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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051121
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】剥離容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20240403BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20240403BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20240403BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
B29C49/48
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028949
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022514082の分割
【原出願日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020068138
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020068160
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
(57)【要約】
【課題】ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造するときに、内層の樹脂材料が意図せずに外周側に回り込む成形不良を抑制できる製造方法を提供する。
【解決手段】剥離容器の製造方法は、有底筒状のプリフォームの第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形工程において、第1の金型の型空間に第1層を収容するとともに第1層の内部に第2の金型を挿入し、第1層と第2の金型の間に第2の樹脂材料を射出する。第1の金型の型空間の深さは、第1射出成形工程で得られる第1層の軸方向長さよりも短い。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のプリフォームの第1層を、第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、
前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料を射出し、前記第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形工程と、
前記第2射出成形工程で得られたプリフォームを射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形し、剥離容器を製造するブロー成形工程と、を有し、
前記第2射出成形工程では、第1の金型の型空間に前記第1層を収容するとともに前記第1層の内部に第2の金型を挿入し、前記第1層と前記第2の金型の間に前記第2の樹脂材料を射出し、
前記第1の金型の型空間の深さは、前記第1射出成形工程で得られる前記第1層の軸方向長さよりも短い
剥離容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内層および外層の二層構造を有し、内容物の排出に応じて内層が外層から剥離してゆく樹脂製の剥離容器が知られている。この種の剥離容器は、デラミボトルまたはエアレスボトルとも称され、例えば醤油などの調味液や化粧品の化粧液の容器に利用されている。
現状、この種の剥離容器の製造では、押出ブロー方式の利用が一般的であって、延伸ブロー方式の利用は少ない(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5267901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、剥離容器の外観、寸法精度、物性強度などの向上や、無駄な材料の抑制による環境負荷の低減の観点から、剥離容器の製造において、射出成形工程からブロー成形工程までを連続して行う1ステージのホットパリソン式のブロー成形法を適用することが検討されている。
【0005】
しかしながら、剥離容器は、外層用の樹脂材料の融点が内層用の樹脂材料の融点より高く設定されることが多い。二層構造のプリフォームを成形する射出成形工程において、内層を形成した後に高温の外層の樹脂材料を充填すると、外層の樹脂材料に接触した内層の表面が溶融して熱変形してしまう。このため、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造すること自体が極めて困難である。
【0006】
また、剥離容器のプリフォームにおいて外層と内層の溶着性が低いと、外層と内層の意図しない分離や位置ずれが生じうる。例えば、二層構造のプリフォームに挿入されているコア型を引き抜くときに内層がコア型に固着して巻き上がると、外層との意図しない分離や位置ずれが生じうる。また、例えば、二層構造のプリフォームをブロー成形するときに内層と外層が滑りあって、外層と内層が位置ずれした状態で剥離容器が成形される事象も生じうる。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造するときに、外層と内層の意図しない分離や位置ずれを抑制できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である剥離容器の製造方法は、有底筒状のプリフォームの第1層を、第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料を射出し、第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形工程と、第2射出成形工程で得られたプリフォームを射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形し、剥離容器を製造するブロー成形工程と、を有する。第2射出成形工程では、第1層に形成される開口部から第1層の内周側に第2の樹脂材料を導くとともに、第1層の外周側に開口部から張り出した係止部を第2層と一体に形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造するときに、外層と内層の意図しない分離や位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のプリフォームの縦断面図である。
図2】第1実施形態の剥離容器の縦断面図である。
図3】第1実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図4】第1実施形態のプリフォームの製造工程を示す図である。
図5】(a)は第1実施形態の第1射出成形部での第1層の底部近傍を示す図であり、(b)は第1実施形態の第2射出成形部でのプリフォームの底部近傍を示す図である。
図6】第1射出成形部の第2のキャビティ型の構成例を示す斜視図である。
図7】剥離容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態のプリフォームの縦断面図である。
図9】第2実施形態のプリフォームの製造工程を示す図である。
図10】(a)は第2実施形態の第1射出成形部での第1層の底部近傍を示す図であり、(b)は第2実施形態の第2射出成形部でのプリフォームの底部近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0012】
(第1実施形態)
<プリフォームの構成例>
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る剥離容器用のプリフォームの構成例を説明する。図1は第1実施形態のプリフォーム10の縦断面図である。プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10は、円筒状に形成された胴部14と、胴部14の他端側を閉塞する底部15と、胴部14の一端側の開口に形成された首部13とを備えている。
【0013】
プリフォーム10は、第1層(外層)11の内側に第2層(内層)12が積層された二層構造を有している。この第1層11と第2層12は、後述のように2段階の射出成形によりそれぞれ異なる熱可塑性の樹脂材料で形成される。第1層11は、成形性や透明性に優れた性質を有する合成樹脂で構成される。一方、第2層12は、容器の内容物を安定的に保管して劣化(酸化)を抑制できる性質(例えば、水分バリア性、ガスバリア性、耐熱性、耐薬品性)を有する合成樹脂で構成される。また、第1層11の樹脂材料には、第2層12の樹脂材料よりも融点が高いものが選択される。
【0014】
以下、第1層11の樹脂材料を第1の樹脂材料とも称し、第2層12の樹脂材料を第2の樹脂材料とも称する。
第1の樹脂材料と第2の樹脂材料の組み合わせは、剥離容器の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0015】
一例として、第1の樹脂材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)であり、第2の樹脂材料は、PP(ポリプロピレン)である。PPの融点は160~170℃程度であり、PETの融点はPPの融点よりも高く、245~260℃程度である。
【0016】
また、プリフォーム10の胴部14において、第2層12の厚さt2に対する第1層11の厚さt1の比(t1/t2)は1.5以上であることが好ましい。当該厚さの比は、成形される剥離容器の透明性を確保する観点から3.0以下であることが好ましい。
【0017】
また、プリフォーム10の底部15において、第1層11の底部の中心には第1層11を貫通して開口部16が形成されている。第1層11の開口部16は、第2層12によって内側から塞がれている。第1層11の外側において、第2層12は、開口部16から径方向の外側に張り出した係止部19を有している。係止部19は、開口部16の縁に沿って環状に形成されていてもよく、周方向に間隔をおいて複数形成されていてもよい。
【0018】
また、プリフォーム10の底部15には、剥離容器に空気導入孔を形成するための凹部17が形成されている。凹部17は、例えば横断面が円形状であって、プリフォーム10の底部15の中心から径方向に間隔を空けて少なくとも1か所形成されるが、底部15の周方向に沿って凹部17が複数形成されていてもよい。容器の厚さ方向における凹部17の深さは、少なくとも凹部17が第1層11を貫通して、第2層12の表面が凹部17内に露出する寸法に設定されている。なお、二層構造のプリフォーム10に形成される凹部17は、第1層11のみに形成される凹部(後述)と区別し、第2の凹部と称してもよい。また、凹部17の横断面は円形の外、楕円形や多角形、スリット状、またはこれらが組み合わされた形状であってもよい。
【0019】
<剥離容器の構成例>
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る樹脂製の剥離容器20の構成例を説明する。図2は、第1実施形態の剥離容器20の縦断面図である。
【0020】
剥離容器20は、プリフォーム10を延伸ブロー成形することで得られるボトル形状の樹脂製容器であり、例えば、例えば醤油などの調味液が収容される。なお、剥離容器20の用途は、化粧品の化粧液など、他の内容物を収容するものでもよい。
【0021】
剥離容器20は、プリフォーム10と同様に、第1層11の内側に第2層12が積層された二層構造を有している。剥離容器20の胴部22において、第2層12の厚さt12に対する第1層11の厚さt11の比(t11/t12)は、プリフォーム10の胴部14における厚さの比(t1/t2)とほぼ同様である。
【0022】
剥離容器20は、上端に開口を有する首部21と、首部21から連続する円筒状の胴部22と、胴部22から連続する底部23とを有している。剥離容器20の製造においては、プリフォーム10の胴部14および底部15が延伸ブローで膨らむことで、剥離容器20の胴部22および底部23に賦形される。また、延伸ブローの際には、プリフォーム10の凹部17が延伸されることで、剥離容器20の底部23には第1層11を貫通する空気導入孔24が形成される。
【0023】
剥離容器20においては、第2層12の内側の空間に内容物が充填される。剥離容器20では、第2層12から内容物が排出される際に空気導入孔24から第1層11と第2層12の間に徐々に空気が流入し、第1層11と第2層12が剥離していく。これにより、第2層12の内容物を空気に触れさせずに容器内で内容物の占める容積を空気に置き換えることができ、第2層12に充填された内容物を容器外に排出できる。
【0024】
また、剥離容器20の底部23の中心には、プリフォーム10と同様に第1層11を貫通する開口部25(非積層部、単層部)が形成されている。開口部25には第2層12の材料が開口部25を塞いで充填され、剥離容器20の底部23の開口部25近傍においては、第1層11の外側に第2層12が露出した状態となっている。また、剥離容器20の底部23では、第1層11の開口部25から径方向の外側に向けて張り出した第2層12の係止部26(膨出部26)が形成されている。係止部26は、プリフォーム10の係止部19が延伸されることで形成されている。剥離容器20の開口部25において第2層12が第1層11の外側に露出することで第2層12が第1層11に部分的に固定され、第1層11に対する第2層12の位置ずれが抑止される。
【0025】
<剥離容器の製造装置の説明>
図3は、第1実施形態のブロー成形装置30の構成を模式的に示す図である。第1実施形態のブロー成形装置30は、剥離容器20の製造装置の一例であって、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して剥離容器20をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)を採用する。
【0026】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第1温度調整部32と、第2射出成形部33と、第2温度調整部34と、ブロー成形部35と、取り出し部36と、搬送機構37とを備える。第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35および取り出し部36は、搬送機構37を中心として同一の所定角度(例えば60度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、ブロー成形装置30は、第1温度調整部32を省く構成としてもよい(この場合、各成形ステーションは搬送機構37を中心として72度ずつ回転した位置に配置される)。また、第1射出成形部31と第2射出成形部33には、搬送機構37の上方に不図示のコア型昇降機構が設けられている。
【0027】
(搬送機構37)
搬送機構37は、図3の紙面垂直方向の軸を中心に回転する回転板(移送板)37aを備える。回転板37aには、プリフォーム10の首部13(または剥離容器20の首部21)を保持するネック型37b(図3では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構37は、回転板37aを回転させることで、ネック型37bで保持されたプリフォーム10(または剥離容器20)を、第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35、取り出し部36の順に搬送する。なお、搬送機構37は、回転板37aを昇降させることもでき、第1射出成形部31や第2射出成形部33における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0028】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、キャビティ型40、コア型41、ホットランナー型42を備え、成形時に搬送されるネック型37bと協働し、プリフォーム10の第1層11を製造する。キャビティ型40は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型40Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型40Bから構成される。第1射出成形部31には、ホットランナー型42に第1の樹脂材料を供給する第1射出装置38が接続されている。キャビティ型40とホットランナー型42は、一体化した状態で、ブロー成形装置30の機台に固定されている。コア型41は、コア型昇降機構に固定されている。
【0029】
図4(a)、(b)は、第1実施形態のプリフォーム10の第1層11を成形する第1射出成形部31を示す。図5(a)は、第1実施形態の第1射出成形部31での第1層11の底部近傍を示す図である。図6(a)は、第1射出成形部31のキャビティ型40(第2のキャビティ型40B)の構成例を示す斜視図である。
【0030】
キャビティ型40は、第1層11の外周の形状を規定(画定)する。第1のキャビティ型40Aは、キャビティ型40の開口側(型閉時にネック型37bと当接する側)に臨む金型であって、第1層11の胴部外周の形状を規定する。第2のキャビティ型40Bは、キャビティ型40の底面側(ホットランナー型42と当接する側)に臨む金型であって、第1層11の底部外周の形状を規定する。第2のキャビティ型40Bはさらに、ホットランナー型42からの樹脂材料をキャビティ面に導くゲート部40Baを備える。また、ホットランナー型42は、第1射出装置38で可塑化(溶融化)された第1の樹脂材料を第2のキャビティ型40Bに導入する樹脂供給部42a(樹脂流通路42a)を有する。コア型41は、第1層11の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型40の内周側に上側から挿入される。ネック型37bはプリフォーム10(第1層11)の首部13の外形を規定する。
【0031】
図4(a)、(b)に示すように、第1射出成形部31においては、上記のキャビティ型40、コア型41と、搬送機構37のネック型37bとを型閉じして第1層11の型空間を形成する。そして、上記の型空間の底部からホットランナー型42を介して第1の樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31においてプリフォーム10の第1層11が製造される。
【0032】
第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型40Bの上面側(キャビティ面側)には、所定位置に円柱状、テーパ円柱状または角柱状等の第1の突起部44が設けられている。図6(a)に示すように、第1の突起部44は、樹脂供給部42aの位置する底部中央から径方向に間隔を空けて少なくとも1つ配置されている。図5(a)に示すように、第2のキャビティ型40Bのキャビティ基準面(第1層11の底部外周面の下端側形状を規定するキャビティ面)からの第1の突起部44の突出量h1は、第1層11の厚さとほぼ同じ寸法である。そのため、第1射出成形部31を型閉じしたときには、第1の突起部44の先端はコア型41の表面に臨む(コア型41の表面の近傍に配置される)。これにより、第1射出成形部31の射出成形においては、第1の突起部44により、プリフォーム10の凹部17に対応する位置に円形等の凹部11aが第1層11に形成される。第1層11の凹部11aは、第1層11を貫通していてもよく、コア型41と第1の突起部44に挟まれて形成された薄膜を有するものであってもよい。なお、第1射出成形部31で形成された第1層11の凹部11aを、第1の凹部とも称する。
【0033】
また、図4(b)に示すように、ホットランナー型42の樹脂供給部42aには、コア型41に近接する位置まで軸方向に移動可能なバルブピン(樹脂供給部42aを開閉する棒状部材)43が設けられる。バルブピン43は、第1の樹脂材料が型空間に充填されるまではホットランナー型42の内部に収容され、第1の樹脂材料が型空間に充填された後にゲート部40Baのキャビティ側の開口端よりもコア型41に近接する位置まで突出する。このような射出成形時のバルブピン43の移動により、第1層11の底部中央に、樹脂材料の肉厚が周辺部よりも薄い薄膜部18を形成することができる。
【0034】
また、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構37のネック型37bは開放されずにそのままプリフォーム10の第1層11を保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる剥離容器20の数)は、適宜設定できる。
【0035】
(第1温度調整部32)
第1温度調整部32は、図示しない温度調整用金型(第1層11を外部から温度調整する加熱ポットまたは温度調整ポット(温調ポット)、および、第1層11を内側から温度調整する加熱ロッド、温度調整ロッド(温調ロッド)またはエア導入ロッド)を備える。第1温度調整部32は、射出成形後の高温状態にある第1層11を、所定温度に保たれた温度調整用金型に収容することで冷却(または加熱)する。また、第1温度調整部32は、第2射出成形部33に搬送される前に、第1層11の温度分布を所定の状態に調整する機能も担う。
【0036】
(第2射出成形部33)
第2射出成形部33は、キャビティ型50、コア型51、ホットランナー型52を備え、成形時に搬送されるネック型37bと協働し、第1層11の内周側に第2層12を射出成形する。キャビティ型50は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型50Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型50Bから構成される。第2射出成形部33には、ホットランナー型52に第2の樹脂材料を供給する第2射出装置39が接続されている。
【0037】
図4(c)は、プリフォーム10の第2層12を成形する第2射出成形部33を示す。図5(b)は、第2射出成形部33でのプリフォーム10の底部近傍を示す図である。
【0038】
キャビティ型50は、第1層11を収容する金型である。第1のキャビティ型50Aは、キャビティ型50の開口側に臨む金型であって、第1層11の胴部を収容する。第2のキャビティ型50Bは、キャビティ型50の底面側に臨む金型であって、第1層11の底部を収容する。第2のキャビティ型50Bはさらに、ホットランナー型52からの樹脂材料をキャビティ面に導くゲート部50Baを備える。また、ホットランナー型52は、第2射出装置39で可塑化(溶融化)された第2の樹脂材料を導入する樹脂供給部52a(樹脂流通路52a)を底部の中心に有する。コア型51は、第2層12の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型50の内周側に上側から挿入される。ネック型37bはプリフォーム10(第2層12)の首部13の上端面(天面)を規定する。なお、ホットランナー型52は、ホットランナー型42のようなバルブピンを有する構造であっても良い。ただし、第2の樹脂材料を閉鎖する際のバルブピンの位置は、ゲート部50Baのキャビティ側の開口端より突出しない位置に設定される。
【0039】
図4(c)に示すように、第2射出成形部33は、第1射出成形部31で射出成形されたプリフォーム10の第1層11を収容する。第2射出成形部33を型閉じした状態では、第1層11の内周側と、コア型51の表面との間に型空間が形成される。第2射出成形部33においては、上記の型空間の底部からホットランナー型52を介して第2の樹脂材料を流し込むことで、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が形成される。
【0040】
また、第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型50Bの上面側(キャビティ面側)には、第1射出成形部31の第1の突起部44と対応する所定位置に、プリフォーム10の凹部17の形状に対応した円柱状等の第2の突起部54が設けられている。第2の突起部54は、第2射出成形部33に第1層11が収容されたときに、第1層11の凹部11aに挿通される。このように、第2のキャビティ型50Bにおける突起部等の基本構成は、第1射出成形部31の第2のキャビティ型40Bとほぼ同様となる。
【0041】
ここで、図5(b)に示すように、第2のキャビティ型50Bのキャビティ基準面(第1層11の底部外周面の下端側領域と当接するキャビティ面)からの第2の突起部54の突出量h2は、第1層11の厚さよりも大きい寸法である。つまり、第2の突起部54の突出量h2は、第1の突起部44の突出量h1よりも大きい(h2>h1)。そのため、第2射出成形部33を型閉じしたときには、第2の突起部54の先端は第1層11の凹部11aを貫通して第1層11の内周側まで突出する。第2射出成形部33の第2のキャビティ型50Bに第2の突起部54を設けることで、プリフォーム10の底部15に凹部17を形成することができる。
【0042】
また、第2の突起部54の突出量h2は、プリフォーム10の厚さよりも小さく設定されている。つまり、第2射出成形部33での射出成形では、コア型51と第2の突起部54の間に第2の樹脂材料が流れ込むので、第2の突起部54により第2層12を貫通する孔は形成されない。
【0043】
また、図5(b)に示すように、キャビティ型50において、ゲート部50Baに接続されるキャビティ端部53は、型空間に向けて拡がる曲面状の拡径部(膨出部)が形成されている。そのため、第2射出成形部33の底部の中心近傍では、キャビティ型50のキャビティ端部53の曲面と第1層11の外周面との間に隙間が生じる。上記の隙間には射出成形時に第2の樹脂材料が流入する。これにより、第1層11の外側に、開口部16から径方向の外側に張り出した係止部19を第2層12と一体に形成することができる。
【0044】
(第2温度調整部34)
第2温度調整部34は、図示しない温度調整用の金型ユニット(プリフォーム20を外部から温度調整する加熱ポットまたは温度調整ポット(温調ポット)、および、プリフォーム20を内側から温度調整する加熱ロッド、温度調整ロッド(温調ロッド)またはエア導入ロッド)を備える。第2温度調整部34は、第2射出成形部33から搬送されるプリフォーム10を所定温度に保たれた金型ユニットに収容することで均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、第2温度調整部34は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。
【0045】
(ブロー成形部35)
ブロー成形部35は、第2温度調整部34で温度調整されたプリフォーム10に対してブロー成形を行い、剥離容器20を製造する。
ブロー成形部35は、剥離容器20の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部35は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて剥離容器20を製造することができる。
【0046】
(取り出し部36)
取り出し部36は、ブロー成形部35で製造された剥離容器20の首部21をネック型37bから開放し、剥離容器20をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0047】
<容器の製造方法の説明>
次に、第1実施形態のブロー成形装置30による剥離容器20の製造方法について説明する。図7は、剥離容器20の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、図4(a)に示すように、第1射出成形部31において、キャビティ型40、コア型41と、ネック型37bで形成された型空間に第1射出装置38から第1の樹脂材料が射出され、プリフォーム10の第1層11が成形される。このとき、第1の突起部44により、第1層11の底部には凹部11aが形成される。
【0049】
第1射出成形部31においては、図4(b)に示すように、プリフォーム10の第1層11が成形された後、コア型41に近接する位置までバルブピン43を突出させる工程が行われる。これにより、第1層11の底部中央には、肉厚が周辺部よりも薄い薄膜部18が形成される。
【0050】
その後、第1射出成形部31を型開きし、第1層を離型させる。第1射出成形部31が型開きされると、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10の第1層11が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第1温度調整部32に搬送される。
【0051】
(ステップS102:第1温度調整工程)
次に、第1温度調整部32において、プリフォーム10の第1層11が温度調整用金型に収容され、第1層11の冷却と温度分布の調整(均温化や偏温除去)が行われる。なお、第1温度調整工程は省略されてもよい。
【0052】
第1温度調整工程(または第1射出成形工程)の後、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持された温度調整後の第1層11が第2射出成形部33に搬送される。
【0053】
(ステップS103:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部33にプリフォーム10の第1層11が収容され、第2層12の射出成形が行われる。
【0054】
第2射出成形部33においては、図4(c)に示すように、第1層11の内周側と、第1層11の内周に臨むコア型51の表面との間に型空間が形成され、上記の型空間内にホットランナー型52から第2の樹脂材料を充填する。なお、第1層11の底部には薄膜部18が形成されているが、第2の樹脂材料の射出圧で薄膜部18が破断されて底部に開口部16ができ、上記の開口部16から第2の樹脂材料が第1層11の内周側に導かれる。
【0055】
ここで、第2射出成形部33で充填する第2の樹脂材料の温度は、第1の樹脂材料の融点よりも低い温度に設定される。また、第2射出成形部33で第2の樹脂材料を充填するときの第1層11の表面温度は、第2の樹脂材料の融点以下の温度に冷却されている。
【0056】
第2射出成形部33では、第1層11の外周側にはキャビティ型50が臨み、キャビティ型50によって第1層11の形状が外周側から保持される。このため、第2の樹脂材料が第1層11と接触しても第1層11の熱変形を抑制できる。
【0057】
また、第2射出成形部33では、第2の突起部54が第1層11の凹部11aを貫通して塞いでいるので、プリフォーム10の凹部17が第2の樹脂材料で塞がれることはない。また、第2射出成形部33における第2の突起部54は第1層の内周側まで先端が突出するので、第2の突起部54により形成されるプリフォーム10の凹部17は、第1層11を貫通して第2層12の表面が凹部17内に露出する形状となる。
【0058】
また、第2射出成形部33では、キャビティ型50Bのゲート部50Baと隣接するキャビティ端部53の曲面と第1層11の外周面との隙間に第2の樹脂材料を流入させることで、第1層11の外側に係止部19が第2層12と一体に形成される。係止部19が第1層11の外側で引っかかることで、第1層11に対して第2層12は抜け止めされる。
【0059】
以上のようにして、第1射出成形工程および第2射出成形工程により、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が製造される。
その後、第2射出成形部33が型開きされると、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2温度調整部34に搬送される。
【0060】
(ステップS104:第2温度調整工程)
続いて、第2温度調整部34において、温度調整用の金型ユニットにプリフォーム10が収容され、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。その後、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持された温度調整後のプリフォーム10が、ブロー成形部35に搬送される。
【0061】
(ステップS105:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部35において、剥離容器20のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部13にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッドを降下させてプリフォーム10の底部15を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、剥離容器20にブロー成形される。
【0062】
(ステップS106:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型が型開きされる。これにより、ブロー成形部35から剥離容器20が移動可能となる。
続いて、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、剥離容器20が取り出し部36に搬送される。取り出し部36において、剥離容器20の首部21がネック型37bから開放され、剥離容器20がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0063】
以上で、剥離容器の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構37の回転板37aを所定角度回転させることで、上記のS101からS106の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する6組分の剥離容器20の製造が並列に実行される。
【0064】
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第1温度調整工程、第2射出成形工程、第2温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の待機時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0065】
以下、第1実施形態のブロー成形装置およびブロー成形方法の効果を説明する。
第1実施形態では、第1射出成形工程でプリフォーム10の第1層11(外層)を成形し、第2射出成形工程で第1層11の開口部16から第1層11の内側に第2層12(内層)を射出成形して二層構造のプリフォーム10が製造される。第1実施形態によれば、融点の高い樹脂材料で外層を先に形成し、その後に外層よりも融点の低い樹脂材料で内層を形成できる。つまり、外層が射出成形時の保有熱を有する状態のまま内層の射出成形を連続的に行って、剥離容器20の仕様に適した二層構造のプリフォーム10を製造できる。第1実施形態では、外層および内層がいずれも射出成形時の保有熱を有する状態で二層構造のプリフォーム10が離型されるので、ホットパリソン式のブロー成形法で剥離容器20を製造するときに好適なプリフォーム10を得ることができる。
【0066】
そして、第1実施形態では、射出成形時の保有熱を有する状態で、上記の二層構造のプリフォーム10を延伸ブロー成形して剥離容器20を製造する。そのため、第1実施形態では、ホットパリソン式のブロー成形法によって、美的外観や物性強度等に優れた剥離容器20を製造できる。コールドパリソン式のブロー成形と比べると、第1実施形態では製造されたプリフォーム10を常温近くまで冷却せずにすみ、プリフォーム10の再加熱の工程も不要となる。そのため、第1実施形態によれば、プリフォーム10の射出成形から剥離容器20のブロー成形までの一連の工程を比較的短時間で完了させることができ、剥離容器20をより短いサイクルで製造できる。
【0067】
また、第1実施形態では、第2射出成形工程において、第2層12を形成する第2の樹脂材料によって第1層11の外側に係止部19を一体に形成し、第1層11に対して第2層12を抜け止めする。
これにより、第2層12に対して首部に向けて引き抜き方向の力が作用するときには係止部19が第1層11と当接して引き抜き方向の力への抵抗となり、プリフォーム10の外層と内層がずれにくくなる。したがって、第1実施形態では、例えば第2射出成形工程でのコア型の引き抜き時やブロー成形工程などで外層と内層の意図しない分離や位置ずれを抑制でき、剥離容器20の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。以降の説明では、上記の第1実施形態と同様の要素は同一符号を付し、重複説明はいずれも省略する。
【0069】
例えば、二層構造のプリフォームを成形する際に外層を先に成形して、内層を後から成形する場合、後から充填される内層の樹脂材料が意図せずに外周側に回り込んでプリフォームの外側を被覆すると、ブロー成形後の容器の美観が大きく損なわれてしまう。
第2実施形態では、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造するときに、内層の樹脂材料が意図せずに外周側に回り込む成形不良を抑制する構成について説明する。
【0070】
図8は、第2実施形態のプリフォーム10の縦断面図である。以下、図1に示す第1実施形態のプリフォーム10と第2実施形態との相違点を述べる。図8に示す第2実施形態のプリフォーム10の底部15には、第2層12の内周側に曲面状に突出する隆起部12aが形成されている。隆起部12aは、第2の樹脂材料の射出成形時に形成される樹脂溜まりであって、第1層11の開口部16と対向する位置に形成される。
なお、第2実施形態での剥離容器20の構成は、第1実施形態と同様であるので重複説明は省略する。
【0071】
また、第2実施形態のブロー成形装置30の基本構成は、図3に示す第1実施形態のブロー成形装置30と同様である。以下、第2実施形態での相違点について述べる。
【0072】
図9は、第2実施形態のプリフォームの製造工程を示す図である。図10(a)は第2実施形態の第1射出成形部での第1層の底部近傍を示す図であり、図10(b)は第2実施形態の第2射出成形部でのプリフォームの底部近傍を示す図である。図9は第1実施形態の図4に対応し、図10は第1実施形態の図5に対応する。
【0073】
第2実施形態の第1射出成形部31では、図9(a)に示すように、第1層11の胴部上端から底面に対応するキャビティ型40の内周部の軸方向長さは、L1に設定される。
【0074】
また、第2実施形態の第2射出成形部33では、図9(c)に示すように、第1層11の胴部上端から底面を収容するキャビティ型50の内周部の軸方向長さ(深さ)は、L1よりも短いL2に設定される(L1>L2)。例えば、L2は、第1層11の変形しろ(キャビティ型50の押し上げによる第1層11の圧縮分または第1層11が第2射出成形工程前までに放熱等により短くなる収縮分)だけ、L1よりも短く設定されている。つまり、第1層11を収容するキャビティ型50の型空間の深さは、第1層11の軸方向長さよりも短い。
【0075】
また、図9(c)、図10(b)に示すように、第2実施形態でのコア型51の先端部には、曲面状の凹陥部51aが形成されている。凹陥部51aは、型閉じしたときに、第2のキャビティ型50Bの中心に位置する第2の樹脂材料の出口と対向し、第1層11の開口部16との間に樹脂溜まりの空間を形成する。この樹脂溜まりによって、第2層12の内周側に隆起部12aが形成される。
【0076】
また、図10(b)に示すように、例えば、第2実施形態の第2射出成形部33においてホットランナー型52の先端の口径d2(バルブピンの直径)は、第1射出成形部31のホットランナー型42の先端の口径(バルブピン43の直径)や第1層11の開口部16の径d1よりも小さく設定される。ホットランナー型52の先端の口径d2を開口部16の径d1よりも小さく絞ることで、第2射出成形部33の型空間に射出される第2の樹脂材料の流速を上げることができる。
【0077】
第2実施形態における剥離容器20の製造方法の工程は、図7に示すように、第1射出成形工程(S101)、第1温度調整工程(S102)、第2射出成形工程(S103)、第2温度調整工程(S104)、ブロー成形工程(S105)、容器取り出し工程(S106)を含む。第2実施形態の第1射出成形工程(S101)および第1温度調整工程(S102)は、第1実施形態と同様である。
【0078】
第2実施形態の第2射出成形工程(S103)では、第2射出成形部33にプリフォーム10の第1層11が収容され、第2層12の射出成形が行われる。
【0079】
第2射出成形部33においては、図9(c)に示すように、第1層11の内周側と、第1層11の内周に臨むコア型51の表面との間に型空間が形成され、上記の型空間内にホットランナー型52から第2の樹脂材料を充填する。なお、第1層11の底部には薄膜部18が形成されているが、第2の樹脂材料の射出圧で薄膜部18が破断されて底部に開口部16ができ、上記の開口部16から第2の樹脂材料が第1層11の内周側に導かれる。
【0080】
上記のように、第1層11を収容するキャビティ型50の型空間の深さは、第1層11の軸方向長さよりも短い。そのため、キャビティ型50に第1層11を収容するときには、第1層11の底部をキャビティ型50の底面に押し当てて両者を接触させ、第1層11の底部とキャビティ型50の間に隙間が生じることを抑制できる。
【0081】
また、第1層11の開口部16とコア型51の凹陥部51aの間には、樹脂溜まりの空間が形成される。開口部16を通過した第2の樹脂材料は、コア型51の凹陥部51aに当たって樹脂溜まりの空間で攪拌された後、第1層11の内周とコア型51の表面の間の型空間に流入する。樹脂溜まりの空間で第2の樹脂材料が攪拌されることで、第1層11の薄膜部18の破片は高温の第2の樹脂材料と混合されて溶ける。これにより、薄膜部18の破片を視認できない程度に消散させることができる。
【0082】
また、ホットランナー型52の先端の口径d2は、第1層11の開口部16の径d1よりも小さく絞られている。ホットランナー型52の先端を通過して凹陥部51aに当たるまでの第2の樹脂材料の流速を高くすることで、樹脂溜まりの空間で第2の樹脂材料の十分な攪拌を生じさせ、薄膜部18の破片をより消散させやすくできる。さらに、薄膜部18をより破断させ易くすることができる。
なお、第2の樹脂材料の一部は、凹陥部51aに当たった後に開口部16を通って第1層11の外側に導かれ、開口部16の近傍で循環する。このような流れによっても第2の樹脂材料が攪拌され、薄膜部18の破片の消散が促進される。
【0083】
ここで、第2射出成形部33で充填する第2の樹脂材料の温度は、第1の樹脂材料の融点よりも低い温度に設定される。また、第2射出成形部33で第2の樹脂材料を充填するときの第1層11の表面温度は、第2の樹脂材料の融点以下の温度に冷却されている。
【0084】
第2射出成形部33では、第1層11の外周側にはキャビティ型50が臨み、キャビティ型50によって第1層11の形状が外周側から保持される。このため、第2の樹脂材料が第1層11と接触しても第1層11の熱変形を抑制できる。
【0085】
また、第2射出成形部33では、第2の突起部54が第1層11の凹部11aを貫通して塞いでいるので、プリフォーム10の凹部17が第2の樹脂材料で塞がれることはない。また、第2射出成形部33における第2の突起部54は第1層の内周側まで先端が突出するので、第2の突起部54により形成されるプリフォーム10の凹部17は、第1層11を貫通して第2層12の表面が凹部17内に露出する形状となる。
【0086】
以上のようにして、第1射出成形工程および第2射出成形工程により、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が製造される。
その後、第2射出成形部33が型開きされると、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2温度調整部34に搬送される。
なお、第2実施形態の第2温度調整工程(S104)、ブロー成形工程(S105)、容器取り出し工程(S106)はいずれも第1実施形態と同様である。
【0087】
以下、第2実施形態のブロー成形装置およびブロー成形方法の効果を説明する。
第2実施形態では、第2射出成形部33において、第1層11を収容するキャビティ型50の型空間の深さを第1層11の軸方向長さよりも短い。そのため、第1層11の底部がキャビティ型50の底面に押し当てられ、第1層11の底部とキャビティ型50の間に隙間が生じることが抑制される。したがって、本実施形態によれば、第1層11とキャビティ型50の間に第2の樹脂材料が流れ込みにくくなり、第2の樹脂材料が第1層11の外周を被覆する成形不良の発生が抑制される。
【0088】
また、第2実施形態では、コア型51の先端部に凹陥部51aを設け、射出成形時に薄膜部18の破片を高温の第2の樹脂材料と攪拌することでこれらを混合して溶かし、薄膜部18の破片を消散させやすくする。これにより、プリフォーム10や剥離容器20において、薄膜部18の破片が内層に残ることで美観が損なわれるおそれを低減できる。
【0089】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0090】
上記実施形態においては、プリフォーム10の底部15に凹部17を1か所設ける例を説明したが、例えば凹部17を形成する数は複数であってもよい。図6(b)は、第1射出成形部31の第2のキャビティ型40Bにおいて、第1の突起部44を2か所に設けた例を示している。図6(b)の例では、2つの第1の突起部44が180°の間隔をあけて中心軸を基準として点対称の位置に配置されている。なお、第1の突起部44の数は、3つ以上であってもよい。その際に、各々の第1の突起部44は中心軸を基準として点対称の位置関係で配置されることが好ましい。
上記の構成によれば、射出成形時の樹脂の流れにおける周方向のムラがより少なくなる。なお、上記の構成の場合、第2射出成形部33においても、第1の突起部44と同様の位置に、第2の突起部54を配置する必要が生じる。
【0091】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
10…プリフォーム、11…第1層、11a…凹部、12…第2層、16…開口部、17…凹部、18…薄膜部、19,26…係止部、20…剥離容器、24…空気導入孔、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、33…第2射出成形部、35…ブロー成形部、38…第1射出装置、39…第2射出装置、40B,50B…キャビティ型、44…第1の突起部、54…第2の突起部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10