(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051195
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ネットワークオーケストレーション装置、ネットワークオーケストレーションシステム及びネットワークオーケストレーション方法
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0895 20220101AFI20240404BHJP
H04L 43/20 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
H04L41/0895
H04L43/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157222
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グントゥパリ ジェーエシュ
(72)【発明者】
【氏名】村中 延之
(72)【発明者】
【氏名】田澤 功
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】森 久斗
(57)【要約】
【課題】顧客の利用目的に応じてネットワーク通信を適切に制御することが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供すること。
【解決手段】複数のネットワークサービスの候補の内、第1のネットワークサービスを特定するサービス要求をユーザから受け付けるユーザ管理部と、ネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、第1の通信回線の予備となる第2の通信回線とを含む第1のネットワークプールを割り当てるネットワーク管理部と、第1の通信回線の性能を示す性能情報を取得し、性能情報に基づいて、第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作、又は、ネットワーク通信を第1の通信回線から第2の通信回線に切り替える切り替え動作を第1の通信回線に対して実施すると判定するルーティング管理部とを含むネットワークオーケストレーション装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークオーケストレーション装置であって、
ネットワークの仕様を規定するネットワークサービスの候補を複数含むネットワークサービスメニュを生成し、ユーザに提示し、前記ネットワークサービスの候補の内、第1のネットワークサービスを特定するサービス要求を前記ユーザから受け付けるユーザ管理部と、
複数のネットワーク間でネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、前記第1の通信回線の予備となる第2の通信回線とを含む第1のネットワークプールを前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスとして前記ユーザ用に割り当てるネットワーク管理部と、
前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能情報を取得し、
取得した第1の性能情報が第1の性能基準を満たし、且つ、第2の性能基準を満たさない場合、前記第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を前記第1の通信回線に対して実施すると判定し、
取得した第1の性能情報が第1の性能基準、第2の性能基準及び第3の性能基準を満たさない場合、前記ネットワーク通信を前記第1の通信回線から前記第2の通信回線に切り替える切り替え動作を前記第1のネットワークプールに対して実施すると判定するルーティング管理部と、
を含むことを特徴とするネットワークオーケストレーション装置。
【請求項2】
前記ユーザ管理部は、
前記ネットワークサービスの候補のそれぞれを特徴付けるサービスメニュ情報と、
前記サービスメニュ情報に基づいて、前記ネットワークサービスメニュを生成し、前記ユーザに提示し、前記サービス要求を前記ユーザから受け付けるサービスメニュ管理部と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のネットワークオーケストレーション装置。
【請求項3】
前記ネットワークサービスの候補のそれぞれについて、当該ネットワークサービスに対応するネットワークプールを少なくとも示すネットワーク構成情報と、
前記ネットワークサービスの候補のそれぞれについて、当該ネットワークサービスを提供する費用を示す請求情報と、
前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスに対応する第1のネットワークプールを判定するネットワーク構成部と、
前記第1のネットワークプールを提供する費用を計算し、請求書を前記ユーザに送信する請求管理部と、
を含むサービス管理部を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のネットワークオーケストレーション装置。
【請求項4】
前記ルーティング管理部は、
前記第1の通信回線の前記ネットワーク通信を監視することで、前記第1の性能情報を取得するネットワーク監視部と、
前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスに対応する性能係数と、性能閾値とを判定し、
前記第1の性能情報と、前記性能係数とに基づいて、第1の時刻に対応する前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能スコアと、第2の時刻に対応する前記第1の通信回線の性能を示す第2の性能スコアを計算し、
前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコアを超え、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値未満の場合、前記第1の通信回線に対して前記性能向上動作を実施すると判定し、
前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコア以下、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値未満、且つ、前記第1の性能スコアが前記性能閾値未満の場合、前記第1の通信回線でのネットワーク通信を継続する継続動作を実施すると判定し、
前記第2の性能スコアが前記性能閾値以上、且つ、前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコアを超えている、且つ、前記第1の性能スコアが前記性能閾値以上である場合、又は前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコア以下、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値以上である状態が一定時間以上継続した場合、前記切り替え動作を実施すると判定するルーティング判定部と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のネットワークオーケストレーション装置。
【請求項5】
前記第1の性能情報は、
ラウンドトリップタイム、パケット損失、レイテンシー、ジッター、ワークロード及び通信回線利用率を含む、
ことを特徴とする、請求項4に記載のネットワークオーケストレーション装置。
【請求項6】
前記ネットワーク管理部は、
ネットワークプール毎に、前記性能向上動作及び前記切り替え動作を実施するか否かを指定するルーティング情報と、
前記第1のネットワークプールを前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスとして割り当てるネットワークプール割り当て部と、
前記ルーティング情報に基づいて、前記性能向上動作又は前記切り替え動作を前記第1のネットワークプールに対して実施する管理アクション実施部と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のネットワークオーケストレーション装置。
【請求項7】
ユーザに利用されるブランチネットワークと、
前記ブランチネットワークに対して所定のサービスをインターネットを介して提供する接続先ネットワークと、
前記ブランチネットワークと前記インターネットとの間の通信を中継するブランチゲートウェイと、
前記接続先ネットワークと前記インターネットとの間の通信を中継する接続先ゲートウェイと、
前記ブランチネットワークと前記接続先ネットワークとの通信を管理するネットワークオーケストレーション装置とからなるネットワークオーケストレーションシステムにおいて、
前記ネットワークオーケストレーション装置は、
ネットワークサービスの候補を複数含むネットワークサービスメニュを生成し、前記ユーザに提示し、前記ネットワークサービスの候補の内、第1のネットワークサービスを特定するサービス要求を前記ユーザから受け付けるユーザ管理部と、
前記ブランチネットワークと前記接続先ネットワークとの間でネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、前記第1の通信回線の予備となる第2の通信回線とを含む第1のネットワークプールを前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスとして前記ユーザ用に割り当てるネットワーク管理部と、
前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能情報を取得し、
取得した第1の性能情報が第1の性能基準を満たし、且つ、第2の性能基準を満たさない場合、前記第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作をネットワーク管理アクションとして前記第1の通信回線に対して実施すると判定し、
取得した第1の性能情報が第1の性能基準、第2の性能基準及び第3の性能基準を満たさない場合、前記ネットワーク通信を前記第1の通信回線から前記第2の通信回線に切り替える切り替え動作をネットワーク管理アクションとして前記第1のネットワークプールに対して実施すると判定するルーティング管理部と、
前記第1のネットワークプールについて判定された前記ネットワーク管理アクションを示すユーザインターフェースと
を含むことを特徴とするネットワークオーケストレーションシステム。
【請求項8】
ネットワークオーケストレーション方法であって、
複数のネットワークサービスの候補のそれぞれについて、当該ネットワークサービスのサービスドメイン、ネットワークタイプ、セキュリティ、レイテンシー基準、確実性及び費用を少なくとも示すサービスメニュ情報に基づいて、前記複数のネットワークサービスの候補を含むネットワークサービスメニュを生成する工程と、
前記ネットワークサービスメニュをユーザに提示する工程と、
前記ネットワークサービスの候補の内、第1のネットワークサービスを特定するサービス要求を前記ユーザから受け付ける工程と、
前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスに対応する第1のネットワークプールを判定し、判定した前記第1のネットワークプールを示すネットワーク構成情報を生成する工程と、
前記ネットワーク構成情報に基づいて、複数のネットワーク間でネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、前記第1の通信回線の予備となる第2の通信回線を含む前記第1のネットワークプールを前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスとして前記ユーザ用に割り当てる工程と、
前記第1の通信回線の前記ネットワーク通信を監視することで、前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能情報を取得する工程と、
前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスに対応する性能係数と、性能閾値とを判定する工程と、
前記第1の性能情報と、前記性能係数とに基づいて、第1の時刻に対応する前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能スコアと、第2の時刻に対応する前記第1の通信回線の性能を示す第2の性能スコアを計算する工程と、
前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコアを超え、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値未満の場合、前記第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を前記第1の通信回線に対するネットワーク管理アクションとして実施すると判定する工程と、
前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコア以下、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値未満、且つ前記第1の性能スコアが前記性能閾値未満の場合、前記第1の通信回線でのネットワーク通信を継続する継続動作を前記第1の通信回線に対する前記ネットワーク管理アクションとして実施すると判定する工程と、
前記第2の性能スコアが前記性能閾値以上、且つ、前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコアを超えている、且つ、前記第1の性能スコアが前記性能閾値以上である場合、又は前記第2の性能スコアが前記第1の性能スコア以下、且つ、前記第2の性能スコアが前記性能閾値以上である状態が一定時間以上継続した場合、前記ネットワーク通信を前記第1の通信回線から前記第2の通信回線に切り替える切り替え動作を前記第1のネットワークプールに対する前記ネットワーク管理アクションとして実施すると判定する工程と、
ネットワークプール毎に判定した前記ネットワーク管理アクションを示すルーティング情報を生成する工程と、
前記ルーティング情報に基づいて、判定したネットワーク管理アクションを前記第1のネットワークプールに対して実施する工程と、
を含むことを特徴とするネットワークオーケストレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークオーケストレーション装置、ネットワークオーケストレーションシステム及びネットワークオーケストレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスやデータセンターといった拠点間やクラウドへの接続における柔軟性を向上させ、ネットワークトラフィックを適切にコントロールする手段として、いわゆるSD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)が用いられている。
【0003】
SD-WANは、ネットワークをソフトウェアで制御するSDN(Software Defined Networking)の技術をWAN(Wide Area Network)に適用し、拠点間接続やクラウド接続などにおいて柔軟なネットワーク構成やトラフィックコントロールなどを実現する技術である。
【0004】
一般に、SD-WANアーキテクチャでは、SD-WANを構築した通信事業者の顧客側のネットワーク(ローカルネットワークやブランチネットワークという)は、インターネットゲートウェイを介して、外部のネットワーク(接続先ネットワークやデスティネーションネットワークという)に接続される。通信事業者は、顧客側のローカルネットワークをインターネットゲートウェイに接続する回線を複数提供してもよい。これらの回線は、ネットワークの要件等により、専用の回線や、共有の回線であってもよい。
【0005】
複数の回線を提供するSD-WANアーキテクチャを用いれば、例えば拠点間接続において信頼性がそれほど求められない通信にはインターネットVPN、遅延の影響が大きいビデオ会議にはクローズドVPNなど、トラフィックの種類に応じて利用する回線を使い分けることが可能となる。
【0006】
上述のような、複数の回線を提供するSD-WANアーキテクチャにおいて、顧客のニーズを満たしつつ、ネットワークトラフィックを適切に制御することが重要な課題であり、この課題に関して、従来からいくつかの提案がなされている。
【0007】
例えば、SD-WANアーキテクチャにおけるトラフィックのルーティング手段の一つとして、米国特許第11134126号明細書(特許文献1)が存在する。
特許文献1には、「プライマリ仮想インターネットゲートウェイ(VIG)を選択できるネットワークオーケストレーターが提供される。動作中、ネットワークオーケストレーターは、プライマリVIGとブランチゲートウェイ間、及びセカンダリVIGとブランチゲートウェイ間の複数のパケットのラウンドトリップタイムを監視することができる。ネットワークオーケストレーターは、プライマリVIGとブランチゲートウェイ間の接続に関連付けられた第1の予測ラウンドトリップタイムと、セカンダリVIGとブランチゲートウェイ間の接続に関連付けられた第2の予測ラウンドトリップタイムを判定することができる。ネットワークオーケストレーターは、第1と第2の予測ラウンドトリップタイムに基づいて、新たなプライマリVIGを選択することができる」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1には、プライマリVIGとブランチゲートウェイとの間のパケットのラウンドトリップタイム(往復送信時間;RTT)と、セカンダリVIGとブランチゲートウェイとの間のパケットのラウンドトリップタイムとを予測した後、ネットワークトラフィックは、予測したラウンドトリップタイムが最も低い回線にルーティングする手段が開示されている。
【0010】
特許文献1に記載の手段では、ネットワークトラフィックの制御は、パケットのRTTのみに基づいて行われている。このRTTは、ネットワーク回線の性能指標の1つであるものの、実際には、ネットワーク回線の性能を把握するためには、RTTのみならず、ネットワーク回線の利用目的(金融サービス、産業関係のサービス、SaaS等)に応じた性能指標を考慮することが望ましい。
しかし、特許文献1では、ネットワーク回線の利用目的に応じた性能指標を用いてネットワークトラフィックのルーティングを行うことは検討されていない。
【0011】
そこで、本開示は、ネットワークの利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のネットワークオーケストレーション装置の一つは、ネットワークの仕様を規定するネットワークサービスの候補を複数含むネットワークサービスメニュを生成し、ユーザに提示し、前記ネットワークサービスの候補の内、第1のネットワークサービスを特定するサービス要求を前記ユーザから受け付けるユーザ管理部と、複数のネットワーク間でネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、前記第1の通信回線の予備となる第2の通信回線とを含む第1のネットワークプールを前記サービス要求によって特定された前記第1のネットワークサービスとして前記ユーザ用に割り当てるネットワーク管理部と、前記第1の通信回線の性能を示す第1の性能情報を取得し、取得した第1の性能情報が第1の性能基準を満たし、且つ、第2の性能基準を満たさない場合、前記第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を前記第1の通信回線に対して実施すると判定し、取得した第1の性能情報が第1の性能基準、第2の性能基準及び第3の性能基準を満たさない場合、前記ネットワーク通信を前記第1の通信回線から前記第2の通信回線に切り替える切り替え動作を前記第1のネットワークプールに対して実施すると判定するルーティング管理部とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、顧客の利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークサービスの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーションシステムにおけるデータの流れを示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラを用いてネットワークインフラに対するネットワークオーケストレーションを実施する場合の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係るサービスメニュテーブルの構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係るユーザ情報テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る請求テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係るネットワーク性能情報テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係るルーティングテーブルの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係るネットワーク構成テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係るネットワークプール割り当て処理の流れの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係るルーティング判定処理の流れの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係る請求処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、本開示において様々な要素又は構成要素を説明するのに用いられる場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素と区別するためにのみ用いられる。したがって、以下で論述する第1の要素又は構成要素は、本発明概念の教示から逸脱することなく第2の要素又は構成要素と呼ぶこともできる。
【0016】
(本開示の概要)
上述したように、一般に、SD-WANアーキテクチャでは、SD-WANを構築した通信事業者の顧客側のネットワーク(ローカルネットワークやブランチネットワークという)は、インターネットゲートウェイを介して、外部のネットワーク(接続先ネットワークやデスティネーションネットワークという)に接続される。通信事業者は、顧客側のローカルネットワークをインターネットゲートウェイに接続する回線を複数提供してもよい。これらの回線は、ネットワーク通信の帯域幅やセキュリティ等の特性が異なり、ネットワークの要件等により、専用の回線や、共有の回線であってもよい。また、これらの複数の回線は、異なるインターネットサービスプロバイダー(ISP)によって提供されてもよい。
【0017】
しかし、近年では、ネットワーク利用者の利用目的が多様化しているものの、SD-WANアーキテクチャにおける回線は、ネットワーク利用者の利用目的を考慮せずに割り当てられることが現状である。このため、割り当てられた回線がネットワーク利用者の利用目的に適していないことにより、遅延や、情報流出等の問題が発生することがある。
【0018】
そこで、本開示は、顧客の利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークサービスの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーションを提供することを目的とする。
【0019】
本開示では、ネットワーク利用者が選択したネットワークサービスに応じたネットワークプールがネットワーク利用者用に割り当てられる。割り当てられるネットワークプールは、ネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線と、第1の通信回線の予備となる第2の通信回線を含んでもよい。そして、ネットワークプールを割り当てた後、第1の通信回線の性能が随時監視され、性能情報が取得される。この第1の通信回線の性能情報は、ネットワーク利用者が選択したネットワークサービスに対応する基準に基づいて評価される。そして、第1の通信回線の性能評価に応じて、第1の通信回線の性能を向上させる性能向上動作や、ネットワーク通信を第1の通信回線から予備の第2の通信回線に切り替える切り替え動作等が判定され、ネットワークプールに対して実施される。
【0020】
このように、ネットワーク利用者の利用目的応じて選択されたネットワークプールが割り当てられるため、遅延や、情報流出等の、ネットワーク利用者の利用目的に適していない回線に起因する問題を回避することができる。また、割り当てられるネットワークプールの性能は、ネットワーク利用者の利用目的に応じた基準に基づいて評価されるため、ネットワーク利用者の利用目的に適したネットワーク通信管理を行うことが可能となる。
【0021】
次に、
図1を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム100について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム100の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ102、メモリ104、端末インターフェース112、ストレージインタフェース113、I/O(入出力)デバイスインタフェース114、及びネットワークインターフェース115を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス106、I/Oバス108、バスインターフェースユニット109、及びI/Oバスインターフェースユニット110を介して、相互的に接続されてもよい。
【0022】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)102A及び102Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム100は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム100は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ102は、メモリ104に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0023】
ある実施形態では、メモリ104は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ104は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ104は、ネットワークオーケストレーションアプリケーション150を格納していてもよい。ある実施形態では、ネットワークオーケストレーションアプリケーション150は、後述する機能をプロセッサ102上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0024】
ある実施形態では、ネットワークオーケストレーションアプリケーション150は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、ネットワークオーケストレーションアプリケーション150は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、または他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット109、プロセッサ102、またはコンピュータシステム100の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0025】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102、メモリ104、表示システム124、及びI/Oバスインターフェースユニット110間の通信を行うバスインターフェースユニット109を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス108と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット110は、I/Oバス108を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット112,113,114、及び115と通信してもよい。
【0026】
表示システム124は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオコントローラ、又はその両方のデータを表示装置126に提供することができる。また、コンピュータシステム100は、データを収集し、プロセッサ102に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0027】
表示システム124は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置126に接続されてもよい。
【0028】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット112は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス116の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス116及びコンピュータシステム100に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム100からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス116を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0029】
ストレージインタフェース113は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置117(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置117は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ104の内容は、ストレージ装置117に記憶され、必要に応じてストレージ装置117から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース114は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース115は、コンピュータシステム100と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク130であってもよい。
【0030】
ある実施形態では、コンピュータシステム100は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム100は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0031】
次に、
図2を参照して、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション装置について説明する。
【0032】
図2は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション装置1000の構成を示すブロック図である。ネットワークオーケストレーション装置1000は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーションを行うための装置であり、例えば
図1に示すコンピュータシステム100によって実装されてもよい。
図2に示すように、ネットワークオーケストレーション装置1000は、ユーザ管理部1100、サービス管理部1200、ルーティング管理部1300及びネットワーク管理部1400を含んでもよい。
【0033】
ユーザ管理部1100、サービス管理部1200、ルーティング管理部1300及びネットワーク管理部1400のそれぞれは、ネットワークを介して接続されている装置として実装されてもよく、
図1に示すコンピュータシステム100に示すネットワークオーケストレーションアプリケーション150におけるソフトウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0034】
ユーザ管理部1100は、ユーザへの情報を提示すると共に、ユーザからの入力を受け付けるための機能部である。ある実施形態では、ユーザ管理部1100は、サービスメニュテーブルT100と、ユーザ情報テーブルT200と、サービスメニュ管理部1120とを含んでもよい。
サービスメニュテーブルT100は、ユーザへ提供可能な複数のネットワークサービスの候補のそれぞれを特徴付けるサービスメニュ情報を格納するテーブルである。
ユーザ情報テーブルT200は、ユーザや、ユーザによって選択されたネットワークサービスに関する情報を格納するテーブルである。
【0035】
サービスメニュ管理部1120は、サービスメニュテーブルT100のサービスメニュ情報に基づいて、ネットワークサービスメニュを生成し、ユーザに提示し、ネットワークサービスの候補の内、特定のネットワークサービスを特定するサービス要求をユーザから受け付ける機能部である。
ユーザ管理部1100は、接続N100を介して、サービス管理部1200に接続される。
【0036】
サービス管理部1200は、ユーザへ提供するネットワークサービスを管理するための機能部である。ある実施形態では、サービス管理部1200は、ネットワーク構成部1220、請求管理部1240、ネットワーク構成テーブルT600及び請求テーブルT300を含んでもよい。
【0037】
ネットワーク構成テーブルT600は、提供可能なネットワークサービスの候補のそれぞれについて、当該ネットワークサービスに対応するネットワークプール等のネットワーク構成情報を格納するテーブルである。
【0038】
ネットワーク構成部1220は、ユーザからのサービス要求によって特定されたネットワークサービスに対応するネットワークプールを判定し、判定したネットワークプールの情報をネットワーク構成テーブルT600に格納する機能部である。
【0039】
請求テーブルT300は、ネットワークサービスを提供する費用に関する情報を格納するテーブルである。
請求管理部1240は、ネットワーク構成部1220によって判定されたネットワークプールを提供する費用を計算し、請求書を生成し、ユーザに送信する機能部である。
サービス管理部1200は、接続N200を介して、ルーティング管理部1300及びネットワーク管理部1400に接続される。
【0040】
ルーティング管理部1300は、ユーザからのサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供するネットワークプールの性能を監視し、当該ネットワークプールの性能に基づいて適切なネットワーク管理アクションを判定する機能部である。ある実施形態では、ルーティング管理部1300は、ネットワーク監視部1320、ルーティング判定部1340及びネットワーク性能情報テーブルT400を含んでもよい。
【0041】
ネットワーク監視部1320は、ネットワークプールでのネットワーク通信を監視することで、当該ネットワークプールの性能を特徴付ける性能情報を取得する機能部である。
ネットワーク性能情報テーブルT400は、ネットワーク監視部1320によって取得された性能情報を格納するテーブルである。
ルーティング判定部1340は、ネットワーク性能情報テーブルT400に格納されている性能情報に基づいて適切なネットワーク管理アクションを判定する機能部である。
【0042】
ネットワーク管理部1400は、サービス管理部1200によって判定されるネットワークプールをユーザ用に割り当てると共に、ルーティング管理部1300によって判定されるネットワーク管理アクションを実施するための機能部である。ある実施形態では、ネットワーク管理部1400は、ネットワークプール割り当て部1420と、管理アクション実施部1440と、ルーティングテーブルT500とを含んでもよい。
【0043】
ネットワークプール割り当て部1420は、サービス管理部1200によって判定されるネットワークプールをユーザ用に割り当てる機能部である。
ルーティングテーブルT500は、ネットワークプール毎に、実施するネットワーク管理アクションに関する情報を格納するテーブルである。
管理アクション実施部1440は、ルーティングテーブルT500の情報に基づいて、ネットワークプールに対するネットワーク管理アクションを実施する機能部である。
【0044】
以上説明したように構成したネットワークオーケストレーション装置1000によれば、顧客の利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークサービスの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供することができる。
なお、以上では、サービスメニュテーブルT100、請求テーブルT300、ネットワーク性能情報テーブルT400、ルーティングテーブルT500及びネットワーク構成テーブルT600のそれぞれが、当該テーブルを用いる機能部内に格納されている場合を一例として示したが、ある実施形態では、例えば
図4に示すように、サービスメニュテーブルT100、ユーザ情報テーブルT200、請求テーブルT300、ネットワーク性能情報テーブルT400、ルーティングテーブルT500及びネットワーク構成テーブルT600をまとめて所定の記憶部(例えば、
図4に示す記憶部2100)に格納する構成も可能である。また、本開示では、説明の便宜上、各種情報を管理する手段として「テーブル」を用いる場合を説明しているが、実際には、情報の格納形態は特に限定されない。
【0045】
次に、
図3を参照して、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラについて説明する。
【0046】
図3は、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラ3800の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション手段は、いわゆるSD-WAN環境において用いられてもよい。この場合、上述したサービス管理部1200、ルーティング管理部1300及びネットワーク管理部1400は、SD-WANコントローラ3800として機能し、任意のSD-WAN環境におけるネットワーク通信をルーティングするために用いられてもよい。
なお、この場合、ユーザ管理部1100は、SD-WANコントローラ3800とは異なるサーバ装置等に実装されてもよい。
【0047】
次に、
図4を参照して、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーションシステムにおけるデータの流れについて説明する。
【0048】
図4は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーションシステム4000におけるデータの流れを示すブロック図である。本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーションシステム4000は、
図2を参照して説明したネットワークオーケストレーション装置1000と、ネットワークインフラ1500とからなる。
このネットワークインフラ1500は、例えば
図4に示すように、ユーザに用いられるブランチネットワーク3100と、インターネット3500と、接続先ネットワーク3700を含んでもよい。
【0049】
まず、ユーザ管理部1100におけるサービスメニュ管理部1120は、接続A100を介して、記憶部2100に格納されているサービスメニュテーブルT100のサービスメニュ情報を取得し、取得したサービスメニュ情報に基づいて、提供可能な複数のネットワークサービスの候補の仕様を規定するネットワークサービスメニュを生成する。ここで、「ネットワークサービス」とは、ユーザ側のブランチネットワーク3100と、接続先ネットワーク3700との間のデータ通信を行うネットワークプールを提供することを意味する。また、「ネットワークサービスの候補の仕様」には、ネットワークサービスの性能、属性、構成等、任意の特性を含んでもよい。
【0050】
その後、サービスメニュ管理部1120は、生成したネットワークサービスメニュを、接続A200を介して、ユーザインターフェース2200に提示する。そして、サービスメニュ管理部1120は、ネットワークサービスメニュに示される複数のネットワークサービスの候補の内、特定のネットワークサービス(例えば、第1のネットワークサービス)を特定するサービス要求をユーザインターフェース2200を介してユーザから受け付ける。その後、サービスメニュ管理部1120は、ユーザに関する情報と、ネットワークサービスメニュから選択された第1のネットワークサービスに関する情報を、接続A350を介して、ユーザ情報テーブルT200に格納する。
【0051】
次に、サービス管理部1200におけるネットワーク構成部1220は、ネットワークサービスメニュから選択された第1のネットワークサービスの情報を取得する。ここで、ネットワーク構成部1220は、ネットワークサービスメニュから選択された第1のネットワークサービスの情報を、接続A250を介して、ユーザ管理部1100から直接取得してもよく、接続A375を介して、ユーザ情報テーブルT200から取得してもよい。そして、ネットワーク構成部1220は、取得した第1のネットワークサービスの情報に基づいて、当該第1のネットワークサービスに対応するネットワークプール(例えば、第1のネットワークプール)を判定する。ここで、「ネットワークプール」とは、データ通信を行うためのネットワーク資源を意味し、例えば通信回線、帯域幅、セキュリティ対策等を含む。
その後、ネットワーク構成部1220は、接続A300を介して、判定した第1のネットワークプールの情報を、当該ユーザを識別する情報(ユーザID、ユーザ名)や当該ネットワークサービスを識別する情報(サービスID)に対応付けてネットワーク構成テーブルT600に格納する。
【0052】
次に、ネットワーク管理部1400におけるネットワークプール割り当て部1420は、接続A400を介して、ネットワーク構成テーブルT600に格納されている第1のネットワークプールの情報を取得し、取得した第1のネットワークプールの情報に基づいて、第1のネットワークプールを、ネットワークインフラ1500において、当該ユーザ用に割り当てる。
【0053】
次に、第1のネットワークプールが割り当てられた後、ルーティング管理部1300におけるネットワーク監視部1320は、ネットワークプールでのネットワーク通信を監視することで、当該ネットワークプールの性能を特徴付ける性能情報を取得し、接続A500を介して、取得した性能情報をネットワーク性能情報テーブルT400に格納する。その後、ルーティング判定部1340は、接続A600を介して、第1のネットワークプールに関する性能情報をネットワーク性能情報テーブルT400から取得する。
そして、ルーティング判定部1340は、取得した性能情報を、例えばユーザによって選択された第1のネットワークサービスに対応する基準(性能閾値等)に基づいて解析することで、第1のネットワークプールを管理するためのネットワーク管理アクションを判定する。その後、ルーティング判定部1340は、接続A700を介して、判定したネットワーク管理アクションの情報をルーティングテーブルT500に格納する。
【0054】
次に、ネットワーク管理部1400における管理アクション実施部1440は、接続A800を介して、第1のネットワークプールについて判定されたネットワーク管理アクションの情報をルーティングテーブルT500から取得する。その後、管理アクション実施部1440は、ルーティングテーブルT500から取得したネットワーク管理アクションの情報に基づいて、判定されたネットワーク管理アクションをネットワークインフラ1500において割り当てられたネットワークプールに対して実施する。
【0055】
また、サービス管理部1200における請求管理部1240は、ネットワーク構成テーブルT600に格納されているネットワークプールの仕様や使用量等の情報に基づいて、ユーザに選択されたネットワークサービスを提供する費用を計算する。その後、請求管理部1240は、接続A900を介して、計算した費用に関する請求情報を請求テーブルT300に格納する。そして、請求管理部1240は、計算した費用を示す請求書を作成し、接続A1000を介して、ユーザインターフェース2200に提示してもよい。
なお、ある実施形態では、ユーザインターフェース2200では、ユーザは、請求書等に加えて、提供されたネットワークプールの情報や、当該ネットワークプールに対して実施されたネットワーク管理アクションを確認することができる。
【0056】
以上説明したネットワークオーケストレーションシステム4000によれば、顧客の利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークサービスの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供することができる。
【0057】
次に、
図5を参照して、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラを用いてネットワークインフラ1500に対するネットワークオーケストレーションを実施する場合の具体例について説明する。
【0058】
図5は、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラ3800を用いてネットワークインフラに対するネットワークオーケストレーションを実施する場合の具体例を示す図である。
【0059】
上述したように、本開示の実施形態に係るSD-WANコントローラ3800は、上述したサービス管理部1200、ルーティング管理部1300及びネットワーク管理部1400を含んでもよい。
【0060】
ネットワークインフラ1500は、ブランチネットワーク3100と、インターネット3500と、接続先ネットワーク3700とを主に含む。
ブランチネットワーク3100は、例えばユーザに用いられるプライベートのネットワークであってもよい。また、ブランチネットワーク3100は、ブランチゲートウェイ3200に接続される。このブランチゲートウェイ3200は、ブランチネットワーク3100と、インターネット3500との間の通信を中継するものである。
【0061】
接続先ネットワーク3700は、ブランチネットワーク3100に対して所定のサービスを提供するためのネットワークであり、例えばクラウドネットワーク、データセンターのネットワーク等、任意のサーバ側アーキテクチャであってもよい。また、接続先ネットワーク3700は、接続先ゲートウェイ3600に接続される。この接続先ゲートウェイ3600は、接続先ネットワーク3700と、インターネット3500との間の通信を中継するものである。
【0062】
また、
図5に示すように、ブランチゲートウェイ3200と、接続先ゲートウェイ3600とは、通信回線3400a、3400b、3400z等の通信回線を介して接続される。これらの通信回線3400a、3400b、3400zは、上述したネットワークサービスメニュからユーザによって選択されたネットワークサービスを提供するために割り当てられるネットワークプールに含まれる通信回線である。
なお、
図5では、3つの通信回線3400a、3400b、3400zを含むネットワークプールを割り当てた場合を一例として示しているが、実際には、通信回線の数は限定されず、選択されたネットワークサービスに応じて定められてもよい。
【0063】
以下では、SD-WANコントローラ3800を用いてネットワークインフラに対してネットワークプールを割り当てる場合の一例について説明する。
まず、上述したように、SD-WANコントローラ3800におけるサービス管理部1200は、ユーザ管理部1100(
図5では図示せず)によって受け付けられたサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供するためのネットワークプール(例えば、第1のネットワークプール)を判定する。その後、ネットワーク管理部1400は、ユーザが選択したネットワークサービスに適した仕様を有する通信回線3400a、3400b、3400zを含むネットワークプールを、ブランチゲートウェイ3200と、接続先ゲートウェイ3600との間のネットワーク通信を行うために割り当てる。
【0064】
ここで、ネットワーク管理部1400は、ユーザが選択したネットワークサービスに適した仕様を有する通信回線を含むネットワークプールを割り当ててもよい。各通信回線は、ユーザによって選択されたネットワークサービスに応じて、異なるネットワーク特性や仕様を有してもよく、同様のネットワーク特性や仕様を有してもよい。このように、ユーザが選択したネットワークサービスに適した仕様を有する通信回線を含むネットワークプールを割り当てることで、ネットワークの利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供することができる。
【0065】
本開示のある実施形態では、ネットワーク管理部1400は、ネットワーク通信を優先的に行う第1の通信回線(例えば、通信回線3400a)と、第1の通信回線の予備となる第2の通信回線(例えば、通信回線3400b)を含む第1のネットワークプールを割り当ててもよい。例えば、ネットワーク管理部1400は、以下の表1に示す仕様を有する通信回線を割り当ててもよい。
【表1】
【0066】
この場合、ブランチゲートウェイ3200と、接続先ゲートウェイ3600との間のネットワーク通信は、通常、第1の通信回線を用いて行われるが、例えば第1の通信回線の性能が落ちた場合等には、第2の通信回線へ切り替えるネットワーク管理アクションを実施してもよい。
【0067】
より具体的には、ネットワークプールが割り当てられた後、ルーティング管理部1300は、第1の通信回線の性能を示す第1の性能情報を取得する。取得した第1の性能情報が第1の性能基準を満たし、且つ、第2の性能基準を満たさない場合、ルーティング管理部1300は、第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を第1の通信回線に対して実施することを判定する。
一方、取得した第1の性能情報が第1の性能基準、第2の性能基準及び第3の性能基準を満たさない場合、ルーティング管理部1300は、ネットワーク通信を第1の通信回線から第2の通信回線に切り替える切り替え動作を第1のネットワークプールに対して実施することを判定する。
その後、ルーティング管理部1300によって判定された性能向上動作又は切り替え動作は、ネットワークプールに対するネットワーク管理アクションとして、ネットワーク管理部1400によって実施されてもよい。
【0068】
ここで、通信回線の性能を評価するための基準は、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定された性能閾値であってもよい。このように、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定した性能閾値等の基準を用いて通信回線の性能を評価することで、ネットワークの利用目的を考慮した上でネットワークプールの性能を評価することができると共に、適切なネットワーク通信のルーティングを行うことが可能となる。
【0069】
なお、ネットワークプールについて取得した性能情報に基づいて適切なネットワーク管理アクションを判定する処理の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0070】
次に、
図6を参照して、本開示の実施形態に係るサービスメニュテーブルについて説明する。
【0071】
図6は、本開示の実施形態に係るサービスメニュテーブルT100の構成の一例を示す図である。上述したように、サービスメニュテーブルT100は、ユーザへ提供可能な複数のネットワークサービスの候補のそれぞれを特徴付けるサービスメニュ情報を格納するテーブルである。
【0072】
より具体的には、
図6に示すように、サービスメニュテーブルT100は、特定のネットワークサービスを識別するためのサービスID T110、各ネットワークサービスが適しているサービスドメインT120、各ネットワークサービスのネットワークタイプ、各ネットワークサービスのセキュリティT140、各ネットワークサービスのユーザT150、各ネットワークサービスの仕様場所T160、各ネットワークサービスのレイテンシー基準T170、各ネットワークサービスの確実性T180及び各ネットワークサービスの費用T190等の情報を格納してもよい。
【0073】
上述したように、サービスメニュテーブルT100の情報に基づいて、ユーザへ提示されるサービスメニュが作成される。ユーザは、このサービスメニュに示される複数のネットワークサービスの候補の中から所望のネットワークサービスを選択することができる。
なお、
図6に示すサービスドメインT120は、ネットワークの利用目的の指標となる。例えば、サービスメニュテーブルT100の情報に基づいて作成されたネットワークサービスメニュからサービスIDが「S01」のネットワークサービスを選択した場合、当該ネットワークの利用目的が「金融」関係のデータの通信に関すると見なすことができる。
【0074】
次に、
図7を参照して、本開示の実施形態に係るユーザ情報テーブルについて説明する。
【0075】
図7は、本開示の実施形態に係るユーザ情報テーブルT200の構成の一例を示す図である。上述したように、ユーザ情報テーブルT200は、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション手段を利用するユーザ(例えば、顧客)や、当該ユーザによって選択されるネットワークサービスに関する情報を格納するテーブルである。
【0076】
より具体的には、
図7に示すように、ユーザ情報テーブルT200は、ユーザを識別するユーザID T210、ユーザの名称を示すユーザ名T220、ユーザに選択されたネットワークサービスを識別するためのサービスID T230、各ネットワークサービスを提供するネットワークプールを識別するネットワークプールID T240、ネットワークプールに含まれる通信回線を識別する通信回線ID T250、各通信回線の優先度T260、及び各通信回線の帯域幅T270を格納してもよい。
なお、ユーザ情報テーブルT200におけるサービスID230は、サービスメニュテーブルT100におけるサービスID110に対応する。
【0077】
次に、
図8を参照して、本開示の実施形態に係る請求テーブルについて説明する。
【0078】
図8は、本開示の実施形態に係る請求テーブルT300の構成の一例を示す図である。上述したように、請求テーブルT300は、ネットワークサービスを提供する費用に関する情報を格納するテーブルである。
【0079】
より具体的には、
図8に示すように、請求テーブルT300は、ユーザを識別するユーザID T310、ユーザの名称を示すユーザ名T320、ユーザに選択されたネットワークサービスを識別するためのサービスID T330、各ネットワークサービスを提供するネットワークプールを識別するネットワークプールID T340、各ネットワークプールのコストT350及び当該ユーザへ請求する合計の費用(例えば、複数のネットワークプールの概算)T360を格納してもよい。
なお、請求テーブルT300におけるユーザID T310、ユーザ名T320、サービスID T330及びネットワークプールID T340は、ユーザ情報テーブルT200におけるユーザID T210、ユーザ名T220、サービスID T230及びネットワークプールID T240に対応する。
【0080】
次に、
図9を参照して、本開示の実施形態に係るネットワーク性能情報テーブルについて説明する。
【0081】
図9は、本開示の実施形態に係るネットワーク性能情報テーブルT400の構成の一例を示す図である。上述したように、ネットワーク性能情報テーブルT400は、ネットワークプールに含まれる各通信回線について取得した性能情報を格納するテーブルである。
【0082】
より具体的には、
図9に示すように、ネットワーク性能情報テーブルT400は、通信回線を識別する通信回線ID T420毎に、当該通信回線のRTT(ラウンドトリップタイム)T430、パケット損失T440、レイテンシーT450、ジッターT460、ワークロードT470及び回線利用率T480を性能情報として、当該情報が取得された時刻T410に対応付けて格納してもよい。
これらの情報は、上述したネットワーク監視部1320によって継続的に取得され、ネットワーク性能情報テーブルT400に格納されてもよい。
【0083】
次に、
図10を参照して、本開示の実施形態に係るルーティングテーブルについて説明する。
【0084】
図10は、本開示の実施形態に係るルーティングテーブルT500の構成の一例を示す図である。上述したように、ルーティングテーブルT500は、ネットワークプール毎に、実施するネットワーク管理アクションに関する情報を格納するテーブルである。
【0085】
より具体的には、
図10に示すように、ルーティングテーブルT500は、ユーザを識別するユーザID T510、ネットワークサービスを提供するネットワークプールを識別するネットワークプールID T520、現在使用されている通信回線を識別する現回線ID T530、以前に使用された通信回線を識別する前回線 ID540、当該通信回線に対して切り替え動作を実施するか否かを示す切り替え動作T550及び性能向上動作を実施するか否かを示す性能向上動作T560を格納してもよい。
ルーティングテーブルT500において、「Y」は、対応するネットワーク管理アクションを実施することを意味し、「N」は、対応するネットワーク管理アクションを実施しないことを意味する。
【0086】
次に、
図11を参照して、本開示の実施形態に係るネットワーク構成テーブルについて説明する。
【0087】
図11は、本開示の実施形態に係るネットワーク構成テーブルT600の構成の一例を示す図である。上述したように、ネットワーク構成テーブルT600は、提供可能なネットワークサービスの候補のそれぞれについて、当該ネットワークサービスに対応するネットワークプール等の仕様に関する情報を格納するテーブルである。
【0088】
より具体的には、
図11に示すように、ネットワーク構成テーブルT600は、ユーザを識別するユーザID T610、ユーザの名称を示すユーザ名T620、ユーザに選択されたネットワークサービスを識別するためのサービスID T630、ネットワークサービスを提供するネットワークプールを識別するネットワークプールID T640、ネットワークプールのセキュリティ構成T650、ネットワークプールの帯域幅T660及びネットワークプールの確実性T670を格納してもよい。
なお、ネットワーク構成テーブルT600におけるユーザID T610、ユーザ名T620、サービスID T630及びネットワークプールID T640は、請求テーブルT300におけるユーザID T310、ユーザ名T320、サービスID T330及びネットワークプールID T340に対応する。
【0089】
次に、
図12を参照して、本開示の実施形態に係るネットワークプール割り当て処理について説明する。
【0090】
図12は、本開示の実施形態に係るネットワークプール割り当て処理P1200の流れの一例を示す図である。
図12に示すネットワークプール割り当て処理P1200は、上述したネットワークサービスメニュを介して入力されたユーザのサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供するためのネットワークプールを割り当てるための処理であり、上述したユーザ管理部1100、サービス管理部1200及びネットワーク管理部1400によって実施されてもよい。
【0091】
まず、ステップP1210では、ユーザ管理部1100におけるサービスメニュ管理部1120は、サービスメニュテーブルT100のサービスメニュ情報に基づいて、提供可能な複数のネットワークサービスの候補の仕様を規定するネットワークサービスメニュを生成し、例えば上述したユーザインターフェース2200を介してユーザに提示する。そして、サービスメニュ管理部1120は、ネットワークサービスメニュに示される複数のネットワークサービスの候補の内、特定のネットワークサービス(例えば、第1のネットワークサービス)を特定するサービス要求をユーザインターフェース2200を介してユーザから受け付ける。その後、サービスメニュ管理部1120は、ユーザに関する情報と、ネットワークサービスメニュから選択された第1のネットワークサービスに関する情報を、ユーザ情報テーブルT200に格納する。
【0092】
次に、ステップP1220では、サービス管理部1200におけるネットワーク構成部1220は、ネットワークサービスメニュを介して入力されたユーザのサービス要求によって特定された第1のネットワークサービスの情報(例えば、ユーザ情報テーブルT200に格納されている情報)に基づいて、当該第1のネットワークサービスに対応するネットワークプール(例えば、第1のネットワークプール)を判定する。その後、ネットワーク構成部1220は、判定した第1のネットワークプールの情報を、当該ユーザを識別する情報(ユーザID、ユーザ名)や当該ネットワークサービスを識別する情報(サービスID)に対応付けてネットワーク構成テーブルT600に格納する。
【0093】
次に、ステップP1230では、ネットワーク構成テーブルT600において新たな記録の追加を検出した場合、ネットワーク管理部1400におけるネットワークプール割り当て部1420は、ネットワーク構成テーブルT600の情報に基づいて、第1のネットワークプール(つまり、ユーザのサービス要求によって指定されるネットワークサービスに適していると判定されるネットワークプール)をユーザ用に割り当てる。ここで、より具体的には、例えば
図5に示すように、ネットワークプール割り当て部1420は、ユーザ側のブランチネットワークのブランチゲートウェイと、接続先ネットワーク側の接続先ゲートウェイとの間で通信を行うための通信回線を割り当ててもよい。ここで、ネットワークプール割り当て部1420は、ユーザが選択したネットワークサービスに適した仕様を有する新たな通信回線をユーザ用に割り当ててもよく、既存の通信回線を適宜に構成してもよい。
【0094】
以上説明したネットワークプール割り当て処理P1200によれば、ネットワークサービスメニュを介して入力されたユーザのサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供するためのネットワークプールをユーザ用に割り当てることができる。また、ここで割り当てられるネットワークプールは、ユーザが選択したネットワークサービスに適した仕様を有する通信回線からなるため、遅延や、情報流出等の、ネットワーク利用者の利用目的に適していない回線に起因する問題を回避することができる。また、後述するように、割り当てられるネットワークプールの性能は、ネットワーク利用者の利用目的に応じた基準に基づいて評価されるため、ネットワーク利用者の利用目的に適したネットワーク通信管理を行うことが可能となる。
【0095】
次に、
図13を参照して、本開示の実施形態に係るルーティング判定処理について説明する。
【0096】
図13は、本開示の実施形態に係るルーティング判定処理P1300の流れの一例を示す図である。
図13に示すルーティング判定処理P1300は、ユーザ用に割り当てたネットワークプールの性能に基づいて、適切なネットワーク管理アクションを判定し、ネットワーク通信のルーティングを行うための処理であり、ルーティング管理部1300によって実施されてもよい。
なお、以下では、第1の通信回線及び第2の通信回線を含む第1のネットワークプールを割り当てた場合を一例としてルーティング判定処理P1300の処理を説明するが、上述したように、通信回線の数は特定限定されない。また、ここでは、第1の通信回線は、ネットワーク通信を優先的に行う、主要の通信回線として用いられ、第2の通信回線は、第1の通信回線の予備となる冗長通信回線である場合を一例として説明する。
【0097】
まず、ステップP1310では、ルーティング管理部1300におけるネットワーク監視部1320は、第1のネットワークプールでのネットワーク通信を監視することで、第1のネットワークプールの性能を時系列に示す第1の性能情報を取得し、取得した性能情報を上述したネットワーク性能情報テーブルT400に格納する。
【0098】
より具体的には、ここで、ネットワーク監視部1320は、第1のネットワークプールに含まれる第1の通信回線及び第2の通信回線の両方について、当該通信回線のRTT(ラウンドトリップタイム)、レイテンシー、ジッター、ワークロード、及び回線利用率等の性能指標を、少なくとも2つの異なる時刻で計測することで第1の性能情報を取得してもよい。原則として、これらの性能指標は、低ければ低い程、ネットワーク通信の性能が良好であることを意味する。
本開示の実施形態に係る第1の性能情報に含まれる性能指標の一例や、各性能指標を示す記号を以下の表2で示す。
【0099】
【表2】
ここで、第1の時刻は、過去の時点で、第2の時刻は現在の時点であってもよい。つまり、第2の時刻は、第1の時刻後の時刻であってもよい。また、ある実施形態では、第1の時刻と第2の時刻との時差は、所定の時間以内(1分、5分、10分等)であってもよい。
なお、第1のネットワークプールには複数の通信回線が含まれている場合、各通信回線について性能情報を取得してもよいが、第1の通信回線は、ネットワーク通信を優先的に行う、主要の通信回線として用いられ、第2の通信回線は、第1の通信回線の予備となる冗長通信回線として用いられている場合、第2の通信回線ではネットワーク通信が行われていないため、第1の性能情報は、第1の通信回線について取得した性能情報のみとなる。
【0100】
次に、ステップP1310では、ルーティング管理部1300におけるルーティング判定部1340は、ステップP1310で取得した第1の性能情報を解析することで、第1のネットワークプールを管理するためのネットワーク管理アクションを判定する。ここで、ルーティング判定部1340は、取得した第1の性能情報と、ユーザによって選択されたネットワークサービスに対応する性能係数とに基づいて、各通信回線の性能を定量的に評価する性能スコアを計算する。その後、ルーティング判定部1340は、各回線について計算した性能スコアと、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づく性能閾値との関係に応じて、適切なネットワーク管理アクションを判定してもよい。
なお、ここでの「ネットワーク管理アクション」とは、通信回線で行われているネットワーク通信を制御するための動作であり、後述するように、性能向上動作、継続動作及び切り替え動作を含んでもよい。
【0101】
より具合的には、まず、ルーティング管理部1300は、第1の性能情報に含まれる性能指標のそれぞれの相対的な重要性を示す性能係数w
pと、異なるネットワーク管理アクションの境目となる性能閾値k
0とを判定する。言い換えれば、性能閾値k
0は、取得した第1の性能情報と、性能係数とに基づいて計算される性能スコアの最大許容値を示す。
性能係数w
pの一例を、以下の表3に示す。
【表3】
ここで、性能係数w
p及び性能閾値k
0は、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定されてもよい。一例として、高い確実性や高い帯域幅が求められるネットワークサービスがユーザによって選択された場合には、各性能係数w
pはより高い値となり、性能閾値k
0はより低い値となる。一方、高い確実性や高い帯域幅の条件がより緩いネットワークサービスがユーザによって選択された場合には、各性能係数w
pはより低い値となり、性能閾値k
0はより高い値となる。
このように、各性能指標毎に対して、当該性能指標の相対的な重要性を示す係数(重み付)を、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定し、割り当てることで、ネットワークの利用目的に応じて、ネットワークプールのより細かな性能評価が可能となる。
【0102】
性能係数w
pと、性能閾値k
0とを判定した後、ルーティング管理部1300は、第1の性能情報と、判定した性能係数とに基づいて、第1のネットワークプールの第1の時刻での性能を示す第1の性能スコアk
pと、第2の時刻での性能を示す第2の性能スコアk
cとを、以下の数式1、2で計算する。
【数1】
【数2】
原則として、第1の性能スコアk
pや第2の性能スコアk
cは、高ければ高い程、通信回線の性能が下がっていることを意味する。
なお、ここでは、第1の性能スコアk
pと、第2の性能スコアk
cとを、第1の性能情報と、性能係数との加重平均として計算した場合を一例として説明したが、本開示はこれに限定されず、性能スコアを他の計算手法で計算してもよい。
【0103】
次に、ルーティング判定部1340は、第1の性能スコアkpと、第2の性能スコアkcと、性能閾値k0との関係に基づいて、適切なネットワーク管理アクションを判定する。
適切なネットワーク管理アクションを判定するためには、第1の性能スコアkp及び第2の性能スコアkcが第1の性能基準及び第2の性能基準を満たしているか否かを判定する。ここで、第1の性能基準は、第2の性能スコアkcが性能閾値k0以上か否かを判断する基準である。第2の性能スコアkcが性能閾値k0以上の場合、第2の性能スコアkcが第1の性能基準を満たしていないと見なし、第2の性能スコアkcが性能閾値k0未満の場合、第2の性能スコアkcが第1の性能基準を満たしていると見なす。
また、第2の性能基準は、第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkpを超えているか否かを判断する基準である。第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkpを超えている場合、第2の性能スコアkcが第2の性能基準を満たしていないと見なし、第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkp以下の場合、第2の性能スコアkcが第2の性能基準を満たしていると見なす。
また、第3の性能基準は、第1の性能スコアkpが性能閾値k0以上か否かを判断する基準である。第1の性能スコアkpが性能閾値k0以上の場合、第1の性能スコアkpが第3の性能基準を満たしていないと見なし、第1の性能スコアkpが性能閾値k0未満の場合、第1の性能スコアkpが第3の性能基準を満たしていると見なす。
【0104】
より具体的には、第2の時刻での性能を示す第2の性能スコアkcが、性能閾値k0未満(つまり、第1の性能基準を満たしている)、且つ、第2の性能スコアkcが、第1の時刻での性能を示す第1の性能スコアkpを超えている(つまり、第2の性能基準を満たしていない)場合、本処理はステップP1330へ進み、ルーティング判定部1340は、第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を第1の通信回線に対して実施することを判定する。ここでの性能向上動作は、例えばTCP最適化(TCP Optimization)や、パケット複製(Packet Duplication)等のUX改善施策を含んでもよいが、特に限定されない。
【0105】
第1の性能スコアkpと、第2の性能スコアkcと、性能閾値k0とを比較した結果、第2の時刻での性能を示す第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkp以下、且つ、第2の性能スコアkcが性能閾値k0未満の場合、本処理はステップP1340へ進み、ルーティング判定部1340は、そのまま性能向上動作を行わずに第1の通信回線でネットワーク通信を継続する継続動作を実施すると判定する。
【0106】
ただし、第1の性能スコアkpと、第2の性能スコアkcと、性能閾値k0とを比較した結果、第2の性能スコアkcが性能閾値k0以上、且つ、第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkpを超えている、且つ、第1の性能スコアkpが性能閾値以上k0である(つまり、第1の性能基準、第2の性能基準及び第3の性能基準のいずれも満たさない)場合、又は第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkp以下、且つ、性能閾値k0以上である(つまり、第2の性能基準は満たすものの、第1の性能基準を満たさない状態)状態が一定時間以上継続した場合、本処理はステップP1350へ進み、ルーティング判定部1340は、ネットワーク通信を第1の通信回線から第2の通信回線(つまり、予備の通信回線)に切り替えるための切り替え動作を判定する。
【0107】
以上説明したルーティング判定部1340による判定は、以下の表4で示す。
【表4】
【0108】
ネットワーク管理アクションを判定した後、ルーティング判定部1340は、判定したネットワーク管理アクションを該当する通信回線に対応付けてルーティングテーブルT500に格納する。その後、上述した管理アクション実施部は、このルーティングテーブルT500に基づいて、判定されたネットワーク管理アクションを適切な通信回線に対して実施してもよい。更に、ある実施形態では、ルーティング判定部1340は、ネットワークプール毎に判定したネットワーク管理アクション(例えば、ルーティングテーブルT500の内容)をユーザインターフェース2200に提示してもよい。このように、ユーザは、ネットワークプールに対して実施されるネットワーク管理アクションを確認することができる。
また、ネットワーク管理アクションを判定した後、本処理はステップP1310へ戻り、ネットワークプールの監視を継続する。
【0109】
以上説明したように、第2の性能スコアkcが、第1の性能スコアkpを超え、且つ、第2の性能スコアkcが、性能閾値k0未満の場合に、第1の通信回線の性能を向上する性能向上動作を第1の通信回線に対して実施することが判定される。このように、第1の通信回線の性能が低下傾向であるものの(つまり、現時点での性能を示す第2の性能スコアが、過去の性能を示す第1の性能スコアより大きい)、性能の最大許容値を規定する性能閾値を満たしている場合に、ネットワーク通信を異なる回線に切り替えるルーティングを行わずに、現在の通信回線での性能を向上する対策が行われる。これにより、臨時的な性能低下等が発生した場合に、ネットワーク通信を異なる通信回線にルーティングするためのネットワーク資源を節約することができる。
【0110】
また、第2の性能スコアkcが第1の性能スコアkp以下、且つ、第2の性能スコアkcが性能閾値k0未満の場合に、そのまま性能向上動作を行わずに第1の通信回線でネットワーク通信を継続する継続動作を実施することが判定される。このように、第1の通信回線の性能が上がっている、又は変化していない場合(つまり、現時点での性能を示す第2の性能スコアが、過去の性能を示す第1の性能スコア以下)、ネットワーク通信を異なる回線に切り替えるルーティングや、上述した性能向上動作を行わずに、第1の通信回線でのネットワーク通信を継続する。
【0111】
第2の性能スコアkcが性能閾値k0(及び第1の性能スコアkp)以上の場合、ネットワーク通信を第1の通信回線から第2の通信回線に切り替えるための切り替え動作が判定される。このように、第1の通信回線の性能が低下傾向であり、性能の最大許容値を規定する性能閾値を満たさない(例えば、性能向上動作のみでは性能が十分に向上する見込みはない)場合に、第1の通信回線で行われていたネットワーク通信が、予備の第2の通信回線に切り替えられる。これにより、例えば第1の通信回線の性能が落ちた場合であっても、ユーザによって選択されたネットワークサービスに適したネットワークプールを高い確実性で提供することができる。
【0112】
次に、
図14を参照して、本開示の実施形態に係る請求処理について説明する。
【0113】
図14は、本開示の実施形態に係る請求処理P1400の流れの一例を示すフローチャートである。
図14に示す請求処理P1400は、ネットワークサービスメニュを介して入力されたユーザのサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供するコストをユーザに請求するための処理であり、サービス管理部1200及びユーザ管理部1100によって実施されてもよい。
【0114】
まず、ステップP1410では、ネットワークプールがユーザに提供された後、サービス管理部1200におけるネットワーク構成部1220は、ネットワーク構成テーブルT600を、提供されたネットワークプールに基づいて更新する。例えば、ここで、ネットワーク構成部1220は、提供されたネットワークプールのセキュリティ構成、帯域幅、確実性等に関する最新情報をネットワーク構成テーブルT600に格納してもよい。また、ある実施形態では、ネットワーク構成部1220は、提供されたネットワークプールの使用量の情報をネットワーク構成テーブルT600に格納してもよい。
【0115】
次に、ステップP1420では、サービス管理部1200における請求管理部1240は、ネットワーク構成テーブルT600に格納されているネットワークプールの仕様や使用量等の情報に基づいて、ユーザに選択されたネットワークサービスを提供する費用を計算する。その後、請求管理部1240は、計算した費用の情報を請求テーブルT300に格納する。
【0116】
次に、ステップP1430では、請求管理部1240は、ステップP1420で計算した費用の情報を請求テーブルT300から取得し、取得した情報に基づいて請求書を作成し、例えば上述したユーザインターフェース2200を介してユーザに提示する。
【0117】
以上説明した請求処理P1400によれば、ネットワークサービスメニュを介して入力されたユーザのサービス要求によって特定されたネットワークサービスを提供する費用を計算し、ユーザに請求することができる。
【0118】
以上説明したように、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション手段では、ユーザ用に割り当てられるネットワークプールは、当該ユーザがネットワークサービスメニュから選択したネットワークサービスに基づいて判定される。このように、ユーザが選択したネットワークサービスに基づいて割り当てるネットワークプールを判定することで、当該ネットワークの利用目的(サービスドメイン等)に適した仕様を有する通信回線を含むネットワークプールを割り当てることが可能となり、ネットワークの利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供することができる。
また、本開示の実施形態に係るネットワークオーケストレーション手段では、通信回線の性能を評価するための基準は、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定された性能閾値であってもよい。このように、ユーザによって選択されたネットワークサービスに基づいて判定した性能閾値等の基準を用いて通信回線の性能を評価することで、ネットワークの利用目的を考慮した上でネットワークプールの性能を評価することができると共に、適切なネットワーク通信のルーティングを行うことが可能となる。
【0119】
このように、本開示によれば、顧客の利用目的に応じて構成したネットワークサービスを提供すると共に、このネットワークサービスの利用目的に応じた性能指標を用いてネットワーク通信のルーティングを行うことが可能なネットワークオーケストレーション手段を提供することができる。
【0120】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
1000 ネットワークオーケストレーション装置
1100 ユーザ管理部
1120 サービスメニュ管理部
1200 サービス管理部
1220 ネットワーク構成部
1240 請求管理部
1300 ルーティング管理部
1320 ネットワーク監視部
1340 ルーティング判定部
1400 ネットワーク管理部
1420 ネットワークプール割り当て部
1440 管理アクション実施部
N100、N200 接続
T100 サービスメニュテーブル
T200 ユーザ情報テーブル
T300 請求テーブル
T400 ネットワーク性能情報テーブル
T500 ルーティングテーブル
T600 ネットワーク構成テーブル