(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051190
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157217
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 陽介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB03
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB08
3D203CA07
3D203CA73
3D203CA79
3D203CB09
3D203CB10
3D203CB25
3D203CB27
3D203CB32
3D203DA02
3D203DA07
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】走行時に固定具が外れたとしても路面と干渉を抑制することができる車両用アンダーカバーの提供にある。
【解決手段】複数の通孔27を有するアンダーカバー本体26を備え、アンダーカバー本体26は、複数の通孔27に挿通される固定具を介して車体の下部に固定される車両用アンダーカバーにおいてアンダーカバー本体26は、車体側カバー面28と路面側カバー面29とを有し、車体に搭載される熱発生部と対向するように、形状記憶材26が車体側カバー面28に沿って固定され、形状記憶材26は、形状記憶を可能とする形状記憶合金により形成されるとともに、熱発生部からの熱伝達を受けたとき、予め記憶された形状を保つ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通孔を有する板状のアンダーカバー本体を備え、
前記アンダーカバー本体は、前記複数の通孔に挿通される固定具を介して車体の下部に固定される車両用アンダーカバーにおいて、
前記アンダーカバー本体は、車体側カバー面と路面側カバー面とを有し、
前記車体に搭載される熱発生部と対向するように、形状記憶材が前記車体側カバー面に沿って固定され、
前記形状記憶材は、形状記憶を可能とする形状記憶合金により形成されるとともに、前記熱発生部からの熱伝達を受けたとき、予め記憶されているとともに前記車体側カバー面に沿った形状を保つことを特徴とする車両用アンダーカバー。
【請求項2】
前記形状記憶材は、前記熱発生部と対向する対向部と、前記熱発生部と対向しない非対向部と、を有し、
前記対向部と前記非対向部は一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用アンダーカバー。
【請求項3】
前記形状記憶材は、少なくとも前記対向部を含み、前記アンダーカバー本体より小さいことを特徴とする請求項2記載の車両用アンダーカバー。
【請求項4】
前記形状記憶材は、前記車体の前後方向に延在する複数の延在部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用アンダーカバー。
【請求項5】
前記非対向部は、前記アンダーカバー本体の外周縁まで延在することを特徴とする請求項2記載の車両用アンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用アンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用アンダーカバーの従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたフロアアンダーカバーが知られている。特許文献1において開示された車両は、空気抵抗を極力低減することを目的として、車体下面のほぼ全てが、エンジンルームアンダーカバーおよびフロアアンダーカバーで覆われている。フロアアンダーカバーは、フロアトンネルを境に左右に二分割されている。これらのアンダーカバーは、フレーム側に設けられたステーに対し、ボルトおよび公知のプラスティックファスナを用いてその周縁部の要所が止められている。フロアアンダーカバーは、ポリプロピレン樹脂材のスタンピングモールド成型にて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたフロアアンダーカバーでは、例えば、走行中にフロアアンダーカバーの前部とフレームとを固定する固定具(プラスティックファスナ)が脱落することがある。この場合、車両が走行し続けると、走行時の空気流によってフロアアンダーカバーの前部が下方へ向かうように、アンダーカバーの一部が折れ曲がり、さらに垂れ下がって路面と干渉してフロアアンダーカバーが大きく損傷してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、走行時に固定具が外れたとしても路面と干渉を抑制することができる車両用アンダーカバーの提供にある。
の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の通孔を有する板状のアンダーカバー本体を備え、前記アンダーカバー本体は、前記複数の通孔に挿通される固定具を介して車体の下部に固定される車両用アンダーカバーにおいて、前記アンダーカバー本体は、車体側カバー面と路面側カバー面とを有し、前記車体に搭載される熱発生部と対向するように、形状記憶材が前記車体側カバー面に沿って固定され、前記形状記憶材は、形状記憶を可能とする形状記憶合金により形成されるとともに、前記熱発生部からの熱伝達を受けたとき、予め記憶されているとともに前記車体側カバー面に沿った形状を保つことを特徴とする。
【0007】
本発明では、車体に搭載される熱発生部と対向するように、形状記憶材が固定側カバー面に沿って固定されている。固定具が脱落すると、アンダーカバー本体において下方へ向けて傾斜する傾斜部が生じ易くなり、傾斜部は走行時の空気流や振動等によって大きく傾斜しようする。しかし、形状記憶材が、熱発生部からの熱伝達を受けて所定の温度以上になると、予め記憶されているとともに車体側カバー面に沿った形状を保つことになる。このため、走行時の空気流を受けてアンダーカバー本体の傾斜部が傾斜を大きくしようとしても、形状記憶材の形状記憶機能により妨げられる。その結果、走行中におけるアンダーカバー本体と路面との干渉が妨げられ、アンダーカバー本体の損傷が抑制できる。
【0008】
また、上記の車両用アンダーカバーにおいて、前記形状記憶材は、前記熱発生部と対向する対向部と、前記熱発生部と対向しない非対向部と、を有し、前記対向部と前記非対向部は一体形成されている構成としてもよい。
この場合、対向部と非対向部は一体形成されているので、対向部で受ける熱が非対向部へ伝達され、非対向部において形状記憶機能を発生させることができる。したがって、熱源と対向しない非対向部にて傾斜部が発生しても、走行時の空気流や振動等による傾斜部の傾斜の拡大が妨げられる。
【0009】
また、上記の車両用アンダーカバーにおいて、前記形状記憶材は、少なくとも前記対向部を含み、前記アンダーカバー本体より小さい構成としてもよい。
この場合、形状記憶材は、少なくとも対向部を含み、アンダーカバー本体より小さいので、アンダーカバー本体の全体にわたって形状記憶材を設ける場合と比較して車両用アンダーカバーの製作コストを低減することができる。
【0010】
また、上記の車両用アンダーカバーにおいて、前記形状記憶材は、前記車体の前後方向に延在する複数の延在部を備える構成としてもよい。
この場合、アンダーカバー本体にスリットが設けられている場合でも、スリットを回避するように形状記憶材をアンダーカバー本体に固定することができるほか、車両用アンダーカバーの軽量化を図ることができる。
【0011】
また、上記の車両用アンダーカバーにおいて、前記非対向部は、アンダーカバー本体の外周縁まで延在する構成としてもよい。
この場合、非対向部がアンダーカバー本体の外周縁まで延在するので、形状記憶材はアンダーカバー本体の全体を形状記憶による復元力の対象とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行時に固定具が外れたとしても路面と干渉を抑制することができる車両用アンダーカバーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態の車両用アンダーカバーが適用された自動車を下方から見た斜視図である。
【
図2】(a)は中央アンダーカバーの底面図であり、(b)は中央アンダーカバーの平面図である。
【
図5】形状記憶材における対向部および非対向部を示す平面図である。
【
図6】クリップが脱落して傾斜部が生じた中央フロアアンダーカバーを示す縦断面図である。
【
図7】第2の実施形態の車両用アンダーカバーが適用された自動車を下方から見た斜視図である。
【
図8】リヤフロアアンダーカバーの縦断面図である。
【
図10】(a)は第1の実施形態の変形例に係る中央アンダーカバーの平面図であり、(b)は変形例に係るリヤフロアアンダーカバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る車両用アンダーカバーについて図面を参照して説明する。本実施形態では、自動車に適用した車両用アンダーカバーを例示して説明する。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、自動車の運転手が運転席に着座して、自動車の前進側を向いた状態を基準として示す。
【0015】
図1に示すように、自動車10の車体11の前部には、左右一対の前輪12が備えられている。車体11の後部には左右一対の後輪13が備えられている。車体11の下面には複数の車両用アンダーカバーが固定されている。車両用アンダーカバーは、具体的には、エンジンアンダーカバー14と、右フロントフロアアンダーカバー15、左フロントフロアアンダーカバー16と、右リヤフロアアンダーカバー17と、左リヤフロアアンダーカバー18と、中央アンダーカバー19と、である。車体11の幅方向の中心には、排気系ユニット21が収容されるフロアトンネル20が前後方向に延在している。
図2(a)、
図2(b)に示すように、排気系ユニット21は、排気管22と、排気管22に設けられたプレ触媒部23と、排気管22におけるプレ触媒部23よりも下流側に設けられたメイン触媒部24と、を有する。
【0016】
車体11の下面における前部には、エンジンアンダーカバー14が固定されている。エンジンアンダーカバー14は、エンジンルーム(図示せず)の下方に位置し、エンジンルームに収容されているエンジンおよび補機類の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。エンジンアンダーカバー14は樹脂製であり、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂を材料とし、プレス加工により成形される。エンジンアンダーカバー14は、開口部(図示せず)と、開口部を開閉可能する蓋部14Aと、を有している。開口部は、車体11の下面からエンジンルームへ通じる点検口である。
【0017】
右フロントフロアアンダーカバー15は、車体11のフロアトンネル20より右側であってエンジンアンダーカバー14の後端に隣接するように固定されている。右フロントフロアアンダーカバー15は、車体11におけるフロアトンネル20よりも右側の下面の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。左フロントフロアアンダーカバー16は、車体11のフロアトンネル20より左側であってエンジンアンダーカバー14の後端に隣接するように固定されている。左フロントフロアアンダーカバー16は、車体11におけるフロアトンネル20よりも左側の下面の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。
【0018】
右リヤフロアアンダーカバー17は、車体11のフロアトンネル20より右側であって右フロントフロアアンダーカバー15の後端に隣接するように固定されている。右リヤフロアアンダーカバー17は、車体11におけるフロアトンネル20よりも右側の下面の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。左リヤフロアアンダーカバー18は、車体11のフロアトンネル20より左側であって左フロントフロアアンダーカバー16の後端に隣接するように固定されている。左リヤフロアアンダーカバー18は、車体11におけるフロアトンネル20よりも左側の下面の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。
【0019】
中央アンダーカバー19は、右フロントフロアアンダーカバー15と左フロントフロアアンダーカバー16との間にて車体11のフロアトンネル20を覆う。中央アンダーカバー19の前端は、エンジンアンダーカバー14の後端と隣接する。中央アンダーカバー19の右端は、右フロントフロアアンダーカバー15と隣接する。中央アンダーカバー19の左端は、左フロントフロアアンダーカバー16と隣接する。中央アンダーカバー19は、フロアトンネル20の排気系ユニット21の保護のほか、車体11の空力性能の向上のために設けられている。
【0020】
中央アンダーカバー19は、
図2(a)、
図2(b)に示すように、アンダーカバー本体26と、複数の通孔27を備えている。中央アンダーカバー19は樹脂製であり、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂を材料とし、プレス加工により成形される。アンダーカバー本体26は、車体側カバー面28と路面側カバー面29とを有する。アンダーカバー本体26は板状であり、車体側カバー面28と路面側カバー面29は表裏の関係にある。アンダーカバー本体26は、アンダーカバー本体26には、車体側カバー面28が高くなる複数の台座部(図示せず)が形成されている。
【0021】
通孔27は、中央アンダーカバー19を車体11に固定するための固定具が挿通される。固定具は、樹脂製のクリップ31である。樹脂製のクリップ31は頭部32と軸部33とを有する。クリップ31の軸部33を通孔27に挿通し、車体11に備えられているステー34の固定孔35に保持させることで、中央アンダーカバー19が車体11に固定される。つまり、中央アンダーカバー19は、複数の通孔27に挿通されるクリップ31を介して車体11の下部に固定される。なお、クリップ31のほかに、ボルト(図示せず)が固定具として用いられている。また、アンダーカバー本体26には、空力性能の向上のための多数のスリット孔(図示せず)が備えられている。スリット孔は、車体側カバー面28と路面側カバー面29を貫通するスリット状の小孔である。
【0022】
図3、
図4に示すように、本実施形態の中央アンダーカバー19は、アンダーカバー本体26のほか、車体側カバー面28に沿って固定される形状記憶材36を有している。形状記憶材36は、変形しても所定の温度以上となると予め記憶された形状に復元される形状記憶合金によりシート状に形成されている。形状記憶材36の材料は、例えば、Ni-Ti合金またはNi-Ti-Cu合金のいずれかの合金とすることができる。形状記憶合金の形状回復温度は、一般的にNi-Ti合金が20℃~100℃であり、Ni-Ti-Cu合金が40℃~70℃である。
【0023】
本実施形態のシート状の形状記憶材36は、平面視において投影された排気系ユニット21の形状と類似する形状に形成されている。また、形状記憶材36は、排気系ユニット21の形状と類似する形状に形成されているアンダーカバー本体26に対してリベット(図示せず)により固定されている。なお、接着剤を用いて形状記憶材36をアンダーカバー本体26に固定してもよい。形状記憶材36は、アンダーカバー本体26の車体側カバー面28に密着するようにアンダーカバー本体26に固定されることが好ましいが、形状記憶材36とアンダーカバー本体26との間に隙間が生じてもよい。また、本実施形態では、形状記憶材36は、対向部37を含むが、形状記憶材36の大きさは、アンダーカバー本体26よりも小さく形成されている。形状記憶材36は、アンダーカバー本体26の車体側カバー面28に沿う形状が熱処理によって予め設定された形状として記憶されている。
【0024】
本実施形態では、熱発生部としての排気系ユニット21の下方に形状記憶材36が位置する。
図5に示すように、形状記憶材36は、排気系ユニット21と対向する対向部37と、排気系ユニット21と対向せず、対向部37と一体形成された非対向部38を備える。説明の便宜上、
図5において対向部37をハッチングにより示しており、対向部37は、形状記憶材36の平面視において排気系ユニット21と重畳する部位に相当する。一方、非対向部38は、形状記憶材36の平面視において対向部37を除く排気系ユニット21が重畳せず視認できる部位である。対向部37は、非対向部38と比較して排気系ユニット21の熱を受け易い。非対向部38は、対向部37と一体形成されているので、対向部37が排気系ユニット21から受けた熱の伝達を受け易い。なお、排気系ユニット21と中央アンダーカバー19との間には間隙が設けられている。この間隙に介在物を設け、形状記憶材36に対する排気系ユニット21からの熱伝達の多寡を調整し、形状記憶材36の過度な温度上昇を防止するようにしてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の車両用アンダーカバーとしての中央アンダーカバー19の作用について説明する。エンジンアンダーカバー14、右フロントフロアアンダーカバー15、左フロントフロアアンダーカバー16、右リヤフロアアンダーカバー17、左リヤフロアアンダーカバー18および中央アンダーカバー19は、車体11の下部を保護する。自動車10の走行中に、例えば、冠水した道路や積雪のある道路を通り、水や雪が車体11と車両用アンダーカバーとの間に勢いよく入り込むと、車両用アンダーカバーにおけるクリップ31が外れる場合がある。
【0026】
例えば、中央アンダーカバー19の前部を固定するクリップ31が外れると、アンダーカバー本体26の自重や走行時の振動、あるいはアンダーカバー本体26と車体11との間に走行時の空気が入り込むことでアンダーカバー本体26が折れ曲がり易くなる。
図6に示すように、アンダーカバー本体26では、クリップ31の脱落により傾斜する傾斜部39が生じ易くなる。例えば、アンダーカバー本体26に生じた傾斜部39は、走行時に走行時の空気流を受けて路面に向かうように折れ曲がって傾斜しようとする。なお、クリップ31の脱落後のアンダーカバー本体26の折れ曲がりの起点Pの位置は条件によって異なる。
【0027】
自動車10の走行中では、高温の排気ガスが排気系ユニット21を通過するので、形状記憶材36は排気系ユニット21からの熱伝達を受ける。形状記憶材36が所定の温度以上になると、予め記憶された形状を保つことになる。このため、走行時の空気流を受けてアンダーカバー本体26の傾斜部39が傾斜を大きくしようとしても、形状記憶材36の形状記憶機能により妨げられる。したがって、高温の排気ガスが排気系ユニット21を通過する限り、アンダーカバー本体26における傾斜部39が路面と干渉することはない。つまり、自動車10が走行を継続する限り、傾斜部39は路面と干渉しない。したがって、路面との干渉よりアンダーカバー本体26の損傷が防止される。
【0028】
本実施形態では、エンジンが運転されている状態では、形状記憶材36が予め記憶された形状を保つ程度の熱が排気系ユニット21から形状記憶材36へ伝達される。なお、自動車10がエンジン停止により形状記憶材36への熱の伝達が行われないと、
図5において傾斜部39が二点鎖線で示すように大きく傾斜する可能性はある。しかし、再び熱の伝達が行われると、形状記憶材36の形状記憶機能により少なくとも実線で示すように傾斜を小さくする。
【0029】
本実施形態の中央アンダーカバー19は、以下の効果を奏する。
(1)車体11に搭載される熱発生部である排気系ユニット21と対向するように、形状記憶材36が車体側カバー面28に沿って固定されている。クリップ31が脱落すると、アンダーカバー本体26において下方へ向けて傾斜する傾斜部39が生じ易くなり、傾斜部39は、走行時の空気流や振動等によって大きく傾斜しようする。しかし、高温の排気ガスが排気系ユニット21を通過するので、形状記憶材36は排気系ユニット21からの熱伝達を受ける。形状記憶材36が所定の温度以上になると、予め記憶されているとともに車体側カバー面28に沿った形状を保つことになる。このため、走行時の空気流を受けてアンダーカバー本体26の傾斜部39が傾斜を大きくしようとしても、形状記憶材36の形状記憶機能により妨げられる。その結果、走行中におけるアンダーカバー本体26と路面との干渉が妨げられ、アンダーカバー本体26の損傷が抑制できる。
【0030】
(2)形状記憶材36は、熱発生部と対向する対向部37と、熱発生部と対向しない非対向部38と、を有し、対向部37と非対向部38は一体形成されている。このため、対向部37で受ける熱が非対向部38へ伝達され、非対向部38において形状記憶機能を発生させることができる。したがって、熱発生部と対向しない非対向部38にて傾斜部39が発生しても、走行時の空気流や振動等による傾斜部39の傾斜の拡大が妨げられる。
【0031】
(3)形状記憶材36は、対向部37を含み、アンダーカバー本体26より小さいので、アンダーカバー本体26の全体にわたって形状記憶材を設ける場合と比較して中央アンダーカバー19の製作コストを低減することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る車両用アンダーカバーについて説明する。第2の実施形態の車両用アンダーカバーは、自動車がバッテリを搭載する電気自動車であって、バッテリを熱発生部とする点で、第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0033】
図7に示すように、自動車40の車体41には、バッテリ42が搭載されている。バッテリ42は、充放電可能な二次電池であり、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池である。車体41の下面には、複数の車両用アンダーカバーが固定されている。車両用アンダーカバーは、具体的には、モータアンダーカバー43と、フロントフロアアンダーカバー44と、リヤフロアアンダーカバー45と、である。モータアンダーカバー43、フロントフロアアンダーカバー44およびリヤフロアアンダーカバー45は樹脂製であり、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂を材料とし、プレス加工により成形される。
【0034】
車体41の下面における前部には、モータアンダーカバー43が固定されている。モータアンダーカバー43は、モータルーム(図示せず)の下方に位置し、モータルームに収容されている走行用のモータおよび補機類の保護のほか、車体41の空力性能の向上のために設けられている。フロントフロアアンダーカバー44は、モータアンダーカバー43の後端と隣接するように車体41に固定されている。
【0035】
リヤフロアアンダーカバー45は、フロントフロアアンダーカバー44の後端と隣接するように車体41と固定されている。リヤフロアアンダーカバー45は、バッテリ42の下方に位置し、車体41に搭載されているバッテリ42の保護のほか、車体41の空力性能の向上のために設けられている。
【0036】
リヤフロアアンダーカバー45は、板状のアンダーカバー本体46と、複数の通孔47を備えている。
図8に示すように、アンダーカバー本体46は、車体側カバー面48と路面側カバー面49と、有する。アンダーカバー本体46は、アンダーカバー本体46には、複数の台座部(図示せず)が形成され、この台座部に通孔47が形成されている。通孔47は、リヤフロアアンダーカバー45を車体41に固定するクリップ31が挿通される。車体41には、固定孔56を設けたステー50が備えられている。リヤフロアアンダーカバー45は、クリップ31により車体41に設けられたステー50に固定される。また、アンダーカバー本体46には、空力性能の向上のための多数のスリット孔(図示せず)が備えられている。
【0037】
図8に示すように、本実施形態のリヤフロアアンダーカバー45は、アンダーカバー本体26のほか、車体側カバー面48に沿って固定される形状記憶材51を有している。形状記憶材51は、第1の実施形態の形状記憶材36と同じ材料により形成され、変形しても所定の温度以上となると予め記憶された形状に復元される形状記憶機能を有する。
図9に示すように、形状記憶材51は、平面視においてアンダーカバー本体46にわたって格子状に形成されている。車体41の前後方向に延在する複数の延在部(前後延在部)52と、車体41の幅方向(左右方向)に延在する複数の延在部(左右延在部)53を備える。形状記憶材51が複数の前後延在部52および左右延在部53により格子状に形成されることで、リヤフロアアンダーカバー45の軽量化が図られている。
【0038】
形状記憶材51は、アンダーカバー本体46に対してリベット(図示せず)により固定されている。形状記憶材51は、アンダーカバー本体46の車体側カバー面48に沿う形状が熱処理によって予め設定された形状として記憶されている。形状記憶材51は、アンダーカバー本体46の車体側カバー面48に密着するようにアンダーカバー本体26に固定されることが好ましいが、形状記憶材51とアンダーカバー本体46との間に隙間が生じてもよい。
【0039】
本実施形態では、熱発生部としてのバッテリ42の下方に形状記憶材51が位置する。形状記憶材51は、バッテリ42と対向する対向部54と、バッテリ42と対向せず、対向部54と一体形成された非対向部55を備える。対向部54は、
図9においてハッチングにより示されており、形状記憶材51の平面視においてバッテリ42と重畳する部位に相当する。一方、非対向部55は、形状記憶材51の平面視において対向部54を除く部位であって、バッテリ42と重畳せず視認できる部位である。非対向部55は、対向部54と一体形成されているので、対向部54がバッテリ42から受けた熱の伝達を受け易い。バッテリ42と形状記憶材51との間には間隙が形成されているが、バッテリ42の放熱は、形状記憶材51が予め記憶された形状を保つ所定の温度以上に達することが可能である。バッテリ42は充放電によって温度上昇する。
【0040】
本実施形態のリヤフロアアンダーカバー45によれば、形状記憶材51がバッテリ42から熱伝達を受け、形状記憶材51が所定の温度以上になると、予め記憶された形状を保つことになる。このため、クリップ31の脱落によりアンダーカバー本体46に傾斜部(図示せず)が生じても、走行時の空気流や振動等による傾斜部の傾斜の拡大は、形状記憶材51の形状記憶機能により妨げられる。その結果、走行中におけるアンダーカバー本体46と路面との干渉が妨げられ、アンダーカバー本体46の損傷が抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、アンダーカバー本体46にスリットが設けられている場合でも、スリットを回避するように形状記憶材51をアンダーカバー本体46に固定することができるほか、リヤフロアアンダーカバー45の軽量化を図ることができる。さらに、複数の前後延在部52および左右延在部53を備えることで、クリップ31の脱落によりアンダーカバー本体46に折り目が形成されても、折り目の方向に関係なく傾斜部の拡大を防止できる。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0043】
○ 上記の第1、第2の実施形態では、熱発生部として排気系ユニット又はバッテリを例示して説明したが、これに限定されない。熱発生部は、車両用アンダーカバーが有する形状記憶材が予め記憶された形状を保つことができる程度の熱を形状記憶材に伝達することができる熱源であればよい。
○ 上記の第1の実施形態では、形状記憶材は、対向部を含みアンダーカバー本体より小さいとしたがこれに限らない。例えば、対向部を含みアンダーカバー本体より大きくてもよい。また、形状記憶材は、平面視における熱発生部の形状と同一の形状や相似形状でもよく、あるいは、平面視における熱発生部の形状と非類似の形状であってもよい。
○ 上記の第1の実施形態では、形状記憶材は、アンダーカバー本体の外周縁まで延在しない形状としたが、これに限らない。例えば、
図10(a)に示すように、形状記憶材60が板状のアンダーカバー本体26の外周縁まで延在してもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、形状記憶材は、格子状に形成としたがこれに限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、形状記憶材70は、車体11の前後方向に延在する複数の延在部71を備えるようにしてもよい。
○ 上記の第1の実施形態では、クリップの脱落によりアンダーカバーの前部に傾斜部が生じる例を説明したが、傾斜部が生じる位置は、例えば、アンダーカバーの後部や側部であってもよく、特に限定されない。
○ 上記の第2の実施形態では、形状記憶材とバッテリとの間に間隙が形成されているとしたが、これに限らない。形状記憶材は、例えば、バッテリの下面と当接してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、40 自動車
11、41 車体
14 エンジンアンダーカバー
15 右フロントフロアアンダーカバー
16 左フロントフロアアンダーカバー
17 右リヤフロアアンダーカバー
18 左リヤフロアアンダーカバー
19 中央フロアアンダーカバー
20 フロアトンネル
21 排気系ユニット
26、46 アンダーカバー本体
27、47 通孔
28、48 車体側カバー面
29、49 路面側カバー面
31 クリップ
36、51、60、70 形状記憶材
37、54 対向部
38、55 非対向部
39 傾斜部
42 バッテリ
43 モータアンダーカバー
44 フロントフロアカバー
45 リヤフロアアンダーカバー
51 形状記憶材
52 延在部(前後延在部)
53 延在部(左右延在部)
71 延在部
P 起点(折れ曲がり)