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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000512
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231225BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20231225BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20231225BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20231225BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231225BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20231225BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K5/20
H02K7/14 B
F04D29/58 D
H01M8/04 N
H01M8/04007
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091276
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10 2022 206 141.1
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アワサル アロック
(72)【発明者】
【氏名】グロス マーティン
【テーマコード(参考)】
3H130
5H127
5H605
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC13
3H130BA98J
3H130CA06
3H130DA02Z
3H130DD01X
3H130DG03X
3H130ED04J
5H127AB04
5H127AC07
5H127CC07
5H127EE15
5H127EE22
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC01
5H605DD01
5H605DD09
5H605DD13
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB15
5H607CC01
5H607DD08
5H607FF06
5H609BB03
5H609BB14
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609QQ04
5H609QQ09
5H609RR06
5H609RR42
(57)【要約】
【課題】改良された、又は少なくとも代替の実施形態の流体ポンプを提供する。
【解決手段】本発明は、流体ポンプ(1)に関し、この流体ポンプ(1)は、羽根車(4)を有する羽根車ユニット(2)と、モータハウジング(10)を有する電動モータ(6)とを備える。羽根車ユニット(2)は、流体入口(5a)を有する入口側(2a)と、流体出口(5b)を有する出口側(2b)とを備え、ガイド流路(26)が羽根車(4)を介して入口側(2a)と出口側(2b)とを流体的に接続する。本発明では、ガイド流路(26)が、モータハウジング(10)に形成された冷却流体ジャケット(27)により、追加的に領域に実現される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックを有する燃料電池装置用の流体ポンプ(1)であって、
前記流体ポンプ(1)は、回転軸線(RA)を中心に回転可能な羽根車(4)及び前記羽根車(4)を駆動しモータハウジング(10)を有する電動モータ(6)を備え、
羽根車ユニット(2)が、前記回転軸線(RA)に関連する軸線方向の長手方向端部(6a)に配置され、
前記羽根車ユニット(2)は、流体入口(5a)を有する入口側(2a)及び流体出口(5b)を有する出口側(2b)を有し、
前記羽根車4は、前記入口側(2a)及び前記出口側(2b)を分離し、
前記流体ポンプ(1)は、冷却流体のガイド流路(26)を有し、
前記ガイド流路(26)は、前記羽根車(4)を介して前記入口側(2a)と前記出口側(2b)とを流体的に接続し、
前記モータハウジング(10)内に形成された冷却流体ジャケット(27)によって前記ガイド流路(26)が領域内に追加的に形成される、
ことを特徴とする、流体ポンプ(1)。
【請求項2】
前記冷却流体ジャケット(27)が少なくとも領域において二重壁領域(35)によって形成されており、
前記二重壁領域(35)は、少なくとも、
前記モータハウジング(10)内及び/又は
モータハウジング(10)のポット形のハウジング本体(11)内及び/又は
前記回転軸線(RA)の周縁のモータハウジング(10)のポット形のハウジング本体(11)のハウジング壁(11a)内及び/又は
前記回転軸線(RA)に対して横方向にポット形のハウジング本体(11)を閉鎖するモータハウジング(10)の底部(12)内
の領域に形成され、並びに又は
前記二重壁領域(35)は、前記回転軸線(RA)の周縁に形成され、かつ前記回転軸線(RA)に対して完全に円周方向である、並びに/又は
前記二重壁領域(35)は、外壁と、前記外壁から離間し、外側に向かって区切られた内壁とによって形成され、並びに/又は
前記二重壁領域(35)は少なくとも1つの分離領域(34)を含み、少なくとも1つの分離領域(34)によって、前記冷却流体によって流すことができる冷却流体ジャケット(27)の二重壁領域(35)内で互いに流体的に分離されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項3】
前記冷却流体ジャケット(27)が少なくとも1つの前進流路(28a)と、少なくとも1つの接続流路(29)と、少なくとも1つの戻り流路(28b)と、を含み、かつ
前記少なくとも1つの前進流路(28a)は、前記羽根車ユニット(2)の出口側(2b)から少なくとも1つの接続流路(29)へと導き、
前記少なくとも1つの接続流路(29)は、前記少なくとも1つの前進流路(28a)から少なくとも1つの戻り流路(28b)へと導き、
前記少なくとも1つの戻り流路(28b)は、少なくとも1つの接続流路(29)から羽根車ユニット(2)の入口側(2a)へと導く、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の流体ポンプ。
【請求項4】
前記冷却流体ジャケット(27)が、複数の前進流路(28a)を備え、
前記前進流路(28a)のそれぞれは、入口開口部(30)を介して、前記羽根車ユニット(2)の前記出口側(2b)に流体的に接続され、前記羽根車ユニット(2)とは反対を向く前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)で共通流路を形成するように接続される、
ことを特徴とする、請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
少なくとも1つの前進流路(28a)の断面が、前記羽根車ユニット(2)の入口側(2a)から、前記羽根車ユニット(2)に対向して位置するモータ(6)の長手方向端部(6b)まで増加する、
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記モータハウジング(10)は、ポット状のハウジング本体(11)を有し、
前記ハウジング本体(11)は、前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)で開放され、前記羽根車ユニット(2)に対向して配置され、
前記モータハウジング(10)は、回転軸線(RA)に対して横方向に延びる底部(12)を備え、
前記底部(12)は、前記羽根車ユニット(2)に対向して配置されたモータ(6)の長手方向端部(6b)で前記ハウジング本体(11)を閉じ、
前記少なくとも1つの前進流路(28a)及び前記少なくとも1つの戻り流路(28b)は、少なくとも領域において前記ハウジング本体(11)内に形成され、少なくともハウジング本体(11)によって外側に対して区切られており、
前記モータハウジング(10)の底部(12)には少なくとも1つの接続流路(29)が形成されている、
ことを特徴とする、請求項3から5のいずれか1つに記載の流体ポンプ。
【請求項7】
前記モータハウジング(10)の前記底部(12)は、底板(12a)とカバー(12b)とで形成され、
前記カバー(12b)は、前記羽根車ユニット(2)に対向し、前記底板(12a)に対して密閉され、
前記少なくとも1つの接続流路(29)は、前記底板(12a)と前記カバー(12b)との間に形成され、前記底板(12a)と前記カバー(12b)とにより外側に対して区切られている、
ことを特徴とする、請求項6に記載の流体ポンプ。
【請求項8】
少なくとも1つの接続流路(29)が、蛇行状及び/又は迷路状に形成され、又は
前記少なくとも1つの接続流路(29)に乱流発生構造体が形成され、又は
前記少なくとも1つの接続流路(29)内に、少なくとも1つの別々の乱流挿入体が配置されている
ことを特徴とする、請求項3から7のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項9】
前記流体ポンプ(1)は、前記電動モータ(6)のエネルギー供給のためのインバータ(21)を備え、
前記インバータ(21)が、前記モータハウジング(10)の前記羽根車ユニット(2)に対向して位置する前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)に、前記冷却流体ジャケット(27)に隣接して熱伝達方式で配置されており、かつ
前記インバータ(21)は、前記冷却流体ジャケット(27)を介して、前記羽根車ユニット(2)によって搬送される冷却流体によって間接的に冷却可能である、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項10】
前記電動モータ(6)は、シャフト(7)を有し、前記シャフト(7)が前記羽根車ユニット(2)の前記羽根車(4)に駆動連結された回転軸線(RA)を中心に回転自在であり、
前記流体ポンプ(1)は、前記羽根車ユニット(2)に対向して位置する前記電動モータ(6)の長手方向端部(6b)において前記シャフト(7)を装着するための軸受(17b)を備え、
前記軸受(17b)は、前記モータハウジング(10)上に伝熱的に配置され、前記冷却流体ジャケット(27)に隣接して配置され、
前記軸受(17b)は、前記冷却流体ジャケット(27)を介して、前記羽根車ユニット(2)により搬送される前記冷却流体によって間接的に冷却可能である、
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の流体ポンプ。
【請求項11】
前記軸受(17b)は、前記底部(12)の前記カバー(12b)に配置され、前記羽根車ユニット(2)に対向する、
ことを特徴とする、請求項7及び10に記載の流体ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の複数の燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを有する燃料電池システム用流体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
流体ポンプは、すでに先行技術から知られており、通常、流体を搬送する羽根車と、この羽根車を駆動する電動モータとを含む。とりわけ、燃料電池システムを冷却するために流体ポンプを採用することができる。次いで、燃料電池システムは、通常、複数の燃料電池スタックを備え、この燃料電池スタックは、流体ポンプによって搬送された流体によって冷却される。流体ポンプの運転中は、モータにも熱が発生し、モータは冷却されなければならない。モータの冷却は、例えば、ステータとロータとが、流体ポンプによって搬送される流体が直接的に周囲を循環することによって行われる。しかしながら、燃料電池システムの燃料電池スタックを冷却する場合、流体に別々の要件が存在する。特に、流体は、誘電体であるべきであり、また、誘電体のままであるべきである。高いイオン放出のために、ステータ及びロータは、燃料電池システムのために設けられた流体ポンプ内の流体が直接循環することができない。したがって、複雑で費用が嵩む、モータの別々の冷却が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の目的は、それによって記載された欠点が克服される、改良された、又は少なくとも代替の実施形態の流体ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、独立請求項1の主題を通じて解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
複数の燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを有する燃料電池システム用の流体ポンプが設けられる。流体ポンプは、回転軸を中心に回転可能な羽根車を備えた羽根車ユニットと、モータハウジングを備えた電動モータとを備える。羽根車ユニットは、回転軸に対して、モータの軸方向に長手方向の端部に配置される。羽根車ユニットは、冷却流体を提供するように設計され、モータは、羽根車ユニットの羽根車を駆動するために設計される。羽根車ユニットは、流体入口を有する入口側すなわち低圧側及び流体出口を有する出口側すなわち高圧側を備える。羽根車は、入口側と出口側を互いに分離する。更に、流体ポンプは、冷却流体用のガイド流路を備え、ガイド流路は羽根車を介して入口側と出口側とを流体的に接続する。本発明によれば、ガイド流路は、追加的に、モータハウジング内に形成された冷却流体ジャケットによって領域内に実現される。
【0006】
電動モータは、当業者にとって公知の方法で構成することができる。したがって、電動モータは、羽根車の回転軸を規定する回転シャフトと、シャフトに対して回転不能(回転一体)に接続されたロータと、ロータを収容するステータとを備えることができる。そして、シャフトは、羽根車に適切に駆動連結又は非回転可能に連結することができる。
【0007】
本発明による流体ポンプでは、結果として、モータは、流体ポンプによって搬送された冷却流体で冷却される。このため、複雑で費用集約的なモータの追加冷却を回避することができる。冷却流体ジャケットは、モータハウジング内に形成され、モータハウジングによって外部に対して液密に区切られているので、冷却流体がモータの別の構成部品に直接接触することはない。このため、一方では、冷却流体へのイオン放出を排除することができ、他方では、モータの更なる構成部品を冷却流体によって間接的に冷却することができる。特に、より高いモータ効率と同時に、モータの電気部品(例えばステータ)のより良い冷却は、結果として湿式ランナで達成することができる。特に、冷却流体は、誘電性又は電気的に非導電性であり得る。冷却流体は主に液体である。冷却流体は、例えば、水-グリコール混合物のような含水混合物とすることができる。
【0008】
冷却流体ジャケットは、少なくとも領域内において二重壁領域によって形成することができる。二重壁領域は、少なくとも、モータハウジング内の、及び/又はモータハウジングのポット状ハウジング本体内の、及び/又はモータハウジングのポット状ハウジング本体の回転軸の周縁の、及び/又はポット状ハウジング本体を回転軸に対して横方向に閉鎖するモータハウジングの底部の、ハウジング壁内の、領域において形成することができる。二重壁領域は、回転軸を中心として円周方向に形成することができ、特に、回転軸に対して完全に円周方向に形成することができる。このため、モータハウジングは、回転軸に対する円周方向に、均等に冷却することができる。二重壁領域は、外壁及び内壁によって形成され、外側に対して区切られてもよい。内壁は、外壁から離間して配置することができる。次いで、冷却流体ジャケットは、外壁と内壁との間に配置される。二重壁領域は、少なくとも1つの分離領域を含むことができ、ここで、少なくとも1つの分離領域によって、冷却流体により流すことができる個々の流路が、冷却流体ジャケット中に形成され、及び/又は互いに流体的に分離される。特に、冷却流体によって流動させることができる流路は、少なくとも1つの前進流路及び/又は少なくとも1つの戻り流路及び/又は少なくとも1つの接続流路を含むことができる。冷却流体ジャケットは二重壁構造であるため、流体ポンプ内及び特に電動モータ内の熱を発生する構成部品を効果的に冷却することができる。
【0009】
冷却流体ジャケットは、少なくとも1つの前進流路と、少なくとも1つの接続流路と、少なくとも1つの戻り流路とを備えることができる。少なくとも1つの前進流路は、羽根車ユニットの出口側から少なくとも1つの接続流路に至ることができる。少なくとも1つの接続流路は、少なくとも1つの前進流路から少なくとも1つの戻り流路に導くことができる。少なくとも1つの戻り流路は、少なくとも1つの接続流路から羽根車ユニットの入口側へと導くことができる。したがって、少なくとも1つの前進流路は、少なくとも1つの接続流路に合流し、少なくとも1つの接続流路は、少なくとも1つの戻り流路に合流する。言い換えると、少なくとも1つの接続流路及び少なくとも1つの戻り流路は、少なくとも1つの接続流路を介して互いに流体的に接続される。流体ポンプは、複数の前進流路及び/又は複数の接続流路及び/又は複数の戻り流路を備えることができることが分かるであろう。前進流路の数及び/又は接続流路の数及び/又は戻り流路の数は、同一又は異なっていてもよい。複数の前進流路及び/又は複数の接続流路及び/又は複数の戻り流路は、それぞれ、互いに流体的に分離され得るか、又は互いに流体的に接続され得る。
【0010】
冷却流体ジャケットは、羽根車ユニットの出口側すなわち高圧側と羽根車ユニットの入口側すなわち低圧側を流体的に相互に接続する。羽根車ユニットの出口側すなわち高圧側では、流体ポンプの運転中に羽根車ユニットの入口側すなわち低圧側よりも高い圧力がかかるため、冷却流体ジャケット内の冷却流体を搬送することができる。前記方法では、羽根車によって入口側から出口側に送られた冷却流体は、部分的に流体出口に流入し、部分的に少なくとも1つの前進流路に流入する。少なくとも1つの前進流路として、冷却流体は、更に少なくとも1つの接続流路に流入し、更に少なくとも1つの戻り流路に流入する。少なくとも1つの戻り流路から、冷却流体は羽根車ユニットの入口側に流れ、羽根車によって再び出口側に送られる。このため、冷却流体ジャケットは、羽根車によって搬送される冷却流体によって流され、電動モータ又はモータの更なる発熱部品を間接的に冷却することができる。
【0011】
冷却流体ジャケットは、複数の前進流路を備えることができ、ここで、それぞれの前進流路は、各々の入口開口部を介して羽根車ユニットの出口側に流体的に接続されている。複数の前進流路は、モータハウジング内で軸方向に又は羽根車の回転軸に平行に延びることができる。更に、複数の前進流路は、モータハウジング内の回転軸を中心に分布して形成することができる。したがって、それぞれの複数の前進流路の入口開口部は、モータハウジング内の回転軸を中心に分布して形成することができる。羽根車ユニットの出口側は、羽根車の円周上に形成され、複数の前進流路のそれぞれの入口開口部は、したがって、羽根車の円周上の、回転軸の周りに分配され得る。複数の前進流路は、互いに流体的に接続され得る。特に、複数の前進流路は、回転軸の周縁の、円周方向の架橋点において、互いに流体的に連結することができる。複数の前進流路は、回転軸の周縁の、共通の全体流路を形成することができ、ここで、全体流路において、流れ方向は、個々の前進流路の配向によって規定される。
【0012】
少なくとも1つの前進流路の断面は、羽根車ユニットの入口側から、羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部まで増大することができると有利である。言い換えると、少なくとも1つの前進流路の断面は、羽根車ユニットの入口側から、軸方向において羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部まで、サイズを増大させることができる。特に、少なくとも1つの前進流路の断面は、羽根車ユニットの入口側から羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部まで一様に増大することができる。特に、少なくとも前進流路は、円錐形に形成され得る。このような方法で形成された前進流路を備えたモータハウジングは、一体部品としてダイカスト法で製造することができ、ここで前進流路の断面積を大きくすることにより、モータハウジングの取り外し性が確保され、モータハウジングの製造が簡素化される。
【0013】
加えて、互いに対向して位置する少なくとも1つの前進流路において、2つの脱型斜面が形成され、少なくとも1つの前進流路の断面が羽根車ユニットの入口側から羽根車ユニットに対向して位置するモータの長手方向端部まで増加しないことが考えられる。このように形成された前進流路によって、モータハウジングは、2部品として製造することができ、この場合、脱型斜面によって、モータハウジングの個々の部品の脱型性を確保し、モータハウジングの製造を簡素化することができる。
【0014】
あるいは、少なくとも1つの前進流路の断面が、羽根車ユニットの入口側から、羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部まで増加せず、少なくとも1つの前進流路に、脱型斜面が形成されないことも考えられる。このような方法で形成された前進流路を有するモータハウジングは、例えば消失模型鋳造法で製造することができる。
【0015】
モータハウジングはポット形状のハウジング本体を備えることができ、ハウジング本体は羽根車ユニットに対向して位置するモータの長手方向端部で開口することができる。更に、モータハウジングは、回転軸に対して横方向に延びる底部を備えることができ、底部は、羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部でポット形状のハウジング本体を閉じることができる。このため、モータハウジング内にポット状のハウジング本体と底部とにより外側に向かって区切られた内部を形成することができる。前記内部では、電動モータの更なる部品を収容することができる。次いで、少なくとも1つの前進流路及び少なくとも1つの戻り流路は、少なくとも領域においてハウジング本体内に形成され、ハウジング本体によって外側に対して区切られることが可能である。次いで、少なくとも1つの接続流路をモータハウジングの底部に形成することができる。
【0016】
モータハウジングの底部は、底板と、カバーとによって形成することができ、カバーは、羽根車ユニットに面して、底板に対して密封状態で配置することができる。少なくとも1つの接続流路は、底板とカバーとの間に形成することができ、底板とカバーによって外側に対して区切られることができる。少なくとも1つの接続流路は、蛇行状及び/又は迷路状に形成することができると有利である。あるいは、乱流生成構造物を少なくとも1つの接続流路内に形成することができる。また、少なくとも1つの接続流路に、少なくとも1つの別々の乱流挿入物が配置されていることも考えられる。
【0017】
冷却流体ジャケットは、羽根車ユニットの入口側及び羽根車ユニットの出口側と流体的にのみ接続することができる。ポット形状のハウジング本体は、回転軸線の周縁にあるハウジング壁と、回転軸線に対して横方向に配向された隔壁とを備えることができる。隔壁は、一体的に、又は1部品で、又はハウジング壁の部材片から形成することができる。隔壁は、羽根車ユニットに対向するモータの長手方向端部に配置することができ、羽根車ユニットから、又は羽根車ユニットの入口側及び出口側から、ポット形状のハウジング本体内又はモータハウジング内に形成された内部を流体的に分離することができる。次いで、少なくとも1つの前進流路を、隔壁を介して羽根車ユニットの出口側に流体的に接続し、次いで、少なくとも1つの戻り流路を、隔壁を介して羽根車ユニットの入口側に流体的に接続することができる。
【0018】
流体ポンプは、モータのエネルギー供給のためのインバータを備えることができると有利である。インバータは、モータハウジング上の羽根車ユニットに対向して位置するモータの長手方向端部に、熱伝達方式で冷却流体ジャケットに隣接して配置することができる。更に、インバータは、羽根車ユニットによって搬送される冷却流体によって、冷却流体ジャケットを介して間接的に冷却可能である。インバータは、例えばバッテリの直流電圧を、モータを駆動するための交流電圧に変換することができる。インバータは、特に、ガイド流路又は冷却流体ジャケットから流体的に適切に分離される電流伝導構成部品を備えることができる。これにより、インバータをモータハウジング外側に適宜配置することができる。電流伝導構成部品は、特に、パワー半導体(例えばIGBTs)を備えた制御基板を含むことができ、制御基板は、結果として羽根車ユニットによって搬送される冷却流体によって間接的に冷却される。
【0019】
すでに述べたように、モータはシャフトを含むことができ、ここで、シャフトは回転軸を中心に回転可能であり、羽根車ユニットの羽根車に駆動接続されるか、又は非回転可能に(回転一体)接続される。更に、流体ポンプは、軸を羽根車ユニットに対向して配置されたモータの長手方向端部に取り付けるための軸受を備えることができ、軸受はモータハウジング上に熱伝達方式で冷却流体ジャケットに隣接して配置することができる。したがって、軸受は、羽根車ユニットによって搬送される冷却流体によって、冷却流体ジャケットを介して間接的に冷却可能である。特に、羽根車ユニットに対向する底部のカバー上に軸受を配置することができる。このため、一方では、軸受は、モータハウジングの底部の少なくとも1つの接続流路からカバーによって分離され、他方では、特に効果的に冷却される。
【0020】
本発明の更なる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面による関連する図面の説明から得られる。
【0021】
上述され、以下に説明される特徴は、記載されたそれぞれの組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲を離れることなく、他の組み合わせにおいて、又は単独で使用されることも理解されるべきである。
【0022】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面に示され、以下の説明においてより詳細に説明され、ここで、同じ参照番号は、同じ、又は類似の、又は機能的に同じ構成要素に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
それぞれの場合において、概略的に示す。
図1】本発明による流体ポンプの分解図である。
図2】本発明による流体ポンプの断面図である。
図3】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図4】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図5】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図6】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図7】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図8】本発明による流体ポンプの異なる図である。
図9】部分断面を有する、本発明による流体ポンプの分解図である。
図10】本発明による流体ポンプのハウジング本体の分解図である。
図11】本発明に係る流体ポンプのハウジング本体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による流体ポンプ1の分解図を示す。流体ポンプ1は、複数の燃料電池の少なくとも1つの燃料電池スタックを有する燃料電池システムのために設けられるか、又は設計される。燃料電池システムは、特に商用車用に提供又は設計することができる。流体ポンプ1は、羽根車ハウジング3及び羽根車4を備えた羽根車ユニット2を備える。羽根車ユニット2は、流体入口5aを有する入口側2a(すなわち低圧側)又は流体出口5bを有する出口側2b(すなわち高圧側)を備える。入口側2aと出口側2bとは、羽根車4によって互いに隔てられているか、又は互いに流体的に接続されている。流体入口5a及び流体出口5bは、羽根車ハウジング3内に形成されている。
【0025】
更に、流体ポンプ1は、電動モータ6を備える。電動モータ6は、特に永久磁石同期モータとすることができる。電動モータ6は、回転軸線RAを中心に回転可能なシャフト7と、シャフト7に強固に連結されるロータ8と、ロータ8を収容するステータ9とを備えている。シャフト7は、羽根車4に駆動接続され、その結果、羽根車4は、回転軸線RAを中心に回転可能である。モータ6は、2つの長手方向端部6a及び6bを備えており、これらの端部は、回転軸RAにおいて互いに反対側に位置している。羽根車ユニット2は、モータ6の長手方向端部6aに配置されている。
【0026】
更に、モータ6は、ポット状のハウジング本体11と、回転軸RAに対して横向きの底部12とを備えたモータハウジング10を備える。更に、モータハウジング10は、ハウジング本体11と底部12との間に配置又はシールクランプされ、関連する接合部を外側に対してシールするハウジングシール13を備えている。ハウジング本体11と底部12とは、複数のハウジングネジ14によって互いにネジ止めされている。このハウジング本体11は、回転軸線RAの周縁にあるハウジング壁11aと、回転軸線RAに対して横方向に延びる隔壁11bとを備えている。隔壁11bは羽根車4をロータ8及びステータ9から流体的に分離する。底部12は、底板12aとカバー12bとからなり、カバー12bは、ステータ側又はロータ側又は羽根車側で底板12aを閉じる。底板12aとカバー12bとの間には、カバーシール15が配置されているか、又はシールクランプされており、これは、関連する接合部を外側に対してシールする。底板12aとカバー12bとは、複数のカバーネジ16によって互いにネジ止めされている。
【0027】
ステータ9は、モータハウジング10内に回転不能に収容され、ロータ8と共にシャフト7はモータハウジング10内又はステータ9内に回転可能に収容される。このために、流体ポンプ1は、モータ6のそれぞれの長手方向端部6a及び6bにシャフト7を回転可能に取り付ける2つの軸受17a及び17bを備えている。加えて、羽根車シール18が長手方向端部6aにおいてシャフト7に配置されている。
【0028】
また、流体ポンプ1は、摺動リングシール19を備える。摺動リングシール19は、モータハウジング10と羽根車ハウジング3との間に配置又はシールクランプされ、関係する接合部を外側に対してシールする。摺動リングシール19は、特にSiCから形成される。更に、流体ポンプ1は、モータハウジング10と羽根車ハウジング3との間に同様に配置又はシールクランプされたU字状シール20を備えている。
【0029】
また、流体ポンプ1は、モータ6のエネルギー供給のためのインバータ21を備えている。インバータ21は、例えば400 V以上860V以下のDC電圧を変換するように設計することができる。また、モータ6の長手方向端部6bで底部12にインバータ21が配置されている。インバータ21は、制御基板22及びインバータカバー23を有し、制御基板22は、モータハウジング10の底部12又は底板12aと、羽根車ユニット2とは反対側を向くインバータカバー23との間、又は外側に配置されている。更に、インバータ21は、底部12又は底板12aとインバータカバー23との間に配置又はシールクランプされ、関係する接合部を外側に向かってシールするインバータシール24を含む。底部12又は底板12aとインバータカバー23とは、複数のインバータネジ25によって互いにネジ止めされている。
【0030】
流体ポンプ1は、冷却流体(特に液体)を搬送するように設計されている。このために、流体ポンプ1は、入口側2aの流体入口5aから羽根車4を介して出口側2bの流体出口5bに至るガイド流路26を備える。更に、ガイド流路26は、モータハウジング10内に形成された冷却流体ジャケット27による領域に実現されている。冷却流体ジャケット27は、ハウジング本体11内に複数の(ここでは7つの)前進流路28a及び戻り流路28bと、底板12aとカバー12bとの間に蛇行状又は迷路状の接続流路29とを含む。冷却流体ジャケット27は、モータハウジング10によって外側に対して区切られており、ロータ8とステータ9とは、冷却流体によって直接接触されないか、又は周りに直接流されない。冷却流体自体は、誘電性であってもよい。冷却流体ジャケット27の構造を、図9図11を用いて以下により詳細に説明する。
【0031】
燃料電池システムは、特に商用車用に提供することができる。この場合、流体ポンプ1は、複数の燃料電池スタックであっても、1つの流体ポンプ1が燃料電池システムを冷却するのに十分であるような態様で設計することができる。したがって、流体ポンプ1は、4000W以上6000W以下(特に4500W)の最大電力、及び/又は400l/min以上700l/min以下の最大搬送速度、及び/又は3bar以上4bar以下(特に3.5bar)の最大圧力、及び/又は5000/min以上6,000/min以下(特に5,400/min)の最大回転速度及び/又は6.0 Nm以上8.0Nm以下の最大トルクを有することができる。羽根車4は、60%以上70%以下の最大効率、特に65%を有することができる。ここで、最大値は、流体ポンプ1の全負荷運転に基づくものである。
【0032】
図2は、本発明による流体ポンプ1の断面図を示す。図2において、特に冷却流体ジャケット27の接続流路29は、モータハウジング10の底板12aとカバー12bとの間に見ることができる。前進流路28a及び戻り流路28bは、モータ6のステータ9及びインバータ21の制御基板22に隣接する接続流路29と、軸受17bに隣接して配置されている。このため、羽根車ユニット2によって搬送される冷却流体によってステータ9、制御基板22及び軸受17bを間接的に冷却することができる。
【0033】
図3図8に流体ポンプ1の異なる方向から見た図を示す。図3図8では、流体ポンプを取り付けた状態を示している。
【0034】
図9は、本発明による流体ポンプ1の部分断面分解図を示す。ここで、羽根車ハウジング3は、分かりやすくするために図示を省略している。すでに述べたように、ガイド流路26は羽根車4を介して羽根車ユニット2の入口側2aすなわち低圧側と羽根車ユニット2の出口側2bすなわち高圧側とを接続する。羽根車4は、モータ6のシャフト7に駆動接続され、冷却流体を入口側2aから出口側2bに搬送する。したがって、入口側2aは、それに応じて羽根車4の円周上に羽根車4及び出口側2bの内部に配置される。ガイド流路26は、冷却流体ジャケット27の領域で付加的に実現される。冷却流体ジャケット27は、複数(ここでは7つ)の前進流路28a、戻り流路28b及び接続流路29を含み、二重壁領域35によってハウジング壁11a及び底板12a内に形成される。
【0035】
それぞれの前進流路28aは、ハウジング本体11内及び底部12の底板12a内に形成されている。それぞれの前進流路28aは、それぞれの入口開口部30を介して羽根車ユニット2の出口側2bに流体的に接続されており、それぞれの入口開口部30はハウジング本体11の隔壁11bに形成されている。それぞれの前進流路28aは、ハウジング本体11内又はハウジング壁11a内で回転軸線RAに対して軸方向又は平行に延び、その断面は、モータ6の長手方向端部6aから長手方向端部6bまで増加する。複数の前進流路28aは、回転軸線RAの周りに分配されたハウジング本体11内に形成され、ハウジング本体11内及び橋渡し点において底部12内で互いに流体的に接続される。ハウジング本体11内において、前進流路28aは、互いに平行に、かつ回転軸線に対して軸方向に流れることができる。底部12の底板12aでは、複数の接続流路29が、ハウジング本体11と底部12のオーバーラップ領域又はハウジング壁11aと底板12aのオーバーラップ領域に形成されている。底部12のカバー12bは、ハウジング本体11又はハウジング壁11aの外側に配置されているため、上述したオーバーラップ領域の外側に配置される。
【0036】
接続流路29は、底板12aとカバー12bとの間に配置され、蛇行状又は迷路状に形成されている。接続流路29は、入口点31で複数の前進流路28aに、出口点32で戻り流路28bに流体的に接続される。接続流路29は、底板12aとカバー12bの中央に形成され、底板12aを領域的にかつ中央で閉じる。底板12aでは、複数の前進流路28aが接続流路29に円周方向に配置されている。
【0037】
戻り流路28bは、ハウジング本体11内及び底部12の底板12a内に形成されている。戻り流路28bは、出口開口部33を介して羽根車ユニット2の入口側2aに流体的に接続されており、出口開口部33がハウジング本体11の隔壁11bに形成されている。戻り流路28bは、ハウジング本体11内又はハウジング壁11a内で回転軸線RAに対して軸方向又は平行に延び、その断面は、モータ6の長手方向端部6aから長手方向端部6bまで増加する。底部12の底板12aにおいて、出口点32上の戻り流路28bは、接続流路29に流体的に接続される。
【0038】
流体ポンプ1では、入口側2aの流体入口5aから出口側2bの流体出口5bに羽根車4によって冷却流体が送られる。出口側2bから、冷却流体の一部は流体ポンプ1から流体出口5bを介して流出し、冷却流体の一部は冷却流体ジャケット27に流入する。冷却流体ジャケット27では、冷却流体は入口開口部30を介して前進流路28a内に、更に接続流路29に送られる。そして、冷却流体は入口点31で接続流路29に入り、出口点32に流れる。出口点32において、冷却流体は戻り流路28bに流れ、戻り流路28bを通って、更に出口開口部33を通って入口側2aに流入する。入口側2aから、冷却流体は、流体入口5aを介して流体ポンプ1に流入するとともに、再び前記羽根車4によって出口側2bに搬送される。
【0039】
図10は、本発明による流体ポンプ1におけるモータハウジング10の底部12の分解図を示す。ここで、カバー12bが底板12aをほぼ中央で閉じることが見て取れる。更に、前進流路28aと戻り流路28bとを液密に分離する分離領域34が、二重壁領域35に見られる。
【0040】
図11は、本発明による流体ポンプ1のハウジング本体11を羽根車ユニット2とは反対を向いた側から見た図を示す。ここで、特に戻り流路28bから前進流路28aと出口開口部33に入る入口開口部30が見られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】