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特開2024-51203露光装置および露光装置の焦点検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051203
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】露光装置および露光装置の焦点検出方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/02 20060101AFI20240404BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240404BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
G03F9/02 Z
G03B13/36
G02B7/28 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157244
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐哉
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
2H197
【Fターム(参考)】
2H011AA05
2H011BA51
2H011BB03
2H011DA08
2H151AA10
2H151CB05
2H151CC04
2H151EB19
2H197AA05
2H197AA21
2H197CC05
2H197DB11
2H197EA04
2H197EA17
2H197EA18
(57)【要約】
【課題】露光装置において、焦点検出精度を維持しながら、迅速に焦点検出する。
【解決手段】露光装置10は、ステージ12の端部付近に測光部40を備え、測光部40は、遮光部41と受光部42とを備える。遮光部41は、複数の光透過部50を形成し遮光面41Sを有し、遮光面41Sは、投影光学系23の光軸Cに垂直な方向に対して傾斜角度θだけ傾斜している。焦点検出時、ステージ12の移動しながらパターン光FPを測光部40の遮光面41Sに投影し、受光部42から出力される光量信号に基づいて結像位置を取得し、および焦点調整を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を有する露光部と、
前記露光部の結像位置を測定する測定部とを備え、
前記測定部が、前記投影光学系の光軸方向に沿った位置が互いに異なる複数の光透過部を形成した遮光部と、各光透過部を透過する光を受光する受光部とを備え、
前記受光部から出力される光量に応じた信号に基づいて、前記露光部の結像位置を取得することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記遮光部を前記露光部に対して連続的に相対移動させることが可能な移動部を備え、
前記遮光部を相対移動させる間に前記露光部から投影されるパターン光に基づいて、前記露光部の結像位置を取得することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記複数の光透過部の光軸方向位置が、前記パターン光の相対移動方向に沿って段階的に高くまたは低くなることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記遮光部が、前記複数の透過部を形成した遮光面を備え、
前記遮光面が、前記投影光学系の光軸垂直方向に沿った面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
前記露光部が、光変調素子アレイを備え、
前記露光部が、前記遮光部を相対移動させる間、前記光変調素子アレイにおける同一の変調エリアで反射された光を、前記パターン光として投影することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光部が、光変調素子アレイを備え、
前記露光部が、前記光変調素子アレイにおいてスクロールする変調エリアから反射された光を、前記パターン光として投影することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
前記複数の透過部が、前記パターン光の相対移動方向に垂直な方向に延びる複数のスリットによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項8】
前記パターン光は、前記遮光部上で前記複数のスリットと平行なライン状のパターンであることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
得られた前記露光部の結像位置に基づいて、前記露光部の焦点調整を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の露光装置。
露光装置。
【請求項10】
複数の光透過部が並ぶように形成した遮光面を、投影光学系の光軸垂直方向に沿った面に対して所定角度だけ傾斜させて配置し、
各光透過部を透過する光を受光する受光部を、前記遮光面の下に配置し、
前記複数の光透過部に対してパターン光を、前記複数の光透過部の配列方向に沿って、前記投影光学系に対し相対移動させ、
前記受光部から出力される光量に応じた信号に基づいて、パターン光の結像位置を取得することを特徴とする露光装置の焦点検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、特に、露光装置の焦点検出に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置では、高解像度のパターン形成のため、露光される基板表面を投影光学系の結像面と一致させるため、焦点検出および焦点調整(キャリブレーション)が行われる。焦点検出および焦点調整の手法としては、基板位置を光軸方向へ段階的にシフトさせながら、焦点検出用パターンを基板に投影し、フォトセンサ、CCDなどを備えた焦点検出装置に対して焦点検出用パターンを投影し、焦点検出および焦点調整を行う方法が知られている。
【0003】
例えば、光変調素子アレイを用いたマスクレス露光装置では、投影光学系の解像限界に近い周期をもつL/S(ライン&スペース)パターンの光を、フォーカシングレンズを光軸方向に移動させながら、CCDなどの光センサに投影する。そして、画像処理によってコントラスト関連値を算出し、ピーク検出位置を合焦位置と定める(特許文献1参照)。
【0004】
一方、マスク露光装置では、スリット形成板をウェハステージに搭載して走査しながら焦点検出する方法が知られている(特許文献2参照)。そこでは、スリット形成板を走査方向に移動させながら焦点検出用パターンの光を投影し、焦点検出用パターン光の強度信号(空間像プロファイル)を取得する。そして、光軸方向にスリット板を段階的に移動させながら各位置の空間像プロファイルを比較し、スリット透過光強度の最も大きい位置を合焦位置として判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-246165号公報
【特許文献2】国際公開第2005/124834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した焦点検出方法では、テーブルの位置、またはパターン光の結像位置を光軸方向に移動させながら焦点検出を行うため、正確な焦点位置検出が難しく、計測時間を要する。
【0007】
したがって、露光装置において、焦点検出精度を維持しながら、迅速に焦点検出できることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、例えばDMDなどの光変調素子アレイを備えた露光装置として構成可能であり、投影光学系を有する露光部と、前記露光部の結像位置を測定する測定部とを備える。そして、前記測定部は、前記投影光学系の光軸方向に沿った位置が互いに異なる複数の光透過部を形成した遮光部と、各光透過部を透過する光を受光する受光部とを備え、前記受光部から出力される光量に応じた信号に基づいて、前記露光部の結像位置を取得する。例えば、演算部を設け、結像位置を算出することが可能であり、結像位置を検出しているともいえる。露光装置は、得られた前記露光部の結像位置に基づいて、前記露光部の焦点調整を行うことができる。
【0009】
光透過部に対して投影する仕方は様々であり、前記遮光部を前記露光部に対して相対移動させるように構成することが可能である。遮光部を前記露光部に対して連続的に相対移動させることが可能な移動部を設け、遮光部を相対移動させる間に前記露光部から投影されるパターン光に基づいて、前記露光部の結像位置を取得することが可能である。例えば、測定部を基板搭載用ステージに装着する、あるいは一体的に構成することにより、投影光学系に対して走査方向に沿った相対移動が可能となる。
【0010】
光変調素子アレイを備えた露光装置の場合、露光部が、前記遮光部を相対移動させる間、前記光変調素子アレイにおける同一の変調エリアで反射された光を、前記パターン光として投影することが可能である。
【0011】
一方で、遮光部を露光部に対して移動させない構成にすることが可能である。例えば、光変調素子アレイを備えた露光装置の場合、露光部が、前記光変調素子アレイにおいてスクロールする変調エリアから反射された光を、前記パターン光として投影する構成によって、結像位置を得ることができる。
【0012】
遮光部に関しては、互いの光軸方向に沿った光透過部の位置の違いによって結像位置が検出可能な光量信号が出力可能な範囲で、複数の光透過部を形成すればよい。複数の光透過部の光軸方向位置が、前記パターン光の相対移動方向に沿って段階的に高くまたは低くなるように形成することが可能である。例えば、遮光部が、前記複数の透過部を形成した遮光面を備え、前記遮光面が、前記投影光学系の光軸垂直方向に沿った面に対して傾斜している構成にすることができる。
【0013】
複数の光透過部の形状を含めた構成も様々であり、例えば、複数の光透過部が、前記パターン光の相対移動方向に垂直な方向に延びる複数のスリットによって構成することが可能であり、パターン光は、前記遮光部上で前記複数のスリットと平行なライン状のパターンとすることができる。
【0014】
本発明の他の一態様である露光装置の焦点検出方法は、複数の光透過部が並ぶように形成した遮光面を、投影光学系の光軸垂直方向に沿った面に対して所定角度だけ傾斜させて配置し、各光透過部を透過する光を受光する受光部を、前記遮光面の下に配置し、前記複数の光透過部に対してパターン光を、前記複数の光透過部の配列方向に沿って、前記投影光学系に対し相対移動させ、前記受光部から出力される光量に応じた信号に基づいて、パターン光の結像位置を取得する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、露光装置において、焦点検出精度を維持しながら迅速に焦点検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態である露光装置のブロック図である。
図2】ステージおよび遮光部の概略的斜視図である。
図3】測定部の概略的側面図である。
図4】遮光部に形成された複数の光透過部およびDMDのパターンを形成する変調エリアを示した平面図である。
図5】遮光部の遮光面において複数の透過部の形成される区画を側面から示した模式図である。
図6】結像検出用のパターン光を走査させた時に出力される光量信号の波形を示したグラフである。
図7】焦点検出および焦点調整のフローチャートを示した図である。
図8】検出された光量波形の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態である露光装置のブロック図である。
【0019】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Wへ光を照射することによってパターンを形成可能なマスクレス露光装置であり、ここでは、複数の露光ヘッド20を備えたマスクレス露光装置として構成されている(図1では、1つの露光ヘッドのみ図示)。基板Wを搭載するステージ12は、ステージ駆動機構15によって、主走査方向、副走査方向に移動可能である。
【0020】
露光ヘッド20は、照明光学系21、DMD(Digital Micro-mirror Device)22、結像光学系(投影光学系)23を備える。光源30から出射した光は、照明光学系21へ導かれる。光源30は、例えばレーザダイオードなどによって構成される。
【0021】
微小ミラーを2次元配列させたDMD22(光変調素子アレイ)において、各マイクロミラーは、姿勢を変化させることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路24によって各ミラーが姿勢制御されることにより、パターンに応じた光が、投影光学系23を介して基板Wの表面に結像される。
【0022】
ステージ駆動機構15は、コントローラ60からの制御信号に従い、ステージ12を移動させる。ステージ駆動機構15は不図示のエンコーダを備え、ステージ12の位置を測定する。コントローラ60は、ステージ12の位置に基づいて露光装置10の動作を制御し、DMD駆動回路24へ制御信号を出力する。
【0023】
露光動作中、ステージ12は、主走査方向(相対移動方向)に沿って一定速度で移動する。DMD22全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Wの移動に伴って基板W上を相対的に移動する。露光動作は所定の露光ピッチに従って行なわれ、露光ピッチに合わせてマイクロミラーがパターンに応じた光を投影するように制御される。以下では、主走査方向をX、副走査方向をY、そして主走査方向X、副走査方向Yに垂直な方向をZと
する。
【0024】
DMD22の各マイクロミラーの制御タイミングを露光エリアの相対位置に従って調整することにより、露光エリアの位置に描くべきパターンの光が順次投影される。そして、露光ヘッド20を含めた複数の露光ヘッドにより、基板W全体にパターンが形成される。
【0025】
なお、露光方式としては、一定速度で移動する連続移動方式だけでなく、間欠的に移動するステップ&リピートも可能である。また、マイクロミラーの像を部分的に重ねて露光する多重露光(オーバーラップ露光)を行うことも可能である。
【0026】
ステージ12の端部付近には、遮光部41およびフォトダイオードなどの受光部42を備えた焦点検出用の測定部40が設けられている。遮光部41は、光を透過する光透過部を複数設けた遮光面41Sを有し、受光部42は、遮光面41Sの下方に配置されている。演算装置27は、受光部42から送られてくる光量に応じた信号に基づいて、基板Bに投影される結像検出用パターンに応じた光の結像位置を検出する。
【0027】
例えば基板の種類変更などを行った場合、露光前に不図示の焦点調整機構を用いて焦点調整が行われる。焦点調整機構は既知の技術を用いて行うことができる。焦点調整が行われると、各基板に対する露光動作の開始前、あるいは露光作業時間が所定時間経過する度に、合焦状態が維持されているか否かを検出/モニタリングする。そして、合焦状態から外れている場合、コントローラ60によって焦点調整が行われる。
【0028】
図2は、ステージ12および遮光部41の概略的斜視図である。図3は、測定部40の概略的側面図である。
【0029】
図2に示すように、測定部40の遮光部41は、ステージ12の端部付近に一体的に設置されている。焦点検出および合焦状態のモニタリングを行うとき、遮光部41はステージ12とともに、主走査方向Xに沿った方向(-X方向)へ移動する。その間、パターン光FPが露光ヘッド20から投影される。ただし、図2では、1つの露光ヘッドからのパターン光のみ示している。
【0030】
遮光部41は、ここではガラスマスクによって構成され、その表面である遮光面41Sには、後述する複数の光透過部50(図2では図示せず)が形成されている。遮光面41Sは、ステージ12の基板搭載面、すなわち基板Bの表面に対し、所定角度θだけ傾斜している。遮光部41Sは、不図示の支持部材によって位置決めされている。
【0031】
光強度/光量を検出する受光部42は、ステージ12に取り付けられた支持機構(図示せず)によって保持されている。また、受光部42は、その受光面が基板Bの搭載面に沿うように位置決めされている。ステージ12の移動に伴い、パターン光FPは、遮光面41Sに対して主走査方向Xへ移動する。ここでは、パターン光FPが連続的に一定速度で移動する。図1に示す演算装置(演算部)27は、この間に受光部42から出力される一連の光量信号およびステージ12の位置情報に基づいて、パターン光FPの結像位置を算出する。
【0032】
図4は、遮光部41に形成された複数の光透過部50およびDMD22においてパターン光を表示するための変調エリアを示した平面図である。図4(A)に示すように、複数の光透過部50は、バー状のスリット50Sから構成され、パターン光FPの相対移動方向、すなわち主走査方向Xに沿って所定間隔で並んでいる。ここでは、スリット50Sが等間隔で並んでいる。
【0033】
パターン光FPは、図4(B)に示すように、DMD22に定められた変調エリア22AをON状態にすることによって、光源30からの光を変調することで形成される。ここでは、パターン光FPは、基板Wの表面付近において、スリット50Sの開口形状に応じたバー状(ライン状)パターンとして結像される。変調エリア22Aは、パターン光FPの像が基板Wの表面付近においてスリット50Sと略平行となるように定められている。
【0034】
変調エリア22Aの幅DWは、投影光学系23の倍率に基づいて、パターン光FPの基板Wの表面付近における投影像の幅(像幅)Wが得られるように定められている。例えば、スリット50Sの幅SWよりも小さくなるように定めることができる。また、パターン光FPの基板Wの表面付近における投影像の幅Wは、投影光学系23の解像限界より大きい値に定められており、例えば幅10μmに定められる。スリット50Sの幅SWは、光量が焦点検出可能なように、充分取得できる大きさに定められている。
【0035】
図5は、遮光部41の遮光面41Sにおいて複数の透過部50の形成される区画を側面から示した模式図である。ただし、図5では、図3とは反対側から遮光部41を見た図を模式図として示している。
【0036】
複数の透過部50は、遮光面41Sのスリット形成区域SLに形成されている。主走査方向Xに沿ったスリット形成区域SLでは、その中央部M付近で投影光学系23の光軸Cを通り、遮光面41Sの両縁部分41E1、41E2に向け、およそ半分ずつ区分けされ、対称的である。
【0037】
ここで、パターン光FPの基準となる結像位置を基準露光面EMとして定めた場合、基準露光面EMがスリット形成区域SLの略中央部付近で交わる。したがって、遮光面41Sの縁部分41E1は、ステージ12に基板Bを搭載した場合の基準露光面EMより下方に位置し、縁部分41E2は、基準露光面EMより上方に位置する。
【0038】
このような傾斜角度θをもつ遮光面41Sに複数の透過部50を形成した測定部40に対し、パターン光FPを投影するとともに、ステージ12とともに測定部40を移動させ、複数の透過部50に対してパターン光FPを走査させる。図5では、パターン光FPの結像位置が、基準露光面EMに対して距離Z0だけ下方に位置している。
【0039】
図6は、パターン光FPを走査させた時に出力される光量信号の波形を示したグラフである。なお、ここでは、図3~5に示した複数の光透過部50よりもスリット数が多いときの波形を示している。
【0040】
パターン光FPが複数のスリット形成区域SLを通過し始めると、光量が増加する。しかしながら、スリット50Sの光軸方向に沿った位置がパターン光FPの結像位置から大きく離れているため、しばらくの間略一定の光量値が続く。
【0041】
スリット50Sの光軸方向に沿った位置がパターン光FPの結像位置に近づくと、スリット50Sを透過する結像検出用パターン光FPの光強度の変化量が大きくなり 、振幅のある光量波形が現れる。そして、パターン光FPの結像位置に最も近いスリット50Sを通過するとき、光量波形の中で振幅最大となる。その後、パターン光FPの移動とともに振幅が減衰し、光量値が再び略一定となる。
【0042】
このような最大光量値(ピーク値)を中心にして対称的であって、幅EWがスリット形成区域SLに対応する光量波形Pが、受光部42からの出力信号によって得られる。本実施形態では、基準となる光量波形と、検出された光量波形Pとの相対移動方向に沿ったずれに基づいて、パターン光FPのデフォーカス量を検出する。
【0043】
図7は、焦点検出および焦点調整のフローチャートを示した図である。DMD22によってパターン光FPを投影するとともに、ステージ12を移動させる(S101、S102)。演算装置27は、受光部42からの光量信号およびステージ12の位置情報から光量波形を取得し、パターン光FPの結像位置を検出する(S103、S104)。
【0044】
図8は、検出された光量波形を示したグラフである。メモリ32(図1参照)には、パターン光FPの結像位置の基準位置が、あらかじめ記憶されている(以下、マスタデータという)。
【0045】
図7のステップS105では、検出された光量波形から、デフォーカス量が求められる。ここでは、光量波形からピーク値付近における光量分布を急峻に表す包絡線を作成する。具体的には、光量波形に対して微分演算をした後、2乗してフィルタ処理を行い、サンプリング処理を行って得られるプロットにフィッティングする包絡線を作成する。そして、包絡線の中心位置をピーク位置として定める。
【0046】
上述したマスタデータのピーク位置と検出されたピーク位置との差をΔL(以下、相対移動方向ずれ量という)とすると、デフォーカス量Δfは、以下の式によって求められる。

Δf=ΔL×tanθ ・・・・(1)
【0047】
相対移動方向ずれ量ΔLは、パターン光FPの結像位置の基準露光面EMに対してずれている方向に応じて、正の値または負の値になる。図8では、パターン光FPの結像位置が被露光面EMより上方側にずれている場合を示している。デフォーカス量Δfが合焦範囲内にあるとみなせる閾値を超えている場合、焦点調整が行われる。一方、デフォーカス量Δfが閾値以下の場合、合焦範囲内にあると判断される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の露光装置10は、ステージ12の端部付近に測定部40を備え、測定部40は、遮光部41と受光部42とを備える。遮光部41は、複数の光透過部50を形成し遮光面41Sを有し、遮光面41Sは、投影光学系23の光軸Cに垂直な方向に対して傾斜角度θだけ傾斜している。焦点検出時、ステージ12の移動しながらパターン光FPを測定部40の遮光面41Sに投影し、受光部42から出力される光量信号に基づいて焦点検出および焦点調整を行う。
【0049】
実施形態の焦点検出手法によれば、ステージ12の端部付近に配置した測定部40をステージ12とともに移動させるだけで済み、測定部40を光軸方向へ移動させる動作を伴わない。したがって、迅速に焦点検出および焦点調整を行うことができる。
【0050】
また、測定部40の遮光部41を所定角度θだけ傾斜させる構成であるため、簡易な構成で精度よく焦点検出を行うことができる。さらに、スリット形成区域SLが基準露光面EMを跨ぐように、遮光面41Sが位置決めされている。これにより、パターン光FPの結像位置のずれの方向が上下方向いずれであっても検出することができる。
【0051】
なお、実施形態のように測定部40がステージ12の載置面から突出する構成を避けるため、測定部40の縁部分41E2がステージ12の載置面以下となるように測定部40を設置し、その分だけオフセット値を加味してデフォーカス量Δfを求めてもよい。
【0052】
パターン光FPの相対移動方向をステージ12の移動方向、すなわち主走査方向Xに合わせているため、ステージ移動機構15によるステージ12の移動制御だけで焦点検出を行うことができる。なお、測定部40をステージ12とは独立して移動する機構にしてもよい。また、遮光部41、受光部42が一体的に移動してもよく、あるいは、遮光部41のみ移動させてもよい。この場合、遮光部41とパターン光FPの方向を上記の例における方向から変更して副走査方向Yに沿って移動させることも可能であり、主走査方向X、副走査方向Y以外の方向に移動させてもよい。
【0053】
複数の光透過部50は、様々に構成することが可能であり、遮光面14Sの傾斜角度、DMD22に定められた変調エリア22Aの幅DW(図4参照)、スリットパターンピッチSPおよびスリットパターン幅SW(図4)などは、投影光学系23の解像力、受光部42の感度特性、ステージ12の位置検出能力などに基づいて定めることができる。
【0054】
例えば、遮光面41Sの傾斜角度θは、演算装置27に入力されるエンコーダ信号のパルス間隔が焦点検出分解能に関係するため、比較的小さい角度に定めるのがよい。また、パターン光FPの結像位置付近の像幅Wは、投影光学系23の解像度限界より大きい値に定められる。
【0055】
また、スリットパターンピッチSPは、パターン光FPの結像位置付近の像幅Wの約数以外に定められる。スリットパターン幅SWは、光量が十分取得できる幅に定められ、DMD22の変調エリア22Aの幅DWは、パターン光FPの像幅Wおよびスリットパターン幅SWの条件を満たすように定められる。なお、パターン光FPは、バー状パターンに限定されず、正方形状や楕円形状等のパターンであってもよい。
【0056】
本実施形態では、遮光面41Sがパターン光FPを通過するように測定部40を移動させる構成であるが、測定部40を静止させた状態で、パターン光FPを測定部40に対して移動させる構成にしてもよい。すなわち、測定部40の位置を変えずに、DMD22の変調エリア22Aを移動(スクロール)させ、パターン光FPを走査させる構成にしてもよい。この場合、DMD22の各微小ミラーの反射率の違いに合わせた補正テーブルをあらかじめ用意し、光量波形を補正すればよい。
【0057】
複数の光透過部50が相対移動方向に沿って段階的に上がっていくように、遮光面41Sを傾斜させる構成にしてもよい。また、平坦な遮光面41Sを形成する代わりに、階段状にガラスマスクを形成し、それに合わせて複数の光透過部を設けてもよい。この場合、遮光面41Sを傾斜させずに測定部40を配置することができる。
【0058】
複数の光透過部50は、その光軸方向に沿った位置が段階的に上がる、あるいは下がるように構成に限定されるものではなく、互いに異なる位置に形成することも可能である。この場合、解像度限界に近い空間像プロファイルが得られるように、パターン光FPおよび光透過部を形成し、ピーク位置を検出するようにすればよい。
【0059】
上述した焦点検出に関する構成は、DMD22などの光変調素子を備えたマスクレス露光装置だけでなく、マスク露光装置にも適用可能である。この場合、パターン光FPを投影しながら、ステージ搭載面に測定部40を搭載し、相対移動させればよい。
【符号の説明】
【0060】
10 露光装置
12 ステージ
20 露光ヘッド(露光部)
22 DMD(光変調素子アレイ)
23 投影光学系
27 演算装置(演算部)
40 測定部
41 遮光部
42 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8