(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051224
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 31/02 20060101AFI20240404BHJP
C10B 47/20 20060101ALI20240404BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20240404BHJP
C10B 3/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C10B31/02
C10B47/20
C10B53/08
C10B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157269
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めることが可能な高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供する。
【解決手段】乾留炉1に装入された炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、乾留炉1に装入される炭素含有物質のうちの粉体を、乾留炉1の内部において吸引して回収する回収装置90を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾留炉に装入された炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、
前記乾留炉に装入される前記装入物のうちの粉体を、前記乾留炉の内部において吸引して回収する回収装置を有している
高炉用原料製造装置。
【請求項2】
前記回収装置は、前記乾留炉の側壁部のうち、前記乾留炉内に堆積した前記装入物からなる堆積物の頂部よりも上側の側壁部に設けられている
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項3】
前記乾留炉の炉頂部における側壁部に接続されており、前記乾留炉に前記装入物を装入する装入シュートを更に有しており、
前記回収装置は、前記装入シュートが設けられている側壁部のうち、前記装入シュートよりも下側の側壁部であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記回収装置の少なくとも一部が、前記装入シュートと互いに重なり合う位置に設けられている
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項4】
前記乾留炉の炉頂部における側壁部に接続されており、前記乾留炉に前記装入物を装入する装入シュートを更に有しており、
前記回収装置は、前記装入シュートが設けられている側壁部のうち、前記装入シュートよりも下側の側壁部であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記回収装置の少なくとも一部が、前記装入シュートと互いに重なり合う位置に設けられている
請求項2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項5】
前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項6】
前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である
請求項2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項7】
前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である
請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項8】
前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である
請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項9】
前記装入シュート内に設けられており、前記装入物を一時的に滞留させる装入ゲートを更に有している
請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項10】
前記装入シュート内に設けられており、前記装入物を一時的に滞留させる装入ゲートを更に有している
請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する高炉用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型コークス、特にフェロコークス等の高炉において使用される高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、鉄鋼業界においてCO2ガスの発生量の低減が求められている。このため、化石燃料の使用量の削減は、急務となっている。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することにより、溶銑を製造している。そして、コークス原単位の低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法として、竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉が開示されている。竪型乾留炉におけるフェロコークスの製造方法は、装入装置を用いて炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むと共に成型物を乾留しフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ゾーンにおいて冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有している。
【0004】
乾留工程では、乾留ゾーンの中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーンの下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを、それぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。冷却工程では、冷却ゾーンの下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことで、フェロコークスの冷却を行う。
【0005】
ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくする必要がある。一般的に、装入物は、斜めに傾いた装入シュートを用いて斜め方向を装入方向として装入されるが、加熱ガスおよび冷却ガスは、竪型乾留炉の奥行方向(装入物の装入方向の水平成分に平行)に噴射されるため、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において奥行方向と直交する方向)を長い内寸として構成し、大きな容積を確保している。
【0006】
また、特許文献2には、材料の均一装入(搬送)方法として、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで、材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成型物は、シュートを介して乾留炉に供給される。この際、成型物は、シュートの壁面と衝突する等によって砕け、その一部が粉体となる。すなわち、成型物は、粒状物と、当該粒状物よりも体積が小さい粉体と、を含んでいる。
【0009】
粉体は、粒状物同士の隙間を通って沈降する。したがって、成型物は、粒状物層(上層)と粉体層(下層)の2層に分離した状態で乾留炉に供給される。言い換えれば、粒状物層は、粉体層よりも上に位置した状態で乾留炉に供給される。したがって、粒状物は、シュートから乾留炉に供給される際に粉体よりも遠くに堆積され、粉体は、シュート側に堆積される。
【0010】
乾留炉に成型物が供給されると、安息角に応じた堆積物の斜面が形成される。したがって、粉体は、堆積物の斜面に到達すると、その斜面を伝ってシュートの開口側に移動して静止する。特に粉体が堆積物の斜面の上方に到達すると、その斜面が急峻となるため、粉体がよりシュートの開口側に移動する傾向がある。これに対して粒状物は、粉体よりも遠くに移動するため、その多くは堆積物の頂点の近傍に到達する。すなわち、粒状物は、堆積物の斜面に一様に供給される。
【0011】
このように、成型物の粒状物と、粉体と、は乾留炉において偏った位置に堆積される傾向がある。したがって、粉体が偏った位置に堆積すると、当該領域の通気性が他の領域よりも悪化する。粉体が偏った位置に堆積された領域では、通気性の悪化により加熱ガスの供給量が減少し、当該領域に供給された成型物に乾留不良等の不具合が発生する可能性がある。
【0012】
成型物を乾留炉に供給する際に特許文献2に記載のバラ物誘導部を用いたとしても、このような粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することができない。このため、上記の問題の改善が望まれている。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めることが可能な高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]乾留炉に装入された炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、前記乾留炉に装入される前記装入物のうちの粉体を、前記乾留炉の内部において吸引して回収する回収装置を有している高炉用原料製造装置。
[2]前記回収装置は、前記乾留炉の側壁部のうち、前記乾留炉内に堆積した前記装入物からなる堆積物の頂部よりも上側の側壁部に設けられている上記の[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[3]前記乾留炉の炉頂部における側壁部に接続されており、前記乾留炉に前記装入物を装入する装入シュートを更に有しており、前記回収装置は、前記装入シュートが設けられている側壁部のうち、前記装入シュートよりも下側の側壁部であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記回収装置の少なくとも一部が、前記装入シュートと互いに重なり合う位置に設けられている上記の[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[4]前記乾留炉の炉頂部における側壁部に接続されており、前記乾留炉に前記装入物を装入する装入シュートを更に有しており、前記回収装置は、前記装入シュートが設けられている側壁部のうち、前記装入シュートよりも下側の側壁部であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記回収装置の少なくとも一部が、前記装入シュートと互いに重なり合う位置に設けられている
上記の[2]に記載の高炉用原料製造装置。
[5]前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である上記の[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[6]前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である上記の[2]に記載の高炉用原料製造装置。
[7]前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である上記の[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[8]前記回収装置内でのガス流速は、10m/s以上22m/s以下である上記の[4]に記載の高炉用原料製造装置。
[9]前記装入シュート内に設けられており、前記装入物を一時的に滞留させる装入ゲートを更に有している上記の[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[10]前記装入シュート内に設けられており、前記装入物を一時的に滞留させる装入ゲートを更に有している上記の[4]に記載の高炉用原料製造装置。
[11]上記の[1]ないし[10]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する高炉用原料製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乾留炉内に装入される炭素含有物質が有する成型物粒子と粉体とのうちの粉体が回収され、成型物が乾留炉されて高炉用原料が製造される。そのため、高炉用原料の品質及び生産性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の竪型乾留炉の一例を示す側面模式図である。
【
図2】本願発明の高炉用原料製造装置としての乾留炉の炉頂部を示す側断面図である。
【
図3】回収装置による粉体の回収を説明するための図である。
【
図4】成型物吸引率や粉体除去率と回収装置内のガス流速との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した成型コークスの一種であるフェロコークスを製造する場合を例に、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1を参照して、従来の高炉用原料製造装置としての竪型乾留炉100の構成について説明する。
図1は、竪型乾留炉100の側面模式図を示す。以下の説明において「装入物」は、フェロコークスを製造するための「炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物」に限らず、「炭素含有物質を含む成型物」も含んでよい。即ち、少なくとも炭素含有物質を含む成型物であればよい。「装入物」は、「成型物」と、「成型物」に付着又は分離した「粉体」とが含まれる。また、「高炉用原料」は、フェロコークスを含む「コークス」を意味する。
【0019】
竪型乾留炉100は、装入シュート10と、装入ゲート20と、拡散部30と、乾留炉本体70とを有する。先ず、炭素含有物質(石炭)と鉄含有物質(鉄鉱石)とを含有する成型物を含む装入物は、乾留炉本体の上方に設けられた装入シュート10に供給される。装入物は、装入ゲート20の閉鎖(図中の一点鎖線を参照)により、一旦、装入シュート10の内部(装入シュート10の途中)に蓄積される。装入物は、装入ゲート20の開放(図中にて実線で表示)により、乾留炉本体70に向けて装入シュート10の内部を通過する。装入物は、装入シュート10の拡散部30を通過することで、装入シュート10の内部に拡がるように分散される。装入物は、装入シュート10の内部を通過した後、乾留炉本体70の内部に堆積する。装入物は、乾留炉本体70の内部において、安息角に応じた山形を形成する。
【0020】
ここで、先述した通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、乾留炉本体70に到達するまでに、装入シュート10の内部において、成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離した状態となる。よって、
図1に示す通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、成型物層40及び粉体層50に分離しつつ乾留炉本体70の内部に落下する。このため、乾留炉本体70の内部に堆積した装入物60は、成型物と粉体とが偏在した状態となる。この偏在により、従来の竪型乾留炉100においては、乾留炉本体70の内部のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じていた。
【0021】
図2は、本願発明の高炉用原料製造装置としての乾留炉1の炉頂部を示す側断面図である。
図2に示すように、乾留炉1の奥行方向Sで互いに対向する乾留炉1の炉頂部の側壁部80,81のうち、一方の側壁部80に装入シュート10が接続されている。側壁部80における装入シュート10の下側であって、かつ、乾留炉1の内部に堆積した成型物DM(以下、堆積物と記す。)の頂部DMtopよりも上側の側壁部80に、回収装置90が接続されている。回収装置90は、装入シュート10から乾留炉1の内部に装入される成型物に含まれる粉体を吸引して回収するように構成されている。具体的には、側壁部80に、当該側壁部80を厚さ方向に貫通する吸引孔91が形成されており、その吸引孔91に吸引管92を介して回収装置90が接続されている。成型物に含まれる粉体については後述する。
【0022】
吸引孔91の形状は一例として、円形や矩形が挙げられ、ここに示す例では矩形を成している。吸引管92のその他の断面形状は、円筒状や角筒状であってもよい。吸引孔91の内寸あるいは吸引孔91の内接円の直径、および、吸引管92の内寸あるいは吸引管92の内接円の直径は、それらの内部を粉体が移動できるよう粉体の粒径よりも大きく設定される。また、吸引孔91の内寸や吸引孔91の内接円の直径、および、吸引管92の内寸や吸引管92の内接円の直径は、成型物の粒径程度の内径に設定されることが好ましく、成型物の粒径の1.5倍程度の内径に設定されることがより好ましい。
【0023】
回収装置90による吸引孔91や吸引管92内でのガス流速は、10m/s以上22m/sに設定されることが好ましい。ガス流速が10m/s未満の場合には、粉体を吸引して回収することができない可能性があり、ガス流速が22m/sよりも高くなると、粉体に加えて成型物も回収してしまう可能性があるので、これらを避けるためである。回収装置90は、上述したガス流速の範囲内で乾留炉1の内部のガスと共に粉体を吸引することができるように構成されていればよい。
【0024】
また、吸引孔91は、乾留炉1の上下方向から見て、吸引孔91の少なくとも一部と装入シュート10とが乾留炉1の図示しない幅方向で互いに重なり合う位置に設けられることが好ましい。これは、装入シュート10から乾留炉1の内部に装入され、落下状態の粉体を確実に吸引して回収するためである。また、吸引孔91の設置数は限定されないが、乾留炉1に複数の装入シュート10が設けられている場合には、装入シュート10ごとに少なくとも1つの吸引孔91を設置することが好ましい。乾留炉1の図示しない幅方向で、装入シュート10の全幅に亘って複数の吸引孔91を一定間隔で設置してもよい。
【0025】
なお、回収装置90は図示しない制御装置やオペレータによって駆動され、また、その動作が停止されるように構成されていてよい。また、回収装置90はガスと共に粉体を吸引するため、吸引管92の途中にガスと粉体とを分離して回収する図示しない分離装置が設けられていてよい。分離装置が設けられている場合には、分離して回収した粉体を成型装置によって成型物とし、乾留炉1の内部に装入してよい。
【0026】
次に、上述した構成の高炉用原料製造装置の作用・効果について、
図3を用いて説明する。装入ゲート20が閉じた状態の装入シュート10に、搬送装置(図示せず)によって1バッチ分の成型物が搬送される。上述したように、成型物は搬送の過程でその一部が粉体となってしまい、粉体は成型物同士の間の隙間を通って成型物の下側に移動する。そのため、装入シュート10内では、成型物層40と粉体層50との二層に分離された状態となっている。
【0027】
続いて、装入ゲート20が開放され、装入シュート10よりも低い位置にある乾留炉1の内部に成型物が装入される。装入ゲート20の開放はオペレータによって行ってもよいし、装入ゲート20の開閉を行うアクチュエータや当該アクチュエータの動作を制御する制御装置(それぞれ図示せず)を設けて行ってもよい。制御装置を設けた場合は、例えば予め設定された時間間隔や、制御装置に外部から入力された信号をトリガーとして、アクチュエータを駆動して装入ゲート20を開放してもよい。
【0028】
装入ゲート20の開放とほぼ同時に、回収装置90による吸引が開始される。回収装置90による吸引の開始は上述したようにオペレータや制御装置によって行ってよい。例えば装入ゲート20の開放をトリガーとして回収装置90を駆動してよい。装入ゲート20を通過した成型物は拡散部30の上を通過し、これにより、装入シュート10の内部に拡がるように分散されて乾留炉1の内部に装入される。この時、成型物は、粉体よりも高い位置から装入されるから、粉体よりも側壁部81側に落下する。
【0029】
これに対して粉体は側壁部80側に落下する。回収装置90は駆動されているため、装入シュート10から落下した粉体は、
図3に示すように、回収装置90によって吸引されて回収される。これにより、乾留炉1の内部に粉体が堆積することが抑制され、主として成型物が装入されて堆積し、堆積物DMが形成される。つまり、乾留炉1の内部において、装入シュート10側に粉体が偏って堆積することを防止もしくは抑制することができる。そのため、装入シュート10側に粉体が偏って堆積することによる堆積物DMの内部での通気性の悪化を抑制することができる。
【0030】
そして、乾留炉1の内部に1バッチ分の成型物が装入されると、装入ゲート20が閉じられて装入シュート10と乾留炉1との連通状態が遮断され、回収装置90による吸引が停止される。これらの動作は、上述したように、オペレータによって行ってもよく、あるいは、装入ゲート20や回収装置90の動作状態を制御する制御装置によって行ってもよい。または、図示しないタイマーによって装入ゲート20が開放されてからの経過時間を計測し、その経過時間が予め設定した時間を超えたときに、装入ゲート20を閉じ、また、回収装置90による吸引を停止してもよい。
【0031】
したがって、上述した構成の高炉用原料製造装置によれば、乾留炉1の全体でガスの通気性がほぼ一様になり、成型物や成型物粒子の乾留の度合いのばらつきを抑制することができる。その結果、フェロコークスの品質のばらつきを抑制して高品質のフェロコークスを得ることができ、ひいては、フェロコークスの生産性を向上することができる。
【実施例0032】
次に、本発明の作用・効果を確認するために行った実施例について説明する。この実施例では、
図2に示す高炉用原料製造装置を模擬した試験用装置を用いた。装入シュートは
図2に示す高炉用原料製造装置に設置されているものと同形状のものを用いた。その装入シュートの出口側に乾留炉に見立てた回収ボックスを設置した。また、回収ボックスの側壁面のうち、装入シュートが接続された部分の下側に、上述した回収装置90の吸引孔91とほぼ同様に構成した回収装置の吸引孔を接続した。すなわち、乾留炉1に見立てた回収ボックスの内部に、成型物と粉体とを含む原料を装入した際における粉体の回収効率を調査した。
【0033】
装入シュートから回収ボックスに成型物と粉体とを含む原料を25kg装入した。原料の装入中は、回収装置によって回収ボックス内のガスおよび装入シュートから装入される粉体の吸引を連続的に行った。回収ボックスに装入する原料中における粉体の割合は10%、成型物の割合は90%とした。この実施例では、便宜上、直径が20mm以上の粒子を「成型物」と定義し、直径が20mm未満の粒子を「粉体」と定義した。
【0034】
そして、回収装置の吸引管内のガス流速を変化させて、回収装置による成型物の吸引率、および、粉体の除去率をそれぞれ調査した。回収ボックスへの原料の装入完了後には、回収装置による吸引を停止した。成型物吸引率は、回収装置によって吸引されてしまった成型物の質量を、装入シュートから回収ボックス内に装入した原料の質量で除した値を百分率(質量%)で表した。粉体除去率は、回収装置によって除去された粉体の質量を、装入シュートから回収ボックス内に装入した原料の質量で除した値を百分率(質量%)で表した。
【0035】
図4は、成型物吸引率および粉体除去率と、回収装置内のガス流速との相関関係を示す図である。
図4に示すように、回収装置内のガス流速が0m/sから次第に増大するに伴って粉体除去率は急速に増大することが認められた。ガス流速がほぼ10m/s以上になると、粉体除去率の増大は、ガス流速が10m/s未満の場合と比較して緩やかになることが認められた。一方、成型物吸引率は、ガス流速が22m/sまでは0%であるが、これを超えると急速に増大することが認められた。この結果から、回収装置内のガス流速は10m/s以上22m/s以下に設定することが好ましいことがわかる。これに対し、ガス流速が10m/s未満の場合では、粉体の回収を十分に行うことができず、ガス流速が22m/sよりも高くなると、回収装置による回収物に成型物が混じるようになり、好ましくない。