像表示装置
上記A項~E項に記載の反射防止層付円偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような反射防止層付円偏光板を用いた画像表示装置も包含する。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~E項に記載の反射防止層付円偏光板を備える。反射防止層付円偏光板は、上記反射防止層が視認側となるように配置されている。画像表示装置の反射率は好ましくは40%以下である。このような反射率を有する画像表示装置において、上記A項~E項に記載の反射防止層付円偏光板の効果が顕著なものとなる。具体的には以下のとおりである。画像表示装置の反射率が低ければ、表示画像の反射等を小さくすることができる一方で、色相ムラが視認されやすくなる。本発明の実施形態によれば、反射防止層付円偏光板の構成を最適化することにより、表示画像の反射等が小さく、かつ、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現することができる。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が挙げられる。好ましくは、有機EL表示装置である。
【0080】
画像表示装置の視感反射率は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.2%以下である。視感反射率とは、XYZ表色系のY値の反射率であり、JIS Z 8722に準じて測定される反射率である。画像表示装置の反射色相b値は、好ましくは-15~-6であり、より好ましくは-14~-8である。反射色相b値とは、L表色系のb値であり、JIS Z 8722:2009(分光測色計)に準じて測定される。上記A項~E項に記載の反射防止層付円偏光板を用いることにより、このような視感反射率および反射色相が実現され得る。
【実施例0081】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0082】
(1)反射率
実施例および比較例で用いた反射防止層について、コニカミノルタ社製分光測色計「CM-2600d」を用いて正面反射率を測定した。正面反射率はSCI方式で測定した。測定光の波長を380nm~780nmで変化させて測定し、最低反射率がみられる波長をボトム波長とし、ボトム波長における反射率をボトム反射率とした。
(2)厚み
干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。
(3)屈折率
プリズムカプラーSPA-4000(サイロンテクノロジー製)を用いて測定した。
(4)面内位相差
Axoscan(Axometrics社製)を用いて測定した。測定温度は23℃であった。さらに、Re(450)/Re(550)を波長分散特性の指標として算出した。
(5)色相ムラ
実施例および比較例で得られた反射防止層付円偏光板を所定サイズに切り出し、アクリル系粘着剤層を介して無アルカリガラス板に貼り合わせ、試験サンプルを作製した。この試験サンプルを、ガラス板面が対向するようにして有機EL装置代替品に載置し、色相ムラ(スジムラ)を蛍光灯下で目視により観察し、下記の基準で評価した。
なお、有機EL表示装置代替品は以下のようにして作製した。アクリル板に、金属配線を所定の反射率になるように印刷し、これを有機EL表示装置代替品とした。有機EL表示装置代替品の反射率が21.88%または40.34%となるように金属配線を印刷した。
A:色相ムラは実質的に認められなかった
B:色相ムラは認められたが実用上許容可能な範囲であった
C:色相ムラが顕著であり実用上許容不可能であった
(6)b
上記(5)と同様にして作製した試験サンプルを、ガラス板面が対向するようにして有機EL装置代替品に載置し、コニカミノルタ社製分光測色計「CM-2600d」を用いて測定した。
(7)Y値
上記(5)と同様にして作製した試験サンプルを、ガラス板面が対向するようにして有機EL装置代替品に載置し、コニカミノルタ社製分光測色計「CM-2600d」を用いて、JIS Z 8722に準じた方法で測定した。
【0083】
[製造例1:偏光子の作製]
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み45μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=1/7)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、2.6倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃の4重量%ホウ酸水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、55℃のオーブンにて1分間乾燥を行い、PVA系偏光子を得た。この偏光子の厚さは18μm、水分率は15重量%であった。
【0084】
[製造例2:位相差層を構成する位相差フィルムの作製]
[製造例2-1]
イソソルビド(以下「ISB」と略記することがある)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記することがある)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(以下「DPC」と略記することがある)175.1質量部、及び触媒として炭酸セシウム0.2質量% 水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃ に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート共重合体のペレットを得た。
【0085】
得られたペレットを80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを延伸し、位相差フィルムを得た。延伸条件を変化させ、Re(550)が135nm、140nmまたは144nmの位相差フィルムを得た。いずれの位相差フィルムもRe(450)/Re(550)は1.02であった。
【0086】
[製造例2-2]
市販のシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、製品名「ZEONORE」)を延伸し、位相差フィルムを得た。延伸条件を変化させ、Re(550)が140nmまたは144nmの位相差フィルムを得た。いずれの位相差フィルムもRe(450)/Re(550)は1.02であった。
【0087】
[製造例3:反射防止層の作製]
[製造例3-1:ハードコート層の作製]
ハードコート層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DIC(株)製、商品名「ユニディック17-806」、固形分80%)100重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10%)を0.01重量部混合した。この混合物を固形分濃度が40%となるように、酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、ハードコート層形成材料(塗工液)を調製した。基材(厚み60μmのTACフィルム)表面に、上記塗工液をワイヤーバーで塗工した。塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプで積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理し、基材上にハードコートフィルム(ハードコート層)を得た。
【0088】
[製造例3-2:反射防止層の作製]
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)100重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)40重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、商品名「Omnirad907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。当該混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液を調製した。
【0089】
製造例3-1で得られた基材/ハードコート層の積層体のハードコート層表面に、上記反射防止層形成用塗工液をワイヤーバーで塗工した。塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプで積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理し、屈折率が1.36である反射防止層を形成した。このようにして、基材/ハードコート(HC)層/反射防止層の積層体を作製した。
さらに、中空ナノシリカ粒子の配合量を変化させて、屈折率が1.34または1.30の反射防止層を形成した。さらに、塗工液の塗工厚みを変化させて、形成される反射防止層の厚みを変化させた。後述の表1に示す屈折率および厚みを有する反射防止層を形成した。
【0090】
[製造例4:活性エネルギー線硬化型接着剤の調製]
ラジカル重合性化合物(a)12重量部、ラジカル重合性化合物(b)35重量部、ラジカル重合性化合物(c)40重量部、オリゴマー化合物(d)10重量部、光重合開始剤(e)2重量部および光増感剤(f)1重量部の割合で混合して、50℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。なお、ラジカル重合性化合物(a)は、HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)(KJケミカルズ社製);ラジカル重合性化合物(b)は、ACMO(アクロイルモルフォリン)(KJケミカルズ社製);ラジカル重合性化合物(c)は、ライトアクリレート 1,9ND-A(1,9-ノナンジオールジアクリレート)(共栄社化学社製);オリゴマー化合物(d)は、ARUFON UG-4010(エポキシ基変性アクリルオリゴマー)(東亞合成社製);光重合開始剤(e)は、Omnirad907(2-メチル-1-(4―メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパンー1-オン)(IGM Resins B.V.社製);光増感剤(f)は、KAYACURE DETX-S(2,4-ジエチルチオキサントン)(日本化薬社製)であった。
【0091】
[実施例1]
製造例4で得られた活性エネルギー線硬化型接着剤を、製造例3で得られた積層体の基材表面および製造例2-1で得られた位相差フィルムの一方の表面に、それぞれMCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚み0.7μmになるように塗工し、製造例1で得られた偏光子の両面にロールトゥロールで貼り合わせた。次いで、活性エネルギー線照射装置により可視光線を両側から照射して活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、反射防止層/HC層/基材/偏光子/位相差層の構成を有する反射防止層付円偏光板を作製した。なお、反射防止層付円偏光板の位相差層表面(偏光子と反対側)には、アクリル系粘着剤層(23μm)を設けた。得られた反射防止層付円偏光板を、表1に示す反射率を有する有機EL表示装置代替品に載置し、上記(5)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例2~6および比較例1~7]
反射防止層および位相差層を表1に示す組み合わせとしたこと以外は実施例1と同様にして反射防止層付円偏光板を得た。得られた反射防止層付円偏光板を、表1に示す反射率を有する有機EL表示装置代替品に載置し、上記(5)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の反射防止層付円偏光板は、色相ムラ、b値およびY値のいずれもが優れている。反射防止層のボトム波長または厚み、あるいは位相差層のRe(550)のいずれかが本発明の実施形態の範囲を外れると、色相ムラ、b値およびY値の少なくとも1つが不十分である。このように、本発明の実施例の反射防止層付円偏光板は、色相ムラが抑制された画像表示装置を実現し得ることがわかる。さらに、このような効果は、反射率が小さい画像表示装置において得られ得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の反射防止層付円偏光板は画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0096】
10 偏光板
11 偏光子
12 第1の保護層
13 第2の保護層
30 反射防止層
40 位相差層
100 反射防止層付円偏光板
図1