(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005125
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法、再生光学フィルムの製造方法、および光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 20/10 20060101AFI20240110BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240110BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240110BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240110BHJP
C08F 8/50 20060101ALI20240110BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240110BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C08F20/10
C08J5/18 CEY
B29B9/06
B32B27/30 A
C08F8/50
C08L101/00
C08L33/04
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105166
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】平間 進
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4F100
4F201
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
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4J100HA59
4J100HC75
4J100JA32
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】光学フィルムを再利用するための技術を提供する。
【解決手段】再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法は、(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムを解重合して(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程と、(メタ)アクリル酸エステル単量体、または前記(メタ)アクリル酸単量体および前記(メタ)アクリル酸単量体以外の単量体を含む単量体群を重合して再生(メタ)アクリル樹脂を得る工程とを具備する。また、光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムとプライマー層とが積層された光学フィルムであって、(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムを解重合して(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程と、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体、または前記(メタ)アクリル酸エステル単量体および前記(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体を含む単量体群を重合して再生(メタ)アクリル樹脂を得る工程と、
を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程において、前記光学フィルムを解重合した後に蒸留によって精製した前記(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る、請求項1に記載の再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法により再生(メタ)アクリル樹脂を得る工程と、
前記再生(メタ)アクリル樹脂を成形して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、
を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムを溶融して第1ペレットを得る工程と、
前記第1ペレットと、(メタ)アクリル樹脂を含み、かつ前記第1プライマー層に含まれる成分を実質的に含まない第2ペレットとを含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、
を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記フィルム原料における前記第1ペレットと前記第2ペレットとの比は、前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムのヘイズ値A[%]と、前記第2ペレットから得られ、かつ前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムと同一の厚さを有する参照フィルムのヘイズ値B[%]とがA≦2Bを満たすように定められる、請求項5に記載の再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムから前記第1プライマー層を除去する工程と、以下の工程(i)または工程(ii)と、
を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
(i)前記第1プライマー層を除去した前記(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融してペレットを得る工程、および前記ペレットを含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程。
(ii)前記第1プライマー層を除去した前記(メタ)アクリル樹脂フィルムの溶液を濾過して濾液を得る工程、および前記濾液を含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程。
【請求項8】
請求項4、5、および7のいずれか1項に記載の製造方法により前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、
前記第1プライマー層に含まれる樹脂と同種のバインダー樹脂を含む第2プライマー層を前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに積層する工程と、
を具備する、再生光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
(メタ)アクリル樹脂フィルムとプライマー層とが積層された光学フィルムであって、
前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、前記プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂を含む、光学フィルム。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、前記プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂として、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを質量基準で合計0.02%以下含む、請求項10に記載の光学フィルム。
【請求項12】
(メタ)アクリル樹脂と、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂と、を含み、
前記少なくとも1つの樹脂の質量基準の含有率が合計0.02%以下である、(メタ)アクリル樹脂フィルム。
【請求項13】
ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを厚さ方向の内部のみに含む、請求項12に記載の(メタ)アクリル樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法、再生光学フィルムの製造方法、および光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される(メタ)アクリル重合体を含む(メタ)アクリル樹脂は、光線透過率などの光学特性に優れるとともに、機械的強度、成形加工性および表面硬度のバランスに優れる。このため、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、有機EL表示装置などの画像表示装置に組み込まれる光学フィルムへの(メタ)アクリル樹脂の応用が進められている。
【0003】
光学フィルムは、他の機能性フィルムと積層されて使用されることがある。例えば、光学フィルムの一種である偏光子保護フィルムは、通常、偏光子と積層されて偏光板とされる。
【0004】
光学フィルムの一例として、(メタ)アクリル樹脂フィルムの表面にプライマー層を形成したものがある。プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂フィルムと他の機能性樹脂フィルムとの接着性を向上させる層である。例えば、特許文献1には、偏光子と、当該偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して貼り合わされた偏光子保護フィルムとを備える偏光板が記載されている。
【0005】
特許文献2には、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、プライマー層とを有する偏光子保護フィルムが記載されている。プライマー層は、ウレタン樹脂と微粒子とを含む易接着剤組成物で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-127893号公報
【特許文献2】特開2010-55062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学フィルムに使用される(メタ)アクリル樹脂フィルムには、全光線透過率やヘイズ値等において、高い光学特性が要求される。このため、(メタ)アクリル樹脂フィルムには、(メタ)アクリル樹脂以外の物質(異物)が含まれていないことが望まれる。そのため、従来は、異物が混入した光学フィルムや上記要求特性を満たさない光学フィルムは、再利用されずに廃棄されてきた。
【0008】
光学フィルムが再利用されずに廃棄されてきた理由は次のとおりである。すなわち、光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムと、(メタ)アクリル樹脂フィルムに積層されたプライマー層とを有する。プライマー層は、例えば、(メタ)アクリル樹脂以外のバインダー樹脂および微粒子を含む。プライマー層を有する光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂以外の物質を含んでいるので、このような光学フィルムを製造に再利用すると、得られる光学フィルムには無視できない程度に異物が混入すると考えられていたのである。本発明者らは、従来の知見にとらわれることなく、検討されていなかったこの課題に着目した。本発明は、光学フィルムを再利用するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の[1]~[13]に示す発明を完成させた。
[1] (メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムを解重合して(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程と、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体、または前記(メタ)アクリル酸エステル単量体および前記(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体を含む単量体群を重合して再生(メタ)アクリル樹脂を得る工程と、を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
[2] 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程において、前記光学フィルムを解重合した後に蒸留によって精製した前記(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る、[1]に記載の再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
[3] 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチルを含む、[1]または[2]に記載の再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
[4] [1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法により再生(メタ)アクリル樹脂を得る工程と、前記再生(メタ)アクリル樹脂を成形して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
[5] (メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムを溶融して第1ペレットを得る工程と、前記第1ペレットと、(メタ)アクリル樹脂を含み、かつ前記第1プライマー層に含まれる成分を実質的に含まない第2ペレットとを含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
[6] 前記フィルム原料における前記第1ペレットと前記第2ペレットとの比は、前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムのヘイズ値A[%]と、前記第2ペレットから得られ、かつ前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムと同一の厚さを有する参照フィルムのヘイズ値B[%]とがA≦2Bを満たすように定められる、[5]に記載の再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。
[7] (メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層された光学フィルムから前記プライマー層を除去する工程と、以下の工程(i)または工程(ii)と、を具備する、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法。(i)前記第1プライマー層を除去した前記(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融してペレットを得る工程、および前記ペレットを含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程。(ii)前記第1プライマー層を除去した前記(メタ)アクリル樹脂フィルムの溶液を濾過して濾液を得る工程、および前記濾液を含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程。
[8] [4]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法により前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る工程と、前記第1プライマー層に含まれる樹脂と同種のバインダー樹脂を含む第2プライマー層を前記再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに積層する工程と、を具備する、再生光学フィルムの製造方法。
[9] (メタ)アクリル樹脂フィルムとプライマー層とが積層された光学フィルムであって、前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、前記プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂を含む、光学フィルム。
[10] 前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、前記プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂として、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含む、[9]に記載の光学フィルム。
[11] 前記(メタ)アクリル樹脂フィルムは、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを質量基準で合計0.02%以下含む、[10]に記載の光学フィルム。
[12] (メタ)アクリル樹脂と、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂と、を含み、前記少なくとも1つの樹脂の質量基準の含有率が合計0.02%以下である、(メタ)アクリル樹脂フィルム。
[13] ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを厚さ方向の内部のみに含む、[12]に記載の(メタ)アクリル樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学フィルムを再利用するための技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法を説明する工程図である。
【
図1B】
図1Bは、第1実施形態に係る再生光学フィルムの製造方法を説明する工程図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。
【
図5】
図5は、光学フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂の製造方法を説明する工程図である。本明細書において「再生(メタ)アクリル樹脂」とは、光学フィルムを再利用して製造された(メタ)アクリル樹脂を意味する。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを包含する用語として使用する。
【0014】
工程S11において、光学フィルムを破砕してチップ化する。原料として使用する光学フィルムをチップ化することで、解重合における原料の取り扱いが容易になる。なお、工程S11は省略してもよい。
【0015】
工程S11で使用する光学フィルムの一例は、規格外の光学フィルムである。規格外の光学フィルムは、要求される光学特性や、要求長さを満たさないフィルムである。工程S11で使用する光学フィルムの別の一例は、不良品の光学フィルムである。不良品の光学フィルムは、光学フィルムの製造過程においてフィルムに異物が混入したり、フィルムに異物が付着したりしたフィルムである。あるいは、不良品の光学フィルムは、光学フィルムの製造においてフィルムロールへの巻取りの際に巻きズレが生じたり、この巻きズレに伴ってシワおよび傷が生じたりしたフィルムである。工程S11で使用する光学フィルムの更に別の一例は、光学フィルムの製造において、大判の光学フィルムから所定サイズの光学フィルムを切り取った後に生じた端材の光学フィルムである。工程S11では、規格外の光学フィルム、不良品の光学フィルム、および端材の光学フィルムが原料として使用されうる。なお、工程S11では、プライマー層を塗布していない(メタ)アクリル樹脂フィルムも併せて破砕してよい。このような(メタ)アクリル樹脂フィルムは、光学フィルムの製造において、製造上の都合でプライマー層を塗布できなかったものでよい。
【0016】
工程S11で使用する光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層されたフィルムである。光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムの少なくとも一方の主面に第1プライマー層が形成された構造を有する。本明細書において「主面」は、フィルムまたは層の最も広い面積を有する面を意味する。第1プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂とは異なる種類の樹脂をバインダー樹脂として含む。本明細書において「異なる種類」は、同種でないことを意味する。「同種」の意味およびバインダー樹脂の具体例については後述する。第1プライマー層は、微粒子を含んでいてもよい。微粒子の具体例についても後述する。
【0017】
工程S12において、光学フィルムを解重合する。詳細には、光学フィルムを構成する(メタ)アクリル樹脂フィルムに含まれる(メタ)アクリル重合体を解重合する。これにより(メタ)アクリル酸エステル単量体を得ることができる。解重合は、例えば、光学フィルムを加熱炉や二軸混錬機等で加熱することによって実施されうる。
【0018】
光学フィルムの解重合は、(メタ)アクリル酸エステル単量体が生成する温度で実施すればよい。光学フィルムを解重合するときの温度は、300~450℃であってもよく、350~400℃であってもよい。光学フィルムを解重合することによって、(メタ)アクリル酸エステル単量体を得ることができる。ただし、(メタ)アクリル酸エステル単量体とともに、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体が得られてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とともに、この単量体の二量体、三量体などから構成されるオリゴマーが得られてもよい。
【0019】
分解生成物は、反応容器から気体として導出して回収することができる。この場合、第1プライマー層に含まれていた少なくとも1つの成分は、反応容器内に固体または液体として残存しうる。第1プライマー層に含まれる少なくとも1つの成分としては、バインダー樹脂、微粒子などが挙げられる。気体として導出した分解生成物は、例えば、凝縮液などの液体として回収することができる。
【0020】
バインダー樹脂は、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つであってもよい。微粒子は、有機粒子であっても無機粒子であってもよい。有機粒子は、例えば、ビニル架橋重合体などの有機架橋重合体を含む粒子である。無機粒子は、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子である。無機粒子は、ガラス質の粒子であってもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程においては、光学フィルムを解重合した後に蒸留によって精製することで、(メタ)アクリル酸エステル単量体を得ることとしてもよい。分解生成物を精製することにより、回収した(メタ)アクリル酸エステル単量体の純度を向上させることができる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程では、光学フィルムの解重合による分解生成物の生成と、分解生成物の蒸留とを連続して実施してもよい。言い換えると、解重合のための反応容器と精製のための蒸留容器とが接続された装置を用いて、解重合および蒸留を連続して実施し、(メタ)アクリル酸エステル単量体を得ることとしてもよい。これに限らず、(メタ)アクリル酸エステル単量体を得る工程では、光学フィルムを解重合による分解生成物を反応容器から回収し、回収した分解生成物を反応容器に接続されていない蒸留容器に導入し、蒸留容器において再度加熱し、蒸留により精製してもよい。
【0023】
分解生成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む。分解生成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分として含んでいてもよい。本明細書において「主成分」は、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、メタクリル酸メチル(MMA)を含んでいてもよい。メタクリル酸メチルは、回収および再利用に適している。メタクリル酸メチルは、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの透明性の向上に寄与しうる成分でもある。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、光学フィルムを再利用して得られた(メタ)アクリル樹脂フィルムを意味する。分解生成物は、メタクリル酸メチル以外に、メタクリル酸メチルの二量体、三量体などから構成されるオリゴマーを含んでいてもよい。分解生成物は、メタクリル酸メチルを主成分として含んでいてもよく、メタクリル酸メチルのみを含んでいてもよい。
【0025】
次に、工程S13において、(メタ)アクリル酸エステル単量体、または(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群を重合する。単量体群は、(メタ)アクリル酸エステル単量体とともに(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体を含む。これにより、再生(メタ)アクリル樹脂が得られる。ここでは、(メタ)アクリル酸エステル単量体、または(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群に、市販の(メタ)アクリル酸エステル単量体を任意の添加量で添加して重合してもよい。
【0026】
再生(メタ)アクリル樹脂は、例えば、その他の(メタ)アクリル重合体、その他の熱可塑性重合体、および添加剤などを含んでいてもよい。混合方法は、例えば、押出混練または溶液状態での混合である。押出混練には、例えば、オムニミキサー、単軸押出機、二軸押出機、および加圧ニーダーを使用できる。
【0027】
再生(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル重合体を含む。再生(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル重合体の含有率は、30重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。
【0028】
図1Bは、第1実施形態に係る再生光学フィルムの製造方法を説明する工程図である。工程S14において、再生(メタ)アクリル樹脂を成形して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る。すなわち、再生(メタ)アクリル樹脂を用いて再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る。これにより、光学フィルムを再利用して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを製造できる。再生(メタ)アクリル樹脂を用いて再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る方法としては、溶液キャスト法、溶融押出法、溶融プレス法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。
【0029】
工程S15において、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する。これにより、再生光学フィルムが製造される。第2プライマー層は、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムと偏光板などの他のフィルムとの貼り合わせを容易にする。
【0030】
第2プライマー層は、第1プライマー層に含まれるバインダー樹脂と同種のバインダー樹脂を含んでいてもよい。本明細書において、「同種」は、同一系統を意味するが、組成が同一であることまでは求めない用語として使用する。したがって、「同種のバインダー樹脂」は、単量体の種類および/または相互の結合に基づいて同一系統に分類されるバインダー樹脂を意味する。例えば、単量体が完全に同一ではないがともにポリウレタンに分類される重合体を含む2つのバインダー樹脂は、その両方がウレタン樹脂という同一系統の樹脂に分類されるため、同種のバインダー樹脂に相当する。なお、念のために断っておくが、第2プライマー層の「第2」は、1つの光学フィルムに2つのプライマー層が形成されていることを意味するものではない。説明の便宜上、再利用される光学フィルムにおけるプライマー層を第1プライマー層と称し、製造された光学フィルム(再生光学フィルム)におけるプライマー層を第2プライマー層と称して区別しているに過ぎない。
【0031】
第2プライマー層は、第1プライマー層に含まれる微粒子と同種の微粒子を含んでいてもよい。「同種の微粒子」は、微粒子の成分に基づいて同一系統に分類される微粒子を意味する。例えば、不純物量が同一ではないがともにシリカを主成分とする2つの微粒子は、ともにシリカ微粒子に分類されるため、同種の微粒子である。
【0032】
第2プライマー層は、例えば、塗布工程および乾燥工程によって、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに形成される。塗布工程は、プライマー組成物を再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの表面に塗布して、当該組成物の塗布膜を形成する工程である。乾燥工程は、塗布膜を乾燥させて第2プライマー層を(メタ)アクリル樹脂フィルムに形成する工程である。プライマー組成物は、易接着性を有する樹脂と、微粒子とを含む。易接着性を有する樹脂は、バインダー樹脂として機能する樹脂であってもよい。
【0033】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。工程S21において、光学フィルムを破砕してチップ化する。原料として使用する光学フィルムをチップ化することで、溶融における原料の取り扱いが容易になる。工程S21は、第1実施形態で説明した工程S11と同様であるため説明を省略する。なお、工程S21は省略してもよい。
【0034】
光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層されたフィルムである。第1プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂とは異なる種類の樹脂をバインダー樹脂として含む。第1プライマー層は、微粒子を含んでいてもよい。
【0035】
工程S22において、光学フィルムを溶融する。光学フィルムを溶融して成形することによって、第1ペレットを得ることができる。第1ペレットは、(メタ)アクリル樹脂と第1プライマー層に含まれていた成分とを含む。
【0036】
工程S21を実施した場合、工程S22では、破砕物を溶融する。破砕物を溶融して成形することによって第1ペレットを得ることができる。光学フィルムを溶融する方法または破砕物を溶融する方法は特に限定されず、ペレットの成形も公知の方法に従って実施すればよい。
【0037】
次に、工程S23において、フィルム原料を調製する。フィルム原料は、第1ペレットと第2ペレットとを含む。フィルム原料は、第1ペレットと第2ペレットとを混合することによって得られる。
【0038】
第2ペレットは、(メタ)アクリル樹脂を含む。加えて、第2ペレットは、第1プライマー層に含まれる成分を実質的に含まない。第1プライマー層に含まれる成分の例は、(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂および微粒子である。本明細書において「実質的に含まない」とは、微量の混入を許容する趣旨であり、含有率が、質量基準で0.1%未満、0.01%未満、さらには0.001%未満であることを意味する。
【0039】
第2ペレットは、(メタ)アクリル樹脂を主成分として含んでいてもよい。第2ペレットにおける(メタ)アクリル樹脂の含有率は、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。第2ペレットは、(メタ)アクリル樹脂のみを含んでいてもよい。
【0040】
フィルム原料において、第1ペレットと第2ペレットとの比は、例えば、以下のようにして定めることができる。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムのヘイズ値をA[%]と定義する。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、第1ペレットおよび第2ペレットを含むフィルム原料を溶融して成形されたフィルムである。一方、参照フィルムのヘイズ値B[%]と定義する。参照フィルムは、第2ペレットから得られ、かつ再生(メタ)アクリル樹脂フィルムと同一の厚さを有するフィルムである。すなわち、参照フィルムは、第2ペレットのみを含むフィルム原料を溶融して成形されたフィルムである。このとき、好ましくはA≦2B、すなわちA/2B≦1の関係を満たすように第1ペレットと第2ペレットとの比を調整する。これにより、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの透明性がより向上しうる。第1ペレットと第2ペレットとの比は、A/2B≦0.8の関係を満たすように調整してもよく、A/2B≦0.7の関係を満たすように調整してもよい。A/2Bの下限に特に制限はないが、A/2B≧0.5であってもよい。
【0041】
フィルム原料における第1ペレットと第2ペレットとの比は、質量基準で1:99~50:50であってもよく、質量基準で5:95~20:80であってもよい。
【0042】
次に、工程S24において、フィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、フィルム原料を溶融して成形されたフィルムである。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル樹脂と第1プライマー層に含まれる成分とを含む。
【0043】
その後、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する。これにより、再生光学フィルムが製造される。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する方法は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0044】
なお、工程S21~S24の間において、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加剤を添加してよい。
【0045】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。第3実施形態において、光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層されたフィルムである。第1プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂とは異なる種類のバインダー樹脂を含む。第1プライマー層は、微粒子を含んでいてもよい。
【0046】
工程S31において、光学フィルムから第1プライマー層を除去する。これにより、光学フィルムから第1プライマー層が除去された(メタ)アクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【0047】
光学フィルムから第1プライマー層を除去する方法として、ブラシを使用する方法、サンドブラスト処理による方法、サンドペーパーを使用する方法、超音波照射を使用する方法、ハンドローラーを使用する方法、光学フィルムを溶媒に溶解させた後、未溶解のプライマー層をフィルターや遠心分離等で除去する方法などが挙げられる。当該方法は、これらの方法から選ばれる1つを使用してもよく、2つ以上を併用してもよい。工程31では、第1プライマー層の一部のみが光学フィルムから除去されてよく、第1プライマー層の全てが光学フィルムから除去されてもよい。
【0048】
第1プライマー層を除去する工程は、ロールツーロール法によって実施してもよい。ロールツーロール法では、上流のロールから光学フィルムを繰り出して、第1プライマー層を除去した後に、フィルムを下流のロールに巻き取る。
【0049】
次に、工程S32において、(メタ)アクリル樹脂フィルムを破砕してチップ化する。(メタ)アクリル樹脂フィルムをチップ化することで、溶融における原料の取り扱いが容易になる。(メタ)アクリル樹脂フィルムを破砕する方法は、第1実施形態で説明した工程S11と同じである。なお、工程S32は省略してもよい。
【0050】
工程S33において、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融する。これにより、フィルム原料を得ることができる。詳細には、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融して成形することによってフィルム原料としてのペレットを得ることができる。工程S32を実施した場合、工程S33では、(メタ)アクリル樹脂フィルムの破砕物を溶融する。この場合、破砕物を溶融して成形することによってペレットを得ることができる。(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融する方法または破砕物を溶融する方法は、第2実施形態で説明したとおりである。
【0051】
工程S33によって得られたペレットは、(メタ)アクリル樹脂を含む。工程S33によって得られたペレットを第3ペレットと称する。第3ペレットは、(メタ)アクリル樹脂を主成分として含んでいてもよい。第3ペレットは、第1プライマー層に含まれる成分を実質的に含んでいなくてもよい。第3ペレットは、(メタ)アクリル樹脂のみを含んでいてもよい。
【0052】
次に、工程S34において、第3ペレットを含むフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、フィルム原料を溶融して成形されたフィルムである。上述のとおり、第3ペレットは、光学フィルムを再利用することによって得られたペレットである。第3実施形態によれば、光学フィルムを再利用して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【0053】
フィルム原料は、第3ペレットと、第3ペレット以外のペレットとを含んでいてもよい。第3ペレット以外のペレットは、例えば、(メタ)アクリル樹脂を含む。第3ペレット以外のペレットは、(メタ)アクリル樹脂を主成分として含んでいてもよく、(メタ)アクリル樹脂のみを含んでいてもよい。第3ペレット以外のペレットとしては、第1実施形態で説明した再生(メタ)アクリル樹脂を含むペレット、第2実施形態で説明した第2ペレットなどが挙げられる。
【0054】
工程S34においてフィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る方法の例は、第2実施形態で説明したとおりである。
【0055】
その後、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する。これにより、再生光学フィルムが製造される。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する方法は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0056】
なお、工程S31~S34の間において、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加剤を添加してよい。
【0057】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造方法を説明する工程図である。第4実施形態において、光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムと第1プライマー層とが積層されたフィルムである。第1プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂とは異なる種類のバインダー樹脂を含む。第1プライマー層は、微粒子を含んでいてもよい。
【0058】
工程S41において、光学フィルムから第1プライマー層を除去する。これにより、光学フィルムから第1プライマー層が除去された(メタ)アクリル樹脂フィルムを得ることができる。光学フィルムから第1プライマー層を除去する方法は、第3実施形態で説明したとおりである。
【0059】
工程S42において、(メタ)アクリル樹脂フィルムを破砕してチップ化する。(メタ)アクリル樹脂フィルムをチップ化することで、溶媒への破砕物の溶解が容易になる。(メタ)アクリル樹脂フィルムを破砕する方法は、第1実施形態で説明したとおりである。なお、工程S42は省略してもよい。
【0060】
次に、工程S43において、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶媒に溶解させる。これにより、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶媒に溶解させた溶液が得られる。工程S42を実施した場合、工程S43では、破砕物を溶媒に溶解させる。これにより、破砕物を溶媒に溶解させた溶液が得られる。
【0061】
(メタ)アクリル樹脂フィルムの溶解に使用する溶媒および破砕物の溶解に使用する溶媒として、ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系有機溶媒、アセトン、2-ブタノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドンなどの溶媒が挙げられる。溶媒は、これらの溶媒から選ばれる1つを使用してもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0062】
次に、工程S44において、工程S43によって得られた溶液を濾過して濾液を得る。溶液を濾過することによって、不純物を除くことができる。濾過には、例えば、濾過精度が0.1~10μmのフィルターを使用できる。もちろん、濾過精度の異なるフィルターを併用して段階的に濾過してもよい。
【0063】
さらに、工程S45において、フィルム原料から再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得る。フィルム原料は、工程S44で得られた濾液を含む。濾液は、光学フィルムを再利用して得られた(メタ)アクリル樹脂を含む。濾液を使用することで、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを容易に形成できる。第4実施形態によれば、光学フィルムを再利用して再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを得ることができる。フィルム原料は、(メタ)アクリル樹脂を含む溶液をさらに含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂を含む溶液に含まれる(メタ)アクリル樹脂として、市販の(メタ)アクリル樹脂、第1実施形態で得られた再生(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。
【0064】
工程S45において、例えば、濾液を基材の表面に塗布して塗布膜を形成する。塗布膜を乾燥させることによって再生(メタ)アクリル樹脂フィルムが得られる。濾液を塗布するための基材としては、樹脂フィルム、ガラス板などが挙げられる。
【0065】
その後、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する。これにより、再生光学フィルムが製造される。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに第2プライマー層を積層する方法は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0066】
なお、工程S41~S45の間において、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加剤を添加してよい。
【0067】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る光学フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムとプライマー層とが積層された光学フィルムである。加えて、(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プライマー層に含まれているバインダー樹脂と同種の樹脂を含む。ここで、バインダー樹脂と同種の樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つである。本実施形態の(メタ)アクリル樹脂フィルムは、バインダー樹脂と同種の樹脂を含みながらも、高い透明性を有しうる。
【0068】
図5は、光学フィルムの一例を模式的に示す断面図である。光学フィルム1は、(メタ)アクリル樹脂フィルム2と、プライマー層3とを具備する。光学フィルム1は、(メタ)アクリル樹脂フィルム2の一方の主面にプライマー層3が形成された構造を有する。
図5では、(メタ)アクリル樹脂フィルム2の一方の主面の全体にプライマー層3が形成されている。ただし、(メタ)アクリル樹脂フィルム2の一方の主面の一部のみにプライマー層3が形成されていてもよい。(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、例えば、第2実施形態から第4実施形態で得られた再生(メタ)アクリル樹脂フィルムである。本実施形態では、光学フィルムは再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを含むので、光学フィルムを再生光学フィルムと称する。プライマー層3は、例えば、第1実施形態で説明した第2プライマー層である。
【0069】
本実施形態の光学フィルムでは、(メタ)アクリル樹脂フィルムの双方の主面にプライマー層が形成されていてもよい。
【0070】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、(メタ)アクリル樹脂と、プライマー層3に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂とを含む。(メタ)アクリル樹脂は、市販の(メタ)アクリル樹脂を含んでいてもよく、第1実施形態で説明した再生(メタ)アクリル樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂と同種の樹脂は、上記に例示したとおりである。
【0071】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、プライマー層3に含まれた少なくとも1つの成分を、プライマー層3における含有率より低い含有率で含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを質量基準で合計0.02%以下、0.015%以下、さらに0.01%以下、特に0.007%以下となる範囲で含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを質量基準で合計0.0001%以上、さらには0.001%以上含んでいてもよい。
【0072】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、微粒子をさらに含んでいてもよい。微粒子は、プライマー層3に含まれた微粒子と同種の微粒子であってもよい。微粒子の種類は上記に例示したとおりである。
【0073】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2は、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0074】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル樹脂とともに、バインダー樹脂として機能しうる樹脂を微量に含む。具体的には、(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル樹脂と、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む。加えて、上記少なくとも1つの樹脂の質量基準の含有率が合計0.02%以下である。(メタ)アクリル樹脂フィルムは、単層のフィルムであってもよい。
【0075】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは、再生(メタ)アクリル樹脂を成形して得られた再生(メタ)アクリル樹脂フィルムであってもよい。(メタ)アクリル樹脂フィルムは、光学フィルムを溶融して得られたペレットまたは(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融して得られたペレットを溶融して成形することによって得られてもよい。あるいは、(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶解させて得られた溶液を塗布して乾燥させることによって得られてもよい。
【0076】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは、バインダー樹脂として機能しうる上記の樹脂を、質量基準で合計0.02%以下、0.015%以下、0.01%以下、さらに0.007%以下含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂フィルムは、バインダー樹脂として機能しうる上記の樹脂を質量基準で合計0.0001%以上、さらには0.001%以上含んでいてもよい。
【0077】
後述する第2プライマー層は、(メタ)アクリル樹脂フィルムに含まれる上記の樹脂と同種の樹脂を含んでいてもよい。この形態は、高い透明性を有する(メタ)アクリル樹脂フィルムの実現に有利である。
【0078】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは、微粒子をさらに含んでいてもよい。微粒子は、第2プライマー層に含まれる微粒子と同種の微粒子であってもよい。
【0079】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0080】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは高い全光線透過率を有する。(メタ)アクリル樹脂フィルムの全光線透過率は、90%以上であってもよく、91%以上であってもよく、92%以上であってもよい。全光線透過率の上限値は、例えば99%である。
【0081】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは低いヘイズ値を有する。(メタ)アクリル樹脂フィルムのヘイズ値は、1.0%以下であってもよく、0.9%以下であってもよく、0.7%以下であってもよく、0.5%以下であってもよい。ヘイズ値の下限値は、例えば、0%である。
【0082】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは低い黄色度(YI値)を有する。(メタ)アクリル樹脂フィルムのYI値は、0.4以下であってもよく、0.3以下であってもよく、0.2以下であってもよい。YI値の下限値は、例えば、ゼロである。
【0083】
(メタ)アクリル樹脂フィルムは、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを厚さ方向の内部のみに含んでいてもよい。言い換えると、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つは、(メタ)アクリル樹脂フィルムの主面に露出していなくてもよい。これにより、(メタ)アクリル樹脂フィルムは、表面での光散乱を抑制できる。
【0084】
図6は、(メタ)アクリル樹脂フィルムの別の一例を示す断面図である。(メタ)アクリル樹脂フィルム2aは、第一層4と第二層5とを具備する。(メタ)アクリル樹脂フィルム2aにおいて、第二層5は第一層4に積層されている。第一層4は、第6実施形態に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムである。第一層4は、(メタ)アクリル樹脂フィルム2aの主面に露出していない。すなわち、第一層4の一方の主面の全体に第二層5が形成されている。第一層4は、(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂とを含む。(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂として、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。第一層4は、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第二層5は、(メタ)アクリル樹脂を含む。第二層5は、(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂を実質的に含んでいなくてもよい。
【0085】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2aは、第一層4に積層された第三層6をさらに具備していてもよい。第二層5と第三層6との間に第一層4が配置されている。第一層4の主面の全体に第三層6が形成されていてもよい。第三層6に含まれている樹脂の組成は、第二層5に含まれている樹脂の組成と同じであってもよい。第三層6は、(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂を実質的に含んでいなくてもよい。これにより、(メタ)アクリル樹脂フィルム2aは、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを厚さ方向の内部のみに含む。
【0086】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2aにおいて、第一層4の厚さは、1~30μmであってもよく、5~20μmであってもよい。第一層4の厚さを適切に調節することで、(メタ)アクリル樹脂フィルムの透明性がより向上する。
【0087】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2aにおいて、第二層5の厚さは、第一層4の厚さより厚くてもよい。第二層5の厚さは、5~50μmであってもよく、12~35μmであってもよい。第三層6の厚さは、第二層5の厚さと同じであってもよい。第二層5の厚さおよび第三層6の厚さを適切に調節することで、(メタ)アクリル樹脂フィルム2aの強度および透明性がより向上する。
【0088】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2aの一方の主面の一部に、プライマー層が形成されていてもよい。このプライマー層を第2プライマー層と称する。(メタ)アクリル樹脂フィルム2aにおいて、第二層5の主面の全体に第2プライマー層が形成されていてもよい。第二層5の主面の一部のみに第2プライマー層が形成されていてもよい。
【0089】
第2プライマー層は、例えば、第5実施形態で説明したプライマー層3である。第2プライマー層は、バインダー樹脂を含む。第2プライマー層は、微粒子をさらに含んでいてもよい。第2プライマー層に含まれるバインダー樹脂は、第一層4に含まれるバインダー樹脂と同種の樹脂であってもよい。第2プライマー層が微粒子を含む場合、第2プライマー層に含まれる微粒子は、第一層4に含まれる微粒子と同種の微粒子であってもよい。
【0090】
(メタ)アクリル樹脂フィルム2aにおいて、第三層6にプライマー層が形成されていてもよい。第三層6の主面の全体にプライマー層が形成されていてもよい。第三層6の主面の一部のみにプライマー層が形成されていてもよい。第二層5および第三層6にプライマー層が形成されている場合、第二層5に形成されたプライマー層に含まれる樹脂の組成は、第三層6に形成されたプライマー層に含まれる樹脂の組成と同じであってもよい。プライマー層は、微粒子をさらに含んでいてもよい。
【0091】
[再生(メタ)アクリル樹脂フィルム]
以下、上述した各実施形態から得られる再生(メタ)アクリル樹脂フィルムについて説明する。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、光学フィルムを再利用して得られた(メタ)アクリル樹脂フィルムを意味する。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、例えば、再生(メタ)アクリル樹脂を成形して得られる。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、光学フィルムを溶融して得られたペレットまたは(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融して得られたペレットを溶融して成形することによって得られてもよい。あるいは、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶解させて得られた溶液を塗布して乾燥させることによって得られてもよい。
【0092】
再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、(メタ)アクリル重合体を含む。(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位を有する重合体である。本明細書では、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位を(メタ)アクリル酸エステル単位と称する。(メタ)アクリル重合体における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率は、10重量%以上であってもよく、30重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよい。(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、1万~50万であってもよく、5万~30万であってもよい。
【0093】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチルの各単量体に由来する構成単位である。(メタ)アクリル重合体が(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位を有することによって、最終的に得られた再生光学フィルムの光学特性および熱安定性が向上する。(メタ)アクリル重合体は、2つ以上の(メタ)アクリル酸エステル単位を有していてもよい。
【0094】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニル、2-ヒドロキシメチル-1-ブテン、メチルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾールの各単量体に由来する構成単位である。(メタ)アクリル重合体は、これらの構成単位を2つ以上有していてもよい。
【0095】
(メタ)アクリル重合体は、主鎖に環構造を有していてもよい。このような(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と環構造を有する単量体とを共重合することによって得られる。あるいは、(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群を重合した後に環化反応を行うことによって得られる。(メタ)アクリル重合体が主鎖に環構造を有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および当該環構造の含有率の合計が50重量%以上であってもよい。
【0096】
環構造は、例えば、N-置換マレイミド構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびラクトン環構造から選ばれる少なくとも1つである。N-置換マレイミド構造は、例えば、シクロヘキシルマレイミド構造、メチルマレイミド構造、フェニルマレイミド構造、ベンジルマレイミド構造である。光学フィルムの耐熱性の観点から、環構造は、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、N-アルキル置換マレイミド構造、グルタルイミド構造)、環状無水物構造(例えば、無水マレイン酸構造および無水グルタル酸構造)であることが好ましい。環構造は、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、ラクトン環構造、無水マレイン酸構造、およびN-置換マレイミド構造を含んでいてもよい。
【0097】
以下の一般式(1)に無水グルタル酸構造およびグルタルイミド構造を示す。
【0098】
【0099】
一般式(1)におけるR1、R2は互いに独立して水素原子、またはメチル基であり、X1は酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子であるとき、R3は存在しない。X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
【0100】
X1が酸素原子のとき、一般式(1)により示される環構造は無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を分子内で脱アルコール環化縮合させることによって形成できる。X1が窒素原子のとき、一般式(1)により示される環構造はグルタルイミド構造である。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することによって形成できる。
【0101】
以下の一般式(2)に、無水マレイン酸構造およびN-置換マレイミド構造を示す。
【0102】
【0103】
一般式(2)におけるR4、R5は互いに独立して水素原子、またはメチル基であり、X2は酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子であるとき、R6は存在しない。X2が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
【0104】
X2が酸素原子のとき、一般式(2)により示される環構造は無水マレイン酸構造である。無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することによって形成できる。X2が窒素原子のとき、一般式(2)により示される環構造はN-置換マレイミド構造である。
【0105】
なお、一般式(1)、(2)の説明において例示した環構造を形成する方法では、各々の環構造を形成するために用いる重合体が全て(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有するため、得られる樹脂は(メタ)アクリル樹脂である。
【0106】
以下の一般式(3)に、ラクトン環構造を示す。
【0107】
【0108】
一般式(3)において、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0109】
一般式(3)における有機残基として、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、例えば、1から20である。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、2から20である。不飽和脂肪族炭化水素基として、エテニル基、プロペニル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は、例えば、6から20である。芳香族炭化水素基として、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基は、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる少なくとも1つの基により置換されていてもよい。
【0110】
一般式(3)には6員環のラクトン環構造が示されている。ラクトン環構造は、4員環から8員環であってもよい。環構造の安定性に優れることから、環構造は、5員環または6員環であってもよい。
【0111】
以下の一般式(4)に、別のラクトン環構造(α-メチレンラクトン由来の構成単位)を示す。
【0112】
【0113】
一般式(4)において、R10~R13は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0114】
式(4)に示す構造を有する構成単位は、以下の式(5)に示すα-メチレン-γ-ブチロラクトンを含む単量体の重合により形成できる。
【0115】
【0116】
一般式(5)におけるR10~R13は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、例えばアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。アルキル基は直鎖でも分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば複素環構造を含んでいてもよい。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。R10~R13は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、全て水素原子であることがより好ましい。
【0117】
(メタ)アクリル重合体が主鎖に環構造を有する場合、当該重合体における環構造の含有率は、5~90重量%であってもよく、10~70重量%であってもよく、10~60重量%であってもよく、10~50重量%であってもよい。環構造の含有率が5重量%以上の場合、フィルムの耐熱性、耐溶剤性、および表面硬度が特に優れる。環構造の含有率が90重量%以下の場合、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの延伸容易性および再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの製造時のハンドリング性が特に優れる。なお、共重合体における各構成単位の含有量は、共重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定し各構成単位に対応するピークの面積比を算出することで求めることができる。
【0118】
再生(メタ)アクリル樹脂のTg(ガラス転移温度)は、100℃以上であってもよく、110℃以上であってもよく、115℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。再生(メタ)アクリル樹脂のTgの上限値は、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムとしたときの延伸性の観点から、170℃であってもよい。
【0119】
再生(メタ)アクリル樹脂フィルムは、再生(メタ)アクリル樹脂の成形により得られる。再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの厚さは、5~200μmであってもよく、5~100μmであってもよく、25~50μmであってもよい。当該厚さが5μm以上であると強度が優れる。当該厚さが200μm以下であると透明性が優れる。
【0120】
[プライマー層]
再生光学フィルムは、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムの表面にプライマー層が形成されている。再生光学フィルムは、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムを用いて製造された光学フィルムを意味する。再生光学フィルムが有するプライマー層を第2プライマー層と称する。第2プライマー層は、バインダー樹脂を含む。第2プライマー層は、バインダー樹脂を主成分として含んでいてもよい。バインダー樹脂は、上記に例示した樹脂であってもよい。
【0121】
第2プライマー層は、ウレタン樹脂を含んでいてもよい。この場合、再生(メタ)アクリル樹脂フィルムに対する第2プライマー層の密着性が向上するとともに、再生光学フィルムの易接着性が向上する。
【0122】
第2プライマー層は、微粒子をさらに含んでいてもよい。微粒子の種類は上述したとおりである。
【0123】
なお、微粒子の粒径は、特に限定するわけではないが、1000nm以下であり、例えば10~500nmである。
【実施例0124】
最初に、本実施例において作製した再生(メタ)アクリル樹脂および(メタ)アクリル樹脂フィルムの評価方法を示す。
【0125】
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下のとおりであった。
【0126】
-システム:東ソー社製GPCシステム HLC-8220
-測定側カラム構成
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
分離カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
-リファレンス側カラム構成
リファレンスカラム:東ソー社製、TSKgel SuperH-RC
-展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業社製、特級)
-展開溶媒の流量:0.6mL/分
-標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS-オリゴマーキット)
-カラム温度:40℃
【0127】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、日本産業規格(JIS) K 7121の規定に準拠して求めた。分析には、示差走査熱量計(DSC)(リガク社製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用いた。窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。昇温速度は、20℃/分であった。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0128】
(3)熱分解開始温度
JIS K 7120の規定に従い、示差熱重量同時測定装置(島津製作所社製、DTG-50)を用いて、樹脂の熱分解開始温度を測定した。熱分解開始温度とは、熱重量測定において樹脂の質量の減少が開始したときの温度である。測定は、昇温速度10℃/分、流入ガスである窒素フロー50mL/分の条件で実施した。
【0129】
(4)フィルムの厚さ
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0130】
(5)全光線透過率、ヘイズ値
フィルムの全光線透過率およびヘイズ値は、濁度計(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。
【0131】
(6)YI値(イエローネスインデックス)
フィルムのYI値は、色彩・色差計(日本電色工業社製、Color meter ZE6000)を用いて測定した。
【0132】
(7)屈折率
フィルムの屈折率は、アッベ屈折計((株)アタゴ社製、アッベ屈折計2-T)を用いて測定した。
【0133】
(8)(メタ)アクリル樹脂フィルムにおける第1ペレットの使用量とフィルムのヘイズ値との関係
各サンプルに係る(メタ)アクリル樹脂フィルムのヘイズ値をA[%]と定義する。一方、参照フィルムのヘイズ値をB[%]と定義する。参照フィルムは、サンプル1-1で得られたペレットを溶融して成形することによって得られたフィルムである。このとき、A/2Bを算出した。なお、ヘイズ値の測定において、(メタ)アクリル樹脂フィルムの厚さおよび参照フィルムの厚さは同一であった。なお、サンプル21~26では、参照フィルムとして、サンプルX2のプレスフィルムを使用した。サンプル31および32では、参照フィルムとして、サンプルX3の溶融押出フィルムを使用した。
【0134】
(9)プライマー層の厚さの測定
以下に示す2つの方法のうち、いずれかの方法によってプライマー層の厚さを測定した。なお、いずれの方法でも、プライマー層の厚さは同じ値であった。
【0135】
(9-1)SEMによる測定
(メタ)アクリル樹脂フィルムにプライマー層が積層された光学フィルムの断面を走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、FE-SEM S-4800)を用いて観察することで、プライマー層の厚さを測定した。なお、測定条件は、以下のとおりであった。
【0136】
[測定条件]
加速電圧:20kV
エミッション電流:5μAまたは10μA
作動距離(W.D.):8mm
【0137】
(9-2)FT-IRによる測定
FT-IR(ThermoSCIENTIFIC社製、iS10)を用いて光学フィルムのIRスペクトルを測定した。基材フィルム((メタ)アクリル樹脂フィルム)に帰属するピーク(a)と、プライマー層に帰属するピーク(b)とのピーク強度の比(b/a)を算出した。これを、以下に示す方法により得られた、プライマー層の厚さ-ピーク強度比の換算式に照らし合わせることで、ピーク強度の比(b/a)を、プライマー層の厚さに換算した。
【0138】
プライマー層の厚さ-ピーク強度比の換算式は、次の方法で求めた。基材フィルムおよびプライマー層の厚さが既知の光学フィルムに対して、ピーク強度の比(b/a)を算出した。これとは別に、プライマー層を備えず、基材フィルムの厚さが既知のフィルムに対して、ピーク強度の比(b/a)を算出した。2つのピーク強度の比の値から線形近似直線を求めた。この近似直線の式を、プライマー層の厚さ-ピーク強度比の換算式と定義した。なお、FT-IRの測定条件は以下のとおりであった。
【0139】
[測定条件]
測定方法:ATR法
測定領域:650-4000cm-1
分解能:4cm-1
積算回数:32回
【0140】
(10)フィルムに含まれているウレタン樹脂の含有量の測定
少なくとも片面にプライマー層が形成されていない光学フィルムに対して、プライマー層が形成されていない側からIRスペクトルを測定した。これにより、基材フィルムに帰属するピーク(a)と、基材フィルムに含まれる、プライマー層に由来する物質(ウレタン樹脂)に帰属するピーク(b)とのピーク強度の比(b/a)を算出した。これを、以下に示す方法により得られた、含有量-ピーク強度比の換算式に照らし合わせることで、ピーク強度の比(b/a)を、ウレタン樹脂の含有量に換算した。
【0141】
含有量-ピーク強度比の換算式は、次の方法で求めた。基材フィルムおよびプライマー層の厚さが既知の光学フィルムに対して、(プライマー層の厚さ)/(基材フィルムの厚さ)の値をウレタン樹脂の含有量と定義した。そして、この光学フィルムを1辺約5mmの四角形に破砕して溶融した。このようにして得られたペレットをプレスしてフィルムを作製した。得られたフィルムに対してIRスペクトルを測定した。これにより、基材フィルムに帰属するピーク(a)と、ウレタン樹脂に帰属するピーク(b)とのピーク強度の比(b/a)を算出した。これとは別に、基材フィルム中にウレタン樹脂を含んでいない光学フィルムに対して、上記した方法によってピーク強度の比(b/a)を算出した。2つのピーク強度の比の値から線形近似直線を求めた。この近似直線の式を、含有量-ピーク強度比の換算式と定義する。なお、FT-IRの測定条件は(9-2)に記載したとおりである。
【0142】
なお、光学フィルムの両面にプライマー層を有する場合には、一方の面のプライマー層を除去してから上記測定を実施した。また、フィルムが積層フィルムであった場合には、一旦フィルムを破砕して得られた破砕物を溶融して成形したペレットを用いて、溶融プレス成形によって得られたフィルムに対して上記測定を実施した。
【0143】
(サンプル1-1)
攪拌装置、温度センサ、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、市販のメタクリル酸メチル(MMA)229.6部、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33部、酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ2112」)0.138部、非重合性有機溶媒としてトルエン248.6部、およびn-ドデシルメルカプタン0.1925部を加え、ここへ窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス570」)0.2838部を添加するとともに、上記t-アミルパーオキシイソノナノエート0.5646部とスチレン(St)12.375部とを2時間かけて滴下しながら約105~110℃の還流下で溶液重合を進行させた。滴下終了後、約105~110℃でさらに4時間の熟成を行った。「アデカスタブ」はADEKA社の登録商標である。「ルペロックス」アルケマ社の登録商標である。
【0144】
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A-18」)0.206部を加え、約90~110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
【0145】
次に、得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた。その後、ベントタイプスクリュー二軸押出機に、反応後の溶液を、樹脂量に換算して31.2部/時の処理速度で導入して、脱揮を実施した。脱揮の際、イオン交換水を0.47部/時の投入速度で第2ベントの後ろおよび第4ベントの後ろから投入した。加えて、オクチル酸亜鉛(日本化学産業社製「ニッカオクチックス亜鉛18%」)、イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)50部、アデカスタブAO-412S(ADEKA社製)のトルエン溶液を、得られる熱可塑性樹脂組成物に対してオクチル酸亜鉛が質量比で160ppm、イルガノックス1010が50ppm、アデカスタブAO-412Sが50ppmとなるように注入した。
【0146】
なお、ベントタイプスクリュー二軸押出機は、バレル温度250℃の条件で、1個のリアベント、4個のフォアベントを備えていた。4個のフォアベントは、上流側から、第1フォアベント、第2フォアベント、第3フォアベント、および第4フォアベントと称する。加えて、ベントタイプスクリュー二軸押出機は、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備えていた。さらに、ベントタイプスクリュー二軸押出機の先端部には、リーフディスク型のポリマーフィルターが配置されていた。ポリマーフィルターの濾過精度は5μmであった。リアベントの減圧度を798hPaに設定した。第1ベントの減圧度を266hPaに設定した。第2ベントから第4ベントの減圧度を、いずれも27hPaに設定した。
【0147】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端から上記ポリマーフィルターで濾過しながら排出した。ダイスを通過させた後、孔径1μmのフィルター(オルガノ社製「製品名:ミクロポアフィルタ1EU」)で濾過して、30±10℃の範囲内の温度に保持した冷却水を満たした水槽中でストランドを冷却した。次いでストランドを切断機(ペレタイザ)に導入することで、ラクトン環構造を主鎖に有するラクトン環重合体を含む樹脂組成物(1A)からなるペレット(1C)を得た。
【0148】
(サンプル1-2)
樹脂組成物(2A)として、市販のポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(住友化学社製、商品名:スミペックスEX)を使用した。
【0149】
(サンプル1-3)
樹脂組成物(3A)として、ダイセル・エボニック社製のアクリル樹脂(商品名:プレキシイミド8813)を使用した。このアクリル樹脂は、グルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体を主成分として含む。この重合体を構成するモノマーの一部はメタクリル酸メチルである。
【0150】
(サンプル1-4)
樹脂組成物(4A)として、日本触媒社製のアクリル樹脂(商品名:ポリイミレックスPML203)を使用した。このアクリル樹脂は、マレイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体を主成分として含む。この重合体を構成する単量体の一部はメタクリル酸メチルである。
【0151】
(サンプル2-1)
攪拌した純水80重量部中に、アモルファスシリカ微粒子を含むエマルジョン(日本触媒社製、シーホスターKE-W30、平均粒径(一次粒子径)0.28μm、粒度分布1.1、固形分20重量%)0.09重量部、ウレタン樹脂(第一工業製薬社製、スーパーフレックス210、固形分35重量%)20重量部をこの順に加えて十分に混合して混合液を得た。その後、この混合液を、1μmの孔径を有するフィルターに通して、エマルジョン状の分散体であるプライマー組成物(1B)を得た。
【0152】
(サンプル3-1)
樹脂組成物(1A)からなるペレット(1C)を80℃の熱風オーブンで8時間乾燥した。その後、ペレット(1C)を、手動式加熱プレス機(井元製作所社製、IMC-180C型)を用いて、230℃および2分間の条件で溶融プレス成形することで、(メタ)アクリル樹脂フィルム(1P)を得た。サンプル3-1に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プレスフィルムであった。サンプル3-1に係るプレスフィルム(1P)の厚さは、150±10μmであった。
【0153】
(サンプル4-1)
樹脂組成物(1A)からなるペレット(1C)を80℃の熱風オーブンで8時間乾燥した。その後、ペレット(1C)を、二軸押出機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから270℃の条件で溶融押出することで、(メタ)アクリル樹脂フィルム(1M)を得た。サンプル4-1に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、溶融押出フィルムであった。サンプル4-1に係る溶融押出フィルムの厚さは、約100μmであった。二軸押出機は、直径20mmのスクリューを有していた。溶融押出の際には、Tダイから、110℃に保持した冷却ロールに光学フィルムを吐出して、その後、複数のロールを介した後に巻取機で巻き取った。
【0154】
(サンプル4-2)
樹脂組成物(4A)からなるペレット(4C)を使用したことと、250℃の条件で溶融押出したこととを除き、サンプル4-1と同じ方法で、(メタ)アクリル樹脂フィルム(4M)を得た。サンプル4-2に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、溶融押出フィルムであった。
【0155】
(サンプル5-1)
樹脂組成物(1A)からなるペレット(1C)を80℃の熱風オーブンで8時間乾燥した。その後、ペレット(1C)を、先端部にポリマーフィルターを備えた単軸押出機を用いて280℃の条件でTダイから溶融押出した。ポリマーフィルターの濾過精度は、5μmであった。その後、得られたフィルムを110℃の冷却ロール上に吐出して、フィルムを製膜した。製膜したフィルムの厚さは、174μmであった。
【0156】
次に、製膜したフィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該フィルムの縦方向に、延伸温度136℃、延伸倍率2.2倍で自由端一軸延伸した。フィルムの縦方向は、溶融押出時の流れ方向であり、MD方向である。これにより縦延伸フィルムを得た。その後、縦延伸フィルムをロール状に巻き取った。縦延伸フィルムの厚さは、116μmであった。
【0157】
次に、縦延伸フィルムの一方の面に、プライマー組成物(1B)を、グラビアコート法により、乾燥後の塗布膜の厚さが1200nmとなるように塗布した。その後、縦延伸フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴んでテンター延伸機へ供給して、延伸温度143℃、延伸倍率3.0倍の条件で横延伸した。このようにして、プライマー層が一方の主面に形成された、二軸延伸フィルムである光学フィルム(1F)を得た。その後、光学フィルム(1F)をロール状に巻き取った。光学フィルム(1F)の厚さは、40μmであった。プライマー層の厚さは、400nmであった。
【0158】
(サンプル5-2)
樹脂組成物(2A)からなるペレット(2C)を使用したことを除き、サンプル5-1と同じ方法で、光学フィルム(2F)を得た。光学フィルム(2F)の厚さは、40μmであった。プライマー層の厚さは、400nmであった。
【0159】
(サンプル5-3)
樹脂組成物(3A)からなるペレット(3C)を使用したことを除き、サンプル5-1と同じ方法で、光学フィルム(3F)を得た。光学フィルム(3F)の厚さは、40μmであった。プライマー層の厚さは、400nmであった。
【0160】
[解重合により得られたMMAを使用した再生(メタ)アクリル樹脂の製造]
(サンプル1)
原料として光学フィルム(1F)を使用した。光学フィルム(1F)を破砕して反応容器中に加えた。反応容器を380℃に加熱して光学フィルム(1F)を解重合して揮発性成分を回収した。揮発性成分には、メタクリル酸メチルおよびスチレンが含まれていた。その後、回収した揮発性成分を大気圧下で蒸留することによって精製し、再生メタクリル酸メチル(MMA)を得た。
【0161】
次に、市販のメタクリル酸メチルの代わりに、再生メタクリル酸メチルを用いたことを除き、サンプル1-1と同じ方法で、ラクトン環構造を主鎖に有するラクトン環重合体を含む樹脂組成物(1A-1)からなるペレット(1C-1)を得た。得られた樹脂組成物(1A-1)の数平均分子量、重量平均分子量、ガラス転移温度、熱分解開始温度、および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0162】
(サンプル2)
光学フィルム(1F)、光学フィルム(2F)、および光学フィルム(3F)を、1:1:1の重量比で混合した混合物を原料として用いたことを除き、サンプル1と同じ方法で、サンプル2に係る再生メタクリル酸メチルを得た。次いで、この再生メタクリル酸メチルを用いたことを除き、サンプル1-1と同じ方法で、ラクトン環構造を主鎖に有するラクトン環重合体を含む樹脂組成物(1A-2)からなるペレット(1C-2)を得た。
【0163】
(サンプルX1)
サンプル1-1で作製した樹脂組成物(1A)を使用した。
【0164】
【0165】
表1に示すように、サンプル1およびサンプル2では、樹脂組成物の各物性は、サンプルX1の樹脂組成物の各物性と同じであった。
【0166】
[解重合により得られたMMAを使用したプレスフィルムの製造]
(サンプル11)
ペレット(1C-1)を用いたことを除き、サンプル3-1と同じ方法で、(メタ)アクリル樹脂フィルム(1P-1)を得た。サンプル11に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プレスフィルムであった。サンプル11に係るプレスフィルム(1P-1)について、全光線透過率、ヘイズ値、YI、およびウレタン樹脂の含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0167】
(サンプル12)
ペレット(1C-2)を用いたことを除き、サンプル3-1と同じ方法で、プレスフィルム(1P-2)を作製した。
【0168】
(サンプルX2)
サンプル3-1で作製したプレスフィルム(1P)を使用した。
【0169】
【0170】
表2に示すように、サンプル11およびサンプル12では、再生メタクリル酸メチルを使用して得られたプレスフィルムの各物性は、サンプルX2で製造されたプレスフィルムの各物性と同程度であった。
【0171】
[解重合により得られたMMAを使用した溶融押出フィルムの製造]
(サンプル13)
ペレット(1C-1)を用いたことを除き、サンプル4-1と同じ方法で、(メタ)アクリル樹脂フィルム(1M-1)を得た。サンプル13に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、溶融押出フィルムであった。サンプル13に係る溶融押出フィルム(1M-1)について、全光線透過率、ヘイズ値、YI、およびウレタン樹脂の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0172】
(サンプル14)
ペレット(1C-2)を用いたことを除き、サンプル4-1と同じ方法で、サンプル14に係る溶融押出フィルム(1M-2)を得た。
【0173】
(サンプル15)
光学フィルム(1F)、光学フィルム(2F)、および光学フィルム(3F)を、1:1:1の重量比で混合した混合物を原料として用いたことを除き、サンプル1と同じ方法で、サンプル15に係る再生メタクリル酸メチルを得た。
【0174】
次に、サンプル15に係る再生メタクリル酸メチル30重量部、酸化防止剤(ADEKA社製、アデカスタブ2112)0.05重量部、および重合溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)65重量部を反応容器に加えた。反応容器に窒素ガスを導入しながら内温を80℃まで昇温させ、還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス575)0.052重量部およびMEK5重量部を添加して反応溶液を調製した。添加後、窒素気流下の還流状態で反応溶液を6時間攪拌して重合溶液を得た。
【0175】
次に、得られた重合溶液をベントタイプスクリュー二軸押出機に加えた。バレル温度240℃の条件で脱揮し、重合溶液に含まれる重合体からペレットを作製した。これにより、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である透明な樹脂組成物(5A-2)からなるペレット(1C-3)を得た。得られた樹脂組成物(5A-2)の重量平均分子量は10.0万、ガラス転移温度は97℃であった。
【0176】
得られたペレット(1C-3)を用いたことを除き、サンプル4-1と同じ方法で、サンプル15に係る(メタ)アクリル樹脂フィルム(5M-2)を得た。サンプル15に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、溶融押出フィルムであった。
【0177】
(サンプルX3)
サンプル4-1で作製した溶融押出フィルム(1M)を使用した。
【0178】
(サンプルX4)
サンプル4-2で作製した溶融押出フィルム(4M)を使用した。
【0179】
【0180】
表3に示すように、サンプル13~15では、再生メタクリル酸メチルを使用して得られた溶融押出フィルムの各物性は、サンプルX3に係る溶融押出フィルムの各物性およびサンプルX4に係る溶融押出フィルムの各物性と同程度であった。
【0181】
[第1ペレットと第2ペレットとの混合およびプレスフィルムの作製]
(サンプル21)
樹脂組成物(1A)からなるペレット(1C)と、光学フィルム(1F)から得られたペレット(1D)とを、表4に記載の質量比で混合した後、280℃で溶融して成形することによって混合物を得た。なお、光学フィルム(1F)を四角形に破砕した後に、溶融して成形することによって、ペレット(1D)を得た。次いで、得られた混合物を用いたことを除き、サンプル3-1と同じ方法で、サンプル21に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムを得た。サンプル21に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プレスフィルムであった。サンプル21に係るプレスフィルムの厚さは、150±10μmであった。サンプル21に係るプレスフィルムについて、全光線透過率、ヘイズ値、YI、およびウレタン樹脂の含有量を測定した。結果を表4に示す。
【0182】
(サンプル22~26)
ペレット(1C)とペレット(1D)とを、表4に記載の質量比で混合して混合物を得たことを除き、サンプル21と同じ方法で、サンプル22~26に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムを得た。サンプル22~26に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プレスフィルムであった。得られた(メタ)アクリル樹脂フィルムの厚さは、150±10μmであった。
【0183】
(サンプルX2)
サンプル3-1で作製したプレスフィルム(1P)を使用した。
【0184】
【0185】
表4に示すように、サンプル21~26に係るプレスフィルムの各物性は、サンプルX2に係るプレスフィルムと同程度であった。サンプル21~23に係るプレスフィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%以下であり、A/2B≦1の関係が満たされていた。サンプル24~26に係るプレスフィルムでは、サンプルX2に係るプレスフィルムに比べて、全光線透過率、ヘイズ値、YIが劣った。サンプル24~26に係るプレスフィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%超であり、A/2B≦1の関係が満たされていなかった。サンプル21~23では、全光線透過率、ヘイズ値、およびYIが、サンプル24~26より優れていた。
【0186】
[第1ペレットと第2ペレットとの混合および溶融押出フィルムの作製]
(サンプル31および32)
ペレット(1C)とペレット(1D)とを、表5に記載の質量比で混合して混合ペレットを得た。この混合ペレットを用いたことを除き、サンプル4-1と同じ方法で、溶融押出フィルムを得た。溶融押出フィルムの厚さは、150±10μmであった。
【0187】
(サンプルX3)
サンプル4-1で作製した溶融押出フィルム(1M)を使用した。
【0188】
【0189】
表5に示すように、サンプル31および32に係る溶融押出フィルムの各物性は、サンプルX3に係る溶融押出フィルムと同程度であった。サンプル31に係る溶融押出フィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%であり、A/2B≦1の関係が満たされていた。サンプル32に係る溶融押出フィルムでは、サンプルX3に係る溶融押出フィルムに比べて、ヘイズ値が劣った。サンプル32に係る溶融押出フィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%超であり、A/2B≦1の関係が満たされていなかった。サンプル31では、全光線透過率、ヘイズ値、およびYIが、サンプル32より優れていた。
【0190】
[積層フィルム]
(サンプル41および42)
単軸押出機Aに、ペレット(1C)を加えた。一方、単軸押出機Bに、ペレット(1D)を加えた。ペレット(1C)で作られた層(第二層)/ペレット(1D)で作られた層(第一層)/ペレット(1C)で作られた層(第三層)、の順に層構造が形成されるように、フィードブロックを介して積層体を得た。次いで、この積層体を、幅150mmのコートハンガータイプTダイによってシート状に押出することによって、(メタ)アクリル樹脂フィルムを得た。この(メタ)アクリル樹脂フィルムは、溶融押出フィルムであった。この溶融押出フィルムの厚さは、100μmであった。なお、溶融押出の際には、Tダイから、110℃に保持した冷却ロールにフィルムを吐出して、溶融押出フィルムを作製した。単軸押出機AおよびBの吐出量を調整することによって各層の厚さを調整した。
【0191】
【0192】
表6に示すように、サンプル41および42に係る溶融押出フィルムの各物性は、サンプルX3に係る溶融押出フィルムと同程度であった。サンプル41に係る溶融押出フィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%であった。サンプル42に係る溶融押出フィルムの各物性は、サンプルX3に係る溶融押出フィルムと比べてヘイズ値が劣った。サンプル42に係るプレスフィルムでは、ウレタン樹脂の含有量が0.02質量%超であった。サンプル41では、全光線透過率、ヘイズ値、およびYIが、サンプル42より優れていた。サンプル41および42では、ウレタン樹脂は、溶融押出フィルムの厚さ方向の内部のみに含まれ、表面に露出した領域には含まれていなかった。
【0193】
[プライマー層の除去およびプレスフィルムの作製]
(サンプル51)
サンプル5-1の光学フィルム(1F)の表面をサンドペーパーで削ってプライマー層を除去した。その後、圧縮空気によって光学フィルム上の異物を除去した。さらに、テクネック社製のハンドローラーで光学フィルム上の異物を除去して、プライマー層を除去した光学フィルムを得た。プライマー層を除去した光学フィルムを四角形に破砕した後に、溶融して成形することによって、サンプル51に係るペレット(1E)を得た。なお、プライマー層の有無は、FT-IRを用いて、プライマー層の厚さを測定することによって確認した。
【0194】
次いで、ペレット(1C)とペレット(1E)とを、7:3の重量比で混合して混合物を得た。この混合物を用いたことを除き、サンプル3-1と同じ方法で、サンプル51に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムを得た。サンプル51に係る(メタ)アクリル樹脂フィルムは、プレスフィルムであった。サンプル51に係るプレスフィルムの厚さは、150±10μmであった。
【0195】
サンプル51に係るプレスフィルムの全光線透過率は91.9%であり、ヘイズ値は0.8%であった。
【0196】
[プライマー層の除去および溶液製膜フィルムの作製]
(サンプル61)
サンプル51と同じ方法で、サンプル5-1の光学フィルム(1F)の表面からプライマー層を除去した。プライマー層を除去した光学フィルムを四角形に破砕してからジクロロメタンに溶解させて、固形分20質量%のドープ液を作製した。得られたドープ液を、濾過精度3.0μmのポリプロピレン製プリーツフィルター(ロキテクノ社製、125L-SHP-030)に通した後、脱泡した。
【0197】
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにドープ液を滴下し、アプリケーターを使用して膜厚800μmになるように塗布した。その後、PETフィルムごと乾燥機に入れて、40℃で30分間乾燥させた後、60℃で30分乾燥させた。その後、塗布したフィルムをPETから剥離させた。得られたフィルムがカールしないように上下に広幅の山型クリップを取り付け乾燥機に吊るした後、100℃で12時間乾燥させ、サンプル61に係る溶液製膜フィルムを得た。溶液製膜フィルムの厚さは、100μmであった。
【0198】
サンプル61に係る溶液製膜フィルムの全光線透過率は92.4%であり、ヘイズ値は0.1%であった。
【0199】
(サンプル62)
プライマー層を除去しなかったことを除き、サンプル61と同じ方法で溶液製膜フィルムの作製を試みた。しかし、ドープ液をフィルターに通す際に、すぐにフィルターの詰まりが発生したので、ドープ液を安定的に濾過できなかった。
本発明によれば、光学フィルムを再利用できる。本発明の光学フィルムは、偏光子保護フィルムなどの各種の保護フィルム、位相差フィルム、および偏光フィルムへの使用に好適である。