(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051229
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両用シートの載置構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/015 20060101AFI20240404BHJP
B60N 2/005 20060101ALI20240404BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240404BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60N2/015
B60N2/005
B60N2/90
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157277
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 健士
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 三穂
(72)【発明者】
【氏名】寺田 栄
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】花澤 佑輝
(72)【発明者】
【氏名】元吉 菜緒子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 あおい
(72)【発明者】
【氏名】井上 順介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
【テーマコード(参考)】
3B087
3D203
【Fターム(参考)】
3B087DA02
3B087DE05
3D203AA02
3D203BB06
3D203CB24
3D203DA51
(57)【要約】
【課題】製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネルの振動を減衰させることができる車両用シートの載置構造を提供する。
【解決手段】シートクッション41は、本体パッド部411と外周縁部412と連結部413とが一体生成されてなる。外周縁部412は、平面視で本体パッド部411の外周縁部分からフロアパネル6に向けて突設され、下面がフロアパネル6に当接している。連結部413は、前方側の外周縁部412および後方側の外周縁部412のそれぞれに対して離間した箇所でフロアパネル6に向けて突設されている。連結部413は、フロアパネル6と本体パッド部411とを連結する。車両の前後方向において、前方側および後方側の各外周縁部412と連結部413との間の部分は、シートクッション41の下面41bがフロアパネル6の上面6aに対して隙間SPを空けて対向する離間部411aである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルと、
前記フロアパネル上に載置されるシートクッションを有する車両用シートと、
を備え、
前記シートクッションは、
座面を含む部分を構成する本体パッド部と、
該シートクッションを上下方向から平面視する場合に、前記シートクッションの外縁部に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突出され、前記フロアパネルに当接する外周縁部と、
前記平面視で前記外周縁部に対して内側に離間した部分に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突設され、前記本体パッド部と前記フロアパネルとを連結する連結部と、
を有し、
前記本体パッド部は、前記平面視で前記外周縁部と前記連結部との間の領域に、前記フロアパネルに対して隙間を空けて対向する離間部を有する、
車両用シートの載置構造。
【請求項2】
前記連結部は、0.01以上の損失係数を有する、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項3】
前記車両の前後方向において、前記連結部は、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の略中央位置に配設されている、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項4】
前記車両の車幅方向において、前記連結部は、前記シートクッションの略中央位置に配設されている、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項5】
前記車両の前後方向において、前記連結部は、前記シートクッションのヒップポイントよりも前方側に配設されている、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項6】
前記車両の前後方向において、前記連結部は、前記シートクッションの座面における略中央位置に配設されている、
請求項5に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項7】
前記連結部は、当該連結部のヤング率が前記本体パッド部のヤング率と略同じとなるよう形成されている、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項8】
前記車両の前後方向において、前記連結部の長さは、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定されている、
請求項1に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項9】
車両のフロアパネルと、
前記フロアパネル上に載置されるシートクッションを有する車両用シートと、
を備え、
前記シートクッションは、
座面を含む部分を構成するとともに、下面が前記フロアパネルに対して隙間を空けて対向するように離間して配される本体パッド部と、
該シートクッションを上下方向から平面視する場合に、前記シートクッションの外縁部に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突出され、前記フロアパネルに当接する外周縁部と、
を有し、
前記本体パッド部の下面と前記フロアパネルの上面との間であって、前記平面視で前記外周縁部と離間した部分に挿設され、前記本体パッド部と前記フロアパネルとを連結する連結部材をさらに備える、
車両用シートの載置構造。
【請求項10】
前記連結部材は、当該連結部材のヤング率が前記本体パッド部のヤング率よりも小さくなるように形成されている、
請求項9に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項11】
前記車両の前後方向において、前記連結部材の長さは、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定されている、
請求項9に記載の車両用シートの載置構造。
【請求項12】
前記シートクッションは、当該シートクッションの共振周波数の一部が前記フロアパネルの共振周波数の一部と略一致するように構成されている、
請求項1から請求項11の何れかに記載の車両用シートの載置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの載置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中に路面からの入力によってフロアパネルが共振した場合には、ロードノイズが発生する。このため、従来からフロアパネルの振動を減衰させるための種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、車両のフロアパネル上に載置されるシートクッションにおいて、当該シートクッションとフロアパネルとの隙間が無くなるように防振層を介挿させてなる構造が開示されている。特許文献1の防振層は、フロアパネルの上面における凹凸形状に対してシートクッションの下面が略隙間なく当接するように比較的厚膜に構成されている。また、特許文献1の防振層は、適用面積を拡大して高い防振防音効果が得られるようにすべくシートクッションとフロアパネルとの間の隙間全体を埋めるように挿設されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の防振層は、シートクッションとフロアパネルとの間の全体に介挿されるように構成されているため、当該防振層を備える構造では、車両の製造コストの上昇や、車両の重量増加を招いてしまう。
【0006】
また、フロアパネルの共振を抑制しようと、フロアパネルの上面に比較的厚膜の防振用シート(ゴムシートやオレフィンシートなど)を接合することも考えられるが、このような構造では、当初狙っていた共振周波数での振動減衰は達成できたとしても、重量増加による共振周波数がシフトする影響を受け、その近傍の周波数域で共振が生じてしまうことになる。即ち、フロアパネルに防振用のシートを接合したとしても、十分にフロアパネルの共振を抑えることができず、製造コストの上昇や重量増加を招くことにもなる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネルの振動を減衰させることができる車両用シートの載置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用シートの載置構造は、車両のフロアパネルと、前記フロアパネル上に載置されるシートクッションを有する車両用シートと、を備える。前記シートクッションは、座面を含む部分を構成する本体パッド部と、該シートクッションを上下方向から平面視する場合に、前記シートクッションの外縁部に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突出され、前記フロアパネルに当接する外周縁部と、前記平面視で前記外周縁部に対して内側に離間した部分に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突設され、前記本体パッド部と前記フロアパネルとを連結する連結部と、を有し、前記本体パッド部は、前記平面視で前記外周縁部と前記連結部との間の領域に、前記フロアパネルに対して隙間を空けて離間する離間部を有する。
【0009】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、本体パッド部からフロアパネルに向けて突設され、本体パッド部とフロアパネルとを連結する連結部をシートクッションが有するので、車両走行時等に発生するフロアパネルの振動エネルギが連結部を介して本体パッド部へと入力される。入力された振動エネルギは、本体パッド部の振動により消費される。この場合に、本体パッド部は、平面視で外周縁部と連結部との間の部分に離間部を有するので、フロアパネルから連結部を介して本体パッド部へと入力された振動エネルギによる本体パッド部の振動が阻害されることがない。
【0010】
しかも、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、シートクッションにおける本体パッド部の下面の一部からフロアパネルに向けて連結部を突設しているだけであるので、上記特許文献1に開示の構造のような製造コストの上昇および重量の増加を抑制することができる。
【0011】
従って、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネルの振動を減衰させることができる。
【0012】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記連結部は、0.01以上の損失係数を有する、としてもよい。
【0013】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部の損失係数が0.01以上に設定されているので、連結部の損失係数が0.01未満の場合に比べて、連結部での伸縮振動をもって顕著な振動減衰効果を得ることができる。
【0014】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の前後方向で、前記連結部は、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の略中央位置に配設されている、としてもよい。
【0015】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、車両の前後方向において、前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との略中央位置に連結部が配設されているので、連結部を介して入力された振動エネルギによる本体パッド部の振動が前後方向でアンバランスとなることが抑制される。よって、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部を介してシートクッションに振動エネルギが入力され、当該振動エネルギによる本体パッド部の振動でエネルギが消費されるのでフロアパネルの共振を抑制するのに好適である。
【0016】
なお、上記において「略中央位置」とは、前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との中央位置に対して、平面視において重複するように連結部が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0017】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の車幅方向で、前記連結部は、前記シートクッションの略中央位置に配設されている、としてもよい。
【0018】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、車幅方向におけるシートクッションの略中央位置に連結部が配設されているので、連結部を介して入力された振動エネルギによる本体パッド部の振動が車幅方向でアンバランスとなることが抑制される。よって、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部を介してシートクッションに振動エネルギが入力され、当該振動エネルギによる本体パッド部の振動でエネルギが消費されるのでフロアパネルの共振を抑制するのに好適である。
【0019】
なお、上記において、シートクッションの幅方向の中央位置に対して、平面視において重複するように連結部が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0020】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の前後方向で、前記連結部は、前記シートクッションのヒップポイントよりも前方側に配設されている、としてもよい。
【0021】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部をシートクッションのヒップポイント(人体臀部の最も荷重の掛かる箇所)よりも前方側に配設することとしているので、当該シートクッションに着座した乗員が連結部によって異物感を感じるのを抑制することができる。
【0022】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の前後方向で、前記連結部は、前記シートクッションの座面における略中央位置に配設されている、としてもよい。
【0023】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部をシートクッションの座面における前後方向の略中央位置に配設することとしているので、当該シートクッションに着座した乗員が連結部によって異物感を感じるのを抑制することができる。即ち、車両用シートにおいては、ヒップポイントはシートクッションの座面における中央位置よりも後方側となるので、連結部を座面における前後方向の略中央位置に配設することで、着座した乗員が連結部によって異物感を感じるのを抑制することができる。
【0024】
なお、上記において、シートクッションの座面における前後方向での中央位置に対して、平面視において重複するように連結部が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0025】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記連結部は、当該連結部のヤング率が前記本体パッド部のヤング率と略同じとなるよう形成されている、としてもよい。
【0026】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部のヤング率を本体パッド部のヤング率と略同じとしているので、車両の走行時において、当該シートに着座した乗員が連結部が配設されたことに起因して違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0027】
なお、上記において「略同じ」とは、連結部のヤング率が本体パッド部のヤング率に対して5%程度の差異を許容することを示す。
【0028】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の前後方向で、前記連結部の長さは、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定されている、としてもよい。
【0029】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部の前後方向長さを、前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定しているので、上記特許文献1に開示の構造のように前後方向での長い寸法(前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3を超える寸法)を有する連結部を採用する場合に比べて、製造コストの上昇および重量増加を抑制するのに有効である。
【0030】
本発明の別態様に係る車両用シートの載置構造は、車両のフロアパネルと、前記フロアパネル上に載置されるシートクッションを有する車両用シートと、を備える。前記シートクッションは、座面を含む部分を構成するとともに、下面が前記フロアパネルに対して隙間を空けて配される本体パッド部と、該シートクッションを上下方向から平面視する場合に、前記シートクッションの外縁部に配設され、前記本体パッド部から前記フロアパネルに向けて突出され、前記フロアパネルに当接する外周縁部と、を有する。そして、本態様に係る車両用シートの載置構造では、前記本体パッド部の下面と前記フロアパネルの上面との間であって、前記平面視で前記外周縁部と離間した部分に挿設され、本体パッド部と前記フロアパネルとを連結する連結部材をさらに備える。
【0031】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、本体パッド部とフロアパネルとを連結する連結部材を備えているので、車両走行時等に発生するフロアパネルの振動エネルギが連結部材を介して本体パッド部へと入力される。入力された振動エネルギは、本体パッド部の振動によって消費される。この場合に、本体パッド部は、外周縁部が配設された部分、および連結部材によってフロアパネルと連結された部分を除く領域において、下面がフロアパネルに対して対向するように離間しているので、フロアパネルから連結部材を介して本体パッド部へと入力された振動エネルギによる本体パッド部の振動が阻害されることがない。
【0032】
しかも、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、シートクッションにおける本体パッド部の一部とフロアパネル一部とを連結部材で連結しているだけであるので、上記特許文献1に開示の構造のような製造コストの上昇および重量の増加を抑制することができる。
【0033】
従って、上記態様に係る車両用シートの載置構造では、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネルの振動を減衰させることができる。
【0034】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記連結部材は、当該連結部材のヤング率が前記本体パッド部のヤング率よりも小さくなるように形成されている、としてもよい。
【0035】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部材のヤング率を本体パッド部のヤング率よりも小さく設定しているので、車両の走行時において、当該シートに着座した乗員が連結部材が配設されたことに起因して違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0036】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記車両の前後方向で、前記連結部材の長さは、前方側の前記外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定されている、としてもよい。
【0037】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、連結部材の前後方向長さを、前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3以下に設定しているので、上記特許文献1に開示の構造のように前後方向での長い寸法(前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3を超える寸法)を有する連結部材を採用する場合に比べて、製造コストの上昇および重量増加を抑制するのに有効である。
【0038】
上記態様に係る車両用シートの載置構造において、前記シートクッションは、当該シートクッションの共振周波数の一部が前記フロアパネルの共振周波数の一部と略一致するように構成されている、としてもよい。
【0039】
上記態様に係る車両用シートの載置構造では、シートクッションの共振周波数の一部とフロアパネルの共振周波数の一部とが略一致するように構成されているので、フロアパネルからシートクッションの本体パッド部へと入力される振動エネルギを本体パッド部で消費するのに有効である。
【0040】
なお、上記において「略一致」とは、シートクッションの共振周波数の一部とフロアパネルの共振周波数の一部とが一致する場合だけでなく、シートクッションの共振周波数の一部におけるピークの裾野に当たる周波数領域を含むことを意味する。例えば、シートクッションにおける共振周波数をFr、裾野領域をαとするとき、(Fr-α)から(Fr+α)までの範囲が「略一致」と規定することができる。「α」は、例えば、(Fr×√2)で規定することができる。
【発明の効果】
【0041】
上記の各態様に係る車両用シートの載置構造では、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネルにおける高い振動減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】実施形態に係る後席シート4を備える車両1の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【
図3】シートクッションの構成を示す断面図である。
【
図4】シートクッションにおける連結部の配置位置を示す下面図である。
【
図5】シートクッションにおけるヒップポイントの位置を示す上面図である。
【
図7】フロアパネルから本体パッド部への振動エネルギの伝達の様子を示す断面図である。
【
図8】フロアパネルのERP(等価放射エネルギ)を示すグラフである。
【
図9】フロアパネルにおける振動減衰効果を示すグラフである。
【
図10】(a)は比較例11に係るシートクッションの一部構造を示す断面図であり、(b)は実施例11,12に係るシートクッションの一部構造を示す断面図である。
【
図11】シートクッションの座面における圧力分布を示すグラフである。
【
図12】変形例に係る後席シートの載置構造を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0044】
[実施形態]
1.車両1の構成
本発明の実施形態に係る後席シート4を備える車両1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0045】
図1に示すように、車両1は、乗員が搭乗する車室1aと、車室1aの前方に配され、エンジンや電動モータからなる走行駆動源5を搭載する車両前部室1bとを有する。車室1aと車両前部室1bとの間は、ダッシュパネルで仕切られている。
【0046】
車両1の車室1aには、前席シート2,3と後席シート4とが配されている。前席シート2は、シートクッション21と、シートバック22と、ヘッドレスト23とを有する。前席シート3は、シートクッション31と、シートバック32と、ヘッドレスト33とを有する。後席シート4は、3人の搭乗者が着座できるシートであって、シートクッション41と、シートバック42と、ヘッドレスト43~45とを有する。なお、本実施形態における後席シートが「車両用シート」に該当する。
【0047】
2.フロアパネル6への後席シート4の載置構造
車両1においては、後席シート4のシートクッション41がフロアパネル6上に直に載置されている。後席シート4におけるシートクッション41の構造について、
図2を用いて説明する。なお、
図2は、
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【0048】
図2に示すように、後席シート4のシートクッション41は、本体パッド部411と、外周縁部412と、連結部413とが一体成形されてなる。シートクッション41における本体パッド部411は、例えば、ウレタン発泡材から構成されており、損失係数およびヤング率が次表に示すとおりである。
【0049】
【0050】
なお、本実施形態では、本体パッド部411、外周縁部412、および連結部413が一体成形されているので、連結部413の損失係数およびヤング率も上記の表1に示す数値と同様である。
【0051】
本体パッド部411は、車両1の前後方向および車幅方向(
図2の紙面に直交する方向)に拡がるように形成されている。本体パッド部411の上面の一部は、シートクッション41の座面41aを構成する。
【0052】
外周縁部412は、シートクッション41を上下方向の一方側から平面視した場合に、本体パッド部411の外周縁の近傍部分から下方に向けて(フロアパネル6に向けて)突出するように形成されている。そして、シートクッション41がフロアパネル6上に載置された状態で、外周縁部412の下面は、フロアパネル6の上面6aに当接する。
【0053】
連結部413は、シートクッション41を上下方向の一方側から平面視した場合に、前方側の外周縁部412および後方側の外周縁部412の双方から離間した位置において、本体パッド部411から下方に向けて(フロアパネル6に向けて)突出するように形成されている。そして、シートクッション41がフロアパネル6上に載置された状態で、連結部413の下面はフロアパネル6の上面に当接し、フロアパネル6と本体パッド部411との間を連結する。
【0054】
ここで、
図2の断面図で示すように、車両1の前後方向において、シートクッション41の下面41bは、前方側の外周縁部412と連結部413との間、および、後方側の外周縁部412と連結部413との間の部分でフロアパネル6の上面6aに対して隙間SPを空けて対向している。本体パッド部411において、下面41bがフロアパネル6の上面6aと隙間SPを空けて対向する部分が、離間部411aである。
【0055】
3.シートクッション41における連結部413の配設位置
シートクッション41における連結部413の配設位置について、
図3から
図5を用いて説明する。なお、
図4は、シートクッション41を下面41b側から見た下面図である。
【0056】
図3に示すように、シートクッション41は、上面の一部に座面41aを有する。座面41aは、シートクッション41の上面における前部における最も上方に突出した部分から、後部における最も下方に凹んだ部分までの領域に配されている。車両1の前後方向での座面41aの長さは、L1である。
【0057】
車両1の前後方向において、連結部413の中央部分を通る仮想線(座面中央線)LN1を引くとき、当該仮想線LN1は、座面41aの略中央位置に配される。即ち、車両1の前後方向において、連結部413の中央部分を通る仮想線LN1と座面41aの前端部との間の距離L11と、仮想線LN1と座面41aの後端部との距離L12とは略同じである。ここで、上記において、シートクッション41の座面41aにおける前後方向での中央位置に対して、平面視において重複するように連結部413が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0058】
また、
図3に示すように、本実施形態に係る後席シート4のシートクッション41では、車両1の前後方向において、仮想線LN1がヒップポイントHPよりも前方の位置に配されている(矢印A)。さらに、連結部413の後端についても、ヒップポイントHPよりも前方の位置に配されている。
【0059】
シートクッション41におけるヒップポイントHPの位置に係る規定について、
図5を用いて説明する。
【0060】
図5に示すように、後席シート4のシートクッション41には、座面41aの後端部分に2つのバックル収容部(凹部)41c,41dが設けられている。バックル収容部41c,41dは、シートベルトを使用しない場合に、バックルを収容しておく箇所である。そして、バックル収容部41c,41dには、ベルト挿通孔41e,41fが開けられている。ベルト挿通孔41e,41fは、バックルに接合されたシートベルトが挿通する孔である。
【0061】
2箇所のバックル収容部41c,41dに設けられたベルト挿通孔41e,41fを通り、車幅方向に延びる仮想線LN2を引く。この場合に、ヒップポイントHPは、座面41aの前後方向での中央を通る仮想線LN1と、仮想線LN2との間の領域(矢印B)に位置する。
【0062】
図3に戻って、本実施形態における後席シート4のシートクッション41においては、連結部413の全体が上記のように規定されるヒップポイントHPよりも前方に位置するように配設されている。
【0063】
図3に示すように、車両1の前後方向において、連結部413の中央部分を通る仮想線LN1は、前方側の外周縁部412の後端部と後方側の外周縁部412の前端部との間の略中央位置に配されている。即ち、車両1の前後方向において、連結部413の中央部分を通る仮想線LN1と前方側の外周縁部412の後端部との間の距離L13と、仮想線LN1と後方側の外周縁部412の前端部との間の距離L14とは略同じである。換言すると、距離L13および距離L14のそれぞれは、前方側の外周縁部412の後端部と後方側の外周縁部412の前端部との間の前後方向での距離L2の略1/2に設定されている。上記において、前方側の外周縁部412の後端部と後方側の外周縁部412の前端部との中央位置に対して、平面視において重複するように連結部413が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0064】
さらに、本実施形態に係る後席シート4では、車両1の前後方向における連結部413の長さL15が、前方側の外周縁部412の後端部と後方側の外周縁部412の前端部との間の前後方向での距離(寸法)L2の1/3以下に設定されている。
【0065】
次に、
図4に示すように、連結部413における車幅方向の中央部分から車両1の前後方向に延びる仮想線LN3を引く。この場合に、車幅方向において、仮想線LN3は、シートクッション41の略中央位置に位置するように設定されている。即ち、車両1の車幅方向において、仮想線LN3とシートクッション41の右端との車幅方向での距離W11と、仮想線LN3とシートクッション41の左端との車幅方向での距離W12とが略同じとなるように配設されている。換言すると、距離W11および距離W12のそれぞれは、シートクッション41の幅W1の略1/2に設定されている。上記において、シートクッション41の幅方向の中央位置に対して、平面視において重複するように連結部413が設けられていれば、「略中央位置」に該当することを示す。
【0066】
4.フロアパネル6における後席シート4の載置部分
フロアパネル6における後席シート4の載置部分について、
図6を用いて説明する。
【0067】
図6に示すように、車両1の後部は、左右それぞれにおいて、前後方向に延びるように設けられた後部サイドフレーム9,10と、互いに前後方向に間隔を空けて配され、それぞれが車幅方向に延びるように設けられたクロスメンバ(No.3クロスメンバ、No.4クロスメンバ)7,8とを備える。クロスメンバ7,8のそれぞれは、閉断面構造を有する。
【0068】
車両1の後部におけるフロアパネル6は、クロスメンバ7とクロスメンバ8との間に配された後部シートパン部6bと、クロスメンバ8よりも後方に配された後部フロアパン部6cとを有する。後席シート4のシートクッション41は、フロアパネル6における後部シートパン部6bの上に載置される。
【0069】
後部シートパン部6bにおいては、車幅方向の中央部分が上方(
図6の紙面手前側)に向けって突出し、クロスメンバ7が配された部分からクロスメンバ8が配された部分まで延びる凸部6eが設けられている。
【0070】
後席シート4のシートクッション41を後部シートパン部6b上に載置した状態では、シートクッション41の連結部413は、二点鎖線で囲んで示す被連結部6eに当接する。なお、後部シートパン部6bの内の凸部6dの頂部を除く両脇部分に対しては、シートクッション41の下面41bが当接する。
【0071】
5.フロアパネル6の振動抑制メカニズム
本実施形態では、上記構成を有するシートクッション41をフロアパネル6上に載置することで、フロアパネル6の振動を抑制することができる。そのメカニズムについて、
図7を用いて説明する。
【0072】
図7に示すように、本実施形態では、後席シート4のシートクッション41をフロアパネル6の上面6a上に載置した場合に、外周縁部412と連結部413とがフロアパネル6の上面に対して当接する。車両1の走行時においてフロアパネル6が振動する場合には、振動エネルギが連結部413を介してシートクッション41の本体パッド部411へと伝達される(矢印C)。そして、シートクッション41の本体パッド部411は、入力された振動エネルギにより振動し、これによって振動エネルギを消費する。即ち、本実施形態では、後席シート4のシートクッション41を多共振減衰構造として利用し、これによりフロアパネル6の振動を減衰させることができる。
【0073】
しかも、シートクッション41の本体パッド部411は、車両1の前後方向における外周縁部412と連結部413との間で下面41bがフロアパネル6の上面6aに対して隙間SPを空けて対向する離間部411aを有するので、連結部413から入力された振動エネルギによる本体パッド部411の振動が阻害されるのが抑制される。
【0074】
本実施形態では、以上のようなメカニズムをもってフロアパネル6の振動を抑制することができ、車両1における振動や騒音の発生を小さく抑えることができる。
【0075】
6.効果
本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、本体パッド部411からフロアパネル6に向けて突設され、本体パッド部411とフロアパネル6とを連結する連結部413を有するので、車両1の走行時等に発生するフロアパネル6の振動エネルギが連結部413を介して本体パッド部411へと入力される。連結部413を介して入力された振動エネルギは、本体パッド部411の振動により消費される。この場合に、本体パッド部411は、平面視で外周縁部412と連結部413との間の部分に離間部411aを有するので、フロアパネル6から連結部413を介して本体パッド部411へと入力された振動エネルギによる本体パッド部411の振動が阻害されることがない。
【0076】
しかも、後席シート4の載置構造では、シートクッション41における本体パッド部411の下面41bの一部からフロアパネル6に向けて連結部413を突設しているだけであるので、上記特許文献1に開示の構造のような製造コストの上昇および重量の増加を抑制することができる。
【0077】
従って、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネル6の振動を減衰させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、連結部413の損失係数が0.2(0.01以上)に設定されているので、連結部413の損失係数が0.01未満の場合に比べて、連結部413での伸縮振動をもって顕著な振動減衰効果を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、車両1の前後方向において、前方側の外周縁部412と後方側の外周縁部412との略中央位置に連結部413が配設されているので、連結部413を介して入力された振動エネルギによる本体パッド部411の振動が前後方向でアンバランスとなることが抑制される。よって、後席シート4の載置構造では、連結部413を介してシートクッション41の本体パッド部411に振動エネルギが入力され、当該振動エネルギによる本体パッド部411の振動でエネルギが消費されるのでフロアパネル6の共振を抑制するのに好適である。
【0080】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、車両1の車幅方向におけるシートクッション41の略中央位置に連結部413が配設されているので、連結部413を介して入力された振動エネルギによる本体パッド部411の振動が車幅方向でアンバランスとなることが抑制される。よって、後席シート4の載置構造では、連結部413を介してシートクッション41の本体パッド部411に振動エネルギが入力され、当該振動エネルギによる本体パッド部411の振動でエネルギが消費されるのでフロアパネル6の共振を抑制するのに好適である。
【0081】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、連結部413をシートクッション41のヒップポイント(人体臀部の最も荷重の掛かる箇所)HPよりも前方側に配設することとしているので、当該シートクッション41に着座した乗員が連結部413によって異物感を感じるのを抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、連結部413をシートクッション41の座面41aにおける前後方向の略中央位置に配設することとしているので、当該シートクッション41に着座した乗員が連結部413によって異物感を感じるのを抑制することができる。即ち、後席シート4においては、ヒップポイントHPはシートクッション41の座面41aにおける中央位置よりも後方側となるので、連結部413を座面41aにおける前後方向の略中央位置に配設することで、着座した乗員が連結部413によって異物感を感じるのを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、連結部413を本体パッド部411と一体成形しているので、連結部413のヤング率と本体パッド部411のヤング率とは0.3で同じであるので、車両1の走行時において、当該後席シート4に着座した乗員が連結部413が配設されたことに起因して違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、連結部413の前後方向長さL15を、前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の距離(寸法)L2の1/3以下に設定しているので、上記特許文献1に開示の構造のように前後方向での長い寸法(前方側の外周縁部と後方側の外周縁部との間の寸法の1/3を超える寸法)を有する連結部413を採用する場合に比べて、製造コストの上昇および重量増加を抑制するのに有効である。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る後席シート4の載置構造では、製造コストの上昇および車両の重量増加を抑えながら、フロアパネル6の振動を減衰させることができる。
【0086】
[効果確認]
上記実施形態に係る後席シート4の載置構造におけるフロアパネル6の振動減衰効果を確認するための実験を行った。その結果について、
図8および
図9を用いて説明する。
【0087】
(1)フロアパネル6の振動減衰効果の確認
フロアパネル6の振動減衰効果を確認するために、実施例1および比較例1,2を準備した。
【0088】
〈実施例1〉
実施例1では、上記実施形態と同じ構造のシートクッション41を有する後席シート4をフロアパネル6の上に載置した構造とした。なお、実施例1においては、前後方向の寸法が60mm、車幅方向の寸法が120mm、シートクッション41をフロアパネル6上に載置する前の高さ(自然状態の高さ)が30mmの連結部413を採用した。なお、連結部413については、シートクッション41をフロアパネル6上に載置した状態では、20mmまで圧縮された状態となる。
【0089】
〈比較例1〉
比較例1では、上記実施例1に対して、連結部413を有さないシートクッションを採用した。他の構成については、実施例と同じである。
【0090】
〈比較例2〉
比較例2では、比較例1の構成に対して、フロアパネル6の被連結部6eに約200gのオレフィンシートを接合した。他の構成については、比較例1と同じである。
【0091】
以上の構成の実施例1および比較例1,2の各解析モデルを用い、フロアパネル6に対して加振して周波数ごとの等価放射パワー(ERP)を指標として評価した。その結果を
図8に示す。
【0092】
図8に示すように、比較例1の解析モデルでは、116Hz付近に高いピークを有する。ここで、車両1における振動および騒音を低減するためには、110~130Hzの周波数域(矢印D1の範囲)でのERPを低減することが重要である。この点で、比較例1の解析モデルでは、フロアパネル6の振動に起因して車両1の振動および騒音の問題を生じるものと考えられる。
【0093】
比較例2の解析モデルでは、範囲D1でのERPは比較例1の解析モデルよりも低くなっているものの、105Hz付近に比較例1と略同じ値のピークを有する。即ち、比較例2の解析モデルでは、オレフィンシートをフロアパネル6に接合することによりERPのピーク周波数が低周波数側にシフトしただけであって、フロアパネル6の振動を減衰させることはできていない。
【0094】
これに対して、実施例1の解析モデルでは、範囲D1を含む95~130Hzの領域において、比較例1,2の解析モデルよりもERPが10~20dB低くなった。なお、
図8において、矢印D2で指し示すのは1次共振、矢印D3で指し示すのは2次共振、矢印D4で指し示すのは3次共振の各モードであるが、それぞれが比較例1,2よりもERPが低減されていることが分かる。
【0095】
(2)騒音の低減効果の確認
次に、上記実施例1および上記比較例1,2の各解析モデルを用いて、左側の前席シート2に着座した乗員の左側耳位置での音圧を計測した。その結果を
図9に示す。
【0096】
図9に示すように、比較例1の解析モデルを基準とするとき、比較例2の解析モデルでは音圧(騒音)が0.5dB低減され、実施例1の解析モデルでは音圧(騒音)が1.1dB低減された。即ち、実施例1の解析モデルでは、フロアパネル6の振動減衰効果が高いことに起因して比較例1,2の各解析モデルよりも左側の前席シート2に着座した乗員に対する音圧を低いレベルに抑えることができる。
【0097】
[連結部413のサイズについての考察]
本願発明者等は、本体パッド部411の下方に設ける連結部413のサイズと、後席シート4のシートクッション41に着座した乗員が感じる異物感との関係について検討した。検討結果について、
図10および
図11を用いて説明する。
【0098】
着座した乗員が異物感を感じるか否かの検討には、次の構成を有する比較例11および実施例11,12の各サンプルを用いた。
【0099】
〈比較例11〉
図10(a)に示すように、比較例11のシートクッション91では、下面91bから下方に向けて突出する外周縁部912を有する。ただし、
図10(a)の矢印Eで示すように、シートクッション91には前後の外周縁部912同士の間の部分に連結部は設けられていない。
【0100】
〈実施例11〉
図10(b)に示すように、実施例11のシートクッション81では、下面81bから外周縁部812および連結部813が下方に向けて突設されている。実施例11では、シートクッション81の下面81b(外周縁部812および連結部813が設けられていない領域)を基準とした場合の外周縁部812の高さH1を20mmとし、連結部813の高さH2を30mmとした。
【0101】
〈実施例12〉
実施例12のシートクッションは、実施例11のシートクッション81に対して、連結部の高さを20mmとし、それ以外の構成については、上記実施例11のシートクッション81と同じとした。
【0102】
以上の構成の実施例11,12および比較例11の各サンプルを用い、それぞれのサンプルに着座した乗員の臀部に係る圧力割合を計測した。その結果を
図11に示す。
【0103】
図11に示すように、圧力割合の計測は、ヒップポイントHPを基準とした。そして、実施例11のシートクッション81においては、連結部813がヒップポイントHPよりも前方側の部分(矢印F1)に位置するようにした。なお、実施例12のシートクッションでも、同じ位置に連結部を配設した。
【0104】
図11の右側のグラフに示すように、実施例11,12および比較例11の各シートクッション81,91では、ヒップポイントHPよりも40~50mm前方の位置で圧力が最も高くなった。そして、比較例11および実施例12の各シートクッションでは、圧力割合が略同じとなった。
【0105】
一方、実施例11のシートクッション81では、圧力割合のピーク値が比較例11や実施例12に比べて若干高くなっているが、連結部813を配設した領域F1では、圧力割合が比較例11や実施例12と略同じとなった。
【0106】
以上の結果より、上記実施形態と同じ構成を採用する実施例11のシートクッション81においても、ヒップポイントHPよりも前方の箇所に連結部813を配設することで、着座した乗員は異物感を感じることはないものと考えられる。
【0107】
[変形例]
変形例に係る後席シートの載置構造について、
図12を用いて説明する。なお、
図12では、後席シートにおけるシートクッション71およびその周辺の構造だけを抜き出して図示しているが、図示を省略する構造については、上記実施形態と同じである。
【0108】
図12に示すように、変形例に係る後席シートの載置構造では、フロアパネル6の上面6aに対して、連結部材76を挟んだ状態でシートクッション71が載置される構造を採用する。シートクッション71は、ウレタン発泡材から構成されてなり、座面を有する本体パッド部711と、本体パッド部711の外周縁から下方に向けて突設された外周縁部712とが一体成形されている。
【0109】
なお、シートクッション71をフロアパネル6上に載置した際には、シートクッション71における下面(外周縁部712が設けられた部分を除く領域)71bは、フロアパネル6の上面6aとの間に20mmの隙間が空く。
【0110】
連結部材76は、シートクッション71と同じウレタン発泡材から形成されており、高さH3が30mmに設定されている。即ち、シートクッション71をフロアパネル6上に載置した際には、間に挟まれた連結部材77は高さ方向に圧縮を受けた状態となる。そして、連結部材76の上面76aは、シートクッション71の下面71bに当接(連結)され、下面76bはフロアパネル6の上面6aに当接(連結)される。
【0111】
ここで、シートクッション71に対する連結部材76の配設位置、およびフロアパネル6に対する連結部材76の配設位置については、上記実施形態のシートクッション41と同様の位置とされている。
【0112】
なお、本変形例において、連結部材76を挟んだ状態でフロアパネル6上に本体パッド部711を載置した場合に、連結部材76が当接する部分と外周縁部712との間の部分は、フロアパネル6の上面6aに対して隙間を空けて対向する。本体パッド部711における当該部分が離間部711aに該当する。
【0113】
本変形例では、本体パッド部711および連結部材76のヤング率および損失係数は、次表に示す通りである。
【0114】
【0115】
本変形例に係る後席シートの載置構造では、シートクッション71の本体パッド部711と連結部材76とを別部材とした点が上記実施形態と相違するが、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0116】
また、本変形例では、本体パッド部711と連結部材76とを別部材としているため、本体パッド部711のヤング率や損失係数に対して、より高い自由度をもって連結部材76のヤング率や損失係数を設定することができる。このため、フロアパネル6の振動減衰のためにはさらに好適な組み合わせをもって設計することが可能である。
【0117】
さらに、本変形例では、本体パッド部711と連結部材76とを別部材としているため、本体パッド部711の硬度(ヤング率)に対して連結部材76の硬度(ヤング率)を低く設定(柔らかく設定)することによって、乗員が着座した際の硬さ感や異物感をより感じ難くすることも可能である。
【0118】
[その他の変形例]
上記実施形態では、前後2列のシート2~4を有する車両1において、後席シート4に対して上記のような載置構造を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、3列のシートを有する車両において、3列目のシートに上記載置構造を採用することとしても同様の効果を得ることができる。
【0119】
また、上記実施形態では、車幅方向に3人が着座可能なシートクッション41を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。車幅方向に着座する乗員毎に別体のシートクッションを備える構造(キャプテンシートを車幅方向に並べた構造)を採用することもできる。
【0120】
上記実施形態では、本体パッド部411と連結部413とのヤング率および損失係数が同じであるとしたが、本発明では、本体パッド部に対して連結部が一体成形されてなる構造を採用する場合においても、本体パッド部に対して連結部のヤング率や損失係数を変えることもできる。例えば、部分的に発泡密度を変えたり、2色生成するなどでヤング率や損失係数を互いに変えたりすることが可能である。
【0121】
上記実施形態では、
図3および
図4を用いてシートクッション41における連結部413の配設位置について説明したが、本発明は、シートクッションにおける連結部や連結部材の配設位置について、これに限定を受けるものではない。即ち、連結部や連結部材については、シートクッションを平面視する場合に外周縁部と離間していればよい。
【0122】
また、上記実施形態および上記変形例では、連結部413や連結部材76をヒップポイントHPよりも前方側の部分に配することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、連結部や連結部材のヤング率を本体パッド部のヤング率に対して低く設定することで、仮に連結部や連結部材をヒップポイントやその後方側に位置させた場合にも、着座した乗員が異物感を感じることは抑えられる。
【符号の説明】
【0123】
1 車両
4 後席シート(車両用シート)
6 フロアパネル
6e 被連結部
41,71 シートクッション
41a 座面
41b,71b 下面
76 連結部材
411,711 本体パッド部
411a,711a 離間部
412,712 外周縁部
413 連結部
SP 隙間
HP ヒップポイント