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特開2024-51223高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051223
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 31/02 20060101AFI20240404BHJP
   C10B 47/20 20060101ALI20240404BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20240404BHJP
   C10B 3/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C10B31/02
C10B47/20
C10B53/08
C10B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157268
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めること可能な高炉用原料製造方法及び高炉用原料製造装置を提供する。
【解決手段】 高炉用原料製造装置は、乾留炉と、前記乾留炉の上方に設けられかつ、前記乾留炉に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する。前記乾留炉は、壁部によって囲まれている収容部に向けてガスを吐出するガス噴出部を有する。前記ガス噴出部は、前記乾留炉の前記壁部に設けられている熱供給手段よりも上方でありかつ、前記装入シュートの下方の前記壁部に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾留炉本体と、前記乾留炉本体の上方に設けられかつ、前記乾留炉本体に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する高炉用原料製造装置において、
前記乾留炉本体は、壁部によって囲まれている収容部に向けてガスを吐出するガス噴出部を有し、
前記ガス噴出部は、前記乾留炉本体の前記壁部に設けられている熱供給手段よりも上方でありかつ、前記装入シュートの下方の前記壁部に設けられている高炉用原料製造装置。
【請求項2】
前記ガス噴出部は、前記乾留炉本体に堆積された前記炭素含有物質と接しない位置に前記ガスを吐出する吐出口が設けられ、
前記吐出口は、その少なくとも一部が、前記乾留炉本体に堆積された前記炭素含有物質の頂点よりも下方に位置する請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項3】
前記乾留炉本体は、その奥行方向において互いに対向して配置されている一対の壁部を有し、
前記ガス噴出部は、前記奥行方向に前記ガスを吐出する請求項1又は2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項4】
前記装入シュートは、前記一対の壁部のうちの一方に設けられ、
前記ガス噴出部は、前記装入シュートが設けられている一方の前記壁部から前記一対の壁部が互いに対向する方向に前記ガスを吐出する請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項5】
前記ガス噴出部は、前記ガスを15~20m/sの流速で吐出する請求項1又は2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項6】
前記ガス噴出部は、前記ガスを15~20m/sの流速で吐出する請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項7】
前記ガス噴出部は、前記ガスを15~20m/sの流速で吐出する請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項8】
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
【請求項9】
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
【請求項10】
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項5に記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
【請求項11】
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項6に記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
【請求項12】
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、請求項7に記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
【請求項13】
請求項1又は2に記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する、高炉用原料製造方法。
【請求項14】
前記乾留炉に前記炭素含有物質を供給する供給ステップと、
前記ガス噴出部から前記ガスを吐出させる平準化ステップと、を有し、
前記供給ステップは、2回以上実行され、
前記平準化ステップは、前記供給ステップが実行されてから、次の前記供給ステップが実行されるまでの間に実行される請求項13に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型コークス、特にフェロコークス等の高炉において使用される高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、鉄鋼業界においてCOガスの発生量の低減が求められている。このため、化石燃料の使用量の削減は、急務となっている。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することにより、溶銑を製造している。そして、コークス原単位の低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法として、竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉が開示されている。竪型乾留炉におけるフェロコークスの製造方法は、装入装置を用いて炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むと共に成型物を乾留しフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ゾーンにおいて冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有している。
【0004】
乾留工程では、乾留ゾーンの中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーンの下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを、それぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。冷却工程では、冷却ゾーンの下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことで、フェロコークスの冷却を行う。
【0005】
ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくする必要がある。一般的に、装入物は、斜めに傾いた装入シュートを用いて斜め方向を装入方向として装入されるが、加熱ガスおよび冷却ガスは、竪型乾留炉の奥行方向(装入物の装入方向の水平成分に平行)に噴射されるため、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において奥行方向と直交する方向)を長い内寸として構成し、大きな容積を確保している。
【0006】
また、特許文献2には、材料の均一装入(搬送)方法として、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで、材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-057970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、奥行方向に比べて炉幅方向のサイズを大きくした構造を有する竪型乾留炉では、炉幅方向のサイズに対応して炭素含有物質を均等に分散させるために、装入シュートを炉幅方向の全ての位置に対応するよう多数配置することが困難である。一方、成型物と装入シュートの壁面とが衝突すること又は、成型物同士が衝突することで生成した粉体は偏析しやすく、竪型乾留炉の炉内底部において、装入シュート側に密集する傾向にある。これは、装入シュート内を通過する過程で、装入物中の粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、乾留炉へ到達するまでに装入物が成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離することを原因とする。1トンの成型物を装入した場合、乾留炉内に突入する際の装入物の厚みは、最大で150mm程度になるが、成型物はその下側に存在する粉体分高い位置から装入されるため、装入口から離れた位置まで飛来しやすい一方で、下層の粉体は装入口近傍に落下する。
【0009】
また、竪型乾留炉の炉内底部において、堆積した成型物は、安息角に応じて形成された山形の斜面となる。そして、形成された山形の斜面は、頂部に近くなる程傾斜が大きくなる。そのため、粉体は、装入口から離れた位置に着地した場合であっても、装入口側に多少押し戻されて静止する。よって、粉体は、着地してから静止するまでの移動距離が大きくなる。即ち、成型物による山形の斜面は、乾留炉の奥行方向の分散を低減させ、粉体の著しい偏在を引き起こす。粉体の偏析によって、炉内のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2に開示された分散誘導部は、粉体の飛距離に影響しないため、当該分散誘導部を設置しても、装入口側の粉体偏析を解消できない。
【0011】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善する、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0013】
[1]
乾留炉本体と、前記乾留炉本体の上方に設けられかつ、前記乾留炉本体に炭素含有物質を供給する装入シュートと、を有する高炉用原料製造装置において、
前記乾留炉本体は、壁部によって囲まれている収容部に向けてガスを吐出するガス噴出部を有し、
前記ガス噴出部は、前記乾留炉本体の前記壁部に設けられている熱供給手段よりも上方でありかつ、前記装入シュートの下方の前記壁部に設けられている高炉用原料製造装置。
[2]
前記ガス噴出部は、前記乾留炉本体に堆積された前記炭素含有物質と接しない位置に前記ガスを吐出する吐出口が設けられ、
前記吐出口は、その少なくとも一部が、前記乾留炉本体に堆積された前記炭素含有物質の頂点よりも下方に位置する[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[3]
前記乾留炉本体は、その奥行方向において互いに対向して配置されている一対の壁部を有し、
前記ガス噴出部は、前記奥行方向に前記ガスを吐出する[1]又は[2]に記載の高炉用原料製造装置。
[4]
前記装入シュートは、前記一対の壁部のうちの一方に設けられ、
前記ガス噴出部は、前記装入シュートが設けられている一方の前記壁部から前記一対の壁部が互いに対向する方向に前記ガスを吐出する[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[5]
前記ガス噴出部は、前記ガスを15~20m/sの流速で吐出する[1]~[4]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置。
[6]
前記ガス噴出部は、前記ガスを吐出する吐出口を有し、
前記一対の壁部間の距離と、前記ガス噴出部の前記吐出口の下端から前記乾留炉に供給された前記炭素含有物質の装入物の頂点までの高さが、が次式を満たす、[3]~[5]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置。
0.07≦d/W≦0.15
d:ガス噴出部の吐出口の下端から装入物の頂点までの高さ
W:一対の壁部間の距離
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する、高炉用原料製造方法。
[8]
前記乾留炉に前記炭素含有物質を供給する供給ステップと、
前記ガス噴出部から前記ガスを吐出させる平準化ステップと、を有し、
前記供給ステップは、2回以上実行され、
前記平準化ステップは、前記供給ステップが実行されてから、次の前記供給ステップが実行されるまでの間に実行される[7]に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の竪型乾留炉の一例を示す側面模式図である。
図2】本発明の一実施形態である竪型乾留炉を示す側面模式図である。
図3】乾留炉本体におけるガス噴出部の動作態様を示す説明図である。
図4】乾留炉本体に成型物が供給される態様を示す説明図である。
図5】実施例1における実験結果を示すグラフである。
図6】実施例2における実験結果を示すグラフである。
図7】実施例3における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した成型コークスの一種であるフェロコークスを製造する場合を例に、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1を参照して、従来の竪型乾留炉100の構成について説明する。図1は、竪型乾留炉100の側面模式図を示す。以下の説明において「装入物」は、フェロコークスを製造するための「炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物」に限らず、「炭素含有物質を含む成型物」も含んでよい。即ち、少なくとも炭素含有物質を含む成型物であればよい。「装入物」は、「成型物」と、「成型物」に付着又は分離した「粉体」とが含まれる。また、「高炉用原料」は、フェロコークスを含む「コークス」を意味する。
【0018】
竪型乾留炉100は、装入シュート10と、装入ゲート20と、拡散部30と、乾留炉本体70とを有する。先ず、炭素含有物質(石炭)と鉄含有物質(鉄鉱石)とを含有する成型物を含む装入物は、乾留炉本体の上方に設けられた装入シュート10に供給される。装入物は、装入ゲート20の閉鎖(図中の一点鎖線を参照)により、一旦、装入シュート10の内部(装入シュート10の途中)に蓄積される。装入物は、装入ゲート20の開放(図中にて実線で表示)により、乾留炉本体70に向けて装入シュート10の内部を通過する。装入物は、装入シュート10の拡散部30を通過することで、装入シュート10の内部に拡がるように分散される。装入物は、装入シュート10の内部を通過した後、乾留炉本体70の内部に堆積する。装入物は、乾留炉本体70の内部において、安息角に応じた山形を形成する。
【0019】
ここで、先述した通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、乾留炉本体70に到達するまでに、装入シュート10の内部において、成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離した状態となる。よって、図1に示す通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、成型物層40及び粉体層50に分離しつつ乾留炉本体70の内部に落下する。このため、乾留炉本体70の内部に堆積した装入物60は、成型物と粉体とが偏在した状態となる。この偏在により、従来の竪型乾留炉100においては、乾留炉本体70の内部のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じていた。
【0020】
<ガス噴出部等の構成>
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態である竪型乾留炉11の構成について説明する。図2は、高炉用原料製造装置12としての竪型乾留炉11の側面模式図である。図2に示す竪型乾留炉11は、図1に示した竪型乾留炉100に対して、ガス噴出部80を更に備える。
【0021】
図2(a)は、竪型乾留炉11に先行装入物が装入された状態を示す。図2(b)は、竪型乾留炉11のガス噴出部80の動作態様を示す。図2(c)は、ガス噴出部80によってガスの吐出が行われた先行装入物の上に、後行装入物が装入される態様を示す。
【0022】
図2に示す通り、乾留炉本体7は、奥行方向Sにおいて互いに対向する一対の壁部7aを有する。乾留炉本体7の装入シュート1が設けられている一方の壁部7aには、ガス噴出部80が設けられている。ガス噴出部80は、装入物6に向かって(奥行方向Sに向かって)ガスを噴出することにより、山形に形成された装入物6を均すことができる。そして、山形に形成された装入物6を均すことにより、鉛直方向及び水平方向において装入物6の「成型物」及び「粉体」が混合される。これにより、竪型乾留炉11の炉内における装入物6の分布、特に、装入物6に含まれる粉体の分布を改善できる。
【0023】
壁部7aには、熱供給手段としての羽口14が設けられている。ガス噴出部80は、羽口14よりも上方でありかつ、装入シュート1の下方に設けられている。
【0024】
ガス噴出部80は、ガスの流路となる配管81と、配管81の先端でありかつ、壁部7aに開口して形成されている吐出口82と、を有する。吐出口82は、乾留炉本体7に堆積された装入物6と接しない位置に設けられている。吐出口82は、その少なくとも一部が、乾留炉本体7に堆積された装入物6の頂点よりも下方に位置する。
【0025】
ガス噴出部80から吐出されるガスは、特には限定されないが、装入物6及び、装入物6が乾留炉で乾留された高炉用原料に対する反応性が乏しいものが好ましく、N、CO、Ar等の不活性ガスを挙げることができる。
【0026】
配管81は、乾留炉本体7に吐出されるガスに対して耐食性を有することが好ましい。配管81の基端にはガス供給装置(図示せず)が接続されている。ガス供給装置としては、カードル等のガス供給設備を用いることができる。
【0027】
吐出口82は、装入物6に所定の風圧を供給可能に形成されている。吐出口82から吐出されるガスの風圧は、少なくとも、平均粒径が20mm以下の粉体を移動させることが可能な風圧であるとよい。尚、粉体の平均粒径は、例えば、メッシュによる篩分けによって測定することができる。
【0028】
上記を考慮すると、ガス噴出部80は、ガスを15~20m/sの流速で吐出口82から吐出するとよい。尚、配管81を流れるガスの流速及び流量は、公知の電磁弁等の圧力調整器を用いて調整することができる。このように、ガス噴出部80は、吐出口82から吐出されるガスの流速を調整するガス流速調整手段を有するとよい。
【0029】
吐出口82から吐出されるガスの流速が15m/s未満では所望の装入物6を十分に移動させることができず、山形の装入物6を均すことが困難である。また、吐出口82から吐出されるガスの流速が20m/sを超えると、ガスによって吹き飛ばされた装入物6が勢いよく壁部7aに接触し、その一部が粉体となる恐れがある。
【0030】
ガス噴出部80は、吐出口82の下端から装入物の頂点までの高さをdとし、一対の壁部7a間の距離をWとした場合に、下記(1)式を満たすように設けられることが好ましい。ガス噴出部80は、下記(1)式の関係を満たす位置に設けられることで、山形に形成された装入物6を効率良く均す(崩す)ことができる。
0.07≦d/W≦0.15 (1)
【0031】
d/Wが0.07未満である場合、ガス噴出部80から吐出されたガスと山形の装入物との接触が少なくなる。このため、ガス噴出部80から吐出されたガスによって移動される装入物6の量が少なくなり、山形の装入物6を十分に均すことができない。
【0032】
d/Wが0.15を超える場合、ガスの進行方向に存在する装入物6の量が多くなり、装入物6を移動させにくくなる。このため、山形の装入物6を均すために必要な時間が長くなる。当該時間が長くならないようにガス噴出部80から吐出されるガスの量を増加すると、運用コストが高くなるため好ましくない。
【0033】
<高炉用原料製造方法>
次に、ガス噴出部80を有する竪型乾留炉11により、乾留炉本体7の内部に堆積した山形の装入物6を均す高炉用原料の製造方法について説明する。
【0034】
高炉用原料の製造方法は、乾留炉本体7に炭素含有物質を供給する供給ステップと、ガス噴出部80からガスを吐出させる平準化ステップと、を有する。供給ステップは、2回以上実行されかつ、平準化ステップは、1の供給ステップが実行されてから、次の供給ステップが実行されるまでの間に実行される。
【0035】
図3は、平準化ステップにおけるガス噴出部80の動作態様を示す。図3に示す通り、平準化ステップにおいては、ガス噴出部80は、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6に対してガス83を噴出する。これにより、山形に形成された装入物6を効率良く均す(崩す)ことができる。
【0036】
ここで、先述した通り、先に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「先行装入物」ともいう。)は、乾留炉本体7の内部において山形に形成されて堆積した状態となる。そして、その後に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「後行装入物」ともいう。)は、装入シュート1から乾留炉本体7の内部に向けて落下する際に、成型物層4と粉体層5との2層に分離した状態となっている。そして、後行装入物の粉体層5は、先行装入物によって形成された山形の頂部の近辺に着地した際に、山形の斜面を移動して静止するまでの移動距離が大きくなる。このため、後行装入物の粉体層5に含まれていた粉体の移動距離が大きくなると共に、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6における粉体の偏在が顕著なものとなってしまう。
【0037】
これに対し、本実施形態においては、先に竪型乾留炉11に装入された先行装入物が、乾留炉本体7の内部において山形に堆積した際に、当該先行装入物に対してガス噴出部80からガスを吐出させることによって装入物6を均す。
【0038】
図4は、平準化ステップが実行された後の供給ステップの態様を示している。図4に示すように、平準化ステップが実行された後に後行装入物が竪型乾留炉11に装入される。これにより、後行装入物が乾留炉本体7の内部に向けて落下した際に、先行装入物が山形に形成されていないので、斜面を移動することによる後行装入物に含まれる粉体の偏在が発生せず、粉体偏析を緩和することができる。
【0039】
以上のように本発明によれば、乾留炉本体7の壁部7aにガス噴出部80を設けることにより、竪型乾留炉11の炉内における装入物6の分布、特に、装入物6に含まれる粉体の分布を改善することができる。
【実施例0040】
(試験例1:ガスの吐出方向試験)
ガスの吐出方向が装入物の凹凸の平準化に与える影響を調査した。すなわち、ガスの吐出方向を変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系において、装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を用いてその影響を評価した。
【0041】
(高炉用原料製造装置)
試験系としてフェロコークス製造装置を模擬した試験用装置を用いた。実機に設置されているものと同形状の装入シュートを用い、装入シュートの出側に乾留炉に見立てた乾留炉と同形状の回収ボックスを設置した。
【0042】
回収ボックスにガス噴出部を設け、その動作の態様を変化させた。具体的には、ガス噴出部からガスを吐出させない場合(なし)、回収ボックスの奥行方向に直交する方向に設けられている一対の壁部のうちの一方にガス噴出部を設け、他方の壁部に向けてガスを吐出させた場合(B1)、回収ボックスの奥行方向に直交する方向に設けられている一対の壁部のうちの他方にガス噴出部を設け、一方の壁部に向けてガスを吐出させた場合(B2)、回収ボックスの奥行方向に設けられている一対の壁部のうちの一方にガス噴出部を設け、他方の壁部に向けてガスを吐出させた場合(A1)、回収ボックスの奥行方向に設けられている一対の壁部のうちの他方にガス噴出部を設け、一方の壁部に向けてガスを吐出させた場合(A2)の例に対して試験を行った。
【0043】
尚、d/W:(吐出口82の下端から装入物の頂点までの高さ)/(ガス噴出部80のガスの吐出方向における壁部間の距離)は0.10とした。また、ガス噴出部から吐出されるガスの流速は、20m/sとした。ガス噴出部から吐出されるガスは、窒素を用いた。
【0044】
装入物は、成型物を95質量%とし、粉体を5質量%とした。また1度の供給操作で回収ボックスに供給される装入物の量は、25kgとした。尚、本実施例においては、直径20mm以上の装入物を「成型物」、直径20mm未満の装入物を「粉体」とした。また、粒径の測定には、目開き20mmの角篩を使用し、篩上に残ったものを粒状物とし、篩下に落下したものを粉体とした。
【0045】
(測定及び評価)
ガス噴出部からガスを吐出させて、装入物の凹凸を均した後、装入物の5点(奥行方向)について各々の装入物の高さを測定し、当該測定結果からその高さの標準偏差を算出した。
【0046】
その後、2度目の装入物の供給操作を行った。さらに、上記の5か所において、サンプリングし粉体率を調査した。粉体率は、サンプルを目開き20mmの角篩で篩い、篩下に落下したサンプル(粉体)の重量割合とした。また、最大粉体率は、これらの5点の粉体率を比較して得られる粉体率の最大値である。その結果を図5に示す。
【0047】
図5に示すように、B1,B2、A1,A2のいずれの方向にガスを吐出させても、ガス噴出部からガスを吐出しない(なし)の場合よりも、「高さの標準偏差」及び、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0048】
また、A1,A2のいずれの方向にガス噴出部を動作させても、B1,B2の方向にガス噴出部を動作させ場合よりも、「高さの標準偏差」及び、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0049】
さらにまた、A2の方向にガス噴出部を動作させた場合、A1の方向にガス噴出部を動作させ場合よりも、「最大粉体率」について良好な結果が得られた。
【0050】
以上の結果から、特に、ガスの吐出方向を装置の奥行方向とする(A1,A2)ことで、効果的に山形の成型物(装入物)を均すことができることが確認された。その結果、2度目に供給された装入物に含まれる粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することができることが分かる。
【0051】
また、特に、ガスの吐出を装入シュートが設けられている壁部から対向する壁部に向かって行うことで(A2)、山形の成型物(装入物)を均しつつ、装入シュートの近傍に滞留した粉体をその方向に押し出すことができる。その結果、装入物に含まれる粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することができる。
【0052】
(試験例2:ガスの流速試験)
次に、ガスの流速が装入物の凹凸の平準化に与える影響を調査した結果について説明する。ガスの流速試験では、ガスの流速を変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系において、装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を用いてその影響を評価した。尚、本試験例においては試験例1と同一の装置を用いた。また、本試験例においては試験例1と同様の方法で装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を測定した。その結果を図6に示す。
【0053】
尚、d/W:(吐出口82の下端から装入物の頂点までの高さ)/(ガス噴出部80のガスの吐出方向における壁部間の距離)は0.10とした。また、一対の壁部のうちの装入シュートが設けられている方にガス噴出部を設け、他方の壁部に向けてガスを吐出させた。
【0054】
図6に示すように、ガスの流速が15m/s未満であると、最大粉体率がガス噴出部からガスを噴出させない場合(ガス流速:0)よりも良好な結果が得られた。これに対して、ガスの流速が15m/s以上であると、標準偏差及び、最大粉体率がガス噴出部からガスを噴出させない場合(ガス流速:0)よりも良好な結果が得られた。
【0055】
さらに、ガスの流速が20m/sを超えると、最大粉体率が増加した。すなわち、当該流速域では、ガスによって吹き飛ばされた装入物が壁部に勢いよく接触し、砕けて粉体が増加することが確認された。
【0056】
以上の結果から、ガス噴出部から吐出されるガスの流速は、15~20m/sであることが好ましいことが確認された。
【0057】
(試験例3:ガスの噴射位置試験)
次に、ガス噴出部の配置関係が装入物の凹凸の平準化に与える影響を調査した結果を説明する。ガスの噴射位置試験では、吐出口の下端から装入物の頂点までの高さdを変えた複数の例について、乾留炉に見立てた試験系における装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を確認した。尚、本試験例においては試験例1と同一の装置を用いた。また、本試験例においては試験例1と同様の方法で装入物の高さの標準偏差及び、最大粉体率を測定した。さらに、ガス噴出部によるガスの吐出を水平方向とした。
【0058】
尚、ガス噴出部から吐出されるガスの流速は、20m/sとした。また、一対の壁部のうちの装入シュートが設けられている方にガス噴出部を設け、他方の壁部に向けてガスを吐出させた。
【0059】
結果を図7に示す。図7に示すように、d/Wが0.07未満では、いずれも高さ標準偏差が75mmを超える結果となった。すなわち、d/Wが0.07未満では、装入物の頂点とほぼ同じ高さに吐出口の下端が位置するため、山形の装入物を十分に均すことが困難であることが分かった。
【0060】
また、d/Wが0.07以上であると、高さの標準偏差および最大粉体率は良好な結果が得られた。ここで、d/Wが0.07以上である例において、山形の装入物を均すために要した時間は次の通りである。d/Wが0.10の場合、11秒であった。d/Wが0.15の場合、12秒であった。d/Wが0.18の場合、16秒であった。d/Wが0.20の場合、21秒であった。このように、d/Wが0.15を超えると、山形の装入物を均すために要した時間が長くなる傾向があることが分かった。
【0061】
以上の結果から、吐出口の下端から山形の装入物の頂点までの高さdと、ガス噴出部のガスの吐出方向における壁部間の距離Wとの比率は、0.07≦d/W≦0.15の範囲であることが好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1 装入シュート
4 成型物層
5 粉体層
6 装入物
7 乾留炉本体
7a 壁部
10 装入シュート
11 竪型乾留炉
12 高炉用原料製造装置
13 収容部
80 ガス噴出部
82 吐出口
83 ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7