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特開2024-51157主要組織適合複合体(MHC)組成物およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051157
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】主要組織適合複合体(MHC)組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240403BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K38/02
A61K48/00
A61K31/7088
A61K45/00
A61K35/76
A61K9/127
A61K35/761
A61K47/10
A61K47/42
A61K38/21
A61K35/17
A61K38/19
A61K47/69
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/88 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031183
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2020535008の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/609,589
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521370880
【氏名又は名称】センティヴァックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サウサン ユーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ グランヴィル
(57)【要約】
【課題】主要組織適合複合体(MHC)組成物およびその使用方法の提供。
【解決手段】クラスI MHC構成成分、非古典的MHCクラスI構成成分またはクラスII MHC構成成分を含む免疫療法組成物、およびその使用方法が記載されている。クラスI MHC、非古典的クラスI MHC、クラスII MHC構成成分は、天然に存在しないMHC構成成分であり得る。その上、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸、およびMHC遺伝子の発現を制御する遺伝要素のメチル化された領域を標的化するgRNAを含む免疫療法組成物、ならびにその使用方法が記載されている。本明細書に記載されている組成物および方法は、免疫チェックポイント阻害剤と免疫療法組成物との投与をさらに含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年12月22日に出願された米国仮出願第62/609,589号の利益を主張するものである。この仮出願は、本明細書によって、あらゆる目的のため、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
主要組織適合複合体(MHC)分子は、病原体または腫瘍に由来する抗原に結合し、T細胞による認識のために細胞表面に抗原を表示するため、身体の免疫応答において重要である。ヒトではヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と称されることが多いMHCにおける遺伝子は、クラスI、クラスII MHC、非古典的MHC Iおよび非古典的MHC II遺伝子を含む。クラスI MHC分子は、成体の体細胞の表面に遍在的に発現され、通常、サイトゾル起源のペプチドを提示するが、交差提示の機構により細胞外抗原を提示することができる。非古典的MHC I分子は、ナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8T細胞によって認識され得る。クラスII MHC分子は、エンドサイトーシス経路において分解されたタンパク質に由来するペプチドに結合し、通常、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に制限されるが、MHCクラスII分子の発現は、腫瘍細胞等の他の型の細胞において誘導され得る。非古典的MHC II分子は、一般に、細胞表面上において露出されないが、リソソームにおける内部の膜上において露出される。
【0003】
腫瘍細胞が、T細胞による認識を回避する仕方の1つは、免疫チェックポイントを発現し、がん性細胞としてのそのアイデンティティーをマスクし、免疫系の攻撃を逃れることである。この作用方法を遮断し、T細胞が、このような細胞をがん性として認識することを可能にするために免疫チェックポイント阻害剤が使用されている。しかし、このような治療法は、一部のがんにおいて有効でないと判明している。
【0004】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞が、第1に、腫瘍細胞を認識することができる場合にのみ有効となり得る。一部のがんは、MHC分子の発現を欠くまたは有意に低下させることが示されており、これにより、この腫瘍認識を妨げることができ、これは、腫瘍細胞が検出を回避する仕方であり得る。したがって、いかなる追加的な治療法の非存在下であっても身体の自然免疫応答を増加させることができるのみならず、以前に無応答性であったがんにおいて免疫チェックポイント阻害剤等の治療剤の有効性を増強する仕方として機能することもできることから、がん細胞におけるMHCの発現を増加させる方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の要旨
MHC構成成分またはその断片をコードする核酸分子を含む免疫療法組成物が本明細書に提供される。MHC構成成分は、対象または個体への送達のために少なくとも1、2、3、4種またはそれよりも多い異なる賦形剤と共に製剤化することができる。MHC構成成分は、天然に存在するMHC構成成分であってもよく、またはその代わりに、MHC構成成分は、天然に存在していなくてもよい。一部の実施形態では、MHC構成成分は、天然に存在せず、天然に存在するMHC構成成分と比べて、T細胞による増強された認識を示す。一部の実施形態では、MHC構成成分は、天然に存在し、異種MHC構成成分を発現する細胞は、異種MHC構成成分を発現するように改変されていない同様の細胞と比べて、T細胞による増強された認識を有する。一部の例では、改変された細胞は、がん細胞である。斯かるがん細胞は、固形腫瘍がん細胞であり得る。斯かるがん細胞は、乳がん細胞、前立腺がん細胞、肺がん細胞、膵がん細胞、卵巣がん細胞、肝臓がん細胞、結腸がん細胞または任意の他のがん細胞であり得る。
【0006】
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、天然に存在しないMHC構成成分をコードする。天然に存在しないMHC構成成分は、天然に存在するMHC構成成分に対し高い配列相同性を有する操作されたMHC構成成分であり得る。
【0007】
一部の例では、本明細書における組成物は、天然に存在するMHC構成成分の天然に存在しないホモログを含む。斯かるホモログは、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸分子との比較における少なくとも1種のバリアントを含むことができる。一部の実施形態では、バリアントは、突然変異、挿入、欠失または重複である。本明細書におけるMHCホモログは、好ましくは、天然に存在するMHC構成成分に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%アミノ酸配列相同性を有する。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%類似する、またはそれに対し少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%配列相同性を有する。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%類似する、またはそれに対し少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%配列相同性を有する、MHC構成成分をコードする。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%または99%類似する。一部の実施形態では、核酸は、天然に存在するMHC構成成分と少なくとも80%、90%、95%、98%または99%類似するMHC構成成分をコードする。
【0008】
一部の実施形態では、MHC構成成分は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-G、HLA-F、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1からなるリストから選択される遺伝子である。MHC構成成分は、クラスI MHC構成成分であり得る。一部の実施形態では、クラスI MHC構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである。
【0009】
一部の実施形態では、免疫療法組成物は、第2のクラスI MHC構成成分またはその機能的(例えば、抗原性)断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む。一部の実施形態では、第2のクラスI MHC構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、第2のクラスI MHC構成成分は、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である。一部の実施形態では、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分は、クラスII MHC構成成分である。一部の実施形態では、クラスII MHC構成成分は、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、免疫療法組成物は、第2のクラスII MHC構成成分またはその機能的断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む。一部の実施形態では、第2のクラスII MHC構成成分は、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、第2のクラスII MHC構成成分は、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイ
ルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム、エキソソーム、脂質ナノ粒子または生体材料等の小胞中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、約0.01μg~約100μgの間の、本明細書に開示されている核酸の単位用量をさらに含む。他の実施形態では、本方法は、約0.01μg~約100μgの間の、本明細書に開示されている核酸によってコードされるMHC分子の単位用量(does)をさらに含む。
【0010】
個体におけるがんを処置するための方法であって、個体に、MHC構成成分またはその機能的断片をコードする核酸分子を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、MHC構成成分は、天然に存在していなくてもよい。他の実施形態では、MHC構成成分は、天然に存在する。一部の実施形態では、天然に存在しないMHC構成成分は、天然に存在するMHC構成成分と比べて、T細胞による増強された認識を示す。一部の実施形態では、がんは、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである。一部の実施形態では、がんは、低下したMHC発現を有する。一部の実施形態では、本方法は、個体のネイティブMHC構成成分の配列を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、(a)個体から生体試料を得るステップと、(b)生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)単離されたがん性細胞におけるMHC発現が、対照と比べて低下したか否かを検出するステップとを含む、がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む。一部の実施形態では、個体は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与されている。一部の実施形態では、本方法は、追加的な治療化合物を個体に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、追加的な治療化合物は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント刺激因子は、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、小分子療法は、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。一部の実施形態では、サイトカインは、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである。一部の実施形態では、細胞療法は、養子T細胞移入(ACT)療法である。その上またはその代わりに、細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法またはT細胞抗原カプラー(coupler)(TAC)T細胞療法であり得る。
【0011】
一部の実施形態では、個体への核酸分子の投与は、少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示すがんをもたらす。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸分子との比較における少なくとも1種のバリアントを含む天然に存在しないMHC構成成分である。一部の実施形態では、バリアントは、突然変異、挿入、欠失または重複である。一部の実施形態では、MHC構成成分は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRA、HLA-E、HLA-G、HLA-F、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1からなるリストから選択される遺伝子である。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも95%類似する。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも80%類似する。一部の実施形態では、MHC構成成分は、クラスI MHC構成成分である。一部の実施形態では、クラスI MHC構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、免疫療法組成物は、第2のクラスI MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む。一部の実施形態では、第2のクラスI MHC構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、第2のクラスI MHC構成成分は、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である。一部の実施形態では、MHC構成成分は、クラスII MHC構成成分である。一部の実施形態では、クラスII MHC構成成分は、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、免疫療法組成物は、第2のクラスII MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む。一部の実施形態では、第2のクラスII MHC構成成分は、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、第2のクラスII MHC構成成分は、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている。
【0012】
核酸分子を改変する酵素(例えば、TET酵素)に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼと、MHC遺伝子の転写因子またはプロモーターに相補的な領域を有するガイドRNA(gRNA)とをコードする核酸を含む免疫療法組成物も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、MHC遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-G、HLA-F、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1である。一部の実施形態では、非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼは、非活性化されたCas9(dCas9)である。一部の実施形態では、TET酵素は、TET1、TET2、TET3またはそれらの触媒ドメインである。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む。
【0013】
個体におけるがんにおけるMHC遺伝子の発現を増加させるための方法であって、個体に、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼと、MHC遺伝子の転写因子またはプロモーターに相補的な領域を有するガイドRNA(gRNA)とをコードする核酸を含む免疫療法組成物を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、MHC遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-G、HLA-F、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1である。一部の実施形態では、がんは、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである。一部の実施形態では、がんは、低下したMHC発現を有する。一部の実施形態では、本方法は、(a)個体から生体試料を得るステップと、(b)生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)単離されたがん性細胞におけるMHC発現が低下したか否かを検出するステップとを含む、がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む。一部の実施形態では、個体は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与されている。一部の実施形態では、本方法は、追加的な治療化合物を個体に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、追加的な治療化合物は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント刺激因子は、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、小分子療法は、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。一部の実施形態では、サイトカインは、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである。一部の実施形態では、細胞療法は、養子T細胞移入(ACT)療法である。その上またはその代わりに、細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法またはT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞療法であり得る。
【0014】
一部の実施形態では、がんによる核酸分子の発現は、少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示すがんをもたらす。一部の実施形態では、非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼは、非活性化されたCas9(dCas9)である。一部の実施形態では、TET酵素は、TET1、TET2、TET3またはそれらの触媒ドメインである。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がんへの標的化された送達のために製剤化されている。
【0015】
さらに、MHC分子の調節因子をコードする核酸分子を含む免疫療法組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、MHC分子の調節因子は、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、トランス活性化因子は、クラスII、主要組織適合複合体、トランス活性化因子(CIITA)およびNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)からなる群から選択される。一部の実施形態では、転写因子は、核転写因子Y(NF-Y)、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)、調節性因子X(RFX)、インターフェロン調節性因子(IRF)、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、遍在性転写因子(USF)および活性化B細胞の核因子カッパー軽鎖エンハンサー(NF-κB)からなる群から選択される。一部の実施形態では、NF-Yは、NF-Ya、NF-YbおよびNF-Ycからなる群から選択される。一部の実施形態では、RFXは、RFXANK/RFXB、RFX5およびRFXAPからなる群から選択される。一部の実施形態では、IRFは、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7、IRF-8およびIRF-9からなる群から選択される。一部の実施形態では、STATは、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5およびSTAT-6からなる群から選択される。一部の実施形態では、USFは、USF-1およびUSF-2からなる群から選択される。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、CREB結合タンパク質(CBP)、p300およびp300/CBP関連因子(pCAF)からなる群から選択される。一部の実施形態では、メチルトランスフェラーゼは、Zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)およびコアクチベーター結合型アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(CARM1)である。一部の実施形態では、伸長因子は、正の転写伸長因子(pTEF)である。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、免疫療法組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む。
【0016】
さらに、個体におけるがんを処置するための方法であって、個体に、MHC分子の調節因子をコードする核酸分子を投与するステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、がんは、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである。一部の実施形態では、がんは、低下したMHC発現を有する。一部の実施形態では、本方法は、(a)個体から生体試料を得るステップと、(b)生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)単離されたがん性細胞におけるMHC発現が対照と比べて低下したか否かを検出するステップとを含む、がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む。一部の実施形態では、個体は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与された。一部の実施形態では、本方法は、追加的な治療化合物を個体に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、追加的な治療化合物は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント刺激因子は、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である。一部の実施形態では、小分子療法は、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。一部の実施形態では、サイトカインは、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである。一部の実施形態では、細胞療法は、養子T細胞移入(ACT)療法である。その上またはその代わりに、細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法またはT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞療法であり得る。
【0017】
一部の実施形態では、個体への核酸分子の投与は、少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示すがんをもたらす。一部の実施形態では、MHC分子の調節因子は、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、トランス活性化因子は、クラスII、主要組織適合複合体、トランス活性化因子(CIITA)およびNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)からなる群から選択される。一部の実施形態では、転写因子は、核転写因子Y(NF-Y)、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)、調節性因子X(RFX)、インターフェロン調節性因子(IRF)、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、遍在性転写因子(USF)および活性化B細胞の核因子カッパー軽鎖エンハンサー(NF-κB)からなる群から選択される。一部の実施形態では、NF-Yは、NF-Ya、NF-YbおよびNF-Ycからなる群から選択される。一部の実施形態では、RFXは、RFXANK/RFXB、RFX5およびRFXAPからなる群から選択される。一部の実施形態では、IRFは、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7、IRF-8およびIRF-9からなる群から選択される。一部の実施形態では、STATは、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5およびSTAT-6からなる群から選択される。一部の実施形態では、USFは、USF-1およびUSF-2からなる群から選択される。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、CREB結合タンパク質(CBP)、p300およびp300/CBP関連因子(pCAF)からなる群から選択される。一部の実施形態では、メチルトランスフェラーゼは、Zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)およびコアクチベーター結合型アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(CARM1)である。一部の実施形態では、伸長因子は、正の転写伸長因子(pTEF)である。一部の実施形態では、核酸分子は、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸は、プラスミドである。一部の実施形態では、核酸は、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。一部の実施形態では、核酸は、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、核酸は、リポソーム中に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームは、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、リポソームは、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている。
【0018】
参照による援用
本明細書に言及されているあらゆる刊行物、特許および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれていると具体的にかつ個々に示されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本開示の特色は、添付の特許請求の範囲に詳細に明記されている。本開示の特色および利点のより十分な理解は、本開示の原理が利用されている説明目的の実施形態を明記する以下の詳細な説明、および添付の図面の参照により得られるであろう。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
第1のMHC構成成分またはその断片をコードする核酸分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む、免疫療法組成物。
(項目2)
前記核酸分子が、天然に存在しない核酸分子であり、前記第1のMHC構成成分が、天然に存在する、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目3)
前記第1のMHC構成成分が、天然に存在しないタンパク質またはポリペプチドである、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目4)
前記天然に存在しないMHC構成成分が、天然に存在するMHC構成成分と比べて、T細胞による増強された認識を示す、項目3に記載の免疫療法組成物。
(項目5)
前記第1のMHC構成成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、またはそれらの機能的断片である、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目6)
免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せをさらに含む、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目7)
前記核酸分子が、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも80%同一である、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目8)
MHC構成成分が、クラスI MHC構成成分である、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目9)
前記クラスI MHC構成成分が、(a)重(α)鎖および軽鎖(βミクログロブリン)である、または(b)表3によって表される対立遺伝子を含む、項目8に記載の免疫療法組成物。
(項目10)
第2のクラスI MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含み、前記第1のMHC構成成分および前記第2のMHC構成成分が、異なる、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目11)
前記第2のクラスI MHC構成成分が、重(α)鎖および軽鎖(βミクログロブリン)である、項目10に記載の免疫療法組成物。
(項目12)
前記第2のクラスI MHC構成成分が、天然に存在するMHC構成成分である、項目11に記載の免疫療法組成物。
(項目13)
前記第1のMHC構成成分が、クラスII MHC構成成分である、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目14)
前記クラスII MHC構成成分が、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む、項目13に記載の免疫療法組成物。
(項目15)
第2のクラスII MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む、項目13に記載の免疫療法組成物。
(項目16)
前記第2のクラスII MHC構成成分が、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む、項目15に記載の免疫療法組成物。
(項目17)
前記第2のクラスII MHC構成成分が、天然に存在する構成成分である、項目16に記載の免疫療法組成物。
(項目18)
前記MHC構成成分をコードする前記核酸が、DNAまたはRNAである、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目19)
前記MHC構成成分をコードする前記核酸が、プラスミドの一部である、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目20)
前記MHC構成成分をコードする前記核酸が、ウイルスベクターの一部である、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目21)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目20に記載の免疫療法組成物。
(項目22)
前記MHC構成成分をコードする前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目23)
前記核酸が、リポソーム、エキソソーム、脂質ナノ粒子または生体材料中に製剤化されている、項目2に記載の免疫療法組成物。
(項目24)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目23に記載の免疫療法組成物。
(項目25)
前記リポソームが、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目23に記載の免疫療法組成物。
(項目26)
前記第1のMHC構成成分が、表3の対立遺伝子を有するHLAである、項目1に記載の免疫療法組成物。
(項目27)
個体におけるがんを処置するための方法であって、前記個体に、主要組織適合複合体(MHC)構成成分またはその機能的断片をコードする核酸分子の治療有効量を投与するステップを含む、方法。
(項目28)
前記非MHC構成成分が、T細胞活性化を増加させる、またはT細胞によるがん細胞の認識を増強する、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記がんが、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記がんが、低下したMHC発現を有する、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記投与するステップに先立ち、前記個体のネイティブMHC構成成分の配列を決定するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目32)
(a)前記個体から生体試料を得るステップと、(b)前記生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)前記単離されたがん性細胞におけるMHC発現が対照と比べて低下したか否かを検出するステップとを含む、前記がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目33)
前記個体が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与された、項目26に記載の方法。
(項目34)
追加的な治療化合物を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目35)
前記追加的な治療化合物が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記免疫チェックポイント刺激因子が、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記小分子療法が、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記サイトカインが、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである、項目35に記載の方法。
(項目40)
前記細胞療法が、養子T細胞移入(ACT)療法である、項目35に記載の方法。
(項目41)
前記ACT療法が、複数のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を利用する、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記ACT療法が、複数のT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞を利用する、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記個体への前記核酸分子の投与が、前記少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示す前記がんをもたらす、項目34に記載の方法。
(項目44)
前記天然に存在しないMHC構成成分をコードする前記核酸分子が、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸分子との比較における少なくとも1種のバリアントを含む、項目26に記載の方法。
(項目45)
前記バリアントが、突然変異、挿入、欠失または重複である、項目44に記載の方法。(項目46)
前記MHC構成成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1からなるリストから選択される遺伝子である、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記核酸分子が、前記天然に存在するMHC構成成分をコードする前記核酸配列と少なくとも95%類似する、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記核酸分子が、前記天然に存在するMHC構成成分をコードする前記核酸配列と少なくとも80%類似する、項目44に記載の方法。
(項目49)
前記天然に存在しないMHC構成成分が、クラスI MHC構成成分である、項目26に記載の方法。
(項目50)
前記クラスI MHC構成成分が、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記免疫療法組成物が、第2のクラスI MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記第2のクラスI MHC構成成分が、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記第2のクラスI MHC構成成分が、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記天然に存在しないMHC構成成分が、クラスII MHC構成成分である、項目26に記載の方法。
(項目55)
前記クラスII MHC構成成分が、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記免疫療法組成物が、第2のクラスII MHC構成成分またはその断片をコードする第2の核酸分子をさらに含む、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記第2のクラスII MHC構成成分が、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せを含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記第2のクラスII MHC構成成分が、天然に存在するまたは天然に存在しないMHC構成成分である、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記核酸分子が、DNAまたはRNAである、項目26に記載の方法。
(項目60)
前記核酸が、プラスミドである、項目26に記載の方法。
(項目61)
前記核酸が、ウイルスベクターである、項目26に記載の方法。
(項目62)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目26に記載の方法。
(項目64)
前記核酸が、リポソーム、エキソソーム、脂質ナノ粒子または生体材料中に製剤化されている、項目26に記載の方法。
(項目65)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記リポソームが、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目64に記載の方法。
(項目67)
TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼと、MHC遺伝子の転写因子またはプロモーターに相補的な領域を有するガイドRNA(gRNA)とをコードする核酸を含む、免疫療法組成物。
(項目68)
前記MHC遺伝子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1である、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目69)
前記非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼが、非活性化されたCas9(dCas9)である、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目70)
前記TET酵素が、TET1、TET2、TET3またはそれらの触媒ドメインである、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目71)
前記核酸分子が、DNAまたはRNAである、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目72)
前記核酸が、プラスミドである、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目73)
前記核酸が、ウイルスベクターである、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目74)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目73に記載の免疫療法組成物。
(項目75)
前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目76)
前記核酸が、リポソーム中に製剤化されている、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目77)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目76に記載の免疫療法組成物。
(項目78)
前記リポソームが、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目76に記載の免疫療法組成物。
(項目79)
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む、項目67に記載の免疫療法組成物。
(項目80)
個体におけるがんにおけるMHC遺伝子の発現を増加させるための方法であって、前記個体に、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼと、前記MHC遺伝子の転写因子またはプロモーターに相補的な領域を有するガイドRNA(gRNA)とをコードする核酸を含む免疫療法組成物を投与するステップを含む、方法。
(項目81)
前記MHC遺伝子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DPA1、およびHLA-DPB1である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記がんが、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである、項目80に記載の方法。
(項目83)
前記がんが、低下したMHC発現を有する、項目80に記載の方法。
(項目84)
(a)前記個体から生体試料を得るステップと、(b)前記生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)前記単離されたがん性細胞におけるMHC発現が低下したか否かを検出するステップとを含む、前記がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む、項目80に記載の方法。
(項目85)
前記個体が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与された、項目80に記載の方法。
(項目86)
追加的な治療化合物を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目80に記載の方法。
(項目87)
前記追加的な治療化合物が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記免疫チェックポイント刺激因子が、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目87に記載の方法。
(項目90)
前記小分子療法が、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、項目87に記載の方法。
(項目91)
前記サイトカインが、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである、項目87に記載の方法。
(項目92)
前記細胞療法が、養子T細胞移入(ACT)療法である、項目87に記載の方法。
(項目93)
前記ACT療法が、複数のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を利用する、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記ACT療法が、複数のT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞を利用する、項目92に記載の方法。
(項目95)
前記がんによる前記核酸分子の発現が、前記少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示す前記がんをもたらす、項目86に記載の方法。
(項目96)
前記非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼが、非活性化されたCas9(dCas9)である、項目80に記載の方法。
(項目97)
前記TET酵素が、TET1、TET2、TET3またはそれらの触媒ドメインである、項目80に記載の方法。
(項目98)
前記核酸分子が、DNAまたはRNAである、項目80に記載の方法。
(項目99)
前記核酸が、プラスミドである、項目80に記載の方法。
(項目100)
前記核酸が、ウイルスベクターである、項目80に記載の方法。
(項目101)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目100に記載の方法。
(項目102)
前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目80に記載の方法。
(項目103)
前記核酸が、リポソーム中に製剤化されている、項目80に記載の方法。
(項目104)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記リポソームが、がんへの標的化された送達のために製剤化されている、項目103に記載の方法。
(項目106)
MHC分子の調節因子をコードする核酸分子を含む、免疫療法組成物。
(項目107)
前記MHC分子の前記調節因子が、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目108)
前記トランス活性化因子が、クラスII、主要組織適合複合体、トランス活性化因子(CIITA)およびNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)からなる群から選択される、項目107に記載の免疫療法組成物。
(項目109)
前記転写因子が、核転写因子Y(NF-Y)、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)、調節性因子X(RFX)、インターフェロン調節性因子(IRF)、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、遍在性転写因子(USF)および活性化B細胞の核因子カッパー軽鎖エンハンサー(NF-κB)からなる群から選択される、項目107に記載の免疫療法組成物。
(項目110)
前記NF-Yが、NF-Ya、NF-YbおよびNF-Ycからなる群から選択される、項目109に記載の免疫療法組成物。
(項目111)
前記RFXが、RFXANK/RFXB、RFX5およびRFXAPからなる群から選択される、項目109に記載の免疫療法組成物。
(項目112)
前記IRFが、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7、IRF-8およびIRF-9からなる群から選択される、項目109に記載の免疫療法組成物。
(項目113)
前記STATが、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5およびSTAT-6からなる群から選択される、項目109に記載の免疫療法組成物。
(項目114)
前記USFが、USF-1およびUSF-2からなる群から選択される、項目109に記載の免疫療法組成物。
(項目115)
前記アセチルトランスフェラーゼが、CREB結合タンパク質(CBP)、p300およびp300/CBP関連因子(pCAF)からなる群から選択される、項目107に記載の免疫療法組成物。
(項目116)
前記メチルトランスフェラーゼが、Zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)およびコアクチベーター結合型アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(CARM1)である、項目107に記載の免疫療法組成物。
(項目117)
前記伸長因子が、正の転写伸長因子(pTEF)である、項目107に記載の免疫療法組成物。
(項目118)
前記核酸分子が、DNAまたはRNAである、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目119)
前記核酸が、プラスミドである、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目120)
前記核酸が、ウイルスベクターである、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目121)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目120に記載の免疫療法組成物。
(項目122)
前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目123)
前記核酸が、リポソーム中に製剤化されている、項目106に記載の免疫療法組成物。(項目124)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目123に記載の免疫療法組成物。
(項目125)
前記リポソームが、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目123に記載の免疫療法組成物。
(項目126)
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む、項目106に記載の免疫療法組成物。
(項目127)
個体におけるがんを処置するための方法であって、前記個体に、MHC分子の調節因子をコードする核酸分子を投与するステップを含む、方法。
(項目128)
前記がんが、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである、項目127に記載の方法。
(項目129)
前記がんが、低下したMHC発現を有する、項目127に記載の方法。
(項目130)
(a)前記個体から生体試料を得るステップと、(b)前記生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)前記単離されたがん性細胞におけるMHC発現が対照と比べて低下したか否かを検出するステップとを含む、前記がんをMHC発現が低下したと診断するステップをさらに含む、項目127に記載の方法。
(項目131)
前記個体が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せからなる群から選択される追加的な治療化合物を以前に投与された、項目127に記載の方法。
(項目132)
追加的な治療化合物を前記個体に投与するステップをさらに含む、項目127に記載の方法。
(項目133)
前記追加的な治療化合物が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカインまたは細胞療法である、項目132に記載の方法。
(項目134)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目133に記載の方法。
(項目135)
前記免疫チェックポイント刺激因子が、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、またはそれらのリガンドに結合する分子である、項目133に記載の方法。
(項目136)
前記小分子療法が、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、項目133に記載の方法。
(項目137)
前記サイトカインが、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFである、項目133に記載の方法。
(項目138)
前記細胞療法が、養子T細胞移入(ACT)療法である、項目133に記載の方法。
(項目139)
前記ACT療法が、複数のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を利用する、項目133に記載の方法。
(項目140)
前記ACT療法が、複数のT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞を利用する、項目133に記載の方法。
(項目141)
前記個体への前記核酸分子の投与が、前記少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示す前記がんをもたらす、項目132に記載の方法。
(項目142)
前記MHC分子の前記調節因子が、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目127に記載の方法。
(項目143)
前記トランス活性化因子が、クラスII、主要組織適合複合体、トランス活性化因子(CIITA)およびNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)からなる群から選択される、項目142に記載の方法。
(項目144)
前記転写因子が、核転写因子Y(NF-Y)、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)、調節性因子X(RFX)、インターフェロン調節性因子(IRF)、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、遍在性転写因子(USF)および活性化B細胞の核因子カッパー軽鎖エンハンサー(NF-κB)からなる群から選択される、項目142に記載の方法。
(項目145)
前記NF-Yが、NF-Ya、NF-YbおよびNF-Ycからなる群から選択される、項目144に記載の方法。
(項目146)
前記RFXが、RFXANK/RFXB、RFX5およびRFXAPからなる群から選択される、項目144に記載の方法。
(項目147)
前記IRFが、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7、IRF-8およびIRF-9からなる群から選択される、項目144に記載の方法。
(項目148)
前記STATが、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5およびSTAT-6からなる群から選択される、項目144に記載の方法。
(項目149)
前記USFが、USF-1およびUSF-2からなる群から選択される、項目144に記載の方法。
(項目150)
前記アセチルトランスフェラーゼが、CREB結合タンパク質(CBP)、p300およびp300/CBP関連因子(pCAF)からなる群から選択される、項目142に記載の方法。
(項目151)
前記メチルトランスフェラーゼが、Zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)およびコアクチベーター結合型アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(CARM1)である、項目142に記載の方法。
(項目152)
前記伸長因子が、正の転写伸長因子(pTEF)である、項目142に記載の方法。(項目153)
前記核酸分子が、DNAまたはRNAである、項目127に記載の方法。
(項目154)
前記核酸が、プラスミドである、項目127に記載の方法。
(項目155)
前記核酸が、ウイルスベクターである、項目127に記載の方法。
(項目156)
前記ウイルスベクターが、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目155に記載の方法。
(項目157)
前記核酸が、腫瘍細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目127に記載の方法。
(項目158)
前記核酸が、リポソーム中に製剤化されている、項目127に記載の方法。
(項目159)
前記リポソームが、追加的な治療化合物、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞膜透過ペプチド、リガンド、アプタマー、抗体またはこれらの組合せを含む、項目158に記載の方法。
(項目160)
前記リポソームが、がん細胞への標的化された送達のために製剤化されている、項目158に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1A図1Dは、RKO結腸癌細胞系におけるHLA-DR対立遺伝子のトランスフェクションを説明する。図1Aは、親RKOにおけるいずれのHLA受容体の表面発現も示さない。図1Bは、HLADR A単独をトランスフェクトされたRKOにおいて、細胞表面に検出されたHLA-DR発現は存在しないことを示す。しかし、Myc-DKKタグの細胞内発現(データ図示せず)は、トランスフェクション成功を示した。図1Cは、HLADR B1単独をトランスフェクトされたRKO細胞系におけるHLA-DR表面発現がないことを示す。しかし、GFP発現は、トランスフェクション成功を示した。図1Dは、HLA-DR AおよびBをコトランスフェクトされた細胞におけるアルファおよびベータ鎖の両方の表面発現による、高いおよび中等度のGFP発現を示す。
【0021】
図2図2A図2Cは、RKO結腸癌およびSKOV3細胞系におけるHLA-DR対立遺伝子のトランスフェクションを説明する。図2Aは、親RKO細胞のフローサイトメトリー解析である。図2Bは、GFP HLA-DRAB1*15 RKO細胞のフローサイトメトリー解析である。図2Cは、コトランスフェクトされたRKO細胞における点状GFP対HLA-DR Bのみがトランスフェクトされた場合の緑色蛍光細胞質を示す。
【0022】
図3図3A図3Dは、次の通りに収載されている、安定にコトランスフェクトされたRKOおよびSKOV3細胞の蛍光写真を説明する:RKO HLA-DR AB1(図3A);SKOV3 HLA-DR AB1(図3B);RKO HLA-DR AB3(図3C);およびSKOV3 HLA-DR AB3(図3D)。
【0023】
図4A-B】図4Aは、HLA-DR B3のベクター構造を説明する。
【0024】
図4Bは、HLA-DR B4のベクター構造を説明する。
【0025】
図4C-D】図4Cは、HLA-DR B5のベクター構造を説明する。
【0026】
図4Dは、HLA-DRアルファaのベクター構造を説明する。
【0027】
図4E図4Eは、HLA-DR B1*15のベクター構造を説明する。
【0028】
図5図5Aは、高レベルのHLA-DRおよびPD-L1を発現する、2名の異なるドナーから調製された2個の代表的樹状細胞を説明する。
【0029】
図5Bは、HLA-DR1と遺伝子型判定された2名の異なるドナーから混合リンパ球(lymphocute)反応(MLR)アッセイのために調製された初代T細胞を説明する。
【0030】
図5Cは、高レベルのPD-L1を発現するRKO細胞を説明する。
【0031】
図6A-D】図6A図6Fは、抗PD-1抗体と共に、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。
【0032】
図6E-H】図6A図6Fは、抗PD-1抗体と共に、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。図6Gは、T細胞が、RKO親細胞と培養された場合に増殖されなかったことを説明する。
【0033】
図6Hは、T細胞が、いずれの処置も行わなければ増殖されなかったことを説明する。
【0034】
図7図7Aは、抗PD-1抗体と共に、親RKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。
【0035】
図7Bは、抗PD-1抗体と共に、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。
【0036】
図7Cは、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。
【0037】
図7Dは、抗PD-1抗体と共に、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞と培養された場合のT細胞増殖を説明する。
【0038】
図8A-B】図8A図8Cは、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞が、T細胞増殖および炎症性サイトカイン分泌を増加させたことを説明する。
図8C図8A図8Cは、HLA-DRトランスフェクトされたRKO細胞が、T細胞増殖および炎症性サイトカイン分泌を増加させたことを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
開示の詳細な説明
がん等の状態を処置または予防するための、免疫療法組成物およびこれを使用する方法が本明細書に開示されている。本明細書における免疫療法組成物は、MHC構成成分もしくはその機能的断片をコードする核酸分子、またはMHC構成成分もしくはその機能的断片をコードする核酸分子の調節因子を含むことができる。さらに、MHC構成成分ポリペプチドもしくはその機能的断片、またはMHC構成成分もしくはその機能的断片をコードする核酸分子の調節因子を含む免疫療法組成物が本明細書に開示されている。
MHC構成成分
【0040】
本明細書で使用される場合、「MHC構成成分」または「MHC分子」は、MHC遺伝子をコードする核酸、MHC遺伝子によってコードされるポリペプチド、MHCに関連する遺伝子もしくは遺伝子産物、またはMHCの調節因子もしくはMHC構成成分をコードする核酸の調節因子、またはそれらの機能的断片を指す。よって、文が限定的でない限り、MHC分子という用語は、MHCタンパク質をコードする核酸配列と、タンパク質の両方を包含するべきである。さらに、機能的断片は、完全配列と実質的に同じ機能をもたらすタンパク質および核酸分子の断片を指す。そこで、一部の実施形態では、機能的断片は、本明細書に記載されている分子の細胞外部分、またはタンパク質の細胞外部分をコードする核酸配列である。他の例では、機能断片は、分子の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの両方(またはこれをコードする核酸)を含む。
【0041】
本明細書におけるMHC構成成分は、哺乳動物MHC構成成分、またはより具体的には、ヒトMHC構成成分であり得、これは、その代わりに、ヒト白血球抗原(HLA)と称することができる。例えば、MHC構成成分であるHLA遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、HLA-J、HLA-K、HLA-N、HLA-P、HLA-S、HLA-T、HLA-U、HLA-V、HLA-W、HLA-X、HLA-Y、HLA-Z、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB2、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HLA-DRB6、HLA-DRB7、HLA-DRB8、HLA-DRB9、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DQA2、HLA-DQB2、HLA-DQB3、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DMA、HLA-DMB HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DPA2、HLA-DPB2、およびHLA-DPA3を含む。MHC構成成分に関連する遺伝子または遺伝子産物は、β2ミクログロブリン(B2M)であり得る。MHC構成成分は、MHC分子全体、またはその部分もしくは機能的断片を記載するのに使用することができる。本明細書におけるMHC分子は、MHCクラスI分子、非古典的MHC分子もしくはMHCクラスII分子、または上述のいずれかのホモログもしくは機能的断片であり得る。
【0042】
クラスI MHC分子は、サイトゾルタンパク質に由来するペプチドを、細胞傷害性T細胞に提示して、免疫応答を誘発することができる。クラスI MHC分子は、交差提示により外因的ペプチドを提示することもできる。クラスI MHC分子は、2個のドメイン:重(α)鎖および軽鎖(βミクログロブリン)を含むことができ、重鎖および軽鎖は、非共有結合により連結されている。重(α)鎖は、3個の細胞外ドメイン:α1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインをさらに含むことができ、α2ドメインおよびα3ドメインは、クラスI MHC分子が提示するペプチドが結合する溝を形成する。本開示の非古典的MHC I分子は、ナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8T細胞によって認識され得る。HLA-E、HLA-FおよびHLA-Gは、古典的MHC I分子と比較して低レベルの不均一性で、MHC I遺伝子座においてコードされる非古典的MHC I分子である。HLA-E分子発現は、IFN-γ誘導性であり、HLA-G発現は、IRF-1等のインターフェロン誘導性転写因子および他の刺激によって誘導され得る。
【0043】
本明細書におけるMHC構成成分は、クラスI MHC構成成分またはその機能的断片であり得る。機能的断片の例は、上述のドメインの任意のものを含むが、MHC遺伝子全体は含まない。例えば、一例では、MHC構成成分は、軽鎖(βミクログロブリン)なしの重(α)鎖を含む。他の例では、MHC構成成分は、重(α)鎖なしの軽鎖(βミクログロブリン)を含む。他の例では、クラスI MHC構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せを含むことができる。一部の例では、MHC構成成分は、α1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインのうち1個または2個を含むが、3個のドメイン全ては含まない。
【0044】
クラスI MHC構成成分は、ヒトHLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、HLA-C遺伝子、またはそのポリペプチド産物、またはそのホモログ、またはその機能的断片であり得る。クラスI MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-A対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。クラスI MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-B対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。クラスI
MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-C対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。クラスI MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したβミクログロブリン対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。一部の例では、クラスI MHC構成成分は、クラスI MHC構成成分の断片である。例えば、クラスI MHC構成成分は、重鎖のα2ドメインおよびα3ドメイン等の、クラスI MHC構成成分のエクソンまたは特異的ドメインであり得る。一部の例では、クラスI MHC構成成分は、クラスI MHC遺伝子によってコードされるポリペプチドである。よって、本開示は、本明細書に記載されているMHVおよびHLAポリペプチド産物および断片(ドメイン)、ならびにこれらをコードする核酸分子の両方を企図する。
【0045】
クラスI MHC構成成分の重鎖は、機能的に可変であり得、複数の異なる遺伝子産物が、単一の遺伝子によって産生され得る。クラスI MHC遺伝子の機能的に可変な産物は、クラスI MHC血清型と称することができる。少なくとも25種の血清型のHLA-A、少なくとも50種の血清型のHLA-B、および少なくとも12種の血清型のHLA-Cが存在し得る。クラスI MHC構成成分は、任意の適したクラスI MHC血清型であり得る。クラスI MHC血清型は、HLA-A2、HLA-A3またはHLA-B8であり得る。これらの異なる血清型を表す対立遺伝子は、本明細書に添付する表3から選択することができる。一部の実施形態では、本明細書における組成物は、1種もしくは複数の、2種もしくはそれよりも多い、3種もしくはそれよりも多い、4種もしくはそれよりも多い、5種もしくはそれよりも多い、または6種もしくはそれよりも多い、7種もしくはそれよりも多い、8種もしくはそれよりも多い、9種もしくはそれよりも多い、または10種もしくはそれよりも多い異なるMHC構成成分、HLA対立遺伝子もしくは表3に記載されているHLA対立遺伝子、またはこれらの機能的断片をコードする核酸を含む。
【0046】
クラスI MHC構成成分をコードする核酸は、クラスI MHC構成成分ポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。一例では、クラスI MHC構成成分をコードする核酸は、HLA-A2、HLA-A3またはHLA-B8の対立遺伝子をコードする核酸を含む。
【0047】
一部の例では、MHC構成成分をコードする核酸配列は、天然に存在するクラスI MHC核酸配列と同一である。他の例では、MHC構成成分をコードする核酸配列は、標的細胞におけるより効率的なトランスフェクションまたは発現のためにコドン最適化または操作されている。例えば、一例では、全てのイントロン配列が除去されている。一部の例では、MHC構成成分をコードする核酸分子は、天然に存在しないが、これによってコードされるMHC構成成分は、天然に存在するアミノ酸配列を有する。これは、本明細書に記載されているMHC構成成分の全てに当てはまる。一部の例では、核酸配列は、天然に存在するクラスI MHC核酸配列とは異なるが、コドン縮重のためにクラスI MHCポリペプチドと同一のポリペプチドをコードする。例えば、クラスI MHC核酸配列は、コドン最適化されたクラスI MHC核酸配列であり得る。一部の例では、クラスI MHC構成成分をコードする核酸は、クラスI MHC構成成分の発現を改善するように最適化された核酸を含む。一部の例では、クラスI MHC構成成分をコードする核酸配列は、天然に存在するクラスI MHC核酸配列とは異なるが、クラスI MHCポリペプチドと同一のポリペプチドをコードし、天然に存在するクラスI MHC核酸配列の発現と比べて増加した発現を示す。
【0048】
さらに、MHC構成成分は、非古典的MHC I構成成分またはその断片であり得る。非古典的MHC-I分子は、通常、非多型的であり、そのMHCクラスI対応物よりも制限されたパターンの発現を示す傾向がある。非古典的MHC I構成成分は、重(α)鎖、軽鎖(βミクログロブリン)またはこれらの組合せであり得る。非古典的MHC構成成分は、HLA-E遺伝子、HLA-G遺伝子、HLA-F遺伝子またはそれらのポリペプチド産物であり得る。非古典的MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-E対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。非古典的MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-G対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。非古典的MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-F対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。非古典的MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したβミクログロブリン対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。一部の例では、非古典的MHC構成成分は、非古典的MHC構成成分の機能的断片である。例えば、非古典的MHC構成成分は、重鎖のα2ドメインおよびα3ドメイン等の、非古典的MHC構成成分のエクソンまたは特異的ドメインであり得る。一部の例では、クラスI MHC構成成分は、非古典的MHC遺伝子によってコードされるポリペプチドである。HLA-E、HLA-GおよびHLA-Fを表す異なる対立遺伝子は、表3から選択することができる。
【0049】
非古典的MHC I構成成分をコードする核酸は、非古典的MHC I構成成分をコードする核酸を含むことができる。一部の例では、核酸配列は、天然に存在する非古典的MHC I核酸配列と同一である。一部の例では、核酸配列は、天然に存在する非古典的MHC I核酸配列とは異なるが、コドン縮重のために非古典的MHC Iポリペプチドと同一のポリペプチドをコードする。例えば、非古典的MHC I核酸配列は、コドン最適化された非古典的MHC I核酸配列であり得る。一部の例では、非古典的MHC I構成成分をコードする核酸は、非古典的MHC I構成成分の発現を改善するように最適化された核酸を含む。一部の例では、非古典的MHC I構成成分をコードする核酸配列は、天然に存在する非古典的MHC I核酸配列とは異なるが、非古典的MHC Iポリペプチドと同一のポリペプチドをコードし、天然に存在する非古典的MHC I核酸配列の発現と比べて増加した発現を示す。
【0050】
クラスII MHC分子は、細胞外タンパク質に由来するペプチドを提示することができる。このようなクラスII分子は、通常、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞等の抗原提示細胞(APC)表面に見出すことができるが、その発現は、腫瘍細胞等の非抗原提示細胞に誘導することができる。クラスII MHC分子は、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖を含むことができる。アルファ鎖は、α1ドメインおよびα2ドメインを含むことができる一方、ベータ鎖は、β1ドメインおよびβ2ドメインを含むことができ、α1ドメインおよびβ1ドメインは、クラスII MHC分子が提示するペプチドが結合する溝を形成する。一部の例では、MHC構成成分は、クラスII MHC分子の全ドメイン未満を含む。
【0051】
MHC構成成分は、クラスII MHC構成成分またはその断片であり得る。クラスII MHC構成成分は、アルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖またはこれらの組合せであり得る。クラスII MHC構成成分は、HLA-DM遺伝子、HLA-DO遺伝子、HLA-DP、HLA-DQ遺伝子、HLA-DR遺伝子、またはそれらのポリペプチド産物であり得る。HLA-DM、HLA-DO、HLA-DPおよびHLA-DQのそれぞれのアルファ鎖およびベータ鎖は、表1に記載されている。クラスII MHC構成成分は、ヒトゲノム由来の任意の適したHLA-DM、HLA-DO、HLA-DPまたはHLA-DQ対立遺伝子によってコードされる分子であり得る。一部の例では、クラスII MHC構成成分は、クラスII MHC構成成分の断片である。例えば、クラスII MHC構成成分は、アルファ鎖のα1ドメインおよびベータ鎖のβ1ドメイン等の、クラスII MHC構成成分のエクソンまたは特異的ドメインであり得る。一部の例では、クラスII MHC構成成分は、表1におけるクラスII MHC遺伝子によってコードされるポリペプチドである。一部の例では、クラスII MHC構成成分は、HLA-DR4またはHLA-DR15によってコードされるポリペプチドである。
表1. クラスII MHC分子のアルファおよびベータ鎖をコードする遺伝子
【表1-1】
【表1-2】
【0052】
クラスII MHC構成成分は、HLA-DM、HLA-DO、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DR等のクラスII MHC分子であり得る。これらのクラスII
MHC分子のそれぞれは、表1における遺伝子によってコードされるアルファ鎖およびベータ鎖を含むことができる。表1におけるアルファ鎖およびベータ鎖遺伝子は、機能的に可変であり得、複数の異なる遺伝子産物が、単一の遺伝子によって産生され得る。一例では、異なる遺伝子産物は、エクソンのオルタナティブスプライシングにより、単一の遺伝子によって産生され得る。表1に示すアルファ鎖およびベータ鎖の機能的に可変な産物は、クラスII MHC血清型と称することができる。少なくとも21種の血清型のHLA-DRおよび少なくとも8種の血清型のHLA-DQが存在し得る。クラスII MHC構成成分は、任意の適したクラスII MHC血清型であり得る。クラスII MHC構成成分は、HLA-DR4またはHLA-DR15であり得る。これらの異なる血清型を表す対立遺伝子は、本明細書に添付する表3から選択することができる。
【0053】
クラスII MHC構成成分をコードする核酸は、クラスII MHC構成成分をコードする核酸を含むことができる。一部の例では、核酸配列は、天然に存在するクラスII
MHC核酸配列と同一である。一部の例では、核酸配列は、天然に存在するクラスII
MHC核酸配列とは異なるが、コドン縮重のためにクラスII MHCポリペプチドと同一のポリペプチドをコードする。例えば、クラスII MHC核酸配列は、コドン最適化されたクラスII MHC核酸配列であり得る。一部の例では、クラスII MHC構成成分をコードする核酸配列は、天然に存在するクラスII MHC核酸配列とは異なるが、クラスII MHCポリペプチドと同一のポリペプチドをコードし、天然に存在するクラスII MHC核酸配列の発現と比べて増加した発現を示す。一部の例では、クラスII MHC構成成分をコードする核酸は、クラスII MHC構成成分の発現を改善するように最適化された核酸を含む。一部の例では、クラスII MHC構成成分をコードする核酸配列は、天然に存在するクラスII MHC核酸配列とは異なるが、クラスII
MHCポリペプチドと同一のポリペプチドをコードし、天然に存在するクラスII MHC核酸配列の発現と比べて増加した発現を示す。
【0054】
ある特定の実施形態では、天然に存在しないMHC構成成分またはその断片が本明細書に開示されている。一部の例では、天然に存在しないMHC構成成分は、クラスI MHC構成成分またはクラスII MHC構成成分のいずれかのホモログである。ホモログは、天然に存在する配列に対し高い配列類似性または配列同一性を有する、天然に存在しない配列である。
【0055】
一般に、互換的に使用することができる「配列類似性」、「配列同一性」または「配列相同性」は、それぞれ2種のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。典型的には、配列同一性を決定するための技法は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定するステップ、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定するステップと、これらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較するステップとを含む。2種またはそれよりも多い配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、「パーセント相同性」とも称される、それらの「パーセント同一性」を決定することにより比較することができる。より長い分子内の配列(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)であり得る参照配列(例えば、核酸またはアミノ酸配列)に対するパーセント同一性は、参照配列の長さで割り、100を掛けた、2種の最適に整列された配列の間の正確なマッチの数として計算することができる。パーセント同一性は、例えば、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から入手できるバージョン2.2.9を含む先進的BLASTコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することにより決定することもできる。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268 (1990)の整列方法、ならびにAltschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990);Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877 (1993);およびAltschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997)に記述されている整列方法に基づく。簡潔に説明すると、BLASTプログラムは、2配列のうち短い方における記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の総数で割った同一の整列された記号の数として同一性を定義する。プログラムを使用して、比較されている配列の長さ全体にわたるパーセント同一性を決定することができる。デフォルトパラメーターは、例えば、blastpプログラムを用いた、短い問い合わせ配列による検索を最適化するために提供される。このプログラムは、Wootton and Federhen,
Computers and Chemistry 17: 149-163 (1993)のSEGプログラムによって決定される通り、問い合わせ配列のセグメントのマスクを外すためのSEGフィルターの使用も可能にする。開示されている配列および特許請求されている配列の間の高い配列同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%を企図する。一部の場合では、パーセント配列同一性の参照は、BLAST(基本的局所的整列検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool))を使用して測定される配列同一性を指す。本明細書で使用される場合、パーセント配列同一性または相同性は、従来方法のうち任意の1種または複数によって決定することができる。配列相同性を解析するための方法として、2種の生物学的配列(タンパク質または核酸)の間の機能的、構造的および/または進化的関係性を示すことができる類似性の領域の同定に使用されるペアワイズ配列整列;ならびに同様の長さの3種またはそれよりも多い生物学的配列の整列である多重配列整列(MSA)が挙げられるがこれらに限定されない。様々なソフトウェアおよび解析ツールが、全体的整列、局所的整列またはゲノム整列に基づく配列相同性の決定に利用できる。例として、次のものが挙げられるがこれらに限定されない;EMBOSS Needleは、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して、2配列の最適な全体的整列を提供する;EMBOSS Stretcherは、より大きい配列が全体的に整列されることを可能にするNeedleman-Wunschアルゴリズムの修正バージョンを使用する;EMBOSS Waterは、2配列の局所的整列の計算にSmith-Watermanアルゴリズムを使用する;EMBOSS Matcherは、LALIGNアプリケーションに基づく厳格なアルゴリズムを使用して2配列の間の局所的類似性を提供する;LALIGNは、タンパク質またはDNA配列の非交差局所的整列を計算することにより内部重複を同定する;Wise2DBA(DNA Block Aligner)は、配列が、2配列における潜在的に大きく変化に富んだ長さのDNAによって分離される保存の多くの共線的ブロックを共有するという仮定に基づき2配列を整列する;GeneWiseは、タンパク質配列をゲノムDNA配列と比較し、イントロンおよびフレームシフトエラーを可能にする;PromoterWiseは、2種のDNA配列を比較し、プロモーターに理想的な逆位および転座を可能にする;BLASTは、高速k-タプル発見法による局所的検索を提供する;FASTAは、高速k-タプル発見法による局所的検索を提供し、BLASTよりも高速であるが感度が低い;ClustalWは、局所的または全体的漸進的整列を提供する。一部の場合では、ClustalWは、多重配列整列に使用することができる。一部の場合では、データベースにおける配列を用いて問い合わせ配列を検索および比較することにより、Smith-Watermanおよび/またはBLASTを使用して、相同配列を見出すことができる。一部の場合では、Smith-Watermanアルゴリズムは、あらゆる可能な長さのセグメントを比較し、類似性尺度を最適化するため、Smith-Watermanアルゴリズムは、好ましくは、ドメイン内の配列同一性の決定に、または全長もしくは配列全体の比較の代わりに局所的配列整列のために使用される。一部の場合では、Needleman-Wunschアルゴリズムを、好ましくは、タンパク質またはヌクレオチド配列全体の整列に使用して、全体的または総体的配列同一性を決定する。EMBOSS NeedleおよびStretcherツールは、全体的整列にNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用する。EMBOSS Waterツールは、局所的整列にSmith-Watermanアルゴリズムを使用する。本明細書に開示されている様々な実施形態では、総体的または局所的配列同一性は、好ましくは、BLASTを使用して決定される。
【0056】
天然に存在しないMHC構成成分は、対応する天然に存在するMHC構成成分を正常では発現しない細胞において発現を示すことができる。天然に存在しないMHC構成成分は、天然に存在するMHC構成成分と比べて、細胞による増強された発現を示すことができる。細胞による天然に存在しないMHC構成成分の発現は、天然に存在するMHC構成成分と比べて、T細胞による増強された認識をもたらすことができる。天然に存在しないMHC構成成分の発現は、天然に存在しないMHC構成成分を発現する細胞の増加されたアポトーシスをもたらすことができる。細胞は、腫瘍細胞であり得る。
【0057】
天然に存在しないMHC構成成分をコードする核酸は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸分子との比較における少なくとも1種のバリアントを含むことができる。バリアントは、突然変異、挿入、欠失または重複であり得る。突然変異は、同義もしくは非同義突然変異、フレームシフト突然変異、またはナンセンス突然変異をさらにコードし得る置換をもたらすことができる。一部の例では、突然変異は、天然に存在しないMHC構成成分をコードする遺伝子のタンパク質コード部分に存在する。一部の例では、突然変異は、天然に存在しないMHC構成成分をコードする遺伝子のプロモーター領域に存在する。
【0058】
天然に存在しないMHC構成成分の核酸分子は、対応する天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%類似し得る。一部の例では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも20%類似する。一部の例では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも80%類似する。一部の例では、核酸分子は、天然に存在するMHC構成成分をコードする核酸配列と少なくとも95%類似する。
【0059】
天然に存在しないMHC構成成分のポリペプチドは、天然に存在するMHC構成成分のポリペプチドと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%類似し得る。一部の例では、ポリペプチドは、天然に存在するMHC構成成分のポリペプチドと少なくとも80%類似する。一部の例では、ポリペプチドは、天然に存在するMHC構成成分のポリペプチドと少なくとも95%類似する。
【0060】
MHC分子の調節因子は、クラスI MHC分子またはクラスII MHC分子の調節因子であり得る。調節因子は、MHC分子をコードする核酸の転写を調節することができる。MHC分子をコードする核酸の転写の調節は、MHC分子の転写のレベルの増加を含むことができる。MHC分子をコードする核酸の転写の調節は、MHC分子の転写のレベルの減少を含むことができる。調節因子は、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子またはこれらのいずれかの組合せであり得る。
【0061】
トランス活性化因子は、クラスII、主要組織適合複合体、トランス活性化因子(CIITA)またはNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)であり得る。一部の例では、CIITAは、クラスII MHC分子のトランス活性化因子である。一部の例では、NLRC5は、クラスI MHC分子のトランス活性化因子である。
【0062】
転写因子は、核転写因子Y(NF-Y)、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)、調節性因子X(RFX)、インターフェロン調節性因子(IRF)、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、遍在性転写因子(USF)または活性化B細胞の核因子カッパー軽鎖エンハンサー(NF-κB)であり得る。NF-Yは、NF-Ya、NF-YbまたはNF-Ycであり得る。RFXは、RFXANK/RFXB、RFX5またはRFXAPであり得る。IRFは、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7、IRF-8またはIRF-9であり得る。STATは、STAT-1、STAT-2、STAT-3、STAT-4、STAT-5またはSTAT-6であり得る。USFは、USF-1またはUSF-2であり得る。
【0063】
アセチルトランスフェラーゼは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)であり得る。HATは、CREB結合タンパク質(CBP)、p300またはp300/CBP関連因子(pCAF)であり得る。一部の実施形態では、調節因子は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(DAI)である。
【0064】
メチルトランスフェラーゼは、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)、DNA/RNAメチルトランスフェラーゼまたはアルギニンメチルトランスフェラーゼであり得る。HTMaseは、Zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)であり得る。アルギニンメチルトランスフェラーゼは、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)またはコアクチベーター結合型アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(CARM1)であり得る。一例では、EZH2の減少した発現は、CIITAの発現を増加させることができる。
【0065】
伸長因子は、正の転写伸長因子(pTEF)であり得る。
【0066】
一部の実施形態では、MHC分子の調節因子は、追加的な因子によって上方調節される。MHC分子の調節因子を上方調節する追加的な因子は、IFN-γ、リポ多糖(LPS)またはIL-4であり得る。他の実施形態では、MHC分子の調節因子は、追加的な因子によって下方調節される。MHC分子の調節因子を下方調節する追加的な因子は、IFN-β、IL-10、一酸化窒素(NO)またはTGFβであり得る。追加的な因子によって上方調節または下方調節されるMHC分子の調節因子は、CIITAまたはNLRC5であり得る。
【0067】
MHC分子の調節因子は、共刺激分子のリガンドであり得る。共刺激分子は、T細胞活性化に要求される分子であり得る。共刺激分子は、CD40であり得る。MHC分子の調節因子は、CD40のリガンドであり得る。
免疫療法組成物
【0068】
ある特定の実施形態では、MHC構成成分またはその断片をコードする核酸分子を含む免疫療法組成物が本明細書に開示されている。ある特定の実施形態では、免疫療法組成物は、MHC構成成分またはその断片のポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、さらに、MHC構成成分もしくはその断片の調節因子をコードする核酸分子、またはMHC構成成分もしくはその断片の調節因子のポリペプチドを含む免疫療法組成物が本明細書に開示されている。核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。本明細書におけるMHC構成成分のいずれを免疫療法組成物として使用してもよい。
【0069】
免疫療法組成物は、クラスI MHC重(α)鎖等のクラスI MHC構成成分をコードする核酸分子を含むことができる。核酸分子は、クラスI MHC 軽鎖(βミクログロブリン)等の第2のクラスI MHC構成成分をさらにコードすることができる。例えば、免疫療法組成物は、クラスI MHC重(α)鎖およびクラスI MHC軽鎖(βミクログロブリン)をコードする核酸分子を含むことができる。一部の例では、免疫療法組成物は、第2のクラスI MHC構成成分をコードする第2の核酸分子をさらに含む。例えば、免疫療法組成物は、クラスI MHC重(α)鎖をコードする第1の核酸分子、およびクラスI MHC軽鎖(βミクログロブリン)をコードする第2の核酸分子を含むことができる。
【0070】
免疫療法組成物は、クラスII MHCアルファ(α)鎖等のクラスII MHC構成成分をコードする核酸分子を含むことができる。核酸分子は、クラスII MHCベータ(β)鎖等の第2のクラスII MHC構成成分をさらにコードすることができる。例えば、免疫療法組成物は、クラスII MHCアルファ(α)鎖およびクラスII MHCベータ(β)鎖をコードする核酸分子を含むことができる。一部の例では、免疫療法組成物は、第2のクラスII MHC構成成分をコードする第2の核酸分子をさらに含む。例えば、免疫療法組成物は、クラスII MHCアルファ(α)鎖をコードする第1の核酸分子、およびクラスII MHCベータ(β)鎖をコードする第2の核酸分子を含むことができる。
【0071】
免疫療法組成物は、MHC構成成分またはその断片の調節因子をコードする核酸を含むことができる。免疫療法組成物は、MHC構成成分またはその断片の調節因子のポリペプチドを含むことができる。調節因子は、以前に本明細書に記載された通り、トランス活性化因子、転写因子、アセチルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、伸長因子またはこれらの任意の組合せであり得る。免疫療法組成物は、MHC構成成分またはその断片の調節因子を調節する追加的な因子を含むことができる。MHC構成成分の調節因子を調節する追加的な因子は、IFN-γ、リポ多糖(LPS)、IL-4、IFN-β、IL-10、一酸化窒素(NO)またはTGFβであり得る。追加的な因子は、ポリペプチドまたは小分子(例えば、NO)として投与することができる。
【0072】
追加的な因子は、MHC構成成分またはその断片の調節因子をコードする核酸と同時に投与することができる。追加的な因子は、MHC構成成分またはその断片の調節因子をコードする核酸の投与に続いて逐次に投与することができる。MHC構成成分またはその断片の調節因子をコードする核酸は、追加的な因子の投与に続いて逐次に投与することができる。
【0073】
免疫療法組成物は、共刺激分子のリガンドを含むことができる。共刺激分子は、CD40であり得る。
【0074】
免疫療法組成物は、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸を含むことができる。TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸は、少なくとも1個のガイドRNA(gRNA)をさらにコードすることができる。TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸を含む免疫療法組成物は、gRNAをコードする第2の核酸をさらに含むことができる。gRNAは、転写因子、MHC構成成分の調節因子、またはMHC遺伝子のプロモーターに相補的な領域を含むことができる。非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼは、非活性化されたCas9(dCas9)または非活性化されたCpf1(dCfp1)であり得る。TET酵素は、TET1、TET2、TET3、またはそれらの触媒ドメインであり得る。一部の例では、TET酵素は、TET1酵素、またはTET1酵素の触媒ドメインである。TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸を含む免疫療法組成物の投与を使用して、プロモーター、MHC構成成分の調節因子、またはMHC遺伝子に関連する転写因子を脱メチル化することができる。プロモーター、MHC構成成分の調節因子、またはMHC遺伝子に関連する転写因子の脱メチル化は、MHC遺伝子の増加された発現をもたらすことができる。
【0075】
免疫療法組成物は、TET酵素に融合された第2の非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする少なくとも第2の核酸をさらに含むことができる。第2の核酸は、少なくとも1個の第2のガイドRNAをさらにコードすることができる。一部の例では、免疫療法組成物は、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする複数の核酸と、複数のガイドRNAとを含む。一部の例では、免疫療法組成物は、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする単一の核酸と、複数のガイドRNAをコードする複数の核酸とを含む。一部の例では、gRNAは、単一のメチル化されたCpG部位を標的とするように設計される。他の例では、gRNAは、少なくとも2個のメチル化されたCpG部位を標的とするように設計される。
【0076】
免疫療法組成物は、水溶液として製剤化することができる。免疫療法組成物は、粉末、例えば、脂質-DNA複合体を含む乾燥粉末核酸組成物として製剤化することができる。粉末製剤は、さらに、水溶液に懸濁することができる。免疫療法組成物は、凍結乾燥、滅菌、またはこれらの組合せを行うことができる。
【0077】
免疫療法組成物は、少なくとも薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。語句「薬学的に許容される」は、理にかなった医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に釣り合った、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー性応答または他の問題もしくは合併症を伴わない、人間および動物の組織と接触した使用に適した、化合物、材料、組成物および/または剤形を指すように本明細書で用いられている。
【0078】
任意の適した薬学的に許容される賦形剤を使用することができる。賦形剤は、担体、希釈剤、洗剤、緩衝剤、塩、ペプチド、界面活性物質、オリゴ糖、アミノ酸、炭水化物またはアジュバントであり得る。一部の例では、親水性賦形剤が使用され、例えば、乾燥粉末免疫療法組成物は、親水性賦形剤内に分散された核酸を含む。賦形剤の例として、ヒト血清アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、グルコース、ラクトース、スクロース、キシロース、リボース、トレハロース、マンニトール、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン(cylcodextrin)、セルロース、メチルセルロース、グリシン、アラニン、グルタメート、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、NaCl、NaHCO、NHHCO、MgSOおよびNaSOが挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
一部の例では、賦形剤は、免疫学的組成物の安定化に使用される。賦形剤は、リン酸緩衝食塩水溶液が挙げられるがこれらに限定されない、緩衝溶液(これもまた、pH制御または維持を提供することができる)に溶解された塩であり得る。一部の例では、賦形剤は、免疫学的組成物の容積を増加させる。賦形剤は、個体による免疫学的組成物の吸収を増加または減少させることができる。
【0080】
本明細書における組成物は、経口送達、または静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、皮下、舌下および他の経路の送達のために製剤化することができる。
【0081】
本教示に従った経口投与に適した固体剤形として、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒が挙げられるがこれらに限定されない。斯かる固体剤形において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム(dicalcium phosphate)等の、少なくとも1種の不活性で薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、および/または(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸等のフィラーもしくは増量剤;(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スクロースおよびアラビアゴム(acacia)等の結合剤;(c)グリセロール等の保水剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム等の崩壊剤;(e)パラフィン等の溶解遅延剤;(f)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(g)例えば、アセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート等の湿潤剤;(h)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑剤、ならびにこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともできる。
【0082】
活性化合物は、上に記す1種または複数の賦形剤と共に、マイクロカプセル化形態であってもよい。カプセル化は、リポソーム、エキソソーム、脂質ナノ粒子または生体材料の使用を含むことができる。
【0083】
経口投与のための液体剤形として、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
注射用調製物(例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液)は、適した分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知技術に従って製剤化することができる。
【0085】
本明細書における製剤または組成物のいずれかは、好ましくは、がん細胞を特異的に標的化するように設計される。例えば、一部の例では、MHC構成成分は、がん細胞を選択的に標的化するエキソソーム中に製剤化される。斯かるエキソソームの例は、Gomari et al., Onco Targets (2018) 11: 5753-5762 ”Targeted cancer therapy using engineered exosome as a natural drug delivery vehicle”に記載されている。一部の例では、MHC構成成分またはこれをカプセル化する小胞は、MHC構成成分またはそれをカプセル化する小胞をがん細胞に選択的に標的化するアプタマーを含む。がん細胞を選択的に標的化するアプタマーの例は、Cerchia et al, Trends Biotechnol. (2010) Oct 28(10): 517-25 ”Targeting cancer cells with nucleic acid aptamers”に記載されている。別の例では、MHC構成成分またはそれをカプセル化する小胞は、がん幹細胞等のがん細胞を選択的に標的化するナノマテリアルにカップリングされる。斯かるナノマテリアルの例として、Qin et al. (2017) Front. Pharmacol. ”Nanomaterials in targeting cancer stem cells for cancer therapy”に記載されているナノマテリアルが挙げられる。別の例では、MHC構成成分またはそれをカプセル化する小胞は、がん幹細胞を選択的に標的化する抗体にカップリングされる。これは、薬物-抗体コンジュゲートを形成することができる。またはその代わりに、抗体は、カプセル化されたMHC構成成分をがん細胞に方向付ける小胞の表面に表示され得る。薬物抗体コンジュゲーションの例は、Thomas et al, (2016) Lancet Oncol., June 17(6), ”Antibody-drug conjugates for cancer therapy”およびDan et al., (2018) Pharmaceutical (Basel) (2018) June; 11(2):32, ”Antibody-drug conjugates for cancer therapy: chemistry to clinical implications”に記載されている。
【0086】
MHC構成成分をコードする核酸、MHC構成成分の調節因子をコードする核酸、またはTET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸は、ベクターにより細胞に送達することができる。核酸は、RNAまたはDNAであり得る。細胞は、腫瘍細胞であり得る。ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載されているベクターの転写物)、ネイキッド核酸、および脂質またはリポソーム等の送達媒体と複合体形成した核酸を含む。
【0087】
脂質は、カチオン性脂質、アニオン性脂質または中性脂質であり得る。脂質は、リポソーム、小型単層小胞(SUV)、脂質エンベロープ、リピドイド(lipidoid)または脂質ナノ粒子(LNP)であり得る。脂質は、核酸と混合して、リポプレックス(核酸-リポソーム複合体)を形成することができる。脂質は、核酸にコンジュゲートすることができる。脂質は、非pH感受性脂質またはpH感受性脂質であり得る。脂質は、ポリエチレン(polythethylene)グリコール(PEG)をさらに含むことができる。
【0088】
カチオン性脂質は、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、[1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン](DOTAP)または3β[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等の、一価カチオン性脂質であり得る。カチオン性脂質は、ジ-オクタデシル-アミド-グリシル-スペルミン(DOGS)または{2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウム(propanaminium)トリフルオロ酢酸塩}(DOSPA)等の、多価カチオン性脂質であり得る。
【0089】
アニオン性脂質は、リン脂質またはジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)であり得る。リン脂質の例として、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルセリンが挙げられるがこれらに限定されない。一部の例では、アニオン性脂質は、Ca+、Mg+、Mn2+およびBa+等の二価カチオンをさらに含む。
【0090】
カチオン性脂質またはアニオン性脂質は、中性脂質をさらに含むことができる。中性脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)またはジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)であり得る。一部の例では、荷電脂質と組み合わせたヘルパー脂質の使用は、より高いトランスフェクション効率を生じる。
【0091】
リポソームは、ポリマー、脂質、ペプチド、磁性ナノ粒子(MNP)、追加的な化合物またはこれらの組合せをさらに含むことができる。ポリマー、脂質または磁性ナノ粒子は、リポソームに取り付けることができる、またはリポソーム膜中に統合することができる。ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。ポリマーは、N-[2-ヒドロキシプロピル]メタクリルアミド(HPMA)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(pDMAEMA)またはアルギニングラフトされた生体還元性(bioreducible)ポリマー(ABP)であり得る。ペプチドは、細胞膜透過ペプチド、細胞接着ペプチド、または細胞表面の受容体に結合するペプチドであり得る。細胞は、腫瘍細胞であり得る。任意の適した細胞膜透過ペプチドを使用することができる。細胞膜透過ペプチドの例として、ポリリシンペプチドおよびポリアルギニンペプチドが挙げられるがこれらに限定されない。細胞接着ペプチドは、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチドであり得る。追加的な化合物は、葉酸等の、細胞表面の受容体に結合する化合物であり得る。
【0092】
ベクターは、ウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターは、複製能力があるウイルスベクターまたは複製能力がないウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターは、腫瘍溶解性ウイルスであり得る。ウイルスベクターの例として、アルファウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、レオウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)が挙げられるがこれらに限定されない。アルファウイルスは、セムリキ森林ウイルス(SFV)、シンドビスウイルス(SIN)またはベネズエラウマ脳炎(VEE)であり得る。ポックスウイルスは、ワクシニアウイルスであり得る。ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)であり得る。アデノ随伴ウイルスは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7またはAAV8であり得る。
【0093】
ウイルスベクターは、改変されたウイルスベクターであり得る。改変されたウイルスベクターは、低下した免疫原性、血流中のベクターの持続の増加、またはマクロファージおよび抗原提示細胞によるベクターの損なわれた取込みを示すことができる。
【0094】
改変されたウイルスベクターは、ポリマー、脂質、ペプチド、磁性ナノ粒子(MNP)、追加的な化合物またはこれらの組合せをさらに含むことができる。ポリマー、脂質または磁性ナノ粒子は、ウイルスベクターのカプシドに取り付けることができる。ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。ポリマーは、N-[2-ヒドロキシプロピル]メタクリルアミド(HPMA)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(pDMAEMA)またはアルギニングラフトされた生体還元性ポリマー(ABP)であり得る。ペプチドは、細胞膜透過ペプチド、細胞接着ペプチド、または細胞表面の受容体に結合するペプチドであり得る。細胞は、腫瘍細胞であり得る。任意の適した細胞膜透過ペプチドを使用することができる。細胞膜透過ペプチドの例として、ポリリシンペプチドおよびポリアルギニンペプチドが挙げられるがこれらに限定されない。細胞接着ペプチドは、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチドであり得る。追加的な化合物は、葉酸等の、細胞表面の受容体に結合する化合物であり得る。
【0095】
磁性ナノ粒子は、超常磁性ナノ粒子であり得る。一部の例では、MNPの結合は、最適な導入遺伝子送達のためにより低いウイルスベクター用量を生じることができる。一部の例では、MNPの結合は、形質導入効率を改善する。
【0096】
一部の例では、改変されたウイルスベクターは、遺伝子改変されたベクターである。遺伝子改変されたベクターは、低下した免疫原性、低下した遺伝毒性、増加したローディング容量、増加した導入遺伝子発現、またはこれらの組合せを有することができる。一部の例では、遺伝子改変されたウイルスベクターは、偽型ウイルスベクターである。偽型ウイルスベクターは、少なくとも1種の外来性ウイルスエンベロープタンパク質を有することができる。外来性ウイルスエンベロープタンパク質は、リッサウイルス、アレナウイルス、ヘパドナウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス、バキュロウイルス、フィロウイルスまたはアルファウイルス由来のエンベロープタンパク質であり得る。外来性ウイルスエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の糖タンパク質Gであり得る。一部の例では、外来性ウイルスエンベロープタンパク質は、遺伝子改変されたウイルスエンベロープタンパク質である。遺伝子改変されたウイルスエンベロープタンパク質は、天然に存在しないウイルスエンベロープタンパク質であり得る。
【0097】
一部の例では、ウイルスベクターのカプシドは、二特異性抗体とコンジュゲートされる。二特異性抗体は、目的の細胞に結合するように標的化することができる。目的の細胞は、腫瘍細胞であり得る。
【0098】
本明細書における組成物および免疫療法のいずれかは、1個または複数の治療部分をさらに含むことができる。斯かる治療部分は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せを含むことができる。
使用方法
【0099】
本明細書における組成物を使用して、T細胞活性化および/またはサイトカイン放出を増加させることができる。これは、in vivoまたはin vitroで起こることができる。斯かる方法をさらに使用して、例えば、がん等の、免疫系を逃れる状態を処置することができる。よって、ある特定の実施形態では、対象における免疫系を活性化する、および/またはT細胞活性を増強する、および/またはサイトカイン媒介性応答を増加させるための方法が本明細書に記載されている。斯かるサイトカイン放出は、インターフェロン-ガンマおよびTNFアルファの放出であり得る。ある特定の実施形態では、また、個体におけるがんを処置する方法であって、MHC構成成分をコードする核酸分子またはそのポリペプチドを含む免疫療法組成物を個体に投与するステップを含む、方法が本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、さらに、個体におけるがんを処置する方法であって、MHC構成成分の調節因子をコードする核酸分子またはそのポリペプチドを含む免疫療法組成物を個体に投与するステップを含む、方法が本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、さらに、個体におけるがんを処置する方法であって、TET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸をコードする核酸分子を含む免疫療法組成物を個体に投与するステップを含む、方法が本明細書に記載されている。一部の場合では、個体におけるがんを処置する方法は、次のうち少なくとも2種をコードする少なくとも1種の核酸分子を含む免疫療法組成物を個体に投与するステップを含む:MHC構成成分、MHC構成成分の調節因子、MHC分子の調節因子を調節する追加的な因子、およびTET酵素に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼ。少なくとも1種の核酸分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種または10種よりも多い核酸分子を含むことができる。よって、本明細書における組成物は、互いに作動可能に連結した、または別々のプラスミドに存在する、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10種の異なる核酸分子を含むことができ、これらのそれぞれは、MHC構成成分をコードする核酸分子を含む。
【0100】
本明細書における組成物を使用して、がんを処置することができる。がんは、固形腫瘍がん、血液学的がん、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、膀胱がん、膵がん、子宮頸部がん、子宮内膜がん、肺がん、気管支がん、肝臓がん、卵巣がん、結腸および直腸がん、胃(stomach)がん、胃(gastric)がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍がん、甲状腺がん、頭頸部がん、中咽頭がん、食道がん、黒色腫、非黒色腫皮膚がん、メルケル細胞癌、ウイルスにより誘導されるがん、神経芽細胞腫、乳がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞がん、腎盂がん、白血病、リンパ腫、肉腫、神経膠腫、脳腫瘍、ならびに癌腫であり得る。一部の例では、がんは、卵巣がん、膵がんまたは結腸がんである。がんは、MHC分子を発現しないがんであり得る。がんは、MHC分子の低下した発現を示すがんであり得る。MHC分子は、クラスI MHC分子またはクラスII MHC分子であり得る。一部の例では、がんは、免疫チェックポイント阻害剤療法に応答しないがんである。
【0101】
一部の例では、本方法は、がんを、MHC分子発現がないまたは低下したと診断するステップをさらに含む。がんを、MHC分子発現がないまたは低下したと診断するステップは、(a)個体から生体試料を得るステップと、(b)生体試料からがん性細胞を単離するステップと、(c)単離されたがん性細胞におけるMHC分子発現が、対照と比べて低下または排除されたかを検出するステップとを含むことができる。対照は、所定のレベル、個体の非がん性組織におけるMHC発現のレベル、または異なる対象の非がん性組織におけるMHC分子発現のレベルであり得る。
【0102】
一部の例では、本方法は、個体のMHC構成成分の配列を決定するステップをさらに含む。MHC構成成分の配列は、MHC遺伝子のエクソンおよびイントロン、ならびにそのプロモーター、5’UTRおよび3’UTR領域を含むことができる。個体のMHC構成成分は、個体のネイティブまたは内在性MHC構成成分の配列であり得る。個体のMHC構成成分の配列決定は、サンガーまたは次世代配列決定(NGS)を含むことができる。MHC構成成分の配列決定は、配列決定に先立ち亜硫酸水素塩で個体の核酸を処理する初期ステップをさらに含むことができる。亜硫酸水素塩処理された核酸配列に対する核酸配列の比較を使用して、メチル化されたCpG部位を同定することができる。一部の例では、個体のMHC構成成分の配列決定は、免疫療法組成物の所望の配列に関する情報価値がある。例えば、がん性細胞由来のMHC構成成分のプロモーターが、非がん性細胞由来のMHC構成成分と比較して過剰メチル化されている場合、免疫療法組成物は、プロモーターの少なくとも1個のメチル化されたCpG部位を脱メチル化するように設計することができる。別の例では、個体のMHC構成成分の配列決定は、個体と免疫学的に適合性となるであろう、天然に存在しないMHC構成成分が設計されることを可能にする。
【0103】
本方法は、追加的な治療化合物を個体に投与するステップをさらに含むことができる。追加的な治療化合物は、免疫チェックポイント遺伝子もしくはそのリガンドに結合する治療剤、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せであり得る。免疫チェックポイント分子もしくはそのリガンドに結合する治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤または免疫チェックポイントアゴニストであり得る。免疫チェックポイント分子の例として、CD27、CD28、CD40、CD122、OX40、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、VISTA、4-1BBおよびGITRが挙げられるがこれらに限定されない。免疫チェックポイント阻害剤の例として、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ(Durvaumab)およびリリルマブ(Lirilumab)が挙げられるがこれらに限定されない。小分子療法は、プロテアソーム阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤またはポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり得る。サイトカインは、INFα、INFβ、IFNγまたはTNFであり得る。細胞療法は、養子T細胞移入(ACT)療法であり得る。その上またはその代わりに、細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法またはT細胞抗原カプラー(TAC)T細胞療法であり得る。TAC受容体は、ネイティブT細胞受容体(TCR)を介して作動する。さらに、TACは、(1)抗原結合ドメイン、(2)TCRリクルートメントドメイン、および(3)共受容体ドメイン(ヒンジ、膜貫通およびサイトゾル領域)を含む。
【0104】
追加的な治療化合物は、免疫療法化合物の投与と同時に投与することができる、または免疫療法化合物の投与の前もしくは後に投与することができる。一部の例では、免疫療法組成物の投与は、少なくとも1種の追加的な治療化合物に対し増加した感受性を示すがんをもたらす。
【0105】
一部の例では、免疫療法組成物は、種々の経路により送達される。例示的な送達経路は、経口(頬側および舌下を含む)、直腸、経鼻、外用、経皮パッチ、肺、腟、坐薬もしくは非経口的(筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、真皮内、腹腔内、皮下および静脈内を含む)投与、またはエアロゾル化、吸入もしくはガス注入による投与に適した形態での投与を含む。一部の例では、本明細書に記載されている免疫療法組成物は、筋肉に投与される、または真皮内もしくは皮下注射によりまたはイオントフォレーシスによる等の経皮的に投与することができる。一部の場合では、免疫療法組成物の上皮投与が用いられる。
【0106】
免疫療法組成物は、例えば、1日に、1週間に、1ヶ月に、半年に、1年に、または医学的な必要に応じて、1回または複数回(例えば、1~10回またはそれよりも多く)、それを必要とする対象に投与することができる。投薬量は、単一のまたは複数の投薬量レジメンのいずれかで提供することができる。投与間のタイミングは、医学的状態が改善するにつれて減少させることができる、または患者の健康が減退するにつれて増加させることができる。
【0107】
本開示の医薬組成物の投薬量は、投与経路、処置されるべき疾患、および対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、健康全般を含む因子に依存する。典型的には、単一用量内に含有される医薬組成物の量は、有意な毒性を誘導することなく疾患を有効に予防、遅延または処置する量であり得る。ヒトにおける使用に有効な量は、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトのための用量は、動物において有効であることが見出された、循環、肝臓、外用および/または胃腸管濃度を達成するように製剤化することができる。動物データおよび他の種類の同様のデータに基づき、当業者は、ヒトにとって適切なワクチン組成物の有効量を決定することができる。投薬量は、疾患の程度および対象の色々なパラメーター等の従来因子に従って、医師によって適応させることができる。
【0108】
免疫療法組成物は、疾患または状態(例えば、がん)に関連する症状の開始の前、その際にまたはその後に投与することができる。一部の例では、免疫療法組成物は、がんの処置のために投与される。一部の場合では、免疫療法組成物は、がんの予防的処置等の、予防のために投与される。一部の場合では、免疫療法組成物は、患者から免疫応答を誘発するために投与される。
【0109】
一部の態様では、本明細書に記載されている免疫療法組成物およびキットは、2℃~8℃の間に貯蔵される。一部の例では、免疫療法組成物は、凍結貯蔵されない。一部の例では、免疫療法組成物は、-20℃または-80℃等の温度で貯蔵される。一部の例では、免疫療法組成物は、日光を避けて貯蔵される。
キット
【0110】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている1種または複数の方法による使用のためのキットおよび製造品が本明細書に開示されている。本キットは、適合性医薬品賦形剤中に製剤化され、適切な容器内に置かれた、本明細書に記載されている免疫療法組成物を含むことができる。
【0111】
本キットは、バイアル、チューブ等の1個または複数の容器を受けるために区画化された、担体、パッケージまたは容器を含むことができ、容器(複数可)のそれぞれは、本明細書に記載されている方法において使用されるべき別々のエレメントのうち1種を含む。適した容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等の種々の材料から形成することができる。
【0112】
本キットは、識別記載、ラベルまたは添付文書を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、キットもしくは免疫学的組成物の内容物、本明細書に記載されている方法におけるその使用に関する使用説明書、またはこれらの組合せを収載することができる。ラベルは、容器上に存在するまたはこれに添えることができる。ラベルを形成する文字、数字または他の字が、容器自体に取り付けられる、成形されるまたはエッチングされる場合、ラベルは、容器上に存在することができる。ラベルは、例えば、添付文書として、容器を同様に保持するレセプタクルまたは担体内に存在する場合、容器に添えることができる。一部の例では、ラベルは、内容物が、特異的な治療適用に使用されるべきであることを示すために使用される。
【0113】
本明細書におけるキットは、個体のHLA対立遺伝子の配列を抽出、濃縮および/または決定するために、部位特異的プライマーまたはプローブ等の1種または複数の試薬をさらに含むことができる。本キットは、1種または複数の異なるHLA対立遺伝子をさらに含むことができる。治療的処置は、処置されている個体において見出されるものと同じHLA対立遺伝子を有するMHC構成成分を個体に投与するステップを含む。
【0114】
本キットは、免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント刺激因子、がんワクチン、小分子療法、モノクローナル抗体、サイトカイン、細胞療法またはこれらの組合せ等の、1種または複数の他の治療剤をさらに含むことができる。
ある特定の用語法
【0115】
本明細書で使用されている用語法は、単に特定の場合を記載することを目的とし、限定を意図するものではない。後述する用語は、本明細書で使用されている用語の意味を、当業者によるこのような用語の理解に加えて、説明するために記述されている。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、複数形の指示対象を含む。特許請求の範囲を、任意の必要に応じたエレメントを除外するように起草することができることがさらに留意される。したがって、この表現は、特許請求の範囲のエレメントの列挙に関連して、「唯一」、「のみ」その他としての斯かる排他的用語法の使用、または「否定的な」限定の使用のための先行詞として機能することを意図する。
【0116】
ある特定の範囲は、用語「約」が先行した数値により、本明細書に提示されている。用語「約」は、この用語が先行したまさにその数、およびこの用語が先行した数の付近または前後の数に、文字によるサポートを提供するように本明細書に使用されている。ある数が、特に列挙された数の付近または前後であるかに関する決定において、列挙されていない、その数の付近または前後の数は、これが提示されている文脈において、特に列挙された数と実質的な同等なものを提供する数であり得る。値の範囲が提供される場合、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、介在する値のそれぞれ、範囲の上限および下限の間、ならびにその記述された範囲における任意の他の記述されたまたは介在する値が、本明細書に記載されている方法および組成物内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれ得、また、本明細書に記載されている方法および組成物内に包含され、記述された範囲における任意の具体的に除外された限界に付される。記述された範囲が、限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれか一方または両方を除外する範囲も、本明細書に記載されている方法および組成物に含まれる。
【0117】
用語「個体」、「患者」または「対象」は、互換的に使用されている。これらの用語のうち、医療従事者(例えば、医師、正看護師、ナース・プラクティショナー、医師助手、用務係(orderly)またはホスピス職員)の監督(例えば、持続的または断続的)によって特徴付けられる状況を要求するもの、またはこれらに限定されるものはない。さらに、これらの用語は、ヒトまたは動物対象を指す。
【0118】
「処置すること」または「処置」は、治療的処置および予防的または予防上の方策の両方を指し、その目標は、標的とされる病的状態または障害を予防するまたは減速する(減らす)ことである。処置を必要とする者は、障害を既に有する者と、および障害を有する傾向がある者、または障害が予防されるべき者を含む。例えば、本開示の方法に従って治療量の対象オリゴヌクレオチドコンジュゲートを受けた後に、対象が、次のうち1種または複数の観察可能および/または測定可能な低下または非存在を示す場合、対象または哺乳動物は、がんの「処置」に成功する:がん細胞の数の低下またはがん細胞の非存在;腫瘍サイズの低下;軟部組織および骨へのがんの拡散を含む、末梢臓器へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度まで遅くし、好ましくは、停止すること);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度まで遅くし、好ましくは、停止すること);ある程度まで、腫瘍成長の阻害;ならびに/またはある程度まで、特異的ながんに関連する症状の1種または複数の軽減;低下した罹患率および/または死亡率、ならびにクオリティ・オブ・ライフ問題における改善。
【0119】
他に定めがなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術および科学用語は、本明細書に記載されている方法および組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等な任意の方法および材料を、本明細書に記載されている方法および組成物の実施または試験において使用することもできるが、代表的な説明目的の方法および材料について、ここに記載する。
【実施例0120】
(実施例1)
【0121】
HLA-DRをネイティブに発現しない細胞系への完全アルファおよびベータHLA-DR鎖のコトランスフェクションは、細胞表面におけるHLA-DR発現をもたらした
【0122】
HLA-DR発現を欠くRKO結腸癌細胞系(ATCC CRL-2577)に、OriGene Technologies Inc.から得た、HLA-DR Aプラスミド(アルファ、cat#RC209920(NM_019111))(図4D)またはHLADRB1*15プラスミド(ベータ、cat#RG218764(NM_002124))(図4F)のいずれかを安定にトランスフェクトした。RKO細胞には、両方のプラスミドのコトランスフェクトも行った。全てのトランスフェクションは、製造業者のプロトコールに従った電気穿孔(Mirus Bio LLCキットを使用)を使用した。トランスフェクトされた細胞は、少なくとも2週間、抗生物質Geneticin(登録商標)(G418-ThermoFisher)を使用した選択圧に付した。HLA-DR AおよびBに対する抗体(ThermoFisher)を使用したFACSによって、トランスフェクトされた細胞を試験した。フローサイトメトリー試験のため、細胞をフラスコから剥離し、30分間、摂氏4度にて、抗HLA-DRアルファ(LN3、APC)またはHLA-DRベータ(UT36、PE)で染色した。さらに、トランスフェクトされた細胞をFACS緩衝剤で2回(2%FBSを含有するPBS)洗浄した。次に、細胞をFACS解析機器(CytoFlex S)に流し、Flowjoソフトウェアバージョン10.2を使用してデータを解析した。
【0123】
図1Aを参照すると、親RKOは、いずれのHLA受容体の表面発現もなかった。図1Bは、HLA-DR AによるRKO細胞のトランスフェクション成功を示す(Myc-DKKタグの細胞内発現によって証明される;データ図示せず)。しかし、細胞表面におけるHLA-DR発現は検出されなかった。さらに、図1Cは、HLADR B1単独をトランスフェクトされたRKO細胞系において、GFP発現がトランスフェクション成功を示した場合であっても、HLA-DR表面発現が検出されなかったことを示す。その上、図1Dは、HLA-DR AおよびBをコトランスフェクトされた細胞におけるアルファおよびベータ鎖の両方の表面発現を示す(高いおよび中等度のGFP発現によって確認されたトランスフェクション)。このデータは、RKO細胞においてHLA-DR遺伝子がサイレントであり、HLA-DRの表面発現が、AおよびB1鎖の両方が同時発生的に発現された場合にのみ起こるという結論を支持する。
【0124】
さらに、図1A図1DのFACSプロットの左の列によると、大きい四角は、GFP陽性ゲート集団(すなわち、GFP発現)を示し、小さい四角は、中等度(図1Cおよび図1Dの丸の中に表示される濃い緑色のオーバーレイ)および高い(図1Cおよび図1Dの四角の中に表示される薄い緑色のオーバーレイ)GFP発現を発現する細胞を示す。FACSプロットの中央の列は、アルファ鎖(X軸)およびベータ鎖(Y軸)の表面発現を示す。コトランスフェクトされた細胞において、中等度および高い発現のGFP集団の両方が、FACSプロットの右の列から分かる通り、HLA DR AおよびBの表面発現を提示する。オーバーレイおよび濃い緑色は、中等度の強度のHLA-DR AおよびBを発現する中等度のGFP発現集団を示し、薄い緑色は、高いHLA-DR AおよびB発現を有する高いGFP発現集団を示した。
【0125】
図2Aおよび図2Bを参照すると、親RKO細胞系(図2A)と比較したフローサイトメトリー解析(図2B)を使用して、高GFP HLA-DRAB1*15 RKOトランスフェクトされた細胞系を選別し(Sony Sorter、Sony Biotechを使用)、再評価した。図2Cは、左の列(GFP/明視野)に表示されるコトランスフェクトされたGFP HLA-DRAB1*15 RKO細胞対右の列におけるGFP
HLA-DR B1*15のみの代表的な蛍光写真(拡大率20×)を示す。アルファおよびベータ単位の両方をコトランスフェクトされた細胞は、点状GFPを示し、対して、HLA-DR Bのみがトランスフェクトされた場合、細胞質に散乱した緑色蛍光タンパク質が示される。この結果は、アルファとベータ鎖とが会合し、細胞表面へと移行したことを示す。
【0126】
図3A図3Dは、次の通りに収載される、安定にコトランスフェクトされたRKOおよびSKOV3細胞の代表的な蛍光写真を示す:RKO HLA-DR AB1、SKOV3 HLA-DR AB1、RKO HLA-DR AB3およびSKOV3 HLA-DR AB3。RKO親細胞系には、また、B3(RG210732、NM_022555)またはB4(RG202743、NM_021983)またはB5(RG203646、NM_002125)と組み合わせたHLA-DR Aをコトランスフェクトし、これらは全て、OriGeneから得られる。上に記載されている通り、フローサイトメトリーを使用してデータを確認した(データ図示せず)。SKOV3は、卵巣腺癌細胞系(HTB-7、ATCC)であり、AおよびB鎖発現を欠くためにHLA DR発現を欠く第2の細胞系であり、HLA-DR A B1、HLA-DR A B3、HLA-DR A B4およびHLA-DR A B5をコトランスフェクトした。トランスフェクトされたSKOV3細胞を選別した。RKO細胞系および膵腺癌BxPC3細胞系(CRL-1687、ATCC)におけるGFPおよびHLA-DR発現は図示しなかった。異なるベータ鎖のプラスミドは、図4A図4Cに提示する。RKO HLA-AB1およびRKO HLA-AB3の蛍光写真を、図6Aおよび図6Cに示し、SKOV3 HLA-AB1およびSKOV3 HLA-AB3の蛍光写真を、図6Bおよび図6Dに示す。白色エラーは、点状のGFPの小胞発現を示し、このことは、細胞表面へのMHC分子の移行を示す。
【0127】
(実施例2)
T細胞の増殖は、HLA発現に依存する
【0128】
機能的混合リンパ球反応、T細胞増殖およびサイトカイン放出アッセイを使用して、発現しない腫瘍細胞と比較して、T細胞活性化におけるHLA-DRを発現する腫瘍細胞系の効果を試験する。
【0129】
ヒト混合リンパ球反応アッセイ
【0130】
コトランスフェクトされたHLA-DR RKO細胞が、同様および異なるHLA-DRによりT細胞を活性化することができるかを試験するために、MLRアッセイのための陽性対照として樹状細胞(DC)を使用した。これらのDCを生成するために、後述するプロトコールに従った:
ヒトバフィーコートを、Stanford Blood Center(Stanford、CA)から購入し、PBSで希釈し、ヒトPBMCの単離のためにフィコール上に重層した。ヒトPBMCをPBSで4回洗浄し、製造業者のプロトコール(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)に記載されている通りに、正の選択を用いたヒト特異的CD14+細胞単離キットを使用して、表面抗原分類14(CD14+)単球を単離した。次に、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充した完全Roswell
Park Memorial Institute(RPMI)1640培地において7日間、5×10個の細胞/mLでCD14+細胞を播種した。0、2および5日目に、培養物に、組換えヒト(rh-)IL-4(1000U/mL)(R&D Systems、Minneapolis、MN)およびrh顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(rh-GMCSF)(500U/mL)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を補充した。7日目に、未成熟DCを収集し、洗浄し、計数した。
【0131】
これらのDCは、2名の異なるドナー(D1およびD2)から調製された2個の代表的なDCの図5Aに示す通り、高いHLA-DRおよびPD-L1を発現した。Cytoflex解析機器(Beckman Culture)を使用したフローサイトメトリーにより、r-フィコエリトリン(RPE)標識抗hu-PD-L1(eBioscience/Affymatrix、Santa Clara、CA)を使用して、PD-L1発現に関して各調製物の試料を試験した。さらに、HLA-DRアルファ(APC)およびHLA DRベータPE(eBioscience/Affymatrix、Santa Clara、CA)発現も、D1およびD2から単離された細胞において評価した。
【0132】
図5Bを参照すると、バフィーコート(Stanford blood Center、CA)からヒトTリンパ球を単離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈し、PBMCの単離のためにフィコール上に重層した。ヒトPBMCをPBSで4回洗浄し、製造業者のプロトコール(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)に記載されている通り、負の選択を用いたヒト特異的汎T細胞単離キットを使用して、Tリンパ球を単離した。図5Bに示す通り、DCは、静止したT細胞から予想される通り、LAG3およびPD-1等の、最小レベルの共阻害受容体を発現した。さらに、図5Cを参照すると、親RKO細胞系およびHLA-DR AB1*15コトランスフェクトされた細胞は、10%FBSを含有するイーグルの最小必須培地(MEM)(Corning、Fisher Scientific)で生育させた。安定にトランスフェクトされたRKO細胞のため、選択抗生物質としてG418を添加した。親およびHLA-DR ABトランスフェクトされたRKO細胞の両方が、高レベルのPD-L1を発現した。
【0133】
T細胞増殖アッセイ&サイトカイン放出アッセイ
【0134】
Kruisbeek et al, 2004から、いくつかの改変を加えて、MLRプロトコールを適応させた。初代ヒトDC分化された、HLA-DR AB1トランスフェクトされたRKO細胞およびRKO親を、最適な抗原提示細胞状態のために実験当日に収集し、T細胞活性化に必要な、高レベルのPD-L1発現、ならびにCD80およびCD86等の共刺激マーカーに関してフローサイトメトリーによって検証した(データ図示せず)。細胞を計数し、低用量の50ug/mLマイトマイシンC(sigma Aldrich、Saint Louis、MO)で処置して、細胞が、サイトカインを分泌するのを防止したが、T細胞への抗原提示支持としてのみ機能するようにした。よって、アッセイの成績は、T細胞のみによって誘導された。
【0135】
上に記載されている同じプロトコールに従って、同種異系間ドナーから新鮮に単離されたヒトT細胞を収集した。異なる濃度の抗PD-1抗体(ニボルマブおよびペムブロリズマブ)、抗LAG3抗体、陰性および陽性対照抗体、または培地単独(ベースライン反応を評価するために)の存在下で、T細胞を放射線照射されたDCと共に、10:1の比(最適なアッセイ条件のためにT:DCまたはRKO-)で蒔いた。96ウェル平底組織培養処置プレート(Fisher Scientific Pittsburg、PA)に全条件を蒔いた。無血清X-vivo15培地(Lonza、Walkersville、MD)を使用して細胞を培養して、実験間のヒト血清可変性を防止した。異なるドナーに依存して5~8日間、5%COにより37℃で培養物をインキュベートした。光学顕微鏡下でT細胞塊の生成をモニターして、T細胞増殖の徴候があればそれを捕捉した(図6A図6F図7A図7Dおよび図8Aにおける例)。収集当日に、上清を採取し、製造業者のプロトコールに従って、IFN-ガンマおよびTNFアルファに関してMeso Scale Discovery(MSD LLC.、Maryland、MD)キットを使用してサイトカイン濃度を測定した。MLRアッセイからのT細胞増殖測定のため、Violet CellTrace(商標)Violet細胞増殖キット(ThermoFisher、San Diego、CA)でT細胞を処置した。収集日に、抗CD3抗体PE(ThermoFisher、San Diego、CA)で細胞を染色した。死細胞(生および死細胞染色eFlour510、ThermoFisher、San
Diego、CAで染色)およびGFP陽性細胞をゲートから出した。CD3陽性細胞をゲートに入れ、Violet trace染色に関して解析した。
【0136】
図8Aの中央ヒストグラムに示す通り、RKOトランスフェクトされた細胞は、T細胞を活性化して、増殖させることができた。増殖したT細胞は、各増殖サイクルにおける色素の等分割により色素を失い、陰性として見えた。図8Aにおけるヒストグラムの左および右パネルの両方に示す通り、T細胞が増殖しなかった場合、T細胞は色素を維持した。DCは、RKO HLA-DR ABと比較して同様の結果を示した(データ図示せず)。RKOおよびDCは、高レベルのPD-L1を発現するため、PD-L1の発現により、T細胞における増殖は阻害された。図8Bに示す通り、抗PD-L1抗体の添加は、T細胞の増殖を増加させた。フローサイトメトリー(CytofLEX S解析機器、Beckman Coulter)を使用して、データを取得し、Flowjoソフトウェアバージョン10.2を使用してデータ解析を行った。
【0137】
図6A図6Fおよび図7A図7Dは、異なる拡大率による、ドナー1および2から得られた増殖するT細胞の代表的な写真を示した。図7Aは、RKO親細胞と共に培養された場合に、ドナー1(D1)T細胞が増殖しなかったことを実証する。それぞれ、図6Aは、D1 T細胞が、抗PD-1抗体による処置後に増殖したことを示し、図6Eは、ドナー2(D2)T細胞が、抗PD-1抗体による処置後に増殖したことを示す。図6Bおよび図6Cは、D1 T細胞が、HLA-DR(アルファおよびベータ単位の両方を有する)トランスフェクトされたRKO細胞と共に培養した場合に増殖したことを示す。同様に、図6Dおよび図6Fは、D2 T細胞が、HLA-DR(アルファおよびベータ単位の両方を有する)トランスフェクトされたRKO細胞と共に培養した場合に増殖したことを示す。対比として、T細胞が、RKO親細胞と共に(図6G)、またはいかなる処置もなく(図6H)培養された場合、T細胞は増殖しなかった。
【0138】
さらに、図7B図7Dを参照すると、T細胞は、HLA-DR A+B(アルファおよびベータ単位の両方を有する)トランスフェクトされたRKO細胞と共に培養した場合に増殖した。T細胞芽球およびクラスターを実線の丸の中に示し、RKO細胞を破線の丸で囲む。
【0139】
MSD U-Plexキット(Meso Scale Discovery LLC(Maryland MD))を使用して、上述の培養物の上清からサイトカインを測定した。結果をMSD MESO QuickPlex SQ 120解析機器に流し、MSDソフトウェアおよびGraphPad Prismを使用して解析した。統計解析のため、二元配置Anovaを使用した。IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL-1ベータおよびIL-6のレベルを測定した。図8Cを参照すると、RKO親系統と比較して、RKO HLA-DR細胞またはDC(図示せず、陽性対照のみとして陽性対照を使用)と共にインキュベートしたT細胞から、IFN-ガンマおよびTNF-アルファは増加し、チェックポイント阻害剤による処置は、これらの培養物におけるサイトカイン分泌を増加させた。IL-1ベータおよびIL-6は、検出されなかったまたは低レベルで検出され、DC等の自然細胞または腫瘍RKO細胞からではなく、T細胞活性化によりサイトカインが分泌されたことを示す。2連のデータをSEMと共に提示した。RKOまたはRKO HLA-DR1のデータを図8Cおよび下表に示す。
表2.親RKO細胞系対HLA-DR ABコトランスフェクトされたRKO細胞系による、MLRにおいて活性化されたT細胞からのサイトカイン分泌
【表2】
【0140】
(実施例3)
天然に存在しないクラスI MHC構成成分の投与
【0141】
卵巣がんを患う個体は、卵巣組織におけるベースラインHLA-A発現レベルと比べて、卵巣がんにおいて低下したHLA-A発現を示すことが決定される。患者に、卵巣組織における増強された発現のために改変された天然に存在しないHLA-A遺伝子を含むアデノウイルスベクターを投与する。個体における天然に存在しないHLA-A遺伝子の発現が回復される。
【0142】
(実施例4)
結腸がんにおける過剰メチル化されたHLAプロモーター領域の標的化された脱メチル化
【0143】
免疫チェックポイント阻害剤療法に対し無応答性であることが以前に示された結腸がんを患う個体に腫瘍生検を行う。先ず、クラスI HLAおよびクラスII HLA遺伝子のそれぞれの発現を決定する。クラスI HLA遺伝子のそれぞれは、正常なクラスI HLA発現と比べて重篤に低下した発現を有することが示される。腫瘍由来のDNAと共に、同じ個体の非がん性組織由来のDNAを抽出する。HLA-A、HLA-BおよびHLA-C遺伝子のそれぞれに関し、各DNA試料のアリコートを配列決定する。残っているDNA試料を亜硫酸水素塩で処置し、同じ遺伝子をその後に配列決定する。亜硫酸水素塩処置DNAと非亜硫酸水素塩処置配列との比較は、3種のHLAクラスI遺伝子のそれぞれのプロモーターが、プロモーター当たり2個の異なるCpG部位における非がん性HLAクラスI遺伝子に関してメチル化されることを明らかにする。
【0144】
7種の異なる核酸分子を含む免疫療法組成物を作製し、これらは、TET酵素(脱メチル化酵素)に融合された非活性化されたCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする1種の核酸分子、およびガイドRNA(gRNA)をコードする残る6種の核酸分子であり、各gRNAは、プロモーターにおいて同定された6種のメチル化されたCpG部位のうち1種を標的化する。本組成物を、個体に投与する。1日後に個体におけるクラスI HLA分子の発現を査定し、上昇したことが示される。次に、免疫チェックポイント阻害剤療法を個体に投与する。
【0145】
(実施例5)
クラスII MHC構成成分の投与
【0146】
膵がんを患う個体に、HLA-DQA1およびHLA-DQB1遺伝子をコードするプラスミドを含むリポソームを投与する。
【0147】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、当業者には、斯かる実施形態が単なる一例として提供されていることが明らかとなるであろう。そこで、当業者であれば、本開示から逸脱することなく、多数の変動、変化および置換を想定するであろう。本開示の実施において、本明細書に記載されている本開示の実施形態の様々な代替を用いることができることを理解するべきである。以下の特許請求の範囲が、本開示の範囲を定義し、これにより、このような特許請求の範囲内の方法および構造物、ならびにこれらの均等が網羅されることが意図される。
表3. HLA対立遺伝子
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
図1
図2
図3
図4A-B】
図4C-D】
図4E
図5
図6A-D】
図6E-H】
図7
図8A-B】
図8C
【外国語明細書】