(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051068
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20240403BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240403BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P37/06
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027267
(22)【出願日】2024-02-27
(62)【分割の表示】P 2020561525の分割
【原出願日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2018237688
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 升三
(72)【発明者】
【氏名】椿 正寛
(72)【発明者】
【氏名】武田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】田邉 元三
(72)【発明者】
【氏名】森川 敏生
(57)【要約】
【課題】自己免疫疾患を改善若しくは治療するための抗体製剤が提案されているが、投与経路は静脈内に限られ、患者の負担となっていた。また、マンギフェリンは経口摂取によって自己免疫疾患を改善する効果を有するが、効果が小さく、現実的に摂取するには、容易ではなかった。さらに、NIKなどのキナーゼを阻害する新規の薬剤が、自己免疫疾患を処置するための有効な医薬品等を開発するために、常に必要とされている。
【解決手段】ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物は、経口摂取で効果を有し、マンギフェリンよりも少ない量で効果を表すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物を有効成分とする自己免疫疾患の改善用組成物。
【請求項2】
ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物を有効成分とするBAFF過剰発現が関与する自己免疫疾患の改善用組成物。
【請求項3】
ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物を有効成分とする自己免疫疾患治療薬。
【請求項4】
ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物を含む加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群等などの自己免疫疾患治療および/または予防に有用なNF-κB誘導キナーゼ(NIK-MAP3K14としても知られている)を阻害する化合物に関する。また、本発明は、当該化合物を用いたB細胞活性化を伴う自己免疫疾患およびBAFF過剰発現による自己免疫疾患等の予防・治療の組成物、医薬組成物、加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
NF-κB(Nuclear factor kappa B)は、免疫応答、細胞増殖、アポトーシスおよび発癌に関与する各種遺伝子発現を調節する転写因子である。このNF-κBは5つのメンバー:(1)NF-κBp65(p65)、(2)RelB、(3)c-Rel、(4)NF-κB1(これは、前駆体p105と切断型p50の両方で存在する)および(5)NF-κB2(これは、前駆体p100と切断型p52の両方で存在する)から構成されている。
【0003】
主に、NF-κB1(切断型p50;NF-κBp50)とp65がヘテロダイマー、NF-κB2(切断型p52;NF-κBp52)とRelBがヘテロダイマーを形成する。また、これらNF-κBヘテロダイマーの活性化はリン酸化反応およびタンパク質分解を含む連続事象によって厳密に制御されるシグナル伝達経路であり、古典的および非古典的の2つの経路に分類される。
【0004】
NIKはセリン/スレオニンキナーゼであり、古典的および非古典的の両方の経路で役割を担う。NIKは、非古典的なシグナル伝達経路では必須なものであり、IKKαをリン酸化することでNF-κBp100を部分分解し、NF-κBp52を遊離させる。NF-κBp52はRelBとヘテロダイマーを形成することで、核内へと移行し、遺伝子を発現させる。さらに、古典的経路ではIKKα、IKKβおよびIKKγ複合体を活性化させることでp65とNF-κBp50のヘテロダイマーを形成する。このヘテロダイマーが核内へと移行することで、遺伝子発現を調節する。
【0005】
非古典的経路は、B細胞活性化因子(BAFF)、CD40リガンドおよびリンフォトキシンβ受容体リガンド等のリガンドのみによって活性化される。これらのリガンドによるシグナル伝達経路の活性化にNIKが重要であることが知られている。その重要な役割のために、NIKの発現は厳密に調節されている。
【0006】
通常の非刺激条件下では、ユビキチンリガーゼであるTNF受容体関連因子(TRAF)とNIKが相互作用することにより、NIKが分解されるため、細胞内におけるNIKタンパク量は少ない。
【0007】
非古典的経路がリガンドによって刺激されると、活性化された受容体により、TRAF-NIK複合体を解離させ、それによりNIK濃度が増加すると考えられている(Thu and Richmond,Cytokine Growth F.R.2010,21,213-226:非特許文献1)。
【0008】
BAFFはT細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞等から産生・分泌され、B細胞上の3種類の受容体を介してB細胞の分化、活性化、生存等を制御することが知られている(Moore,et al., Science. 1999, 285,260-263:非特許文献2)。
【0009】
BAFFの受容体としては、BAFF-R(BAFF-Receptor)、TACI(Taransmembrane activator and calcium modulator and cyclophilin ligand interactor)およびBMCA(B cell maturation antigen)が知られている。
【0010】
BAFF-RおよびBMCAは主にB細胞に発現しており、TACIはB細胞と活性化T細胞に発現している。BAFFとBAFF-Rとの相互作用はB細胞の形成および維持に必須のNIKを介したシグナル伝達経路を活性化し、順次、外来物質による侵入に応答して免疫グロブリンを合成する。
【0011】
患者のBAFFの適切なレベルは正常レベルの免疫の維持に役立つが、低発現では免疫不全をもたらし、過剰発現では異常に高い抗体産生を生じうる。
【0012】
患者が自己免疫を示す場合、自身の身体の組織又は器官に対する抗体を生成する。本明細書で自己免疫疾患とは、SLE、関節リウマチ、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病、多発性硬化症、好酸球性多発性血管炎肉芽腫症、多発性血管炎肉芽腫症、ベーチェット病、顕微鏡的多発血管炎、大型血管炎(高安血管炎、巨細胞性動脈炎)、クリオグロブリン血管炎、バセドウ病含む原発性甲状腺機能低下症、自己免疫性膵炎、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、類天疱瘡、血栓性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、IgG4関連疾患、乾癬、強皮症、原発性胆汁性胆管炎、抗リン脂質抗体症候群、ギラン・バレー症候群、慢性胃炎、慢性萎縮性胃炎、グッドパスチャー症候群、巨赤芽球性貧血、自己免疫性好中球減少症、橋本病、特発性アジソン病、1型糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、限局性強皮症、天疱瘡、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン後天性遠心性白斑・サットン母斑、原田病、自己免疫性視神経症、自己免疫性内耳障害、特発性無精子症、習慣性流産、血管炎症候群を含む。
【0013】
そして自己免疫疾患は、例外なく体内でのBAFF過剰発現が確認されており、病状の進行と共にBAFF発現量の増加が報告されている。BAFFの増加は、細胞内のNIKを活性化する。NIK活性化がNF-κBの核内移動を促進し、抗体産生を促進させ、自己免疫疾患が進行する。したがって、これらの疾患を有する患者を治療するために、BAFF誘導性のNIK活性化を阻害することやBAFFの発現量あるいは分泌量を低下させることは重要である。なお、ここでは、治療とは、病状の回復だけでなく、病状の進行を抑制若しくは遅延させる効果も含まれる。
【0014】
自己免疫疾患とBAFFの関係を示す具体的な報告例としては、SLE、関節リウマチおよびシェーグレン症候群の患者において血清中のBAFF濃度が上昇していること(Groom,et al.,J.Clin.Invest.,2002,109,59-68:非特許文献5、Zhang,et al.,J.Immunol.,2001,166,6-10:非特許文献4およびCheema,et al.,Arthritis Rheum.,2001,44,1313-1319:非特許文献3)がある。
【0015】
また、SLE患者における血清BAFFレベルとイムノグロブリンや抗dsDNA抗体との相関性(Zhang,et al.,J.Immunol.,2001,166,6-10:非特許文献4)、RA患者におけるBAFFとリウマトイド因子との相関性(Cheema,et al.,Arthritis Rheum.,2001,44,1313-1319:非特許文献3)、シェーグレン症候群患者におけるBAFFと自己抗体産生との相関性(Thompson,et al.,Rheumatology.201
6,55,1548-1555:非特許文献6)が報告されている。
【0016】
また、BAFFを過剰発現するマウスでは、末梢血B細胞の増多、リンパ節や脾臓の肥大、血中IgG濃度の上昇、抗核抗体産生等のSLE様の症状を示すことが報告されている(Mackay,et al., J.Exp.Med.,1999,189,1747-1756:非特許文献7およびKhare,et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,2000,97,3370-3375:非特許文献8)。
【0017】
さらに、このマウスは加齢とともに唾液腺炎、唾液腺破壊等のシェーグレン症候群様の症状を示すことが認められている(Groom,et al.,J.Clin.Invest.,2002,109,59-68:非特許文献5)。
【0018】
BAFF過剰発現シェーグレン症候群モデルマウスでは、唾液腺炎症部位においてBAFF高発現によりB細胞の浸潤と成熟B細胞への分化を誘導することが示されている(Ding,et al.,Clin Immunol.,2016,169,69-79:非特許文献9)。
【0019】
また、BAFF発現抑制マウスではシェーグレン症候群の発症を抑制することとともに、B細胞の活性化、分化を阻害することも報告されている(Thompson,et al.,Rheumatology.2016,55,1548-1555:非特許文献6)。
【0020】
また、関節リウマチ患者において滑膜および血清中でのBAFF高発現が自己反応性B細胞の維持に関与すること、さらにNIKを抑制するTRAF2およびTRAF3を欠如したマウスにおいては非古典的(NIK/IKK/NF-κB2)経路活性化により、リンパ節および脾臓辺縁帯におけるB細胞が増加することが示されている(Noort,et al.,Arthritis Res.Ther.,2015,17,15:非特許文献10)。
【0021】
また、関節リウマチ患者の滑膜炎症部位においてB細胞および形質細胞が健常成人と比較し多く存在することが報告されている(Jimenez-Boi,et al.,J.Immunol.,2005,175,2579-2588:非特許文献11)。
【0022】
さらに、SLE患者における血清中BAFFの増加は形質細胞の増加に関与することが報告されている(Chu,et al.,Arthritis Rheum.2009,60,2083-2093:非特許文献12)。
【0023】
また、NIK分解に関わるPeli1の過剰発現マウスにおいて、NIKを抑制することで非古典的経路を抑制し、SLEを抑制すること、また、SLE患者においてPlei1の発現がSLEの症状発現と負に相関することが示されている(Liu,et al.,Nat Commun.,2018,9,1136:非特許文献13)。
【0024】
さらに、BAFF過剰発現マウスにおいて、dsDNA自己抗体産生、B細胞生存・増殖・分化にNF-κB2非古典的経路が重要であり、この経路の阻害により自己抗体産生、B細胞生存・増殖・分化を抑制することも示されている(Enzler,et al.,Immunity,2006,25,403-415:非特許文献14)。
【0025】
また、自己免疫疾患では、血清BAFF濃度が上昇していることが示されている(Lenert,et al.,Drug Des Devel Ther.,2015,9,333-347:非特許文献15、Krumbholz,et al.,J Autoimmun.,2005,25,298-302:非特許文献16、Lepse,et al.,Autoimmun Rev.,2011,11,77-83:非特許文献17、Migita,et al.,Hum Immunol.,2007,68,586-591:非特許文献18、Zhang,et al.,Dig Dis Sci.,2016,61,2608-2618:非特許文献19、Qian,et al.,Exp Dermatol.,2014,23,596-605:非特許文献20、Thomas,et al.,Br J Haematol.,2011,155,620-622:非特許文献21およびLin,et al., Arthritis Res.Ther.,2014,16,R118:非特許文献22)。
【0026】
また、顕微鏡的多発血管炎患者、ベーチェット病患者、バセドウ病含む原発性甲状腺機能低下症患者、原発性胆汁性胆管炎患者、自己免疫性溶血性貧血患者およびIgG4関連疾患患者では血清BAFF濃度と自己抗体産生量が相関することも報告されている(Lepse,et al.,Autoimmun Rev.,2011,11,77-83:非特許文献17、Hamzaoui,et ak.,Clin Exp Rheumatol.,2008,26(Suppl.50)、S64-S71:非特許文献23、Lin,et al.,Clin Chim Acta,2016,462,96-102:非特許文献24、Tang,et al.,J Gastroenterol Hepatol.,2017,32,659-666:非特許文献25、Xu,et al.,Int J Hematol.,2015,102,394-400:非特許文献26、およびLin,et al., Arthritis Res.Ther.,2014,16,R118:非特許文献22)。
【0027】
サルコイドーシス患者、多発性筋炎患者、皮膚筋炎患者および混合性結合組織病患者では健常成人と比較し、血清BAFF濃度が高く、自己抗体発現と相関することとともに、これらの疾患では病巣部位におけるBAFF発現増加がB細胞の増殖・分化を誘導することも報告されている(Saussine,et al.,PLoS ONE,2012,7,e43588:非特許文献27、Baek,et al.,J Neuroimmunol.,2012,249,96-100:非特許文献28、Krystufkova,et al.,Ann Rheum Dis.,2009,68,836-843:非特許文献29、およびKaneko,et al.,Mod Rheumatol.,2014,24,310-315:非特許文献30)。
【0028】
乾癬患者ではBAFF量が健常成人と比較して高く、その発現量は乾癬の病態と相関することが示されている(Eldin,et al.,J.Microbiol.Res.Rev.,2013,1,1-11:非特許文献31)。
【0029】
強皮症患者では血清中BAFF量が増加しており、これによりB細胞生存・活性化・増殖・分化が亢進していること、BAFF増加が自己抗体産生量とも相関していることが示されている。また強皮症モデルマウスでは、BAFFの阻害が自己抗体産生およびインターロイキン6やトランスフォーミンググロースファクター産生を抑制することも報告されている(Sanges,et al.,Rev Med Interne,2017,38,113-124:非特許文献32)。
【0030】
抗リン脂質抗体症候群患者では、血清BAFFが増加していること、また、抗リン脂質抗体症候群モデルマウスにおいて、BAFF受容体阻害によりB細胞が減少することが示されている(van den Hoogen,et al.,RMD Open,2018,4,e000693:非特許文献33)。
【0031】
さらに、多発性硬化症患者ではBAFFレベルが増加していることが報告されている(Krumbholz,et al.,Nat.Rev.Neurol.,2012,8,613-623:非特許文献34)。また、NIKノックアウトマウスでは多発性硬化症の発症を抑制することが示されている(Jin.,et al.,Blood.2009,113,6603-6610:非特許文献35)。
【0032】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は関節リウマチや炎症性腸疾患などで、炎症反応に伴い分泌される。結腸上皮細胞およびマウス線維芽細胞において、TNFα刺激は非古典的NF-κB経路の活性化を介してNF-κBp52およびRelBヘテロダイマーの核内移行を促進し、炎症を誘発する。TNFαはTRAFの分解を亢進することで、NIKの細胞質内量を増加させ、NIKを活性化する(Bhattacharyya et al. J Biol.Chem.2010,285,39511-39522:非特許文献36)。
【0033】
以上のように、自己免疫疾患とは、BAFFの過剰発現が生じ、NIKの活性化がNF-κBを活性化させ、その結果自身の身体の組織又は器官に対する抗体を生成することが、原因の疾患であるのは、すでに科学的常識であると言える。したがって、BAFFによるNIK活性化を阻害し、非古典的NF-κBシグナル伝達経路を抑制することができる医薬品等は、BAFF過剰発現、NIKおよび非古典的NF-κBシグナル伝達の過剰な活性化が認められる自己免疫疾患に対して治療効果を有する。
【0034】
さらに、研究により、NF-κBが炎症に関係する多くの遺伝子の発現を制御することが示され、また、NF-κBシグナル伝達が、炎症性腸疾患、敗血症などの多くの炎症性疾患で慢性的に活性であることが見出された。このように、NIKを阻害し、そのことによって非古典的NF-κBシグナル伝達経路を減衰させることができる化合物は、非古典的NF-κBシグナル伝達の過剰な活性化が認められる疾患および障害に対して治療効果を有する。
【0035】
なお、NF-κB活性阻害については、以下の特許文献が挙げられる。特許文献1には、NF-κB誘導キナーゼ(NIK)/MAP3K14またはその特定部分に特異的に結合する抗体が開示されている。この抗体は免疫調節分子として作用するとされている。
【0036】
また特許文献2には、癌、炎症性疾患、代謝異常および自己免疫性疾患などの病気の治療に有用なNIK阻害剤として、3-(1H-ピラゾール-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン誘導体が開示されている。
【0037】
また、特許文献3には、免疫機能不全による疾患の治療薬として一般式(10)式の物質が開示されている。
【0038】
【0039】
なお、式中Rは水素または低級アルコキシ基を、Aは酸素またはスルホニル基を表す。
【0040】
また、特許文献4には、マンギフェリンがリウマチ等に対する消炎効果があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特表2007-537708号公報
【特許文献2】特表2016-531858号公報
【特許文献3】特開昭57-16821号公報
【特許文献4】特開2009-023935号公報
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】Thu YM, Richmond A.: Cytokine Growth Factor Rev. 2010, 21, 213-226.
【非特許文献2】Moore PA, Belvedere O, Orr A, Pieri K, LaFleur DW, Feng P, Soppet D,Charters M, Gentz R, Parmelee D, Li Y, Galperina O, Giri J, Roschke V, NardelliB, Carrell J, Sosnovtseva S, Greenfield W, Ruben SM, Olsen HS, Fikes J, HilbertDM.: Science. 1999, 285, 260-263.
【非特許文献3】Cheema GS, Roschke V, Hilbert DM, Stohl W.: Arthritis Rheum. 2001,44, 1313-1319.
【非特許文献4】Zhang J, Roschke V, Baker KP, Wang Z, Alarcon GS, Fessler BJ,Bastian H, Kimberly RP, Zhou T.: J Immunol. 2001, 166, 6-10.
【非特許文献5】Groom J, Kalled SL, Cutler AH, Olson C, Woodcock SA, Schneider P,Tschopp J, Cachero TG, Batten M, Wheway J, Mauri D, Cavill D, Gordon TP, MackayCR, Mackay F.: J Clin Invest. 2002, 109, 59-68.
【非特許文献6】Thompson N, Isenberg DA, Jury EC, Ciurtin C.: Rheumatology. 2016,55, 1548-1555.
【非特許文献7】Schneider P, MacKay F, Steiner V, Hofmann K, Bodmer JL, Holler N,Ambrose C, Lawton P, Bixler S, Acha-Orbea H, Valmori D, Romero P, Werner-FavreC, Zubler RH, Browning JL, Tschopp J.: J Exp Med. 1999, 189, 1747-1756.
【非特許文献8】Khare SD, Sarosi I, Xia XZ, McCabe S, Miner K, Solovyev I, HawkinsN, Kelley M, Chang D, Van G, Ross L, Delaney J, Wang L, Lacey D, Boyle WJ, HsuH.: Proc Natl Acad Sci U S A. 2000, 97, 3370-3375.
【非特許文献9】Ding J, Zhang W, Haskett S, Pellerin A, Xu S, Petersen B, JandreskiL, Hamann S, Reynolds TL, Zheng TS, Mingueneau M.: Clin Immunol. 2016, 169,69-79.
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【非特許文献13】Liu J, Huang X, Hao S, Wang Y, Liu M, Xu J, Zhang X, Yu T, Gan S,Dai D, Luo X, Lu Q, Mao C, Zhang Y, Shen N, Li B, Huang M, Zhu X, Jin J, ChengX, Sun SC, Xiao Y.: Nat Commun. 2018, 9, 1136.
【非特許文献14】Enzler T, Bonizzi G, Silverman GJ, Otero DC, Widhopf GF,Anzelon-Mills A, Rickert RC, Karin M.: Immunity. 2006, 25, 403-415.
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【非特許文献16】Krumbholz M, Specks U, Wick M, Kalled SL, Jenne D, Meinl E.: J Autoimmun. 2005, 25, 298-302.
【非特許文献17】Lepse N, Abdulahad WH, Kallenberg CG, Heeringa P.: Autoimmun Rev.2011, 11, 77-83.
【非特許文献18】Migita K, Abiru S, Maeda Y, Nakamura M, Komori A, Ito M, Fujiwara S,Yano K, Yatsuhashi H, Eguchi K, Ishibashi H.: Hum Immunol. 2007, 68, 586-591.
【非特許文献19】Zhang P, Liu X, Guo A, Xiong J, Fu Y, Zou K.: Dig Dis Sci. 2016, 61,2608-2618.
【非特許文献20】Qian H, Kusuhara M, Li X, Tsuruta D, Tsuchisaka A, Ishii N, Koga H,Hayakawa T, Ohara K, Karashima T, Ohyama B, Ohata C, Furumura M, Hashimoto T.:Exp Dermatol. 2014, 23, 596-605.
【非特許文献21】Thomas MR, Machin SJ, Mackie I, Scully MA.: Br J Haematol. 2011,155, 620-622.
【非特許文献22】Lin W, Jin L, Chen H, Wu Q, Fei Y, Zheng W, Wang Q, Li P, Li Y,Zhang W, Zhao Y, Zeng X, Zhang F.: Arthritis Res Ther. 2014, 16, R118.
【非特許文献23】Hamzaoui K, Houman H, Ben Dhifallah I, Kamoun M, Hamzaoui A.: Clin Exp Rheumatol. 2008, 26(Suppl 50), S64-S71.
【非特許文献24】Lin JD, Wang YH, Fang WF, Hsiao CJ, Chagnaadorj A, Lin YF, Tang KT,Cheng CW.: Clin Chim Acta. 2016, 462, 96-102.
【非特許文献25】Tang L, Zhong R, He X, Wang W, Liu J, Zhu Y, Li Y, Hou J.: J Gastroenterol Hepatol. 2017, 32, 659-666.
【非特許文献26】Xu ZZ, Zhao BB, Xiong H, Wei BW, Wang YF.: Int J Hematol. 2015, 102,394-400.
【非特許文献27】Saussine A, Tazi A, Feuillet S, Rybojad M, Juillard C, Bergeron A,Dessirier V, Bouhidel F, Janin A, Bensussan A, Bagot M, Bouaziz JD.: PLoS One.2012, 7, :e43588.
【非特許文献28】Baek A, Park HJ, Na SJ, Shim DS, Moon JS, Yang Y, Choi YC.: J Neuroimmunol. 2012, 249, 96-100.
【非特許文献29】Krystufkova O, Vallerskog T, Helmers SB, Mann H, Putova I, BelacekJ, Malmstrom V, Trollmo C, Vencovsky J, Lundberg IE.: Ann Rheum Dis. 2009, 68,:836-843.
【非特許文献30】Kaneko T, Amano H, Kawano S, Minowa K, Ando S, Watanabe T, Nakano S,Suzuki J, Morimoto S, Tokano Y, Takasaki Y.: Mod Rheumatol. 2014, 24, 310-315.
【非特許文献31】Eldin N, Bendary S, Sayed EI, Nasr R.: J. Microbiol. Res. Rev. 2013,1, 1-11.
【非特許文献32】Sanges S, Guerrier T, Launay D, Lefevre G, Labalette M, Forestier A,Sobanski V, Corli J, Hauspie C, Jendoubi M, Yakoub-Agha I, Hatron PY, HachullaE, Dubucquoi S.: Rev Med Interne. 2017, 38, 113-124.
【非特許文献33】van den Hoogen LL, Palla G, Bekker CPJ, Fritsch-Stork RDE, RadstakeTRDJ, van Roon JAG.: RMD Open. 2018, 4, e000693.
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【非特許文献35】Jin W, Zhou XF, Yu J, Cheng X, Sun SC.: Blood. 2009, 113, 6603-6610.
【非特許文献36】Bhattacharyya S, Dudeja PK, Tobacman JK.: J Biol Chem. 2010, 285, 39511-39522.
【非特許文献37】Hu, L., Wu, W., Chai, X., Luo, J., Wu, Q.: Bioorg. Med. Chem. Lett.2011, 21, 4013-4015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
引用文献に示すように免疫細胞が発現するサイトカインを抑制する薬剤は、抗体製剤が主に使用されているが、特許文献4のマンギフェリンを除いて投薬経路が静脈内投与であり、患者の負担が重いものとなっている。そこで、経口投与でNIKを阻害し、自己免疫疾患を改善する治療薬および改善用組成剤を提供することを目的とする。
【0044】
また、特許文献4のマンギフェリンは経口投与によって効果を奏するが、必要な摂取量が多く、経口であっても、容易に摂取できなかった。そこで、より効果あるいは活性の高い治療薬および改善用組成物が、求められた。
【0045】
さらに、NIKなどのキナーゼを阻害する既存の薬剤の新しいまたは改良された形態が、自己免疫疾患を処置するためのものより有効な医薬品等を開発するために、常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明者らは、上記の課題を解決すべくNIKを阻害する化合物を探索したところ、キサントン骨格を有するある種の物質にNIK阻害作用を有することを見出し、実際に関節リウマチを発症させたマウスを完治させることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0047】
すなわち、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、ノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、自己免疫疾患を改善させることができ、例えば関節リウマチを発症させたマウスの関節の炎症あるいは変形を劇的に治癒させることができる。また、投与は経口で効果を表し、ヒトへの適用の場合、患者への負担は非常に軽い。
【0049】
また、自己免疫疾患は、BAFFの過剰存在によって自己抗原を認識する自己反応性B細胞が生存、増殖、形質細胞への分化および抗体産生を行うことで発症すると考えられている。すなわち、自己免疫疾患は発症の原因が同じであり、上記に記載された自己免疫疾患以外の自己免疫疾患でも原因を同じくするものが多いと考えられる。したがって、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、実施例で示される関節リウマチだけでなく、BAFF過剰発現を伴う自己免疫疾患すべてに改善効果を有すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図2】コラーゲンで免疫し、関節リウマチを発症させたマウスに各試薬を投与した場合の炎症スコアの経時変化を示すグラフである。
【
図3】
図2で関節リウマチを発症させたマウスの前足の状態を示す写真および各試薬を投与したマウスの前足の状態を示す写真である。
【
図4】
図2での50日目のマウス血清を回収し、抗コラーゲン抗体を測定したグラフである。
【
図5】NP-KLHで免疫し、全身性エリテマトーデスを発症したマウスに各試薬を投与し、11週間後のマウス血清を回収後、自己抗体である抗dsDNA抗体を測定したグラフである。
【
図6】シェーグレン症候群を自然発症するマウスに各試薬を投与し、20週間後のマウス血清を回収後、自己抗体である抗dsDNA抗体を測定したグラフである。
【
図7】マウスの耳介にイモキミドを塗布し、乾癬を発症させたマウスにノラチリオールを塗布および経口投与した場合の耳介腫脹の経時変化を示すグラフである。
【
図8】マウスの背部皮膚にイモキミドを塗布し、乾癬を発症させたマウスにノラチリオールを塗布および経口投与した場合の重症度の経時変化を示すグラフである。
【
図9】
図8で乾癬を発症させた6日目のマウス背部皮膚の状態を示す写真である。
【
図10】マウスから採取したプレB細胞に各試薬を添加し、その後BAFF刺激を行った細胞のCD138発現(形質細胞への分化)をフローサイトメトリーを使用して測定したパネルである。
【
図11】マウスから採取したプレB細胞に各試薬を添加し、その後BAFF刺激を行った細胞のCD138発現(形質細胞への分化)をフローサイトメトリーを使用して測定したパネルである。
【
図12】マウスから採取したプレB細胞に各試薬を添加し、その後BAFF刺激を行った細胞のIgMおよびIgD発現(成熟B細胞への分化)をフローサイトメトリーを使用して測定したパネルである。
【
図13】マウスから採取したプレB細胞に各試薬を添加し、その後BAFF刺激を行った細胞のIgMおよびIgD発現(成熟B細胞への分化)をフローサイトメトリーを使用して測定したパネルである。
【
図14】マウスから回収したプレB細胞に各試薬を添加し、その後BAFF刺激を行った場合のphospho-NIK、NIK、NF-κB p52 nuclear、NF-κB p65 nuclearおよびlaminの発現をWestern Blottingで検討した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物について説明を行う。なお、以下の説明は本発明の一実施の形態および一実施例についての例示であって、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施の形態は変更することができる。
【0052】
本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物はキサントン骨格を有する(1)式で表される物質、ノラチリオール、、また、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含む。(1)式は、1,2’,3’,4’,6-ペンタ-O-プロピオニルマンギフェリンであり、以下「KPP-08-008a」と称する。マンギフェリンを(3)式に示す。また(2)式は、1,3,6,7-テトラヒドロキシキサントンであり、以下「ノラチリオール」と呼ぶ。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
KPP-08-008aは、(1)式を見てわかるように、マンギフェリン((2)式参照)の一部のヒドロキシ基の位置にプロピオニル基をエーテル結合させたものである。この化合物は、以下の実施例でも示されるように、マンギフェリンよりも優れたNIKおよびIKK活性阻害を示し、自己免疫疾患に対する高い予防効果を示す。
【0057】
ノラチリオール(CAS番号3542-72-1)はキサントン(CAS番号:90-47-1)の一部にヒドロキシ基をつけたものであり、KPP-08-008a同様にキサントン骨格を有している。そして、KPP-08-008a同様に、マンギフェリンよりもNIKおよびIKK活性阻害を示し、自己免疫疾患に対する高い予防効果を示す。
【0058】
また、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン(CAS番号:5084-31-1:(4)式)、キサントヒドロール(CAS番号:90-46-0:(5)式)、α-マンゴスチン(CAS番号:6147-11-1:(6)式)、γ-マンゴスチン(CAS番号:31271-07-5:(7)式)も同様にキサントン骨格を有する化合物であり、ノラチリオール、KPP-08-008a同様にマンギフェリンよりもNIKおよびIKK活性阻害を示し、自己免疫疾患に対する高い予防効果を示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
これらの化合物は、マンギフェリン同様に低分子量化合物で、水に良く溶け、経口摂取が可能である。本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、上記の化合物の少なくとも何れか一種以上を有効成分として含む。またその他の薬剤として許容される成分を含んでいて良い。また、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物としては、これらの化合物を複数含んでいてもよい。
【0064】
本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、自己免疫疾患治療薬(医薬組成物といってもよい。)として提供することが可能である。医薬組成物として本発明に係る組成物は、静脈内、皮下、もしくは筋肉内注射だけでなく、経口投与することで効果を発揮することができる。したがって、内用剤として提供することができる。例えば、粉末状の自己免疫疾患改善用組成物を、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤等に製剤化して提供されうる。経口剤とする際には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤といった添加剤を加え、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤を常法によって製造することができる。
【0065】
さらに、本発明に係る医薬組成物は、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル化剤、貼付剤、エアゾール剤といった外用剤に製剤化し、非経口投与してもよい。外用剤とする際には、水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤、その他必要とされる基剤成分を配合することができる。また、血管膨張剤、副腎皮質ホルモン、角質溶解剤、保湿剤、殺菌剤、抗酸化剤、清涼化剤、香料、色素といった添加剤を適宜配合してもよい。
【0066】
また、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は加工食品として提供することも可能である。つまり、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は加工食品として摂取しても、本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物と同等の効果を奏する。
【0067】
加工食品としては、例えば、飴、ガム、ゼリー、ビスケット、クッキー、煎餅、パン、麺、魚肉・畜肉練製品、茶、清涼飲料、コーヒー飲料、乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン等といった嗜好食品や健康食品を含む一般加工食品だけでなく、厚生労働省の保健機能食品制度に規定された特定保健用食品や栄養機能食品などの保健機能食品を含み、さらに、栄養補助食品(サプリメント)、飼料、食品添加物等も加工食品に含まれる。
【0068】
これらの加工食品の原料中に、自己免疫疾患の改善用組成物を添加することで、本発明に係る加工食品を調製することができる。なお、これらの加工食品にノラチリオール、1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンを添加する場合は、そもそも原料にこれらの物質を含む材料を使用する場合は本発明に係る加工食品から除外される。ただし、その材料が含むこれらの物質の含
有量を超えて、これらの物質を含む加工食品については、本発明に係る加工食品である。以下実施例に基づいて本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物を説明する。
【0069】
本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物が対象とする疾患は、再掲するとSLE、関節リウマチ、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病、多発性硬化症、好酸球性多発性血管炎肉芽腫症、多発性血管炎肉芽腫症、ベーチェット病、顕微鏡的多発血管炎、大型血管炎(高安血管炎、巨細胞性動脈炎)、クリオグロブリン血管炎、バセドウ病含む原発性甲状腺機能低下症、自己免疫性膵炎、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、類天疱瘡、血栓性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、IgG4関連疾患、乾癬、強皮症、原発性胆汁性胆管炎、抗リン脂質抗体症候群、ギラン・バレー症候群、慢性胃炎、慢性萎縮性胃炎、グッドパスチャー症候群、巨赤芽球性貧血、自己免疫性好中球減少症、橋本病、特発性アジソン病、1型糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、限局性強皮症、天疱瘡、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン後天性遠心性白斑・サットン母斑、原田病、自己免疫性視神経症、自己免疫性内耳障害、特発性無精子症、習慣性流産、血管炎症候群である。
【0070】
また、上記以外の疾患であっても、BAFFが過剰発現しており、自己免疫疾患と判断できる疾患は対象とすることができる。また、B細胞が活性化していると判断できる疾患を対象としてもよい。なお、ここでBAFFが過剰発現とは、健常成人に対してBAFF濃度が増加していればよい。またB細胞が活性化しているとは、自己抗体の量が健常成人と比較して高ければよい。
【実施例0071】
<実施例1:KPP-08-008aの合成>
KPP-08-008aは、原料となる1,3,2’,3’,4’,6,6’,7‐オクタ‐O‐プロピオニルマンギフェリンを合成し、それを元にさらに合成する2段階で得た。
【0072】
(1)1,3,2’,3’,4’,6,6’,7‐オクタ‐O‐プロピオニルマンギフェリンの合成
マンギフェリン(2.1g,4.98mmol)、無水プロピオン酸(12.8mL,99.4mmol)および乾燥ピリジン(60mL)を80°Cで5時間加熱した。反応液を氷水(400mL)に注加し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を氷冷した10%硫酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を用いて精製し,(8)式の1,3,2’,3’,4’,6,6’,7-オクタ-O-プロピオニルマンギフェリン(3.71g,86%)を無色固体として得た。
【0073】
【0074】
1H-NMR (800 MHz, DMSO-d6)δ: 0.70-1.26 (24H,m, COCH2CH3), 1.92-2.89(16H, m, COCH2CH3), 3.83-3.91(1H, m, H-6’a), 4.05-4.15 (2H, m, H-5’ and H-6’b), 4.98-5.05 (1H, m, H-4’), 5.09-5.21 (1H, m, H-1’),5.43-5.51 (2H, m, H-3’ and H-2’), 7.50-7.54 (1H, m, H-4), 7.68-7.71 (1H, m, H-5),7.96-7.98 (1H, m, H-8). 13C-NMR (200 MHz,DMSO-d6)δ:8.68/8.77/8.79/8.92/8.95/8.98/9.00/9.01/9.04/9.06/9.17/9.19/9.28 (COCH2CH3),26.6/26.7/26.9/26.8/26.93/26.97/27.00/27.09/27.35/27.37 (COCH2CH3),62.1/62.2 (C6’), 68.20/68.23 (C4’), 69.6/70.1 (C2’),70.9/71.3 (C1’), 73.6/73.7 (C3’), 75.06/75.10 (C5’), 110.3/111.8 (C4),111.7/112.6 (C9a), 113.3/113.4 (C5), 118.9/119.0 (C2), 119.7/119.7 (C8a),120.36/120.40 (C8), 139.57/139.59 (C7’), 147.9 (C6),149.1/150.9 (C1), 152.5/152.6 (C8b), 153.4/154.8 (C4a), 156.6/156.8 (C3), 171.09/171.13/171.15/171.20/171.72/171.79/171.82/171.93/172.37/172.44/172.78/172.87/173.16/173.23/173.26(COCH2CH3), 173.56/173.60 (C9). HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ Calcd for C43H50O19Na 893.2844; Found 893.2883.
(2)KPP-08-008a(1,2’,3’,4’,6‐ペンタ‐O‐プロピオニルマンギフェリン)の合成
1,3,2’,3’,4’,6,6’,7‐オクタ‐O‐プロピオニルマンギフェリン(3.7g,4.25mmol)、酢酸アンモニウム(3.8g,49.4mmol)、メタノール(80mL)および水(40mL)の混合溶液を室温で5.5時間攪拌した。反応液から減圧濃縮によりメタノールを留去した後、残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈した。その混合物を、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[CHCl3/CH3OH(20:1)]を用いて精製して得た淡黄色固体(2.54g)をメタノール(80mL)に溶解し、活性炭で脱色して(1)式のKPP-08-008a(2.16g,73%)を無色固体として得た。
【0075】
1H-NMR (800 MHz, DMSO-d6)δ::0.92-1.24 (15H, m, COCH2CH3), 1.92-2.32 (10H, m, COCH2CH3), 3.85(0.5H, dd-like, J = ca. 12.5, 1.5, H-6a’), 4.02-4.13(2H, m, H-5’, H-6a’, H-6b’), 4.21 (0.5H, dd, J = 12.5, 4.7, H-6b’), 4.95(0.5H, d, J = 10.0, H-1’), 5.00 (0.5H, dd, J = 9.6, 9.6, H-1’),5.01 (0.5H, dd, J = 9.6, 9.6, H-4’), 5.15 (0.5H, d, J = 10.0,H-1’), 5.31 (0.5H, dd, J = 9.6, 9.6, H-3’), 5.39 (0.5H, dd, J =9.6, 9.6, H-3’), 5.48 (0.5H, dd, J = 10.0, 9.6, H-2’), 5.84 (0.5H, dd, J= 10.0, 9.6, H-2’), 6.71/6.73 (each 0.5H, s, H-4), 6.79/6.80 (each 0.5H, s,H-5), 7.278/7.279 (each 0.5H, s, H-8), 9.00-11.5 (3H,br s, OH × 3). 13C-NMR (200 MHz, DMSO-d6)δ:: 8.84/8.89/9.00/9.05/9.10/9.14/9.15/9.21/9.23(COCH2CH3),26.7/26.92/26.96/26.98/27.04/27.08/27.12/27.4 (COCH2CH3),62.1/62.4 (C-6’), 68.2/68.4 (C-4’), 68.8/70.5 (C-2’), 71.0/71.1 (C-1’),73.8/74.2 (C-3’), 74.7/75.3 (C-5’), 99.6/100.8 (C-4), 102.50/102.52 (C-5),106.6/107.7 (C-9a), 109.1 (C-8), 113.4 (C-2), 114.0/114.1 (C-8a), 143.87/143.88(C-7), 149.83/149.89 (C-6), 151.3 (C-1), 153.4 (C-8b), 157.6/157.7 (C-4a),161.0/162.4 (C-3), 171.2/172.0/172.3/172.9/173.2/173.5/173.6 (COCH2CH3)172.7/172.8 (C-9). HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ Calcd for C34H38NaO16 725.2058; Found. 725.2074.
<実施例2:ノラチリオールの合成>
ノラチリオールを非特許文献37の方法に従って合成した。
【0076】
本実施例に示す合成方法を簡単に説明すると次のとおりである。すなわち、文献記載(非特許文献37)の方法に従って、2,4,5‐トリメトキシ安息香酸(化合物II)を塩化チオニルで処理して2,4,5‐トリメトキシ安息香酸クロリド(化合物III)を得た。次に、得られた化合物(化合物III)と1,3,5‐トリメトキシベンゼン(化合物IV)とのフリーデル‐クラフト反応により2‐ヒロドキシ‐2’,4,4’,5,6’‐ペンタメトキシベンゾフェノン(化合物V)を得た。さらに、この化合物(V)にテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを処理して、1,3,6,7‐テトラメトキシキサントン(化合物VI)を得、その後、脱メチル化を行い、ノラチリオール(化合物I)を収率39%で得た。
【0077】
<合成経路>
以下に、本実施例の合成経路を詳細に説明する。なお、
図1を参照する。
【0078】
(1)2,4,5‐トリメトキシ安息香酸クロリド(化合物III)の製造方法
2,4,5‐トリメトキシ安息香酸(化合物II、8.49g、0.040mol)に
アルゴン雰囲気下、室温で塩化チオニル(5mL)を徐々に加えて溶解させたのち、6時間加熱還流を行った。反応終了後、反応混合物を減圧下留去し、2,4,5‐トリメトキシ安息香酸クロリド(化合物III、8.30g、90%)を得た。得られた化合物(III)は、ただちに次の反応へ用いた。
【0079】
(2)2‐ヒロドキシ‐2’,4,4’,5,6’‐ペンタメトキシベンゾフェノン(化合物V)の製造方法
上述のようにして得られた2,4,5‐トリメトキシ安息香酸クロリド(化合物III、8.07g、0.035mol)、1,3,5‐トリメトキシベンゼン(化合物IV、6.48g、0.0385mol)および無水ジエチルエーテル(500mL)の混合懸濁物にアルゴン雰囲気下、室温で塩化アルミニウム(16g)を徐々に加えた後、反応混合物を室温で48時間攪拌した。反応液を減圧下溶媒留去した後、残渣に水を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ひだ折りろ紙にて乾燥剤を濾別後、ろ液を減圧下溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1,v/v)により精製し、2‐ヒロドキシ‐2’,4,4’,5,6’‐ペンタメトキシベンゾフェノン(化合物V、8.43g、69%)を得た。
【0080】
(3)1,3,6,7‐テトラメトキシキサントン(化合物VI)の製造方法
上述のようにして得られた2‐ヒロドキシ‐2’,4,4’,5,6’‐ペンタメトキシベンゾフェノン(化合物V、6.97g、0.020mol)をピリジン(10mL)と水(10mL)との混合溶媒を溶かし、40%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5mL)を加えて6時間加熱還流を行った。得られた反応混合物を5%塩酸に注加した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ひだ折りろ紙にて乾燥剤を濾別後、ろ液を減圧下溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1,v/v)により精製し、1,3,6,7‐テトラメトキシキサントン(化合物VI、5.82g、92%)を得た。
【0081】
(4)ノラチリオール(化合物I)の製造方法
上述のようにして得られた1,3,6,7‐テトラメトキシキサントン(化合物VI、4.74g、0.015mol)とピリジン塩酸塩(5.00g)の混合物を6時間、200℃にて加熱攪拌した。得られた反応混合物を室温まで放冷後、5%塩酸に注加した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ひだ折りろ紙にて乾燥剤を濾別後、ろ液を減圧下溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=7:1,v/v)により精製し、(2)式のノラチリオール(化合物I、2.65g、68%)を得た。
【0082】
<実施例3:コラーゲン誘発関節炎(CIA)に対するキサントン骨格を有する化合物の消炎効果の検定試験>
Freund‘s Complete AjuvantおよびBovinr type2 collagenの等量混合物を6週齢のオスDBA/1Jマウス(清水実験材料)に0.1mL投与を行った(試験開始0日目とする)。21日後に再度DBA/1Jマウスに、上記混合物を0.1mL注射し、2次免疫を行った。2次免疫後からマンギフェリンを100mg/kg、KPP-08-008aを10mg/kg、ノラチリオールを10mg/kg、1,3,5,6-tetrahydroxyxanthone(1,3,5,6-テトラヒドロキシキサントン)を20mg/kg、xanthydrol(キサントヒドロール)を10mg/kg、α-mangostin(α-マンゴスチン)を10mg/kg、γ-mangostin(γ-マンゴスチン)を10mg/kgでマウスに30日間連日経口投与し、四肢の関節炎の度合いを下記に示したスコアーで評価した。
【0083】
コラーゲンで免疫しただけのグループを対照群、マンギフェリンを投与したグループをマンギフェリン投与群、KPP-08-008aを投与したグループをKPP-08-008a投与群、ノラチリオールを投与した群をノラチリオール投与群、1,3,5,6-tetrahydroxyxanthoneを投与した群をテトラヒドロキシキサントン投与群、xanthydrolを投与したものをキサントヒドロール投与群、α-mangostinを投与したものをα-マンゴスチン投与群、γ-mangostinを投与したものをγ-マンゴスチン投与群と呼ぶ。それぞれの群は5匹で構成した。
【0084】
<関節炎の基準>
関節炎の評価基準は、0=変化なし、1=足指の腫脹、2=足指および足裏の腫脹、3=足全体の腫脹、4=重症度の腫脹、とし、骨病変が見られた場合+1を加算して評価した。
【0085】
結果を
図2に示す。図を参照して、横軸は1次免疫後の経過日数を示し、縦軸は炎症のスコアを示す。白丸印は対照群(「vehicle」と表示)を示す。黒四角印はマンギフェリン投与群(「100mg/kg mangiferin」と表示)を示す。黒ひし形印はKPP-08-008a投与群(「10mg/kg KPP-08-008a」と表示)を示す。黒三角印はノラチリオール投与群(「10mg/kg norathyriol」と表示)を示す。バツ印はテトラヒドロキシキサントン投与群(「20mg/kg 1,3,5,6-tetrahydroxyxanthone」と表示)を示す。黒丸印はキサントヒドロール投与群(「10mg/kg xanthydrol」と表示)を示す。プラス印はα-マンゴスチン投与群(「10mg/kg α-mangostin」と表示)を示す。横棒印はγ-マンゴスチン投与群(「10mg/kg γ-mangostin」と表示)を示す。また、対照群に対して有意な差(P<0.01)であったものには「*」を示した。
【0086】
対照群(白丸印「-O-」)は一次免疫28日後から炎症が観測され、その後炎症スコアは時間の経過とともに高くなった。マンギフェリン投与群(黒四角印「-■-」)は、炎症スコアは対照群の炎症スコアの増加に従って高くなったが、炎症スコアが5以上になることはなかった。
【0087】
KPP-08-008a投与群(黒ひし形印「-◆-」)では、炎症スコアは上昇するものの、4を超えることはなかった。ノラチリオール投与群(黒三角印「-▲-」)も、炎症スコアは上昇するものの、4を超えることはなかった。テトラヒドロキシキサントン投与群(バツ印「-×-」)、キサントヒドロール投与群(黒丸印「-●-」)、α-マンゴスチン投与群(プラス印「-+-」)、γ-マンゴスチン投与群(横棒印「-‐-」)もそれぞれ5を超えることはなかった。
【0088】
すなわち、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群およびγ-マンゴスチン投与群は対照群よりも有意に炎症を抑えた。また、グラフよりこれらの投与群は、マンギフェリン投与群より少ない投与量で同等の効果を示した。
【0089】
図3には、1次免疫50日後のマウスの足の写真を示す。
図3(a)は対照群、
図3(b)はマンギフェリン投与群、
図3(c)はKPP-08-008a投与群、
図3(d)はノラチリオール投与群、
図3(e)はテトラヒドロキシキサントン投与群、
図3(f)はキサントヒドロール投与群、
図3(g)はα-マンゴスチン投与群、
図3(h)はγ-マンゴスチン投与群の中の1匹のマウスの前足(左右)の写真を示す。
図3(a)の対照群では、指の腫脹および発赤が顕著に認められ、変形すら確認できる。一方、
図3(b)のマンギフェリン投与群では、若干の腫脹は認められるものの、発赤は対照群ほどではなく、また、特に指の変形も認められず、明らかな抗炎症作用が認められた。
【0090】
図3(c)のKPP-08-008a投与群では、ほとんど発赤はなく、わずかに左足の中指の腫脹が認められるだけであった。
図3(d)のノラチリオール投与群では、右足の一つの指の腫脹が認められるだけであり、マンギフェリン投与群よりも炎症は低いことが認められた。また
図3(e)のテトラヒドロキシキサントン投与群、
図3(f)のキサントヒドロール投与群、
図3(g)のα-マンゴスチン投与群、
図3(h)のγ-マンゴスチン投与群はマンギフェリン投与群と同程度の発赤であることが認められた。
【0091】
以上のように、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群およびγ-マンゴスチン投与群は、マンギフェリン投与群よりも低用量で顕著に炎症を抑制することが分かった。
【0092】
<実施例4:抗コラーゲン抗体産生抑制効果>
実施例3の1次免疫後50日目にマウスから血清を採取し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって抗コラーゲン抗体産生量を測定した。この測定にはマウス抗コラーゲン抗体ELISAキット(CRC)を用いて行った。
【0093】
結果を
図4に示す。横軸はサンプル群を表し、縦軸は抗コラーゲン抗体産生量を反映している吸光度(OD)を表す。対照群では抗コラーゲン抗体が1.170(OD)であるのに対し、マンギフェリン投与群、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではそれぞれ、0.590(OD)、0.271(OD)、0.236(OD)、0.390(OD)、0.599(OD)、0.450(OD)、0.456(OD)であった。
【0094】
以上のようにマンギフェリン投与群は自己抗体の発現を低下させることが認められ、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではマンギフェリン投与群よりも低用量で顕著に自己抗体産生を抑制することが分かった。
【0095】
<実施例5:全身エリテマトーデスモデルマウスにおける抗dsDNA抗体産生抑制効果>
100μgのNP-KLH(4-Hydroxy-3-nitrophenylacetyl-Keyhole Limpet Hemocyanin:4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチル-キーホールリンペットヘモシアニン)および250μgの水酸化アルミニウムの混合物を12週齢のメスNZB/W F1マウス(清水実験材料)に投与した。混合物投与1週間後からマンギフェリンを100mg/kg、KPP-08-008aを10mg/kg、ノラチリオールを10mg/kg、1,3,5,6-tetrahydroxyxanthoneを20mg/kg、xanthydrolを10mg/kg、α-mangostinを10mg/kg、γ-mangostinを10mg/kgでマウスに11週間連日経口投与した。11週間投与後にマウスから血清を採取し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって抗dsDNA抗体産生量を測定した。この測定にはマウス抗dsDNA抗体ELISAキット(FUJIFILMWAKO)を用いて行った。
【0096】
結果を
図5に示す。横軸はサンプル群を表し、縦軸は抗dsDNA抗体産生量(mU/mL)を表す。対照群では抗dsDNA抗体が3506mU/mLであるのに対し、マンギフェリン投与群、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではそれぞれ、1379mU/mL、1064mU/mL、1096mU/mL、2214mU/mL、1850mU/mL、1071mU/mL、452mU/mLであった。
【0097】
以上のようにマンギフェリン投与群は自己抗体の発現を低下させることが認められ、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではマンギフェリン投与群よりも低用量で顕著に自己抗体産生を抑制することが分かった。すなわち、対照群は全身エリテマトーデスを発症し、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群は、全身エリテマトーデスの発症を抑制したといえる。
【0098】
<実施例6:シェーグレン症候群モデルマウスにおける抗dsDNA抗体産生抑制効果>
シェーグレン症候群を自然発症する4週齢のMRL/lpr(清水実験材料)マウスを購入し、5週齢時からマンギフェリンを100mg/kg、KPP-08-008aを10mg/kg、ノラチリオールを10mg/kg、1,3,5,6-tetrahydroxyxanthoneを20mg/kg、xanthydrolを10mg/kg、α-mangostinを10mg/kg、γ-mangostinを10mg/kgでマウスに20週間連日経口投与した。20週間目にマウスから血清を採取し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって抗dsDNA抗体産生量を測定した。この測定にはマウス抗dsDNA抗体ELISAキット(FUJIFILMWAKO)を用いて行った。
【0099】
結果を
図6に示す。横軸はサンプル群を表し、縦軸は抗dsDNA抗体産生量(mU/mL)を表す。対照群では抗dsDNA抗体が9798mU/mLであるのに対し、マンギフェリン投与群、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではそれぞれ、6978mU/mL、3580mU/mL、4864mU/mL、5255mU/mL、5184mU/mL、7741mU/mL、5102mU/mLであった。
【0100】
以上のようにマンギフェリン投与群は自己抗体の発現を低下させることが認められ、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群ではマンギフェリン投与群よりも低用量で顕著に自己抗体産生を抑制することが分かった。すなわち、対照群はシェーングレン症候群を発症し、KPP-08-008a投与群、ノラチリオール投与群、テトラヒドロキシキサントン投与群、キサントヒドロール投与群、α-マンゴスチン投与群、γ-マンゴスチン投与群は、シェーングレン症候群の発症を抑制したといえる。
【0101】
<実施例7:イミキモド誘導乾癬モデルマウスにおける消炎効果>
6週齢のオスBalb/c(清水実験材料)の背部毛をマウス用バリカンで刈り取った後、除毛クリームを塗布し、背部毛を脱毛した。脱毛後、5%イミキモドクリームを背部
皮膚に62.5mg、右耳介に12.5mg塗布した。8時間後から1%ノラチリオール軟膏(軟膏剤1gにノラチリオールを10mg含有したもの)、5%ノラチリオール軟膏(軟膏剤1gにノラチリオールを50mg含有したもの)を耳介あるいは背部皮膚に6日間塗布した。また、経口投与による効果を判定するため、ノラチリオールを100mg/kgでマウスに6日間経口投与した。耳介皮膚の腫脹の測定についてはノギスにより算出した。さらに、背部皮下の重症度を下記に示した基準(Psoriasis Area and Severity Index(PASI))によりスコア化した。なお、ノラチリオール軟膏剤およびノラチリオール経口投与をはじめに行った日を1日目とした。
【0102】
5%イミキモドクリームを塗布しただけのグループを対照群、1%ノラチリオール軟膏塗布を塗布したものを1%ノラチリオール塗布群、5%ノラチリオール軟膏を塗布したものを5%ノラチリオール軟膏塗布群、100mg/kgノラチリオールを経口投与したものを100mg/kgノラチリオール投与群と呼ぶ。
【0103】
<重症度の基準>
重症度の基準は、0=変化なし、1=軽度、2=中等度、3=重度、4=極めて重度、として評価を行った。
【0104】
図7に耳介腫脹の結果を示す。
図7を参照して横軸は経過日数を示し、縦軸は耳介皮膚の腫脹を示す。白丸印は対照群(「vehicle」と表示)を示す。黒四角印は1%ノラチリオール軟膏塗布群(「1% norathyriol」と表示)を示す。黒ひし形印は5%ノラチリオール軟膏塗布群(「5% norathyriol」と表示)を示す。黒三角印は100mg/kgノラチリオール投与群(「100mg/kg norathyriol」と表示)を示す。また、対照群に対して有意な差(P<0.01)であったものには「*」を示した。
【0105】
対照群(白丸印「-O-」)は3日目から耳介の腫脹が観測され、その後腫脹は時間の経過とともに高くなった。1%ノラチリオール軟膏塗布群(黒四角印「-■-」)は、ほどんど、耳介の腫脹は認められなかった。また、5%ノラチリオール軟膏塗布群(黒ひし形印「-◆-」)および100mg/kgノラチリオール投与群(黒三角印「-▲-」)についても、ほとんど耳介の腫脹は認められなかった。
【0106】
図8に背部皮下の重症度スコアの結果を示す。
図8を参照して横軸は経過日数を示し、縦軸は重症度スコアを示す。対照群(白丸印「-O-」)は2日目から重症度スコアの増加が観測され、その後重症度スコアは時間の経過とともに高くなった。1%ノラチリオール軟膏塗布群(黒四角印「-■-」)は、重症度スコアは対照群の重症度スコアの増加に従って高くなったが、重症度スコアが2以上になることはなかった。また、5%ノラチリオール軟膏塗布群(黒ひし形印「-◆-」)および100mg/kgノラチリオール投与群(黒三角印「-▲-」)についても、重症度スコアは増加するものの、1.7を超えることはなかった。
【0107】
図9には、6日目時点のマウスの背部皮膚の写真を示す。
図9(a)は対照群、
図9(b)は1%ノラチリオール軟膏塗布群、
図9(c)は5%ノラチリオール軟膏塗布群、
図9(d)は100mg/kgノラチリオール投与群の中の1匹のマウス背部皮膚の写真を示す。
図9(a)の対照群では、皮膚の鱗片および発赤が顕著に認められる。一方、
図9(b)の1%ノラチリオール軟膏塗布群では、若干の発赤は認められるものの、発赤は対照群ほどではなく、また、特に鱗片も認められず、明らかな抗炎症作用が認められた。
【0108】
図9(c)の5%ノラチリオール軟膏塗布群では、ほとんど発赤はなく、鱗片も認められなかった。
図9(d)の100mg/kgノラチリオール投与群では、わずかに発赤が認められるだけであり、明らかに炎症を抑制していることが認められた。
【0109】
すなわち、1%ノラチリオール塗布群、5%ノラチリオール塗布群、100mg/kgノラチリオール投与群は対照群よりも有意に乾癬による炎症を抑えた。また、これまでの結果から、ノラチリオール以外の薬剤(マンギフェリン、KPP-08-008a、テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチン)においても同様に乾癬による炎症を抑制できるものと考えられる。
【0110】
<実施例8:形質細胞への分化抑制効果>
6週齢のオスDBA/1Jマウスから脾臓を採取し、B細胞を分取した。分取は抗B220抗体を用いてB細胞を標識し、BD-FACSAriaで行った。B細胞を分取後、RPMI1640培地にて1日培養した。その後、100μMマンギフェリン、10μMKPP-08-008a、10μMノラチリオール、20μMテトラヒドロキシキサントン、10μMキサントヒドロール、10μMα-マンゴスチン、10μMγ-マンゴスチンをB細胞に添加し、3時間後に100ng/mLBAFFを添加した後、10日間培養した。10日間培養後、細胞を形質細胞のマーカーである抗CD138抗体を用いて染色し、BD LSRFortessaを用いて、CD138の発現を測定した。
【0111】
結果を
図10および
図11に示す。横軸はCD138の発現量を表し、縦軸は細胞数を表す。また、パネル内の実線はBAFFも薬剤も含まれていないcontrol、点線は100ng/mLBAFF添加、破線は100ng/mLBAFF+各薬剤を添加したものを示す。薬剤およびBAFF無添加のcontrol群と比較し、BAFF添加群ではCD138発現が顕著に増加していた。マンギフェリン投与群(
図10(a))、KPP-08-008a投与群(
図10(b))、ノラチリオール投与群(
図10(c))、テトラヒドロキシキサントン投与群(
図10(d))、キサントヒドロール投与群(
図11(e))、α-マンゴスチン投与群(
図11(f))、γ-マンゴスチン投与群(
図11(g))ではBAFF添加群と比較し、顕著にCD138発現量が低下し、ほぼcontrolと同程度になっていた。すなわち、マンギフェリン、KPP-08-008a、ノラチリオール、テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンはBAFFによる形質細胞への分化を抑制することが分かった。
【0112】
<実施例9:成熟B細胞への分化抑制効果>
6週齢のオスDBA/1Jマウスから脾臓を採取し、B細胞を分取した。分取は抗B220抗体を用いてB細胞を標識し、BD-FACSAriaで行った。B細胞を分取後、RPMI1640培地にて1日培養した。その後、100μMマンギフェリン、10μMKPP-08-008a、10μMノラチリオール、20μMテトラヒドロキシキサントン、10μMキサントヒドロール、10μMα-マンゴスチン、10μMγ-マンゴスチンをB細胞に添加し、3時間後に100ng/mLBAFFを添加した後、10日間培養した。
【0113】
10日間培養後、細胞をB細胞のマーカーである抗IgM抗体および抗IgD抗体を用いて染色し、BD LSRFortessaを用いて、IgMおよびIgDの発現を測定した。なお、IgM陰性IgD陰性はプレB細胞、IgM陽性IgD陰性は未熟B細胞、IgM陽性IgD陽性は成熟B細胞を示す。
【0114】
結果を
図12および
図13に示す。横軸はIgMの発現量を表し、縦軸はIgDの発現量を表す。薬剤およびBAFF無添加のcontrol群(
図12(a))では、IgM陰性IgD陰性の集団が98.2%、IgM陽性IgD陰性の集団が1.81%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%に対し、BAFF添加群(
図12(b))ではIgM陰性IgD陰性の集団が10.2%、IgM陽性IgD陰性の集団が40.1%、IgM陽性IgD陽性の集団が48.6%と成熟B細胞へ分化していることが分かる。
【0115】
マンギフェリン投与群(
図12(c))ではIgM陰性IgD陰性の集団が96.5%、IgM陽性IgD陰性の集団が3.51%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%であった。KPP-08-008a投与群(
図12(d))では、IgM陰性IgD陰性の集団が97.4%、IgM陽性IgD陰性の集団が2.64%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%であった。ノラチリオール投与群(
図12(e))では、IgM陰性IgD陰性の集団が96.9%、IgM陽性IgD陰性の集団が3.03%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%であった。テトラヒドロキシキサントン投与群(
図13(f))を投与したものではIgM陰性IgD陰性の集団が95.1%、IgM陽性IgD陰性の集団が4.9%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%であった。キサントヒドロール投与群(
図13(g))ではIgM陰性IgD陰性の集団が96.9%、IgM陽性IgD陰性の集団が3.08%、IgM陽性IgD陽性の集団が0%であった。α-マンゴスチン投与群(
図13(h))では、IgM陰性IgD陰性の集団が85.3%、IgM陽性IgD陰性の集団が14.1%、IgM陽性IgD陽性の集団が0.25%であった。γ-マンゴスチン投与群(
図13(i))ではIgM陰性IgD陰性の集団が83.2%、IgM陽性IgD陰性の集団が15.9%、IgM陽性IgD陽性の集団が0.25%であった。いずれの薬剤においても成熟B細胞の割合が顕著に減少していた。
【0116】
すなわち、マンギフェリン、KPP-08-008a、ノラチリオール、テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンはBAFFによるプレB細胞から成熟B細胞への分化を抑制することが分かった。
【0117】
<実施例10:Bリンパ球におけるBAFF刺激時のNIK活性抑制効果>
Bリンパ球を以下の条件で培養した。上記の方法で分取したBリンパ球を100mm2デッシュに播種し、48時間培養したものをControlとした。また、Bリンパ球を100mm2デッシュに播種し、47時間培養後に100ng/mL BAFFを添加し、1時間培養したものを100ng/mLBAFFとした。さらに、Bリンパ球を100mm2デッシュに播種し、24時間後に100μMマンギフェリン、10μMKPP-08-008a、10μMノラチリオール、20μMテトラヒドロキシキサントン、10μMキサントヒドロール、10μMα-マンゴスチン、10μMγ-マンゴスチンを添加し、23時間後に100ng/mL BAFFを添加し、1時間培養したものを用意した。いずれも37℃、5%CO2条件下で培養した。
【0118】
培養液から細胞溶解液でタンパク質を抽出し、サンプルとした。各サンプルをSDSPAGE後、PVDF膜に転写し、抗phospho-NIK抗体、抗NIK抗体、抗NF-κBp52抗体、抗NF-κBp65抗体および抗Lamin抗体を用いてアッセイを行った。
【0119】
イムノブロッティングの結果を
図14に示す。試薬としてマンギフェリン、KPP-08-008a、ノラチリオール、テトラヒドロキシキサントン、キサントヒドロール、α-マンゴスチン、γ-マンゴスチンを並べた。なお、マンギフェリンの濃度は100μMであるが、KPP-08-008aの濃度は10μM、ノラチリオールの濃度は10μM、テトラヒドロキシキサントンの濃度は20μM、キサントヒドロールの濃度は10μM、α-マンゴスチンの濃度は10μM、γ-マンゴスチンの濃度は10μMである。
【0120】
縦方向には、抗体種を示した。具体的には、抗phospho-NIK抗体、抗NIK抗体、抗NF-κBp52抗体、抗NF-κBp65抗体および抗Lamin抗体である。
【0121】
また、それぞれのバンドを数値化し、各バンドの下に記載した。バンドの数値化はCS Analyzerを用いて以下のように行った。まず、NIKに関しては、バンドを数値化した後、それぞれのリン酸化とトータルタンパクの比を算出した。その後、control(試薬およびBAFF未処理)を1とし、これに対する比を算出した。
【0122】
次にp52およびp65に関しては、バンドを数値化した後、それぞれのLaminタンパクとの比を算出した。その後、control(薬剤およびBAFF未処理)を1とし、これに対する比を算出した。
【0123】
NIKは各試薬を添加しても、バンドの影は明確に写っていた。しかし、リン酸化NIKについては、いずれの試薬もコントロールに対する比率が減少した。マンギフェリンはコントロールに対して0.673(比率を表す。以下同様。)であった。一方、KPP-08-008aは、コントロールに対して0.376であった。したがって、KPP-08-008aは、明らかにマンギフェリンよりNIKのリン酸化を抑制しているといえる。
【0124】
ノラチリオールは、コントロールに対して0.893、テトラヒドロキシキサントンは、コントロールに対して0.728、γ-マンゴスチンはコントロールに対して0.714であり、NIKのリン酸化はマンギフェリンほど抑制していなかった。また、キサントヒドロールはコントロールに対して0.409、α-マンゴスチンはコントロールに対して0.208であり、マンギフェリンよりNIKのリン酸化を抑制しているといえる。しかし、KPP-08-008a、ノラチリオール、キサントヒドロール、α-マンゴスチンおよびγ-マンゴスチンは、マンギフェリンの10分の1の濃度であるので、リン酸化抑制の効果はおよそ10倍よいといえる。また、テトラヒドロキシキサントンは、マンギフェリンの5分の1の濃度であるので、リン酸化抑制効果はおよそ5倍よいといえる。
【0125】
なお、BAFF添加時の場合には、コントロールに対して2倍以上のバンドが計測されているが、これはBAFFによる効果を直接受けた場合の程度を示している。
【0126】
核内のp52およびP65については、マンギフェリンはコントロールに対して、それぞれ0.930、1.241であり、ある程度の核内移行を抑制しているといえる。一方、KPP-08-008aは、コントロールに対してそれぞれ0.634と1.256であり、p52に関してはマンギフェリンよりも核内移行を抑制していた。ノラチリオールはコントロールに対して0.569と1.215であった。p52の核内移行については、よく抑制しているといえる。
【0127】
テトラヒドロキシキサントンはコントロールに対して0.191と0.993であった。キサントヒドロールはコントロールに対して0.582と1.085であった。α-マンゴスチンはコントロールに対して0.871と1.067であった。γ-マンゴスチンはコントロールに対して0.472と0.996であった。これらの物質も、p52およびp65ともにマンギフェリンより核内移行を抑制していた。
【0128】
p52は炎症シグナルであり、これらの物質が核内に移行すると、炎症誘発性あるいは抗炎症性のタンパク質の発現を調節するとされている。したがって、p52の核内移行を抑制するということは、炎症が生じにくくしていると考えられ、
図2-
図13に示した実施例の結果とも一致する。また、BAFFによるNIK/NF-κBp52経路活性化は自己免疫疾患発症に関わるB細胞分化、B細胞活性化および自己抗体産生に関わるとされている。つまり、これらの経路を阻害することは、B細胞分化および自己抗体産生を抑制していると考えられ、
図2-
図13に示した実施例とも一致する。
本発明に係る自己免疫疾患の改善用組成物は、選択的NIK阻害剤としてNF-κBp52が活性化し発症する自己免疫疾患に対して有用な医薬組成物とすることができる。