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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051049
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】焼却灰処理装置、及び焼却灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20240403BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240403BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B09B101:30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026323
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2019201555の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019097345
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤川 宗治
(72)【発明者】
【氏名】吉井 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
(57)【要約】
【課題】焼却灰の水分率を抑えることができるとともに、重金属類の難溶性化処理を効率良く行うことができる焼却灰処理装置を提供する。
【解決手段】焼却灰を搬送する灰搬送装置12と、灰搬送装置12によって搬送される焼却灰に対し水を添加する水噴射ノズル13と、水噴射ノズル13によって水が添加された焼却灰に対しCOを含む焼却排ガスを添加する吹込管15とを備える焼却灰処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰を搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し水を噴射して添加する水添加手段と、
前記水添加手段によって水が添加された焼却灰の水分率を測定する水分率測定手段と、
前記水添加手段によって水が添加された焼却灰に対しCOを含む中和ガスを添加する中和手段と、
を備え、
前記水添加手段は、前記焼却灰搬送手段によって搬送されている焼却灰の搬送灰量をMとし、流量計によって測定される当該水添加手段の噴射水量をQとし、前記水分率測定手段によって測定される水分率をWとし、予め設定される焼却灰の目標水分率をWとし、前記水分率Wが前記目標水分率Wとなるのに必要な水の目標噴射水量をQとした場合、以下の式(1)及び(2):
M = (100 - W) × Q / W ・・・(1)
= W × M /(100 - W) ・・・(2)
によって求められる前記目標噴射水量Qとなるように水を噴射して添加する焼却灰処理装置。
【請求項2】
前記中和手段は、前記中和ガスを吹き込む吹込管である請求項1に記載の焼却灰処理装置。
【請求項3】
前記中和ガスが添加される焼却灰を収容可能なケーシングを備える請求項1又は2に記載の焼却灰処理装置。
【請求項4】
未反応の前記中和ガスを前記中和手段に還流する還流手段を備える請求項1~3の何れか一項に記載の焼却灰処理装置。
【請求項5】
前記中和ガス中のCO濃度に基づいて前記還流手段による還流量を制御する還流量制御手段を備える請求項4に記載の焼却灰処理装置。
【請求項6】
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類溶出防止薬剤を直接添加することにより、又は前記重金属類溶出防止薬剤を前記水添加手段によって添加される水に混合することにより、焼却灰に前記重金属類溶出防止薬剤が付着するように構成される請求項1~5の何れか一項に記載の焼却灰処理装置。
【請求項7】
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に含まれる重金属類の含有量を測定する重金属類含有量測定手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類溶出防止薬剤を添加する薬剤添加手段と、
前記薬剤添加手段によって添加される前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する薬剤添加量制御手段とを備え、
前記薬剤添加量制御手段は、焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して前記水添加手段により水を添加し、且つ前記中和手段により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、前記重金属類含有量測定手段により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量を演算し、算出した重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を演算し、算出した添加量となるように、前記薬剤添加手段によって添加される前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する請求項1~5の何れか一項に記載の焼却灰処理装置。
【請求項8】
焼却灰を搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し水を噴射して添加する水添加工程と、
前記水添加工程によって水が添加された焼却灰の水分率を測定する水分率測定工程と、
前記水添加工程によって水が添加された焼却灰に対しCOを含む中和ガスを添加する中和工程と、
を包含し、
前記水添加工程は、前記焼却灰搬送工程において搬送されている焼却灰の搬送灰量をMとし、流量計によって測定される当該水添加工程での噴射水量をQとし、前記水分率測定工程において測定される水分率をWとし、予め設定される焼却灰の目標水分率をWとし、前記水分率Wが前記目標水分率Wとなるのに必要な水の目標噴射水量をQとした場合、以下の式(1)及び(2):
M = (100 - W) × Q / W ・・・(1)
= W × M /(100 - W) ・・・(2)
によって求められる前記目標噴射水量Qとなるように水を噴射して添加する焼却灰処理方法。
【請求項9】
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に含まれる重金属類の含有量を測定する重金属類含有量測定工程と、
焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して前記水添加工程により水を添加し、且つ前記中和工程により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、前記重金属類含有量測定工程により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量を演算する重金属類溶出量演算工程と、
前記重金属類溶出量演算工程において算出した重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な重金属類溶出防止薬剤の添加量を演算する薬剤添加量演算工程と、
前記薬剤添加量演算工程おいて算出した添加量となるように、前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対する重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する薬剤添加量制御工程と、
をさらに包含する請求項8に記載の焼却灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類の溶出を抑えるように焼却灰を処理する焼却灰処理装置、及び焼却灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば都市ごみや産業廃棄物等は、減容化や無害化、再資源化を目的として、焼却炉で焼却処理されている。焼却処理に伴い生じる焼却灰は、消火・冷却された後に、場外搬出されて、埋立処分又は再資源化により処理される。
【0003】
焼却灰には、有害物質、特に重金属類が含まれている。従って、焼却灰からの重金属類の溶出量が基準値を超える場合は、そのまま埋立処分したり、資源として利用したりすることができない。このような状況に対処するためには、例えば埋立処分等する前に重金属類を安定化させて、溶出量が基準値以下となるような難溶性化処理を行わなければならない。
【0004】
従来、重金属類の難溶性化処理として、例えば特許文献1にて開示されているような方法がある。この方法では、焼却炉から排出された焼却灰を処理ヤードで積層して貯留し、焼却灰に対し水を噴霧するとともに、ガス吹込みノズルにより焼却灰層内に空気や焼却排ガス等のCO含有ガスを吹き込むようにしている。これにより、焼却灰中に含まれる重金属類にCOを反応させて炭酸塩化し、重金属類を難溶性化するとともに、焼却灰のpHを難溶性領域とすることで、焼却灰からの重金属類の溶出を抑制することができる。
【0005】
上記の特許文献1に係る方法では、処理ヤードに積層されている比較的密な湿潤焼却灰に対してCO含有ガスが通気される。このため、焼却灰に対してCO含有ガスを十分に接触させることができず、重金属類の難溶性化処理の効率が悪いという問題がある。また、上記の特許文献1に係る方法では、焼却灰を貯留するための処理ヤードを設ける必要があり、施設の規模が大きくなるという問題がある。さらに、上記の特許文献1に係る方法では、処理ヤード内に散水することにより発生する過剰量の浸出水を処理するための排水処理設備が別途必要になり、設備費用が嵩むという問題がある。
【0006】
上記のような問題を解決し得るものとして、例えば特許文献2にて開示されている焼却灰無害化処理装置がある。この焼却灰無害化処理装置は、焼却炉から排出される焼却灰と水とを貯留する貯留水槽を備え、焼却炉からのCOを含む排ガスを貯留水槽内に吹き込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-74100号公報
【特許文献2】特開2015-196128号公報
【0008】
上記の特許文献2に係る焼却灰無害化処理装置において、焼却炉からのCOを含む排ガスが貯留水槽内に吹き込まれると、貯留水槽中に浸漬されている焼却灰は、貯留水中の気泡状のCO及びCO溶解水と反応し、焼却灰に含まれる例えば鉛の炭酸化反応が行われる。この炭酸化反応は、焼却灰が貯留水中に浸漬状態で行われ、貯留水と十分な面積をもって接触することから、鉛等の重金属類の難溶性化処理を効率良く行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献2に係る焼却灰無害化処理装置では、焼却灰を完全に水没させた後に水面より露出させることで水切りするため、焼却灰の水分率は水切り時間等に影響されて成り行きとなり、所定の範囲に水分率を抑えることは困難である。焼却灰の処理費用は、重量あたりで清算されるため、焼却灰の水分率が高いと、処理費用が高額となる。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、焼却灰の水分率を抑えることができるとともに、重金属類の難溶性化処理を効率良く行うことができる焼却灰処理装置、及び焼却灰処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る焼却灰処理装置の特徴構成は、
焼却灰を搬送する焼却灰搬送手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し水を添加する水添加手段と、
前記水添加手段によって水が添加された焼却灰に対しCOを含む中和ガスを添加する中和手段と、
を備えることにある。
【0012】
本構成の焼却灰処理装置においては、焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対して水添加手段により水が添加される。これにより、焼却灰を完全に水没させる特許文献2のものと比べて焼却灰の水分率を抑えることができる。また、本構成の焼却灰処理装置においては、水が添加された焼却灰に対して中和手段によりCOを含む中和ガスが添加される。これにより、焼却灰中の水酸化物とCOとの反応、及び焼却灰中の重金属類とCOとの反応がそれぞれ効率良く進むことになり、重金属類の難溶性化処理を効率良く行うことができる。
【0013】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
前記中和手段は、前記中和ガスを吹き込む吹込管であることが好ましい。
【0014】
本構成の焼却灰処理装置によれば、中和手段が、中和ガスを吹き込む吹込管であることから、焼却灰中により深く中和ガスが入り込むことになり、中和ガスに含まれるCOを焼却灰中の水酸化物や重金属類に確実に接触させることができ、重金属類の難溶性化処理をより効率良く行うことができる。
【0015】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
前記中和ガスが添加される焼却灰を収容可能なケーシングを備えることが好ましい。
【0016】
本構成の焼却灰処理装置によれば、中和ガスが添加される焼却灰を収容可能なケーシングを備えることから、焼却灰に添加される中和ガスの外部への放散をケーシングにより抑えることができ、中和ガスを焼却灰に効率良く接触させることができる。
【0017】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
未反応の前記中和ガスを前記中和手段に還流する還流手段を備えることが好ましい。
【0018】
本構成の焼却灰処理装置によれば、未反応の中和ガスを中和手段に還流する還流手段を備えることから、中和ガスに含まれるCOを重金属類の難溶性化処理のために無駄なく使用することができる。
【0019】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
前記中和ガス中のCO濃度に基づいて前記還流手段による還流量を制御する還流量制御手段を備えることが好ましい。
【0020】
本構成の焼却灰処理装置によれば、中和ガス中のCO濃度に基づいて還流手段による還流量を制御する還流量制御手段を備えることから、例えば、中和ガス中のCO濃度が所定範囲の下限よりも低くなった場合には、還流量を減少させ、中和ガス中のCO濃度が所定範囲の上限よりも高くなった場合には、還流量を増加させるような制御が可能となる。これにより、中和ガス中のCO濃度が所定範囲に保たれることになり、重金属類の難溶性化処理を安定的に行いつつ、中和ガスに含まれるCOを重金属類の難溶性化処理のために無駄なく使用することができる。
【0021】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類溶出防止薬剤を直接添加することにより、又は前記重金属類溶出防止薬剤を前記水添加手段によって添加される水に混合することにより、焼却灰に前記重金属類溶出防止薬剤が付着するように構成されることが好ましい。
【0022】
本構成の焼却灰処理装置によれば、CO含有中和ガスの焼却灰への添加に加えて、焼却灰に重金属類安定化薬剤が付着されるので、CO含有中和ガスによる重金属類の難溶性化処理と、重金属類安定化薬剤による重金属類の安定化処理との相乗効果によって焼却灰からの重金属類の溶出をより確実に防ぐことができる。
【0023】
本発明に係る焼却灰処理装置において、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に含まれる重金属類の含有量を測定する重金属類含有量測定手段と、
前記焼却灰搬送手段によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐための重金属類溶出防止薬剤を添加する薬剤添加手段と、
前記薬剤添加手段によって添加される前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する薬剤添加量制御手段とを備え、
前記薬剤添加量制御手段は、焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して前記水添加手段により水を添加し、且つ前記中和手段により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、前記重金属類含有量測定手段により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量を演算し、算出した重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を演算し、算出した添加量となるように、前記薬剤添加手段によって添加される前記重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御することが好ましい。
【0024】
本構成の焼却灰処理装置においては、焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して水添加手段により水を添加し、且つ中和手段により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、重金属類含有量測定手段により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量が演算される。算出された重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な重金属類溶出防止薬剤の添加量が演算される。そして、算出された添加量となるように、薬剤添加手段によって添加される重金属類溶出防止薬剤の添加量が制御される。従って、焼却灰に含まれる重金属類の含有量の変動によっては、水と中和ガスとの添加による難溶性化処理によっても重金属類の溶出量が溶出基準値を超過することがある場合でも、重金属類の溶出量を溶出基準値以下に抑えることができる。
【0025】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る焼却灰処理方法の特徴構成は、
焼却灰を搬送する焼却灰搬送工程と、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対し水を添加する水添加工程と、
前記水添加工程によって水が添加された焼却灰に対しCOを含む中和ガスを添加する中和工程と、
を包含することにある。
【0026】
本構成の焼却灰処理方法においては、焼却灰搬送工程により搬送される焼却灰に対して水添加工程により水が添加される。これにより、焼却灰を完全に水没させる特許文献2のものと比べて焼却灰の水分率を抑えることができる。また、本構成の焼却灰処理方法においては、水が添加された焼却灰に対して中和工程によりCOを含む中和ガスが添加される。これにより、焼却灰中の水酸化物とCOとの反応、及び焼却灰中の重金属類とCOとの反応がそれぞれ効率良く進むことになり、重金属類の難溶性化処理を効率良く行うことができる。
【0027】
本発明に係る焼却灰処理方法において、
前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に含まれる重金属類の含有量を測定する重金属類含有量測定工程と、
焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して前記水添加工程により水を添加し、且つ前記中和工程により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、前記重金属類含有量測定工程により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量を演算する重金属類溶出量演算工程と、
前記重金属類溶出量演算工程において算出した重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な重金属類溶出防止薬剤の添加量を演算する薬剤添加量演算工程と、
前記薬剤添加量演算工程おいて算出した添加量となるように、前記焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対する重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する薬剤添加量制御工程と、
をさらに包含するのが好ましい。
【0028】
本構成の焼却灰処理方法においては、焼却灰に含まれる重金属類の含有量と、焼却灰に対して水添加工程により水を添加し、且つ中和工程により中和ガスを添加した場合の重金属類の溶出量との関係データに基づいて、重金属類含有量測定工程により測定される重金属類の含有量から重金属類の溶出量を演算する重金属類溶出量演算工程が実施される。重金属類溶出量演算工程において算出された重金属類の溶出量が溶出基準値を超える場合、重金属類の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要な重金属類溶出防止薬剤の添加量を演算する薬剤添加量演算工程が実施される。そして、薬剤添加量演算工程おいて算出された添加量となるように、焼却灰搬送工程によって搬送される焼却灰に対する重金属類溶出防止薬剤の添加量を制御する薬剤添加量制御工程が実施される。従って、焼却灰に含まれる重金属類の含有量の変動によっては、水と中和ガスとの添加による難溶性化処理によっても重金属類の溶出量が溶出基準値を超過することがある場合でも、重金属類の溶出量を溶出基準値以下に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第二実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第三実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図である。
図4図4は、本発明の第三実施形態に係る焼却灰処理装置による焼却灰の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、図1図4を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0031】
〔第一実施形態〕
図1には、本発明の第一実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図が示されている。
【0032】
<全体構成>
図1において、焼却炉1は、例えば都市ごみや産業廃棄物等を焼却処理するものである。焼却炉1の焼却排ガス流れの下流側には、ボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4、バグフィルタ5、誘引送風機6、及び煙突7がそれぞれ順に配設されている。焼却炉1での焼却処理に伴い発生した焼却排ガスは、誘引送風機6の誘引作用により、ボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4、及びバグフィルタ5にそれぞれ順に送り込まれる。
【0033】
ボイラ2では、焼却排ガスの熱を利用して蒸気を発生させ、エコノマイザ3では、ボイラ2に供給する水を焼却排ガスの余熱を利用して加熱する。減温塔4では、エコノマイザ3からの焼却排ガスを所定温度まで冷却する。バグフィルタ5では、冷却後の焼却排ガスに含まれるダスト等を除去する。そして、ダスト等が除去された後の焼却排ガスは、誘引送風機6により煙突7を介して外部に排出される。なお、バグフィルタ5において除塵された後の焼却排ガス中には、5~20体積%のCO(温度:80~160℃)が含まれている。
【0034】
図1に示される焼却灰処理装置10Aは、焼却炉1での焼却処理に伴い発生する焼却灰に含まれる重金属類の溶出を抑制するように難溶性化処理を行うための装置である。この焼却灰処理装置10Aは、主として、焼却灰排出手段としての灰排出装置11、焼却灰搬送手段としての灰搬送装置12、水添加手段として水噴射ノズル13、水分率測定手段としての水分計14、中和手段としての吹込管15、及び制御手段としての制御装置16を備えている。
【0035】
<灰排出装置>
灰排出装置11は、焼却炉1から排出された焼却灰を一旦貯留し必要に応じて排出するものである。灰排出装置11としては、例えば、プッシャー式灰排出装置や、二重ダンパ式灰排出装置、スクリュー式灰排出装置等が挙げられ、これらの中から適宜に選択することができる。これらの灰排出装置については、図示による詳細説明は省略するが、簡単に説明すると以下の通りである。
【0036】
プッシャー式灰排出装置は、焼却炉からの焼却灰を貯留する焼却灰貯留部と、この焼却灰貯留部に貯留されている焼却灰を下部から順に押し出して排出する灰押出装置とを備えて構成されるものである。また、二重ダンパ式灰排出装置は、焼却炉の排出口に設けられるシュートの内部で上下に配置される上側ダンパ、及び下側ダンパを備え、ダンパ上に堆積された焼却灰を落下させる動作を上下のダンパが交互に行って段階的に焼却灰を落下させるものである。また、スクリュー式灰排出装置は、焼却炉からの焼却灰を受入可能なトラフと、トラフ内に配設された軸付スクリュー羽根とを備え、軸付スクリュー羽根を回転させることにより、トラフ内の焼却灰を軸付スクリュー羽根で連続的に下流側へと排出するように構成されるものである。
【0037】
<灰搬送装置>
灰搬送装置12は、灰排出装置11によって排出される焼却灰を搬送するものである。第一実施形態では、灰搬送装置12として、ベルトコンベヤ式灰搬送装置が採用されている。この灰搬送装置12は、搬送方向に延びる四角筒状のケーシング21と、ケーシング21内に配設されるベルトコンベヤ22とを備えて構成されている。
【0038】
ケーシング21は、灰排出装置11から排出された焼却灰が投入される投入口24を一方側に有するとともに、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰を排出するための排出口25を他方側に有している。ベルトコンベヤ22は、搬送方向に所定間隔を存して配設される駆動輪26及び従動輪27と、これら駆動輪26及び従動輪27に無端状に巻き掛け装着される無端ベルト28とを備えている。ベルトコンベヤ22においては、駆動輪26の作動にて周回運動する無端ベルト28により、ケーシング21の投入口24を介して投入された焼却灰をケーシング21の排出口25へと搬送することができるようになっている。なお、排出口25から排出された焼却灰は、焼却灰貯留設備29において貯留される。
【0039】
第一実施形態では、灰搬送装置12として、ベルトコンベヤ式灰搬送装置を採用した例を示したが、これに限定されるものではなく、フライトコンベヤ式灰搬送装置を採用してもよい。フライトコンベヤ式灰搬送装置については、図示による詳細説明は省略するが、簡単に説明すると以下の通りである。
【0040】
フライトコンベヤ式灰搬送装置は、上記のケーシング21と同構造のケーシング内にフライトコンベヤが配設されて構成されている。フライトコンベヤは、搬送方向に所定間隔を存して配設される駆動輪及び従動輪と、これら駆動輪及び従動輪に無端状に巻き掛け装着される無端チェーンと、ケーシングの底板に対し近接して移動可能となるように無端チェーンに所定間隔で取り付けられる複数のスクレーパとを備えている。このフライトコンベヤにおいては、駆動輪の作動にて無端チェーンが周回運動し、無端チェーンに取り付けられたスクレーパによってケーシングの底板上に堆積した焼却灰を掻き取ってケーシングの排出口へと搬送することができるようになっている。
【0041】
<水噴射ノズル>
水噴射ノズル13は、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰に対し水を添加するものである。水噴射ノズル13は、灰搬送装置12の搬送方向上流側領域における焼却灰に対して水を均等に添加(噴射)できるようにケーシング21の上部に複数設けられている(説明の都合上、図においては1個のみ示す。)。
【0042】
水噴射ノズル13には、水供給管31が接続されている。水噴射ノズル13には、水供給源30から圧送される水が水供給管31を介して供給される。水供給管31には、管内を流れる水の流量を調節できるように流量調節弁32が介設されている。また、水供給管31には、管内を流れる水の流量を測定することができるように流量計33が介設されている。
【0043】
<水分計>
水分計14は、水噴射ノズル13の設置位置よりも灰搬送装置12の搬送方向下流側に位置するようにケーシング21の上部に設けられ、水噴射ノズル13によって水が噴射された焼却灰の水分率を測定する。水分計14としては、搬送される焼却灰に対して非接触でその焼却灰に含まれる水分率を連続的に測定できるものが好ましい。例えば、焼却灰に照射されたマイクロ波の水分による減衰等の電気的変化量を水分値に置き換えて水分率を測定するマイクロ波式水分計や、焼却灰に照射された近赤外線を含む光の反射率から水分率を測定する近赤外線式水分計等を好適に用いることができる。
【0044】
<吹込管>
吹込管15は、水分計14の設置位置よりも灰搬送装置12の搬送方向下流側に位置するようにケーシング21の上部に設けられている。吹込管15は、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰に対してCOを含む中和ガス(焼却排ガス)を吹き込むことができるようにケーシング21の内部に向けて開口している。
【0045】
吹込管15には、バグフィルタ5においてダスト等が除去された後の焼却排ガスを供給するための排ガス供給管35が接続されている。排ガス供給管35の途中には、誘引送風機36が介設されており、誘引送風機36の誘引作用により、除塵後の焼却排ガスが吹込管15に供給される。これにより、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰に対して焼却排ガスが吹込管15により吹き込まれる。
【0046】
<排気部>
ケーシング21には、灰搬送装置12の搬送方向最下流部に位置するように排気部37が設けられている。排気部37は、吹込管15を通してケーシング21の内部に吹き込まれた焼却排ガスをケーシング21の外部へと排出できるようにケーシング21の外部に向けて開口した管状部材によって構成されている。排気部37には、ケーシング21の外部へと排出される焼却排ガスを焼却炉1へと導くための排ガス排気管38が接続されている。
【0047】
<制御装置>
制御装置16は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を有するコンピュータを主体に構成されている。制御装置16においては、流量計33からの測定信号と水分計14からの測定信号とに基づいて、所定の演算処理を実行し、演算結果に基づく所定の制御信号を流量調節弁32へと送信して、水噴射ノズル13から噴射される水の噴射水量を制御する。
【0048】
<作動説明>
以上に述べたように構成される焼却灰処理装置10Aにおいては、以下に述べる複数の工程の実施により、重金属類の難溶性化処理が行われる。
【0049】
<焼却灰排出工程>
まず、灰排出装置11は、焼却炉1から排出された焼却灰を一旦貯留し必要に応じて排出する(焼却灰排出工程)。灰排出装置11から排出された焼却灰は、投入口24を介してケーシング21の内部に投入される。
【0050】
<焼却灰搬送工程>
ベルトコンベヤ22は、投入口24を介してケーシング21の内部に投入された焼却灰を排出口25へと搬送する(焼却灰搬送工程)。排出口25へと搬送された焼却灰は、排出口25から排出され、焼却灰貯留設備29において貯留される。
【0051】
<水添加工程>
水噴射ノズル13は、ベルトコンベヤ22によって搬送されている焼却灰に対し水を噴射する(水添加工程)。水噴射ノズル13からの噴射水量は、流量計33によって測定され、噴射水量の測定信号は、制御装置16へと送信される。
【0052】
焼却灰処理装置10Aにおいては、水添加工程の実施により、まだ燃えているごみが焼却灰中に含まれていたとしても焼却灰を消火・冷却することができるとともに、焼却灰の輸送中や積み込み、積み降ろし中に焼却灰が飛散してしまうのを防止することができる程度に焼却灰を加湿することができる。
【0053】
<水分率測定工程>
水分計14は、水噴射ノズル13によって水が噴射された焼却灰の水分率を測定する(水分率測定工程)。水分率の測定信号は、制御装置16へと送信される。
【0054】
ここで、ベルトコンベヤ22によって搬送されている焼却灰の量(以下、「搬送灰量」と称する。)をMとし、流量計33によって測定される噴射水量(L/h)をQとし、水分計14によって測定される水分率(%)をWとした場合、搬送灰量Mは、下記式(1)によって求めることができる。
M = (100 - W) × Q / W ・・・(1)
【0055】
また、予め設定される焼却灰の目標水分率(%)をWとし、焼却灰の実際の水分率(水分計14の測定水分率W)が目標水分率Wとなるのに必要な水の噴射水量(以下、「目標噴射水量」と称する。)をQとした場合、目標噴射水量Qは、下記式(2)によって求めることができる。
= W × M /(100 - W) ・・・(2)
【0056】
制御装置16は、水分計14によって測定される水分率Wと流量計33によって測定される噴射水量Qとを読み込み、上記式(1)により搬送灰量Mを演算する。次いで、制御装置16は、算出された搬送灰量Mに基づいて、上記式(2)により目標噴射水量Qを演算する。そして、制御装置16は、算出された目標噴射水量Qに応じた流量制御信号を流量調節弁32へと送り、流量計33によって測定される水噴射ノズル13からの実際の噴射水量が目標噴射水量Qに一致するように噴射水量を制御する。これにより、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰の搬送量が変動したとしても、焼却灰の水分率を目標水分率Wに確実に近づけることができる。
【0057】
<中和工程>
吹込管15は、誘引送風機36の誘引作用により供給される焼却排ガスを、ベルトコンベヤ22によって搬送されている焼却灰に対して吹き込む(中和工程)。これにより、水噴射ノズル13の水噴射によって水が添加された後の焼却灰に対しCOを含む焼却排ガス(中和ガス)が添加される。なお、ケーシング21の内部への焼却排ガスの供給は、1分~12時間程度(好ましくは5分~1時間程度)行われる。
【0058】
焼却灰に含まれる重金属類は、焼却排ガスに含まれるCOと反応して炭酸化物となり、水に対する溶解度が低下する。焼却灰に含まれる重金属類のうち、特に鉛の含有量が多いため、処理の対象になっている重金属類は主として鉛である。鉛は、酸化鉛(PbO)から炭酸鉛(PbCO)に変化することにより、水に対する溶解度が下がって難溶性になる。また、焼却灰は、塩基性であって溶出液のpHが高い。焼却灰のpHに関しては、焼却灰に含まれる酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))をCOと反応させて炭酸カルシウム(CaCO)とすることにより、焼却灰のpHを重金属類が難溶性を示す難溶性領域とすることも行われる。鉛は両性金属であり、強い塩基性を示す焼却灰においては溶出液のpHを低下させて難溶性領域とすることで、鉛の溶出量を減少させることができる。
【0059】
焼却灰処理装置10Aにおいては、焼却灰の実際の水分率(水分計14の測定水分率W)が目標水分率Wとなるように、灰搬送装置12によって搬送される焼却灰に対して水噴射ノズル13により水が添加される。従って、焼却灰を完全に水没させる特許文献2のものと比べて焼却灰の水分率を抑えることができるとともに、焼却灰に水を均一に添加することができる。また、焼却灰処理装置10Aにおいては、均一に水が添加された焼却灰に対して吹込管15によりCOを含む焼却排ガスが、ケーシング21の内部においてベルトコンベヤ22によって搬送されている焼却灰の真上から吹き込まれる。これにより、焼却排ガスの外部への放散がケーシング21によって抑えられた状態で、焼却灰に対して吹込管15から焼却排ガスが直接的に吹き込まれることになる。このため、焼却灰中により深く焼却排ガスが入り込んで、焼却排ガスに含まれるCOを焼却灰中の水酸化物や重金属類に確実に接触させることができる。従って、焼却灰中の水酸化物とCOとの反応、及び焼却灰中の重金属類とCOとの反応がより効率良く進むことになり、重金属類の難溶性化処理をより効率良く行うことができる。
【0060】
なお、ケーシング21内に吹き込まれた焼却排ガスは、排気部37、及び排ガス排気管38を介して焼却炉1へと排気される。
【0061】
<重金属類溶出防止薬剤添加工程>
焼却灰処理装置10Aにおいては、必要に応じて、重金属類溶出防止薬剤添加工程が実施される。すなわち、水供給源30から圧送される水に重金属類溶出防止薬剤(キレート剤)を混合し、水とキレート剤との混合液を水噴射ノズル13から噴射することにより、焼却灰にキレート剤が付着する。これにより、焼却排ガスの焼却灰への添加に加えて、焼却灰にキレート剤が付着されるので、焼却排ガスによる重金属類の難溶性化処理と、キレート剤による重金属類の安定化処理との相乗効果によって焼却灰からの重金属類の溶出をより確実に防ぐことができる。こうして、焼却灰に対する焼却排ガスの添加と、キレート剤の添加とを組み合わせることにより、焼却灰に対して焼却排ガスの添加を行わずにキレート剤のみを添加する場合と比較して、キレート剤の添加量を低減することができる。
【0062】
〔第二実施形態〕
図2には、本発明の第二実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図が示されている。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0063】
第二実施形態に係る焼却灰処理装置10Bは、第一実施形態に係る焼却灰処理装置10Aに対し、排ガス還流管41、及び還流量制御手段50が付加されたものであり、それ以外の構成については基本的に第一実施形態に係る焼却灰処理装置10Aと同じである。
【0064】
<排ガス還流管>
排ガス還流管41は、焼却灰中の水酸化物とCOとの反応、及び焼却灰中の重金属類とCOとの反応に使用されなかったCOを含む焼却排ガス(未反応の中和ガス)を吹込管15に還流するための還流手段として機能する。排ガス還流管41は、排ガス供給管35における誘引送風機36の上流側と排ガス排気管38とを接続するように配設されている。
【0065】
還流量制御手段50は、吹込管15に還流される焼却排ガスに含まれるCO濃度に基づいて排ガス還流管41による焼却排ガスの還流量を制御するものである。還流量制御手段50は、主に、CO濃度計51、ダンパ装置52、及び制御装置16により構成されている。
【0066】
CO濃度計51は、誘引送風機36から吹込管15へと流れる焼却排ガスに含まれるCOの濃度を測定することができるように排ガス供給管35に接続されている。ダンパ装置52は、制御装置16からの制御信号に応じてダンパ開度を変化させることができるように構成されている。制御装置16は、CO濃度計51からの測定信号に基づいて、所定の演算処理を実行し、演算結果に基づく所定の制御信号をダンパ装置52へと送信して、ダンパ開度を変化させる。これにより、排ガス還流管41を流れる焼却排ガスの流量を制御し、排ガス還流管41による焼却排ガスの還流量を制御することができる。
【0067】
以上に述べたように構成される焼却灰処理装置10Bにおいては、第一実施形態の焼却灰処理装置10Aと同様に、誘引送風機36の誘引作用によりバグフィルタ5から排ガス供給管35を介して吹込管15へと供給される焼却排ガスが吹込管15を通してケーシング21の内部に吹き込まれる。ケーシング21の内部に吹き込まれた焼却排ガスは、排気部37、及び排ガス排気管38を介して焼却炉1へと排気される。排ガス排気管38を流れる焼却排ガスの一部は、排ガス還流管41から排ガス供給管35へと流れ、バグフィルタ5から排ガス供給管35を介して吹込管15へと流れる焼却排ガスと合流して再度、吹込管15を通してケーシング21の内部に吹き込まれる。こうして、未反応の焼却排ガスが還流されるので、焼却排ガスに含まれるCOを重金属類の難溶性化処理のために無駄なく使用することができる。
【0068】
焼却灰処理装置10Bにおいて、CO濃度計51によって測定されるCO濃度が所定範囲(例えば、5~20%)の下限(5%)よりも低くなった場合、制御装置16は、還流量を減少させるようにダンパ開度を小さくするような制御信号をダンパ装置52へと送信する。これにより、排ガス還流管41による焼却排ガスの還流量が減少される。還流量が減少すると、バグフィルタ5から排ガス供給管35を介して吹込管15へと流れる焼却排ガスの流量が相対的に増加されることになり、吹込管15を通してケーシング21の内部に吹き込まれる焼却排ガス中のCO濃度が増加される。
【0069】
焼却灰処理装置10Bにおいては、上記の還流量制御により、吹込管15を通してケーシング21の内部に吹き込まれる焼却排ガス中のCO濃度が所定範囲(例えば5~20%)に保たれる。これにより、重金属類の難溶性化処理を安定的に行いつつ、焼却排ガスに含まれるCOを重金属類の難溶性化処理のために無駄なく使用することができる。
【0070】
〔第三実施形態〕
図3には、本発明の第三実施形態に係る焼却灰処理装置の概略システムを示すブロック図が示されている。第三実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第三実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0071】
第三実施形態に係る焼却灰処理装置10Cは、焼却灰に含まれる重金属類の含有量が変動(増加)したとしても、重金属類の溶出量を溶出基準値以下に抑えるための構成を備えることを特徴としている。以下に、具体的な構成、及び処理内容について説明する。なお、焼却灰に含まれる重金属類のうち、特に鉛の含有量が多いため、処理の対象になっている重金属類は主として鉛である。そのため、以下においては、処理対象として鉛を例に挙げて説明するが、鉛以外の重金属類についても以下に述べる処理を同様に適用することができる。
【0072】
第三実施形態に係る焼却灰処理装置10Cは、鉛含有量測定装置71、薬剤添加装置72、及び薬剤添加量制御手段73を備えている。
【0073】
<鉛含有量測定装置>
鉛含有量測定装置71は、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰に含まれる鉛の含有量を測定するものである。鉛含有量測定装置71は、水噴射ノズル13の設置位置よりも灰搬送装置12の搬送方向上流側に位置するようにケーシング21の上部(下部でも可)に設けられている。鉛含有量測定装置71は、水噴射ノズル13によって水が噴射される前であり、且つ、当然のことながら吹込管15により中和ガス(焼却排ガス)が吹き込まれる前の焼却灰に含まれる鉛の含有量を測定する。鉛含有量測定装置71としては、例えば、蛍光X線分析装置や、ボルタンメトリー装置、原子吸光分光光度計、ICP発光分析装置、レーザー誘起ブレークダウン分光分析装置等を好適に用いることができる。
【0074】
<薬剤添加装置>
薬剤添加装置72は、ベルトコンベヤ22によって搬送される焼却灰に対し、重金属類の溶出を防ぐためのキレート剤(重金属類溶出防止薬剤)を添加するものである。薬剤添加装置72は、キレート剤を貯留する薬剤貯留槽81と、薬剤貯留槽81と水供給管31とを接続する薬剤供給管82と、薬剤供給管82の途中に配設されるポンプ83とを備えて構成されている。薬剤添加装置72においては、ポンプ83の作動により、薬剤貯留槽81に貯留されているキレート剤が薬剤供給管82を通して水供給管31へと圧送される。これにより、水噴射ノズル13から噴射される水にキレート剤が混合され、ベルトコンベヤ22上の焼却灰に対し水と共にキレート剤を添加することができる。
【0075】
<薬剤添加量制御手段>
薬剤添加量制御手段73は、薬剤添加装置72によって添加されるキレート剤の添加量を制御するものである。薬剤添加量制御手段73は、前記制御装置16と、薬剤供給管82を流れるキレート剤の流量を調整する流量調節弁85と、薬剤供給管82を流れるキレート剤の流量を測定する流量計86とを備えて構成されている。
【0076】
制御装置16における記憶部18には、焼却灰に含まれる鉛の含有量と、焼却灰に対して水噴射ノズル13により水を添加し、且つ吹込管15により中和ガス(焼却排ガス)を添加した場合の鉛の溶出量との関係データ(以下、「鉛含有量と鉛溶出量との関係データ」と称する。)が記憶されている。
【0077】
図4は、本発明の第三実施形態に係る焼却灰処理装置による焼却灰の処理手順を示すフローチャートである。この図4のフローチャートを参照しつつ、図3のブロック図を用いて、焼却灰に対するキレート剤の添加動作について説明する。なお、図4のフローチャートにおいて、図中記号「S」は、ステップを表す。
【0078】
(重金属類含有量測定工程)
制御装置16は、鉛含有量測定装置71によって測定される鉛の含有量の測定値を取り込む(S1)。
【0079】
(重金属類溶出量演算工程)
次いで、制御装置16は、記憶部18から鉛含有量と鉛溶出量との関係データを読み出し、読み出した鉛含有量と鉛溶出量との関係データに基づいて、ステップS1において取り込んだ鉛含有量の測定値から鉛の溶出量を演算する(S2)。
【0080】
(薬剤添加量演算工程)
次いで、制御装置16は、ステップS2での演算によって算出された鉛の溶出量が溶出基準値を超える場合(ステップS3において「YES」)、鉛の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要なキレート剤の添加量を演算する(S4)。
【0081】
(薬剤添加量制御工程)
そして、制御装置16は、ステップS4での演算によって算出された添加量となるように、所定の流量制御信号を流量調節弁85へと送信しつつ、流量計86の測定信号をフィードバックしてキレート剤の添加量を制御する(S5)。
【0082】
第三実施形態に係る焼却灰処理装置10Cによれば、第一実施形態に係る焼却灰処理装置10Aと同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、第三実施形態に係る焼却灰処理装置10Cにおいては、制御装置16の記憶部18に予め記憶されている鉛含有量と鉛溶出量との関係データに基づいて、鉛含有量測定装置71により測定される鉛の含有量から鉛の溶出量が演算される。算出された鉛の溶出量が溶出基準値を超える場合、鉛の溶出量を溶出基準値以下にするのに必要なキレート剤の添加量が演算される。そして、算出された添加量となるように、薬剤添加装置72によって添加されるキレート剤の添加量が制御される。従って、焼却灰に含まれる鉛の含有量の変動によっては、水と中和ガスとの添加による難溶性化処理によっても鉛の溶出量が溶出基準値を超過することがある場合でも、鉛の溶出量を溶出基準値以下に抑えることができる。
【0083】
以上、本発明の焼却灰処理装置、及び焼却灰処理方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記各実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。具体的な別実施形態は以下のとおりである。
【0084】
<別実施形態1>
上記の各実施形態においては、焼却排ガスを中和ガスとして焼却灰に吹き込むことで中和工程を実施するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、焼却排ガスやバイオガスから膜分離装置やCO吸収液を用いて分離回収したCO濃縮ガス(常温でのCO濃度が99体積%以上)を中和ガスとして焼却灰に吹き込んだり、ボンベに充填された液化炭酸ガス(常温でのCO濃度が99体積%以上)を中和ガスとして焼却灰に吹き込んだりして中和工程を実施するようにしてもよい。
【0085】
<別実施形態2>
上記の各実施形態においては、焼却灰を搬送するベルトコンベヤ22の全体を収容可能なケーシング21に吹込管15を設ける例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図1及び図2において符号60を付した二点鎖線で示されるように、ベルトコンベヤ22の一部分を覆うフード60を設け、このフード60に吹込管15を設けるようにしてもよい。
【0086】
<別実施形態3>
また、上記の第一実施形態において、消費電力の削減のために、焼却灰排出手段(灰排出装置11)を間欠稼働とし、焼却灰排出手段の稼働に合わせて、焼却灰搬送手段(灰搬送装置12)の搬送動作と、水添加手段(水噴射ノズル13)の水添加動作と、中和手段(吹込管15)の中和ガス添加動作とを連動させるようにしてもよい。
【0087】
<別実施形態4>
また、上記の第二実施形態において、消費電力の削減のために、焼却灰排出手段(灰排出装置11)を間欠稼働とし、焼却灰排出手段の稼働に合わせて、焼却灰搬送手段(灰搬送装置12)の搬送動作と、水添加手段(水噴射ノズル13)の水添加動作と、中和手段(吹込管15)の中和ガス添加動作と、還流量制御手段50の制御とを連動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の焼却灰処理装置、及び焼却灰処理方法は、例えば都市ごみや産業廃棄物等の焼却に伴い生じる焼却灰に含まれる重金属類の溶出を抑える用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10A,10B,10C 焼却灰処理装置
12 灰搬送装置(焼却灰搬送手段)
13 水噴射ノズル(水添加手段)
15 吹込管(中和手段)
16 制御装置
21 ケーシング
41 排ガス還流管(還流手段)
50 還流量制御手段
71 鉛含有量測定装置(重金属類含有量測定手段)
72 薬剤添加装置(薬剤添加手段)
73 薬剤添加量制御手段
図1
図2
図3
図4