(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051234
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20240404BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157284
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】塚本 龍一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA04
4F202AA05
4F202AA11
4F202AA24
4F202AA29
4F202AD05
4F202AD08
4F202CA11
4F202CB12
4F202CK06
4F202CK83
4F202CQ01
4F206AA04
4F206AA05
4F206AA11
4F206AA24
4F206AA29
4F206AD05
4F206AD08
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パウチの開口端部をインサートして口頸端部を射出成形する射出成形装置を改良して、パウチの開口端部の外周面上に合成樹脂素材が流出してしまうことを確実に回避すること。
【解決手段】底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を、内側型部材12ではなくて別個に形成した筒形状の付加内側型部材14によって規定し、この付加内側型部材14を、その先端面が底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する成形空洞規定位置と、その先端面が底壁の下面に対応する部位乃至それより下方に位置して垂下壁を規定する成形空洞と底壁を規定する成形空洞とを遮断する成形空洞遮断位置との間を移動自在に配設し、そして付加内側型部材14にこれを選択的に成形空洞規定位置と成形空洞遮断位置とに位置付ける選択的位置付け手段20を付設する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム製パウチの開口端部をインサートして、該パウチの開口端に当接乃至近接する環形状の底壁及び該底壁から垂下し且つ該パウチの該開口端部の内周面に接合される筒状垂下壁を有する口頸部材を射出成形するための射出成形装置にして、
内側成形型手段と外側成形型手段とから構成された成形型、及び溶融状態の合成樹脂素材を供給するための合成樹脂射出手段を備え、
該内側成形型手段は、該口頸部材の該垂下壁の内周面及び該底壁の内周面を規定する内側型部材と共に、該底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する筒形状の付加内側型部材を含み、
該内側型部材には、該垂下壁の該内周面を規定する面に開口する少なくとも1個の樹脂流路が形成されており、該合成樹脂射出手段は該樹脂流路を介して成形空洞に溶融状態の合成樹脂素材を供給し、
該付加内側型部材は、その先端面が該底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する成形空洞規定位置と、その先端面が該底壁の下面に対応する部位乃至それより下方に位置して該垂下壁を規定する成形空洞と該底壁を規定する成形空洞とを遮断する成形空洞遮断位置との間を移動自在であり、
該付加内側型部材には、該付加内側型部材を選択的に該成形空洞規定位置と該成形空洞遮断位置とに位置付ける選択的位置付け手段が付設されている、
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
該選択的位置付け手段は、該樹脂流路を通して流入される合成樹脂素材が該垂下壁を規定する該成形空洞の少なくとも90%以上に流入するまでは該付加内側型部材を成形空洞遮断位置に位置付け、しかる後に該付加内側型部材を該成形空洞規定位置に位置付ける、請求項1記載の射出成形装置。
【請求項3】
該外側成形型手段は開閉自在な一対の外側型部材を含み、該一対の外側型部材の各々は協働して該底壁の外周面及び下面を規定すると共に該パウチの該開口端部の外周面に当接される内周面と2個の周方向端面を有する、請求項1又は2記載の射出成形装置。
【請求項4】
該口頸部材は該底壁から上方に延出する円筒形状の装着壁を含み、該装着壁の外周面には雄螺条が形成されている、請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項5】
該垂下壁は該底壁よりも薄肉である、請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項6】
該内側型部材に形成された該開口は、該垂下壁の該内周面の下半部を規定する面に位置する、請求項1に記載の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルム製パウチの開口端部をインサートして合成樹脂製口頸部材を射出成型するための射出成形装置、更に詳しくは合成樹脂フィルム製パウチの開口端部をインサートしてパウチの開口端に当接乃至近接する環形状底壁及びこの底壁から垂下し且つパウチの開口端部の内周面に接合される筒状垂下壁を有する口頸部材を射出成形して、パウチと口頸部材とから構成された複合容器を製造するための射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、円形状の開口端を有する合成樹脂フィルム製パウチとこのパウチの開口端部の内周面に熱溶着された口頸部材(口部リング)とから構成された複合容器(袋カップ)が開示されている。口頸部材は円環形状の底壁(フランジ部)とこの底壁から下方に垂下する円筒形状の垂下壁(胴部)とを含み、垂下壁の外周面がパウチの開口端部の内周面に熱溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている上述したとおりの複合容器は、パウチの開口端部内に口頸部材の垂下壁を所要通りに位置付けてパウチの開口端部を垂下壁に熱溶着して形成されている故に、形成工程が比較的煩雑であり、そしてまたパウチの開口端部と口頸部材の垂下壁との接合強度が必ずしも充分ではない、という問題がある。かかる問題を解決するために、本発明者等は、パウチの開口端部をインサートして口頸端部を射出成形することを試みた。そして、かかる射出成形のための射出成形装置として、内側成形型手段と外側成形型手段とから構成された成形型、及び溶融状態の合成樹脂素材を供給するための合成樹脂射出手段を備えている射出成形装置を試作した。内側成形型手段は、口頸部材の垂下壁の内周面及び底壁の内周面と共に底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する内側型部材を含んでいる。内側型部材には、垂下壁の内周面を規定する面に開口する少なくとも1個の樹脂流路が形成されており、合成樹脂射出手段は樹脂流路を介して成形空洞に溶融状態の合成樹脂素材を供給する。
【0005】
然るに、上記のとおりの射出成形装置による射出成形には、樹脂流路を介して供給される合成樹脂素材が垂下壁を規定する成形空洞に充分に充填される前に、従ってパウチの開口端部の半径方向内側への傾動が未だ充分に阻止されていない状態において、底壁を規定する成形空洞内に流入し、かかる合成樹脂素材が半径方向内側に傾動したパウチの開口端部の外周面上に流出してしまう、という問題(この問題については後に更に言及する)が発生する傾向があることが判明した。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、上述したとおりの射出成形装置に改良を加えて、パウチの開口端部の外周面上に合成樹脂素材が流出してしまうことを確実に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を、内側型部材ではなくて別個に形成した筒形状の付加内側型部材によって規定し、この付加内側型部材を、その先端面が底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する成形空洞規定位置と、その先端面が底壁の下面に対応する部位乃至それより下方に位置して垂下壁を規定する成形空洞と底壁を規定する成形空洞とを遮断する成形空洞遮断位置との間を移動自在に配設し、そして付加内側型部材にこれを選択的に成形空洞規定位置と成形空洞遮断位置とに位置付ける選択的位置付け手段を付設することによって、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する射出成形装置として、
合成樹脂フィルム製パウチの開口端部をインサートして、該パウチの開口端に当接乃至近接する環形状の底壁及び該底壁から垂下し且つ該パウチの該開口端部の内周面に接合される筒状垂下壁を有する口頸部材を射出成形するための射出成形装置にして、
内側成形型手段と外側成形型手段とから構成された成形型、及び溶融状態の合成樹脂素材を供給するための合成樹脂射出手段を備え、
該内側成形型手段は、該口頸部材の該垂下壁の内周面及び該底壁の内周面を規定する内側型部材と共に、該底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する筒形状の付加内側型部材を含み、
該内側型部材には、該垂下壁の該内周面を規定する面に開口する少なくとも1個の樹脂流路が形成されており、該合成樹脂射出手段は該樹脂流路を介して成形空洞に溶融状態の合成樹脂素材を供給し、
該付加内側型部材は、その先端面が該底壁の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する成形空洞規定位置と、その先端面が該底壁の下面に対応する部位乃至それより下方に位置して該垂下壁を規定する成形空洞と該底壁を規定する成形空洞とを遮断する成形空洞遮断位置との間を移動自在であり、
該付加内側型部材には、該付加内側型部材を選択的に該成形空洞規定位置と該成形空洞遮断位置とに位置付ける選択的位置付け手段が付設されている、
ことを特徴とする射出成形装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該選択的位置付け手段は、該樹脂流路を通して流入される合成樹脂素材が該垂下壁を規定する該成形空洞の少なくとも90%以上に流入するまでは該付加内側型部材を成形空洞遮断位置に位置付け、しかる後に該付加内側型部材を該成形空洞規定位置に位置付ける。該外側成形型手段は開閉自在な一対の外側型部材を含み、該一対の外側型部材の各々は協働して該底壁の外周面及び下面を規定すると共に該パウチの該開口端部の外周面に当接される内周面と2個の周方向端面を有するのが好都合である。該口頸部材は該底壁から上方に延出する円筒形状の装着壁を含み、該装着壁の外周面には雄螺条が形成されているのが好適である。該垂下壁は該底壁よりも薄肉であるのがよい。該内側型部材に形成された該開口は、該垂下壁の該内周面の下半部を規定する面に位置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出成形装置においては、垂下壁を規定する成形空洞に充分な量の合成樹脂素材が充填され、これによってパウチの開口端部の半径方向内側への傾動が阻止されるまで付加内側型部材を成形空洞遮断位置に位置付け、しかる後に付加内側型部材を成形空洞規定位置に移動して、底壁を規定する成形空洞への合成樹脂素材の流入を開始することができ、かくしてパウチの開口端部の外周面上に合成樹脂素材が流出してしまうことを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された射出成形装置により射出成形された口頸部材を備える複合容器の一例を示す正面図。
【
図7】本発明に従って構成された射出成形装置の好適実施形態を複合容器と共に示す断面図。
【
図8】
図7に示す射出成形装置における内側型部材を示す正面図。
【
図11】
図7に示す射出成形装置における一対の外側型部材の斜視図。
【
図12】
図7に示す射出成形装置を用いて口頸部材を射出成形する過程のA部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された射出成形装置の好適実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0013】
便宜上、本発明に従って構成された射出成形装置に先立って、これにより射出成形された口頸部材を備えた複合容器から説明する。かかる複合容器の一例が
図1乃至
図3に示されている。
【0014】
図1乃至
図3を参照して説明すると、複合容器100は、合成樹脂フィルム製パウチ102と後に詳細に説明するとおりパウチ102をインサートして射出成形された合成樹脂製口頸部材104とから構成されている。
【0015】
図5及び
図6を参照してパウチ102について説明すると、かかるパウチ102は上端に円形であるのが好都合である開口端106を有する。パウチ102は1枚の合成樹脂フィルムから形成する(この場合にはサイドシール部は1個)こともできるが、図示の実施形態においては2枚の合成樹脂フィルムから形成されており、周方向に180度の間隔をおいて2個のサイドシール部108a及び108bが配設されている。更に、図示の実施形態においては、2個のサイドシール部108a及び108bの各々の下端から、夫々、周方向両側に向かって且つ半径方向内側に向かって下方に延びる二股シール110a-1及び110a-2並びに110b-1及び110b-2が配設されていると共に、二股シール110a-1及び110a-2の一方の下端と二股シール110b-1及び110b-2の一方の下端を接続する底シール112-1並びに二股シール110a-1及び110a-2の他方の下端と二股シール110b-1及び110b-2の他方の下端を接続する底シール112-2が配設されている。かくして、開口端106以外は閉じられているコップ形態のパウチ102が形成されている。パウチ102を形成する合成樹脂フィルムは、好ましくは単層フィルム又は複数枚が積層された積層フィルムでよい。好適例としては、後に言及する如く高密度ポリエチレンから形成されているのが好都合である口頸部材104との接着性に優れた低密度ポリエチレン製の内層、ガスバリア性に優れたナイロン製の中間層及び機械的特性に優れたポリエチレンテレフタレート製の外層を有する3層構成の合成樹脂フィルムを挙げることができる。図示のパウチ102は、2枚の合成樹脂フィルムを上記サイドシール部108a及び108b、二股シール110a-1及び110a-2並びに110b-1及び110b-2、底シール112-1及び112-2において加熱溶着することによって形成することができる。パウチ102自体は当業者にとって周知の形態でよく、それ故に本明細書においてはパウチ102自体の詳細な説明は省略する。
【0016】
図1乃至
図4を参照して説明を続けると、図示の実施形態における口頸部材104は、円環形状の底壁114及びこの底壁114の内周縁から下方に垂下する円筒形状の垂下壁116を備えており、垂下壁116は底壁114よりも薄肉である。底壁114の下面は上記パウチ102の上端即ち開口端106に当接乃至近接されているのが好都合である。垂下壁116の内周面の下端部は下方に向かって半径方向外側に傾斜されており、垂下壁116の下端部は下方に向かって厚さが漸次低減されている。後に更に詳述するとおり、口頸部材104は上記パウチ102の開口端部をインサートして射出成形することによって成形されており、口頸部材104の垂下壁116の外周面はパウチ102の開口端部の内周面に接合されている。図示の口頸部材104は、更に、底壁114の上面における幅方向中央から上方に延出する円筒形状の装着壁118を備えている。この装着壁118の外周面の上端部近傍には環状溝120が、下端部近傍には環状溝122が夫々配設されている。また、装着壁118の外周面主部には雄螺条124が配設されている。かような口頸部材104はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から成形することができる。パウチ102が上述したとおり低密度ポリエチレン製の内層、ナイロン製の中間層及びポリエチレンテレフタレート製の外層を有する3層構成の合成樹脂フィルムから形成されている場合には、ポリエチレン製の内層との接着性等の点から口頸部材104は高密度ポリエチレンから形成されているのが好都合である。
【0017】
上述したとおりの複合容器100においては、複合容器100内に所要内容物が収容され、そして口頸部材104に蓋(図示していない)が装着されて口頸部材104の頂面に規定されている開口が閉じられる。口頸部材104と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から形成することができる蓋は周知の形態でよく、例えば円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁とを有し、スカート壁の内周面には雌螺条が形成されており、口頸部材104に被嵌して口頸部材104の装着壁118に形成されている雄螺条124にスカート壁に形成されている雌螺条を螺合することによって口頸部材104に装着される。
【0018】
次に、
図7乃至
図12を参照して、上記パウチ102の開口端部をインサートして口頸部材104を射出成形するための、本発明に従って構成される射出成形装置の好適実施形態について説明する。全体を番号2で示す射出成形装置は成形型及び合成樹脂射出手段6を備えている。成形型は内側成形型手段8と外側成形型手段10とから構成されている。内側成形型手段8は内側型部材12と共に付加内側型部材14を含んでいる。
図8及び
図10に明確に図示する如く、内側型部材12は円柱形状の主部16a、短円柱形状の張出部16b及び下方に向かって外径が漸次低減されている逆円錐台形状の下部16cを有する。主部16aの下端部は下方に向かって外径が漸次増大されて張出部16bの外周面の上端に円滑に接続されている。付加内側型部材14は薄肉円筒形状であり、その内径は内側型部材12の主部16aの外径に対応している。口頸部材104を成形する際には、付加内側型部材14が内側型部材12の主部16aに被嵌され、付加内側型部材14には後述する選択的位置付け手段が付設される。かくして、内側型部材12の主部16a及び張出部16bの外周面によって口頸部材104の底壁114の内周面及び垂下壁116の内周面が規定され、付加内側型部材14の外周面によって口頸部材104の装着壁118の内周面が規定され、付加内側型部材14の下端面によって底壁114の上面における半径方向内側領域、即ち装着壁118よりも半径方向内側領域、が規定される。
図12(e)も参照されたい。
【0019】
内側型部材12には、周方向に間隔をおいた複数個の位置、図示に場合は180度の角度間隔をおいた2個の位置、において、樹脂流路18a及び18bが形成されている。樹脂流路18a及び18bの各々は、内側型部材12の上端面から下方に向かって上下方向に延びる主部18a-1及び18b-1と主部18a-1及び18b-1の下端から下方に半径方向外側に傾斜して延び内側型部材12の主部16aの下端部、即ち口頸部材104の垂下壁116の内周面の下半部を規定する面、に開口する下流部18a-2及び18b-2を有する。そして、合成樹脂射出手段6は内側型部材12の上面から樹脂流路18a及び18bを介して成形空洞に溶融状態の合成樹脂素材を供給する。
【0020】
図7と共に
図12を参照して説明すると、付加内側型部材14には選択的位置付け手段20が付設されており、これにより付加内側型部材14は、その先端面が底壁114の上面の少なくとも半径方向内側領域を規定する成形空洞規定位置(
図12(b)乃至(e)に示す位置)と、その先端面が底壁114の下面に対応する部位に位置して垂下壁116を規定する成形空洞と底壁114を規定する成形空洞とを遮断する成形空洞遮断位置(
図12(a)に示す位置)との間を移動自在である。選択的位置付け手段20は圧縮空気、油圧又は電動モーター等適宜の駆動源であってよい。図示の実施形態においては、付加内側型部材14の先端面は成形空洞遮断位置にてパウチ102の上端縁に当接することに起因して、上記成形空洞遮断位置は底壁114の下面に対応する部位であるが、付加内側型部材14の外周面がパウチ102の内周面と整合すれば、上記成形空洞遮断位置は底壁114の下面に対応する部位よりも下方に位置してもよい。
【0021】
図7と共に
図11を参照して説明すると、外側成形型手段10は一対の外側型部材22a及び22bを含んでいる。一対の外側型部材22a及び22bは相互に面対称形状であり、後述する周方向端面が相互に当接される閉位置とかかる閉位置から半径方向外方に変位した開位置との間を移動自在である。
図11を参照することによって明確に理解されるとおり、一対の外側型部材22a及び22bの各々は、略半円周形状の内周面24a及び24bと周方向端面26a-1及び26a-2並びに26b-1及び26b-2を有する(
図11には、外側型部材22aの内周面24a並びに周方向端面26a-1及び26a-2を図示しているが、外側型部材22bに関しては内周面24bの一部しか図示しておらず、外側型部材22bの図示されていない部分の符号は外側型部材22aの対応する部位の符号の後に括弧を付して表示した)。
図11と共に
図7を参照することによって理解される如く、内周面24a及び24bは協働して口頸部材104の底壁114の外周面及び下面並びに装着壁118の外周面を規定する。内周面24a及び24bは更に、パウチ102を介して垂下壁116の外周面をも規定する。周方向端面26a-1と周方向端面26b-1とは相互に当接され、周方向端面26a-2と周方向端面及び26b-2とも相互に当接される。周方向端面26a-1及び26a-2並びに26b-1及び26b-2の各々には、上記パウチ102のサイドシール部108a及び108bを受け入れる浅い窪み28a-1及び28a-2並びに28b-1及び28b-2が配設されている。図示の実施形態においては、外側成形型手段10は一対の外側型部材22a及び22bの上面に積層される一対の付加外側型部材30a及び30bも含み、この一対の付加外側型部材30a及び30bの下面縁部によって装着壁118の上端面が規定される。
【0022】
上述したとおりの射出成形装置2を使用して口頸部材104を成形する際には、
図7に図示するとおり、パウチ102の開口端部が成形型内にインサートされる。更に詳細には、パウチ102の開口端部を内側型部材12の主部16aの下端部及び張出部16bに被嵌し、パウチ102のサイドシール部108a及び108bの上端部を一対の外側型部材22a及び22bの周方向端面28a-1及び28a-2並びに28b-1及び28b-2における窪み28a-1及び28a-2並びに28b-1及び28b-2内に位置させて緊密に把持する。一対の外側型部材22a及び22bの内周面24a及び24bの下部はパウチ102の開口端部の外周面に密接される。そして、合成樹脂射出手段6から溶融状態の合成樹脂素材が樹脂流路18a及び18bを通して成形型に規定されている成形空洞内に流入せしめられて口頸部材104が成形される。
【0023】
溶融状態の合成樹脂素材を上記成形空洞内に流入させて口頸部材104を成形する際、選択的位置付け手段20は付加内側型部材14を所要とおりに位置付ける。これについて
図7と共に
図12を参照して説明すると、図示の実施形態においては、選択的位置付け手段20は、樹脂流路18a及び18bを通して流入される合成樹脂素材が垂下壁116を規定する成形空洞の少なくとも90%以上に流入するまでは付加内側型部材14を成形空洞遮断位置に位置付け、しかる後に付加内側型部材14を成形空洞規定位置に位置付ける。成形空洞の形状及び樹脂流路18a及び18bの断面積は設計上予め規定されることから、上記成形空洞に対する合成樹脂素材の流入量は、合成樹脂素材の流入圧力及び時間等から推測される。所望ならば、所要センサを樹脂流路18a及び18b或いは上記成形空洞内に配設して上記合成樹脂素材の流入量を実測してもよい。以上のことから、合成樹脂素材の流入が開始される前の状態にあっては、付加内側型部材14は
図12(a)に示すとおりの成形空洞遮断位置に位置し、合成樹脂素材の流入が開始されてこれが垂下壁116を規定する成形空洞に上記所要量流入した後に、付加内側型部材は
図12(b)に示すとおり成形空洞規定位置に移動せしめられる。これにより、
図12(c)乃至(e)に示すとおり、合成樹脂素材は垂下壁116を規定する成形空洞、底壁114を規定する成形空洞、そして装着壁118を規定する成形空洞に順次に充填されることとなる。
【0024】
ここで、上記のとおりに付加内側型部材14を位置づけない場合、本願の発明者の経験によれば、成形しようとする口頸部材104の形状及び合成樹脂素材の流入圧力等によっては、合成樹脂素材が垂下壁116を規定する成形空洞内に充分に充填されるよりも先に底壁114を規定する成形空洞内に流入してしまい、以下のとおりの問題が発生することが判明している。即ち、合成樹脂素材が垂下壁116を規定する成形空洞内に充分に充填されるよりも前に底壁114を規定する成形空洞内に流入してしまうと、その後、底壁114を規定する成形空洞内に流入した合成樹脂素材はパウチ102の開口端部を半径方向内側へ傾動せしめてこれを乗り越えてパウチ102の開口端部の外周面上に流出してしまい、垂下壁116が適切に成形されない。換言すれば、パウチ102の開口端部は垂下壁116の存在に起因して半径方向内側へ傾動せしめられることが防止されるが、合成樹脂素材が垂下壁116を規定する成形空洞内に充分に充填されるよりも前に底壁114を規定する成形空洞内に流入してしまうと、垂下壁116が存在しない部位において合成樹脂素材はパウチ102の開口端部を半径方向内側へ傾動せしめてしまう。垂下壁116が適切に成形されないと、口頸部材104とパウチ102との接合が不充分となり、また外観上好ましくない。
【0025】
而して、本発明の射出成形装置においては、垂下壁116を規定する成形空洞に充分な量の合成樹脂素材が充填され、これによってパウチ102の開口端部の半径方向内側への傾動が阻止されるまで付加内側型部材14を成形空洞遮断位置に位置付け、しかる後に付加内側型部材14を成形空洞規定位置に移動して、底壁114を規定する成形空洞への合成樹脂素材の流入を開始することができ、かくしてパウチ102の開口端部の外周面上に合成樹脂素材が流出してしまうことを確実に回避することができる。また、図示の実施形態においては、口頸部材104の垂下壁116が底壁114よりも薄肉であって垂下壁116は弾性変形容易であるため、口頸部材104の成形が完了した後にこれを内側型部材12から型抜きする際に垂下壁116が内側型部材12に引っかかったとしても、垂下壁116が弾性変形することで上記引っかかりは解消され、口頸部材104を内側型部材12から型抜きすることができる。一方、底壁114が薄肉で弾性変形容易な場合には、口頸部材104の強度が不足し好ましくない。垂下壁116の内径が90mmである場合には、垂下壁116の肉厚は0.5乃至2.0mm、底壁114の肉厚は1乃至10mmであるのが好適である。
【0026】
以上、添付図面を参照して本発明の射出成形装置の好適実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内において更なる変形例もあり得る。例えば、図示の実施形態においては、本発明の射出成形装置によって射出成形される口頸部材104は装着壁118を含んでいたが、これは省略されていてもよい。装着壁118が省略された口頸部材にあっては、底壁の上面に紙を貼着する等して口頸部材は密封される。また、図示の実施形態においては、パウチ102は2つのサイドシール部108a及び108bを備えていたが、かかるサイドシール部は存在しない場合もあり得る。サイドシール部が存在しない場合、一対の外側型部材22a及び22bの周方向端面28a-1及び28a-2並びに28b-1及び28b-2における窪み28a-1及び28a-2並びに28b-1及び28b-2は省略される。
【符号の説明】
【0027】
2:射出成形装置
4:成形型
6:合成樹脂射出手段
8:内側成形型手段
10:外側成形型手段
12:内側型部材
14:付加内側型部材
18:樹脂流路
20:選択的位置付け手段
100:複合容器
102:パウチ
104:口頸部材
114:底壁
116:垂下壁