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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051201
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エアゾール組成物及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/30 20060101AFI20240404BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240404BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240404BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C09K3/30 F
A61K9/12
A61K47/42
A61K47/08
A61K47/06
A61K8/02
A61K8/64
A61K8/31
A61K8/33
C09K3/30 J
C09K3/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157239
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 実愛
(72)【発明者】
【氏名】湯本 賢也
(72)【発明者】
【氏名】坪内 誠
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB31
4C076DD34
4C076DD35
4C076DD36
4C076EE41F
4C076FF36
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC522
4C083AC811
4C083AC812
4C083AD092
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB01
4C083BB49
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC19
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC37
4C083CC38
4C083DD08
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】液化ガスを多く配合する場合において、必ずしも界面活性剤を多く配合しなくとも、原液組成物と液化ガスとの乳化が容易であり、かつ、乳化安定性に優れるエアゾール組成物。
【解決手段】エアゾール組成物であって、該エアゾール組成物が、水及びバイオサーファクタントを含む原液組成物と、液化ガスを含む噴射剤とを含み、該原液組成物における該バイオサーファクタントの含有割合が0.003質量%~3.000質量%であり、該エアゾール組成物全体における該液化ガスの含有割合が30.000質量%~85.000質量%である、エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物が、水及びバイオサーファクタントを含む原液組成物と、液化ガスを含む噴射剤とを含み、
該原液組成物における該バイオサーファクタントの含有割合が0.003質量%~3.000質量%であり、
該エアゾール組成物全体における該液化ガスの含有割合が30.000質量%~85.000質量%である、
エアゾール組成物。
【請求項2】
前記バイオサーファクタントが、リポペプチドバイオサーファクタント又はその塩である請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル、イソペンタン、及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンからなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
さらに油性成分を含み、前記原液組成物における該油性成分の含有割合が2.000質量%~55.000質量%である請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
エアゾール組成物全体における、バイオサーファクタントに対する液化ガスの含有量の質量比(液化ガス/バイオサーファクタント)が、100.0~32000.0である請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
エアゾール組成物が充填された容器、及び
該容器に備えられ、該エアゾール組成物を吐出させる吐出機構
を有するエアゾール製品であって、
該エアゾール組成物が、請求項1~5のいずれか1項に記載のエアゾール組成物であるエアゾール製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアゾール組成物及びエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガスを多く配合するエアゾール組成物においては、吐出すると徐々に発泡が生じ、その発泡によって生じた泡沫が自発的に破泡することによって破泡音が生じるクラッキング効果が得られたり、吐出物がシャーベット状に凍結したりするなどの、エアゾール製品特有の効果が得られることが知られている。しかしながら、液化ガスを多く配合すると、液化ガスと原液とが乳化しにくくなるため、多量の界面活性剤を配合して乳化させる必要がある。一方、多量の界面活性剤を配合するとべたつきや刺激などが生じることから、近年、界面活性剤の配合量をできる限り抑えた製品が求められている。そのため、エアゾール組成物の乳化に関する技術がいくつか提案されている。
特許文献1では、HLBの値が異なる2種のノニオン系界面活性剤を使用したクラッキングエアゾール組成物が開示されている。また、特許文献2では、軽質液化ガスと重質液化ガスとを混合し、水性原液と液化ガスとの乳化を容易にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/097622号
【特許文献2】特開2016-191058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエアゾール組成物においては、液化石油ガスを高配合しておらず、高配合する場合には乳化安定性を損ねるおそれがあることがわかった。また、特許文献2のエアゾール組成物においては、原液と液化ガスとを乳化させるために、振とう回数を多くする必要があることがわかった。
【0005】
本発明は、液化ガスを多く配合する場合において、必ずしも界面活性剤を多く配合しなくとも、原液組成物と液化ガスとの乳化が容易であり、かつ、乳化安定性に優れるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、多量の液化ガスを含有するエアゾール組成物において、バイオサーファクタントを配合することにより、必ずしも界面活性剤を多く配合しなくとも、原液組成物と液化ガスとの乳化を容易にし、乳化安定性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本開示は以下の態様を含む。
[1]エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物が、水及びバイオサーファクタントを含む原液組成物と、液化ガスを含む噴射剤とを含み、
該原液組成物における該バイオサーファクタントの含有割合が0.003質量%~3.000質量%であり、
該エアゾール組成物全体における該液化ガスの含有割合が30.000質量%~85.000質量%である、
エアゾール組成物。
[2]前記バイオサーファクタントが、リポペプチドバイオサーファクタント又はその塩である[1]に記載のエアゾール組成物。
[3]前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル、イソペンタン、及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンからなる群から選択される少なくとも一を含む[1]に記載のエアゾール組成物。
[4]さらに油性成分を含み、前記原液組成物における該油性成分の含有割合が2.000質量%~55.000質量%である[1]に記載のエアゾール組成物。
[5]エアゾール組成物全体における、バイオサーファクタントに対する液化ガスの含有量の質量比(液化ガス/バイオサーファクタント)が、100.0~32000.0である[1]に記載のエアゾール組成物。
[6]エアゾール組成物が充填された容器、及び
該容器に備えられ、該エアゾール組成物を吐出させる吐出機構
を有するエアゾール製品であって、
該エアゾール組成物が、[1]~[5]のいずれかに記載のエアゾール組成物であるエアゾール製品。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、液化ガスを多く配合する場合において、必ずしも界面活性剤を多く配合しなくとも、原液組成物と液化ガスとの乳化が容易であり、かつ、乳化安定性に優れるエアゾール組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
(バイオサーファクタント)
エアゾール組成物における原液組成物は、バイオサーファクタントを含む。バイオサーファクタントとは、微生物により生産される天然の界面活性剤であり、一般に生分解性が高く、人体に対する皮膚刺激性が低いため環境や人体への安全性が極めて高いという特徴を持つ。
原液組成物にバイオサーファクタントを含有させることで、液化ガスを多く配合する場合において、必ずしも界面活性剤を多く配合しなくとも、原液組成物と液化ガスとの乳化を容易にし、乳化安定性を向上させることができる。そのメカニズムは明らかではないが、本発明者らが推定するには、ペプチド構造の親水部が、通常の界面活性剤の親水部よりも水相になじみやすく、更にLPGなどの液化ガスに対してもOH基とは異なる何らかの作用を及ぼしていると思われる。また、原液組成物に油性成分が含まれる場合、バイオサーファクタントは、原液組成物中の油性成分と水性成分とを乳化させる役割も担う。
【0011】
バイオサーファクタントとしては、リポペプチド化合物のサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン;糖脂質のマンノシルエリスリトールリピッドやソホロリピッド、トレハロースリピッド、ラムノリピッド;脂肪酸のスピクリスポール酸;ポリマーのエマルザン;及びこれらの塩が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0012】
上記の中でも、リポペプチド化合物のリポペプチドバイオサーファクタント又はその塩が好ましく、環状リポペプチドバイオサーファクタントであるサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、又はそれらの塩がより好ましく、サーファクチン又はその塩が特に好ましい。
【0013】
サーファクチンは、環状ペプチド基含有の天然界面活性剤である。サーファクチンは、
枯草菌から生産されるアニオン系界面活性剤であり、7つのアミノ酸を構成要素とする環状ペプチド構造の親水部と、炭化水素基からなる疎水部を有している。サーファクチンは、炭化水素基のアルキル鎖長や分岐度が異なる化合物の総称である。
サーファクチンの塩とは、一般式(I)で示される化合物、又はこの化合物を2種以上含有する組成物である。
【0014】
【化1】

(式中、Xは、ロイシン、イソロイシン、及びバリンから選択されるアミノ酸残基を示し、Rは、炭素数9以上18以下の直鎖状又は分枝鎖状の一価飽和炭化水素基を示し、L-LeuはL体のロイシン、D-LeuはD体のロイシン、L-ValはL体のバリンを示し、Mはアルカリ金属イオン又は第四級アンモニウムイオンを示す。)
【0015】
Xは、ロイシン、イソロイシン、及びバリンから選択されるアミノ酸残基であり、好ましくはロイシンである。
Xとしてのアミノ酸残基は、L体でもD体でもよいが、L体が好ましい。
【0016】
は、炭素数9以上18以下の直鎖状又は分枝鎖状の一価飽和炭化水素基を示す。例えば、炭素数9以上18以下のアルキル基、アリール基、アラルキル基などである。より詳細には、n-ノニル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、n-デシル基、8-メチルノニル基、n-ウンデシル基、9-メチルデシル基、n-ドデシル基、10-メチルウンデシル基、n-トリデシル基、11-メチルドデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基を挙げることができる。特には、炭素数9以上12以下のノニル基、デシル基、ウンデシル基、又はドデシル基が好ましい。
【0017】
アルカリ金属イオンは特に限定されないが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられ、ナトリウムイオンが好ましい。
【0018】
第四級アンモニウムイオンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基などのアラルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基などのアリール基などの有機基が挙げられる。第四級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0019】
上記式(I)に示すサーファクチンの塩において、アミノ酸残基がロイシン、Rが分岐を含んだ炭素数12の炭化水素鎖であることが好ましく、アルカリ金属イオンがナトリウムイオンであることがより好ましい。例として、株式会社カネカ製の「カネカ・サーファクチン」を使用することができる。
サーファクチンのナトリウム塩であるサーファクチンNaは、環状ペプチド構造同士が分子間で疎水性相互作用及び水素結合により引き寄せあうことで、安定なミセルを形成する。サーファクチンNaは、臨界ミセル濃度が0.0003wt%と非常に低い値を示す
性質を有するため、当該性質が、原液組成物と液化ガスとの乳化を容易にし、乳化安定性を向上させる要因の一つと考える。
【0020】
アルスロファクチンは、一般式(II)で表される。
【0021】
【化2】

(式中、L-LeuはL体のロイシン、D-LeuはD体のロイシン、L-IleはL体のイソロイシン、D-SerはD体のセリン、D-ThrはD体のトレオニン、L-AspはL体のアスパラギン酸、D-AspはD体のアスパラギン酸を示す。)
【0022】
アルスロファクチンは、構造中、D体のアスパラギン酸とL体のアスパラギン酸をそれぞれ1つずつ有し、アルカリ金属イオン又は第四級アンモニウムイオンと塩を形成していてもよい。
【0023】
イチュリンは、一般式(III)で表される。
【0024】
【化3】

(式中、Rは炭素数9以上18以下のアルキル基を示し、L-AsnはL体のアスパラギン、D-AsnはD体のアスパラギン、D-TyrはD体のチロシン、L-GlnはL体のグルタミン、L-ProはL体のプロリン、L-SerはL体のセリンを示す。)
【0025】
は炭素数9以上18以下のアルキル基を示し、例えば、-(CH10CH、-(CHCH(CH)CHCH、-(CHCH(CHを示す。
【0026】
バイオサーファクタント又はその塩は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
バイオサーファクタント又はその塩は、公知の方法に従って、目的のバイオサーファクタントを生産する微生物を培養し、その培養液から分離することができ、精製品であっても、未精製、例えば培養液のまま使用することもできる。例えば、サーファクチンを生産する微生物としては、バチルス・ズブチリスに属する菌株を挙げることができる。また、化学合成法によって得られるバイオサーファクタントでも同様に使用できる。
【0028】
原液組成物におけるバイオサーファクタントの含有割合は、0.003質量%~3.000質量%である。また、原液組成物におけるバイオサーファクタントの含有割合は、0.020質量%~2.000質量%であることが好ましく、0.050質量%~1.500質量%であることがより好ましく、0.070質量%~1.000質量%であることがさらに好ましく、0.100質量%~0.700質量%であることが特に好ましい。
バイオサーファクタントの含有割合が0.003質量%より少ない場合には、原液組成物と液化ガスとが乳化しにくく、乳化安定性が低下するおそれがある。
【0029】
エアゾール組成物全体におけるバイオサーファクタントの含有割合は、0.0005質量%~1.500質量%であることが好ましく、0.0007質量%~1.000質量%であることがより好ましく、0.001質量%~0.700質量%であることがさらに好ましく、0.002質量%~0.500質量%であることが特に好ましい。
【0030】
(噴射剤)
エアゾール組成物は、液化ガスを含む噴射剤を含む。液化ガスは、圧縮することにより常温で液化する気体である。液化ガスは、一部が原液組成物に溶解されることによって液相を構成していると共に、他の一部によって、噴射剤として気相を構成している。
エアゾール容器を振とうすることにより、原液組成物に溶解する液化ガスは、原液組成物と容易に乳化する。
【0031】
液化ガスは特に限定されないが、例えば、n-ブタン、イソブタン、プロパン、及びそれらの混合物などの液化石油ガス(LPガス);液化天然ガス(LNG);ジメチルエーテル;イソペンタン;トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンなどのハイドロフルオロオレフィンが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
これらの中でも、液化ガスは、液化石油ガス(LPガス)、ジメチルエーテル、イソペンタン、及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましく、液化石油ガスを含むことがより好ましい。
使用する液化ガスの圧力は特に制限されないが、エアゾール組成物が、クラッキングエアゾール組成物又はシャーベットを形成するエアゾール組成物である場合は、20℃における圧力が好ましくは0.01MPa以上0.50MPa以下、より好ましくは0.01MPa以上0.40MPa以下、さらに好ましくは0.01MPa以上0.30MPa以下、さらにより好ましくは0.01MPa以上0.25MPa以下である液化石油ガスを使用することが好ましい。上記範囲の圧力の液化石油ガスを用いることで、クラッキング特性を得やすく、また、シャーベットを形成しやすくなる。
【0033】
エアゾール組成物全体における液化ガスの含有割合は、30.000質量%~85.000質量%である。また、エアゾール組成物中の液化ガスの含有量は、35.000質量%~80.000質量%であることが好ましく、40.000質量%~70.000質量%であることがより好ましく、45.000質量%~70.000質量%であることがさらに好ましく、50.000質量%~70.000質量%であることが特に好ましく、60.000質量%~70.000質量%であることが最も好ましい。上記範囲のように液化ガスの含有割合が多い場合であっても、バイオサーファクタントにより、原液組成物と液化ガスとの乳化を容易にし、乳化安定性を向上させることができる。
液化ガスの含有割合が85.000%より多い場合には、原液組成物と液化ガスとが乳化しにくくなる傾向がある。
【0034】
噴射剤は、圧縮ガスを含んでいてもよい。圧縮ガスは、噴射剤や発泡剤として機能しう
る。
圧縮ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。圧縮ガスは、好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム及び圧縮空気などからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気及び亜酸化窒素からなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましくは炭酸ガス及び窒素ガスからなる群から選択される少なくとも一であり、さらにより好ましくは炭酸ガスである。
エアゾール組成物全体における圧縮ガスの含有割合は、エアゾール組成物を吐出可能であればよく、特に制限されない。
【0035】
エアゾール組成物全体における原液組成物の含有割合は、特に制限されないが、15.000質量%~70.000質量%であることが好ましく、20.000質量%~65.000質量%であることがより好ましく、30.000質量%~60.000質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
エアゾール組成物全体における、バイオサーファクタントに対する液化ガスの含有量の質量比(液化ガス/バイオサーファクタント)は、100.0~32000.0であることが好ましく、150.0~31000.0であることがより好ましく、200.0~30000.0であることがさらに好ましい。
質量比が上記範囲内である場合、原液組成物と液化ガスとが乳化しやすくなり、また、乳化安定性が向上しやすくなる。
【0037】
(水)
エアゾール組成物における原液組成物は、水を含む。
原液組成物における水の含有割合は、特に制限されない。エアゾール組成物の目的などを考慮して適宜選択することができる。
原液組成物における水の含有割合は、好ましくは40.000質量%~99.950質量%であり、より好ましくは43.000質量%~99.900質量%である。
【0038】
エアゾール組成物全体における水の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは5.000質量%~70.000質量%であり、より好ましくは10.000質量%~65.000質量%である。
【0039】
(任意成分)
原液組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、バイオサーファクタント以外の界面活性剤である。界面活性剤は特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれであってもよく、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、
ヤシ油脂肪酸カリウム(例えばココイルグルタミン酸K)、ミリスチン酸カリウム、ラウリン酸カリウムなどの脂肪酸石鹸;
ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;
POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
ラウリルリン酸などのアルキルリン酸塩;
アシルメチルタウリン酸、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのアミノ酸系界面
活性剤;
ラウリルスルホ酢酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;などが挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤としては、
塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリドなどのアルキルアンモニウム塩;
アルキルベンジルアンモニウム塩;
ステアリルアミンアセテート;
ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミンなどのポリオキシエチレンアルキルアミン;
ステアラミドプロピルジメチルアミン;
ベンザルコニウムクロリド;などが挙げられる。
【0042】
ノニオン性界面活性剤としては、
POE(20)ソルビタンモノラウレート、POE(20)ソルビタンモノパルミテート、POE(6)ソルビタンモノステアレート、POE(20)ソルビタンモノステアレート、POE(20)ソルビタントリステアレート、POE(6)ソルビタンモノオレエート、POE(20)ソルビタンモノオレエート、POE(20)ソルビタントリオレエート、POE(20)ソルビタンモノイソステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;
POE(10)モノステアレート、POE(25)モノステアレート、POE(40)モノステアレート、POE(55)モノステアレート、POE(10)モノラウレート、POE(10)モノオレエート、PEG-20ソルビタンココエートなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;
POE(4)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(150)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(2)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(7)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(5)ベヘニルエーテル、POE(10)ベヘニルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(20)ステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;
POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;
POE(60)ソルビットテトラステアレート、POE(6)ソルビットテトラオレエート、POE(30)ソルビットテトラオレエート、POE(60)ソルビットテトラオレエート、POE(6)ソルビットモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;
POE(15)グリセリルモノステアレート、POE(5)グリセリルモノステアレート、POE(15)グリセリルモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;
POE(40)ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油;
POE(10)ラノリンアルコール、POE(20)ラノリンアルコール、POE(40)ラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール;
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;
グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノミリステートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;
ジグリセリルモノステアレート、ジグリセリルモノオレエート、ジグリセリルモノイソステアレートなどのジグリセリン脂肪酸エステル類、トリグリセリルモノラウレート、トリグリセリルモノミリステート、トリグリセリルモノオレエート、トリグリセリルモノステアレートなどのトリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリルモノステアレート、テトラグリセリルモノオレエートなどのテトラグリセリン脂肪酸エステル類、ペンタグリセリルトリミリステート、ペンタグリセリルトリオレエート、ペンタグリセリルモノラウレート、ペンタグリセリルモノミリステート、ペンタグリセリルモノオレエート、ペンタグリセリルモノステアレートなどのペンタグリセリン脂肪酸エステル類、ヘキサグリセリルモノオレエート、ヘキサグリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルトリステアレート、ヘキサグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリルモノミリステート、などのヘキサグリセリン脂肪酸エステル類、及びデカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルジイソステアレート、デカグリセリルジオレエート、デカグリセリルトリステアレート、デカグリセリルトリオレエート、デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノミリステート、デカグリセリルモノオレエート、デカグリセリルジステアレートなどのデカグリセリン脂肪酸エステル類、などのポリグリセリン脂肪酸エステル類;
ラウリルグルコシドなどのアルキルグルコシド;
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルキロールアミド;
ラウリルジメチルアミンオキシド液などのアルキルジメチルアミンオキシド液などが挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタインなどのアルキルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)、コカミドプロピルヒドロキシスルタインなどの脂肪酸アミドプロピルベタインなどのベタイン型;
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルイミダゾール型;
ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシド、ラウラミンオキシドなどのアミンオキシド型;
卵黄レシチン、大豆レシチン、水酸化レシチン、水添レシチンなどのレシチン;などが挙げられる。
【0044】
原液組成物におけるバイオサーファクタント以外の界面活性剤の含有割合は、特に制限されず、エアゾール組成物の目的などを考慮して適宜選択することができる。
原液組成物におけるバイオサーファクタント以外の界面活性剤の含有割合は、好ましくは0.000質量%~2.500質量%であり、より好ましくは0.000質量%~1.000質量%であり、さらに好ましくは0.000質量%~0.700質量%である。バイオサーファクタントにより、原液組成物と液化ガスとの乳化が容易になるため、バイオサーファクタント以外の界面活性剤の配合量を抑制でき、処方の自由度が向上する。
【0045】
エアゾール組成物全体におけるバイオサーファクタント以外の界面活性剤の含有割合は
、特に制限されないが、好ましくは0.000質量%~1.500質量%であり、より好ましくは0.000質量%~0.700質量%であり、さらに好ましくは0.000質量%~0.500質量%である。
【0046】
原液組成物におけるバイオサーファクタント以外の界面活性剤及びバイオサーファクタントの合計の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは0.003質量%~5.500質量%であり、より好ましくは0.020質量%~3.000質量%であり、さらに好ましくは0.050質量%~2.200質量%である。
【0047】
エアゾール組成物全体におけるバイオサーファクタント以外の界面活性剤及びバイオサーファクタントの合計の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは0.0005質量%~3.000質量%であり、より好ましくは0.0007質量%~1.700質量%であり、さらに好ましくは0.001質量%~1.200質量%である。
【0048】
エアゾール組成物における原液組成物は、油性成分を含んでいてもよい。油性成分を含むことで、エアゾール組成物を人体に適用した際に、保湿効果が得られる。
油性成分を含む場合の原液組成物は、油相が水相に分散した水中油型(O/W)エマルションであることが好ましい。油性成分は常温で液状の油(液状油)であることが好ましい。
【0049】
油性成分は、特に制限されないが、以下のものが挙げられる。
スクワラン、スクワレン、ミネラルオイル、流動パラフィン、ワセリンなどの炭化水素油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸;
小麦胚芽油、米胚芽油、椿油、アルガン油、大豆油、オリーブ油、ひまし油、ココナッツ油、杏油、パーム油、ゴマ油、ホホバ油、綿実油、なたね油、アマニ油、ローズヒップ油などの植物油;
ジメチルポリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサンなどのシリコーンオイル;
グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル類;
ベヘニルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール;
DEET、イカリジンなどの忌避成分;
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オキシベンゾン-4、オクトクレリン、エチルヘキシルトリアゾン、トリスビフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどの紫外線吸収剤。
油性成分は、1種を単独で用いることもでき、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
これらの中でも、スクワラン、ミネラルオイル、ホホバ油、ジメチルポリシロキサン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、DEET、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びメトキシケイヒ酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。
【0051】
原液組成物における油性成分の含有割合は、特に制限されず、エアゾール組成物の目的などを考慮して適宜選択することができる。
原液組成物における油性成分の含有割合は、好ましくは2.000質量%~55.000質量%であり、より好ましくは3.000質量%~50.000質量%であり、さらに好ましくは10.000質量%~40.000質量%であり、特に好ましくは15.000質量%~30.000質量%である。
バイオサーファクタントを配合することで、原液組成物中の油性成分と水性成分との乳化が容易になり、乳化安定性が向上する。一般的に、エアゾール製剤の原液に油性成分を多く配合すると、原液の水性成分と油性成分とが乳化しにくくなるところ、特に、原液組成物における油性成分の含有割合が15.000質量%~55.000質量%である場合のように高配合の場合であっても、バイオサーファクタントにより、原液組成物中の油性成分と水性成分との乳化及び液化ガスと原液組成物との乳化が容易となり、乳化安定性を向上させることができる。
【0052】
エアゾール組成物全体における油性成分の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは0.200質量%~40.000質量%であり、より好ましくは0.500質量%~35.000質量%であり、さらに好ましくは1.000質量%~30.000質量%であり、特に好ましくは1.200質量%~25.000質量%である。
【0053】
原液組成物は、乳化助剤を含むことが好ましい。乳化助剤は、粉末よりなり、原液組成物と液化ガスとを乳化しやすくし、乳化安定性を向上させる。
乳化助剤を構成する粉末の材質としては、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、窒化ホウ素、セルロースなどが挙げられる。原液組成物は、シリカ及びタルクからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。粉末の材質としては、1種を単独で用いることもでき、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
乳化助剤を構成する粉末の一次粒子の個数平均粒径は、特に制限されないが、1μm~30μmであることが好ましく、10μm~20μmであることがより好ましい。
【0055】
原液組成物における乳化助剤の含有割合は、特に制限されず、エアゾール組成物の目的などを考慮して適宜選択することができる。
原液組成物における乳化助剤の含有割合は、好ましくは0.050質量%~3.000質量%であり、より好ましくは0.100質量%~2.000質量%である。
【0056】
エアゾール組成物全体における乳化助剤の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは0.001質量%~2.500質量%であり、より好ましくは0.010質量%~1.500質量%であり、さらに好ましくは0.030質量%~1.000質量%である。
【0057】
原液組成物は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤によりエアゾール組成物の粘度が増加し、良好な乳化安定性を得ることができる。
増粘剤は、特に制限されず、原液組成物を増粘可能な公知のものを使用しうる。例えば、以下のものが挙げられる。
【0058】
セルロースガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、セルロース末などのセルロース系増粘剤;
アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天などの植物系増粘剤;
デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン類;
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系ポリマー;
カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコールなどの合成高分子;
高重合ポリエチレングリコール(高重合PEG)、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタンなどの重合系ポリマー。
【0059】
これらの中でも、増粘剤は、セルロース系増粘剤、植物系増粘剤、及び合成高分子からなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましく、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム及びカルボキシビニルポリマーからなる群から選択される少なくとも一を含むことがより好ましい。
増粘剤としては、1種の水溶性高分子を単独で用いることもでき、また、2種以上の水溶性高分子を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
原液組成物における増粘剤の含有割合は、特に制限されず、エアゾール組成物の目的などを考慮して適宜選択することができる。
原液組成物における増粘剤の含有割合は、0.010質量%~1.000質量%であることが好ましく、0.020質量%~0.500質量%であることがより好ましく、0.050質量%~0.200質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
エアゾール組成物全体における増粘剤の含有割合は、特に制限されないが、好ましくは0.001質量%~1.000質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.500質量%であり、さらに好ましくは0.008質量%~0.080質量%である。
【0062】
原液組成物の粘度は、目的に応じて適宜調製すればよく、特に制限されない。原液組成物の粘度は、1~5000mPa・sであることが好ましく、1~3000mPa・sであることがより好ましく、1~1000mPa・sであることがさらにより好ましい。例えば、増粘剤により上記範囲に調製しうる。
粘度の測定は、B型回転粘度計で、測定する液を20℃に設定し、測定開始後1分経過後の指示値を測定値とすることにより行う。
【0063】
原液組成物には、上記効果を損なわない程度に、有効成分、香料、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、保湿剤、殺菌剤、皮膚保護剤(アミノ酸)、ビタミン類、各種抽出液、消臭・防臭剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、害虫忌避成分、及びその他などの添加剤を含有させてもよい。任意成分の割合は、組成物の使用用途などに基づいて適宜に定められる。
【0064】
具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
多価アルコール(例えば1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリンなど);低級アルコール;pH調整剤(例えばクエン酸、乳酸、トリエタノールアミン、KOH、NaOHなど);防錆剤(例えばアンモニア水、安息香酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウムなど);防腐剤(例えばパラベン類、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル);尿素;カルシウム、鉄、ナトリウムなどのミネラル;顔料;色素;EDTA-2Naなどのキレート剤;メントール、カンフルなどの清涼剤など。
【0065】
噴射形態(吐出物の形態)は特に制限されず、液状やジェル状などの適宜のものとする
ことができる。また、吐出すると破泡音を発するフォームを形成するエアゾール組成物や、吐出すると少なくとも一部が凍結したシャーベットを形成するエアゾール組成物であってもよい。
【0066】
吐出すると破泡音を発するフォームを形成するエアゾール組成物とは、クラッキングエアゾール組成物である。エアゾール組成物を吐出した際に、液化ガスが気化することにより、徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫が自発的に破泡することに伴ってパチパチやシュワシュワという破泡音が生じる。
【0067】
クラッキング組成物は、例えば、エアゾール組成物全体における液化ガスの含有割合を30.000質量%~70.000質量%とすることで、得られやすくなる。
【0068】
吐出すると少なくとも一部が凍結したシャーベットを形成するエアゾール組成物においては、エアゾール組成物をエアゾール容器から外部に吐出すると、液化ガスの気化熱により原液組成物が冷却されて凍結したシャーベット状になる。
【0069】
吐出すると少なくとも一部が凍結したシャーベットを形成するエアゾール組成物は、例えば、エアゾール組成物全体における液化ガスの含有割合を55.000質量%~85.000質量%とすることで、得られやすくなる。
【0070】
また、本発明のエアゾール組成物は、例えば人体用、家庭用、工業用などの様々な用途に用いることができる。
人体用としては、例えばボティーローション剤、スキンケア剤、育毛剤、マッサージング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、シャンプー剤、コンディショナー剤、メークアップ化粧料、忌避剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などが挙げられる。
家庭用としては、例えば洗浄剤、消臭剤、芳香剤、除菌剤、殺虫剤、防虫剤、防水剤、撥水剤などが挙げられる。
工業用としては、例えば潤滑剤、コーティング剤、接着剤、塗料などが挙げられる。
これらの中でも特に人体用として好適に用いることができる。
【0071】
次に、エアゾール製品について説明する。
エアゾール製品は、
エアゾール組成物が充填された容器、及び
該容器に備えられ、該エアゾール組成物を吐出させる吐出機構を有する。
吐出機構及び容器は特段限定されず、公知のものを採用しうる。容器は、噴射剤の圧力に耐えられるものであればよく、公知の樹脂製、金属製、ガラス製などの容器を用いることができる。吐出機構も特に制限されず、公知のものを使用しうる。吐出機構は、例えば、バルブ装置及びアクチュエータを含む。また、耐圧容器の種類に応じて、バルブ装置を装着するための構造を適宜選定することができる。
吐出機構におけるアクチュエータは、特に制限されず公知のものを使用しうる。例えば、スパウト形状やボタン形状などが挙げられる。
【0072】
エアゾール製品における容器内の圧力(ゲージ圧力)は特に制限されない。液化ガス及び必要に応じてその他の噴射剤がエアゾール容器内に充填されたときの容器内の圧力(ゲージ圧力)が、25℃で、例えば1MPa以下となるように充填すればよい。
【0073】
エアゾール組成物及びエアゾール製品の製造方法は特に制限されない。例えば、以下の方法が挙げられる。エアゾール組成物における原液組成物は、水及びバイオサーファクタント並びに必要に応じてその他の成分を混合して得ることができる。
エアゾール製品は、以下のようにして製造しうる。まず、水及びバイオサーファクタン
ト並びに必要に応じてその他の成分を混合して原液組成物を得る。得られた原液組成物及び液化ガス並びに必要に応じてその他の噴射剤を耐圧容器に充填して、エアゾール製品を得る。
【実施例0074】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0075】
<実施例1~57、比較例1~12>
表1~8に示す処方(質量%)にて各原料を混合し、原液組成物を調整した。
そして、表1~8に示す処方(質量%)にて、得られた原液組成物及び噴射剤を、合計40g、それぞれ耐圧容器(エアゾール用ガラス試験瓶100mL)に充填してエアゾール組成物を調整し、各エアゾール製品を得た。なお、原液組成物及びエアゾール製品の調製は25℃の条件下で行った。
表中の処方に関する数値は質量%を示す。また、表中、「エアゾール組成物中の各成分の含有割合」は、エアゾール組成物の合計量を100質量%としたときのエアゾール組成物中の各成分の含有割合(質量%)を示す。さらに、表中、液化ガス/バイオサーファクタントは、エアゾール組成物全体における、バイオサーファクタント(サーファクチンNa)に対する液化ガスの含有量の質量比を示す。
表中、「LPG 0.15MPa」は、単体での圧力(20℃)が0.15MPaである液化ガス(LPG)を示し、「LPG 0.20MPa」は、単体での圧力(20℃)が0.20MPaである液化ガス(LPG)を示し、「LPG 0.25MPa」は、単体での圧力(20℃)が0.25MPaである液化ガス(LPG)を示し、「LPG 0.29MPa」は、単体での圧力(20℃)が0.29MPaである液化ガス(LPG)を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】

*製品内圧が0.4MPa(25℃)になるように調整した。
【0083】
【表8】
【0084】
使用した材料は以下の通り。
(水)
水:精製水(東洋エアゾール工業株式会社)
(バイオサーファクタント)
サーファクチンNa:カネカ・サーファクチン(株式会社カネカ)
(増粘剤)
キサンタンガム:エコーガム/ケルトロール(住友ファーマフード&ケミカル株式会社)
キサンタンガム(T):エコーガムT/ケルトロールT(住友ファーマフード&ケミカル株式会社)
ヒドロキシエチルセルロース:HEC SE850(ダイセルミライズ株式会社)
カルボマー:Carbopol(登録商標) Ultrez 10 Polymer(
日本ルーブリゾール株式会社)
(乳化助剤)
シリカ:SMB C-30(富士シリシア化学株式会社)
タルク:クラウンタルク局方PP(松村産業株式会社)
(油性成分)
ホホバ種子油:NIKKOL ホホバ油S(日光ケミカルズ株式会社)
ミネラルオイル:CARNATION(Sonneborn社)
ミリスチン酸イソプロピル:エキセパールIPM(花王株式会社)
パルミチン酸イソプロピル:エキセパールIPP(花王株式会社)
スクワラン:シュガースクワラン(日光ケミカルズ株式会社)
ジメチコン:KF-96-10cs(信越化学工業株式会社)
ディート:ディート(日本精化株式会社)
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの混合物:Uvinul(登録商標) A Plus B(BASFジャパン株式会社)
(界面活性剤)
PPG-8セテス-20:NIKKOL PBC-44(日光ケミカルズ株式会社)
PEG-40水添ヒマシ油:NIKKOL HCO-40(日光ケミカルズ株式会社)
PEG-20ソルビタンココエート、ポリソルベート20の混合物:NIKKOL TL-10(日光ケミカルズ株式会社)
ココイルグルタミン酸Na:アミノサーファクト(登録商標)ACDS-L(旭化成ファインケム株式会社)
テトラオレイン酸ソルベス-60:NIKKOL GO-460V(日光ケミカルズ株式会社)
(噴射剤)
HFO-1234ze:トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(その他)
TEA:Triethanolamine 99%(ダウ・ケミカル日本株式会社)
PPG-9ジグリセリル:SY-DP9(阪本薬品工業)
フェノキシエタノール:フェノキシエタノール-SP(四日市合成株式会社)
BG:1,3-BG(KHネオケム株式会社)
ペンチレングリコール:ジオールPD(高級アルコール工業)
【0085】
得られたエアゾール製品に対し、以下の評価を行った。結果を表1~8に示す。
【0086】
(1)エマルション形成性(乳化容易性)
エアゾール組成物のエマルション形成性(乳化容易性)を評価した。具体的には、原液組成物及び噴射剤を耐圧容器に充填した後、25℃の条件下で、得られたエアゾール製品を手にとって上下に30cm振り、一往復を1回として乳化するまでの回数を数え、以下の基準で評価した。△以上の評価結果を良好と判断した。
◎:1~10回の振とうで乳化した。
○:11~20回の振とうで乳化した。
△:21~40回の振とうで乳化した。
×:41~100回の振とうで乳化した。
-:100回振とうしても乳化しなかった。
【0087】
(2)エマルション再形成性(乳化安定性)
エアゾール組成物のエマルション再形成性(乳化安定性)を評価した。具体的には、上記の初期乳化試験を行った後、エアゾール製品を25℃下に1日静置した。その後、25℃条件下において、エアゾール製品を手にとって上下に30cm振り、一往復を1回とし
て乳化するまでの回数を数え、以下の基準で評価した。△以上の評価結果を良好と判断した。
◎:1~10回の振とうで乳化した。
○:11~20回の振とうで乳化した。
△:21~40回の振とうで乳化した。
×:41~100回の振とうで乳化した。
-:100回振とうしても乳化しなかった。
【0088】
(3)製品特性
各エアゾール製品の吐出物の形態を評価した。なお、比較例1、6及び12のエアゾール製品は、乳化しなかったため評価を実施できなかった。
<シャーベット>
得られたエアゾール製品を、それぞれ、25℃条件下において手にとって上下に30cm、乳化するまで振り、ペーパーウエス(パルプ100%、シートサイズ405×305mm)に対して垂直方向5cmの位置からエアゾール組成物を約1g吐出して、吐出物の形態を以下の基準で評価した。△以上の評価結果を良好と判断した。
◎:吐出物の全体が手で持てるくらいの固さのシャーベット状に凍結した。
○:吐出物の全体が柔らかいシャーベット状に凍結した。
△:吐出物の一部が凍結したが、触ると少し発泡した。
×:吐出直後から発泡した。
【0089】
<クラッキングフォーム>
得られたエアゾール製品を、それぞれ、25℃条件下において手にとって上下に30cm、乳化するまで振り、ペーパーウエス(パルプ100%、シートサイズ405×305mm)に対して垂直方向5cmの位置からエアゾール組成物を約1g吐出して、吐出物の形態を以下の基準で評価した。△以上の評価結果を良好と判断した。
◎:指で擦るとパチパチ、シュワシュワと大きな破泡音を発し、かつ吐出後10秒以上経過してから、高さ2cm以下の泡沫を形成した。
○:指で擦るとパチパチ、シュワシュワと破泡音を発し、かつ吐出後10秒以上経過してから、高さ2cm以下の泡沫を形成した。
△:破泡音を発さず、かつ吐出後10秒未満で高さ2cm以上の泡沫を形成した。
×:破泡音を発さず、かつ吐出後3秒未満で高さ2cm以上の泡沫を形成した。