(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051138
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】位置検出装置及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/046 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G06F3/046 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029680
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2020563860の分割
【原出願日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2019000251
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 僚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
(57)【要約】
【課題】第1の位置指示器のローカルスキャンに移行した後であっても、第2の位置指示器の位置を検出できるようにする。
【解決手段】位置検出装置1は、センサ10と、位置指示器2bによって指示された第1の位置及び位置指示器2aによって指示された第2の位置をセンサ10を介して検出するセンサコントローラ20とを備える。センサコントローラ20は、第1の位置又は第2の位置を検出したことにより検出済みの位置の近傍領域での位置検出であるローカルスキャンに移行した場合に、該ローカルスキャンで使用する周波数が第2の周波数であるか否かを判定し、該ローカルスキャンで使用する周波数が第2の周波数でないと判定した場合、第2の周波数による位置検出を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
第1の周波数を用いる第1の位置指示器によって指示される第1の位置、及び、第2の周波数を用いる第2の位置指示器によって指示される第2の位置を、前記センサを介して検出するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記第1の位置又は前記第2の位置を検出したことにより検出済みの位置の近傍領域での位置検出であるローカルスキャンに移行した場合に、該ローカルスキャンで使用する周波数が前記第2の周波数であるか否かを判定し、
前記ローカルスキャンで使用する周波数が前記第2の周波数でないと判定した場合、前記第2の周波数による位置検出を行う、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第2の周波数による位置検出は、前記センサの全体をスキャンするグローバルスキャンの一部である部分グローバルスキャンであり、
前記コントローラは、前記ローカルスキャンと前記部分グローバルスキャンとを交互に行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記部分グローバルスキャンの実行により前記第2の位置指示器を検出した場合に、前記グローバルスキャンを実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記グローバルスキャンを実行した場合に、前記部分グローバルスキャンの実行により前記第2の位置指示器を検出したことに応じて該グローバルスキャンを実行したか否かを判定し、
前記部分グローバルスキャンの実行により前記第2の位置指示器を検出したことに応じて該グローバルスキャンを実行したと判定した場合、前記グローバルスキャンが前記第2の周波数で行われていない場合の前記ローカルスキャンへの移行を制限する、
ことを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
第1の周波数を用いる第1の位置指示器によって指示された第1の位置,及び第2の周波数を用いる第2の位置指示器によって指示された第2の位置を、センサを介して検出する位置検出方法であって、
前記第1の位置又は前記第2の位置を検出したことにより検出済みの位置の近傍領域での位置検出であるローカルスキャンに移行した場合に、該ローカルスキャンで使用する周波数が前記第2の周波数であるか否かを判定し、
前記ローカルスキャンで使用する周波数が前記第2の周波数でないと判定した場合、前記ローカルスキャンと前記第2の周波数による位置検出とを交互に行う、
ことを特徴とする位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置検出装置及び位置検出方法に関し、特に、複数の位置指示器それぞれで指示される位置を適切に検出する位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット端末やスマートフォンなどの電子機器の入力デバイスとして、電磁誘導方式の入力装置が知られている。この種の入力装置は、例えばペン型に形成された位置指示器と、平板状の入力面を有する位置検出装置とを含んで構成される。ユーザは、位置指示器を手に持ち、あたかも紙面に文字や絵を書くかのように入力面上で位置指示器を摺動させることにより、入力操作を行う。
【0003】
位置指示器は、インダクタ及びキャパシタを含む共振回路を有して構成される。また、位置検出装置は、入力面内に配設された複数のループコイルを有して構成される。位置検出装置による位置指示器の位置検出について簡単に説明すると、まず初めに、位置検出装置がいずれかのループコイルから磁界を発生させる。すると、位置指示器のインダクタに誘導電力が発生し、キャパシタが充電される。その後、位置検出装置が磁界を消失させると、位置指示器から、キャパシタに充電された電力を利用して反射信号が送信される。位置検出装置は、こうして送信された反射信号の各ループコイルでの受信強度を判定することにより、入力面内における位置指示器の位置を検出する。
【0004】
特許文献1には、両端に共振回路を設けた位置指示器が開示されている。両端の共振回路は、位置検出装置からの信号に対する反射信号の位相が互いに異なるように構成されており、したがって、位置検出装置はこれらを区別して検出することができる。その結果、例えば一端をペンとして取り扱い、他端を消しゴムとして取り扱うことができるので、ユーザは、あたかも消しゴム付きの鉛筆を使っているような感覚で位置指示器を用いることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常の文房具においては、鉛筆の後端に設けられた消しゴムだけでなく、鉛筆とは別体の消しゴムも多く用いられる。そこで本願の発明者は、位置指示器についても、消しゴム機能を有する位置指示器とペン機能を有する位置指示器とを別のデバイスにすることを検討している。この場合、それぞれの位置指示器によって指示される位置を区別して検出するために、一例として、次のような位置検出方法の採用が考えられる。各位置指示器に異なる共振周波数を割り当て、初めにそれぞれの共振周波数を用いたグローバルスキャン(センサ全体のスキャン)を時分割で行い、グローバルスキャンによっていずれかの位置指示器によって指示された位置が検出された場合に、その位置指示器によって指示された位置のローカルスキャン(センサのうち検出済みの位置の近傍領域のスキャン)に移行する、という位置検出方法の採用が考えられる。
【0007】
しかしながら、このような位置検出方法を採用する場合、ある位置指示器によって指示された位置を検出した後には、他の位置指示器によって指示された位置の検出が行えなくなってしまう。したがって、ある位置指示器によって指示された位置が検出された場合であっても、他の位置指示器によって指示された位置の検出を行えるようにすることが求められていた。一例として、消しゴム機能を有する位置指示器によって指示された位置が検出された場合であっても、ペン機能を有する位置指示器が接近した場合にはペンである位置指示器によって指示された位置の検出を行えるようにすることが求められていた。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、複数の位置指示器それぞれで指示される位置を状況に応じて適切に検出することのできる位置検出装置及び位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の位置検出装置は、センサと、第1の位置指示器によって指示された第1の位置及び第2の位置指示器によって指示された第2の位置を前記センサを介して検出するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記第1の位置及び前記第2の位置のいずれも検出していない状態から前記第1の位置を検出した状態に移行した後には、前記第1の位置の検出を継続しつつ前記第2の位置の検出を停止する一方、前記第1の位置及び前記第2の位置のいずれも検出していない状態から前記第2の位置を検出した状態に移行した後には、前記第2の位置の検出及び前記第1の位置の検出の両方を継続する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の位置検出方法は、第1の位置指示器によって指示された第1の位置及び第2の位置指示器によって指示された第2の位置をセンサを介して検出する位置検出方法であって、前記第1の位置及び前記第2の位置のいずれも検出していない状態から前記第1の位置を検出した状態に移行した後に、前記第1の位置の検出を継続しつつ前記第2の位置の検出を停止する一方、前記第1の位置及び前記第2の位置のいずれも検出していない状態から前記第2の位置を検出した状態に移行した後に、前記第2の位置の検出及び前記第1の位置の検出の両方を継続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の位置指示器それぞれで指示される位置を状況に応じて適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による位置検出装置1及び位置指示器2a,2bの外観を示す図である。
【
図2】位置指示器2、センサ10、及びセンサコントローラ20の内部構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による制御部28が実施する位置検出方法の概要を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態による位置検出方法を示す処理フロー図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態による位置検出方法を示す処理フロー図である。
【
図6】(a)は、
図4、
図11、
図13のステップS2で実行されるY軸側グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図であり、(b)は、
図4、
図11、
図13のステップS7で実行されるY軸側グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。
【
図7】(a)は、
図5、
図12、
図13のステップS11で実行されるローカルスキャンの詳細を示す処理フロー図であり、(b)は、
図5のステップS43及び
図12のステップS64で実行される部分グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態による位置検出装置1及び位置指示器2a~2cの外観を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態による制御部28が実施する位置検出方法の概要を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態による位置検出方法を示す処理フロー図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態による位置検出方法を示す処理フロー図である。
【
図13】本発明の位置検出方法の具体例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態による位置検出装置1及び位置指示器2a,2bの外観を示す図である。位置検出装置1は、入力面10aを有するタブレット端末などのコンピュータであり、
図1に示すように、センサ10、センサコントローラ20、及びホストプロセッサ40を有して構成される。このうちセンサ10及びセンサコントローラ20については、後ほど詳しく説明する。ホストプロセッサ40は、コンピュータである位置検出装置1の中央処理装置であり、センサコントローラ20から入力される座標に基づいてストロークデータを生成する処理、生成したストロークデータを記憶装置に格納する処理、生成したストロークデータを他のコンピュータに向けて送信する処理、生成したストロークデータをレンダリングして表示装置に表示する処理などを行う。
【0015】
位置指示器2a,2bはそれぞれ、位置検出装置1に対する入力装置として機能する装置である。
図1に示すように、ペン機能を有する位置指示器2aはペン型、消しゴム機能を有する位置指示器2bは消しゴム型の形状に形成されている。詳しくは後述するが、位置検出装置1は、これらを共振周波数の違いによって区別して検出することができ、上述したストロークデータを生成する際、位置指示器2aをペンとして取り扱い、位置指示器2bを消しゴムとして取り扱う。以下の説明では、位置指示器2a,2b(及び、第2の実施の形態で説明する位置指示器2c)をまとめて位置指示器2と称する場合がある。
【0016】
図2は、位置指示器2、センサ10、及びセンサコントローラ20の内部構成を示す図である。まず位置指示器2に着目すると、位置指示器2は、インダクタ3及びキャパシタ4を含んでなるLC共振回路を有して構成される。インダクタ3のインダクタンス及びキャパシタ4のキャパシタンスは、このLC共振回路の共振周波数が位置指示器2の種類ごとに異なることとなるように設定される。インダクタ3は、センサ10から供給される磁界に応じて誘導電圧を生成し、キャパシタ4を充電する役割を果たす。また、センサ10からの磁界の供給が止まった後のインダクタ3は、キャパシタ4に蓄積した電荷を利用して、位置検出装置1に対して反射信号を送信する役割を果たす。
【0017】
センサ10は、
図2に示すように、長方形の平面領域内に複数のループコイルLCが配置された構成を有している。各ループコイルLCの一端は接地され、他端はセンサコントローラ20に接続される。
図3では、複数のループコイルLCの例として、図示したy方向に延在するm本のX軸側ループコイルX
1~X
mと、y方向に直交するx方向に延在するn本のY軸側ループコイルY
1~Y
nを図示している。m,nは、それぞれ例えば40である。
【0018】
センサコントローラ20は、位置指示器2aによって指示された入力面10a上の位置(第1の位置)及び位置指示器2bによって指示された入力面10a上の位置(第2の位置)をセンサ10を介して検出する。センサコントローラ20は、
図2に示すように、選択回路21と、スイッチ回路22と、アンプ23と、検波回路24と、ローパスフィルタ(LPF)25と、サンプルホールド回路(S/H)26と、アナログデジタル変換回路(A/D)27と、制御部28と、発振器29と、電流ドライバ30とを有して構成される。
【0019】
選択回路21には各ループコイルLCの他端が接続されている。選択回路21は、制御部28からの制御に応じて複数のループコイルLCの中の1本又は複数本を選択し、選択したものをスイッチ回路22に接続する役割を果たす。
【0020】
スイッチ回路22は、1つの共通端子と2つの選択端子とを有するスイッチであり、共通端子に接続される選択端子を制御部28からの制御に応じて切り替え可能に構成される。スイッチ回路22の共通端子には選択回路21が、一方の選択端子にはアンプ23の入力端が、他方の選択端子には電流ドライバ30の出力端がそれぞれ接続される。
【0021】
アンプ23は、スイッチ回路22を介して選択回路21から供給される電圧信号を増幅し、検波回路24に出力する回路である。検波回路24は、アンプ23から出力される電圧信号に対して包絡線検波を行うことによって包絡線信号を生成し、ローパスフィルタ25に出力する回路である。ローパスフィルタ25は、検波回路24が生成した包絡線信号から高周波成分を除去する役割を果たす。サンプルホールド回路26は、ローパスフィルタ25によって高周波成分が除去された上記包絡線信号のサンプル動作及びホールド動作を、所定時間間隔で行うよう構成される。アナログデジタル変換回路27は、サンプルホールド回路26によりホールドされている信号にアナログデジタル変換を施すことによってデジタル信号を生成し、制御部28に出力する。
【0022】
制御部28は、記憶装置に記憶されるプログラムに従って動作するプロセッサであり、
図1に示したホストプロセッサ40に接続される。制御部28は、選択回路21、スイッチ回路22、サンプルホールド回路26、アナログデジタル変換回路27、及び発振器29の制御を行う他、アナログデジタル変換回路27から供給されるデジタル信号に基づいて位置指示器2の位置を検出し、検出した位置を示す座標を位置指示器2の種類と対応付けてホストプロセッサ40に出力する処理などを実行するように構成される。
【0023】
図3は、本実施の形態による制御部28が実施する位置検出方法の概要を示す図である。同図(a)は、各位置指示器2によって指示される位置を検出するためにセンサ10の全体をスキャンするグローバルスキャンを行うグローバルスキャンモードを示し、同図(b)は、センサ10のうち検出済みの位置の近傍領域をスキャンするローカルスキャンを行うローカルスキャンモードを示している。詳しくは後述するが、同図(b)には、消しゴム機能を有する位置指示器2bによって指示される位置の検出についてのローカルスキャンモードを示している。また、グローバルスキャンモードとローカルスキャンモードの間には、グローバルスキャンモードで検出された位置を確定するための中間モードが存在する。
【0024】
グローバルスキャンモードにエントリした後、制御部28は、時間TGごとに1回の頻度で、各位置指示器2のグローバルスキャンを時分割で実行するように構成される。
図3に示した「PGS」は、ペン(Pen)機能を有する位置指示器2aのグローバルスキャン(GlobalScan)を表し、「EGS」は、消しゴム(Eraser)機能を有する位置指示器2aのグローバルスキャン(GlobalScan)を表している。
【0025】
時間TGは、例えば0.125秒(8Hz)に設定される。制御部28は、個々の位置指示器2のグローバルスキャンを、Y軸側ループコイルLCをスキャン対象とするY軸側グローバルスキャンと、X軸側ループコイルLCをスキャン対象とするX軸側グローバルスキャンとに分割し、グローバルスキャンモードにおいては、各位置指示器2のY軸側グローバルスキャンを時分割で繰り返し実行するよう構成される。なお、
図3において「PGS」「EGS」それぞれの末尾に付した符号「y」は、Y軸側グローバルスキャンであることを表している。制御部28は、これらのY軸側グローバルスキャンでいずれかの位置指示器2が検出された場合に、その位置指示器2についての中間モードに移行するよう構成される。
【0026】
本実施の形態によるグローバルスキャンモードにおいては、Y軸側グローバルスキャンを行う位置指示器の順序が予め決められており、他のモードからグローバルスキャンモードにエントリした場合、この予め決められた順序に従って各位置指示器のY軸側グローバルスキャンが開始される。以下の説明では、グローバルスキャンモードにおいてY軸側グローバルスキャンが相対的に先に行われる位置指示器を「優先位置指示器」と称し、相対的に後に行われる位置指示器を「非優先位置指示器」と称する。
図3に示すように、位置指示器2a、位置指示器2bの順でY軸側グローバルスキャンが実行される。したがって、本実施の形態においては、ペン機能を有する位置指示器2aが優先位置指示器であり、消しゴム機能を有する位置指示器2bが非優先位置指示器である。
【0027】
中間モードについて説明する。中間モードにエントリすると、制御部28は、グローバルスキャンモードで検出された位置指示器2についてのX軸側グローバルスキャンと、検出を確定するための判定処理とを実行するよう構成される。判定処理は、Y軸側グローバルスキャン及びX軸側グローバルスキャンの検出結果が所定の検出条件を満たしているか否かを判定する処理である。詳しくは後述するが、所定の検出条件には、例えば、Y軸側グローバルスキャン及びX軸側グローバルスキャンで検出された反射信号の受信強度分布が所定の形状になっていること、などが含まれる。判定処理の結果として位置の検出が確定した場合、制御部28は、位置の検出が確定した位置指示器2についてのローカルスキャンモードに移行する。一方、確定しなかった場合、制御部28はグローバルスキャンモードに戻る。
【0028】
ローカルスキャンモードにエントリした後、制御部28は、
図3(b)に示すように、対象の位置指示器についてのローカルスキャンを時間TLごとに1回の頻度で行うよう構成される。TLは例えば約0.0075秒(133Hz)であり、上述した時間TGに比べて小さい値に設定される。これは、上述したストロークデータを高い精度で生成できるようにするためである。なお、
図3に示した「ELS」は、消しゴム(Eraser)機能を有する位置指示器2bのローカルスキャン(LocalScan)を表している。また、「ELS」の末尾に付した符号「x」「y」はそれぞれ、X軸側ループコイルLCのスキャンと、Y軸側ループコイルLCのスキャンとを表している。
図3(b)に示すように、制御部28は、1回のローカルスキャンにおいて、X軸側のループコイルLCのスキャンと、Y軸側のループコイルLCのスキャンとを順次実施するように構成される。
【0029】
制御部28は、対象の位置指示器について時間TLごとに1回の頻度でローカルスキャンを行う。一方、制御部28は、他の位置指示器2についてグローバルスキャンを行う。本実施形態の一例として、他の位置指示器2について行われるグローバルスキャンは分割して実行される。すなわち、他の位置指示器2の部分的なグローバルスキャン(以下、部分グローバルスキャンと称す)を実行するように構成される。部分グローバルスキャンは、対応するグローバルスキャンの一部であり、例えば、2~3本のループコイルLCについてスキャンを行うことをいう。なお、部分グローバルスキャンでスキャンの対象とするループコイルLCには、Y軸側ループコイルLC及びX軸側ループコイルLCの一方又は両方が含まれていてよい。部分グローバルスキャンにおいてスキャンできるループコイルLCの具体的な本数は、一例として、部分グローバルスキャンの時間長を考慮して決定される。
【0030】
本実施の形態において、制御部28は、ペン機能を有する位置指示器2aを優先的に取り扱うため、消しゴム機能を有する位置指示器2bについてのローカルスキャンモードにエントリしている場合に、位置指示器2bのローカルスキャンと、位置指示器2aの部分グローバルスキャンとを交互に行うように構成される。なお、
図3に示した「PGSp」は、ペン機能を有する位置指示器2aの部分グローバルスキャンを示している。これにより制御部28は、位置指示器2aの位置及び位置指示器2bの位置のいずれも検出していない状態において位置指示器2bの位置を検出した後、位置指示器2aの位置及び位置指示器2bの位置の検出の両方を継続することになる。
【0031】
そして、本実施の形態において、制御部28は、ペン機能を有する位置指示器2aについてのローカルスキャンモードにエントリしている場合には、消しゴム機能を有する位置指示器2bの部分グローバルスキャンを実施しない。つまり、制御部28は、位置指示器2aの位置及び位置指示器2bの位置のいずれも検出していない状態から位置指示器2aの位置を検出した状態に移行した後には、位置指示器2aの位置の検出を継続する一方で、位置指示器2bの位置の検出を停止するよう構成される。これは、ペン機能を有する位置指示器2aによって位置を入力中に消しゴム機能を有する位置指示器2bによって位置を入力しない、というユーザの実情の一例に基づく構成である。ユーザの実情によっては、位置指示器2aについてのローカルスキャンモードにエントリしている場合に位置指示器2bの部分グローバルスキャンを行うこととしてもよいのは、勿論である。
【0032】
部分グローバルスキャンにおいて位置指示器2aが検出された場合、制御部28は、グローバルスキャンモードに戻る。グローバルスキャンでは位置指示器2aが検出されることになるので、グローバルスキャンの終了後、制御部28は位置指示器2aについてのローカルスキャンモードに遷移し、位置指示器2aの位置検出を継続して行うことになる。
【0033】
図2に戻る。発振器29は、任意の周波数の交流信号(以下、「検出用信号」という)を生成可能に構成された回路である。発振器29が生成する検出用信号の周波数(以下、「検出用周波数」という)は、制御部28によって制御される。電流ドライバ30は、発振器29から出力される検出用信号を電流信号に変換し、スイッチ回路22に供給する。
【0034】
以下、制御部28による位置指示器2によって指示された位置の検出の具体的方法について、制御部28によって実行される処理フローを参照しながら、より詳しく説明する。
【0035】
図13は、制御部28によって実行される位置検出方法の具体例を示す処理フロー図である。
【0036】
図13に示すように、制御部28は、まず初めにグローバルスキャンモードにエントリする(ステップS1)。グローバルスキャンモードにエントリする際、制御部28は、検出用周波数の初期化を行う。こうして初期化された検出用周波数は、本実施の形態においては位置指示器2aの共振周波数となる(
図3(a)を参照)。
【0037】
グローバルスキャンモードにエントリした後、制御部28は、Y軸側グローバルスキャンを行う(ステップS2)。
【0038】
図6(a)は、ステップS2で実行されるY軸側グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。制御部28は、Y軸側の各ループコイルLCを1本ずつ選択しつつ(具体的には、
図2に示した選択回路21によりスイッチ回路22の共通端子に接続しつつ)、ステップS21,S22の処理を繰り返すよう構成される(ステップS20)。
【0039】
ステップS21は、
図2に示したスイッチ回路22を発振器29側に接続することにより、現在の検出用周波数を用いて所定時間にわたり、現在のループコイルLC(Y軸側のループコイルLC)から所定の検出用信号を送信する処理である。もし現在の検出用周波数を共振周波数とする位置指示器2が現在のループコイルLCの近傍に存在していれば、ステップS21の間に、
図2に示したキャパシタ4が充電されることになる。
【0040】
ステップS22は、検出用信号の送信完了後、
図2に示したスイッチ回路22を検波回路24側に接続することにより、現在のループコイルLC(Y軸側のループコイルLC)のスキャンを行う処理である。ここでいうスキャンは、位置指示器2が送信した反射信号の受信強度(共振レベル)を検出する処理である。制御部28は、Y軸側のループコイルLCごとに、検出した共振レベルを一時的に記憶する。
【0041】
図13に戻る。Y軸側グローバルスキャンを終了すると、制御部28は、一時的に記憶しておいた複数の共振レベルの中に閾値以上のものがあったか否かを判定する(ステップS3)。その結果、制御部28が「なかった」と判定した場合には、検出用周波数を次のもの(現在の検出用周波数が位置指示器2a用の共振周波数であれば、位置指示器2b用の共振周波数。現在の検出用周波数が位置指示器2b用の共振周波数であれば、位置指示器2a用の共振周波数。)に切り替え(ステップS4)、処理をステップS2に戻す。このステップS4を設けていることにより、グローバルスキャンモードにおいては、Y軸側グローバルスキャンによる位置指示器2aの位置の検出と、Y軸側グローバルスキャンによる位置指示器2bの位置の検出とが交互に繰り返されることになる。
【0042】
一方、ステップS3で制御部28が「あった」と判定した場合、制御部28は、中間モードにエントリする(ステップS5)とともに、ステップS2で一時的に記憶しておいた複数の共振レベルに基づき、位置指示器2が最も接近しているY軸側ループコイルLC(以下、「最近接Y軸側ループコイルLC」という)を決定する(ステップS6)。そして、位置指示器2のX軸側グローバルスキャンを行う(ステップS7)。
【0043】
図6(b)は、ステップS7で実行されるX軸側グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。制御部28は、X軸側の各ループコイルLCを1本ずつ選択しつつ(具体的には、
図2に示した選択回路21によりスイッチ回路22の共通端子に接続しつつ)、ステップS26,S27の処理を繰り返すよう構成される(ステップS25)。
【0044】
ステップS26は、
図2に示したスイッチ回路22を発振器29側に接続することにより、現在の検出用周波数を用いて所定時間にわたり、最近接Y軸側ループコイルLCから所定の検出用信号を送信する処理である。この時点で、現在の検出用周波数を共振周波数とする位置指示器2は最近接Y軸側ループコイルLCの近傍に存在する蓋然性が高い。したがって、ステップS26の間に、そのような位置指示器2のキャパシタ4が充電されることになる。
【0045】
ステップS27は、検出用信号の送信完了後、
図2に示したスイッチ回路22を検波回路24側に接続することにより、現在のループコイルLC(X軸側のループコイルLC)のスキャンを行う処理である。ここでいうスキャンも、位置指示器2が送信した反射信号の受信強度(共振レベル)を検出する処理である。制御部28は、X軸側のループコイルLCごとに、検出した共振レベルを一時的に記憶する。
【0046】
図13に戻る。X軸側グローバルスキャンを終了すると、制御部28は、ステップS2,S7の実行結果を受けて位置の検出を確定するための判定処理を行う(ステップS8)。この判定処理には、ステップS3と同様、X軸側の各ループコイルLCについて一時的に記憶しておいた複数の共振レベルの中に閾値以上のものがあったか否かを判定する処理の他、共振レベルの分布が所定の形状(例えば、後述する
図8に示すような山なりの形状)になっているか否か、電磁共振の位相差がサイドローブのものになっていないか、サイドローブとメインピークの共振レベルの比率が正常値か、などが含まれる。ローカルスキャンを一度試行し、その結果として位置指示器2が検出されるか、という点も判定の対象としてもよい。
【0047】
図8は、ステップS2,S7で検出される共振レベルを模式的に表した図である。同図の横軸はx軸又はy軸であり、縦軸は共振レベルである。同図に示すように、ステップS2,S7で検出される共振レベルは、図示した位置Pmに現れている相対的に大きなピーク(メインピーク)と、その両側(図示した位置Ps)に現れている相対的に小さなピーク(サイドローブ)とを有して構成される。サイドローブは、センサ10から生ずる磁力線が輪形となっているために生ずるもので、サイドローブの位置に位置指示器2は存在しない。
【0048】
図13に戻り、ステップS8の処理は要するに、
図8のような波形が正しく得られていること、及び、検出しようとしている位置が位置Pmであること、を確認する処理となっている。ステップS8ではまた、位置Pmが位置指示器2の位置として決定される。
【0049】
ステップS8において判定処理を実施した結果、位置指示器2の検出が確定しなかった場合、制御部28は処理をステップS1に戻し、グローバルスキャンモードに再エントリする。一方、位置指示器2の検出が確定した場合、制御部28はローカルスキャンモードにエントリし(ステップS10)、位置指示器2のローカルスキャンを開始する(ステップS11)。この場合のローカルスキャンで使用する共振周波数(指定周波数)は、現在の検出用周波数となる。
【0050】
図7(a)は、ステップS11で実行されるローカルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。制御部28は、対象の位置指示器2の位置(中間モードからの移行直後にはステップS8で決定されたもの。2回目以降のローカルスキャンでは直前のローカルスキャンによって決定されたもの)から近い順に所定本数(例えば3本又は4本)のY軸側ループコイルLCを1本ずつ選択しつつ(具体的には、
図2に示した選択回路21によりスイッチ回路22の共通端子に接続しつつ)、ステップS31,S32の処理を繰り返すよう構成される(ステップS30)。
【0051】
ステップS31は、
図2に示したスイッチ回路22を発振器29側に接続することにより、指定周波数を用いて所定時間にわたり、現在のループコイルLC(Y軸側ループコイルLC)から所定の検出用信号を送信する処理である。ステップS32は、検出用信号の送信完了後、
図2に示したスイッチ回路22を検波回路24側に接続することにより、現在のループコイルLCのスキャンを行う処理である。制御部28は、選択したループコイルLCごとに、検出した共振レベルを一時的に記憶する。
【0052】
続いて制御部28は、対象の位置指示器2の位置から近い順に所定本数(例えば3本又は4本)のX軸側ループコイルLCを1本ずつ選択しつつ(具体的には、
図2に示した選択回路21によりスイッチ回路22の共通端子に接続しつつ)、ステップS34,S35の処理を繰り返すよう構成される(ステップS33)。
【0053】
ステップS34は、
図2に示したスイッチ回路22を発振器29側に接続することにより、指定周波数を用いて所定時間にわたり、現在のループコイルLC(X軸側ループコイルLC)から所定の検出用信号を送信する処理である。ステップS35は、検出用信号の送信完了後、
図2に示したスイッチ回路22を検波回路24側に接続することにより、現在のループコイルLCのスキャンを行う処理である。制御部28は、選択したループコイルLCごとに、検出した共振レベルを一時的に記憶する。
【0054】
なお、ステップS34では現在のループコイルLCから所定の検出用信号を送信することとしているが、グローバルスキャンの場合と同様、ステップS30の結果に基づいて位置指示器2が最も接近している最近接Y軸側ループコイルLCを決定し、最近接Y軸側ループコイルLCから検出用信号を送信することとしてもよい。また、
図7(a)にはステップS30~S32の後にステップS33~S35を実行する例を示しているが、この順序は逆であってもよい。
【0055】
図13に戻る。制御部28は、ステップS11の処理が終了した後、反射信号が失われたか否かを判定する(ステップS12)。反射信号が失われた状態とは、各ループコイルをスキャンした結果、十分な共振レベルが検出できなかった場合を指し、例えば、対象の位置指示器2が入力面10aから離れた場合が相当する。この場合、制御部28は処理をステップS1に戻し、グローバルスキャンモードに再エントリする。一方、ステップS12で反射信号が失われていないと判定した場合、制御部28は、ステップS11で一時的に記憶した複数の共振レベルに基づいて位置指示器2の位置を決定し、決定した位置を示す座標を
図1に示したホストプロセッサ40に供給する(ステップS13)。その後、処理をステップS11に戻し、再度ローカルスキャンを実行する。
【0056】
ところで、上述した位置検出方法では、以下に説明する2つの状態になることがある。以下、それぞれの状態について説明する。
【0057】
1つ目の状態は、消しゴム機能を有する位置指示器2bについてのローカルスキャンモードに移行した後には、ペン機能を有する位置指示器2aの検出が行えなくなってしまうというものである。一例として、ユーザが消しゴム機能を有する位置指示器2bを入力面10a上に放置してペン機能を有する位置指示器2aによる入力を行う状態があり得る。そこで、この状態において、消しゴム機能を有する位置指示器2bについてのローカルスキャンモードに移行した後においても、ペン機能を有する位置指示器2aの検出を行えるようにする必要がある。
【0058】
2つ目の状態は、優先位置指示器である位置指示器2aについて、ステップS9まで処理が進むけれども、そこで否定判定となってしまってローカルスキャンに進めない、という状態が継続している場合に、位置指示器2aがグローバルスキャンモードに再エントリした後、優先位置指示器である位置指示器2aが検出されるので、非優先位置指示器のY軸グローバルスキャンが行われず、結果、非優先位置指示器である位置指示器2bを検出できなくなってしまうというものである。この状態は、ステップS9で否定されるたびに、ステップS1で検出用周波数が初期化されてしまうために生ずる。例えば、ペン機能を有する位置指示器2aが横倒しの状態で入力面10a上に放置されており、ステップS8の判定処理において正しい波形が得られない場合などに発生し得る状態である。したがって、グローバルスキャンモード及び中間モードを採用することによって迅速なグローバルスキャンを実現しつつも、非優先位置指示器である位置指示器2bが検出できなくなってしまうことを回避できるようにする必要がある。
【0059】
図4及び
図5は、上述にて説明した状態になることを回避するために制御部28によって実行される位置検出方法を示す処理フロー図である。以下、これらの図を参照しながら、本実施の形態による制御部28が行う位置検出の方法について、詳細に説明する。
【0060】
図4及び
図5に示す方法は、ステップS1をステップS1a,S1bに分割した点、ステップS9の判定結果が否定的なものとなった場合にステップS1ではなくステップS40に移行することとした点と、ステップS13の後にステップS41~S44を実行することとした点とで、
図13に示した方法と相違する。以下、これらの相違点に着目して説明する。
【0061】
制御部28は、
図4に示すように、ステップS1をステップS1a,S1bに分けて実行する。ステップS1aは検出用周波数を初期化する処理であり、ステップS1bはグローバルスキャンモードにエントリする処理である。
【0062】
また、制御部28は、
図4に示すように、ステップS9の判定結果が否定的なものとなった場合に、ステップS1ではなくステップS40に移行する。ステップS40は、ステップS4と同じく、検出用周波数を次のものに切り替える処理である。ステップS40を実行した後、制御部28は、ステップS1bを実行する。これにより制御部28は、検出用周波数を初期化することなく、グローバルスキャンモードに再エントリすることになる。したがって、ステップS9で位置指示器2aの位置が確定しなかったことを受けてグローバルスキャンモードに移行する場合、制御部28は、位置指示器2bのY軸側グローバルスキャンを先に実行することになるので、グローバルスキャンモード及び中間モードを採用することによって迅速なグローバルスキャンを実現しつつも、非優先位置指示器である位置指示器2bが検出できなくなってしまうことを回避できるようになる。
【0063】
制御部28はさらに、
図5に示すように、ステップS13の後にステップS41~S44を実行する。詳しく説明すると、制御部28はまず、現在の検出用周波数が消しゴム機能を有する位置指示器2bの共振周波数であるか否かを判定する(ステップS41)。その結果、消しゴム機能を有する位置指示器2bの共振周波数でないと判定した場合、制御部28は、処理をステップS11に戻し、位置指示器2aのローカルスキャンを続行する。一方、消しゴム機能を有する位置指示器2bの共振周波数であると判定した場合、制御部28は、上述した部分グローバルスキャンで使用するループコイルLC(部分グローバルスキャン用コイル)を選択した後(ステップS42)、位置指示器2aの部分グローバルスキャンを実行する(ステップS43)。ステップS42においては、例えば、Y軸側及びX軸側の一方又は両方を含む複数のループコイルLCを順に選択していくこととしてもよいし、その他の順序で選択することとしてもよい。ステップS43の部分グローバルスキャンで使用する共振周波数(指定周波数)は、位置指示器2aの共振周波数(ペン用周波数)となる。
【0064】
図7(b)は、制御部28がステップS43で実行する部分グローバルスキャンの詳細を示す処理フロー図である。同図に示すように、制御部28は、部分グローバルスキャン用のループコイルLC(
図5のステップS42で選択されたもの)を1本ずつ選択しつつ(具体的には、
図2に示した選択回路21によりスイッチ回路22の共通端子に接続しつつ)、ステップS51,S52の処理を繰り返すよう構成される(ステップS50)。
【0065】
ステップS51は、
図2に示したスイッチ回路22を発振器29側に接続することにより、指定周波数を用いて所定時間にわたり、現在のループコイルLCから所定の検出用信号を送信する処理である。ステップS52は、検出用信号の送信完了後、
図2に示したスイッチ回路22を検波回路24側に接続することにより、現在のループコイルLCのスキャンを行う処理である。制御部28は、選択したループコイルLCごとに、検出した共振レベルを一時的に記憶する。
【0066】
図5に戻る。部分グローバルスキャンを実行した後、制御部28は、位置指示器2aからの反射信号の検出の有無に基づき、位置指示器2aを検出したか否かを判定する(ステップS44)。制御部28が「検出した」と判定した場合、処理をステップS1aに戻すことにより、位置指示器2bのローカルスキャンを停止するとともに、グローバルスキャンモードに再エントリする。これにより、Y軸側グローバルスキャンからやり直しになるが、位置指示器2aからの反射信号が検出されている状態なので、位置指示器2aについてのローカルスキャンモードに移行し、ユーザはペン機能を有する位置指示器2aによる入力が行えるようになる。一方、ステップS44で制御部28が「検出しなかった」と判定した場合、処理をステップS11に戻す。これにより、位置指示器2bのローカルスキャンモードが継続するので、ユーザは消しゴム機能を有する位置指示器2bによる入力を継続することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出装置1及び位置検出方法によれば、位置指示器2bによって指示される位置を検出した後にも位置指示器2aによって指示される位置の検出を継続するので、位置指示器2bによって指示される位置を検出とともに位置指示器2aによって指示される検出を行うことが可能になる。したがってユーザは、入力面10a上から消しゴム機能を有する位置指示器2bを移動させることなく、ペン機能を有する位置指示器2aによる入力を行うことが可能になる。
【0068】
なお、本実施の形態では位置指示器2bについてのローカルスキャンモードにおいて位置指示器2aの部分グローバルスキャンを行う場合を説明したが、位置指示器2aについてのローカルスキャンモードにおいて位置指示器2bの部分グローバルスキャンを行うこととしてもよいのは勿論である。こうすることでユーザは、入力面10a上からペン機能を有する位置指示器2aを移動させることなく、消しゴム機能を有する位置指示器2bによる入力を行うことが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態による位置検出装置1及び位置検出方法によれば、X軸側グローバルスキャンの終了後の判定処理において位置指示器2aの位置の検出が確定しなかったことを受けてグローバルスキャンモードに移行した場合、位置指示器2bのY軸側グローバルスキャンを先に実行するので、グローバルスキャンモード及び中間モードを設けることによって迅速なグローバルスキャンを実現しつつも、非優先位置指示器である位置指示器2bが検出できなくなってしまうことの回避が可能になる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、位置指示器2bについてのローカルスキャンモードに移行した後においても位置指示器2aの検出を行えるようにするための構成(例えばステップS41~S44)と、グローバルスキャンモード及び中間モードを設けることによって迅速なグローバルスキャンを実現しつつも、非優先位置指示器である位置指示器2bが検出できなくなってしまうことを回避できるようにするための構成(例えばステップS1a,S1b,S40)との両方を具備する位置検出装置1を説明したが、本発明には、いずれか一方を具備する位置検出装置も含まれる。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態による位置検出装置1及び位置検出方法について説明する。
【0072】
図9は、本発明の第2の実施の形態による位置検出装置1及び位置指示器2a~2cの外観を示す図である。位置検出装置1の基本的な構成は第1の実施の形態による位置検出装置1と同じであるが、位置指示器2cの検出にも対応している点で、第1の実施の形態による位置検出装置1と相違している。位置指示器2cは、基本的な構造は位置指示器2aと同様であるが、サイドスイッチ5を有しており、このサイドスイッチ5が押下されている場合と押下されていない場合とで共振周波数が異なる点で、位置指示器2aと相違している。以下では、位置指示器2aをペン1(P1)と称し、サイドスイッチ5が押下されていない状態の位置指示器2cをペン2(P2)と称し、サイドスイッチ5が押下されている状態の位置指示器2cをペン3(P3)と称する場合がある。また、消しゴムである位置指示器2bを単に消しゴムと称する場合がある。
【0073】
図10は、本実施の形態による制御部28が実施する位置検出方法の概要を示す図である。同図(a)は、各位置指示器2の位置を検出するためにセンサ10の全体をスキャンするグローバルスキャンを行うグローバルスキャンモードを示し、同図(b)は、センサ10のうち検出済みの位置の近傍領域をスキャンするローカルスキャンを行うローカルスキャンモードを示している。詳しくは後述するが、同図(b)には、消しゴムである位置指示器2bについてのローカルスキャンモードを示している。また、
図10には示していないが、グローバルスキャンモードとローカルスキャンモードの間には、第1の実施の形態と同様に、グローバルスキャンモードで検出された位置を確定するための中間モードが存在する。
【0074】
図3に示した位置検出方法との違いの1つは、グローバルスキャンモードにエントリしている制御部28が4種類のY軸側グローバルスキャンを時分割で行うという点である。具体的には、ペン2(P2GSy)、ペン3(P3GSy)、消しゴム(EGSy)、ペン1(P1GSy)の順でY軸側グローバルスキャンが実行される。なお、4種類のY軸側グローバルスキャンを時分割で行うため、時間TGの時間長は、第1の実施の形態における時間TGの時間長に比べて2倍となっている。
【0075】
図10(b)に示すように、本実施の形態においても、消しゴムである位置指示器2bについてのローカルスキャンモードにおいては、位置指示器2bのローカルスキャンと、位置指示器2aの部分グローバルスキャン(第1の部分グローバルスキャン)とが交互に行われる。なお、
図10(b)に示した「P1GSp」は、ペン1の部分グローバルスキャンを示している。
【0076】
本実施の形態のポイントは、グローバルスキャンモードにおける位置指示器2aと位置指示器2bのY軸側グローバルスキャンの順序が第1の実施の形態とは逆になっている、という点である。つまり、本実施の形態においては、ローカルスキャンの対象となる消しゴムに対して、部分グローバルスキャンの対象となるペン1が相対的に非優先位置指示器となっている。このような第1の実施の形態との相違に起因し、本実施の形態においては、部分グローバルスキャンによりペン1を検出したとしても、その検出を確定するため、一旦グローバルスキャンモードに移行する必要がある。しかしながら、グローバルスキャンモードに移行した後、ペン1に対して相対的に優先される優先位置指示器である消しゴムが再度検出されてしまう。結果、部分グローバルスキャンにより非優先位置指示器であるペン1を検出したにも関わらず、ペン1についてのローカルスキャンモードに移行できない、という状態になる。したがって、部分グローバルスキャンによってペン1を検出した場合に、ペン1についてのローカルスキャンモードに移行できるようにする必要がある。
【0077】
図11及び
図12は、このような状態になることを回避するために制御部28によって実行される位置検出方法を示す処理フロー図である。以下、これらの図を参照しながら、本実施の形態による制御部28が行う位置検出の方法について、詳細に説明する。
【0078】
図11及び
図12に示す方法は、ステップS2とステップS3の間にステップS60~S62を挿入した点、及び、ステップS41~S44に代えてステップS63~S67を採用した点で、
図4及び
図5に示した方法と相違する。以下、これらの相違点に着目して説明する。
【0079】
初めに
図12を参照すると、制御部28は、ステップS13を実行した後、現在の検出用周波数がペン1用(すなわち、位置指示器2aの共振周波数)であるか否かを判定する(ステップS63)。その結果、ペン1用であると判定した場合、制御部28は、処理をステップS11に戻し、ペン1のローカルスキャンを続行する。一方、ペン1用でないと判定した場合、制御部28は、
図5に示したステップS42と同様にして部分グローバルスキャン用コイルを選択した後(ステップS64)、
図5に示したステップS43と同様の部分グローバルスキャンを実行する(ステップS65)。なお、ステップS65の部分グローバルスキャンで使用する共振周波数(指定周波数)は、ペン1の共振周波数(ペン1用周波数)となる。
【0080】
部分グローバルスキャンを実行した制御部28は、ペン1からの反射信号の検出の有無に基づき、ペン1を検出したか否かを判定する(ステップS66)。ここで「検出しなかった」と判定した制御部28は、処理をステップS11に戻す。これにより、消しゴムのローカルスキャンモードが継続するので、ユーザは消しゴムによる入力を継続することができる。一方、ステップS66で制御部28が「検出した」と判定した場合、ペン1検出フラグにTrueを設定する(ステップS67)。そして、処理をステップS1aに戻し、検出用周波数の初期化(ステップS1a)及びグローバルスキャンモードへの再エントリ(ステップS1b)を実行する。これにより、ペン2、ペン3、消しゴム、ペン1の順序で、ステップS2のY軸側グローバルスキャンが実行されることになる。
【0081】
ここで、
図11の処理において制御部28は、ステップS2の終了後に、ペン1検出用フラグがTrueであるか否かを判定する処理を行う(ステップS60)。また、ステップS60でTrueであると判定した場合、制御部28は、現在の検出用周波数がペン1用のものであるか否かを判定する処理をさらに行う(ステップS61)。ステップS61で否定的な判定結果を得た制御部28は、ステップS3をスキップし、ステップS4に処理を進める。その結果、ステップS8の判定処理を含む中間モードの各処理がスキップされるので、仮にステップS2においてペン2、ペン3、又は消しゴムの位置が検出されたとしても、これらの位置が最終的に検出されることはなく、次の位置指示器2についてのY軸側グローバルスキャンが行われることになる。そしてステップS61の判定結果は、ペン1についてのY軸側グローバルスキャンが行われた場合に肯定的なものとなるので、この場合にはステップS3が実行され、中間モードに進むことが可能になる。したがって、部分グローバルスキャンによりペン1を検出した場合に、ペン1についてのローカルスキャンモードに移行できるようにすることが可能になる。
【0082】
なお、ステップS60でFalseであると判定した制御部28は、ステップS61,S62の処理をスキップし、ステップS3に処理を進める。これにより、部分グローバルスキャンでペン1を検出していない場合には、位置指示器2の種類によらず、通常どおり中間モードに移行することが可能になる。また、ステップS61で肯定的な判定結果を得た制御部28は、ペン1検出フラグをFalseにする処理を行ったうえで(ステップS62)、ステップS3に処理を進める。こうすることで、次にペン1についての部分グローバルスキャンが実行されるまで、ステップS60の判定結果をFalseに固定することができる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出装置1及び位置検出方法によれば、部分グローバルスキャンを行った結果としてペン1の位置が検出されたことを受けてグローバルスキャンモードに移行した場合、ペン2、ペン3、又は消しゴムの位置を検出しないようにするので、ペン1が非優先位置指示器であるにも関わらず、ペン1の位置の検出を行うことができる。したがって、非優先位置指示器であるペン1を、部分グローバルスキャンによってローカルスキャンモードに移行させることが可能になる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0085】
例えば、本実施の形態では、ペン機能を有する位置指示器2aおよび消しゴム機能を有する位置指示器2bを用いて本発明に係わる位置検出方法の一例を説明したが、本発明は、互いに異なる機能を有する複数の位置指示器に広く適用可能である。
【0086】
また、本実施の形態では、ペン機能を有する位置指示器2aの形状をペン型、消しゴム機能を有する位置指示器2bの形状を消しゴム型として説明したが、ペン機能と消しゴム機能とを切り替えるスイッチを位置指示器に設け、このスイッチを制御することで同一形状の位置指示器においてペン機能および消しゴム機能を実現することが可能である。
【0087】
また、例えば、本実施の形態では、Y軸側グローバルスキャンの後にX軸側グローバルスキャンという順序でグローバルスキャンを実施し(
図4他を参照)、X軸側ローカルグローバルスキャンの後にY軸側ローカルスキャンという順序でローカルスキャンを実施したが(
図7(a)を参照)、本発明は、これらの順序の一方又は両方を入れ替えた場合にも好ましく適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 位置検出装置
2 位置指示器
2a 位置指示器(ペン1)
2b 位置指示器(消しゴム)
2c 位置指示器(ペン2、ペン3)
3 インダクタ
4 キャパシタ
5 サイドスイッチ
10 センサ
10a 入力面
20 センサコントローラ
21 選択回路
22 スイッチ回路
23 アンプ
24 検波回路
25 ローパスフィルタ
26 サンプルホールド回路
27 アナログデジタル変換回路
28 制御部
29 発振器
30 電流ドライバ
40 ホストプロセッサ
LC,X1~Xm,Y1~Yn ループコイル
Pm メインピークの位置
Ps サイドローブの位置