IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

特開2024-51222高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
<>
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図1
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図2
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図3
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図4
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図5
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図6
  • 特開-高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051222
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 31/02 20060101AFI20240404BHJP
   C10B 47/20 20060101ALI20240404BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20240404BHJP
   C10B 3/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C10B31/02
C10B47/20
C10B53/08
C10B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157267
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めること可能な高炉用原料製造方法及び高炉用原料製造装置を提供する。
【解決手段】 高炉用原料製造装置は、乾留炉本体と、前記乾留炉本体の上方に設けられかつ、前記乾留炉本体に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する。前記乾留炉本体は、その壁部に固定される固定部、前記固定部に基端が固定されかつ、前記壁部から離れる方向に伸縮自在に形成されている伸縮部及び、前記伸縮部の先端に設けられているプレート部を含む平準部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾留炉本体と、前記乾留炉本体の上方に設けられかつ、前記乾留炉本体に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する高炉用原料製造装置において、
前記乾留炉本体は、その壁部に固定される固定部、前記固定部に基端が固定されかつ、前記壁部から離れる方向に伸縮自在に形成されている伸縮部及び、前記伸縮部の先端に設けられているプレート部を含む平準部を有する高炉用原料製造装置。
【請求項2】
前記伸縮部は、水平方向に沿って伸縮する請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項3】
前記乾留炉本体は、その奥行方向において互いに対向して配置されている一対の壁部を有し、
前記伸縮部は、前記奥行方向に伸縮する請求項1又は2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項4】
前記装入シュートは、前記一対の壁部のうちの一方に設けられ、
前記伸縮部は、前記装入シュートが設けられている一方の前記壁部から前記一対の壁部が互いに対向する方向に伸縮する請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項5】
前記装入シュートから前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さと、前記一対の壁部間の距離の関係が次式を満たす、請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
D/WA≦0.5
D:装入シュートの開口端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
【請求項6】
前記一対の壁部間の距離と、前記平準部が伸長した際の前記プレート部から前記プレート部と対向する前記壁部までの距離と、が次式を満たす、請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
0.2≦WB/WA≦0.4
WA:一対の壁部間の距離
WB:平準部が伸長した際のプレート部からプレート部と対向する壁部までの距離
【請求項7】
前記一対の壁部間の距離と、前記平準部が伸長した際の前記プレート部から前記プレート部と対向する前記壁部までの距離と、が次式を満たす、請求項4又は5に記載の高炉用原料製造装置。
0.2≦WB/WA≦0.4
WA:一対の壁部間の距離
WB:平準部が伸長した際のプレート部からプレート部と対向する壁部までの距離
【請求項8】
前記一対の壁部間の距離と、前記プレート部の下端から前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
0.05≦d/WA≦0.15
d:プレート部の下端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
【請求項9】
前記一対の壁部間の距離と、前記プレート部の下端から前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項4~6のいずれかに記載の高炉用原料製造装置。
0.05≦d/WA≦0.15
d:プレート部の下端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
【請求項10】
前記一対の壁部間の距離と、前記プレート部の下端から前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項7に記載の高炉用原料製造装置。
0.05≦d/WA≦0.15
d:プレート部の下端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
【請求項11】
請求項1又は2に記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する、高炉用原料製造方法。
【請求項12】
前記乾留炉本体に前記炭素含有物質を供給する供給ステップと、
前記平準部を伸縮させる平準化ステップと、を有し、
前記供給ステップは、2回以上実行され、
前記平準化ステップは、前記供給ステップが実行されてから、次の前記供給ステップが実行されるまでの間に実行される請求項11に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型コークス、特にフェロコークス等の高炉において使用される高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、鉄鋼業界においてCOガスの発生量の低減が求められている。このため、化石燃料の使用量の削減は、急務となっている。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することにより、溶銑を製造している。そして、コークス原単位の低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法として、竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉が開示されている。竪型乾留炉におけるフェロコークスの製造方法は、装入装置を用いて炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むと共に成型物を乾留しフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ゾーンにおいて冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有している。
【0004】
乾留工程では、乾留ゾーンの中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーンの下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを、それぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。冷却工程では、冷却ゾーンの下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことで、フェロコークスの冷却を行う。
【0005】
ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくする必要がある。一般的に、装入物は、斜めに傾いた装入シュートを用いて斜め方向を装入方向として装入されるが、加熱ガスおよび冷却ガスは、竪型乾留炉の奥行方向(装入物の装入方向の水平成分に平行)に噴射されるため、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において奥行方向と直交する方向)を長い内寸として構成し、大きな容積を確保している。
【0006】
また、特許文献2には、材料の均一装入(搬送)方法として、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで、材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-057970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、奥行方向に比べて炉幅方向のサイズを大きくした構造を有する竪型乾留炉では、炉幅方向のサイズに対応して炭素含有物質を均等に分散させるために、装入シュートを炉幅方向の全ての位置に対応するよう多数配置することが困難である。一方、成型物と装入シュートの壁面とが衝突すること又は、成型物同士が衝突することで生成した粉体は偏析しやすく、竪型乾留炉の炉内底部において、装入シュート側に密集する傾向にある。これは、装入シュート内を通過する過程で、装入物中の粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、乾留炉へ到達するまでに装入物が成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離することを原因とする。1トンの成型物を装入した場合、乾留炉内に突入する際の装入物の厚みは、最大で150mm程度になるが、成型物はその下側に存在する粉体分高い位置から装入されるため、装入口から離れた位置まで飛来しやすい一方で、下層の粉体は装入口近傍に落下する。
【0009】
また、竪型乾留炉の炉内底部において、堆積した成型物は、安息角に応じて形成された山形の斜面となる。そして、形成された山形の斜面は、頂部に近くなる程傾斜が大きくなる。そのため、粉体は、装入口から離れた位置に着地した場合であっても、装入口側に多少押し戻されて静止する。よって、粉体は、着地してから静止するまでの移動距離が大きくなる。即ち、成型物による山形の斜面は、乾留炉の奥行方向の分散を低減させ、粉体の著しい偏在を引き起こす。粉体の偏析によって、炉内のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2に開示された分散誘導部は、粉体の飛距離に影響しないため、当該分散誘導部を設置しても、装入口側の粉体偏析を解消できない。
【0011】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善する、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0013】
[1]
乾留炉本体と、前記乾留炉本体の上方に設けられかつ、前記乾留炉本体に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する高炉用原料製造装置において、
前記乾留炉本体は、その壁部に固定される固定部、前記固定部に基端が固定されかつ、前記壁部から離れる方向に伸縮自在に形成されている伸縮部及び、前記伸縮部の先端に設けられているプレート部を含む平準部を有する高炉用原料製造装置。
[2]
前記伸縮部は、水平方向に沿って伸縮する[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[3]
前記乾留炉本体は、その奥行方向において互いに対向して配置されている一対の壁部を有し、
前記伸縮部は、前記奥行方向に伸縮する[1]又は[2]に記載の高炉用原料製造装置。
[4]
前記装入シュートは、前記一対の壁部のうちの一方に設けられ、
前記伸縮部は、前記装入シュートが設けられている一方の前記壁部から前記一対の壁部が互いに対向する方向に伸縮する[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[5]
前記装入シュートから前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さと、前記一対の壁部間の距離の関係が次式を満たす、[4]に記載の高炉用原料製造装置。
D/WA≦0.5
D:装入シュートの開口端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
[6]
前記一対の壁部間の距離と、前記平準部が伸長した際の前記プレート部から前記プレート部と対向する前記壁部までの距離と、が次式を満たす、[3]~[5]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置。
0.2≦WB/WA≦0.4
WA:一対の壁部間の距離
WB:平準部が伸長した際のプレート部からプレート部と対向する壁部までの距離
[7]
前記一対の壁部間の距離と、前記プレート部の下端から前記乾留炉本体に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、[3]~[6]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置。
0.05≦d/WA≦0.15
d:プレート部の下端から装入物の頂点までの高さ
WA:一対の壁部間の距離
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する、高炉用原料製造方法。
[9]
前記乾留炉本体に前記炭素含有物質を供給する供給ステップと、
前記平準部を伸縮させる平準化ステップと、を有し、
前記供給ステップは、2回以上実行され、
前記平準化ステップは、前記供給ステップが実行されてから、次の前記供給ステップが実行されるまでの間に実行される[8]に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の竪型乾留炉の一例を示す側面模式図である。
図2】本発明の一実施形態である竪型乾留炉を示す側面模式図である。
図3】平準化ステップにおける平準部の動作態様を示す説明図である。
図4】平準化ステップが実行された後の供給ステップの態様を示す説明図である。
図5】実施例1における実験結果を示すグラフである。
図6】実施例2における実験結果を示すグラフである。
図7】実施例3における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した成型コークスの一種であるフェロコークスを製造する場合を例に、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1を参照して、従来の竪型乾留炉100の構成について説明する。図1は、竪型乾留炉100の側面模式図を示す。以下の説明において「装入物」は、フェロコークスを製造するための「炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物」に限らず、「炭素含有物質を含む成型物」も含んでよい。即ち、少なくとも炭素含有物質を含む成型物であればよい。「装入物」は、「成型物」と、「成型物」に付着又は分離した「粉体」とが含まれる。また、「高炉用原料」は、フェロコークスを含む「コークス」を意味する。
【0018】
竪型乾留炉100は、装入シュート10と、装入ゲート20と、拡散部30と、乾留炉本体70とを有する。先ず、炭素含有物質(石炭)と鉄含有物質(鉄鉱石)とを含有する成型物を含む装入物は、乾留炉本体の上方に設けられた装入シュート10に供給される。装入物は、装入ゲート20の閉鎖(図中の一点鎖線を参照)により、一旦、装入シュート10の内部(装入シュート10の途中)に蓄積される。装入物は、装入ゲート20の開放(図中にて実線で表示)により、乾留炉本体70に向けて装入シュート10の内部を通過する。装入物は、装入シュート10の拡散部30を通過することで、装入シュート10の内部に拡がるように分散される。装入物は、装入シュート10の内部を通過した後、乾留炉本体70の内部に堆積する。装入物は、乾留炉本体70の内部において、安息角に応じた山形を形成する。
【0019】
ここで、先述した通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、乾留炉本体70に到達するまでに、装入シュート10の内部において、成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離した状態となる。よって、図1に示す通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、成型物層40及び粉体層50に分離しつつ乾留炉本体70の内部に落下する。このため、乾留炉本体70の内部に堆積した装入物60は、成型物と粉体とが偏在した状態となる。この偏在により、従来の竪型乾留炉100においては、乾留炉本体70の内部のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じていた。
【0020】
<平準部等の構成>
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態である竪型乾留炉11の構成について説明する。図2は、高炉用原料製造装置12としての竪型乾留炉11の側面模式図である。図2に示す竪型乾留炉11は、図1に示した竪型乾留炉100に対して、平準部80を更に備える。
【0021】
図2(a)は、竪型乾留炉11に先行装入物が装入された状態を示す。図2(b)は、竪型乾留炉11の平準部80の動作態様を示す。図2(c)は、平準部80の平準動作が行われた先行装入物の上に、後行装入物が装入される態様を示す。
【0022】
図2に示す通り、乾留炉本体7は、奥行方向Sにおいて互いに対向する一対の壁部7aを有する。乾留炉本体7の一方の壁部7aには、平準部80が設けられている。平準部80は、壁部7aに固定される固定部81、固定部81に基端が固定されかつ、壁部7aから離れる方向に伸縮自在に形成されている伸縮部82及び、伸縮部82の先端に設けられているプレート部83を含む。尚、伸縮部82は、装入物6に向かって水平方向に沿って伸縮することが好ましい。
【0023】
平準部80は、装入物6に向かってプレート部83を移動させることにより、山形に形成された装入物6を均すことができる。そして、山形に形成された装入物6を均すことにより、鉛直方向及び水平方向において装入物6の「成型物」及び「粉体」が混合される。これにより、竪型乾留炉11の炉内における装入物6の分布、特に、装入物6に含まれる粉体の分布を改善できる。
【0024】
平準部80は、装入シュート1の開口端から装入物の頂点までの高さをDとし、一対の壁部7a間の距離をWAとした場合に、下記(1)式を満たすように設けられることが好ましい。平準部80は、下記(1)式の関係を満たす位置に設けられることで、山形に形成された装入物6を効率良く均す(崩す)ことができる。
D/WA≦0.5 (1)
【0025】
D/WAが0.5を超える場合、装入物の飛距離が長くなる傾向があるため、山形に形成された装入物6の頂点は、装入シュート10と対向する壁部7a側に偏って位置すると考えられる。このような場合には、平準部80は、装入シュート10と対向する壁部7aから装入シュート10が設けられている壁部7aに向かって伸縮するとよい。
【0026】
同様に、D/WAが0.5以下である場合、装入物の飛距離が短くなる傾向があるため、山形に形成された装入物6の頂点は、奥行方向Sにおける壁部7a間の中間か、装入シュート10が設けられている壁部7a側に偏って位置すると考えられる。このような場合には、平準部80は、装入シュート10が設けられている壁部7aから装入シュート10と対向する壁部7aに向かって伸縮するとよい。
【0027】
また、平準部80は、平準部80が伸長した際のプレート部83からプレート部83と対向する壁部7aまでの距離をWBとした場合に、下記(2)式を満たすように設けられることが好ましい。平準部80は、下記(2)式の関係を満たす位置に設けられることで、山形に形成された装入物6を効率良く均す(崩す)ことができる。
0.2≦WB/WA≦0.4 (2)
【0028】
WB/WAが0.4を超えると、平準部80を伸長させた際のプレート部83の停止位置が、距離WAの中間よりも固定部81が設けられている壁部7a側となり、山形に形成された装入物6を十分に均すことができない。
【0029】
WB/WAが0.2未満であると、平準部80を伸長させた際に、プレート部83と壁部7aとの間に装入物が挟まれる恐れがある。このような状態でさらに平準部80が伸長すると、装入物6に圧力が加わり、その結果、粉体が生成する恐れがある。
【0030】
さらに、平準部80は、プレート部83の下端から装入物の頂点までの高さをdとした場合に、下記(3)式を満たすように設けられることが好ましい。
0.05≦d/WA≦0.15 (3)
【0031】
d/WAが0.05未満の場合、装入物との接触により平準部80が受ける抵抗が小さくなり、山形の装入物6を十分に均すことができない。
【0032】
d/WAが0.15を超える場合、装入物との接触により平準部80が受ける抵抗が想定よりも大きくなり、平準部80の寿命が短くなる恐れがある。
【0033】
WB/WA、d/WAは、一定に設定するとよい。このように設定することで、平準部80を伸縮させる際の動作速度を変更したとしても、その影響を低減させることができる。尚、プレート部83の伸縮方向及び、WB/WA、d/WAが一定であれば、平準部80を伸縮させる際の動作速度の違いによる平準効果の差異はみられない。
【0034】
<高炉用原料製造方法>
次に、平準部80を有する竪型乾留炉11により、乾留炉本体7の内部に堆積した山形の装入物6を均す高炉用原料の製造方法について説明する。
【0035】
高炉用原料の製造方法は、乾留炉本体7に炭素含有物質を供給する供給ステップと、平準部80を伸縮させる平準化ステップと、を有する。供給ステップは、2回以上実行されかつ、平準化ステップは、1の供給ステップが実行されてから、次の供給ステップが実行されるまでの間に実行される。
【0036】
図3は、平準化ステップにおける平準部80の動作態様を示す。図3に示す通り、平準化ステップにおいては、平準部80のプレート部83は、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6に対して水平方向に伸縮する。これにより、山形に形成された装入物6を効率良く均す(崩す)ことが可能となっている。
【0037】
ここで、先述した通り、先に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「先行装入物」ともいう。)は、乾留炉本体7の内部において山形に形成されて堆積した状態となる。そして、その後に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「後行装入物」ともいう。)は、装入シュート1から乾留炉本体7の内部に向けて落下する際に、成型物層4と粉体層5との2層に分離した状態となっている。そして、後行装入物の粉体層5は、先行装入物によって形成された山形の頂部の近辺に着地した際に、山形の斜面を移動して静止するまでの移動距離が大きくなる。このため、後行装入物の粉体層5に含まれていた粉体の移動距離が大きくなると共に、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6における粉体の偏在が顕著なものとなってしまう。
【0038】
これに対し、本実施形態においては、先に竪型乾留炉11に装入された先行装入物が、乾留炉本体7の内部において山形に堆積した際に、当該先行装入物に対して平準部80を伸縮させることによって装入物を均す。
【0039】
図4は、平準化ステップが実行された後の供給ステップの態様を示している。図4に示すように、平準化ステップが実行された後に後行装入物が竪型乾留炉11に装入される。これにより、後行装入物が乾留炉本体7の内部に向けて落下した際に、先行装入物が山形に形成されていないので、斜面を移動することによる後行装入物に含まれる粉体の偏在が発生せず、粉体偏析を緩和することができる。
【0040】
以上のように本発明によれば、乾留炉本体7の壁部7aに平準部80を設けることにより、竪型乾留炉11の炉内における装入物6の分布、特に、装入物6に含まれる粉体の分布を改善することができる。
【実施例0041】
(試験例1:平準部の伸縮方向試験)
平準部の伸縮方向を変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系における装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を確認した。
【0042】
(高炉用原料製造装置)
試験系としてフェロコークス製造装置を模擬した試験用装置を用いた。具体的には、実機に設置されているものと同形状の装入シュート等を用い、装入シュートの先端側に乾留炉に見立てた乾留炉と同形状の回収ボックスを設置した。
【0043】
回収ボックスに平準部を設け、その動作の態様を変化させた。具体的には、平準部を動作させない場合(なし)、回収ボックスの奥行方向に直交する方向に設けられている一対の壁部のうちの一方に平準部を設け、他方の壁部に向けて伸縮させた場合(B1)、回収ボックスの奥行方向に直交する方向に設けられている一対の壁部のうちの他方に平準部を設け、一方の壁部に向けて伸縮させた場合(B2)、回収ボックスの奥行方向に設けられている一対の壁部のうちの一方に平準部を設け、他方の壁部に向けて伸縮させた場合(A1)、回収ボックスの奥行方向に設けられている一対の壁部のうちの他方に平準部を設け、一方の壁部に向けて伸縮させた場合(A2)、回収ボックスの奥行方向に設けられている一対の壁部のうちの他方に平準部を設け、一方の壁部に向けて伸縮させ、かつ水平方向と伸縮部のなす角度θが30°になるように傾斜させた場合(A3)の例に対して試験を行った。
【0044】
尚、D/WA:(装入シュートの開口端から装入物の頂点までの高さ)/(平準部の伸縮方向における壁部間の距離)は0.4に設定した。また、WB/WA:(プレート部83の先端から、プレート部83に対向する壁部7aまでの距離)/(平準部80の伸縮方向における壁部間の距離)は、0.3に設定した。さらにd/WA:(プレート部83の下端から装入物の頂点までの高さ)/(平準部80の伸縮方向における壁部間の距離)は0.10とした。また、平準部のプレート部は、厚み5mのアクリル製の平板を用いた。尚、平準部のプレート部の伸縮動作の速度を1m/sとした。
【0045】
装入物は、成型物を95質量%とし、粉体を5質量%とした。また1度の供給操作で回収ボックスに供給される装入物の量は、25kgとした。尚、本実施例においては、直径20mm以上の装入物を「成形物」、直径20mm未満の成型物を「粉体」とした。また、粒径の測定には、目開き20mmの角篩を使用した。すなわち、篩上に残ったものを成型物とし、篩下に落下したものを粉体とした。
【0046】
(測定)
平準部を伸縮させて、山形の装入物を均した後、装入物の5点(奥行方向)について各々の装入物の高さを測定し、当該測定結果からその高さの標準偏差を算出した。
【0047】
その後、2度目の装入物の供給操作を行った。さらに、上記の5か所において、サンプリングし粉体率を調査した。粉体率は、サンプルを目開き20mmの角篩で篩い、篩下に落下したサンプル(粉体)の重量割合を「粉体率」とした。また、最大粉体率は、これらの5点の粉体率を比較して得られる粉体率の最大値である。その結果を図5に示す。
【0048】
図5に示すように、B1,B2、A1,A2,A3のいずれの方向に平準部を動作させても、平準部を動作させない(なし)の場合よりも、「高さの標準偏差」及び、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0049】
また、A1,A2,A3のいずれの方向に平準部を動作させても、B1,B2の方向に平準部を動作させ場合よりも、「高さの標準偏差」及び、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0050】
さらに、A1,A2のいずれの方向に平準部を動作させても、A3の方向に平準部を動作させ場合よりも、「高さの標準偏差」について良好な結果が得られた。
【0051】
さらにまた、A2の方向に平準部を動作させた場合、A1の方向に平準部を動作させ場合よりも、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0052】
以上により、平準部の伸縮方向を装置の奥行方向に水平に動作させることで、効果的に山形の成型物(装入物)を均すことができることが確認された。これにより、2度目に供給された成型物に含まれる粉体が偏った位置に堆積されることを抑制できることが分かる。
【0053】
また、装入シュートが設けられている壁部から対向する壁部に向かって平準部を伸縮させることで、山形の成型物(装入物)を均しつつ、装入シュートの近傍に滞留した粉体をその伸長方向に押し出すことができる。その結果、成型物に含まれる粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することができる。
【0054】
(試験例2:平準部の伸長率試験)
平準部の伸長率を変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系における装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を確認した。尚、本試験例においては試験例1と同一の装置を用いた。また、本試験例においては試験例1と同様の方法で装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を測定した。さらに、平準部の伸縮方向は、水平方向とした。
【0055】
その結果を図6に示す。図6に示されるように、WB/WAの値が0.4を超えると、いずれも高さ標準偏差が60mmを超える結果となった。すなわち、WB/WAの値が0.4を超えると、山形の成型物(装入物)を十分に均すことが困難であることが分かった。また、WB/WAの値が0.4を超えると、最大粉体率も15%を超えており、平準部を稼働させない同比率が1.0の場合と同水準となった。したがって、同比率では、装入物に含まれる粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することが困難であることが分かった。
【0056】
また、WB/WAが0.2未満では、最大粉体率が15%以上になることが分かった。これは、プレート部と壁部との間に装入物が挟まれ、さらに圧力が加わることにより、装入物が破砕し粉体化したものと考えられる。以上により、平準部の伸長率は、0.2≦WB/WA≦0.4とすることが望ましい。
【0057】
(試験例3:平準部にかかる抵抗試験)
プレート部の下端から装入物の頂点までの高さdを変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系における装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を確認した。尚、本試験例においては試験例1と同一の装置を用いた。また、本試験例においては試験例1と同様の方法で装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を測定した。さらに、平準部は、WB/WAを0.3とし、その伸縮方向を水平方向とした。
【0058】
結果を図7に示す。図7に示すように、d/WAが0.05未満では、いずれも高さ標準偏差が60mmを超える結果となった。すなわち、d/WAが0.05未満では、山形の成型物(装入物)を十分に均すことが困難であることが分かった。
【0059】
また、d/WAが0.15を超えると、高さの標準偏差および最大粉体率は良好な結果が得られた。しかし、平準部にかかる負荷が高く、実験後の平準部には割れが確認された。
【0060】
以上のように、プレート部の下端から装入物の頂点までの高さdと、平準部の伸縮方向における壁部間の距離WAとの比率は、0.05≦d/WA≦0.15の範囲であることが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 装入シュート
4 成型物層
5 粉体層
6 装入物
7 乾留炉本体
7a 壁部
10 装入シュート
11 竪型乾留炉
12 高炉用原料製造装置
80 平準部
81 固定部
82 伸縮部
83 プレート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7