(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051035
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】低温保持装置、その断熱消磁装置を制御する方法、及び機械読み取り可能な媒体
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20240403BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F25B21/00 A ZAA
H01F6/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025619
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2021576935の分割
【原出願日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】102019119092.4
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521561570
【氏名又は名称】キウトラ ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】FLOESSERGASSE, 81369 MUNICH, GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】レグナト, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュパレク, ヤン
(57)【要約】
【課題】持続的かつ可変的に低温を達成し得る低温保持装置を提供する。
【解決手段】5mKから100Kの所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成されている断熱消磁装置と、持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて断熱消磁装置を制御するためのコントローラとを含み、コントローラは断熱消磁装置の少なくとも2つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環させるように構成されており、循環周波数は熱負荷の変化に基づいて、CADRモードにおける断熱消磁装置の動作の間に変動され、循環周波数は熱負荷が増大すると増大され、循環周波数は熱負荷が減少すると減少される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温保持装置であって、前記低温保持装置は、
5mKから100Kの所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成されている断熱消磁装置と、
持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて前記断熱消磁装置を制御するためのコントローラと
を含み、
前記コントローラは、
前記断熱消磁装置の少なくとも2つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環させるように構成されており、
前記循環周波数は、熱負荷の変化に基づいて、前記CADRモードにおける前記断熱消磁装置の動作の間に変動され、
前記循環周波数は、前記熱負荷が増大すると増大され、前記循環周波数は、前記熱負荷が減少すると減少される、低温保持装置。
【請求項2】
前記断熱消磁装置は、総数n個の断熱消磁ユニットを含み、n≧2または3であり、
前記n個の断熱消磁ユニットは、熱スイッチによって直列に接続可能であり、
前記n個の断熱消磁ユニットのうちのm個の断熱消磁ユニットが、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環され、m≦nである、請求項1に記載の低温保持装置。
【請求項3】
前記循環周波数は、前記n個の断熱消磁ユニットの最後の段nに印加される熱負荷に基づいて変動される、請求項1又は2に記載の低温保持装置。
【請求項4】
低温保持装置であって、前記低温保持装置は、
5mKから100Kの所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成されている断熱消磁装置と、
持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて前記断熱消磁装置を制御するためのコントローラと
を含み、
前記コントローラは、
第1の標的温度が設定されること、および、第1の熱負荷が印加されることのうちの少なくとも一方の場合、前記断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させ、且つ
前記CADRモードにおける前記断熱消磁装置の動作の間、(i)第1の標的温度から第2の標的温度への標的温度の変化、および、(ii)前記第1の熱負荷から第2の熱負荷への熱負荷の変化のうちの少なくとも一方に応答して、前記複数の熱スイッチを前記第1の切替モードとは異なる第2の切替モードにおいて動作させる
ように構成されている、低温保持装置。
【請求項5】
(i)前記第1の標的温度は、前記第2の標的温度とは異なること、および、
(ii)前記第1の熱負荷は、前記第2の熱負荷とは異なること
のうちの少なくとも一方が該当する、請求項4に記載の低温保持装置。
【請求項6】
前記複数の熱スイッチは、総数a個の熱スイッチを含み、a≧2であり、
前記a個の熱スイッチのうちのb個の熱スイッチが、前記第1の切替モードにおいて動作され、前記a個の熱スイッチのうちのc個の熱スイッチが、前記第2の切替モードにおいて動作され、b≠cである、請求項4に記載の低温保持装置。
【請求項7】
前記第1の切替モードおよび前記第2の切替モードのうちの少なくとも一方において動作されない熱スイッチが、閉鎖されること、および
前記標的温度がより低い標的温度に変更されると、および/または、前記熱負荷が増大すると、より多い熱スイッチが動作されること
のうちの少なくとも一方が該当する、請求項4に記載の低温保持装置。
【請求項8】
前記断熱消磁装置は5mKから10Kの所定の温度範囲内で前記標的温度を制御するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の低温保持装置。
【請求項9】
前記断熱消磁装置は前記標的温度を第1の標的温度から第2の標的温度に漸増させ、経時的な標的温度の傾きを提供するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の低温保持装置。
【請求項10】
低温保持装置の断熱消磁装置を制御する方法であって、前記断熱消磁装置は、持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて動作し、且つ5mKから100Kの所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成されており、前記方法は、
前記断熱消磁装置の少なくとも2つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環させることを含み、
前記循環周波数は、熱負荷の変化に基づいて、前記CADRモードにおける前記断熱消磁装置の動作の間に変動され、
前記循環周波数は、前記熱負荷が増大すると増大され、前記循環周波数は、前記熱負荷が減少すると減少される、方法。
【請求項11】
低温保持装置の断熱消磁装置を制御する方法であって、前記断熱消磁装置は、持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて動作し、且つ5mKから100Kの所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成されており、前記方法は、
第1の標的温度が設定されること、および、第1の熱負荷が印加されることのうちの少なくとも一方の場合、前記断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させることと、
前記CADRモードにおける前記断熱消磁装置の動作の間、(i)第1の標的温度から第2の標的温度への標的温度の変化、および、(ii)前記第1の熱負荷から第2の熱負荷への熱負荷の変化のうちの少なくとも一方に応答して、前記複数の熱スイッチを前記第1の切替モードとは異なる第2の切替モードにおいて動作させることと
を含む、方法。
【請求項12】
命令を含む機械読み取り可能な媒体であって、前記命令は、請求項10又は11に記載の方法を実装するために1つ以上のプロセッサによって実行可能である、機械読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱消磁装置を制御する方法および断熱消磁装置に関する。本開示は、具体的には、所定の温度範囲内で多段断熱消磁装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温保持装置は、概して、低温保持装置内に搭載されるサンプルの低温を維持するために使用される。低温は、例えば、液体ヘリウム等の低温流体槽を使用することによって、達成され得る。しかしながら、液体ヘリウム等の冷却媒体は、低温保持装置内の外部および/または内部熱入力に起因して持続的に蒸発し、したがって、定期的に補充される必要がある。これは、かなりの時間およびリソースを要求し、それによって、そのような低温保持装置の運用コストが、高くなる。
【0003】
上記の欠点を克服するために、極低温剤を含まない低温保持装置が、開発されている。極低温剤を含まない低温保持装置は、パルス管低温冷却器等の極低温剤を含まない閉サイクルシステムを採用してもよい。現代のパルス管低温冷却器は、最低1.2Kの温度を達成することができる。ケルビン未満の温度を達成するために、磁気冷却段が、極低温剤を含まない閉サイクルシステムに加えて使用されることができる。磁気冷却段は、最低数ミリケルビンの温度を達成し得る、断熱消磁冷凍機(ADR)であってもよい。ADRは、磁気熱量効果に基づく。媒体が、磁化されると、その磁気モーメントが、整合され、磁化の熱が、解放される。逆に、媒体が、消磁される場合、その温度が、降下する。
【0004】
従来のADRシステムは、単一ショットモードにおいて動作される。これは、低温が、短時間にわたって達成されるにすぎず、より長い時間にわたって安定して維持されないことを意味する。しかしながら、多くの用途では、低温を、例えば、長時間にわたって、安定した様式においてケルビン未満範囲内に維持することが、有益であると見なされる。
【0005】
上記に照らして、当技術分野における問題のうちの少なくともいくつかを克服する、断熱消磁装置および複数の断熱消磁装置を制御する新しい方法が、有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に照らして、断熱消磁装置、非一過性機械可読媒体、コントローラ、断熱消磁装置、および低温保持装置を制御する方法が、提供される。
【0007】
特に、ケルビン未満範囲において、持続的かつ可変的に低温を達成し得る、断熱消磁装置、非一過性機械可読媒体、コントローラ、断熱消磁装置、および低温保持装置を制御する方法を提供することが、本開示の目的である。本開示のさらなる側面、利点、および特徴が、請求項、説明、および付随の図面から明白である。
【0008】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を制御する方法が、提供される。本方法は、少なくとも断熱消磁装置の動作パラメータに関して変動させるステップを含む。
【0009】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも1つの断熱消磁ユニットの循環周波数と、複数の熱スイッチの切替モードと、少なくとも1つの断熱消磁ユニットの最大循環温度および最小循環温度のうちの少なくとも一方とを含む、またはそれらから成る、群から選択される。
【0010】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を制御する方法が、提供される。本方法は、(i)断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップと、および/または(ii)第1の標的温度が、設定される、および/または第1の熱負荷が、印加される場合、断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させるステップと、第2の標的温度が、設定される、および/または第2の熱負荷が、印加される場合、複数の熱スイッチを第2の切替モードにおいて動作させるステップと、および/または断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップであって、第1の温度および/または第2の温度は、変動される、または可変である、ステップとを含む。
【0011】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を制御する方法が、提供される。本方法は、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含む。
【0012】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、周波数は、経時的に変動される。
【0013】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、周波数は、熱負荷に基づいて変動される。
【0014】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、周波数は、熱負荷が増大すると、増大される、および/または周波数は、熱負荷が減少すると、減少される。
【0015】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度は、第2の温度より高い。
【0016】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、断熱消磁装置は、総数nの断熱消磁ユニットを含み、n≧1、2、または3である。
【0017】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、n個の断熱消磁ユニットは、直列に接続可能である。
【0018】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、n個の断熱消磁ユニットは熱スイッチによって直列に接続可能である。
【0019】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、n個の断熱消磁ユニットのうちのm個の断熱消磁ユニットが、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環され、m≦nであり、特に、m=n-1である。
【0020】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、周波数は、n個の断熱消磁ユニットの最後の段nに印加される熱負荷に基づいて変動される。
【0021】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を制御する方法が、提供される。本方法は、第1の標的温度が、設定される、および/または第1の熱負荷が、印加される場合、断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させるステップと、第2の標的温度が、設定される、および/または第2の熱負荷が、印加される場合、複数の
熱スイッチを第2の切替モードにおいて動作させるステップとを含む。
【0022】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の切替モードは、第2の切替モードと異なる。
【0023】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の標的温度は、第2の標的温度と異なる、および/または第1の熱負荷は、第2の熱負荷と異なる。
【0024】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、複数の熱スイッチは、総数aの熱スイッチを含み、a≧2である。
【0025】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、a個の熱スイッチのうちのb個のものが、第1の切替モードにおいて動作され、a個の熱スイッチのうちのc個のものが、第2の切替モードにおいて動作され、b≠cである。
【0026】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の切替モードおよび/または第2の切替モードにおいて動作されない、熱スイッチが、閉鎖される。
【0027】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、標的温度が、より低い標的温度に変更されると、および/または熱負荷が、増大すると、より多い熱スイッチが、動作される。加えて、または代替として、標的温度が、より高い標的温度に変更されると、および/または熱負荷が、減少すると、より少ない熱スイッチが、動作される。
【0028】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、本方法はさらに、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、変動する周波数を用いて、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含む。
【0029】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を制御する方法が、提供される。本方法は、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含み、第1の温度および/または第2の温度は、変動される、または可変である。
【0030】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度は、第2の温度より高い。
【0031】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷および/または標的温度に基づいて変動される。
【0032】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷が増大される場合、減少される、および/または第1の温度および/または第2の温度は、標的温度が増大される場合、増大される。
【0033】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷が減少される場合、増大される、お
よび/または第1の温度および/または第2の温度は、標的温度が減少される場合、減少される。
【0034】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、熱負荷および/または標的温度の変化に基づいて、第1の温度および第2の温度の両方が、増大または減少されることができる、または第1の温度が、増大されることができ、第2の温度が、減少されることができる、または第1の温度が、減少されることができ、第2の温度が、増大されることができる。
【0035】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、第1の温度と第2の温度との間での断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットの循環は、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、変動する周波数を用いて、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含む。
【0036】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、本方法はさらに、第1の標的温度が設定される場合、断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させるステップと、第2の標的温度が設定される場合、複数の熱スイッチを第2の切替モードにおいて動作させるステップとを含む。
【0037】
本開示の独立した側面によると、機械可読媒体(例えば、メモリ)が、提供される。機械可読媒体は、1つ以上のプロセッサによって、本開示の方法の実施形態を実装するために実行可能な命令を含む。
【0038】
本開示の独立した側面によると、コントローラが、提供される。コントローラは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに結合され、1つ以上のプロセッサによって、本開示の方法の実施形態を実装するために実行可能な命令を含む、メモリとを含む。
【0039】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置が、提供される。断熱消磁装置は、コントローラを含む。
【0040】
本開示の独立した側面によると、断熱消磁装置を含む、低温保持装置が、提供される。
【0041】
実施形態はまた、開示される方法を行うための装置も対象とし、各説明される方法側面を実施するための装置部品も含む。これらの方法側面は、ハードウェアコンポーネント、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータを用いて、その2つの任意の組み合わせによって、または任意の他の様式において実施されてもよい。さらに、本開示による実施形態はまた、説明される装置を動作させるための方法も対象とする。これは、本装置のあらゆる機能を行うための、方法側面も含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて動作する断熱消磁装置を制御する方法であって、
上記断熱消磁装置の少なくとも2つの断熱消磁ユニットを、変動する循環周波数を用いて、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環させることであって、上記循環周波数は、熱負荷に基づいて変動され、上記循環周波数は、上記熱負荷が増大すると、増大され、上記循環周波数は、上記熱負荷が減少すると、減少され、特に、上記第1の温度は、上記第2の温度より高い、こと
を含む、方法。
(項目2)
上記断熱消磁装置は、総数nの断熱消磁ユニットを含み、n≧2または3であり、
上記n個の断熱消磁ユニットは、特に、熱スイッチによって直列に接続可能である、および/または、
上記n個の断熱消磁ユニットのうちの数mの断熱消磁ユニットが、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環され、m≦nであり、特に、m=n-1である、
項目1に記載の方法。
(項目3)
上記循環周波数は、上記n個の断熱消磁ユニットの最後の段nに印加される熱負荷に基づいて変動される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
断熱消磁装置を制御する方法であって、
第1の標的温度が設定される、および/または、第1の熱負荷が印加される場合、上記断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させることと、
第2の標的温度が設定される、および/または、第2の熱負荷が印加される場合、上記複数の熱スイッチを第2の切替モードにおいて動作させることと
を含む、方法。
(項目5)
上記第1の切替モードは、上記第2の切替モードと異なる、および/または、
上記第1の標的温度は、上記第2の標的温度と異なる、および/または、上記第1の熱負荷は、上記第2の熱負荷と異なる、
項目4に記載の方法。
(項目6)
上記複数の熱スイッチは、総数aの熱スイッチを含み、a≧2であり、特に、上記a個の熱スイッチのうちのb個のものが、上記第1の切替モードにおいて動作され、上記a個の熱スイッチのうちのc個のものが、上記第2の切替モードにおいて動作され、b≠cである、項目4または5に記載の方法。
(項目7)
上記第1の切替モードおよび/または上記第2の切替モードにおいて動作されない熱スイッチが、閉鎖される、および/または、
上記標的温度がより低い標的温度に変更されると、および/または、上記熱負荷が増大すると、より多い熱スイッチが動作される、
項目5または6に記載の方法。
(項目8)
上記断熱消磁装置は、持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて動作している、項目4-7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
断熱消磁装置を制御する方法であって、
上記断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、第1の温度と第2の温度との間で循環させることであって、上記第1の温度および/または上記第2の温度は、変動されるかまたは可変であり、特に、上記第1の温度は、上記第2の温度より高い、こと
を含む、方法。
(項目10)
上記第1の温度および/または上記第2の温度は、熱負荷および/または標的温度に基づいて変動され、特に、
上記第1の温度および/または上記第2の温度は、上記熱負荷が増大される場合、減少される、および/または、上記第1の温度および/または上記第2の温度は、上記標的温度が増大される場合、増大される、および/または、
上記第1の温度および/または上記第2の温度は、上記熱負荷が減少される場合、増大される、および/または、上記第1の温度および/または上記第2の温度は、上記標的温度が減少される場合、減少される、
項目9に記載の方法。
(項目11)
上記断熱消磁装置は、持続的消磁冷凍(CADR)モードにおいて動作している、項目9-10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
機械可読媒体であって、1つ以上のプロセッサによって、項目1-11のいずれか1項に記載の方法を実装するために実行可能な命令を含む、機械可読媒体。
(項目13)
断熱消磁装置のためのコントローラであって、
1つ以上のプロセッサと、
上記1つ以上のプロセッサに結合され、上記1つ以上のプロセッサによって項目1-11のいずれか1項に記載の方法を実装するために実行可能な命令を含むメモリと
を備える、コントローラ。
(項目14)
断熱消磁装置であって、項目13に記載のコントローラを備える、断熱消磁装置。
(項目15)
低温保持装置であって、項目14に記載の断熱消磁装置を備える、低温保持装置。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示の上記に列挙される特徴が詳細に理解され得る様式におけるように、上記に簡略的に要約される、本開示のより特定の説明が、実施形態を参照することによって、得られ得る。付随の図面は、本開示の実施形態に関し、以下に説明される。
【
図2】
図2は、多段断熱消磁冷凍機の概略図を示す。
【
図3】
図3は、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示す。
【
図5】
図5は、本開示のさらなる実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示す。
【
図6】
図6は、本開示のさらにさらなる実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示す。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
その1つ以上の実施例が図に図示される、本開示の種々の実施形態が、ここで、詳細に参照されるであろう。図面の以下の説明において、同一の参照番号は、同一のコンポーネントを指す。概して、個々の実施形態に対する差異のみが、説明される。各実施例は、本開示の解説として提供され、本開示の限定であることを意図していない。さらに、一実施形態の一部として例証または説明される特徴は、他の実施形態に関して、またはそれと併せて使用され、さらにさらなる実施形態をもたらすことができる。本説明が、そのような修正と、変形例とを含むことが、意図される。
【0044】
【0045】
断熱消磁冷凍(ADR)は、低温または超低温冷却を提供するために常磁性スピン系のエントロピ依存性(例えば、電子軌道運動および電子スピン、または核スピンに起因に起因する磁気モーメント)を使用する、冷却方法である。本方法は、数ミリケルビンまたはさらに数マイクロケルビンの低温または超低温を発生させることを可能にする。ADRの例示的実装は、ヒートスイッチと、冷却媒体と、磁石とを含む、単一のADRユニットを使用する。低温または超低温は、冷却媒体を消磁することによって発生される。例示的冷却手順が、
図1により詳細に示される。
【0046】
図1のボックス1では、ヒートスイッチが、閉鎖され、冷却媒体が、予冷却ユニットに結合される。ボックス2では、局所磁場が、最大まで増大され、磁化の熱が、解放され、それによって、サンプルが、加熱される。ボックス3では、熱化が、生じ、磁化の熱が、予冷却ユニットを用いて除去される。ボックス4では、ヒートスイッチが、開放しており、磁場が、依然として、印加される。ボックス5では、磁場が、低減され、サンプルが、冷却される。ボックス6では、サンプル温度は、一定であり、磁場が、減少される。ボックス7では、磁場は、ゼロであり、冷却プロセスが、終了する。ボックス8では、冷却媒体が、再発生され、サンプルが、基準温度まで加温される。
【0047】
ADRは、例えば、単一のADRユニットを使用して、単一ショットモードにおいて動作されることができる。単一ショットモードは、持続的にではなく、短期間のみ、低温を達成することができる。そのような短期間冷却は、ADRの使用および商業的用途を限定し得る。代わりに、希釈冷凍機等のHe-3ベースの技法が、持続的様式においてケルビン未満温度を提供するために、多くの場合、使用される。
【0048】
【0049】
ADRを用いた短時間冷却の欠点が、多段ADR、すなわち、2つ以上の相互に接続されたADRユニットを有する、冷凍機を使用することによって、解決され得る。
図2は、n個のADRユニットがチェーンとして接続される、多段ADRを図示する。ADRユニットn-1内のADRユニットnの磁化の熱を消散させることによって、最後のADRユニットnにおいて、残留磁場、故に、冷却出力を提供することが可能である。
図2に図式的に図示される単純なチェーン以外にも、例えば、それぞれが、複数のADRユニットを有する、複数のADRチェーンを含む、さらに複雑な構成の多段ADRが、提供されることができ、ADRチェーンは、並列の状態で、または直列の状態で動作され得る。
【0050】
複数のADRユニットのうちの第1のADRユニット(
図2の「1」)が、ヒートシン
ク201に接続されることができる。ヒートシンク210は、パルス管低温冷却器等の極低温剤を含まない閉サイクルシステムによって提供されることができる。ヒートシンク210は、例えば、1K~4Kの範囲内の本質的に一定の温度において維持されることができる。例えば、ヒートシンク210は、約4Kの本質的に一定の温度において維持されることができる。
【0051】
多段ADRは、持続的な磁気冷凍を実現する、すなわち、ADRを用いた任意の長時間温度のために低温Ttargetを提供するために使用されることができる。本技法は、時として、CADR(持続的断熱消磁冷凍)と称される。CADRは、特に、低温が、液体冷却媒体(すなわち、寒剤)の使用を伴わずに恒久的に発生されるため、有用である。特に、液体ヘリウム-4またはヘリウム-3は、必要とされない。
【0052】
図3は、
図2の多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示す。
【0053】
指数i<nを伴う各個々のADRユニットが、2つの異なる温度T
i,1とT
i,2(T
i,1>T
i,2である)との間で動作され、T
i,1は、熱槽、例えば、別のADRユニット(例えば、n-1)によって提供される温度であり、T
i,2は、消磁冷却を用いて、ADRユニットによって提供される温度である。それによって、温度T
i,1およびT
i,2は、単一の一定の温度、すなわち、多段アセンブリ全体の標的温度T
n,1=T
n,2=T
n=T
targetにおいて動作される最後のn番目のADRユニットの最適な冷却を提供すること等のために、選定され、T
target>T
n-1,2である。個々のADRユニット毎に、T
n,1からT
n,2への遷移およびT
n,2からT
n,1へ戻る遷移が、一定の率(「再循環率」)において繰り返して行われ、後者が、標的温度T
targetにおける最後のn番目のADRユニットの冷却を最適化するために選定されてもよい。
図3の動作スキームは、3段CADRシステムに関して図式的に図示されている。
【0054】
磁気ヒートポンプの本実装は、特に、以下のいくつかの限定を被る。
【0055】
1つのみの単一標的温度が、高効率で達成されることができる。
【0056】
磁気ヒートポンプは、固定された冷却出力のみを提供するが、熱負荷の変化に対して反応することはできない。
【0057】
標的温度は、抵抗加熱器等の付加的な手段を用いることなく、磁気ヒートポンプの動作の間に持続的に変更されることはできない。
【0058】
Ttargetをはるかに上回る温度における磁気ヒートポンプの動作は、n番目のADRユニットが、Ttargetにおける動作のために最適化される必要がある、すなわち、これは、Ttargetを優に上回る温度の発生を妨げる、具体的な冷却媒体、磁場強度B、槽温度T1、および再循環率を使用するため、妨げられる。
【0059】
ヒートポンプが、一定の再循環率を使用して動作されるため、同一の切替ノイズが、ヒートスイッチによって、非常に低熱負荷においても発生され、故に、温度安定性を低下させる。
【0060】
ヒートポンプが、一定の再循環率を使用して動作されるため、同一の応力が、非常に低熱負荷においてもヒートスイッチに印加され、故に、ヒートスイッチ寿命を短縮させる。
【0061】
図4-6は、本開示の実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを
示す。
【0062】
本開示の実施形態は、上記に述べられる限界を克服し、T1,1~Tnの任意の標的温度を磁気的に、かつ非常に高い精度において安定させ、磁気ヒートポンプに印加される熱負荷の変化に対処し、それによって、また、低熱負荷における熱切替ノイズおよびヒートスイッチ応力を低減させることも可能にする。これは、断熱消磁装置の少なくとも1つの動作パラメータを変動させるステップを含む、断熱消磁装置を制御する方法によって達成される。
【0063】
図4-6は、断熱消磁装置の少なくとも動作パラメータを変動させる、上記の一般的概念の実装を示す。
【0064】
断熱消磁装置は、少なくとも1つの断熱消磁ユニット、特に、ADRまたはCADRを実装するための、複数の断熱消磁ユニットを含む。
【0065】
各個々のADRユニットは、常磁性冷却媒体と、常磁性冷却媒体の位置において磁場を提供および除去するように構成される、磁石デバイスと、熱スイッチとを含む。磁石デバイスは、それに接続される磁力供給源を有する、抵抗電磁石または超伝導電磁石等の電磁石を含む、またはそれであることができる。「ヒートスイッチ」とも称され得る、熱スイッチは、常磁性冷却媒体を熱槽に接続し、熱槽から常磁性冷却媒体接を接続解除するように構成される。熱槽は、主熱的槽(例えば、
図2のヒートシンク201)または別のADRユニットであってもよい。
【0066】
いくつかの実装では、各個々のADRユニットの温度が、低温センサ等の温度センサを使用して測定される。低温センサは、抵抗NTC温度計であってもよいが、それに限定されない。
【0067】
図4は、本開示の実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示し、CADRシステムは、可変周波数(「循環周波数」または「再循環率」とも称される)において動作される。
【0068】
本開示の第1の側面によると、断熱消磁装置を制御する方法は、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを、変動する周波数を用いて、第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含む。
【0069】
故に、第1の側面の方法は、一定ではない再循環率を使用する。
図4の灰色に陰影が付けられた三角形の面積は、ADRシステムに印加される、例示的な熱負荷を図示する。高熱負荷において、ADRシステムは、高再循環率において動作され、持続的な低温磁気冷却を提供する。低熱負荷において、再循環率は、減少され、それによって、切替手順の数および熱切替ノイズを低減させ、ヒートスイッチの寿命を増大させる。
【0070】
第1の温度(Ti,1)は、「第1の動作温度」または「上側動作温度」とも称され得る。第2の温度(Ti,2)は、「第2の動作温度」または「下側動作温度」とも称され得る。第1の温度は、第2の温度より高い、すなわち、Ti,1>Ti,2である。
【0071】
本開示の全体を通して使用されるような、用語「標的温度」は、ADRシステムによって達成され、安定して維持および/または制御されるべきである、設定温度に関する。標的温度は、ADRシステムのサンプル段の温度であってもよい。例えば、標的温度は、断熱消磁ユニットのチェーンの最後の段であり得る、n番目の断熱消磁ユニットの温度であることができる。最後の段は、断熱消磁装置のサンプル段に接続されることができる。
【0072】
いくつかの実装では、断熱消磁装置は、所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成される。所定の温度範囲は、5mK~0.5K、特に、5mK~1K、特に、5mK~4K、特に、5mK~10K、特に、5mK~100K、より具体的には、5mK~300K(例えば、室温)であってもよい。温度範囲は、
図4の第1の側面、
図5の第2の側面、および
図6の第3の側面のうちの1つ以上のものの好適な実装によって、入手されることができる。随意に、抵抗加熱器等の加熱器が、特に、より高い温度範囲を入手するために使用されることができる。
【0073】
断熱消磁装置は、標的温度を第1の標的温度から第2の標的温度に変化または漸増させるように構成されてもよい、または逆もまた同様である。したがって、断熱消磁装置は、経時的な標的温度の傾き(すなわち、温度変化率、例えば、K/分またはK/時間)を提供し得る。
【0074】
周波数は、経時的に変動される。したがって、周波数は、単位時間あたりの繰り返し事象の発生回数を示す、時間周波数である。サイクルは、Ti,1→Ti,2→Ti,1またはTi,2→Ti,1→Ti,2として定義される。
【0075】
いくつかの実施形態によると、断熱消磁装置は、総数nの断熱消磁ユニットを含み、n≧1、2、または3である。本開示の第1の側面は、単一段ADRシステム(n=1)に適用されることができる、または多段ADRシステム(n≧2)に適用されてもよい。多段ADRシステムでは、n個の断熱消磁ユニットが、断熱消磁ユニットのチェーンを形成するように、直列に接続可能であってもよい。
【0076】
いくつかの実装では、n個の断熱消磁ユニットが、ヒートスイッチとも称され得る、熱スイッチによって直列に接続可能である。熱スイッチは、機械式熱スイッチ、電気機械式熱スイッチ、電気熱量式熱スイッチ、液晶熱スイッチ、ガスギャップ熱スイッチ、超伝導熱スイッチ、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態によると、n個の断熱消磁ユニットのうちのm個の断熱消磁ユニットが、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環され、m≦nであり、特に、m=n-1である。例えば、最後またはn番目の断熱消磁ユニット以外の全ての断熱消磁ユニットが、個別の第1の温度と第2の温度との間で循環される。n番目の断熱消磁ユニットは、標的温度において保たれ得る。
【0078】
断熱消磁ユニットは、個々の第1の温度と、個々の第2の温度とを有してもよい。断熱消磁ユニットの第1の温度は、異なってもよい、および/または断熱消磁ユニットの第2の温度は、異なってもよい。第1の温度および/または第2の温度は、標的温度に従って、特に、断熱消磁装置によって提供されるべき標的温度の範囲に従って、選択されることができる。
【0079】
いくつかの実装では、周波数は、熱負荷に基づいて変動される。熱負荷は、断熱消磁装置、特に、断熱消磁ユニットのチェーンの最後の段であり得る、n番目の断熱消磁ユニットに印加される、熱負荷であってもよい。最後の段は、断熱消磁装置のサンプル段に接続されることができる。周波数は、熱負荷が増大すると、増大され得る。さらに、周波数は、熱負荷が減少すると、減少され得る。
【0080】
図5は、本開示のさらなる実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示し、個々のADRユニットのヒートスイッチが、標的温度および/または熱負荷に従って構成される。
【0081】
図4の第1の側面と組み合わせられ得る、本開示の第2の側面によると、断熱消磁装置を制御する方法は、第1の標的温度が、設定される、および/または第1の熱負荷が、印加される場合、断熱消磁装置の複数の熱スイッチを第1の切替モードにおいて動作させるステップと、第2の標的温度が、設定される、および/または第2の熱負荷が、印加される場合、複数の熱スイッチを第2の切替モードにおいて動作させるステップとを含む。
【0082】
故に、標的温度(
図5参照)および/または熱負荷(図示せず)の変化に応答したヒートスイッチの制御が、実施される。これは、さらにn番目の断熱消磁の最適な動作温度をはるかに上回る温度における、持続的な磁気冷却を提供することを可能にする。
【0083】
第1の標的温度は、第2の標的温度と異なってもよい。加えて、または代替として、第1の熱負荷は、第2の熱負荷と異なってもよい。用語「熱負荷」は、ある周期内で除去されることが要求される、熱量として定義され得る。
【0084】
いくつかの実装では、断熱消磁装置は、所定の温度範囲内で標的温度を制御するように構成される。所定の温度範囲は、5mK~0.5K、特に、5mK~1K、特に、5mK~4K、特に、5mK~10K、特に、5mK~100K、より具体的には、5mK~300K(例えば、室温)であってもよい。温度範囲は、
図4の第1の側面、
図5の第2の側面、および
図6の第3の側面のうちの1つ以上のものの好適な実装によって、入手されることができる。随意に、抵抗加熱器等の加熱器が、特に、より高い温度範囲を入手するために使用されることができる。
【0085】
断熱消磁装置は、標的温度を第1の標的温度から第2の標的温度に変化または漸増させるように構成されてもよい、または逆もまた同様である。
【0086】
第1の切替モードは、第2の切替モードと異なる。用語「切替モード」は、熱スイッチの切替状態(オン/オフまたは閉鎖/開放)の変更または変更のパターンを指す。
【0087】
複数の熱スイッチは、総数aの熱スイッチであってもよく、a≧2である。第1の切替モードでは、a個の熱スイッチのうちのb個のものが、再循環率に従って切り替えられることができ、熱スイッチのうちのb’個のものが、閉鎖されたままであることができる(b+b’=a)。第2の切替モードでは、a個の熱スイッチのうちのc個のものが、再循環率に従って切り替えられることができ、熱スイッチのうちのc’個のものが、閉鎖されたままであることができる(c+c’=a; b≠b’; c≠c’)。閉鎖されている熱スイッチが、本断熱消磁ユニットが受動熱導体として機能するように、個別の断熱消磁ユニットをショートカットしてもよい。
【0088】
例えば、標的温度が、より低い標的温度に変更されると、および/または熱負荷が増大すると、より多い熱スイッチが、動作される。したがって、冷却出力が、より多い熱スイッチを動作させることによって、増大されることができる。
【0089】
図6は、本開示のさらなる実施形態による、多段断熱消磁冷凍機の時間温度プロファイルを示し、個々のADRユニットの上側動作温度および下側動作温度T
i,1およびT
i,2は、標的温度および/または熱負荷に従って構成される(標的温度および熱負荷は両方とも、時間の関数として変動し得る)。
【0090】
本開示の第3の側面によると、断熱消磁装置を制御する方法は、断熱消磁装置の少なくとも1つの断熱消磁ユニットを第1の温度と第2の温度との間で循環させるステップを含み、第1の温度および/または第2の温度は、変動される、または可変である。第1の温
度は、第2の温度より高い。第3の側面は、
図4の第1の側面および/または
図5の第2の側面と組み合わせられることができる。
【0091】
第3の側面による方法は、一定ではない再循環温度T
i,1およびT
i,2を使用する。したがって、再循環率は、標的温度(
図6参照)および/または熱負荷(図示せず)に従って低減され得る。
【0092】
断熱消磁ユニットは、個々の第1の温度と、個々の第2の温度とを有してもよい。断熱消磁ユニットの第1の温度は、異なってもよい、および/または断熱消磁ユニットの第2の温度は、異なってもよい。少なくとも1つの断熱消磁ユニット、特に、複数の断熱消磁ユニットの第1の温度および/または第2の温度は、変更される、または一定ではなくあることができる。例えば、第1の温度および/または第2の温度は、サイクルのうちの少なくともいくつかにおいて異なってもよい。
【0093】
いくつかの実装では、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷および/または標的温度に基づいて変動される。例えば、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷が増大される場合、減少されてもよい、および/または第1の温度および/または第2の温度は、標的温度が増大される場合、増大されてもよい。加えて、または代替として、第1の温度および/または第2の温度は、熱負荷が減少される場合、増大されてもよい、および/または第1の温度および/または第2の温度は、標的温度が減少される場合、減少されてもよい。
【0094】
熱負荷は、断熱消磁装置、特に、断熱消磁ユニットのチェーンの最後の段であり得る、n番目の断熱消磁ユニットに印加される、熱負荷であってもよい。最後の段は、断熱消磁装置のサンプル段に接続されることができる。
【0095】
本明細書に説明される実施形態によると、本方法は、断熱消磁装置の対応するコンポーネントと通信する、CPUと、メモリと、ユーザインターフェースと、入力および出力手段とを有し得る、コンピュータプログラム、ソフトウェア、コンピュータソフトウェア製品、および相互に関連するコントローラを用いて行われることができる。
【0096】
本開示の独立した側面によると、(例えば、非一過性)機械可読媒体が、提供される。機械可読媒体は、1つ以上のプロセッサによって、本開示の方法、特に、第1の側面および/または第2の側面および/または第3の側面の方法の実施形態を実装するために実行可能な命令を含む。
【0097】
(例えば、非一過性)機械可読媒体は、例えば、CD-ROMおよびデジタルビデオディスク(DVD)等の光学媒体、および電気的にプログラム可能な読取専用メモリ(EPROM)および電気的に消去可能プログラマブル読取専用メモリ(EEPROM)等の半導体メモリデバイスを含み得る。機械可読媒体は、1つ以上のモジュール内に編成され、任意の所望のコンピュータプログラミング言語において記述されるコンピュータプログラム命令またはコードを有形に留保するために使用され得る。例えば、1つ以上のプロセッサによって実行されると、そのようなコンピュータプログラムコードは、本明細書に説明される方法のうちの1つ以上のものを実装し得る。
【0098】
1つの実装では、CADRシステムの制御は、各個々のADRユニットのステータス、特に、以下を使用する、状態機械を用いて達成され得る。
【0099】
i)状態変数(「状態」)、例えば、「アイドル」、「待機」、「再発生」「緩和」、「サーボ」等。
【0100】
ii)冷却媒体の位置における磁場B
【0101】
iii)冷却媒体の温度、および
【0102】
iv)ヒートスイッチステータス、例えば、「開放」または「閉鎖」。
【0103】
状態機械の可能性として考えられる実装が、磁気ヒートポンプ内の指数iを伴うADRユニットを制御するために使用され得る。例えば、指数i-1およびi+1を伴うADRユニットは、それぞれ、スレーブおよびマスタと称される。わずかに異なる制御方法が、n段CADRシステム内の指数nを伴う最後のADRユニットのために使用されてもよい。
【0104】
図7は、本明細書に説明される実施形態による、断熱消磁装置810を有するシステム800の概略図を示す。
【0105】
断熱消磁装置810は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに結合され、1つ以上のプロセッサによって、本開示の方法の実施形態を実装するために実行可能な命令とを含む、メモリとを含む、コントローラを含む。
【0106】
システム800は、極低温剤を含まない低温保持装置等の低温保持装置であることができる。システム800は、本開示の実施形態の真空チャンバ820と、断熱消磁装置810とを含む。
【0107】
真空チャンバ820は、真空を含有するように構成される、内部空間822を有する。真空チャンバ820は、内部空間822を外側から、本質的に気密、真空機密、熱不透過性、および/または放射線不透過性の状態にシールする。随意に、真空チャンバ820は、内部空間822を外側から電気的に絶縁してもよい。
【0108】
真空は、概して、本質的に物質のない空間として理解される。本願の全体を通して使用されるような、用語「真空」は、特に、技術的真空、すなわち、大気圧をはるかに下回るガス状圧力を伴う領域として理解される。真空チャンバ820の内側における真空は、高真空または超高真空であることができる。ターボポンプおよび/または低温ポンプ(図示せず)等の1つ以上の真空発生源が、真空を発生させるために、真空チャンバ820に接続されることができる。
【0109】
いくつかの実施形態によると、システム800が、低温または超低温においてサンプル20の1つ以上の物理的特性を測定するために、提供され得る。1つ以上の物理的特性は、限定ではないが、磁化、抵抗率、および伝導性を含み得る。随意に、サンプルの1つ以上の物理的特性は、外部磁場および/または圧力等の外部条件下で測定されることができる。サンプル20が、サンプル移送機構30を使用して、真空部820の中に装填され、真空チャンバから装填解除されてもよい。
【0110】
システム800は、内側空間と、真空係止部とを有する、アクセスポート830を含んでもよい。真空係止部は、閉鎖状態において、内部空間822をアクセスポート830の内側空間から、本質的に真空機密の状態でシールしてもよく、開放状態において、内部空間822へのアクセスを可能にしてもよい。
【0111】
例えば、真空係止部は、閉鎖されることができ、それに取り付けられるサンプル20を有する、サンプル保持器は、例えば、大気圧下で、アクセスポート830の内側空間内に
設置されることができる。アクセスポート830の内側空間は、外側からシールされることができ、技術的真空が、内側空間内に発生されることができる。次いで、真空係止部が、開放され、真空チャンバ820の内部空間822およびアクセスポート830の内側空間を接続することができる。サンプル保持器が、サンプル移送機構30を使用して、真空チャンバ820の中に挿入されることができる。サンプル保持器が、基部840に機械的に取り付けられることができ、サンプル保持器が、サンプル移送機構30から解放されることができ、サンプル移送機構30が、内側空間822から除去されることができる。真空係止部が、閉鎖されることができ、システム800が、サンプル保持器上のサンプルを検査するために、動作されることができる。
【0112】
システム800は、真空チャンバの内側において、5mK~300Kの範囲内、特に、5mK~250Kの範囲内、特に、5mK~200Kの範囲内、特に、5mK~150Kの範囲内、特に、5mK~100Kの範囲内、より具体的には、5mK~約70Kの範囲内の温度を提供するように構成されることができる。いくつかの実装では、本システムが、低温保持装置である場合でも、室温までの温度が、サンプルに関する測定を行うために、提供されることができる。温度範囲は、
図4の第1の側面、
図5の第2の側面、および
図6の第3の側面のうちの1つ以上のものの好適な実装によって、入手されることができる。随意に、抵抗加熱器等の加熱器が、特に、より高い温度範囲を入手するために使用されることができる。
【0113】
本明細書に説明される他の実施形態と組み合わせられ得る、いくつかの実施形態によると、システム800は、断熱消磁冷凍機、特に、多段断熱消磁冷凍機である。多段断熱消磁冷凍機は、1K以下、特に、500mK以下、特に、100mK以下、特に、50mK以下において動作するように構成されてもよい。しかしながら、上記に述べられるように、本開示は、それに限定されず、システム800は、より高温、すなわち、1K以上、例えば、最大で室温においても動作されることができる。
【0114】
前述のものは、本開示の実施形態を対象とするが、本開示の他のおよびさらなる実施形態も、その基本的範囲から逸脱することなく、考案され得、その範囲は、続く請求項によって決定される。