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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000511
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20231225BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231225BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20231225BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20231225BHJP
   F04D 29/30 20060101ALI20231225BHJP
   F04D 29/12 20060101ALI20231225BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20231225BHJP
   B60L 58/33 20190101ALI20231225BHJP
【FI】
F04D29/42 F
H01M8/04 N
H01M8/04029
F04D29/58 A
F04D29/30 G
F04D29/12 B
B60L50/70
B60L58/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091270
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10 2022 206 140.3
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アワサル アロック
(72)【発明者】
【氏名】グロス マーティン
【テーマコード(参考)】
3H130
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC13
3H130BA33A
3H130BA41A
3H130CA01
3H130CB00
3H130DB01X
3H130DC02X
3H130DD01X
3H130DF02X
3H130EC16F
3H130EC17C
3H130EC18A
5H125AA01
5H125AA20
5H125AC07
5H125CD06
5H125FF26
5H127AB04
5H127BA57
5H127CC06
5H127EE04
5H127EE18
(57)【要約】
【課題】一般的なタイプの、流体ポンプのための改良された、又は少なくとも別の実施形態を提供する。
【解決手段】 本発明は、燃料電池システム用流体ポンプ(1)に関する。流体ポンプ(1)は、羽根車(4)を含む羽根車ユニット(2)と、流体入口(5a)を含む入口側(2a)と、流体出口(5b)を含む出口側(2b)とを有する。さらに、流体ポンプ(1)は、電動モータ(6)を有する。流体ポンプ(1)はまた、冷却流体用のガイド流路(23)を有し、ガイド流路(23)は羽根車(4)を介して、かつモータ(6)を介して入口側(2a)と出口側(2b)とを流体的に接続する。本発明によれば、流体ポンプ(1)は、冷却流体が直接使用され得るガイド流路(23)内の表面の全てが、いかなるイオンも冷却流体に対して分離しないように設計される。本発明はまた、流体ポンプ(1)を備える燃料電池システムに関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃料電池の燃料電池スタックを含む流体ポンプ(1)であって、
前記流体ポンプ(1)が、冷却流体を運ぶ羽根車(4)を備える羽根車ユニット(2)を備え、
前記羽根車ユニット(2)が、流体入口(5a)を有する入口側(2a)と流体出口(5b)を有する出口側(2b)とを備え、
前記入口側(2a)と前記出口側(2b)とが前記羽根車(4)によって隔てられ、
前記流体ポンプ(1)が回転軸(RA)の周りを回転するシャフト(8)を有する電動モータ(6)を備え、
前記電動モータ(6)のシャフト(8)が前記羽根車ユニット(2)の前記羽根車(4)に駆動的に接続され、
前記流体ポンプ(1)が羽根車経路(23a)及びモータ経路(23b)を含む冷却流体のガイド流路(23)を有し、
前記ガイド流路(23)の羽根車経路(23a)が羽根車(4)を介して流体的に前記入口側(2a)と前記出口側(2b)を接続し、
前記ガイド流路(23)のモータ経路(23b)が前記電動モータ(6)を介して流体的に前記入口側(2a)と前記出口側(2b)とを流体的に接続し、
前記流体ポンプ(1)は、前記冷却流体を直接使用できるガイド流路(23)内の表面の全てが、どのイオンも前記冷却流体に分離しないように設計されている、
ことを特徴とする流体ポンプ(1)。
【請求項2】
前記冷却流体が直接使用され得る表面が、少なくとも一部の領域において酸化アルミニウムで不動態化される、及び/又は
前記羽根車(4)は1部品で、好ましくは硫化ポリフェニレンで作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項3】
前記電動モータ(6)は、前記シャフト(8)に回転固定されて連結されるロータ(9)と、ステータ(10)とからなるグループ(7)を有し、
前記電動モータ(6)は、モータハウジング(11)を有し、
電流を流すことができる前記グループ(7)は、前記モータハウジング(11)に収容され、
前記ガイド流路(23)の前記モータ経路(23b)は、前記モータハウジング(11)内に形成され、前記モータハウジング(11)によって、電流を流すことができる前記グループ(7)から流体的に分離される、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の流体ポンプ。
【請求項4】
前記電動モータ(6)は、モータハウジング(11)を有し、
前記ガイド流路(23)のモータ経路(23b)は、少なくとも一部の領域で、前記モータハウジング(11)に形成された冷却流体ジャケット(24)により形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
前記電動モータ(6)がモータハウジング(11)を有し、
前記羽根車ユニット(2)が羽根車ハウジング(3)を有していること、及び
前記流体ポンプ(1)がメカニカルシール(28)を有し、
前記メカニカルシール(28)が、前記モータハウジング(11)と前記羽根車ハウジング(3)との間に密封状態でクランプされること、
を特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記メカニカルシール(28)がSiC製である、
ことを特徴とする、請求項5に記載の流体ポンプ。
【請求項7】
前記流体ポンプ(1)は、前記シャフト(8)のための少なくとも1つの軸受(16a,16b)を有し、前記少なくとも1つの軸受(16a,16b)は、前記メカニカルシール(28)によって前記ガイド流路(23)の前記羽根車経路(23a)から流体的に分離されていること、及び/又は
前記流体ポンプ(1)は、前記シャフト(8)用の少なくとも1つの軸受(16a,16b)を有し、前記少なくとも1つの軸受(16a,16b)が水密状態にあること、
を特徴とする、請求項5又は6に記載の流体ポンプ。
【請求項8】
前記流体ポンプ(1)は、前記電動モータ(6)用のインバータ(17)を有し、前記インバータ(17)は、前記羽根車ユニット(2)に対向して位置する前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)に配置され、かつ
前記ガイド流路(23)の前記モータ経路(23b)が少なくともある領域で前記インバータ(17)に隣接して、好ましくは蛇行状又は迷路状に案内されることにより、前記インバータ(17)を冷却流体によって冷却することができ、前記冷却流体は、前記羽根車ユニット(2)によって搬送される、
こと特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項9】
前記流体ポンプ(1)が前記電動モータ(6)用のインバータ(17)を有し、前記電動モータ(6)がモータハウジング(11)を有すること、及び
前記インバータ(17)は、前記モータハウジング(11)の底部(11b)の外側に位置するように配置され、前記回転軸(RA)に直交して位置合わせされ、前記羽根車ユニット(2)に対向する前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)に熱が伝わるように配置され、
前記インバータ(17)が前記羽根車ユニット(2)によって搬送される前記冷却流体によって冷却されるように、前記ガイド流路(23)のモータ経路(23b)が少なくとも一部の領域で、前記インバータ(17)とは反対側を向く前記モータハウジング(11)の底部(11b)に、好ましくは蛇行状又は迷路状に、案内されること、
を特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項10】
前記流体ポンプ(1)は、
4000W以上6000W以下、好ましくは4500Wの最大電力、及び/又は
400l/min以上700l/min以下の最大出力、及び/又は
3bar以上4bar以下、好ましくは3.5barの最大圧力、及び/又は
5000min以上6,000/min以下、好ましくは5,400/minの最大速度、及び/又は
6.0Nm以上8.0Nm以下の最大トルクを有し、
前記電動モータ(6)は、インバータ(17)ことによって変換される400V以上860V以下のDC電圧で作動させることができ、及び/又は
前記電動モータ(6)が永久磁石同期モータであり、及び/又は
前記羽根車(4)が60%以上70%以下、好ましくは65%の最大効率を有する
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項11】
請求項1から10うちのいずれか1項に記載の流体ポンプ(1)を有し、
重量物車両用のいくつかの燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載のいくつかの燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを含む燃料電池システム用流体ポンプに関する。本発明はまた、流体ポンプを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体ポンプはすでに先行技術から知られており、通常、流体を搬送するための羽根車と、羽根車を駆動するための電動モータとを備えている。流体ポンプは、例えば、重量物車両における燃料電池システムの冷却のために使用することができる。次いで、燃料電池システムは、通常、いくつかの燃料電池を含むいくつかの燃料電池スタックを有する。それによって、燃料電池スタックは、搬送された流体によって冷却され、ここで、所要の冷却性能のために、流体は、いくつかの流体ポンプによって搬送される。不都合なことに、これは高い設置スペースを必要とする。燃料電池システムの燃料電池スタックを冷却する場合、流体に関する別々の要件も存在する。流体は、特に、誘電体であり、また、誘電体のままであるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、記載された欠点が克服される場合の、一般的なタイプの、流体ポンプのための改良された、又は少なくとも別の実施形態を提供することである。また、本発明の目的は、該当する燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立項の主題によって本発明に従って解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明は、燃料電池システムに使用される流体ポンプを、特に重量物車両に使用するために適合させるという一般的な考えに基づいている。
【0006】
流体ポンプは、いくつかの燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを含む燃料電池システムのために提供される。燃料電池システムは、特に重量物車両のために提供される。それによって、流体ポンプは、冷却流体を搬送するための羽根車を含む羽根車ユニットを有する。それにより、羽根車ユニットは、流体入口を含む入口側及び流体出口を含む出口側を有し、これらの入口側及び出口側は、羽根車によって互いに分離されている。流体ポンプはさらに、回転軸の周りを回転するシャフトを備える電動モータを有し、電動モータのシャフトは羽根車ユニットの羽根車に駆動可能に接続されている。さらに、流体ポンプは、羽根車経路を備えると共に、モータ経路を備える冷却流体用のガイド流路を有し、ガイド流路の羽根車経路は、羽根車を介して入口側と出口側とを流体的に接続し、ガイド流路のモータ経路は、モータを介して入口側と出口側とを流体的に接続する。本発明によれば、流体ポンプは、冷却流体が直接使用され得るガイド流路内の表面の全てが、いかなるイオンも冷却流体に分離しないように設計される。
【0007】
上述のように、ガイド流路は、羽根車を介して入口側と出口側とを流体的に接続する羽根車経路を有すると共に、モータを介して入口側と出口側とを流体的に接続するモータ経路を有する。それにより、羽根車経路とモータ経路は互いにずれ、互いに流体的に接続される。それにより、羽根車経路は羽根車ユニットの羽根車の上方に直接導かれ、その結果、羽根車経路内の冷却流体は羽根車によって入口側から出口側へと搬送され得る。モータ経路は、羽根車ユニットの羽根車の周囲に通じ、モータを介して、特にモータのモータハウジングを介して入口側と出口側とを接続する。入口側と出口側の圧力差は、モータ経路内の冷却流体の循環に使用できる。モータ経路は、特にモータの自己冷却に寄与することができる。モータ経路は、特にモータのモータハウジング内に形成することができ、モータの電流伝導構成部品から流体的に分離することができる。このために、モータハウジングは二重壁で形成することができる。流体ポンプは、特に、ジャケット冷却部を有する、いわゆる乾式ロータとすることができる。
【0008】
冷却流体中へのイオンの分離は、物理的に完全に除外することができないことは言うまでもない。しかしながら、冷却流体中に分離されたイオンの数は非常に少なく、そのため、冷却流体の物理量への影響は、特に、数か月にわたって、より長い時間にわたって無視できるほど小さい。換言すれば、流体ポンプは、冷却流体が直接使用され得るガイド流路内の表面の全てが、冷却流体へのイオン放出を減少させるように設計される。用語「直接使用され得る表面」は、ポンプの動作中に冷却流体と直接接触するか、又は冷却流体がそれぞれ直接流れる周辺を有する表面を指す。
【0009】
このために、冷却流体が直接使用され得る表面を含む流体ポンプの要素は、一方では、イオン放出が低減された材料から作製することができ、又はイオン放出が低減されたコーティングで被覆することができる。冷却流体が直接使用され得るガイド流路内の表面は、例えば、羽根車及び/又は羽根車を収容する羽根車ハウジング及び/又はモータのモータハウジング及び/又は流体ポンプ内に存在する少なくとも1つのシール、及び/又は流体ポンプ内に設けられた少なくとも1つの軸受を収容する羽根車ハウジングによって形成され得る。例えば、冷却流体が直接使用され得る表面は、少なくとも一部の領域において酸化アルミニウムで不動態化することができる。羽根車は、例えば、1部品で、好ましくは硫化ポリフェニレンで作ることができる。一方、冷却流体は、流体ポンプの要素の表面に直接使用することができず、高イオン放出を引き起こす。このために、流体ポンプ内のガイド流路は、それに応じて、言及される要素の周囲に案内され、言及される要素は、任意に、間接的に冷却され得る。したがって、例えば、ガイド流路は、電動モータのステータ及びロータを囲むことができる。
【0010】
よって、本発明によれば、イオンは、流体ポンプ内の冷却流体に分離することができず、冷却流体内へのイオン放出を制御することができる。そういうわけで、燃料電池システムの機能を確保することができ、燃料電池システムの耐用年数を長くすることができる。便宜上、冷却流体は、それぞれ、誘電性又は電気的に非導電性である。主に、冷却流体は液体である。冷却流体は、例えば、水-グリコール混合物のような水性混合物とすることができる。流体ポンプの更なる変形例の場合には、モータは、シャフトに回転方向に固定されて接続されるロータと、ロータを収容するステータとを備える、電流を流すことができるグループを有することができる。モータは、モータハウジングを有することができ、電流を流すことができるグループは、モータハウジング内に収容することができる。ガイド流路のモータ経路は、モータハウジング内に形成することができ、モータハウジングによって、電流を流すことができるグループからそれ自体を流体的に分離することができる。このために、モータハウジングは、例えば、少なくともいくつかの領域において二重壁方式で形成することができる。したがって、冷却流体は、電流を流すことができるグループの高イオン放出を引き起こす表面の周りを流れず、冷却流体中へのイオン放出又は冷却流体中へのイオンの分離は、したがって、除外することができる。ガイド流路のモータ経路は、電流を流すことができるグループが冷却流体と間接的に、かつそれにもかかわらず十分に効果的に冷却されるように、モータハウジング内で案内することができる。すでに説明したように、モータハウジングは、このために、少なくとも一部の領域で二重壁の方法で形成することができる。
【0011】
電動モータは、モータハウジングを有することができ、ガイド流路は、モータハウジング内に形成された冷却流体ジャケットによって少なくとも一部の領域に形成することができると有利である。電流を流すことができるモータのグループは、ここでは冷却流体によって間接的に冷却することもできる。すでに説明したように、電流を流すことができるグループは、シャフトに回転的に固定された状態で接続されたロータと、ステータとを有することができる。
【0012】
電動モータは、モータハウジングを有することができ、羽根車ユニットは羽根車ハウジングを有することができる。さらに、流体ポンプは、モータハウジングと羽根車ハウジングとの間に密封方式でクランプされたメカニカルシールを有することができる。メカニカルシールは、流体ポンプ又はガイド流路をそれぞれ外部に対してシールすることができる。メカニカルシールはSiC製とすることができる。したがって、メカニカルシールは、いかなる摩耗もなく、したがって、冷却流体へのイオン放出もない。
【0013】
流体ポンプは、回転軸に対して少なくとも1つの軸受(好ましくは2つの軸受)を有することができ、少なくとも1つの軸受は、上述のメカニカルシールによってガイド流路から流体的に分離することができる。メカニカルシールにより、ガイド流路内の冷却流体と少なくとも1つの軸受との接触を回避することができ、したがって、それぞれの軸受の耐用年数を増加させることができる。少なくとも1つの軸受は、水密にすることができる。したがって、軸受は特にメカニカルシールの僅かな漏れに耐えることができる。軸受は、特に保護等級IP67用に設計できる。保護等級IP67では、軸受は流体ポンプの水没に応じてしっかりと固定されていなければならない。
【0014】
流体ポンプは、電動モータ用のインバータを有することができると有利である。それにより、インバータは、羽根車ユニットの反対側に位置するモータの長手方向端部上に配置することができる。これにより、少なくとも一部の領域では、ガイド流路のモータ経路をインバータに隣接して案内することができるので、羽根車ユニットによって搬送される冷却流体によってインバータを冷却することができる。それにより、インバータは、モータハウジングによって、ガイド流路のモータ経路から、又はガイド流路のモータ経路内の冷却流体から、それぞれ流体的に分離されることができ、その結果、インバータの電気部品は、冷却流体によって間接的に冷却されることができる。インバータは、例えば、いくつかのパワー半導体、例えばIGBTを含む制御ボードを有することができ、この制御ボードは、その後、冷却流体によって冷却することができる。インバータの冷却を向上させるために、ガイド流路のモータ経路をインバータ上で蛇行状又は迷路状に案内することができる。
【0015】
流体ポンプは、電動モータのためのインバータを有することができ、電動モータはモータハウジングを有することができると有利である。それにより、インバータは、モータハウジングの底部の外側に位置し、かつ羽根車ユニットに対向して位置するモータの長手方向端部上に熱を伝達するように配置することができる。ガイド流路のモータ経路は、インバータとは反対を向いているモータハウジングの底部の少なくともいくつかの領域に導くことができるので、羽根車ユニットによって搬送される冷却流体によってインバータを冷却することができる。これにより、底部を回転軸に対して横方向に整列させることができ、インバータの電気部品を、ガイド流路のモータ経路から、又はガイド流路内の冷却流体から、それぞれ流体的に分離することができる。インバータの電気部品(例えば、いくつかのパワー半導体を含む制御基板)は、その後、冷却流体によって間接的に冷却することができる。これにより、ガイド流路のモータ経路を、蛇行状又は迷路状に底部上で案内することができる。
【0016】
モータハウジングの底部のガイド流路をモータのグループから流体的に分離し、そこに電流を流すことができるようにするために、インバータとは反対を向いた底部にカバーを設けることができる。ガイド流路のモータ経路を外側にシールするカバーシールは、底部とカバーとの間に所定の目的で配置することができる。すでに述べたように、電流を流すことができるモータのグループは、シャフトと共に回転するロータと、ステータとを備えることができる。
【0017】
すでに述べたように、流体ポンプは燃料電池システムのために設けられている。燃料電池システムは、特に重量物車両用にそれぞれ設計又は提供することができる。流体ポンプは、4000W以上6000W以下、好ましくは4500Wの最大電力、及び/又は400l/min以上700l/min以下の最大出力及び/又は3bar以上4bar以下、好ましくは3.5barの最大圧力、及び/又は5000/min以上6,000/min以下、好ましくは5,400/minの最大速度、及び/又は6.0Nm以上8.0Nm以下の最大トルクを有することができると有利である。ここで指定する最大パラメータとは、流体ポンプの全負荷運転を指す。電動モータは、インバータによって変換される400V以上860V以下のDC電圧で作動させることができることが有利である。電動モータは、特に永久磁石同期モータとすることができる。羽根車は、60%以上70%以下、好ましくは65%の最大効率を有することができると有利である。
【0018】
本発明はまた、重量物車両用のいくつかの燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。それによって、燃料電池システムは、上述の流体ポンプを有する。燃料電池システムは、好ましくは、1つの単一の上述の流体ポンプを有する。特に、燃料電池システムは、冷却流体を少なくとも1つの燃料電池スタックに運ぶために設けられる、更なる流体ポンプを有していない。換言すれば、流体ポンプは、燃料電池システム全体のための冷却流体が、1つの単一流体ポンプによって搬送され得るように設計される。それにより、燃料電池システムは、いくつかの(特に2つの)燃料電池スタックを有することができる。それにより、いくつかの燃料電池スタック用の冷却流体は、1つの単一流体ポンプによって搬送することができる。このために、流体ポンプは、上述の特性を有することができる。反復を避けるため、この時点で上記の備考を参考にしている。
【0019】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項から、図面から、及び図面に基づいた対応する図の説明から、得られる。
【0020】
なお、以下に説明する上記の特徴及び特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の組合せのみならず、他の組合せ、又は単独で用いることができることは言うまでもない。
【0021】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面に示され、以下の説明でより詳細に説明される。ここで、同一の参照符号は、同一、類似又は機能的に同一の構成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
それぞれの場合において、概略的に、
図1】本発明による流体ポンプの分解図を示す。
図2】本発明による流体ポンプの断面図を示す。
図3】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
図4】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
図5】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
図6】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
図7】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
図8】本発明による流体ポンプの異なる図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明による流体ポンプ1の分解図を示す。流体ポンプ1は、いくつかの燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを含む燃料電池システムに対してそれぞれ提供又は設計される。燃料電池システムは、特に、重量物車両用にそれぞれ提供又は設計することができる。これにより、流体ポンプ1は、羽根車ハウジング3及び羽根車4を備える羽根車ユニット2を有する。羽根車4は1部品で作られ、好ましくは硫化ポリフェニレンで作られる。さらに、羽根車ユニット2は、流体入口5aを有する入口側2a(つまり低圧側)と流体出口5bを有する出口側2b(つまり高圧側)とを含む。入口側2a及び出口側2bは、羽根車4によって互いに分離されているか、又は互いに流体的に接続されている。流体入口5a及び流体出口5bは羽根車ハウジング3に形成されている。
【0024】
さらに、流体ポンプ1は、電動モータ6を有する。電動モータ6は、特に永久磁石同期モータとすることができる。それにより、モータ6は、回転軸RAの周りに回転するシャフト8と、電流を流すことができ、シャフト8にしっかりと接続されたロータ9と、ロータ9を収容するステータ10とを有するグループ7とを備える。シャフト8は羽根車4に駆動可能に連結されている。ここで、回転軸RAは、流体ポンプ1の長手方向中心軸に対応し、モータ6は、回転軸RAに対して互いに反対側に位置する2つの長手方向端部6a及び6bを有する。羽根車ユニット2は、モータ6の長手方向端部6aに配置されている。
【0025】
モータ6は更に、ポット状のハウジング本体11aと、回転軸RAに対して横方向に整列された底部11bとからなるモータハウジング11を有している。さらに、モータハウジング11はハウジングシール12を有し、このハウジングシール12は、ハウジング本体11aと底部11bとの間に密封方式で配置又はクランプされ、対応する接続点をそれぞれ外部に対して密封する。ハウジング本体11aと底部11bとは、いくつかのハウジングネジ13によって互いにネジ結合されている。また、モータハウジング11は、ステータ側又はロータ側の底部11bをそれぞれ閉塞するカバー11cを有している。外側への対応する接続点をシールするカバーシール14が、底部11bとカバー11cとの間に、それぞれシールするように配置又はクランプされている。底部11bとカバー11cとは、いくつかのカバーネジ15によって互いにネジ結合されている。
【0026】
ステータ10は、モータハウジング11内に回転固定された状態で収容され、ロータ9を有するシャフト8がモータハウジング11内で回転するように収容されている。このため、流体ポンプ1は、モータ6のそれぞれの長手方向端部6a及び6bにシャフト8を収容する2つの軸受16a及び16bを有する。さらに、シャフト8には、羽根車シール27が長手方向端部6aに配置されている。
【0027】
流体ポンプ1はさらに、メカニカルシール28を有する。メカニカルシール28は、モータハウジング11と羽根車ハウジング3との間に、それぞれ密封方式で配置又はクランプされ、対応する接続点を外側に密封する。メカニカルシール28は、SiC製であることが好ましい。さらに、流体ポンプ1は、モータハウジング11と羽根車ハウジング3との間に、同様に密封状態でそれぞれ配置又はクランプされたU字状シール21を有する。
【0028】
さらに、流体ポンプ1はインバータ17を有する。インバータ17は、モータ6を駆動するための400 V以上860V以下のDC電圧を変換するように設計することができる。これにより、インバータ17は、モータ6の長手方向端部6bに、又は羽根車ユニット2とは反対側に配置される。このインバータ17は、制御基板18とインバータカバー19とを有し、制御基板18は、モータハウジング11の底部11bとインバータカバー19との間に配置されている。さらに、インバータ17はインバータシール20を備え、これは底部11bとインバータカバー19との間に密封方式で配置又はクランプされ、対応する接続点を外部に対して密封する。底部11bとインバータカバー19は、いくつかのインバータネジ22によって互いにネジ接続されている。
【0029】
流体ポンプ1は、冷却流体、好ましくは液体を搬送するように設計される。このために、流体ポンプ1は、羽根車経路23a及びモータ経路23bを備えるガイド流路23を有する。羽根車経路23aは、入口側2aの流体入口5aから羽根車4を経由して出口側2bの流体出口5bに至る。冷却流体は、羽根車経路23aにおいて羽根車4の周りを直接流れ、羽根車4によって流体入口5aから流体出口5bに直接運ばれる。ガイド流路23のモータ経路23bは、ここでは、モータハウジング11内に形成された冷却流体ジャケット24によっていくつかの領域に形成され、モータ6を経て羽根車4の周りに導かれる。モータ経路23b内の冷却流体は、羽根車4の周囲を直接流れず、モータ経路23bの流通は、流体出口5bと流体入口5aとの間に存在する圧力差によって生じる。
【0030】
それにより、冷却流体ジャケット24は、ハウジング本体11a内のいくつかの(ここでは7つの)前進流路25a及び戻り流路25bと、底部11bとカバー11cとの間の蛇行状又は迷路状の接続流路26とを備える。これにより、前進流路25aは、出口側2bからハウジング本体11aを通って、蛇行状又は迷路状の接続流路26にそれぞれ移行する。接続流路26は戻り流路25b内に開口しており、この戻り流路はハウジング本体11aを通って入口側2aに至る。流体ポンプ1では、入口側2aの流体入口5aから出口側2bの流体出口5bに冷却流体が運ばれる。出口側2bから、冷却流体の一部は流体出口5bを介して流体ポンプ1から流出し、冷却流体の一部は冷却流体ジャケット24に流入する。冷却流体ジャケット24から、冷却流体は入口側2aに流れ、冷却流体と共に羽根車4によって再び出口側2bに運ばれ、流体入口5aを介して流体ポンプに流入する。
【0031】
流体ポンプ1では、冷却流体が直接使用され得るガイド流路23内の全ての表面は、いかなるイオンも冷却流体に向かって分離しない。このために、少なくとも一部の領域でこの表面を形成するそれぞれの要素は、イオン放出が低減された材料で作ることができ、又はイオン放出が低減されたコーティングで被覆することができる。したがって、それぞれの要素は、例えば陽極酸化アルミニウムで作ることができる。さらに、冷却流体は、電流を流すことのできるグループ7に直接、又はその周りに直接流れず、したがって、冷却流体へのイオン放出は流体ポンプ1内で回避される。冷却流体自体は誘電体である。したがって、流体ポンプ1は、特に燃料電池システムを冷却することに適している。
【0032】
燃料電池システムは、特に、重量物車両用に提供することができる。この場合、流体ポンプ1は、1つの単一流体ポンプ1が、いくつかの燃料電池が粘着している場合でも、燃料電池システムを冷却するのに十分であるように設計することができる。したがって、流体ポンプは、4000W以上6000W以下、好ましくは4500Wの最大電力、及び/又は400l/min以上700l/min以下の最大出力及び/又は3bar以上4bar以下、好ましくは3.5barの最大圧力、及び/又は5000/min以上6,000/min以下、好ましくは5,400/minの最大速度、及び/又は6.0Nm以上8.0Nm以下の最大トルクを有することができる。羽根車4は、60%以上70%以下、好ましくは65%の最大効率を有することができる。
【0033】
図2は、本発明による流体ポンプ1の断面図を示す。特に、モータハウジング11の底部11bとカバー11cとの間の冷却流体ジャケット24の蛇行状又は迷路状の接続流路26は、図2で見ることができる。図3から図8は、流体ポンプ1の異なる図を示している。図3図8に流体ポンプ1の組立状態を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】