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  • 特開-鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵 図1
  • 特開-鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵 図2
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  • 特開-鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵 図4
  • 特開-鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051207
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20240404BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G10B3/12
G10B3/12 100
G10H1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157248
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】村井 琢磨
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BD01
(57)【要約】
【課題】鍵に簡単に取り付けられるとともに鍵からの脱落を確実に防止できる鍵盤用錘、及びこの鍵盤用錘が安定して固定される鍵盤楽器の鍵を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器の鍵1に設けられた錘収容部8に外部から挿入されることによって取り付けられる鍵盤用錘3であって、ブロック状に形成された錘本体部31と、この錘本体部31の錘収容部8への挿入側の先端部に設けられ、取付け時に、錘収容部8の奥側の壁面4に当接した状態で錘本体部31が押し込まれたときに、壁面からの反力によって弾性変形する弾性変形部32と、錘本体部31の側面に設けられ、錘収容部8の側壁5に係止される被係止部33と、を備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料から成り、鍵盤楽器の鍵に設けられた錘収容部に外部から挿入されることによって取り付けられる鍵盤用錘であって、
ブロック状に形成された錘本体部と、
この錘本体部の前記錘収容部への挿入側の先端部に設けられ、取付け時に、前記錘収容部の奥側の壁面に当接した状態で前記錘本体部が押し込まれたときに、前記壁面からの反力によって弾性変形する弾性変形部と、
前記錘本体部の側面に設けられ、前記錘収容部の側壁に係止される被係止部と、
を備えていることを特徴とする鍵盤用錘。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記錘本体部の上面において上方に突出する、1又は2以上の凸状部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤用錘。
【請求項3】
前記凸状部は、正面がM字状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤用錘。
【請求項4】
前記弾性変形部は、
上面が平坦に形成された平坦部と、
この平坦部の下側に水平方向に貫通するように設けられた空洞部と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤用錘。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の鍵盤用錘が取り付けられる鍵盤楽器の鍵であって、
前記鍵は、下方に開放し、中空状に形成された前記錘収容部を有しており、
前記錘収容部の側壁には、当該錘収容部に前記鍵盤用錘が収容された状態で、当該鍵盤用錘の前記被係止部を下方から支持することによって係止する係止凸部が設けられていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵。
【請求項6】
前記係止凸部は、前記錘収容部への前記鍵盤用錘の取付けの際に、前記鍵盤用錘の前記弾性変形部が前記錘収容部の天壁面に当接したときに前記被係止部よりも上側に位置し、前記鍵盤用錘が前記錘収容部に押し込まれることで前記弾性変形部が変形したときに、前記被係止部よりも下側に位置するように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の鍵盤楽器の鍵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器の鍵盤装置に適用され、押鍵時に所望のタッチ重さを得るために鍵に取り付けられる鍵盤用錘、及びその鍵盤用錘が取り付けられた鍵盤楽器の鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に記載したものが知られている。この鍵盤用錘は、鉄粉を混ぜたゴムで構成されており、直方体状の錘本体部と、錘本体部の左右の両側面にそれぞれ形成され、上下方向に並設された複数のヒダを有するヒダ部とを備えている。一方、鍵は、前後方向に延びる白鍵であり、その前端部に、下方に開放する錘収容部(特許文献1では錘取付空間)が設けられている。
【0003】
製造時において、上記の鍵盤用錘を鍵に取り付ける場合、鍵の下方から錘収容部に鍵盤用錘を押し込む。これにより、鍵盤用錘の左右のヒダ部が、錘本体部と錘収容部の左右の側壁との間に挟まれながら弾性変形し、その復元力による突っ張りにより、鍵盤用錘が鍵の前端部に固定される。このように、上記の鍵盤用錘は、鍵の錘収容部への押し込みだけで、鍵に簡単に取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-114597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鍵に取り付けられた上記の鍵盤用錘は、左右のヒダ部による突っ張りのみによって、鍵の錘収容部に固定されているため、鍵盤楽器の長期間の使用などにより、ヒダ部の弾性変形による復元力が低下すると、鍵盤用錘が下方にずれたり、鍵から脱落したりするおそれがある。もちろん、鍵の錘収容部の壁面に、内方に若干突出する突起を設けることなどにより、その突起で鍵盤用錘のヒダ部を下方から係止し、鍵からの鍵盤用錘の脱落を防止することは可能である。
【0006】
上記のような係止用の突起を錘収容部の壁面に設けた場合、鍵盤用錘を鍵に取り付ける際には、鍵盤用錘のヒダ部の全てのヒダが突起を乗り越えるように、鍵盤用錘を鍵の錘収容部に押し込む必要がある。しかし、鍵側の上記突起と鍵盤用錘のヒダ部の位置関係や、鍵盤用錘の形状やサイズ、弾性特性などによっては、鍵盤用錘の鍵への取付けの際に、非常に大きい力が必要になることがある。例えば、錘収容部に押し込まれた鍵盤用錘の平坦な上面が、錘収容部の天井壁に当接した状態で、ヒダ部が上記突起を乗り越えていない場合、鍵盤用錘をさらに押し込む必要があるものの、鍵盤用錘の上面全体が錘収容部の天井壁に当たっているために、押し込む際の反力が大きくなってしまう。その結果、鍵盤用錘の押し込みに非常に大きな力が必要になることで、鍵盤用錘の取付けに手間がかかってしまうことがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、鍵に簡単に取り付けられるとともに鍵からの脱落を確実に防止できる鍵盤用錘、及びこの鍵盤用錘が安定して固定される鍵盤楽器の鍵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵盤楽器の鍵に設けられた錘収容部に外部から挿入されることによって取り付けられる鍵盤用錘であって、ブロック状に形成された錘本体部と、この錘本体部の錘収容部への挿入側の先端部に設けられ、取付け時に、錘収容部の奥側の壁面に当接した状態で錘本体部が押し込まれたときに、壁面からの反力によって弾性変形する弾性変形部と、錘本体部の側面に設けられ、錘収容部の側壁に係止される被係止部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、鍵盤用錘を鍵に取り付ける場合、鍵盤用錘を鍵の錘収容部に挿入する。この場合まず、鍵盤用錘の弾性変形部が鍵の錘収容部における奥側の壁面に当接する。この状態で、鍵盤用錘の錘本体部が錘収容部に押し込まれたときに、錘収容部の上記壁面からの反力によって、弾性変形部が弾性変形し、その結果、鍵盤用錘全体が錘収容部に収容されるとともに、鍵盤用錘の被係止部が、錘収容部の側壁に係止される。このように、鍵盤用錘の鍵への取付け時において、鍵盤用錘が錘収容部の奥側の壁面に当接しても、比較的小さな力で錘本体部を押し込むことで、鍵盤用錘を鍵に簡単に取り付けることができ、鍵盤用錘の被係止部が錘収容部の側壁に係止されることで、鍵盤用錘の鍵からの脱落を確実に防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤用錘において、弾性変形部は、錘本体部の上面において上方に突出する、1又は2以上の凸状部で構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、錘本体部の上面において上方に突出する、1又は2以上の凸状部により、弾性変形部を比較的容易に構成することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の鍵盤用錘において、凸状部は、正面がM字状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、凸状部として、正面がM字状に形成されたものを採用することにより、例えば、M字状の2つの凸部が互いに広がって撓むような弾性変形をすることが可能である。これにより、凸状部が比較的硬質の弾性材料で構成されていても、鍵盤用錘の鍵への取付けの際に、凸状部の弾性変形を確保することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤用錘において、弾性変形部は、上面が平坦に形成された平坦部と、この平坦部の下側に水平方向に貫通するように設けられた空洞部と、を有していることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、平坦部の下側に水平方向に貫通する空洞部が設けられているので、その空洞部の付近を、空洞部がない場合に比べて、上下方向に弾性変形しやすくすることができる。このように、平坦部の下側に空洞部を形成するだけで、鍵盤用錘において所望の弾性変形部を容易に得ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれかに記載の鍵盤用錘が取り付けられる鍵盤楽器の鍵であって、鍵は、下方に開放し、中空状に形成された錘収容部を有しており、錘収容部の側壁には、錘収容部に鍵盤用錘が収容された状態で、鍵盤用錘の被係止部を下方から支持することによって係止する係止凸部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、鍵に設けられた錘収容部は、下方に開放する中空状に形成されている。この錘収容部の側壁に設けられた係止凸部が、錘収容部に収容された鍵盤用錘の被係止部を下方から支持することによって係止する。これにより、鍵盤用錘が錘収容部に収容された状態でしっかりと取り付けられた鍵を、容易に得ることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載に鍵盤楽器の鍵において、係止凸部は、錘収容部への鍵盤用錘の取付けの際に、鍵盤用錘の弾性変形部が錘収容部の壁面に当接したときに被係止部よりも上側に位置し、鍵盤用錘が錘収容部に押し込まれることで弾性変形部が変形したときに、被係止部よりも下側に位置するように設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、係止凸部が上記の所定位置に設けられることにより、錘収容部への鍵盤用錘の取付けの際に、鍵盤用錘の弾性変形部が錘収容部の天壁面に当接した後、さらに鍵盤用錘が錘収容部に押し込まれることにより、鍵盤用錘の被係止部が係止凸部を乗り越え、その係止凸部の上側に位置する。その結果、係止凸部が鍵盤用錘の被係止部よりも下側に位置することで、鍵盤用錘を下方から安定した状態で係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による鍵盤用錘及び鍵盤楽器の鍵を示しており、(a)は鍵の外観斜視図、(b)は鍵の側面図、(c)は(b)のc-c線に沿う断面図、(d)は(c)のd-d線に沿う断面図である。
図2】鍵盤用錘を示す図であり、(a)は正面図、(b)は外観斜視図である。
図3図1(c)に対応する図であり、鍵本体の錘収容部と鍵盤用錘の大きさを説明するための説明図である。
図4】鍵本体への鍵盤用錘の取付け手順を説明するための図であり、(a)は錘収容部への鍵盤用錘の挿入前の状態、(b)は鍵盤用錘の凸状部が鍵の天壁に当接した状態、(c)は鍵盤用錘が錘収容部に収容された状態を示す。
図5】鍵盤用錘の変形例を示す図であり、(a)は単一の凸状部を有する第1変形例、(b)は3つの凸状部を有する第2変形例、(c)は平坦部の下側に3つの空洞部を有する第3変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による鍵盤用錘が取り付けられた鍵を示している。同図に示すように、この鍵1は、電子ピアノなどの鍵盤楽器の鍵盤装置に用いられる白鍵であり、図示しない黒鍵とともに、左右方向に多数(例えば88鍵)並設されることにより、鍵盤装置を構成する。この鍵1は、前後方向(図1(b)の左右方向)に延びる鍵本体2と、この鍵本体2に取り付けられた鍵盤用錘3などを備えている。
【0022】
鍵本体2は、所定種類の合成樹脂(例えばAS樹脂など)から成り、前後方向に延びる所定形状の成形品で構成されている。具体的には、鍵本体2は、水平な天壁4と、この天壁4の左右両端部からそれぞれ下方に垂下する左右の側壁5、5(図1(c)参照)と、天壁4及び左右の側壁5、5の前端部に設けられた前壁6とを備えている。なお、符号7は、木質板を示しており、これらの木質板7が、左右の側壁5、5の外面に接着などにより取り付けられている。
【0023】
また、図1(b)~(d)に示すように、鍵本体2の前端部には、鍵盤用錘3を収容した状態で取り付けるための錘収容部8が設けられている。この錘収容部8は、下方に開放するボックス状に形成されている。具体的には、上記の天壁4と、左右の側壁5、5と、前壁6よりも後方の所定位置に設けられたリブ壁9と、リブ壁9よりも後方の所定位置に設けられた後壁10とにより、所定サイズの錘収容部8が画成されている。
【0024】
また、左右の側壁5、5の内面にはそれぞれ、鍵盤用錘3を係止するための3つの係止凸部5aが、上下方向に間隔を隔てて突設されている。各係止凸部5aは、前後方向に所定長さ延びるとともに、内方に向かってテーパ状に突出するように形成されている。また、各側壁5に形成された3つの係止凸部5aのうち、最下位の係止凸部5aが他の2つの係止凸部5aに比べて大きく、内方により大きく突出している。
【0025】
図2は、鍵盤用錘3を示しており、(a)は正面図、(b)は外観斜視図である。この鍵盤用錘3は、比重が比較的大きい所定種類のゴムや、鉄などの金属粉を混ぜたゴムなどで構成されている。また、鍵盤用錘3は、ブロック状に形成された錘本体部31と、この錘本体部31の上面から上方に突出する凸状部32(弾性変形部)と、錘本体部31の左右の両側面から外方にそれぞれ突出し、錘収容部8の側壁5、5に係止される被係止部33とを備えている。
【0026】
錘本体部31は、ほぼ直方体状の形状を有している。凸状部32は、正面形状がM字状に形成され、互いに左右方向に間隔を隔てて配置された2つの凸状部32、32で構成されている。また、各凸状部32は、左右対称に形成された上ヒダ32a、32aを有し、錘本体部31の上面全体にわたって前後方向(図2(a)の表裏方向)に延びている。
【0027】
被係止部33は、正面形状が全体として鋸歯状に形成され、上下方向に沿って並設された5つの横ヒダ33aで構成されている。各横ヒダ33aは、上下に傾斜面と水平面とを有しており、錘本体部31の側面全体にわたって前後方向に延びている。
【0028】
また、錘本体部31の下端部には、互い左右方向に間隔を隔てて、下方に開放する2つの凹部34が形成されている。各凹部34は、錘本体部31の下面全体にわたって前後方向に延びている。これらの凹部34により、錘本体部31の下端部では、左右方向において、内方に向かって弾性変形しやすくなっている。
【0029】
図3は、前述した図1(c)に対応し、鍵本体2の錘収容部8と、これに収容する前の鍵盤用錘3を、二点鎖線で示している。図3及び図2に示すように、鍵盤用錘3では、鍵本体部31が錘収容部8よりも小さく形成されるとともに、上部の凸状部32及び被係止部33を含む鍵盤用錘3の全体の外形が、錘収容部8よりも若干大きく形成されている。
【0030】
図4は、鍵本体2への鍵盤用錘3の取付け手順を示している。同図(a)は、錘収容部8への鍵盤用錘3の挿入前の状態を示している。この鍵盤用錘3を、鍵本体2の下方から錘収容部8に挿入する。この挿入の際には、鍵盤用錘3の左右の被係止部33において、各横ヒダ33aが、錘収容部8の側壁5から反力を受け、下方に撓むように弾性変形する。
【0031】
図4(b)は、錘収容部8に収容された鍵盤用錘3の上端部における凸状部32の上端が、鍵本体2の天壁4に当接した直後の状態を示している。この状態では、鍵盤用錘3の左右の被係止部33において、最下位の横ヒダ33aの先端部が、錘収容部8の側壁5における最下位の係止凸部5aよりも下側に位置している。この状態から、鍵盤用錘3を錘収容部8にさらに押し込むと、図4(c)に示すように、鍵盤用錘3の各凸状部32の上ヒダ32a、32aが互いに広がり、左右方向に撓むように弾性変形する。またこの場合、鍵盤用錘3の左右の最下位の横ヒダ33a、33aは、錘収容部8の最下位の係止凸部5a、5aを乗り越え、その上側に位置し、これにより、最下位の係止凸部5a、5aによって下方から支持された状態で係止される。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態の鍵盤用錘3によれば、鍵盤用錘3の鍵本体2への取付け時において、鍵盤用錘3が錘収容部8の天壁4に当接しても、上端部の凸状部32を弾性変形させながら、比較的小さな力で鍵盤用錘3を押し込むことができ、鍵盤用錘3を鍵本体2に簡単に取り付けることができる。また、鍵盤用錘3が錘収容部8に押し込まれたときには、鍵盤用錘3の左右両側の被係止部33、33の各横ヒダ33aが下方に弾性変形し、その復元力による突っ張りにより、鍵盤用錘3が錘収容部8の左右の側壁5、5に係止される。加えて、鍵盤用錘3の左右の被係止部33、33の下部が、錘収容部8の左右の側壁5、5の各係止凸部5aで下方から支持された状態に係止される。これらのようにして、錘収容部8に収容された鍵盤用錘3が係止されるので、その鍵盤用錘3が鍵本体2から脱落するのを確実に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の鍵1によれば、上記の鍵盤用錘3が錘収容部8に収容された状態でしっかりと取り付けられた鍵1を、容易に得ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。図5は、鍵盤用錘の変形例の正面図を示している。同図(a)に示す第1変形例の鍵盤用錘3Aは、上述した鍵盤用錘3に対し、M字状の2つの凸状部32に代えて、左右方向の中央部に、正面形状が矩形状の単一の凸状部32Aを有するとともに、左右にそれぞれ6つの横ヒダ33aを有する点が異なっている。また、同図(b)に示す第2変形例の鍵盤用錘3Bは、上述した鍵盤用錘3に対し、M字状の2つの凸状部32に代えて、左右方向に互いに間隔を隔てて、正面形状が矩形状の3つの凸状部32Bを有する点が異なっている。
【0035】
さらに、図5(c)に示す第3変形例の鍵盤用錘3Cは、上述した鍵盤用錘3に対し、M字状の2つの凸状部32に代えて、上面が平坦な平坦部35を有するとともに、この平坦部35の下側の所定位置に、3つの空洞部36を有している。各空洞部36は、水平に延び、鍵盤用錘3Cを前後方向(図5(c)の表裏方向)に貫通するように形成されている。このように、平坦部35の下側に、上記の空洞部36が設けられることにより、それらの空洞部36の付近を、空洞部36が無い場合に比べて、上下方向に弾性変形しやすくすることができる。以上の第1~第3変形例の鍵盤用錘3A~3Cも、前述した鍵盤用錘3と同様の作用、効果を得ることができる。
【0036】
なお、実施形態で示した鍵盤用錘3及び変形例の鍵盤用錘3A~3Cの細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 鍵
2 鍵本体
3 鍵盤用錘
3A 第1変形例の鍵盤用錘
3B 第2変形例の鍵盤用錘
3C 第3変形例の鍵盤用錘
4 天壁
5 側壁
5a 係止凸部
8 錘収容部
31 錘本体部
32 凸状部(弾性変形部)
32a 上ヒダ
33 被係止部
33a 横ヒダ
35 平坦部
36 空洞部
図1
図2
図3
図4
図5