(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051216
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】位置検出システムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157259
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】村山 智大
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077CC02
2F077CC10
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP11
2F077RR02
2F077RR23
(57)【要約】
【課題】軌道に沿って移動する移動体の数にかかわらず、その移動体の位置を検出しやすくする。
【解決手段】位置検出システムは、軌道に沿って移動する移動体の位置を検出する。この位置検出システムは、移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすように移動体に配置される磁石と、軌道に沿って配置され、それぞれが移動体と対向したときに磁石の磁界の方向を検出する複数のセンサと、センサの検出情報に基づいて、軌道における移動体の位置を特定する位置検出部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って移動する移動体の位置を検出する位置検出システムであって、
前記移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすように前記移動体に配置される磁石と、
前記軌道に沿って配置され、それぞれが前記移動体と対向したときに前記磁石の磁界の方向を検出する複数のセンサと、
前記センサの検出情報に基づいて、前記軌道における前記移動体の位置を特定する位置検出部と、
を備える、位置検出システム。
【請求項2】
前記移動体として、前記磁石の磁界の方向が互いに異なる複数の移動体を備え、
前記センサは、前記移動体が対向したときに前記磁石の磁界の強さと方向を検出し、
前記位置検出部は、前記複数のセンサのいずれかにより検出される磁界の強さに基づいて前記複数の移動体のいずれかの存在を特定し、検出される磁界の方向に基づいて前記複数の移動体のいずれであるかを特定する、請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記移動体における前記軌道との対向面に、着磁パターンを有するスケールがさらに設けられ、
前記軌道における前記スケールと対向可能な位置に、前記着磁パターンを読み取り可能な磁気センサが設けられ、
前記位置検出部は、前記磁気センサの検出情報に基づいて、前記移動体の詳細位置を特定する、請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
軌道上を移動する移動体であって、
前記軌道に沿って配置される複数のセンサと対向可能な対向面と、
前記対向面に設けられ、前記センサにより磁界の方向が検出される磁石と、
を備え、
前記磁石は、前記移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすよう、前記移動体に固有の角度で前記対向面に配置されている、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って移動する移動体の位置を検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
能動的な通信手段を持たずに曲軌道上を走行する搬送機を特定する方法として、パッシブ型RFIDタグを搬送機に取り付け、そのID情報を軌道側に配置したRFIDリーダで読み取る方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方法の問題点として、金属や水分などによってRFIDの通信可能距離が小さくなること、複数の搬送機が一つのRFIDリーダに接近した際、二つの搬送機の位置を識別することができないことなどがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、軌道に沿って移動する移動体の位置を検出する位置検出システムである。この位置検出システムは、移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすように移動体に配置される磁石と、軌道に沿って配置され、それぞれが移動体と対向したときに磁石の磁界の方向を検出する複数のセンサと、センサの検出情報に基づいて、軌道における移動体の位置を特定する位置検出部と、を備える。
【0006】
本発明の別の態様は、軌道上を移動する移動体である。この移動体は、軌道に沿って配置される複数のセンサと対向可能な対向面と、対向面に設けられ、センサにより磁界の方向が検出される磁石と、を備える。磁石は、移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすよう、移動体に固有の角度で対向面に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軌道に沿って移動する移動体の数にかかわらず、その移動体の位置を検出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る位置検出システムを模式的に表す平面図である。
【
図3】角度検出用磁石の表面における磁束密度分布の解析結果を表す図である。
【
図5】曲線軌道に配置される検出ヘッドを模式的に表す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る位置検出システムを模式的に表す平面図である。
位置検出システム1は、軌道2に沿って移動する移動体4の位置を、軌道2に沿って敷設された磁気センサ6を用いて検出する。軌道2は、所定長さの直線軌道2aと、曲率半径rの曲線軌道2b(円軌道)とを連結して構成され、複数の移動体4が走行しうる。本実施形態では磁気センサ6として、直線軌道2aに配列される磁気センサ6Sと、曲線軌道2bに配列される磁気センサ6Rが含まれる。これらを特に区別しない場合には、単に「磁気センサ6」と表記する。
【0010】
移動体4は、例えば工具などの所定の対象物を搬送する搬送機であり、外部装置(後述)により移動制御される。軌道2には図示略のレールが設けられ、移動体4は、そのレールにガイドされる車輪を有する。このため、移動体4の移動方向は、軌道2に沿った方向となる。移動体4の底面、つまり移動体4における軌道2との対向面には磁気媒体8が設けられる。一方、軌道2に沿って複数の磁気センサ6が直列にほぼ等間隔で配置されている。その複数の磁気センサ6のいずれかが磁気媒体8の存在を検知することで、移動体4の位置を検出できる。
【0011】
図2は、移動体4の構成を模式的に表す平面図である。
なお、説明の便宜上、水平方向にX方向およびY方向、鉛直方向にZ方向を設定する。以下では移動体4の移動方向を「基準方向」とし(一点鎖線矢印参照)、これをX方向として説明する。
【0012】
移動体4は、磁気媒体8としてスケール10および角度検出用磁石12を有する。スケール10は、インクリメンタルトラック14およびアブソリュートトラック16を含む。インクリメンタルトラック14には、記録波長λで周期的に磁気記録されたインクリメンタルパターン(着磁パターン)が設けられる。一方、アブソリュートトラック16には、あるタップシーケンスのLFSR(linear feedback shift register)で生成された0と1のビット列に基づき磁気記録されたアブソリュートパターン(着磁パターン)が設けられる。
【0013】
角度検出用磁石12は、XY平面内のある向きに一様に磁化されており、移動体4の移動方向である基準方向(一点鎖線矢印参照)に対して磁界の方向が所定角度θb(k)をなすように移動体4に配置される。ここで、「k」は移動体4のID(識別情報)を示す0以上の整数であり、k<kn、θb(k)=k×360/knとする。「kn」はIDの総数である。すなわち、軌道2上を走行しうる複数の移動体4のそれぞれについて、磁界の方向θb(k)が互いに異なるように角度検出用磁石12が設けられる。それにより、複数の移動体4のそれぞれについて物理的に固有のIDが設定される。
【0014】
角度検出用磁石12の表面近傍には、XY平面内の磁束密度の大きさがBt以上かつ、磁界の方向と移動体4の基準方向(X方向)とのなす角θaがθb(k)-δθb<θa<θb(k)+δθbを満たす、XYZ空間に広がる領域Aが存在する。磁気センサ6(後述の角度センサ25)が位置するXYZ座標について、領域Aの範囲外では角度検出用磁石12からのXY平面上の磁束密度の大きさはBt未満であるとする。すなわち、領域Aとの対向位置が、角度検出用磁石12による磁界の強さおよび方向を検出するのに適した位置となる。
【0015】
図3は、角度検出用磁石12の表面における磁束密度分布の解析結果を表す図である。本図では、角度検出用磁石12の磁界の方向をX方向に一致させた場合(つまりθa=0)の解析結果が示されている。解析で設定した角度検出用磁石12は30×20×2mmの板状磁石である。また、本図は角度検出用磁石の表面からZ方向に10mmに位置する平面上の解析結果を示している。
【0016】
本図の中央付近の実線に囲まれた領域は、磁束密度が17.3mT以上となる。この領域では磁界の方向が基準方向に対して±1°の範囲内に収まっている。したがって、Bt=17.3mT、δθb=1°とすると、実線内の領域を領域Aとみなすことができる。なお、
図2に示したように、移動体4の平面視において領域Aの中心を通るY方向の線を基準線L1とする。本実施形態では、基準線L1は移動体4の中心線に対応する。
【0017】
図4は、磁気センサ6の構成を表す図である。
図4(A)は直線軌道2aに配置される検出ヘッドを示す模式図であり、
図4(B)は角度センサの配列を表す拡大図である。
図4(A)に示すように、磁気センサ6Sは、移動体4の磁気媒体8を検出するための検出ヘッド18S(直線部検出ヘッド)を備える。ここで、直線軌道2aにおいて隣接する検出ヘッド18Sの番号を順に0,1,...,n,...,nmaxの添え字で示す(
図1参照)。複数の検出ヘッド18Sを特に区別しない場合には、添え字を省略する。
【0018】
検出ヘッド18Sは、インクリメンタルセンサユニット20、アブソリュートセンサユニット22および角度センサユニット24の3系列のセンサユニットを備えている。いずれのセンサユニットも検出ヘッド18Sの基準方向(X方向)に延在する。移動体4が検出ヘッド18Sと対向したとき、両者の基準方向は一致する。角度センサユニット24は、基準方向に等間隔で配列された複数の角度センサ25を含む。
【0019】
角度センサユニット24は、検出ヘッド18における基準方向の一端から他端にわたって設けられるが、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22は、検出ヘッド18Sにおける中央寄りに設けられる。基準方向にみて、角度センサユニット24はインクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22よりも大きいが、角度センサユニット24を構成する個々の角度センサ25は、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22よりも小さく、検出ヘッド18に配置される数は多い。移動体4がどこに位置していても少なくとも1個の角度センサ25が領域Aに存在するように配置される必要があるため、角度検出用磁石12が
図2のような大きさである場合、
図4のように小さい角度センサ25が多数配置される構成となる。
【0020】
検出ヘッド18の基準方向の中央位置に基準線L2を設定すると、各センサユニットは、基準線L2に対してほぼ対称に設けられる。
【0021】
移動体4が検出ヘッド18Sと対向したとき、インクリメンタルセンサユニット20がインクリメンタルトラック14に対向し、アブソリュートセンサユニット22がアブソリュートトラック16に対向し、角度センサユニット24が角度検出用磁石12に対向する。そして、各センサユニットが、対応する磁気媒体8から発生する磁気信号を読み取る。すなわち、インクリメンタルセンサユニット20がインクリメンタルパターンを検出し、アブソリュートセンサユニット22がアブソリュートパターンを検出し、いずれかの角度センサ25が角度検出用磁石12の磁界の強さと方向を検出する。
【0022】
磁気センサ6Sは、インクリメンタルセンサユニット20とアブソリュートセンサユニット22の出力を組み合わせることで、移動体4と検出ヘッド18Sとの相対位置を検出できる。移動体4が隣接する検出ヘッド18Sの間を走行する際、隣接する検出ヘッド18Sの各センサユニットは、移動体4の各トラックから発生する磁場を検出し、それぞれ移動体4と検出ヘッド18Sの相対位置を検出できる。
【0023】
また、角度センサ25は、角度検出用磁石12から発生するXY平面上の磁界の方向と磁束密度の大きさを検出できる。
図4(B)に示すように、角度センサ25の感磁部分の中心を基準点Poとし、角度センサ25が0°を示すXY平面上の磁界の方向を基準方向(X方向)とする。角度センサ25の基準方向は、移動体4の基準方向と平行となる。XY平面上の磁界の方向、検出ヘッド18Sの内外、または種類を問わず、隣接する角度センサ25の間の領域を移動体4の角度検出用磁石12が通過する際、隣接する角度センサ25の双方が角度検出用磁石12の領域A(
図2参照)に入るように構成されている。
【0024】
図5は、曲線軌道2bに配置される検出ヘッドを模式的に表す部分拡大図である。
磁気センサ6Rは、曲線軌道2bに沿った検出ヘッド18R(曲線部検出ヘッド)を備える。ここで、曲線軌道2bにおいて、隣接する検出ヘッド18Rの番号を順に0,1,...,n,...,nmaxの添え字で示す(
図1参照)。また、検出ヘッド18Rの別を問わず、曲線軌道2bにおいて隣接する角度センサ25の番号を順に0,1,...,m,...,mmaxの添え字で示す(
図1参照)。なお、複数の角度センサ25を特に区別しない場合には、添え字を省略する。
【0025】
検出ヘッド18Rは、直線軌道2aにおけるものと同様に角度センサ25を有するが、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22は有していない。角度センサ25が、移動体4の角度検出用磁石12から発生するXY平面上の磁界の方向と強さ(磁束密度の大きさ)を検出する。
【0026】
移動体4が曲線軌道2b上を走行する際、角度センサ25の基準点Po(
図4(B)参照)は、その上を角度検出用磁石12が通過するように配置されている。移動体4の基準線L1と角度センサ25の基準点Poが重なり合う位置に移動体4があるとき、移動体4の基準方向と角度センサ25の基準方向は平行となるように構成されている。本実施形態では、これらの基準方向が曲線軌道2bの接線方向(接線に平行)となる。
【0027】
図1に示したように、角度センサ25R
0は直線軌道2aと曲線軌道2bとの接続部に位置する。一方、
図5に示すように、隣接する角度センサ25の間隔は、曲線軌道2bの中心に対する弧長の差にしてlcとする。検出ヘッド18Rの内外、または種類を問わず、角度検出用磁石12が隣り合った角度センサ25の間の領域を走行する際、隣り合った角度センサ25の双方が角度検出用磁石12の領域A(
図2参照)に入るように構成されている。
【0028】
図6は、磁気センサ6の機能を表すブロック図である。
磁気センサ6の各構成要素は、プロセッサなどの電子回路およびメモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線により実現される。また、磁気センサ6の一部の機能は、記憶装置に格納され、演算器において実行されるソフトウェアとして実現されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0029】
磁気センサ6は、検出ヘッド18で検出した信号を処理する外部インタフェース部100を含む。外部インタフェース部100は、有線又は無線により外部装置120とデータの送受を実行する。軌道2には複数の磁気センサ6が配列されるが、その磁気センサ6ごとに固有の識別情報(以下「センサID」ともいう)を有する。外部装置120は、センサIDに基づいてセンサ情報の送信元の磁気センサ6とその位置(軌道2における位置)を特定できる。
【0030】
外部インタフェース部100は、位置検出部110およびID判定部112を含む。位置検出部110は、角度センサ25が検出した磁束密度の大きさ(磁界の強さ)に基づき移動体4の存在を特定し、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22の検出値に基づいて移動体4の詳細位置を特定する。
【0031】
上述のとおり、位置検出部110は、直線軌道2aにおいては、角度センサ25が検出した磁束密度の大きさに基づき移動体4の存在を特定し、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22の検出値に基づいて移動体4の詳細位置を特定する。すなわち、角度センサ25が検出した磁束密度が所定値以上であるときに、検出ヘッド18上に移動体4が存在すると判定する。そして、検出されたインクリメンタルパターンとアブソリュートパターンとの組合せにより、移動体4の正確な位置を特定する。また、位置検出部110は、曲線軌道2bにおいては、角度センサ25が検出した磁束密度の大きさに基づき移動体4のおおよその位置を特定する。
【0032】
このように位置検出部110により移動体4の存在が特定されたとき、ID判定部112は、角度検出用磁石12の検出値に基づいて移動体4のID(以下「移動体ID」ともいう)を判定する。すなわち、角度検出用磁石12により発生する磁界の方向に基づいて移動体IDを特定する、つまり複数の移動体4のいずれであるかを特定する。外部インタフェース部100は、特定された移動体4の移動体IDおよび位置情報を外部装置120へ出力する。位置情報には、移動体IDの送信元である磁気センサ6のセンサIDが含まれる。これにより、外部装置120は、軌道2におけるどの位置にいずれの移動体4が存在するかを判定することができる。
【0033】
以下、移動体4の位置検出方法について、より具体的に説明する。
上記構成により、曲線部を含む軌道2上を走行する移動体4のIDおよび軌道2上の座標(「軌道上座標」ともいう)を求めることができる。まず、位置検出部110が、移動体4の軌道上座標を求める。直線軌道2aではインクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22を用いて軌道上座標を求める。曲線軌道2bでは、移動体4の角度検出用磁石12が位置する角度センサ25を判定することで、軌道上座標を求める。
【0034】
移動体4が軌道2上を走行するとき、いずれか一つ又は二つの角度センサ25が角度検出用磁石12の領域Aに位置する。これは、角度センサ25が検出するXY平面上の磁束密度の大きさがBt以上であることによって判定できる。この判定のために、所定の判定テーブルが設定される。この判定テーブルは、角度センサ25で検出される磁束密度の大きさがBt以上となる場合について、これを検出する角度センサ25の組み合わせと、各組み合わせの場合の軌道上座標とが対応づけられている。
【0035】
移動体4が直線軌道2a上にある場合、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22から得られるスケール10と検出ヘッド18との相対位置pを、移動体4が位置する軌道上座標の特定に用いる。そのため、相対位置pの分解能が、軌道上座標Pの分解能となる。ここで、相対位置pは、移動体4の基準線L1と検出ヘッド18の基準線L2とが一致する位置を0とする。
【0036】
移動体4が曲線軌道2b上にある場合、角度センサ25上の角度検出用磁石12の有無によって軌道上座標を求める。そのため、領域A内にある角度センサ25が移り変わるごとに、分解能lcで軌道上座標が変化する。位置検出部110は、判定テーブルを参照して移動体4の軌道上座標を出力することで、連続性を保ちつつ、実際の軌道上の座標に沿った位置データを出力できる。
【0037】
次に、ID判定部112が移動体4のID(移動体ID)を求める。移動体IDは角度センサ25が検出するXY平面上の磁界の方向を用いて求める。ここでは、角度センサ25の感磁部分である基準点Poが移動体4の領域A内にある場合において、角度センサ25が検出する磁界の方向を考える。
【0038】
ID判定部112は、磁界の方向と角度センサ25の基準方向とのなす角θがθb(k)-360/2/kn<θ<θb(k)+360/2/knを満たす場合、移動体4のIDをkであると特定できる。ここで、移動体4の基準方向と角度センサ25の基準方向のなす角をθhとする。直線軌道2aに設けられた検出ヘッド18Sの場合、常にθh=0°である。
【0039】
移動体4が曲線軌道2bに設けられた検出ヘッド18の角度センサ25を通過する際に、角度センサ25が領域Aに描く軌道の長さを2×laとする。このとき、ある角度センサ25が領域A内にあるときのθhは、-la/r×180/π<θh<la/r×180/πを満たす。したがって、移動体4がどの軌道上に位置していても、θhは-la/r×180/π<θh<la/r×180/πを満たす。
【0040】
一方、上述のように、移動体4について磁界の方向との基準方向(X方向)とのなす角θaに関し、領域A内ではθb(k)-δθb<θa<θb(k)+δθbである。θ=θa+θhであるため、θはθb(k)-δθb-la/r×180/π<θ<θb(k)+δθb+la/r×180/πを満たす。
【0041】
以上より、δθb+la/r×180/π<360/2/knであるとき、全領域で移動体IDをkと特定できる。例えば、la=4mm、曲率半径r=360/π、kn=45とすると、δθb+la/r×180/π=3°、360/2/kn=4°となり、上記不等式の関係を満たすため、移動体IDをkであると特定できる。
【0042】
以上、実施形態に基づいて位置検出システム1を説明した。
本実施形態によれば、軌道2に沿って複数の磁気センサ6が配列される一方、移動体4にはその移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすように角度検出用磁石12が配置される。その所定角度が移動体4に固有となるように設定されるため、磁気センサ6の検出する磁束密度の大きさや磁界の向きなどの角度検出用磁石12の検出情報に基づいて移動体の存在と種別を特定できる。磁気センサ6による検出範囲が局所的であるため、移動体4の数にかかわらず、移動体4ごとの位置を検出しやすい。
【0043】
また、本実施形態では、可動側つまり移動体4側に磁気媒体8を設け、固定側つまり軌道2側に磁気センサ6を設けることとした。つまり、移動体4側が磁石のみとなる。このため、磁気センサ6への電力供給が容易になるといったメリットもある。高精度な設置を要するスケール10を軌道2の全長にわたって敷設するのではなく、移動体4側にのみ設ければよいため、設置コストを抑えるとともにメンテナンス性を高めることもできる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0045】
[変形例]
上記実施形態では、移動体4の磁気媒体8としてスケール10および角度検出用磁石12を設け、スケール10がインクリメンタルトラック14およびアブソリュートトラック16を含む構成を例示した。そして、直線軌道2aに敷設する検出ヘッド18Sにおいては、インクリメンタルセンサユニット20、アブソリュートセンサユニット22および角度センサユニット24を設ける一方、曲線軌道2bに敷設する検出ヘッド18Rにおいては、角度センサユニット24のみを設ける構成を例示した。
【0046】
これは、移動体4の位置検出精度に関し、直線軌道2aにおいては高精度を求める一方、曲線軌道2bにおいてはその要求を緩和したものである。位置検出システム1の適用対象や仕様によってはこのような設定が可能となる。曲線軌道2bについて直線軌道2aにおけるほどの精度を求めない場合、磁気センサの構成を簡素化することでコスト低減を図ることもできる。
【0047】
変形例においては、検出ヘッド18Sにおいてインクリメンタルセンサユニット20をなくし、アブソリュートセンサユニット22のみ設けてもよい。そして、磁気センサ6のスケール10がアブソリュートトラック16のみ含み、インクリメンタルトラック14を含まないものとしてもよい。少なくともアブソリュートパターンが形成されていれば、移動体4の基本位置を特定できる。
【0048】
あるいは、直線軌道2aであるか曲線軌道2bであるかを問わず、インクリメンタルセンサユニット20およびアブソリュートセンサユニット22をなくして角度センサユニット24のみ設けてもよい。そして、磁気センサ6の磁気媒体8として、インクリメンタルトラック14およびアブソリュートトラック16をなくし、角度検出用磁石12のみ設けてもよい。角度検出用磁石12の磁界の大きさに基づく移動体4の存在の特定が、移動体4のおおよその位置を特定することにつながるため、移動体4の位置検出精度がそれほど求められない場合、移動体4の位置検出と種別特定に際して角度検出用磁石12があれば足りる。
【0049】
逆に曲線軌道2bにおいても高精度な位置検出が求められる場合、検出ヘッド18Rについてもインクリメンタルセンサユニット20、アブソリュートセンサユニット22および角度センサユニット24を設けてもよい。特に曲線軌道2bの曲率半径rが大きい場合には、直線軌道2aと同様の構成を採用する利点がある。
【0050】
上記実施形態では、軌道2を直線軌道2aおよび曲線軌道2b(円軌道)で構成する構成を例示した。変形例においては、軌道を直線軌道のみ、曲線軌道のみ、円軌道以外の曲線軌道、あるいはこれらの組み合わせにより構成してもよい。
【0051】
上記実施形態では、移動体4の詳細位置を検出するセンサとして磁気センサを備える構成(インクリメンタルセンサユニット20、アブソリュートセンサユニット22等)を例示した。変形例においては、これを光センサに置き換えてもよい。その場合も角度検出用磁石12および角度センサ25による検出は行うものとする。
【0052】
上記実施形態では、曲線軌道2bにおける検出ヘッド18Rの向きを曲線軌道2bの接線方向としたが(
図5参照)、検出ヘッド18Rおよび角度センサ25の配置構成は、これに限られない。例えば、検出ヘッド18Rは接線方向に配置しなくとも、角度センサ25をその基準方向が接線方向となるように検出ヘッド18Rに配置してもよい。あるいは、角度センサ25を接線方向に配置しないものの、接線方向からのオフセットを考慮して角度検出用磁石12による磁界の方向を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 位置検出システム、2 軌道、2a 直線軌道、2b 曲線軌道、4 移動体、6 磁気センサ、8 磁気媒体、10 スケール、12 角度検出用磁石、14 インクリメンタルトラック、16 アブソリュートトラック、18 検出ヘッド、20 インクリメンタルセンサユニット、22 アブソリュートセンサユニット、24 角度センサユニット、25 角度センサ、100 外部インタフェース部、110 位置検出部、112 ID判定部、120 外部装置、L1 基準線、L2 基準線、Po 基準点。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って移動する移動体の位置を検出する位置検出システムであって、
前記移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすように前記移動体に配置される磁石と、
前記軌道に沿って配置され、それぞれが前記移動体と対向したときに前記磁石の磁界の方向を検出する複数のセンサと、
前記センサの検出情報に基づいて、前記軌道における前記移動体の位置を特定する位置検出部と、
前記移動体として、前記磁石の磁界の方向が互いに異なる複数の移動体と、
を備え、
前記センサは、前記移動体が対向したときに前記磁石の磁界の強さと方向を検出し、
前記位置検出部は、前記複数のセンサのいずれかにより検出される磁界の強さに基づいて前記複数の移動体のいずれかの存在を特定し、検出される磁界の方向に基づいて前記複数の移動体のいずれであるかを特定し、
直線軌道および曲線軌道において、前記磁石の磁界の方向と前記センサの基準方向のなす角の変化が、360°を前記複数の移動体の数で除した角度より小さくなるように前記センサが配置され、一つ又は二つの前記センサが一様に磁化された前記磁石の領域に位置する、位置検出システム。
【請求項2】
前記移動体における前記軌道との対向面に、着磁パターンを有するスケールがさらに設けられ、
前記軌道における前記スケールと対向可能な位置に、前記着磁パターンを読み取り可能な磁気センサが設けられ、
前記位置検出部は、前記磁気センサの検出情報に基づいて、前記移動体の詳細位置を特定する、請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
軌道上を移動する移動体であって、
前記軌道に沿って配置される複数のセンサと対向可能な対向面と、
前記対向面に設けられ、前記センサにより磁界の方向が検出される磁石と、
を備え、
前記移動体における前記軌道との対向面に、着磁パターンを有するスケールがさらに設けられ、
前記着磁パターンはインクリメンタルパターンとアブソリュートパターンが設けられ、
前記磁石は、前記移動体の移動方向に対して磁界の方向が所定角度をなすよう、前記移動体に固有の角度で前記対向面に配置されている、移動体。