(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051236
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】農業用塩化ビニル系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240404BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240404BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240404BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/103
C08K5/101
C08K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157287
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 望
(72)【発明者】
【氏名】澤本 篤
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 真一
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD041
4J002EH046
4J002EH157
4J002EP028
4J002FD178
4J002FD206
4J002FD207
4J002GA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性を持続できる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを課題とするものである。
【解決手段】本発明は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、防滴剤及び滑剤を含む農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記防滴剤は、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンから選択される少なくとも1種の多価アルコールと、ステアリン酸、パルミチン酸から選択される少なくとも1種の脂肪酸とのエステル化合物Aと、前記エステル化合物Aにアルキレンオキサイドを付加してなる付加化合物Bとを含み、前記滑剤は、メチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを含むことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂、可塑剤、防滴剤及び滑剤を含む農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、
前記防滴剤は、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンから選択される少なくとも1種の多価アルコールと、ステアリン酸、パルミチン酸から選択される少なくとも1種の脂肪酸とのエステル化合物Aと、前記エステル化合物Aにアルキレンオキサイドを付加してなる付加化合物Bとを含み、かつその含有比は、質量比で付加化合物Bが1に対して、エステル化合物Aが2以上4以下であり、
前記滑剤は、メチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを含み、かつその含有比は、質量比でエチレンビスステアリン酸アミドが1に対し、メチレンビスステアリン酸アミドが0.5を超えて5以下であることを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記防滴剤の含有量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上3質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記滑剤の含有量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上0.6質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記エステル化合物Aが、ソルビタンステアレート及び/又はソルビタンパルミテートであり、
前記付加化合物Bが、ソルビタンステアレートのエチレンオキサイド付加物及び/又はソルビタンパルミテートのエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂フィルムは、安価で透明性があり、保温性、強度に優れることから、農業用トンネル、農業用ハウス等の施設園芸の被覆材(農業用被覆材ともいう)として広く用いられている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂フィルムには、用途によって様々な添加剤が含有されている。例えば、農業用被覆材として用いる場合、展張作業や換気作業を容易にするために可塑剤を用いてフィルムに柔軟性を付与している。また、フィルム表面に水滴が付着し、内部の作物に水滴が落ちることによる病害の発生を抑制するために当該フィルムには防滴剤などの添加剤が含有されている。
【0004】
塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるこれらの添加剤の効果は、フィルムを使用している期間は持続することが要求されている。例えば、農業用被覆材の場合、約1年~2年程度で新しいフィルムに交換される。
【0005】
しかしながら、近年では農家の人手不足や省資源等の理由から長期にわたって展張することが可能な農業用被覆材が望まれているが、添加剤の中でも防滴剤の効果は、1年もの長期にわたってその効果を持続するのは困難であった。
そのため、塩化ビニル系樹脂フィルムに関して防滴剤の種類を特定したり他の添加剤を組み合わせたりして防適性を長期間持続できる防滴剤の提案等が多くなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、防滴性を長期間持続しようとした場合は初期の防滴性が弱くなる傾向にあり、その一方で初期の防滴性を重視すると長期の防滴性の持続が難しくなることがあった。
【0008】
また、農業用被覆材は、特に夏期には、ハウス内の温度が急激に上昇するため、被覆材を巻き上げて、ハウス内の換気を行う必要がある。換気が完了した後は巻き上げた被覆材を下ろすが、巻き上げた被覆材には日光が当たり被覆材が蓄熱し、被覆材同士が接着することで下ろせなくなってしまう、所謂べたつきの問題があった。このべたつきは、特に使用開始からあまり経過していない時期に顕著に見られるが、使用していくうちに被覆材表面に砂埃などが付着した状態だと改善される。すなわち、使用開始時期のべたつきを抑制できればよく、そのためにフィルム表面に移行しやすい滑剤を添加することがなされている。
しかしながら、初期の防滴性を向上させるために、フィルム表面に移行しやすい防滴剤を選択すると、べたつき抑制が悪化する傾向にあり、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性能の持続を両立することは未だ困難であった。
【0009】
本発明は、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性を持続できる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、防滴剤及び滑剤を含む農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、
前記防滴剤は、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンから選択される少なくとも1種の多価アルコールと、ステアリン酸、パルミチン酸から選択される少なくとも1種の脂肪酸とのエステル化合物Aと、前記エステル化合物Aにアルキレンオキサイドを付加してなる付加化合物Bとを含み、かつその含有比は、質量比で付加化合物Bが1に対して、エステル化合物Aが2以上4以下であり、
前記滑剤は、メチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを含み、かつその含有比は、質量比でエチレンビスステアリン酸アミドが1に対し、メチレンビスステアリン酸アミドが0.5を超えて5以下であることを特徴とする。
【0011】
また、前記防滴剤の含有量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上3質量部以下であることを特徴とする。
【0012】
また、前記滑剤の含有量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上0.6質量部以下であることを特徴とする。
【0013】
また、前記エステル化合物Aが、ソルビタンステアレート及び/又はソルビタンパルミテートであり、
前記付加化合物Bが、ソルビタンステアレートのエチレンオキサイド付加物及び/又はソルビタンパルミテートのエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性を持続できる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の防滴性を評価するための器具を説明する図であって、(a)塩化ビニル製パイプ(b)塩化ビニル製パイプにフィルムを展張した状態の側面図(c)塩化ビニル製パイプにフィルムを展張した状態の正面図 を示す。
【
図2】本発明の防滴性の評価方法を説明する図である。
【
図3】防滴性を評価するときの水滴の流れたタイミングを説明する模式図であって、(a)水滴が付着した状態 (b)一部の水滴が流れた状態 を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、防滴剤及び滑剤を含む農業用塩化ビニル系樹脂フィルムである。
【0017】
本発明において、塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルや、塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマーと高級ビニルエーテルとの共重合体等、またはこれらの混合物が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸ビニル等のオレフィンモノマーやビニル系モノマーが挙げられる。
【0018】
本発明において、可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)などに代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチルエステル(DOA)、セバチン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチルエステル(TOTM)に代表されるトリメリット酸エステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるポリエステル系可塑剤などの高分子系可塑剤の他のセバチン酸系可塑剤、塩素化パラフィンなどの一般的な可塑剤、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
本発明において、可塑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して40質量部以上60質量部以下が好ましい。可塑剤の含有量が40質量部未満だと、農業用被覆材として十分な柔軟性が得られ難く、60質量部を超過すると、得られるフィルム表面に可塑剤が移行して表面がべたつきやすくなるため、べたつきを抑制し難くなる。
【0020】
本発明において、防滴剤としては、ソルビタン、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンから選択される少なくとも1種の多価アルコールと、ステアリン酸、パルミチン酸から選択される少なくとも1種の脂肪酸とのエステル化合物Aと、当該エステル化合物Aにアルキレンオキサイドを付加してなる付加化合物Bとを含む。
【0021】
エステル化合物Aとしては、具体的には、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、グリセリンステアレート、グリセリンパルミテート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンパルミテート、ポリグリセリンソルビタンステアレート、ポリグリセリンソルビタンパルミテートなどを1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、本発明において、ソルビタンステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステルには、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びそれらの混合物が含まれ、また、多価アルコール1種に対し、2種以上の脂肪酸とエステル化した化合物もエステル化合物Aに含まれる。
【0022】
付加化合物Bを構成するアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。付加化合物Bとして、具体的には、ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド1モル付加物、ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド2モル付加物、ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド3モル付加物、ソルビタンステアレート・プロピレンオキサイド3モル付加物、グリセリンパルミテート・エチレンオキサイド2モル付加物などを1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドを付加するモル数としては、1~10モルが好ましい。
【0023】
本発明において、防滴剤として好ましくは、エステル化合物Aが、ソルビタンステアレート及び/又はソルビタンパルミテートであり、付加化合物Bが、ソルビタンステアレートのエチレンオキサイド付加物及び/又はソルビタンパルミテートのエチレンオキサイド付加物である。これらの組み合わせであれば、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性をより一層持続させることができる。
【0024】
本発明において、エステル化合物Aと付加化合物Bの含有比は、質量比で付加化合物Bが1に対して、エステル化合物Aが2以上4以下である。
付加化合物Bが1に対して、エステル化合物Aの含有比が2未満であると、すなわち付加化合物Bの含有比が高まると、得られるフィルムの長期防滴性が劣ってしまう。定かではないが、付加化合物Bのアルキレンオキサイドの含有率が高まることで、塩化ビニル系樹脂との相溶性の違いから、防滴剤がフィルム表面に移行しやすくなることから、得られるフィルムの防滴性を長期間維持することが困難となる。また、エステル化合物Aの含有比が4を超えると、防滴剤がフィルム表面に移行しにくくなり、得られるフィルムの初期の防滴性を発揮し難いものとなる。
【0025】
本発明において、防滴剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上3質量部以下であることが好ましい。防滴剤の含有量が少なすぎると防滴性が十分でなく、防滴剤の含有量が多すぎると、コストが高くなるだけでなく、得られるフィルムのべたつきが抑制し難くなる傾向にあり、また、ブルームが発生し、フィルム表面が白化する場合がある。
【0026】
本発明において、滑剤としては、メチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを含み、その含有比が、質量比でエチレンビスステアリン酸アミドが1に対し、メチレンビスステアリン酸アミドが0.5を超えて5以下である。
エチレンビスステアリン酸アミドが1に対して、メチレンビスステアリン酸アミドの含有比が0.5以下であると、得られるフィルムの表面が白化し(外観不良)、含有比が5を超えると、得られるフィルムのべたつきを抑制し難い。
ここで、フィルム表面が白化するとは、経時によってフィルム表面に移行してきた成分が固化することで透明なフィルムが白く曇る現象のことであり、白化したフィルムでは見通しが悪くなり農業用被覆材としての使用は困難となる。このような白化の程度は、例えば、温度40℃、湿度90%の恒温槽で1週間促進した後のフィルムにおいてヘーズメーターによって測定されるヘーズが指標となり得る。本発明としては、当該方法で測定されるヘーズが15%未満であることが好ましい。
【0027】
本発明において、滑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上0.6質量部以下であることが好ましい。
【0028】
滑剤としては、本発明の効果を損ねなければ、メチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミド以外のものを含有してもよい。例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;流動パラフィン、ポリエチレンワックス類、塩素化炭化水素類等の炭化水素類;ステアリン酸、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸及び脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル等の滑剤が使用できる。
【0029】
本発明には、必要に応じて、防霧剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料等の添加剤を添加することができる。
【0030】
本発明で使用することができる防霧剤としては、1分子中に、フッ素含有基と、水酸基又はアルキレンオキサイド基の少なくとも1種を有するフッ素系化合物が挙げられ、フッ素含有基としては、パーフルオロアルキル基(CnH2n+1基)、パーフルオロアルコキシ基(CnF2n+1O基)、ポリフルオロアルキル基(HmCnF2n+1-m基)、パーフルオロアルケニル基(CnF2n-1基)、ポリフルオロアルケニル基(HmCnF2n-1-m基)等が挙げられ(式中mは1~3の整数、nは3~20の整数)、アルキレンオキサイド基としては、(C2H4O)n、(C3H6O)n等が挙げられる(式中nは1~30の整数)。これらのフッ素系化合物の添加量としては、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部が好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量部である。
【0031】
本発明で使用することができる熱安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウムなどの金属石鹸、Mg―Zn系やCa―Zn系、Ba―Zn系の複合金属石鹸、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイトなどの有機ホスファイト系安定剤、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート、有機錫メルカプチド、有機錫スルホンアミドなどの錫系安定剤などが使用でき、これらの安定剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。また、熱安定剤の含有量としては、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましく、より好ましくは1~5質量部である。
【0032】
本発明で使用することができる光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネー、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、テトラ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキシサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,5,8,12-テトラキス{4,6-ビス[N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ビペリジル)ブチルアミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2-tert-オクチルアミノ-4,6-ジクロロ-s-トリアジン/N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0033】
本発明で使用することができる紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリロニトリル置換体等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。具体的には、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾトリアゾール)フェノール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリチレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等のオキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類が挙げられ、これらの紫外線吸収剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0034】
本発明で使用することができる充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、タルク、長石、シリカ、ハイドロタルサイト等が使用できる。
【0035】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、公知の方法で製造される。すなわち、塩化ビニル系樹脂に、上記した可塑剤、防滴剤、滑剤及び必要に応じて添加される各種添加剤を添加した塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の適宜の手段により、所望厚さのフィルムに成形される。フィルムの厚さについては、0.05~0.2mm程度が好ましい。
【0036】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性を維持できるものである。
【0037】
本発明において、べたつき抑制は、次のように測定される剥離荷重によって評価される。なお、剥離荷重はJIS K 6732を参考にして以下の方法で測定される。
長さ400mm、幅300mm、厚さ0.1mmの塩化ビニル系樹脂フィルムを50℃の恒温水槽上に展張する。このとき、恒温水槽の水面側をフィルム裏面、外気に触れる面をフィルム表面とする。展張してから24時間経過した後のフィルムから、縦150mm、横100mmの大きさにカットした試験片を2枚作成し、その試験片を一方の試験片のフィルム表面と他方の試験片のフィルム裏面とが重ね合うようにした状態でゴムロール(荷重1kg)にて圧着する。その後、厚さ1mmのガラス板で圧着した試験片を挟み、フィルム表面側が位置する面に2kgの錘を乗せた状態で、80℃のオーブンにて2時間加熱する。その後、常温下で1時間以上静置する。圧着した状態の試験片から縦30mm、横70mmの大きさの測定用試験片を切り取り、圧着した2枚の測定用試験片のそれぞれをつかみ具に固定し、引張試験機((エー・アンド・デイ社製、「テンシロン万能材料試験機」)を用いてすべてがはがれるまで引っ張る。このとき、引きはがし速度は毎分100±10mmとし、最初の最大強さを過ぎて、最低を示したところから、引きはがし距離約40mmまでの平均強さを剥離荷重/Nとする。
2kgの錘を乗せた状態で、80℃のオーブンにて2時間加熱する条件は、夏季にビニールハウスのフィルムを巻き上げた状況を想定したものである。
【0038】
前述の通り測定した剥離荷重が小さい値ほど、べたつきが抑制されていることを示すものである。べたつきが抑制されていれば、農業用被覆材の換気作業時において、換気が完了した後は巻き上げた被覆材を下ろすが、巻き上げた被覆材には日光が当たり被覆材が蓄熱し、被覆材同士が接着することで下ろせなくなってしまうことを防ぐことができる。本発明においては、剥離荷重が0.4N以下であることが好ましい。
【0039】
本発明において、防滴性(初期・長期)は、次のように評価される。
【0040】
(初期)
図1に示すように、α=15°の傾斜をつけて切断した直径76mm、長さ140mmの塩化ビニル製パイプ2の開口部を覆うように農業用塩化ビニル系樹脂フィルム1を展張し、バンド3で固定する。
図2に示すように、50℃の恒温水槽4に当該フィルム1を展張した塩化ビニル製パイプ2を置いたときを開始時間とし、恒温水槽4の水面5からの蒸気が当該フィルム1の裏面に結露し、その水滴が流れるまでの時間を計測する。なお、恒温水槽の水面側をフィルム裏面、外気に触れる面をフィルム表面とする。
【0041】
(長期)初期の評価と同様に、α=15°の傾斜をつけて切断した直径76mm、長さ140mmの塩化ビニル製パイプ2の開口部を覆うように農業用塩化ビニル系樹脂フィルム1を展張し、バンド3で固定する。
図2に示すように、70℃の恒温水槽4に当該フィルム1を展張した塩化ビニル製パイプ2を置き、200時間経過後に取り出す。その後フィルム裏面の水滴を拭き取り、初期の防滴性と同様の方法で当該フィルム1から結露した水滴が流れるまでの時間を計測する。
本発明において、長期とは、1年間使用することを想定している。
【0042】
初期、長期の防滴性としては、フィルムから結露した水滴が流れるまでの時間が短いほど、防滴性に優れることを示す。
本発明において、初期では20分以下、長期では40分以下が好ましく、初期、長期ともに20分以下がより好ましい。40分を超える場合、フィルム表面に付着する水滴が時間の経過とともに大きくなり、その後落下することから、ハウス内部の作物に水滴が落ちることによる病害の発生などを防ぐことが難しい。
【実施例0043】
本発明について実施例および比較例を用いて、以下により詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0044】
〔実施例1~11、比較例1~9〕
表1及び表2に示す配合に基づいて各材料を混練りした後、二本ロールミルにて厚さ0.1mm、幅300mmのフィルムをそれぞれ作製した。得られた塩化ビニル系樹脂フィルムについて、フィルム外観、べたつき抑制及び防滴性を評価し、その結果を表1に示す。なお、表中の配合は質量部で示す。
【0045】
表1で示す材料は、以下の通りである。
塩化ビニル系樹脂:ポリ塩化ビニル
可塑剤:DOP
防滴剤1:ソルビタンステアレート(エステル化合物A)
防滴剤2:ソルビタンパルミテート(エステル化合物A)
防滴剤3:ジグリセリンステアレート(エステル化合物A)
防滴剤4:ポリグリセリンステアレート(エステル化合物A)
防滴剤5:ソルビタンステアレートEO付加物(付加化合物B)
防滴剤6:ソルビタンパルミテートEO付加物(付加化合物B)
滑剤1:メチレンビスステアリン酸アミド(三菱ケミカル社製、商品名「ビスアマイドLA」)
滑剤2:エチレンビスステアリン酸アミド(花王社製、商品名「カオーワックスEBG」)
熱安定剤1:オクチル酸亜鉛
熱安定剤2:Ba-Zn系
光安定剤:ヒンダードアミン系(HALS)
紫外線吸収剤:2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン
【0046】
〔フィルム外観〕
長さ400mm、幅300mm、厚さ0.1mmの塩化ビニル系樹脂フィルムを温度40℃、湿度90%の恒温槽で1週間促進した後、ヘーズメーター(スガ試験機社製、商品名「HZ-V3」)によってヘーズを測定した。
【0047】
〔べたつき抑制〕
長さ400mm、幅300mm、厚さ0.1mmの塩化ビニル系樹脂フィルムを50℃の恒温水槽上に展張した。このとき、恒温水槽の水面側をフィルム裏面、外気に触れる面をフィルム表面とした。展張してから24時間経過した後のフィルムから、縦150mm、横100mmの大きさにカットした試験片を2枚作成し、その試験片を一方の試験片のフィルム表面と他方の試験片のフィルム裏面とが重ね合うようにした状態でゴムロール(荷重1kg)にて圧着した。その後、厚さ1mmのガラス板で圧着した試験片を挟み、フィルム表面側が位置する面に2kgの錘を乗せた状態で、80℃のオーブンにて2時間加熱した。その後、常温下で1時間以上静置した。圧着した状態の試験片から縦30mm、横70mmの大きさの測定用試験片を切り取り、圧着した2枚の測定用試験片のそれぞれをつかみ具に固定し、引張試験機((エー・アンド・デイ社製、「テンシロン万能材料試験機」)を用いてすべてがはがれるまで引っ張った。このとき、引きはがし速度は毎分100±10mmとし、最初の最大強さを過ぎて,最低を示したところから,引きはがし距離約40mmまでの平均強さを剥離荷重/Nとした。なお、剥離荷重はJIS K 6732を参考に測定した。
【0048】
〔防滴性〕
(初期)
図1に示すように、α=15°の傾斜をつけて切断した直径76mm、長さ140mmの塩化ビニル製パイプ2(アズワン社製、商品名「塩ビパイプ」)の開口部を覆うように塩化ビニル系樹脂フィルム1を展張し、バンド3で固定した。
図2に示すように、50℃の恒温水槽4に当該フィルム1を展張した塩化ビニル製パイプ2を置いたときを開始時間とし、恒温水槽4の水面5からの蒸気が当該フィルム1の裏面に結露し、その水滴が流れるまでの時間を計測した。
(長期)初期の評価と同様に、α=15°の傾斜をつけて切断した直径76mm、長さ140mmの塩化ビニル製パイプ2(アズワン社製、商品名「塩ビパイプ」)の開口部を覆うように農業用塩化ビニル系樹脂フィルム1を展張し、バンド3で固定した。
図2に示すように、70℃の恒温水槽4に当該フィルム1を展張した塩化ビニル製パイプ2を置き、200時間経過後に取り出した。その後フィルム裏面の水滴を拭き取り、初期の防滴性と同様の方法で当該フィルム1から結露した水滴が流れるまでの時間を計測した。
【0049】
【0050】
【0051】
表1及び表2より、本発明によれば、特定の防滴剤であるエステル化合物Aと付加化合物Bとを特定の比率で含有し、かつ滑剤としてメチレンビスステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとを特定の比率で含有することで、初期の防滴性とべたつきの抑制及び長期間の防滴性を持続できる塩化ビニル系樹脂フィルムが得られる。当該塩化ビニル系樹脂フィルムは、農業用被覆材に適したものとなる。