(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005119
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240110BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 305
B41J2/165 303
B41J2/165 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105160
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】花神 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 潤一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC22
2C056FA13
2C056JA04
2C056JA08
2C056JA09
2C056JB04
2C056JB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キャッピング動作を適切に行いつつ、記録装置の簡素化及び小型化を図る。
【解決手段】第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射する液体噴射ヘッド2と、媒体Sを支持する支持面61と、ノズルに対向する開口部と、を有する媒体支持部材6と、噴射方向に見て開口部内に配置されるキャップ40と、媒体支持部材6とキャップ40とを連結する連結部材50であって、ベース部材51と、ベース部材51と媒体支持部材6とを接続して第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材とを有する連結部材50と、連結部材50を液体噴射ヘッド2に対して第1軸に沿って相対移動させる移動機構80と、を備える構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記媒体を支持する支持面と、前記ノズルに対向する開口部と、を有する媒体支持部材と、
前記噴射方向に見て前記開口部内に配置されるキャップと、
ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、
前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記液体噴射ヘッドが前記媒体に対して液体を噴射する噴射動作を実行している間、前記支持面に対して前記噴射面とは反対側に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して近づく前記相対移動により前記媒体支持部材が当該媒体支持部材に対向する対向部材に当接して前記第1接続部材が縮むことで、前記キャップが前記開口部を介して前記噴射面に接触するキャッピング動作が行われる、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記液体噴射ヘッド、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材、又は、前記液体噴射装置の本体フレームの何れかである、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記対向部材は、前記ヘッド支持部材又は前記本体フレームであり、
前記媒体支持部材は、前記噴射方向に見て前記媒体が搬送される領域から外れた非搬送領域に、前記支持面から前記噴射方向とは反対方向に突出する突出部を有し、
前記キャッピング動作が行われる際、前記突出部が前記ヘッド支持部材又は前記本体フレームに当接することで、前記第1接続部材が縮む、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記対向部材は、前記液体噴射ヘッドであり、
前記液体噴射ヘッドは、前記噴射面の外周部に、当該噴射面から前記噴射方向に突出する外周リブを有し、
前記キャッピング動作が行われる際、前記外周リブが前記媒体支持部材に当接することで前記第1接続部材が縮む、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
払拭部材を更に備え、
前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して離れる前記相対移動により形成された前記媒体支持部と前記噴射面との間の空間において、前記払拭部材を前記噴射面に対して前記噴射面に沿って相対移動させることで前記噴射面を払拭するワイピング動作が行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材と、を含むヘッドユニットを有し、
前記移動機構は、前記連結部材又は前記ヘッドユニットの一方のみを前記第1軸に沿って往復移動させる駆動源を含み、
前記相対移動は、前記駆動源のみによって行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記開口部は、前記噴射方向に見て、前記噴射面よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記第1接続部材は、前記ベース部材の前記噴射方向の反対方向を向く面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記連結部材は、前記ベース部材と前記キャップとを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第2接続部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記液体噴射ヘッドは、前記媒体の幅以上の長さを有するラインヘッドを構成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記噴射方向に見て互いに隙間を空けて配置され、前記媒体を支持する支持面を有する複数の媒体支持部材と、
前記噴射方向に見て前記隙間に配置されるキャップと、
ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、
前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項14】
前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して近づく前記相対移動により前記媒体支持部材が当該媒体支持部材に対向する対向部材に当接して前記第1接続部材が縮むことで、前記支持面に対して前記噴射面とは反対側に位置する前記キャップが前記隙間を介して前記噴射面に接触するキャッピング動作が行われる、
ことを特徴とする請求項13に記載の液体噴射装置。
【請求項15】
前記対向部材は、前記液体噴射ヘッド、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材、又は、前記液体噴射装置の本体フレームの何れかである、
ことを特徴とする請求項14に記載の液体噴射装置。
【請求項16】
前記対向部材は、前記ヘッド支持部材であり、
前記支持面は、前記噴射方向に見て、前記ヘッド支持部材の少なくとも一部に重なる、
ことを特徴とする請求項15に記載の液体噴射装置。
【請求項17】
前記対向部材は、前記液体噴射ヘッドであり、
前記支持面の一部は、前記噴射方向に見て、前記液体噴射ヘッドの一部に重なる、
ことを特徴とする請求項15に記載の液体噴射装置。
【請求項18】
前記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材と、を含むヘッドユニットを構成し、
前記移動機構は、前記連結部材又は前記ヘッドユニットの一方のみを前記第1軸に沿って往復移動させる駆動源を含み、
前記相対移動は、前記駆動源のみによって行われる、
ことを特徴とする請求項13に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に液体を噴射する液体噴射装置の代表例としては、液体としてのインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」ともいう)を備え、この記録ヘッドから紙や記録シート等の媒体にインクを噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置(以下、単に「記録装置」ともいう)が知られている。
【0003】
インクジェット式記録装置としては、様々な構造のものがあるが、例えば、記録ヘッドが、記録装置に固定された支持体に支持されると共に、記録ヘッドのノズルが開口する噴射面を覆うためのキャップと、噴射面に対向して設けられて媒体を支持する媒体支持部材と、を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1には、具体的には、ノズルに相当する吐出口を備える複数のラインヘッドと、各ラインヘッドに対向するように設けられてキャップ部材を有する複数のインク受器と、媒体を支持する媒体支持部材に相当するプラテンと、を備えると共に、インク受器及びプラテンが固定される接続部材と、駆動部と、を備えて構成されて、インク受器及びプラテンを上下動させる上下動手段を備える構成が開示されている。
【0005】
このような構成では、上下動手段の駆動のみによって、インク受器をラインヘッドの底面に当接させるキャッピング動作を行うことができる。また、記録動作の間に、インク受器を移動させなくても、記録動作を邪魔することなく空噴射(空吐出)を行うことができる。また、キャッピング動作や空噴射のために、ラインヘッドやインク受器を、噴射方向とは交差する方向へ移動させる必要がないため、ラインヘッドやインク受器を移動させるための移動機構の簡素化及び小型化を図ることができる。結果として、記録装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の構成では、媒体支持部材及びキャップが一体として上下動するため、キャッピング動作を行う際に、媒体支持部材の上部に配置された記録ヘッドや記録ヘッドなどに媒体支持部が衝突しないように、媒体支持部材や記録ヘッド等を配置する位置を考慮しなければならないという制約がある。例えば、近年では高画質化の要求が高まっており、その要求に応えるために、複数の記録ヘッドが密にレイアウトされるようになってきており、このような構成では、隣り合う記録ヘッドの隙間に媒体支持部材を配置することが難しい。結果として、記録装置を十分に簡素化及び小型化することができない虞がある。
【0008】
なお、このような課題は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置だけでなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記媒体を支持する支持面と、前記ノズルに対向する開口部と、を有する媒体支持部材と、前記噴射方向に見て前記開口部内に配置されるキャップと、ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0010】
また本発明の他の態様は、媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記噴射方向に見て互いに隙間を空けて配置され、前記媒体を支持する支持面を有する複数の媒体支持部材と、前記噴射方向に見て前記隙間に配置されるキャップと、ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る記録装置の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る記録装置の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットを示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る記録装置のプラテン部分の平面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る連結部材を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る連結部材を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図11】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図13】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図14】本発明の実施形態1に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図15】本発明の実施形態2に係る連結部材を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態2に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図17】本発明の実施形態3に係る連結部材を示す断面図である。
【
図18】本発明の実施形態3に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図19】本発明の実施形態4に係る連結部材を示す断面図である。
【
図20】本発明の実施形態4に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図21】本発明の実施形態5に係る媒体支持部材を示す平面図である。
【
図22】本発明の実施形態5に係る連結部材を示す断面図である。
【
図23】本発明の実施形態5に係る連結部材の動作を説明する断面図である。
【
図24】本発明の他の実施形態に係る連結部材を示す断面図である。
【
図25】本発明に係る連結部材の動作の他の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様についての説明であり、本発明の構成は、発明の範囲内で任意に変更可能である。
【0013】
また、各図においてX、Y、Zのそれぞれは、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸を表している。本明細書では、X軸に沿った方向をX軸方向、Y軸に沿った方向をY軸方向、Z軸に沿った方向をZ軸方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれに関して、各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また+Z方向は鉛直方向下向きを示し、-Z方向は鉛直方向上向きを示す。さらに、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれは、正方向及び負方向を限定しない方向として説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は本発明に係る「液体噴射装置」の一例であるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
図2はインクジェット式記録装置の概略構成を示す平面図である。また
図3はインクジェット式記録装置の概略構成を示す側面図であり、
図4は、
図2のA-A線に対応する断面図である。また
図5は、実施形態1に係るヘッドユニットを示す平面図であり、
図6は、実施形態1に係る記録装置のプラテン部分を示す平面図である。さらに
図7及び
図8は連結部材を示す断面図であり、
図7は
図6のB-B線に対応する図であり、
図8は
図6のC-C線に対応する図である。
【0015】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録装置1は、複数のインクジェット式記録ヘッド2を備えるインクジェット式記録ヘッドユニット(以下、単に「ヘッドユニット」とも言う)3を備え、紙や記録シート等の媒体SをX軸方向に搬送すると共に、記録ヘッド2から媒体Sに向かって「噴射方向」の一例である+Z方向に「液体」の一例であるインクを噴射することで印刷を行う、いわゆるライン式記録装置である。つまり、「噴射方向」はZ軸に沿う方向であり、本実施形態のZ軸は「第1軸」の一例である。なお、「噴射方向」は、Z軸に沿う方向には限定されず、例えばX軸に沿う方向であってもよい。記録装置1は、ヘッドユニット3を備えると共に、本体フレーム4と、媒体Sを搬送する搬送手段5と、媒体Sを支持する「媒体支持部材」の一例であるプラテン6と、を備えている。
【0016】
ヘッドユニット3は、複数(本実施形態では、6個)の記録ヘッド2と、これら複数の記録ヘッド2を支持するヘッド支持部材7と、を備えて構成される。
【0017】
「液体記録ヘッド」の一例である記録ヘッド2は、本実施形態では、ノズル10を含むインクが流れる流路を備えるヘッドチップ21と、ヘッドチップ21を内部に保持するホルダー22とを含んで構成されている。なおヘッドチップ21の構造は、特に限定されず、公知の構造を採用すればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0018】
複数の記録ヘッド2は、ヘッド支持部材7に千鳥状にY軸方向に沿って配置されてヘッド支持部材7に固定されている。より詳しく言えば、各記録ヘッド2のヘッドチップ21を保持するホルダー22がヘッド支持部材7に固定されている。
【0019】
ヘッド支持部材7には、複数の記録ヘッド2が媒体Sの搬送方向であるX軸方向とは直交する方向であるY軸方向に沿って一列に配置された2つの列8(8A,8B)が設けられている。すなわち、ヘッド支持部材7には、複数(本実施形態では、3個)の記録ヘッド2が一列に配置された2つの列8A,8Bが、X軸方向に並設されている。そして、一方の列8Aを構成する記録ヘッド2と、他方の列8Bを構成する記録ヘッド2とは、互いにY軸方向にずれて配置されている。
【0020】
ここで、各記録ヘッド2を構成するヘッドチップ21は、
図5に示すように、複数のノズル10が設けられたノズルプレート11を備えている。すなわちヘッドユニット3が備える複数の各記録ヘッド2には、ノズルプレート11の表面を含む面である噴射面2aに形成された複数のノズル10が設けられている。本実施形態では、各記録ヘッド2のノズルプレート11には、複数のノズル10がY軸方向に沿って一列に配置された2つのノズル列12が設けられている。X軸方向で隣り合う記録ヘッド2は、一方の記録ヘッド2のノズル列12の端部のノズル10と、他方の記録ヘッド2のノズル列12の端部のノズル10とが、Y軸方向において同一位置となるように配置されている。これにより、Y軸方向である媒体Sの幅方向に亘って全ての領域で印刷を行うことができる。すなわち、これら複数の記録ヘッド2を有するヘッドユニット3は、媒体SのY軸方向に関する幅以上の長さを有するラインヘッドを構成する。
【0021】
なお、本実施形態の噴射面2aは、ノズルプレート11の+Z方向を向く面によって構成されているが、この態様には限られない。例えば、記録ヘッド2が、ノズルプレート11に形成された複数のノズル10を外部に露出する露出開口部が形成されたカバー部材を更に備え、ホルダー22と当該カバー部材との間にヘッドチップ21が配置されている場合には、「噴射面」は、カバー部材の+Z方向を向く表面とノズルプレート11の+Z方向を向く表面とを含む。
【0022】
また図示は省略するが、ヘッドユニット3が備える各記録ヘッド2には、インクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段が接続されている。インク貯留手段は、例えば、ヘッドユニット3上に保持されていてもよいし、本体フレーム4内のヘッドユニット3とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0023】
また本実施形態では、ヘッドユニット3として、記録ヘッド2が一列に配置された2つの列8がX軸方向で並設された構成を例示したが、ヘッドユニット3の構成はこれに限定されるものではない。ヘッドユニット3は、3つ以上の列8がX軸方向で並設された構成あってもよく、あるいは1つの列8を備える構成であってもよい。また記録ヘッド2に2つのノズル列12が設けられた構成を例示したが、記録ヘッド2の構成はこれに限定されるものではない。記録ヘッド2は、例えば、1つのノズル列12を備えるものであってもよい。
【0024】
搬送手段5は、媒体Sを搬送するためのものであり、媒体Sの搬送方向であるX軸方向において、ヘッドユニット3の両側に設けられた第1の搬送手段13及び第2の搬送手段14を備えている。
【0025】
第1の搬送手段13は、駆動ローラー13aと、従動ローラー13bと、これら駆動ローラー13a及び従動ローラー13bに巻回された搬送ベルト13cとで構成されている。また、第2の搬送手段14は、第1の搬送手段13と同様に駆動ローラー14a、従動ローラー14b及び搬送ベルト14cで構成されている。
【0026】
これらの第1の搬送手段13及び第2の搬送手段14のそれぞれの駆動ローラー13a,14aには、図示しない駆動モーター等の駆動手段が接続されており、駆動手段の駆動力によって搬送ベルト13c,14cが回転駆動することで、媒体Sをヘッドユニット3の上流側及び下流側で搬送する。
【0027】
媒体支持部材であるプラテン6は、媒体Sを支持する支持面61を有し、第1の搬送手段13と第2の搬送手段14との間にヘッドユニット3に対向して設けられる。プラテン6は、第1の搬送手段13及び第2の搬送手段14によって支持面61上に搬送された媒体Sを、ヘッドユニット3に対向する位置で支持する。このプラテン6は、断面が矩形状を有する金属板又は樹脂板等からなり、詳しくは後述するが、キャップ40と共に昇降可能に構成されている。
【0028】
上記構成の記録装置1では、第1の搬送手段13によって媒体Sがプラテン6の支持面61上に搬入され、支持面61で支持された媒体Sに向かって記録ヘッド2のノズル10から+Z方向にインクを噴射する記録動作が実行され、この記録動作により画像が形成された媒体Sが第2の搬送手段14によってプラテン6上から搬出される。記録動作は、「噴射動作」の一例である。
【0029】
また記録装置1は、各記録ヘッド2の噴射面2aを払拭するための「払拭部材」の一例であるブレード部材31を有するワイピング装置30を備えている。ワイピング装置30は、所定のタイミング、例えば、記録動作により記録ヘッド2の噴射面2aがインク等の液体で汚れたときや、一定量の印刷を行う毎に、ワイピング動作を実行する。ワイピング動作とは、記録ヘッド2の噴射面2aにブレード部材31の先端部を摺接させて、噴射面2aのインク等の液体を拭き取り処理(ワイピング)する動作をいう。
【0030】
本実施形態に係るワイピング装置30は、ブレード部材31を備えると共に、本体フレーム4に固定された2本の軸部材32と、軸部材32の軸方向に移動自在に設けられてブレード部材31が保持される保持部材33と、を備えている。
【0031】
ブレード部材31は、記録ヘッド2の噴射面2aを払拭するためのものであり、ゴムやエラストマー等の弾性材料で形成された板状部材からなる。このブレード部材31は、Y軸方向に並設された記録ヘッド2の各列8に対応して設けられている。本実施形態では、ヘッドユニット3に、記録ヘッド2が並設された2つの列8A,8Bが設けられているため、ワイピング装置30は、各列8A,8Bに対応する2つのブレード部材31を備えている。
【0032】
軸部材32は、ヘッドユニット3とプラテン6との間の領域に、媒体Sの搬送方向であるX軸方向と直交するY軸方向に沿って設けられている。これら軸部材32は、媒体Sの搬送を妨げないように配置されている。具体的には、軸部材32は、X軸方向におけるプラテン6の外側で、且つプラテン6よりも+Z方向に設けられている。
【0033】
保持部材33は、2本の軸部材32に摺動自在に設けられ、図示は省略するが、駆動モーター、オイル等を送る圧力ポンプ、電磁石等の駆動力によって軸部材32の任意の位置に移動可能となっている。
【0034】
そしてワイピング装置30は、所定のタイミングでワイピング動作を実行する。すなわちワイピング装置30は、ブレード部材31が保持された保持部材23を所定のタイミングで軸部材32に沿って移動させることで、記録ヘッド2の噴射面2aを払拭するワイピング動作を実行する。
【0035】
ただし、例えば、記録動作時には、記録ヘッド2とプラテン6との間隔は比較的狭くなっており、保持部材33を軸部材32に沿って移動させることはできない。詳しくは後述するが、ワイピング動作を行う際には、プラテン6と記録ヘッド2との間隔が広がるようにプラテン6を記録ヘッド2に対して相対移動させる。
【0036】
なお本実施形態では、ワイピング装置30として、記録ヘッド2の噴射面2aを払拭するブレード部材31を備える構成を例示したが、この構成はあくまで一例であり、ワイピング装置30の構成はこれに限定されるものではない。例えば、ワイピング装置30は、ブレード部材31の代わりに、インクを吸収可能な吸収部材を備えるものであってもよい。吸収部材は、例えば、スポンジのような多孔質部材や布等からなる帯状部材である。
【0037】
記録装置1は、
図3及び
図4に示すように、記録ヘッド2の噴射面2aに当接するキャップ40を備えている。
【0038】
キャップ40は、例えば、印刷が長期間実行されない場合等に、記録ヘッド2のノズル10付近のインクの乾燥を抑制するためのものであり、各記録ヘッド2に対応して設けられ、記録ヘッド2の噴射面2aの略全体を覆う大きさで形成されている。
【0039】
図8に示すように、キャップ40は、底壁42と、底壁42から-Z方向に突出する側壁43とを含む凹部形状を有する。
図6に示すように、側壁43は、+Z方向に見て環状を有する。
図6及び
図8に示すように、キャップ40の先端部、すなわち-Z方向の端部には、凸状の弾性材料から成るシール部材44が設けられており、このシール部材44が噴射面2aに接触することによってキャップ40を記録ヘッド2に密着できるようになっている。なお、
図6及び
図8以外の図面には、シール部材44の図示を省略している。以上の通り、キャップ40は、噴射面2aに接触することで噴射面2aに設けられた複数のノズル10が開口する閉空間を形成するキャッピングが可能である。
【0040】
またキャップ40の底壁42には、
図8に示すように、例えば、真空ポンプ等で構成される吸引装置(図示なし)に繋がる吸引管(チューブ)41が接続されている。記録ヘッド2の噴射面2aをキャップ40で塞いだ状態(キャッピング状態)で、吸引装置によりキャップ40の内部を負圧にすることで、記録ヘッド2のノズル10からインクを吸引する吸引動作が所定のタイミングで実行される。この吸引動作により、記録ヘッド2内のインクを気泡と共にノズル10からキャップ40内に排出させる。
【0041】
またキャップ40は、例えば、記録動作の間に実施される空噴射動作の際のインクの受け皿としても使用される。空噴射動作とは、インクの増粘による記録ヘッド2のノズル10の目詰まり、ノズル10内への気泡混入等により、適正な量のインクが噴射されなくなることを抑制するために、駆動素子を駆動することで各ノズル10から媒体Sに画像を形成するのに直接寄与しないインクを噴射させる動作である。空噴射動作は、「噴射動作」の一例である。
【0042】
ここで、「駆動素子」の構成は、特に限定されないが、例えば、圧電素子、発熱素子等が挙げられる。圧電素子とは、相互に対向する電極間に圧電体を介在させたものであり、ノズル10に連通する各圧力室に対応して振動板と共に設けられる。駆動信号に基づいて圧電素子を変形させることで振動板が振動し、圧力室内のインクの圧力が変動することで、圧力室内のインクがノズル10から噴射される。発熱素子は、ノズル10に連通する流路内に配置され、この発熱素子の発熱で発生するバブルによって流路内のインクをノズル10から噴射させるものである。
【0043】
このキャップ40は、記録動作や空噴射動作である噴射動作時には、プラテン6に対して記録ヘッド2の噴射面2aとは反対側、つまりプラテン6の支持面61よりも+Z方向に配置されている。後述するようにキャップ40は、プラテン6と共にZ軸方向に移動可能に構成されており、所定のタイミングでプラテン6と共に上昇させることで記録ヘッド2の噴射面2aに当接可能となっている。
【0044】
プラテン6は、
図4及び
図6に示すように、各記録ヘッド2のノズル10に対向する開口部62を有する。開口部62は、各記録ヘッド2に対向する領域に設けられている。本実施形態では、開口部62は、プラテン6の各記録ヘッド2に対向する領域に亘って連続的に形成されている。ただし、開口部62は必ずしも連続して形成されていなくてもよく、プラテン6の各記録ヘッド2に対向する領域にそれぞれ独立して形成されていてもよい。
【0045】
また各キャップ40は、
図6に示すように、Z軸方向に見てプラテン6の開口部62内に配置されている。つまり、各キャップ40は、Z軸方向に移動させた際に、プラテン6の開口部62を通過可能に配置されている。
【0046】
一方で、開口部62は、Z軸方向に見て、記録ヘッド2の噴射面2aよりも小さく形成されている。すなわち、開口部62は、記録ヘッド2が入り込まない大きさで形成されている。開口部62をこのような大きさで形成することで、プラテン6を用いた媒体Sの搬送の安定性を向上することができる。
【0047】
これらキャップ40とプラテン6とは連結部材50によって連結されている。連結部材50は、
図7及び
図8に示すように、ベース部材51と、第1接続部材52と、第2接続部材53とを有する。第1接続部材52及び第2接続部材53は、ベース部材51の噴射方向の反対側を向く面、つまり-Z方向を向く面54に設けられている。そしてプラテン6は、第1接続部材52によってベース部材51に接続されている。またキャップ40は、第2接続部材53によってベース部材51に接続されている。つまりプラテン6は、第1接続部材52、ベース部材51及び第2接続部材53を介してキャップ40と連結されている。
【0048】
第1接続部材52及び第2接続部材53は、Z軸方向に伸縮可能な部材、例えば、コイルばね等の金属ばねやエラストマー等によって形成されている。ただし、第1接続部材52及び第2接続部材53は、同一部材ではなく、その長さやばね力は必要に応じて設定される。また第2接続部材53は、必ずしもZ軸方向に伸縮可能な部材で形成されていなくてもよい。すなわちキャップ40は、ベース部材51に対して常に一定の間隔となるように第2接続部材53によって固定されていてもよい。
【0049】
本実施形態では、第1接続部材52は、
図6や
図8に示されるように、各キャップ40のY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。つまり、第1接続部材52は、X軸方向に関してキャップ40と同じ位置に配置されている。換言すれば、Y軸方向に見て、第1接続部材52とキャップ40とは重なる。このように、Y軸方向に関して隣り合うキャップ40の隙間に第1接続部材52を配置するようにしたので、キャップ40と第1接続部材52とをX軸方向に関して異なる位置に配置する場合に比べて、プラテン6を小型化することができる。プラテン6は、これら複数の第1接続部材52によってベース部材51に接続されている。キャップ40に接続された第2接続部材53は、Y軸方向における吸引管41の両側にそれぞれ設けられている。つまり各キャップ40は、これら2つの第2接続部材53によってベース部材51に接続されている。
【0050】
そして、第1接続部材52及び第2接続部材53が縮んでいない状態、つまり第1接続部材52及び第2接続部材53が自然長である状態において、各キャップ40はプラテン6の支持面61よりも+Z方向に配置される。
【0051】
また記録装置1は、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸に沿って相対移動させる移動機構80を備えている(
図3参照)。本実施形態では、移動機構80は、連結部材50のみをZ軸方向に移動させる。つまり移動機構80は、固定された記録ヘッド2に対して近づくように、あるいは記録ヘッド2に対して離れるように、連結部材50のみを昇降させる。
【0052】
移動機構80の構成は、特に限定されないが、例えば、ラックピニオン機構等により構成される。例えば、移動機構80は、ベース部材51のZ軸方向に延びる壁面に設けられるラック81と、このラック81と噛み合うピニオン82とを含み、ピニオン82は、モーター等の駆動源83に接続されている。これにより、駆動源83によりピニオン82を一方側に回転させることで連結部材50が+Z方向に移動し、ピニオン82を他方側に回転させることで連結部材50が-Z方向に移動する。すなわち本実施形態では、移動機構80は、駆動源83のみによって連結部材50をZ軸方向に沿って往復移動させることで、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸方向沿って相対移動させる。
【0053】
なお移動機構80は、駆動源83のみによって記録ヘッド2を支持するヘッドユニット3をZ軸方向に沿って往復移動させることで、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸方向沿って相対移動させるようにしてもよい。つまり移動機構80は、駆動源83のみによって連結部材50又はヘッドユニット3の一方のみをZ軸方向に沿って往復移動させることで、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸方向沿って相対移動させるものであればよい。これにより、装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0054】
本体フレーム4の底面には、移動機構80による連結部材50の移動をガイドするガイド機構としてのガイドピン55が立設されている。ベース部材51には、ガイドピン55が挿通されるガイド孔56が形成されている。同様に、後述するプラテン6の非搬送領域NTA(
図6参照)に対応する部分には、ガイドピン55が挿通されるガイド孔57が形成されている(
図4参照)。本実施形態では、ガイドピン55を1本設けているが、必要に応じて2本以上設けるようにしてもよい。またガイド機構の構成は、特に限定されず、例えば、ガイドレールと、ガイドレールに係合するガイドローラーとを有するもの等であってもよい。
【0055】
プラテン6は、Y軸方向に関して3つの領域に分割される。これら3つの領域は、具体的には、媒体Sが搬送される搬送領域TA、および、媒体Sが搬送されない2つの非搬送領域NTAである。2つの非搬送領域NTAは、+Z方向に見て、搬送領域TAのY軸方向の両外側に配置されている。つまり、支持面61は、搬送領域TAで媒体Sを支持するが、非搬送領域NTAでは媒体Sを支持しない。また、搬送領域TAは、Z軸方向に見てヘッドユニット3に設けられた複数のノズル10と重なる領域であり、非搬送領域NTAは、Z軸方向に見てヘッドユニット3に設けられた複数のノズル10が存在しない領域である。つまり、搬送領域TAは、記録動作が行われる記録領域と換言でき、非搬送領域NTAは、記録動作が行われない非記録領域と換言できる。
【0056】
【0057】
まず噴射動作である記録動作時及び空噴射動作時には、
図7及び
図8に示すように、連結部材50のベース部材51はZ軸方向において初期位置P0に配置される。初期位置P0においては、記録ヘッド2とプラテン6との間には、媒体Sを搬送可能な程度の隙間が形成され、各キャップ40はプラテン6の支持面61よりも+Z方向に配置される。
【0058】
キャッピング動作時には、
図9及び
図10に示すように、連結部材50のベース部材51を初期位置P0から第1位置P1まで-Z方向に移動させる。つまりベース部材51を初期位置P0から第1位置P1まで上昇させる。これによりベース部材51と共に、プラテン6及びキャップ40が-Z方向に移動して、キャップ40のシール部材44が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接して噴射面2aが塞がれる。
【0059】
より詳しくは、ベース部材51を初期位置P0から上昇させると、
図11及び
図12に示すように、ベース部材51を第2位置P2まで上昇させた時点でプラテン6が「対向部材」に当接する。「対向部材」とは、記録ヘッド2、ヘッド支持部材7又は本体フレーム4の何れかであり、Z軸方向でプラテン6に対向する部材である。本実施形態に係る「対向部材」は、記録ヘッド2の一部を構成するホルダー22であり、プラテン6はこのホルダー22に当接する。
【0060】
ホルダー22の外周部には、記録ヘッド2の噴射面2aよりも+Z方向に突出する外周リブ22aが設けられている。外周リブ22aは、噴射面2aに対して0.1mm程度、+Z方向に突出している。このため、プラテン6は、記録ヘッド2の噴射面2aには当接することなく、ホルダー22の外周リブ22aに当接する。これにより、記録ヘッド2の噴射面2aにプラテン6が接触して変形したり、噴射面2aに形成される撥水膜が剥がれたりするのを抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態の外周リブ22aは、噴射面2aとは別体であるホルダー22の一部として設けられているが、外周リブ22aは、噴射面2aの外周部分から+Z方向に突出することで噴射面2aを構成するノズルプレート11の一部として設けるようにしてもよい。また、前述のように、噴射面2aがノズルプレート11およびカバー部材によって構成されている場合には、外周リブ22aをカバー部材の一部として設けるようにしてもよい。
【0062】
そして、この外周リブ22aとプラテン6との当接により、プラテン6の-Z方向への移動は規制される。ただしプラテン6とベース部材51とを接続している第1接続部材52が縮むことで、ベース部材51はキャップ40と共にさらに上昇する。この上昇により、キャップ40は、プラテン6の開口部62を通過して、プラテン6の支持面61よりも-Z方向に移動する。そして
図9及び
図10に示すように、ベース部材51が第1位置P1まで上昇すると、キャップ40が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接する。
【0063】
またワイピング動作時には、
図13及び
図14に示すように、連結部材50のベース部材51を、例えば、初期位置P0から第3位置P3まで+Z方向に移動させる。つまりベース部材51を初期位置P0から第3位置P3まで下降させる。これによりベース部材51と共に、プラテン6及びキャップ40が-Z方向に移動して、記録ヘッド2の噴射面2aとプラテン6との間には所定の広さの空間100が形成される。
【0064】
そしてワイピング装置30は、この状態でワイピング動作を実行する。すなわち、ワイピング装置30は、連結部材50の移動により形成され空間100内でブレード部材31をY軸方向に沿って移動させることで(
図14参照)、ブレード部材31によって記録ヘッド2の噴射面2aを払拭する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の記録装置1(液体噴射装置)は、媒体Sに向かってZ軸(第1軸)に沿う+Z方向(噴射方向)にインク(液体)を噴射するノズル10を含む噴射面2aを有する記録ヘッド2(液体噴射ヘッド)と、媒体Sを支持する支持面61と、ノズル10に対向する開口部62と、を有するプラテン6(媒体支持部材)と、+Z方向に見て開口部62内に配置されるキャップ40と、ベース部材51と、ベース部材51とプラテン6とを接続してZ軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材52と、を有し、プラテン6とキャップ40とを連結する連結部材50と、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸に沿って相対移動させる移動機構80と、を備える。
【0066】
またキャップ40は、記録ヘッド2が媒体Sに対してインクを噴射する噴射動作を実行している間、支持面61に対して噴射面2aとは反対側に配置される。
【0067】
またベース部材51が記録ヘッド2に対して近づく相対移動によりプラテン6が対向部材に当接して第1接続部材52が縮むことで、キャップ40が開口部62を介して噴射面2aに接触するキャッピング動作が行われる。
【0068】
このような構成では、キャッピング動作のためにZ軸方向に沿う上記相対移動を行う際、プラテン6が記録ヘッド2に当接しても、第1接続部材52が縮むことで、キャップ40のみをプラテン6の開口部62を介して記録ヘッド2の噴射面に近づけることができる。したがって、プラテン6と記録ヘッド2との位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0069】
対向部材は、記録ヘッド2であり、記録ヘッド2は、噴射面2aの外周部に、噴射面2aから+Z方向に突出する外周リブ22aを有し、キャッピング動作が行われる際、外周リブ22aがプラテン6に当接することで第1接続部材52が縮むようになっている。これにより、記録ヘッド2の噴射面2aにプラテン6が接触して変形したり、噴射面2aに形成される撥水膜が剥がれたりするのを抑制することができる。
【0070】
ブレード部材31(払拭部材)を更に備え、ベース部材51が記録ヘッド2に対して離れるように移動機構80によって連結部材50を相対移動させることで、プラテン6と噴射面2aとの間に空間100が形成され、この空間100においてブレード部材31を噴射面2aに対して噴射面2aに沿って相対移動させることで噴射面2aを払拭するワイピング動作が行われる。キャッピング動作時と同様に、記録ヘッド2と連結部材50とのZ軸方向の相対移動のみによってワイピング動作を実施するためのスペースを確保でき、装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0071】
記録ヘッド2と、記録ヘッド2を支持するヘッド支持部材7と、を含むヘッドユニット3を有し、移動機構80は、連結部材50のみをZ軸に沿って往復移動させる駆動源83を含み、連結部材50の記録ヘッド2に対する相対移動は、駆動源83のみによって行われる。これにより、装置構成のさらなる簡素化及び小型化を図ることができる。
【0072】
プラテン6の開口部62は、+Z方向に見て、噴射面2aよりも小さくなっている。これにより、媒体Sの搬送の安定性を向上することができる。
【0073】
連結部材50は、ベース部材51とキャップ40とを接続してZ軸に沿う方向に伸縮可能な第2接続部材53を含む。これにより、キャッピング動作を行う際、噴射面2aに対してキャップ40による過度な荷重がかかるのを抑制できる。
【0074】
(実施形態2)
図15は、実施形態2に係る記録装置1の要部を示す断面図である。また
図16は、連結部材50を上昇させた状態を示す図である。なお実施形態1と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
図15に示すように、本実施形態では、記録ヘッド2を構成するホルダー22の外周部に外周リブが形成されていない点が実施形態1と異なる。その代わりに、記録ヘッド2は、噴射面2aがヘッド支持部材7のプラテン6に対向する面7aよりも-Z方向に位置するように、ヘッド支持部材7に固定されている。言い換えれば、ヘッド支持部材7の+Z方向を向く面7aが噴射面2aよりもプラテン6の近くに位置するように、記録ヘッド2がヘッド支持部材7に固定されている。
【0076】
つまり本実施形態では、「対向部材」が記録ヘッド2を支持するヘッド支持部材7であり、ヘッド支持部材7の+Z方向の端部が、全面に亘って、噴射面2aよりも+Z方向に突出する。
【0077】
この構成では、
図16に示すように、例えば、キャッピング動作が行われる際に連結部材50を-Z方向に移動(上昇)させると、プラテン6がヘッド支持部材7に当接することで、プラテン6の-Z方向への移動が規制される。ただし、プラテン6の移動は規制されるものの、第1接続部材52が縮むことでベース部材51はキャップ40と共にさらに上昇し、キャップ40が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接する。
【0078】
その際、プラテン6はヘッド支持部材7に当接しているため、プラテン6が記録ヘッド2の噴射面2aに接触することによる、噴射面2aの変形や、噴射面2aに形成される撥水膜の剥がれを抑制できる。
【0079】
(実施形態3)
図17は、実施形態3に係る記録装置1の要部を示す断面図である。また
図18は、連結部材50を上昇させた状態を示す図である。なお上述の実施形態と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また
図17及び
図18は、
図5に示された複数の記録ヘッド2のうち-Y方向の端部に配置された記録ヘッド2及び
図6に示された複数のキャップ40のうち-Y方向の端部に配置されたキャップ40を切断した断面図に対応する。
【0080】
実施形態2では、記録ヘッド2は、噴射面2aがヘッド支持部材7のプラテン6側の面7aよりも-Z方向に位置するようにヘッド支持部材7に固定されていたが、本実施形態では、
図17に示すように、噴射面2aがヘッド支持部材7の+Z方向を向く面7aと略一致するように、記録ヘッド2がヘッド支持部材7に固定される。そして、プラテン6には、Z軸方向に見て媒体Sが搬送される搬送領域TAから外れた非搬送領域NTAに、ヘッド支持部材7に向かって支持面61よりも-Z方向に突出する突出部65が設けられている。突出部65は、
図17及び
図18に示されるように搬送領域TAに対して-Y方向に配置された非搬送領域NTAに設けられているが、搬送領域TAに対して+Y方向に配置された非搬送領域NTAに設けられていてもよい。また、突出部65は、支持面61から突出することでプラテン6の一部として設けられていてもよいし、支持面61上に配置及び固定されることでプラテン6とは別体として設けられていてもよい。
【0081】
この構成では、例えば、キャッピング動作が行われる際に連結部材50を-Z方向に移動(上昇)させると、
図18に示すように、プラテン6の突出部65がヘッド支持部材7に当接することで、プラテン6の-Z方向への移動が規制される。
【0082】
ただし、プラテン6の移動が規制されるものの、第1接続部材52が縮むことでベース部材51がキャップ40と共にさらに上昇し、キャップ40が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接する。
【0083】
その際、プラテン6の突出部65がヘッド支持部材7に当接することで、プラテン6が記録ヘッド2の噴射面2aに当接することがなく、プラテン6の接触による噴射面2aの変形や噴射面2aに形成される撥水膜の剥がれを抑制することができる。また、突出部65は非搬送領域NTAに設けられているため、突出部65が搬送領域TAで搬送される媒体Sの搬送を邪魔することはない。
【0084】
また本実施形態の構成においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。例えば、プラテン6と記録ヘッド2との位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0085】
(実施形態4)
図19は、実施形態4に係る記録装置1の要部を示す断面図である。また
図20は、連結部材50を上昇させた状態を示す図である。なお上述の実施形態と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、実施形態3と同様に、
図19及び
図20は、
図5に示された複数の記録ヘッド2のうち-Y方向の端部に配置された記録ヘッド2及び
図6に示された複数のキャップ40のうち-Y方向の端部に配置されたキャップ40を切断した断面図に対応する。
【0086】
本実施形態は、「媒体支持部材」であるプラテン6に対向する「対向部材」の変形例である。本実施形態では、本体フレーム4が「対向部材」の一例であり、プラテン6に突出部65が設けられていない点で実施形態3と相違する。
【0087】
具体的には、
図19に示すように、記録装置1の本体フレーム4のZ軸方向に延在する側壁部4aには、Y軸方向に片持ち梁状に張り出した梁部4bが設けられている。梁部4bは、プラテン6の非搬送領域NTAとZ軸方向において対向する位置まで張り出して設けられている。また梁部4bの+Z方向を向く面4cは、記録ヘッド2の噴射面2aよりも+Z方向に位置している。梁部4bは、
図19及び
図20に示されるように搬送領域TAに対して-Y方向に配置された非搬送領域NTAに設けられているが、搬送領域TAに対して+Y方向に配置された非搬送領域NTAに設けられていてもよい。
【0088】
この構成では、例えば、キャッピング動作が行われる際に連結部材50を-Z方向に移動(上昇)させると、
図20に示すように、非印搬送領域NTAにおいてプラテン6の支持面61が本体フレーム4の梁部4bに当接することで、プラテン6の-Z方向への移動が規制される。ただし、プラテン6の-Z方向への移動は規制されるものの、第1接続部材52が縮むことでベース部材51はキャップ40と共にさらに上昇し、キャップ40が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接する。
【0089】
その際、プラテン6が本体フレーム4の梁部4bに当接していることで、プラテン6が記録ヘッド2の噴射面2aに当接することはなく、プラテン6の接触による噴射面2aの変形や噴射面2aに形成される撥水膜の剥がれを抑制することができる。また、梁部4bは非搬送領域NTAに設けられているため、梁部4bが搬送領域TAで搬送される媒体Sへの記録動作を邪魔することを防ぐことができる。
【0090】
また本実施形態の構成においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。例えば、プラテン6と記録ヘッド2との位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0091】
なお本実施形態では、梁部4bの+Z方向を向く面4cを、記録ヘッド2の噴射面2aよりも+Z方向に配置するようにしたが、梁部4bの配置はこれに限定されない。例えば、梁部4bを、+Z方向を向く面4cが記録ヘッド2の噴射面2aと略一致するように設けると共に、実施形態3のように、プラテン6の支持面61に-Z方向に突出する突出部65を設けてもよい。つまり、キャッピング動作を行う際に、突出部65を、「対向部材」の一例である本体フレーム4の梁部4bに当接させるようにしてもよい。
【0092】
以上の実施形態2~4で説明したように、「対向部材」は、ヘッド支持部材7又は本体フレーム4であり、例えば、「媒体支持部材」であるプラテン6は、+Z方向に見て媒体Sが搬送される搬送領域TAから外れた非搬送領域NTAに、支持面61から+Z方向とは反対方向である-Z方向に突出する突出部65を有し、キャッピング動作が行われる際、突出部65がヘッド支持部材7又は本体フレーム4に当接することで、第1接続部材52が縮む。これにより、プラテン6が記録ヘッド2の噴射面2aに当接することはなく、プラテン6の接触による噴射面2aの変形や噴射面2aに形成される撥水膜の剥がれを抑制することができる。また、噴射面2a及びヘッド支持部材7の+Z方向を向く面7aとの間に段差が生じないように、Z軸方向に関して噴射面2aの位置とヘッド支持部材7の面7aとの位置とを一致または略一致するように配置できるため、ワイピング動作を行いやすくすることもできる。
【0093】
(実施形態5)
図21~
図23は、実施形態5に係る「媒体支持部材」を説明する模式図であり、
図21は、本実施形態に係る「媒体支持部材」を示す平面図であり、
図22は
図21のD-D線に対応する図である。また
図23は、連結部材50の動作を説明する断面図である。なお上述の実施形態と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
本実施形態は、「媒体支持部材」の変形例である。上述の実施形態に係る記録装置1は、複数の記録ヘッド2を有するヘッドユニット3に対向する領域に、一枚の板状部材であるプラテン6を「媒体支持部材」として備えていた。これに対し、本実施形態に係る記録装置1は、ヘッドユニット3に対向する領域に、複数の「媒体支持部材」を備えている。具体的には、
図21及び
図22に示すように、本実施形態に係る記録装置1は、プラテン6の代わりに、それぞれ独立する複数の個別支持部材110を「媒体支持部材」として備えている。
【0095】
個別支持部材110は、それぞれが媒体Sを支持する支持面110aを有し、ヘッドユニット3に対向する領域にZ軸方向に見て互いに隙間を空けて配置されている。本実施形態では、少なくとも6つの個別支持部材110が、Y軸方向に沿って互いに隙間を空けて2列に配置されている。そしてヘッドユニット3が備える各記録ヘッド2は、Z軸方向に見て各個別支持部材110の上記隙間に位置するように配置される。言い換えれば、各個別支持部材110の支持面110aは、Z軸方向に見て、「対向部材」であるヘッド支持部材7の少なくとも一部と重なる。本実施形態では、各個別支持部材110の支持面110aは、Z軸方向に見て、記録ヘッド2に重なることなくヘッド支持部材7に重なる。
【0096】
なお、支持面110aがZ軸方向に見てヘッド支持部材7の少なくとも一部と重なる位置に配置されるのであれば、個別支持部材110の数は特に限定されず、7つ以上であっても5つ以下であってもよい。
【0097】
これらの個別支持部材110は、本実施形態では、Y軸方向に延在する回転軸112を中心に回転する回転部材111と、回転部材111の回転軸112の両端を支持し、回転部材111を回転可能に保持する保持フレーム113とを備えて構成されている。
【0098】
そして、これらの各個別支持部材110は、上述の実施形態と同様に、連結部材50によってキャップ40と連結されている。すなわち、各個別支持部材110の保持フレーム113は、第1接続部材52によってベース部材51に接続されている。またキャップ40は第2接続部材53によってベース部材51に接続されている。つまり各個別支持部材110は、第1接続部材52、ベース部材51及び第2接続部材53を介してキャップ40と連結されている。
【0099】
このような本実施形態の構成では、例えば、キャッピング動作が行われる際に、実施形態1と同様に移動機構80によって連結部材50を-Z方向に移動(上昇)させると、
図23に示すように、個別支持部材110が対向部材であるヘッド支持部材7に当接することで個別支持部材110の-Z方向への移動が規制される。ただし、個別支持部材110の移動は規制されるものの、第1接続部材52が縮むことでベース部材51はキャップ40と共にさらに上昇し、キャップ40が各記録ヘッド2の噴射面2aに当接する。
【0100】
その際、個別支持部材110はヘッド支持部材7に当接し、記録ヘッド2の噴射面2aに接触することはないため、噴射面2aの変形や、噴射面2aに形成される撥水膜の剥がれを抑制できる。
【0101】
また本実施形態においても、移動機構80は、駆動源83のみによって記録ヘッド2を支持するヘッドユニット3をZ軸方向に沿って往復移動させることで、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸方向に沿って相対移動させてもよい。
【0102】
また本実施形態の記録装置1は、媒体Sに向かってZ軸(第1軸)に沿う+Z方向(噴射方向)に液体を噴射するノズル10を含む噴射面2aを有する記録ヘッド2(液体噴射ヘッド)と、+Z方向に見て互いに隙間を空けて配置され、媒体Sを支持する支持面110aを有する複数の個別支持部材110(媒体支持部材)と、+Z方向に見て前記隙間に配置されるキャップ40と、ベース部材51と、ベース部材51と個別支持部材110とを接続してZ軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材52と、を有し、個別支持部材110とキャップ40とを連結する連結部材50と、連結部材50を記録ヘッド2に対してZ軸に沿って相対移動させる移動機構80と、を備える。
【0103】
また、ベース部材51が記録ヘッド2に対して近づく相対移動により個別支持部材110が当該個別支持部材110に対向するヘッド支持部材7(対向部材)に当接して第1接続部材52が縮むことで、支持面110aに対して噴射面2aとは反対側に位置するキャップ40が前記隙間を介して噴射面2aに接触するキャッピング動作が行われる。
【0104】
このような構成においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。例えば、「媒体支持部材」である個別支持部材110と「液体噴射ヘッド」である記録ヘッド2との位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0105】
なお本実施形態では、「対向部材」がヘッド支持部材7である例を説明したが、「対向部材」は、記録ヘッド2又は本体フレーム4であってもよい。つまり、「対向部材」は、記録ヘッド2、記録ヘッド2を支持するヘッド支持部材7、又は、記録装置1の本体フレーム4の何れであってもよい。また、「対向部材」が記録ヘッド2である場合には、個別支持部材110の支持面110aの一部が、Z軸方向に見て記録ヘッド2の一部に重なるようにしてもよい。
【0106】
また本実施形態では、個別支持部材110として、媒体Sの移動に伴って回転する回転部材111を備える構成を例示したが、個別支持部材110の構成は、特に限定されるものではない。個別支持部材110は、回転部材111の代わりに、媒体Sを支持する支持面を形成する板状の部材を備えて構成されていてもよい。
【0107】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0108】
例えば、連結部材50は、上述した構成に限定されるものではない。上述の実施形態では、第1接続部材52は、自然長である場合において、第2接続部材53よりも長くなっていたが、第1接続部材52は、必ずしも第2接続部材53より長くなくてもよい。例えば、
図24に示すように、第1接続部材52が設けられる部分のベース部材51の厚さD1を、第2接続部材53が設けられる部分の厚さD2よりも厚くすることで、自然長である場合において、第2接続部材53が、第1接続部材52よりも長くなるようにしてもよい。また、
図24に示すように、第1接続部材52は、X軸方向に関してキャップ40に対してずれた位置に配置されていてもよい。
【0109】
また、上述の実施形態では、記録動作時及び空噴射動作時に、各キャップ40がプラテン6よりも+Z方向に配置されていたが、この態様には限られない。
図25に示すように、記録動作時及び空噴射動作時のキャップ40は、キャップ40の-Z方向の先端が支持面61よりも+Z方向に位置するのであれば、キャップ40の-Z方向の先端が開口部62内に位置するように配置されていてもよい。換言すれば、記録動作時及び空噴射動作時において、Z軸に垂直な方向に見てキャップ40とプラテン6とが重なっていてもよい。このように初期位置P0におけるキャップ40と噴射面2aとが近い構成では、空噴射によるミストの発生を低減することができる。また、初期位置P0から第2位置P2までの移動量を少なくすることができるため、装置の小型化を図ることができる。
【0110】
また、上述した実施形態では、キャップ40に吸引管41が接続されていたが、キャップ40に吸引管41が接続されていなくてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態1~4では、板状のプラテン6によって媒体Sを支持しているが、プラテン6の構成は、これに限定されるものではない。例えば、プラテン6の支持面61の表面の所定の位置に凹部を形成し、この凹部内に、実施形態5で例示した回転部材111を回転可能に支持するようにしてもよい。
【0112】
さらに、本発明は、液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置の全般を対象としたものであり、インクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッドの他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を備える液体噴射装置にも適用することができる。
【0113】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0114】
好適な態様である態様1に係る液体噴射装置は、媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記媒体を支持する支持面と、前記ノズルに対向する開口部と、を有する媒体支持部材と、前記噴射方向に見て前記開口部内に配置されるキャップと、ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える。これにより、媒体支持部材と液体噴射ヘッドとの位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0115】
また態様1の具体例である態様2において、前記キャップは、前記液体噴射ヘッドが前記媒体に対して液体を噴射する噴射動作を実行している間、前記支持面に対して前記噴射面とは反対側に配置される。
【0116】
また態様2の具体例である態様3において、前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して近づく前記相対移動により前記媒体支持部材が当該媒体支持部材に対向する対向部材に当接して前記第1接続部材が縮むことで、前記キャップが前記開口部を介して前記噴射面に接触するキャッピング動作が行われる。
【0117】
また態様3の具体例である態様4において、前記対向部材は、前記液体噴射ヘッド、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材、又は、前記液体噴射装置の本体フレームの何れかである。
【0118】
また態様4の具体例である態様5において、前記対向部材は、前記ヘッド支持部材又は前記本体フレームであり、前記媒体支持部材は、前記噴射方向に見て前記媒体が搬送される領域から外れた非搬送領域に、前記支持面から前記噴射方向とは反対方向に突出する突出部を有し、前記キャッピング動作が行われる際、前記突出部が前記ヘッド支持部材又は前記本体フレームに当接することで、前記第1接続部材が縮む。これにより、噴射面及びヘッド支持部材の表面に段差が生じないようにでき、ワイピングの払拭性能が向上する。
【0119】
また態様4の具体例である態様6において、前記対向部材は、前記液体噴射ヘッドであり、前記液体噴射ヘッドは、前記噴射面の外周部に、当該噴射面から前記噴射方向に突出する外周リブを有し、前記キャッピング動作が行われる際、前記外周リブが前記媒体支持部材に当接することで前記第1接続部材が縮む。これにより、液体噴射ヘッドの噴射面に媒体支持部材が接触して変形したり、噴射面に形成される撥水膜が剥がれたりするのを抑制できる。
【0120】
また態様1の具体例である態様7において、払拭部材を更に備え、前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して離れる前記相対移動により形成された前記媒体支持部と前記噴射面との間の空間において、前記払拭部材を前記噴射面に対して前記噴射面に沿って相対移動させることで前記噴射面を払拭するワイピング動作が行われる。これにより、キャッピング動作時と同様に、液体噴射ヘッドと連結部材との第1軸に沿った方向の相対移動のみによってワイピング動作を実施するためのスペースを確保でき、装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0121】
また態様1の具体例である態様8において、前記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材と、を含むヘッドユニットを有し、前記移動機構は、前記連結部材又は前記ヘッドユニットの一方のみを前記第1軸に沿って往復移動させる駆動源を含み、前記相対移動は、前記駆動源のみによって行われる。これにより、装置構成のさらなる簡素化及び小型化を図ることができる。
【0122】
また態様1の具体例である態様9において、前記開口部は、前記噴射方向に見て、前記噴射面よりも小さい。これにより、媒体の搬送の安定性を向上することができる。
【0123】
また態様1の具体例である態様10において、前記第1接続部材は、前記ベース部材の前記噴射方向の反対方向を向く面に設けられている。
【0124】
また態様1の具体例である態様11において、前記連結部材は、前記ベース部材と前記キャップとを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第2接続部材を含む。これにより、キャッピング動作を行う際、噴射面に対してキャップによる過度な荷重がかかるのを抑制できる。
【0125】
また態様1の具体例である態様12において、前記液体噴射ヘッドは、前記媒体の幅以上の長さを有するラインヘッドを構成する。
【0126】
また、好適な他の態様である態様13に係る液体噴射装置は、媒体に向かって第1軸に沿う噴射方向に液体を噴射するノズルを含む噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記噴射方向に見て互いに隙間を空けて配置され、前記媒体を支持する支持面を有する複数の媒体支持部材と、前記噴射方向に見て前記隙間に配置されるキャップと、ベース部材と、前記ベース部材と前記媒体支持部材とを接続して前記第1軸に沿う方向に伸縮可能な第1接続部材と、を有し、前記媒体支持部材と前記キャップとを連結する連結部材と、前記連結部材を前記液体噴射ヘッドに対して前記第1軸に沿って相対移動させる移動機構と、を備える。これにより、媒体支持部材と液体噴射ヘッドとの位置関係の制約を少なくしながらも、キャッピング動作を適切に行うことができる。また装置構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0127】
態様13の具体例である態様14において、前記ベース部材が前記液体噴射ヘッドに対して近づく前記相対移動により前記媒体支持部材が当該媒体支持部材に対向する対向部材に当接して前記第1接続部材が縮むことで、前記支持面に対して前記噴射面とは反対側に位置する前記キャップが前記隙間を介して前記噴射面に接触するキャッピング動作が行われる。
【0128】
態様14の具体例である態様15において、前記対向部材は、前記液体噴射ヘッド、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材、又は、前記液体噴射装置の本体フレームの何れかである。
【0129】
態様15の具体例である態様16において、前記対向部材は、前記ヘッド支持部材であり、前記支持面は、前記噴射方向に見て、前記ヘッド支持部材の少なくとも一部に重なる。
【0130】
態様15の具体例である態様17において、前記対向部材は、前記液体噴射ヘッドであり、前記支持面の一部は、前記噴射方向に見て、前記液体噴射ヘッドの一部に重なる。
【0131】
態様13の具体例である態様18において、前記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを支持するヘッド支持部材と、を含むヘッドユニットを構成し、前記移動機構は、前記連結部材又は前記ヘッドユニットの一方のみを前記第1軸に沿って往復移動させる駆動源を含み、前記相対移動は、前記駆動源のみによって行われる。これにより、装置構成のさらなる簡素化及び小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0132】
1…インクジェット式記録装置(記録装置)、2…インクジェット式記録ヘッド(記録ヘッド)、2a…噴射面、3…ヘッドユニット、4…本体フレーム、4b…梁部、5…搬送手段、6…プラテン、7…ヘッド支持部材、10…ノズル、11…ノズルプレート、12…ノズル列、13…第1の搬送手段、14…第2の搬送手段、21…ヘッドチップ、22…ホルダー、22a…外周リブ、23…保持部材、30…ワイピング装置、31…ブレード部材、32…軸部材、33…保持部材、40…キャップ、41…吸引管、50…連結部材、51…ベース部材、52…第1接続部材、53…第2接続部材、55…ガイドピン、56,57…ガイド孔、61…支持面、62…開口部、65…突出部、80…移動機構、81…ラック、82…ピニオン、83…駆動源、100…空間、110…個別支持部材、111…回転部材、112…回転軸、113…保持フレーム