(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051237
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ベアリング構造
(51)【国際特許分類】
F16C 35/078 20060101AFI20240404BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240404BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240404BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16C35/078
F16C19/06
F16C33/58
F16C17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157288
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】森 潤
【テーマコード(参考)】
3J011
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J011AA04
3J011BA02
3J011BA09
3J011CA02
3J011JA02
3J011KA02
3J011KA03
3J011MA12
3J011PA03
3J011RA03
3J117AA01
3J117CA04
3J117DA02
3J117DB10
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701FA31
3J701FA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベアリングの部品点数を増加させることがなく、製造コストの増加も少なくするベアリングを提供する。
【解決手段】ベアリング構造10のベアリング12は、第1側面26と第2側面28の少なくとも一方の側面から軸方向に突出した回転抑制突起24を有する。回転抑制突起24の第1及び第2突起46、48は、ベアリング12の周方向に向く頂点を有したV字形状である。支持部材14は、回転抑制突起24と向かい合う第1及び第2壁面52、54を有する。内輪20が回転したとき、第1及び第2突起46、48を有した第1及び第2外輪側面32、34と第1及び第2壁面52、54との間にそれぞれ流体Lが供給される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、前記外輪の内側に配置されて前記外輪に対して相対回転可能な内輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体とを有するベアリングと、
前記外輪よりも熱膨張係数が大きな材料により形成され、前記外輪が固定された支持部材とを備え、前記ベアリングが、前記ベアリングの軸方向の一方側を向く環状の第1側面と、前記軸方向の他方側を向く環状の第2側面とを有するベアリング構造であって、
前記ベアリングは、前記第1側面と前記第2側面の少なくとも一方の側面から前記軸方向に突出した回転抑制突起を有し、
前記回転抑制突起は、前記ベアリングの周方向に向く頂点を有するV字形状に形成され、
前記支持部材は、前記軸方向において前記回転抑制突起と向かい合う壁面を有し、前記内輪の回転時に、前記回転抑制突起が配置された前記側面と前記壁面との間に流体が供給される、ベアリング構造。
【請求項2】
請求項1記載のベアリング構造において、
前記外輪は、前記第1側面の一部である環状の第1外輪側面と、前記第2側面の一部である環状の第2外輪側面とを有し、
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面及び前記第2外輪側面の少なくとも一方に配置される、ベアリング構造。
【請求項3】
請求項2記載のベアリング構造において、
前記回転抑制突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向を向く、ベアリング構造。
【請求項4】
請求項2記載のベアリング構造において、
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面に配置された第1突起と、第2外輪側面に配置された第2突起とを有する、ベアリング構造。
【請求項5】
請求項4記載のベアリング構造において、
前記第1突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向を向き、
前記第2突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向の逆方向を向く、ベアリング構造。
【請求項6】
請求項1記載のベアリング構造において、
前記外輪は、前記第1側面の一部である環状の第1外輪側面と、前記第2側面の一部である環状の第2外輪側面とを有し、
前記内輪は、前記第1側面の他の一部である環状の第1内輪側面と、前記第2側面の他の一部である環状の第2内輪側面とを有し、
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面に配置された第1突起と、前記第2内輪側面に配置された第2突起とを有する、ベアリング構造。
【請求項7】
請求項6記載のベアリング構造において、
前記第1突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向を向き、
前記第2突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向の逆方向を向く、ベアリング構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のベアリング構造において、
前記回転抑制突起は、前記側面に印刷された印刷体である、ベアリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内輪及び外輪を有したベアリングと、外輪を固定する支持部材とを有したベアリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄系金属製材料のハウジングに鉄系金属製のベアリングが装着されると、ベアリングの回転に伴って生じる熱によって、ベアリング及びハウジングがそれぞれ熱膨張する。このとき、熱膨張率の大きなハウジングがベアリングよりも大きく熱膨張し、ベアリングとハウジングとの間の隙間が拡大することがある。この隙間によって、ハウジングに対してベアリングが相対回転し、ベアリングの耐久性が低下することが懸念される。
【0003】
特許文献1のベアリング構造は、ベアリングがハウジングに装着される。外輪の側面は、リング状の凹部を備える。凹部には、非鉄系金属製の高熱膨張部材が装着される。高熱膨張部材がハウジングの内面に向かい合うように配置される。ベアリングが加熱したとき、高熱膨張部材が膨張してハウジングに接触する。これにより、ハウジングに対するベアリングの相対回転を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のベアリング構造では、外輪の側面に凹部を形成する加工が必要となり、製造コスト及び製造工数が増加するという問題がある。高熱膨張部材を必要とすることで、ベアリングの部品点数及び製造コストが増大する。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、外輪と、前記外輪の内側に配置されて前記外輪に対して相対回転可能な内輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体とを有するベアリングと、前記外輪よりも熱膨張係数が大きな材料により形成され、前記外輪が固定された支持部材とを備え、前記ベアリングが、前記ベアリングの軸方向の一方側を向く環状の第1側面と、前記軸方向の他方側を向く環状の第2側面とを有するベアリング構造であって、前記ベアリングは、前記第1側面と前記第2側面の少なくとも一方の側面から前記軸方向に突出した回転抑制突起を有し、前記回転抑制突起は、前記ベアリングの周方向に向く頂点を有するV字形状に形成され、前記支持部材は、前記軸方向において前記回転抑制突起と向かい合う壁面を有し、前記内輪の回転時に、前記回転抑制突起が配置された前記側面と前記壁面との間に流体が供給される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベアリングの内輪が回転するとき、ベアリングの側面と支持部材の壁面との間に流体(液体状の潤滑剤又は冷却剤)が供給されることで、回転抑制突起によってベアリングの側面と支持部材の壁面との間の隙間に動圧を発生させることができる。これにより、回転抑制突起を設けるという簡素な構成で、ベアリングに対してスラスト方向(軸方向)に荷重を発生させ、支持部材に支持された外輪の相対回転を抑制できる。その結果、ベアリングに凹部及び高熱膨張部材を備える構成と比較し、部品点数、製造コスト及び製造工数を削減しつつ、ベアリングの耐久性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るベアリング構造を示す全体断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すベアリングを第1側面側から見た全体正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すベアリングを第2側面側から見た全体正面図である。
【
図5】
図5は、
図2の外輪の第1突起近傍を示す拡大正面図である。
【
図6】
図6は、
図3の外輪の第2突起近傍を示す拡大正面図である。
【
図7】
図7は、回転抑制突起で生じた動圧によってベアリングが軸方向に移動した状態を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係るベアリング構造の全体断面図である。
【
図13】
図13は、回転抑制突起で生じた動圧によってベアリングが軸方向に移動した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、第1実施形態に係るベアリング構造10は、ベアリング12と、ベアリング12が固定される支持部材14とを備える。ベアリング12は、支持部材14の装着溝16に固定される。
【0011】
ベアリング12は、外輪18と、内輪20と、複数の転動体22と、回転抑制突起24とを備える。支持部材14の装着溝16に外輪18が固定され、外輪18に対して内輪20が相対回転可能に支持される。以下、
図2に示す第1側面26側からベアリング12を軸方向に見たとき、内輪20の回転方向Rが反時計回りである場合について説明する。
【0012】
ベアリング12は、第1側面26と、第2側面28とを有する。第1側面26は、環状に形成されベアリング12の軸方向の一方側を向く側面である。第2側面28は、環状に形成されベアリング12の軸方向の他方側を向く側面である。
【0013】
図2に示すように、外輪18は、金属材料で形成され中心軸を有した円環状である。外輪18は、支持部材14の装着溝16に収容されて固定される(
図1参照)。外輪18の外周面は環状である。外輪18の内周には、環状の第1転動溝30を有する。第1転動溝30は、複数の転動体22が転動可能な溝である。第1転動溝30は、外輪18の内周面から径方向外方に向けて窪む。
【0014】
外輪18は、第1外輪側面32と、第2外輪側面34とを有する。第1外輪側面32は、環状に形成され第1側面26の一部を構成する。
図3に示すように、第2外輪側面34は、環状に形成され第2側面28の一部を構成する。
【0015】
図4に示すように、第1外輪側面32と第2外輪側面34とは、外輪18の軸方向に離間する。第1及び第2外輪側面32、34は、外輪18の軸方向と直交する平坦面である。第1外輪側面32と第2外輪側面34とが平行である。
【0016】
図2に示すように、内輪20は、金属材料で形成され中心軸を有した円環状である。内輪20は、外輪18の内側に配置される。内輪20は、外輪18に対して相対回転可能に配置される。内輪20の中心は、シャフト孔36を有する。シャフト孔36は、内輪20を軸方向に貫通する。シャフト孔36には、回転シャフト38が挿通され支持される(
図1参照)。内輪20と回転シャフト38とが一体で回転する。
【0017】
図4に示すように、内輪20の外周には、環状の第2転動溝40を有する。第2転動溝40は、複数の転動体22が転動可能な溝である。第2転動溝40は、内輪20の外周面から径方向内方に向けて窪む。第1転動溝30と第2転動溝40とが向かい合う。第1転動溝30と第2転動溝40との間に複数の転動体22が配置される。
【0018】
内輪20は、第1内輪側面42と、第2内輪側面44とを有する。
図2に示すように、第1内輪側面42は、環状に形成され第1側面26の一部を構成する。
図3に示すように、第2内輪側面44は、環状に形成され第2側面28の一部を構成する。
【0019】
図4に示すように、第1内輪側面42と第2内輪側面44とは、内輪20の軸方向に離間する。第1及び第2内輪側面42、44は、内輪20の軸方向と直交する平坦面である。第1内輪側面42と第2内輪側面44とが平行である。ベアリング12の軸方向において、第1内輪側面42と第1外輪側面32とが略同一位置に配置され、第2内輪側面44と第2外輪側面34とが略同一位置に配置される。
【0020】
複数の転動体22は、内輪20の外周と外輪18の内周との間に配置される。転動体22は、例えば、球状のボールである。外輪18の第1転動溝30と内輪20の第2転動溝40との間に各転動体22が挿入される。複数の転動体22は、第1及び第2転動溝30、40に沿って周方向に移動可能である。複数の転動体22によって外輪18に対して内輪20が相対回転可能である。
【0021】
回転抑制突起24は、支持部材14に対する外輪18の相対回転を抑制可能である。回転抑制突起24は、第1側面26と第2側面28の少なくとも一方の側面から軸方向に突出する。回転抑制突起24は、外輪18に配置される。回転抑制突起24は、第1突起46と、第2突起48とを有する。
【0022】
図2に示すように、第1突起46は、第1側面26の一部である第1外輪側面32に配置される。
図3に示すように、第2突起48は、第2側面28の一部である第2外輪側面34に配置される。
【0023】
図4に示すように、第1突起46は、第1外輪側面32から軸方向に突出する。第1突起46は、例えば、プリンタによって第1外輪側面32に印刷された印刷体である。第1突起46は、プリンタのインクによって第1外輪側面32から突出する。
【0024】
図5に示すように、第1突起46は、V字形状である。第1突起46は、頂点46aと、裾部46bとを有する。頂点46aは、第1突起46の先端に配置される。頂点46aは、先端に向けて尖った先細形状である。裾部46bは、第1突起46の基端に配置される。裾部46bは、頂点46aから離間する方向に向けて徐々に二股状に拡がる。裾部46bの端部は、第1外輪側面32の外縁部及び内縁部の近傍まで延在する。
【0025】
図2に示す外輪18の軸方向から第1外輪側面32を見たとき、第1突起46の頂点46aが、反時計回りで周方向に向けて配置される。すなわち、頂点46aは、内輪20の回転方向Rに向けて配置される。第1突起46の裾部46bが、周方向において頂点46aに対して時計回り(反回転方向)の位置に配置される。
【0026】
図2に示すように、第1突起46は、外輪18の周方向に沿って複数配置される。複数の第1突起46が、外輪18の周方向に等間隔離間して配置される。複数の第1突起46は、第1突起部461を構成する。第1突起部461は、複数配置される。複数の第1突起部461は、外輪18の周方向において等間隔離間して配置される。ここでは、
図2に示すように、3つの第1突起部461を備える場合について説明する。なお、第1突起46(第1突起部461)は、第1外輪側面32の一部に配置してもよいし、第1外輪側面32の周方向全体にわたって配置してもよい。
【0027】
図4に示すように、第2突起48は、第2外輪側面34から軸方向に突出する。第2突起48は、例えば、プリンタによって第2外輪側面34に印刷された印刷体である。第2突起48は、プリンタのインクによって第2外輪側面34から突出する。第1突起46と第2突起48とが、外輪18の中心軸の軸方向において互いに反対方向に突出する。
【0028】
図6に示すように、第2突起48は、V字形状である。第2突起48は、第1突起46と同一形状である。そのため、第1突起46と同一の構成については同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0029】
図3に示す外輪18の軸方向から第2外輪側面34を見たとき、第2突起48の頂点48aが、反時計回りで周方向に向けて配置される。第2突起48の裾部48bが、周方向において頂点48aに対して時計回りの位置に配置される。
図3における内輪20の回転方向Rは、時計回りである。
【0030】
すなわち、第1突起46の頂点46aは、内輪20の回転方向Rに向けて配置され、第2突起48の頂点48aは、内輪20の回転方向Rとは反対方向(逆方向)に向けて配置される。外輪18の周方向において、第1突起46の頂点46aと第2突起48の頂点48aとが互いに反対方向に向けて配置される。
【0031】
図3に示すように、第2突起48は、外輪18の周方向において複数配置される。複数の第2突起48が、外輪18の周方向に等間隔離間して配置される。複数の第2突起48が、第2突起部481を構成する。第2突起部481は、複数配置される。複数の第2突起部481は、外輪18の周方向において等間隔離間して配置される。ここでは、
図3に示すように、3つの第2突起部481を備える場合について説明する。
【0032】
なお、第2突起48(第2突起部481)は、第2外輪側面34の一部に配置してもよいし、第2外輪側面34の周方向全体にわたって配置してもよい。
【0033】
図1に示すように、支持部材14は、アルミニウム等の金属材料で形成される。支持部材14の材質は、外輪18の材質に比べて熱膨張率が大きい。すなわち、支持部材14は、外輪18よりも熱膨張係数が大きな材料により形成される。
【0034】
支持部材14は、環状の装着溝16を有する。装着溝16は、ベアリング12の外輪18に向かい合い外輪18が挿入され固定される。装着溝16は、ベアリング12の中心軸から径方向に離間する方向に窪む。
図1に示すベアリング12の中心軸の軸方向と直交する方向から見たとき、装着溝16の断面は矩形状である。
【0035】
図4に示すように、装着溝16は、周壁50と、一対の第1及び第2壁面52、54とを有する。周壁50は、装着溝16の径方向外方に配置される。周壁50は、ベアリング12の中心軸と平行である。周壁50は、外輪18の外周面に向かい合う。
【0036】
第1壁面52及び第2壁面54は、周壁50を間にして周壁50の延在方向に互いに離間する。第1及び第2壁面52、54は、それぞれ周壁50と略直交する。第1壁面52と第2壁面54とが平行である。
【0037】
装着溝16に対して外輪18が装着されたとき、外輪18の第1外輪側面32と第1壁面52とが向かい合う。周壁50と外輪18の外周面とが接触する。
複数の第1突起46と第1壁面52とが向かい合う。第1壁面52と外輪18の第1外輪側面32とが接触可能である。装着溝16に対して外輪18が装着されたとき、外輪18の第2外輪側面34と第2壁面54とが向かい合う。第2突起48と第2壁面54とが向かい合う。第2壁面54と外輪18の第2外輪側面34とが接触可能である。第1壁面52と第2壁面54とがベアリング12の中心軸の軸方向に互いに離間する。
【0038】
第1外輪側面32が第1壁面52に接触し、第2外輪側面34が第2壁面54に接触し、周壁50と外輪18の外周面とが接触する。これにより、支持部材14の装着溝16に対して外輪18が保持される。第1外輪側面32と第1壁面52との間には、流体Lの供給される第1流体供給部56を有する。第2外輪側面34と第2壁面54との間には、流体Lの供給される第2流体供給部58を有する。図示しない流体供給源からベアリング12に対して流体Lが供給される。流体Lは、例えば、オイル等の潤滑剤又は冷却剤である。流体Lによってベアリング12の内輪20が回転するときに潤滑がなされる。このとき、流体Lの一部が、第1及び第2流体供給部56、58にそれぞれ供給される。
【0039】
次に、ベアリング12の動作について説明する。
【0040】
図示しない駆動源からの駆動力によって回転シャフト38が回転すると、回転シャフト38と共にベアリング12の内輪20が回転する。回転シャフト38及び内輪20の回転方向Rは同一方向(
図2中、反時計回り、
図3中、時計回り)である。このとき、支持部材14の装着溝16に外輪18が固定されているため、支持部材14に対して外輪18は回転しない。複数の転動体22を介して内輪20が外輪18に対して相対回転する。すなわち、ベアリング12によって回転シャフト38が回転可能に支持される。このとき、第1及び第2流体供給部56、58には、図示しない流体供給源から流体Lの一部が供給される。
【0041】
内輪20の回転に伴って、内輪20、複数の転動体22及び外輪18が加熱して熱が発生する。ベアリング12で発生した熱は、外輪18の第1及び第2外輪側面32、34及び外周面を介して支持部材14の装着溝16へと伝わる。これにより、ベアリング12の外輪18が熱膨張する。外輪18から伝わった熱によって支持部材14の装着溝16近傍が熱膨張する。
【0042】
このとき、外輪18の熱膨張率に対し、支持部材14の熱膨張率が大きい。そのため、外輪18に比べて支持部材14が大きく熱変形し、それに伴って、
図4の二点鎖線形状で示すように、支持部材14の第1及び第2壁面52、54と外輪18の第1及び第2外輪側面32、34との間に第1及び第2隙間S1、S2がそれぞれ生じる。第1及び第2隙間S1、S2は、ベアリング12の軸方向に所定間隔を有する。第1隙間S1は、流体Lが供給される第1流体供給部56に生じる。第2隙間S2は、流体Lが供給される第2流体供給部58に生じる。外輪18の外周面と周壁50との嵌合力が弱くなる。
【0043】
外輪18の外周面と周壁50との嵌合力が弱くなり、第1及び第2隙間S1、S2が生じることによって、支持部材14の装着溝16に対する外輪18の固定が解除された非固定状態となる。これにより、内輪20の回転に伴って外輪18が内輪20と共に回転方向R(
図2中、反時計回り)に回転可能な状態となる。装着溝16に対して外輪18が摺動しながら回転する。
【0044】
内輪20の回転に伴って、外輪18が回転方向Rに回転し始めると、
図5に示すように、第1流体供給部56において、頂点46aを先頭として第1突起46が回転方向Rに向けて移動する。第1突起46(第1突起部461)が回転方向Rに移動すると、頂点46aによって第1流体供給部56の流体Lが外輪18の径方向内方及び径方向外方に向けて掻き分けられる。第1突起部461の各第1突起46に沿って流体Lが頂点46aから裾部46bまで移動することで、流体Lが第1流体供給部56の外側へ押し出される。すなわち、
図7に示すように、第1突起46によって第1外輪側面32と第1壁面52との間の第1隙間S1から流体Lが外部へと押し出される。これにより、第1流体供給部56における流体Lの量が減少する。すなわち、第1流体供給部56における流体Lの膜厚が薄くなる。第1隙間S1における流体Lの厚さ方向は、ベアリング12の軸線方向である。
【0045】
このとき、
図5に示す第1流体供給部56を複数の第1突起46が回転方向Rに移動することで、各第1突起46と流体Lとの接触抵抗によって外輪18の回転方向Rへの移動が抑制される。
【0046】
図6に示すように、内輪20の回転方向R(
図6中、時計回り)に向けて外輪18が回転し始めると、第2流体供給部58において裾部48bを先頭として第2突起48が回転方向Rに向けて移動する。第2突起48(第2突起部481)が回転方向Rに移動すると、裾部48bによって第2流体供給部58の流体Lが第2突起48に沿って第2突起48の内側に向けて集められる。流体Lが第2突起48の内側で裾部48bから頂点48aまで移動することで、各第2突起48によって、第2流体供給部58に第2突起48の周辺の流体Lが集められる。このとき、第2流体供給部58を複数の第2突起48が移動することで、各第2突起48と流体Lとの接触抵抗によって外輪18の回転方向Rへの移動が抑制される。
【0047】
これにより、
図7に示すように、第2流体供給部58における流体Lの量が増加し、外輪18の第2外輪側面34を第1外輪側面32に向けて軸方向へ付勢する動圧(押圧力)が発生する。第2流体供給部58で生じた流体Lによる押圧力(荷重)によって、外輪18の第2外輪側面34が第1外輪側面32に向けて押されて移動する。外輪18の第1突起46が支持部材14の第1壁面52に接近する。
【0048】
すなわち、ベアリング12の回転に伴って、熱膨張によって支持部材14の装着溝16と外輪18との間に第1及び第2隙間S1、S2が発生したとき、複数の第2突起48によって第2流体供給部58(第2隙間S2)で押圧力を発生させて外輪18を軸方向に向けて移動させる。これにより、外輪18に対して軸方向に向けた荷重を発生させ、外輪18の第1外輪側面32を装着溝16の第1壁面52に接近させることで、支持部材14に対する外輪18の回転方向Rへの移動が抑制される。支持部材14に対する外輪18の摺動が抑制される。
【0049】
次に、第2実施形態に係るベアリング構造80について説明する。なお、第1実施形態に係るベアリング構造10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図8に示すように、ベアリング構造80は、ベアリング82と、支持部材84とを備える。
【0051】
図9に示すように、ベアリング82は、支持部材84に対する外輪18の相対回転を抑制可能な回転抑制突起86を備える。回転抑制突起86は、第1突起88と、第2突起90とを備える。
【0052】
図10に示すように、第1突起88は、第1側面26を構成する外輪18の第1外輪側面32に配置される。第1突起88の頂点46aが、反時計回りで周方向に向けて配置される。第1突起88の頂点46aは、内輪20の回転方向Rに向けて配置される。第1突起88の裾部46bが、周方向において頂点46aに対して時計回りの位置に配置される。
【0053】
図11に示すように、第2突起90は、第2側面28を構成する内輪20の第2内輪側面44に配置される。第1突起88と第2突起90とが、ベアリング82の軸方向において互いに反対側に配置される。第2突起90の頂点48aが、反時計回りで周方向に向けて配置される。第2突起90の頂点48aは、内輪20の回転方向Rと反対方向(逆方向)に向けて配置される。
【0054】
図9に示すように、支持部材84は、アルミニウム等の金属材料で形成される。支持部材84の材質は、外輪18の材質に比べて熱膨張率が大きい。すなわち、支持部材84は、外輪18よりも熱膨張係数が大きな材料により形成される。
【0055】
支持部材84は、環状の装着溝92を有する。装着溝92は、ベアリング82の外輪18及び内輪20に向かい合う。装着溝92には外輪18が固定される。支持部材84の装着溝92は、外輪18及び内輪20を取り囲む。
【0056】
装着溝92は、周壁50と、一対の第1及び第2壁面94、96とを有する。装着溝92に対してベアリング82が装着されたとき、外輪18の第1外輪側面32及び内輪20の第1内輪側面42と第1壁面94とがそれぞれ向かい合う。第1外輪側面32の第1突起88と第1壁面94とが向かい合う。第1壁面94と外輪18の第1外輪側面32とが接触可能である。
【0057】
装着溝92に対してベアリング82が装着されたとき、外輪18の第2外輪側面34及び内輪20の第2内輪側面44と第2壁面96とがそれぞれ向かい合う。第2内輪側面44の第2突起90と第2壁面96とが向かい合う。第1外輪側面32が第1壁面94に接触し、第2外輪側面34が第2壁面96に接触すると共に、外輪18の外周面が装着溝92の周壁50に嵌合されることで、支持部材84の装着溝92に対して外輪18が保持される。
【0058】
次に、ベアリング82の内輪20が回転したときについて説明する。
【0059】
回転シャフト38と共に内輪20が回転すると、ベアリング82が発熱して内輪20及び外輪18が熱膨張すると共に、ベアリング82から伝わった熱によって、支持部材84の装着溝92近傍が熱膨張する(
図9中、二点鎖線形状参照)。
図9に示すように、支持部材84の第1及び第2壁面94、96と外輪18の第1及び第2外輪側面32、34との間に第1及び第2隙間S1、S2が生じる。外輪18の外周面と装着溝92の周壁50との嵌合力が弱くなる。
【0060】
外輪18と装着溝92の周壁50との嵌合力が弱まり、第1及び第2隙間S1、S2が生じることによって、支持部材84の装着溝92に対する外輪18の固定状態が解除された非固定状態となる。これにより、内輪20の回転に伴って外輪18が内輪20と共に回転方向R(
図10中、反時計回り)に回転可能な状態となる。
【0061】
内輪20の回転方向Rに向けて外輪18が回転し始めると、第1流体供給部56において、
図10に示すように、頂点46aを先頭として第1突起88が回転方向Rに向けて移動する。第1突起88が回転方向Rに移動すると、第1外輪側面32と第1壁面94との間の第1隙間S1の流体Lが、頂点46aによって外輪18の径方向内方及び径方向外方に向けて掻き分けられる。流体Lが第1流体供給部56の外側へ押し出される。これにより、第1隙間S1における流体Lの量が減少する。
【0062】
内輪20の回転方向Rへの回転に伴って、
図12に示すように、裾部48bを先頭として内輪20に配置された第2突起90が回転方向Rに向けて移動する。第2突起90が回転方向Rに移動すると、裾部48bによって第2内輪側面44と第2壁面96との間の流体Lが、第2突起90に沿って第2突起90の内側に向けて集められる。
図13に示す第2内輪側面44と第2壁面96との間における流体Lの量が増加し、内輪20の第2内輪側面44を第1内輪側面42に向けて軸方向へ付勢する動圧(押圧力)が発生する。流体Lによる押圧力によって、内輪20の第2内輪側面44が第1内輪側面42に向けて押され、内輪20が移動する。
【0063】
内輪20の第2内輪側面44が第1内輪側面42側(第1壁面52側)に向けて軸方向に移動することで、内輪20と共に複数の転動体22が第1壁面94側に向けて軸方向に移動する。複数の転動体22の移動に伴って、転動体22と共に外輪18が第1壁面94側に向けて軸方向に移動する。
図13に示すように、外輪18の第1突起88が支持部材84の第1壁面94に接近する。
【0064】
これにより、ベアリング82の回転に伴って、熱膨張によって支持部材84の装着溝92と外輪18との間に第1及び第2隙間S1、S2が発生したとき、内輪20の第2突起90(回転抑制突起86)によって、第2壁面96と第2内輪側面44との間で押圧力を発生させて内輪20を支持部材84の第1壁面52に向けて移動させ、内輪20及び転動体22を介して外輪18を第1壁面52に向けて押圧する。これにより、外輪18に対して軸方向に向けた荷重を発生させ、第1外輪側面32を装着溝92の第1壁面94に接近させることで、支持部材84に対する外輪18の回転方向Rへの移動が抑制される。支持部材84に対する外輪18の摺動が抑制される。
【0065】
なお、第1突起88を、内輪20の第1内輪側面42に配置し、第2突起90を、外輪18の第2外輪側面34に配置してもよい。
【0066】
以上のように、本発明の実施形態では、内輪20の回転によって、ベアリング12、82及び支持部材14、84が熱膨張して第1及び第2隙間S1、S2が発生したとき、第1及び第2流体供給部56、58の流体Lを利用して、回転抑制突起24、86によってベアリング12、82の軸方向に向けた動圧を発生させることができる。これにより、ベアリング12、82の第1及び第2側面26、28の少なくともいずれか一方の側面に回転抑制突起24、86を設けるという簡素な構成で、ベアリング12、82に対してスラスト方向(軸方向)に荷重を発生させ、支持部材14、84に支持された外輪18の相対回転を抑制できる。その結果、凹部及び高熱膨張部材をベアリングに備える構成と比較し、ベアリング12、82の部品点数、製造コスト及び製造工数を削減しつつ、ベアリング12、82の相対回転を抑制することでベアリング12、82及び支持部材14、84の耐久性を向上させることが可能である。
【0067】
回転抑制突起24を、外輪18の第1外輪側面32及び第2外輪側面34に配置することで、外輪18の第1及び第2外輪側面32、34と支持部材14の第1及び第2壁面52、54との間にそれぞれ動圧を発生させることができる。これにより、動圧によって外輪18を軸方向に移動させることで、支持部材14に対する外輪18の相対回転を効果的に抑制することが可能である。
【0068】
回転抑制突起24の頂点46aを、内輪20の回転方向Rを向けて配置することで、第1隙間S1(第1流体供給部56)における流体Lを回転抑制突起24によって掻き分けることができる。これにより、第1隙間S1における流体Lの圧力を低下させることができる。
【0069】
回転抑制突起24は、外輪18の第1外輪側面32に配置された第1突起46と、第2外輪側面34に配置された第2突起48とを有するため、第1及び第2突起46、48によって、外輪18に対して第1及び第2外輪側面32、34側でそれぞれ動圧を発生させることができる。これにより、支持部材14に対する外輪18の相対回転をより一層効果的に抑制することができる。
【0070】
ベアリング12において、第1突起46の頂点46aが、内輪20の回転方向Rを向いて配置され、第2突起48の頂点48aが、内輪20の回転方向Rの逆方向を向いて配置されているため、第1突起46によって、第1外輪側面32に向かい合う第1隙間S1における圧力を低下させ、第2突起48によって第2隙間S2における流体Lを頂点48aに向けて集め、第2隙間S2内の圧力を増加させることができる。これにより、ベアリング12に対して第2外輪側面34から第1外輪側面32へと向かう方向への押圧力が作用し、支持部材14に対する外輪18の相対回転を効果的に抑制することができる。
【0071】
回転抑制突起24は、外輪18の第1外輪側面32に配置された第1突起46と、内輪20の第2内輪側面44に配置された第2突起48とを有しているため、内輪20及び外輪18を介してベアリング12の軸方向における両側で動圧を発生させることができる。これにより、支持部材14に対する外輪18の相対回転を効果的に抑制することができる。
【0072】
ベアリング82において、外輪18に配置された第1突起88の頂点46aが、内輪20の回転方向Rを向いて配置され、内輪20に配置された第2突起90の頂点48aが、内輪20の回転方向Rの逆方向を向いて配置される。これにより、第1突起88によって、ベアリング82の第1隙間S1における圧力を減少させ、第2突起90によって、ベアリング82の第2隙間S2における圧力を増加させる。これにより、ベアリング82に対して第2外輪側面34から第1外輪側面32へと向かう方向に押圧力が作用するため、支持部材84に対する外輪18の相対回転を効果的に抑制することができる。
【0073】
回転抑制突起24、86の第1突起46、88及び第2突起48、90は、それぞれ第1及び第2側面26、28に印刷された印刷体であるため、第1突起46、88及び第2突起48、90を、ベアリング12、82の第1及び第2側面26、28に対して容易に形成することができる。
【0074】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0075】
上記の実施形態は、外輪(18)と、前記外輪の内側に配置されて前記外輪に対して相対回転可能な内輪(20)と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体(22)とを有するベアリング(12、82)と、
前記外輪よりも熱膨張係数が大きな材料により形成され、前記外輪が固定された支持部材(14、84)とを備え、前記ベアリングが、前記ベアリングの軸方向の一方側を向く環状の第1側面(26)と、前記軸方向の他方側を向く環状の第2側面(28)とを有するベアリング構造(10、80)であって、
前記ベアリングは、前記第1側面と前記第2側面の少なくとも一方の側面から前記軸方向に突出した回転抑制突起(24、86)を有し、
前記回転抑制突起は、前記ベアリングの周方向に向く頂点(46a、48a)を有するV字形状に形成され、
前記支持部材は、前記軸方向において前記回転抑制突起と向かい合う壁面(52、54、94、96)を有し、前記内輪の回転時に、前記回転抑制突起が配置された前記側面と前記壁面との間に流体(L)が供給される。
【0076】
前記外輪は、前記第1側面の一部である環状の第1外輪側面(32)と、前記第2側面の一部である環状の第2外輪側面(34)とを有し、
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面及び前記第2外輪側面の少なくとも一方に配置される。
【0077】
前記回転抑制突起の前記頂点(46a)は、前記内輪の回転方向(R)を向く。
【0078】
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面に配置された第1突起(46)と、第2外輪側面に配置された第2突起(48)とを有する。
【0079】
前記第1突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向を向き、
前記第2突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向の逆方向を向く。
【0080】
前記外輪は、前記第1側面の一部である環状の第1外輪側面と、前記第2側面の一部である環状の第2外輪側面とを有し、
前記内輪は、前記第1側面の他の一部である環状の第1内輪側面(42)と、前記第2側面の他の一部である環状の第2内輪側面(44)とを有し、
前記回転抑制突起は、前記第1外輪側面に配置された第1突起(88)と、前記第2内輪側面に配置された第2突起(90)とを有する。
【0081】
前記第1突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向を向き、
前記第2突起の前記頂点は、前記内輪の回転方向の逆方向を向く。
【0082】
前記回転抑制突起は、前記側面に印刷された印刷体である。
【0083】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0084】
10、80…ベアリング構造 12、82…ベアリング
14、84…支持部材 18…外輪
20…内輪 22…転動体
24、86…回転抑制突起 26…第1側面
28…第2側面 46a、48a…頂点
52、94…第1壁面 54、96…第2壁面