(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051263
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】通気性シート、及び、通気性シートを備える印刷装置ならびに搬送装置
(51)【国際特許分類】
B41J 13/10 20060101AFI20240404BHJP
B41J 13/00 20060101ALI20240404BHJP
B41J 11/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J13/10
B41J13/00
B41J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157323
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】惠木 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】道畑 典子
【テーマコード(参考)】
2C058
2C059
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AE07
2C058DA11
2C058DA38
2C059AA21
2C059AA30
2C059AA76
2C059DD06
2C059DD10
2C059DD29
2C059DD31
(57)【要約】
【課題】吸引固定されたフィルムなどの非通気性基材の表面へ印刷を施す際に使用する真空吸着装置の吸着ステージに、又は非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に使用する真空搬送装置の吸引部分に、強固に固定可能な通気性シートを提供すること。
【解決手段】本発明の通気性シートは、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージを備える真空吸着装置、ならびに、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸引部分を備える真空搬送装置を用いると共に、非通気性基材に接する不織布層と吸着ステージ又は吸引部分に接する支持層とが積層されてなる通気性シートにおいて、当該支持層が強磁性体を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸着装置の吸着ステージ上に吸引固定された非通気性基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記非通気性基材の間に介在させて使用する、
あるいは、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、前記吸引部分と前記非通気性基材の間に介在させて使用する、通気性シートであって、
非通気性基材に接する不織布層と、前記吸着ステージ又は前記吸引部分に接する織物又は編物からなる支持層とが積層されてなり、
前記支持層が強磁性体を含む、通気性シート。
【請求項2】
強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージを備えた前記真空吸着装置と、請求項1に記載の通気性シートとを備える、非通気性基材の表面へ印刷を施すため使用する印刷装置。
【請求項3】
強磁性体を磁力によって吸着可能な吸引部分を備えた前記真空搬送装置と、請求項1に記載の通気性シートとを備える、非通気性基材を搬送するため使用する搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定されたフィルムなどの非通気性基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記非通気性基材の間に介在させて使用する通気性シート、及び、前記通気性シートを備えた印刷装置に関するものである。
【0002】
また、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、前記吸引部分と前記非通気性基材の間に介在させて使用する通気性シート、及び、前記通気性シートを備えた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
電気機器の小型化に伴い、小型で軽量な、或いは厚さの薄い電子部品、例えば集積回路や配線材あるいは電子基板など(以降、包括的に電子部品と称することがある)の開発が進められている。このような開発に応える技術として、近年、プリンテッドエレクトロニクスが注目を浴びている。
【0004】
プリンテッドエレクトロニクスとは、導電性成分あるいは半導体成分などを配合した各種インク(以降、プリンテッドエレクトロニクスに使用される各種インクを単にインクと称することがある)を、フィルムなどの非通気性基材の表面に印刷し、前記非通気性基材の表面に配線や種々の電子部品を形成する技術分野である。
【0005】
プリンテッドエレクトロニクスを用いることで、例えば、フィルムなどの軽くて薄い非通気性基材や、柔軟性を有する非通気性基材の表面に配線や種々の電子部品を形成し、小型・軽量化された、あるいはフレキシブルな電気機器を提供することができる。
【0006】
プリンテッドエレクトロニクスにおいては、電子部品を形成するにあたって微細で鮮明な印刷が実現できるように、真空吸着装置の吸着ステージ(特に、平坦な吸着ステージ)に吸引固定された非通気性基材の表面へ印刷を施すことが行われている。このとき、吸引固定されている非通気性基材表面の凹凸が非常に小さいことが要求される。
【0007】
そこで、非通気性基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定する際に吸着ステージの吸引口から垂直に発生する吸引圧力を分散させることで、吸引固定されている非通気性基材表面の凹凸を非常に小さくでき、非通気性基材の表面への鮮明な印刷を実現できるよう、真空吸着装置の吸着ステージと非通気性基材との間に通気性シートを介在させることが行われている。
【0008】
このような通気性シートとして、例えば、国際公開2016/021239号(特許文献1)に、非通気性基材に接する不織布層と、吸着ステージに接する織物又は編物からなる支持層とが積層されてなることを特徴とする通気性シートが開示されている。
【0009】
また、プリンテッドエレクトロニクスの他に、上述の通気性シートは真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、真空搬送装置と非通気性基材との間に介在させる通気性シートとして利用できる。真空搬送装置に用いられる通気性シートには、プリンテッドエレクトロニクス用途として使用する場合と同様に、非通気性基材を真空搬送装置の吸引部分へ吸引固定する際に吸引部分の吸引口から垂直に発生する吸引圧力を分散させて、吸引固定されている非通気性基材の変形を防止できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の通気性シートを真空吸着装置と非通気性基材との間に介在させて非通気性基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定している間に、吸着ステージ上に載った通気性シートがずれることがあった。その結果、吸着ステージ上に非通気性基材を十分固定できず、印刷中に非通気性基材がずれてしまい、非通気性基材の表面へ微細で鮮明な印刷を施せないことがあった。更に、非通気性基材の表面へ再現性よく印刷が行えないため、配線や種々の電子部品を高い再現性をもって提供できないことがあった。
【0012】
また、特許文献1の通気性シートを真空搬送装置と非通気性基材との間に介在させて真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定している間に、吸引部分に接している通気性シートがずれることがあった。その結果、吸引部分に非通気性基材を十分固定できず、安定して真空搬送ができないことがあった。
【0013】
本発明は前述した問題を解決して、真空吸着装置の吸着ステージに、又は真空搬送装置の吸引部分に、強固に固定可能な通気性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1にかかる発明は、「真空吸着装置の吸着ステージ上に吸引固定された非通気性基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記非通気性基材の間に介在させて使用する、あるいは、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、前記吸引部分と前記非通気性基材の間に介在させて使用する、通気性シートであって、非通気性基材に接する不織布層と、前記吸着ステージ又は前記吸引部分に接する織物又は編物からなる支持層とが積層されてなり、前記支持層が強磁性体を含む、通気性シート。」である。
【0015】
本発明の請求項2にかかる発明は、「強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージを備えた前記真空吸着装置と、請求項1に記載の通気性シートとを備える、非通気性基材の表面へ印刷を施すため使用する印刷装置。」である。
【0016】
本発明の請求項3にかかる発明は、「強磁性体を磁力によって吸着可能な吸引部分を備えた前記真空搬送装置と、請求項1に記載の通気性シートとを備える、非通気性基材を搬送するため使用する搬送装置。」である。
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは検討した結果、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージを備える真空吸着装置、ならびに、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸引部分を備える真空搬送装置を用いると共に、非通気性基材に接する不織布層と吸着ステージ又は吸引部分に接する支持層とが積層されてなる通気性シートにおいて、当該支持層が磁石あるいは電磁石に引き寄せられる強磁性体を含むことによって、前述の課題を解決できることを見出した。
【0018】
つまり、吸着ステージならびに吸引部分が発揮する吸引力に加え、吸着ステージならびに吸引部分とそれらに直接接する通気性シートの支持層との間に発揮される磁力によって、吸着ステージならびに吸着部分へ通気性シートを強固に固定できることを見出した。
【0019】
その結果、吸着ステージ上に載った通気性シートがずれるのが防止されており、非通気性基材の表面へ微細で鮮明な印刷を施せる。更に、非通気性基材の表面へ再現性よく印刷が行えることで、配線や種々の電子部品を高い再現性をもって提供することが可能となる。
【0020】
また、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、吸引部分に接している通気性シートがずれるのが防止されており、吸引部分に非通気性基材を十分固定でき安定して真空搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の通気性シートを使用し、非通気性基材に印刷を実施する時における、模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の通気性シートは、従来知られているプリンテッドエレクトロニクス技術と同様に、真空吸着装置に組み込まれた吸引ステージ上に置いた状態で、当該シートに接してフィルム等からなる非通気性基材を置き、装置を稼働させることで印刷が実施される。
【0023】
以下、本発明の通気性シートの使用時における、模式的断面図である
図1を用いて、真空吸着装置の吸着ステージと非通気性基材との間に通気性シートが介在している状態で、非通気性基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定させ、非通気性基材の表面へ印刷を施す態様について説明する。本発明の通気性シート(3)は、少なくとも一層の不織布層(3b)と、少なくとも一層の支持層(3a)とを含み、所望により他の通気性部材を更に含むことができ、それらを積層構成したものである。通気性シート(3)は、吸引口(2)が設けられた吸着ステージ(1)に、支持層(3a)が接した状態で用いられ、不織布層(3b)に接して非通気性基材(4)が載置された状態で真空吸着装置と連結しているポンプ又はコンプレッサー(図示せず)を稼働し、吸引口(2)から空気が吸引されることで、真空吸着装置の吸着ステージ(1)と非通気性基材(4)との間に通気性シート(3)が介在している状態で、非通気性基材(4)が真空吸着装置の吸着ステージ(1)に吸引固定される。この際、通気性シート(3)の層間に他の通気性素材を介在させても良いが、不織布層(3b)の吸着ステージ(1)側に支持層(3a)があることが必要である。つまり、本発明の通気性シート(3)の作用効果として、吸引口(2)から非通気性基材(4)と吸着ステージ(1)との間の空気が吸引される際、これらの間に介在する通気性シート(3)のうち、まず、支持層(3a)によって吸引口(2)のパターンによる吸引力の局在化が緩和される。次いで、この支持層(3a)を貫く装置側の吸引力は不織布層(3b)を介して更に分散し、吸引力の直接対象物である非通気性基材(4)を吸着ステージ(1)側に引きつけ、当該非通気性基材(4)の平面性を保った状態で、インク付与部材(5)による印刷が高精度で実施し得る。この間、真空吸着装置の吸引口パターン間隔等の装置側条件による影響は、不織布層(3b)を構成する繊維が、織物又は編物の目開き(図示せず)よりも小さい繊維径とすることで更に緩和される。さらに、本出願に言う「非通気性基材」とは、例えば極めて微細な開口を持つフィルムの表裏にわたる多層配線(ビアホール、コンタクトホール)形成を行うような場合であっても、真空吸着装置に固定可能であれば、明瞭なインクパターンの形成を行うことが可能である。
【0024】
また、通気性シートの支持層(3a)を構成する織物又は編物は、厚さ方向とその直交方向にも通気性を有している。このため、吸着ステージ(1)などによる吸引力を支持層(3a)のしめる容積内の多方向に分散できる。
【0025】
更に、本発明の通気性シート(3)を構成する支持層(3a)は、強磁性体を含む。これにより、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージ(1)を備える真空吸着装置を用いて、前記通気性シート(3)を、通気性シートの支持層(3a)が吸着ステージ(1)と接するように置き、通気性シート(3)を吸着ステージ(1)と非通気性基材(4)の間に介在させて非通気性基材(4)を吸引固定する際に、吸着ステージ(1)が発揮する吸引力に加え、吸着ステージ(1)とそれらに直接接する通気性シート(3)の支持層(3a)との間に発揮される磁力によって、吸着ステージ(1)が通気性シート(3)を吸着ステージ(1)に通気性シート(3)を強固に固定できる。これにより、吸着ステージ(1)上に載った通気性シート(3)がずれるのが防止されており、非通気性基材(4)の表面へ微細で鮮明な印刷を施せる。更に、非通気性基材(4)の表面へ再現性よく印刷が行えることで、配線や種々の電子部品を高い再現性をもって提供することが可能となる。
【0026】
なお、
図1においては、吸着ステージ(1)の形状が平坦な場合について説明したが、吸着ステージ(1)に非通気性基材(4)が吸引固定できる限り、吸着ステージ(1)の形状については曲面形状など、特に限定するものではない。
【0027】
また、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸着ステージ(1)は、例えば、吸着ステージ(1)の内部に磁石あるいは電磁石を有するものや、吸着ステージ(1)と通気性シート(3)が接する側の裏側に磁石あるいは電磁石を有するものであることができる。
【0028】
次いで、真空搬送装置と非通気性基材との間に通気性シートが介在している状態で、真空搬送装置により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する態様について説明する(図示せず)。
【0029】
通気性シートは、上述の、真空吸着装置の吸着ステージと非通気性基材との間に通気性シートが介在している状態で、非通気性基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定させる際と同様に、吸引部分が設けられた真空搬送装置に、通気性シートの支持層が接した状態で用いられ、不織布層に接して非通気性基材が存在する状態で吸引部分と連結しているポンプ又はコンプレッサーを稼働し、吸引部分の吸引口から空気が吸引されることで、真空搬送装置と吸引部分と非通気性基材との間に通気性シートが介在している状態で、非通気性基材が吸引部分に吸引固定される。この際、通気性シートの層間に他の通気性素材を介在させても良いが、不織布層の吸引部分側に支持層があることが必要である。つまり、本発明の通気性シートの作用効果として、吸引部分の吸引口から非通気性基材と真空搬送装置との間の空気が吸引される際、これらの間に介在する通気性シートのうち、まず、支持層によって吸引口のパターンによる吸引力の局在化が緩和される。次いで、この支持層を貫く装置側の吸引力は不織布層を介して更に分散し、吸引力の直接対象物である非通気性基材を真空搬送装置側に引きつけ、真空搬送装置により非通気性基材を吸引固定して真空搬送することができる。
【0030】
更に、本発明の通気性シートを構成する支持層は、上述の通り強磁性体を含む。これにより、強磁性体を磁力によって吸着可能な吸引部分を備えた真空搬送装置を用いて、通気性シートを通気性シートの支持層が吸引部分と接するように置き、通気性シートを吸引部分と非通気性基材の間に介在させて非通気性基材を吸引固定する際に、吸引部分が発揮する吸引力に加え、吸引部分とそれらに直接接する通気性シートの支持層との間に発揮される磁力によって、吸引部分へ通気性シートを吸着部分に通気性シートを強固に固定できる。これにより、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、吸引部分に接している通気性シートがずれるのが防止されており、吸引部分に非通気性基材を十分固定でき安定して真空搬送できる。
【0031】
また、強磁性体を磁力によって吸着可能な真空搬送装置の吸引部分は、例えば、吸引部分の内部に磁石あるいは電磁石を有するものや、真空搬送装置の吸引部分と通気性シートが接する側の裏側に磁石あるいは電磁石を有するものであることができる。
【0032】
支持層(3a)となる織物又は編物には、強磁性体を含む。支持体(3a)に含むことができる強磁性体として種々の金属を選択し得るが、吸引力の作用時に比較的堅牢な構造を保持し得て、かつ防錆性並びに剛性に優れた、強磁性体のステンレス鋼(SUS)製の材料が最も好ましい。即ち、プリンテッドエレクトロニクス及び真空搬送では、印刷するパターンを明瞭に印刷するために吸着ステージあるいは吸引部分の吸引口の直径を小さくし、吸引口の直上での非通気性基材の変形を抑制することが行われているが、吸引口の直径が小さくなると、吸着ステージあるいは吸引部分自体の加工コストが上がり、非通気性基材の吸着効率は低下する傾向にある。本発明を適用した通気性シートは吸着ステージあるいは吸引部分の吸引力を支持層のしめる容積内の多方向に分散でき、かつ不織布層の広い表面積により吸着力の低下を抑制でき、さらに、非通気性基材に平坦な面を提供できるため、一般的な真空吸着装置の吸着ステージ上、あるいは吸引部分上に簡便に設置することで、著しいコストダウンと作業効率の改善を図り得る。
【0033】
上述した支持層(3a)を構成する織物は平織り、綾織りなど、編物はメリヤス編みなどを選択し得るが、構造が簡素で比較的表面凹凸が小さく、かつ伸縮性が小さく変形しにくい平織りの織物を選択するのが好適である。特に、織物から構成された支持層(3a)の場合、支持層(3a)の目開きが0.030~0.270mmであるのが好ましく、0.060~0.250mmであるのがより好ましく、0.100~0.230mmであるのが更に好ましい。支持層(3a)の目開きを0.270mm以下と小さな目開きとすることで、通気性シート(3)全体の曲げ剛性を確保し、吸引固定された非通気性基材(4)に、平坦な表面を提供することができる。また、支持層(3a)の目開きが0.030mm以上と大きい目開きとすることで、支持層(3a)の通気度が十分であり、非通気性基材(4)を十分に固定できる。
【0034】
ここでいう「目開き」は、ワイヤーあるいは糸同士で形成される網目状の開口の一辺の長さに相当する値であり、通常、メッシュ数とミリ単位とした線径dにより、以下の値で算出することができる。この計算式は広く知られた算出手法であるが、実際に顕微鏡で観察した結果と極めて高い相関があることを確認した。
【0035】
目開き=(25.4/メッシュ数)-線径d
なお、織物の目開きが糸の配列方向により異なる場合、まず、一方の配列方向における目開きと前記配列方向と交差するもう一方の配列方向における目開きから開口の面積を算出する。次に、開口の面積から開口が正方形と仮定したときの開口の1辺の長さを算出し、この開口の1辺の長さを支持層(3a)の目開きとする。また、目開きの存在しない織物については、目開きの大きさは0mmとみなす。
【0036】
編物から構成された支持層(3a)の場合、まず、編物から1cm×1cmの正方形の領域における編目を観察して前記正方形の領域における編目1つの面積の平均値を算出する。次に、編目1つの面積の平均値から編目が正方形と仮定したときの編目の1辺の長さを算出し、この編目の1辺の長さを支持層(3a)の目開きとし、上述の支持層(3a)の目開きの範囲であるのが好ましい。
【0037】
支持層(3a)の積層前の目付、積層前の厚さ、積層前の空隙率などの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、支持層(3a)の積層前の目付は、50g/m2以上であるのが好ましく、200g/m2以上であるのがより好ましく、400g/m2以上であるのが更に好ましい。支持層(3a)の積層前の目付の上限は適宜調整するが、1000g/m2以下であるのが現実的である。なお、「目付」は最も広い面である主面1m2あたりの質量であり、「支持層(3a)の積層前の目付」は、支持層(3a)を構成する積層前の織物又は編物の目付の値である。
【0038】
また、支持層(3a)の積層前の厚さは、50μm以上であるのが好ましく、100μm以上であるのがより好ましく、150μm以上であるのが更に好ましい。支持層(3a)の積層前の厚さの上限は適宜調整するが、300μm以下であるのが現実的である。なお、本発明における「厚さ」は、0.054N/mm2荷重時のもので、1m2あたり15点測定した値の平均値であり、「支持層(3a)の積層前の厚さ」は、支持層(3a)を構成する積層前の織物又は編物を、上述の方法で厚さを測定した値である。
【0039】
更に、支持層(3a)の積層前の空隙率は、空隙率の高い支持層(3a)であると、非通気性基材(4)を吸着ステージ(1)又は吸引部分に吸引固定する際に十分に非通気性基材(4)を吸引できることから、支持層(3a)の積層前の空隙率は、40%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが更に好ましい。前記空隙率の上限は100%未満であり、非通気性基材(4)を吸着ステージ(1)又は吸引部分に吸引固定する際に支持層(3a)が吸引圧力により形状変化しにくく、表面に凹凸が少ない通気性シート(3)であることができるように、支持層(3a)の積層前の空隙率の上限は90%以下が好ましい。なお、支持層(3a)の積層前の空隙率(単位:%)は、支持層(3a)の積層前の目付(単位:g/m2)、支持層(3a)の積層前の厚さ(単位:μm)、支持層(3a)の構成材料の密度(単位:g/cm3)により、以下の式から算出することができる。
空隙率=[1-{目付/(厚さ×密度)}]×100
【0040】
次いで、通気性シート(3)に含まれる不織布層(3b)について説明する。吸引口(2)が設けられた吸着ステージ(1)又は吸引部分に、通気性シート(3)の支持層(3a)が接した状態で用いられ、不織布層(3b)に接して非通気性基材(4)が載置された状態で吸着ステージ(1)又は吸引部分と連結しているポンプ又はコンプレッサー(図示せず)を稼働し、吸引口(2)から空気が吸引されることで非通気性基材(4)が固定される際に、不織布層(3b)は、織物又は編物から構成された支持層(3a)によって緩和された吸引口(2)のパターンによる吸引力を更に分散し緩和させることができる。この不織布層(3b)が吸引力を分散し緩和させる効果は、不織布層(3b)を構成する不織布は繊維が規則的に配置されている織物や編物に比べて繊維の配置が規則的でないことにより実現できる。
【0041】
不織布層(3b)を構成する繊維の組成は特に限定するものではないが、具体的には、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基又はフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニル又は塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)、ビニロン系樹脂(酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)、導電性高分子(ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリアセチレン系、ポリチオフェン系など)などの合成樹脂からなる繊維で構成するのが好ましい。これらの構成繊維は、一種類あるいは複数種類の樹脂成分から構成されてなるものでも構わず、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維を使用することができる。
【0042】
この不織布層(3b)は、乾式不織布、湿式不織布、直接紡糸不織布(例えば静電紡糸不織布、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布)など、種々の不織布であることができる。これらの不織布の中でも、通気性シート(3)からの発塵を防止し、かつ不織布層(3b)の非通気性基材(4)側表面の毛羽立ちを防止する観点から直接紡糸不織布であることが好ましい。
【0043】
また、不織布層(3b)の構成繊維の繊維径を小さく採ることによって、同程度の目付であれば、非通気性基材(4)との接触平面における単位面積あたりの繊維本数が増えることで、不織布層の表面平坦性が向上する。これにより、非通気性基材(4)の吸着固定をする際に非通気性基材(4)をより平坦に固定することが可能になる。このため、不織布層(3b)の繊維径は10.5μm以下、より好ましくは1μm以下とするのが良い。本発明の通気性シートは、単一の不織布層(3b)を設けた場合に限定されるものではなく、複数の不織布層(3b)を設ける場合には、上述した繊維径10.5μm以下の構成繊維を主体とする層は非通気性基材(4)と直接に接触する構成成分とすることが好適である。この場合、比較的細径の合成繊維で構成された不織布層(3b)は、真空装置の吸引等によってフィルムなどの非通気性基材(4)との間で帯電し易い傾向にあるため、不織布層(3b)に帯電防止を目的とした導電性繊維を配合するのが好適である。この導電性繊維を配合する代わりに、不織布層(3b)の表面に界面活性剤を塗布添加するなど、種々の形態とすることができる。この際、界面活性剤の最終的な不織布層(3b)への被着量は、使用する界面活性剤の種類により任意好適に設計することができる。
【0044】
不織布層(3b)の積層前の目付、積層前の厚さなどの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、不織布層(3b)の積層前の目付は、5g/m2以上であるのが好ましく、10g/m2以上であるのがより好ましく、20g/m2以上であるのが更に好ましい。なお、不織布層(3b)の目付の上限は適宜調整するが、200g/m2以下であるのが現実的である。なお、「不織布層(3b)の積層前の目付」は、不織布層(3b)を構成する積層前の不織布の目付の値である。
【0045】
また、不織布層(3b)の積層前の厚さは、10~300μmであるのが好ましく、30~200μmであるのがより好ましく、50~100μmであるのが更に好ましい。なお、「不織布層(3b)の積層前の厚さ」は、不織布層(3b)を構成する積層前の不織布の厚さの値である。
【0046】
また、不織布層(3b)は1種類の繊維のみで構成されていても、2種類以上の繊維で構成されていても良いが、不織布層が1種類の繊維で構成されていると、不織布層の構成繊維が均一に分散し、通気性シート表面の凹凸がより小さいことから、好ましい。
【0047】
通気性シートの不織布層(3b)と支持層(3a)とが一体化している場合、あるいは、不織布層(3b)が複数の不織布を有する場合は、これらを重ねた後、熱圧着により一体化し、通気性シートの取り扱い性を高めるのが好ましい。また、熱圧着をする代わりに、層間に有機樹脂から構成された接着剤を塗布、あるいは層間に低融点の有機樹脂から構成されたシート状物を挟み、接着することができる。
【0048】
本発明の通気性シート(3)のフラジール形法による通気度は、0.10cm3/cm2/s以上であるのが好ましい。通気性シート(3)のフラジール形法による通気度が0.10cm3/cm2/s以上であることで、通気性シートを真空吸着装置の吸着ステージ(1)又は吸引部分と非通気性基材(4)との間に介在した状態で非通気性基材(4)を吸引固定した際に、十分に非通気性基材(4)を固定できる。より非通気性基材(4)を安定して固定できるように、通気性シート(3)のフラジール形法による通気度は、0.20cm3/cm2/s以上がより好ましく、0.25cm3/cm2/s以上が更に好ましい。なお、「フラジール形法による通気度」は、JIS L 1096に規定されるフラジール形法により測定された値をいう。
【0049】
本発明の通気性シート(3)の目付、厚さ、嵩密度などの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、通気性シート(3)の目付は、60g/m2以上であるのが好ましく、220g/m2以上であるのがより好ましく、435g/m2以上であるのが更に好ましい。なお、通気性シート(3)の目付の上限は適宜調整するが、1000g/m2以下であるのが現実的である。
【0050】
また、通気性シート(3)の厚さは、厚さが大きいと印刷時に取り扱い性が悪いおそれがあるため、600μm以下であるのが好ましく、450μm以下であるのがより好ましく、350μm以下であるのが更に好ましい。一方、厚さが薄すぎると吸着ステージ(1)の吸引圧力が十分分散せず、非通気性基材(4)表面に凸凹が発生するおそれがあることから、50μm以上であるのが好ましく、130μm以上であるのがより好ましく、200μm以上であるのが更に好ましい。
【0051】
更に、通気性シート(3)の嵩密度は、嵩密度の高い通気性シート(3)であると、非通気性基材(4)を吸着ステージ(1)又は吸引部分に吸引固定する際に通気性シート(3)が吸引圧力により形状変化しにくく、表面の凹凸が少ない通気性シート(3)が実現でき、鮮明な印刷が実現できる一方、通気性シート(3)の嵩密度が高すぎると、通気性シート(3)の通気性が低くなり非通気性基材(4)を吸引固定し難くなるおそれがあることから、嵩密度は、1.00~8.50g/cm3であるのが好ましく、1.50~4.50g/cm3であるのがより好ましく、2.00~3.00g/cm3であるのが更に好ましい。なお、通気性シートの嵩密度(g/cm3)は、{通気性シートの目付(g/m2)}/{通気性シートの厚さ(mm)×10-3}で求めることができる。
【0052】
本発明の通気性シート(3)はそのまま使用することができるが、通気性シート(3)と吸着ステージ(1)との密着性向上のため、通気性シート(3)外周部をテープなどで留めてもよい。また、通気性シート(3)における不織布層(3b)と支持層(3a)の面積は同じであっても、不織布層(3b)の面積の方が支持層(3a)の面積よりも小さい、あるいは不織布層(3b)の面積の方が支持層(3a)の面積よりも大きいなど、不織布層(3b)と支持層(3a)の面積が異なっていてもよい。
【0053】
ここで、本発明の通気性シート(3)の製造方法の一例について説明する。
【0054】
まず、上述した不織布層(3b)を構成する不織布、及び、上述した支持層(3a)を構成する、強磁性体を含む織物又は編物を準備する。
【0055】
次に、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物を重ね、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物とを接着して、不織布層(3b)と織物又は編物から構成された強磁性体を含む支持層(3a)が接着している本発明の通気性シート(3)を製造する。このとき、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物とを接着する方法は、例えば、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物の間に有機樹脂から構成された接着剤を塗布し接着する方法、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物の間に低融点の有機樹脂から構成されたシート状物を挟み、ヒートロールや熱プレス機などに供することで、シート状物の少なくとも一部を融解させ、熱で融解されたシート状物により接着する方法や、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物を積層したものをヒートロールや熱プレス機などに供することで、不織布の構成繊維の少なくとも一部を融解させ、熱で融解された不織布の構成繊維により接着する方法が挙げられる。
【0056】
なお、前記方法で通気性シート(3)を製造するにあたり、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物を接着剤やシート状物などの有機樹脂により接着する場合、有機樹脂の目付は、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物が強固に接着できるように、3.0g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、15g/m2以上が更に好ましい。一方、有機樹脂の目付が大きすぎると、接着材が支持層(3a)の空隙を埋め、通気性シート(3)が吸引圧力により固定できないおそれがあることから、100g/m2以下が現実的である。
【0057】
また、不織布の構成繊維の少なくとも一部を融解させることで不織布と、強磁性体を含む織物又は編物とを接着する場合、不織布の構成繊維の少なくとも一部が融解して、不織布の構成繊維の一部が支持層(3a)の空隙に十分に入り込むことができるように、不織布の構成樹脂の融点のうち最も低い融点よりも20℃以上高い温度で加熱して不織布の構成樹脂を融解させ、不織布の構成樹脂を流動させて、熱で溶融された不織布の構成樹脂の一部を支持層(3a)の空隙に入り込ませるのが好ましい。
【0058】
また、必要に応じて、不織布と、強磁性体を含む織物又は編物とを接着させた後にロールやプレス機に通気性シート(3)を供することで、通気性シート(3)の厚さを調整することができる。
【実施例0059】
以下に、本発明の実施例として、本発明の好適態様を含む種々の通気性シートを調製し、評価した結果を記載するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではなく、数値的条件などは、この発明の目的の範囲内で任意好適に設計し得る。
【0060】
(不織布の準備)
重量平均分子量20万のポリアクリロニトリルを、N,N-ジメチルホルムアミドに濃度16wt%になるように溶解させ、ポリマー溶液(粘度:2000mPa・s)とした。次いで、ケースに周囲を囲われた空間(縦:1000mm、横:1000mm、高さ:1000mm)内に、ポリマー溶液を吐出できる内径0.41mmの金属製ノズルを直流高電圧装置に接続した状態で配置し、吐出されたポリマー溶液を捕集するための無端ベルトをアースし、ケース内に配置した。この金属製ノズルに17kVの電圧を印加することで、ポリマー溶液を3g/hの速度で吐出させて繊維化し、繊維径0.4μmの連続繊維から構成された繊維集合体を形成した。
さらに、前記繊維集合体にアクリル樹脂バインダ液を付与し、乾燥させることで、不織布層(目付:26g/m2、うちアクリル樹脂バインダの目付:9g/m2、厚さ:65μm、空隙率:65%、通気度:0.34(cm3/cm2/s))を得た。
【0061】
(金属メッシュAの準備)
強磁性体であり、磁力に引き寄せられるステンレス鋼製の織物である金属メッシュA(平織り、目付:465g/m2、厚さ:0.214mm、線径0.10mm、目開きの間隔0.150mm)を用意した。
【0062】
(金属メッシュBの準備)
磁力に引き寄せられないステンレス鋼製の織物である金属メッシュB(平織り、目付:479g/m2、厚さ:0.186mm、線径0.10mm、目開きの間隔0.150mm)を用意した。
【0063】
(実施例1)
上述した不織布、並びに、金属メッシュAを組み合わせ、110℃に加熱したプレス機で熱圧着(圧力:0.02MPa)し、通気性シート(目付:491g/m2、厚さ:0.245mm)を作成した。
【0064】
(比較例1)
上述した不織布、並びに、金属メッシュBを組み合わせ、110℃に加熱したプレス機で熱圧着(圧力:0.02MPa)し、通気性シート(目付:505g/m2、厚さ:0.245mm)を作成した。
【0065】
(通気性シートを介したフィルムのエアリーク率測定)
(1)基材として、非通気性の市販のポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚さ50μm)を1辺170mmの正方形に裁断して用意した。
(2)実施例及び比較例の通気性シートを1辺190mmの正方形に裁断した。
(3)市販の真空吸着装置として、直径1.5mmの円形の吸引口が10mm間隔で格子状(縦15個、横15個)に合計225個開口され、開口領域の一辺が140mmの平板形状の吸着ステージを用意し、吸着ステージの通気性シートを載置する主面と反対の主面に、縦20mm×横10mm×高さ5mmの磁石を吸着ステージの中心に1か所、吸着ステージの周縁部に8か所テープで貼りつけ、計9個の磁石を吸着ステージに貼りつけた。
(4)この吸着ステージの開口領域をすべて覆うように、吸着ステージ上にポリエチレンテレフタレート製フィルムを載置し、真空ポンプを作動させた。このときのゲージ圧が-10kPaとなるよう、真空ポンプの出力を調整した。調整後、真空ポンプを停止させ、ポリエチレンテレフタレート製フィルムを吸着ステージ上から取り外した。
(5)次に、この吸着ステージの開口領域をすべて覆うように、吸着ステージと通気性シートの支持層が接し、また、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの一方の主面全面が通気性シートと重なるように、通気性シート、基材を順次に載置し、この状態で、(4)で設定した出力で真空ポンプを作動させた。
この時のゲージ圧をA(kPa)として、以下の式からエアリーク率を算出した。
(エアリーク率)={1-(A/(-10))}×100(%)
【0066】
以下の表1に、実施例及び比較例のゲージ圧及びエアリーク率を示す。
【0067】
【0068】
強磁性体であり、磁力に引き寄せられる支持層から構成された実施例1の通気性シートの方が、磁力に引き寄せられず強磁性体でない支持層から構成された比較例1の通気性シートよりもエアリーク率が低く、吸着ステージと通気性シートが強固に固定でき、その結果、フィルムが通気性シートを介して吸着ステージに強固に吸引固定できることがわかった。
【0069】
以上のことから、本発明の強磁性体を含む支持層が積層されている通気性シートは、強磁性体を磁力によって吸着可能な真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定させた際、あるいは、強磁性体を磁力によって吸着可能な真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して真空搬送する際に、吸引力と、磁力により通気性シートを構成する支持層が引き寄せられることにより、通気性シートと、真空吸着装置の吸着ステージ又は真空搬送装置の吸引部分とが強固に固定でき、その結果、非通気性基材を十分に吸引固定できる通気性シートであることがわかった。
吸着ステージに吸引固定された非通気性基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記非通気性基材との間に介在させて使用する通気性シートであって、非通気性基材の表面へ微細で鮮明な所望の印刷パターンを形成できる。
また、真空搬送装置の吸引部分により非通気性基材を吸引固定して搬送する真空搬送の際、前記吸引部分と非通気性基材の間に介在させて使用する通気性シートに関するものであって、非通気性基材を真空搬送装置の吸引部分の吸引力により変形させずに搬送できる。