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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051266
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157327
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥田 聡太
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118AB03
4M118BA09
4M118CA01
4M118FA06
4M118GB03
4M118GB07
4M118GD04
4M118GD06
(57)【要約】
【課題】位相差検出用画素の位相差検出特性を向上することができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置は、第1の光束を受光する第1の撮像用画素と、前記第1の撮像用画素に隣接し、瞳分割された光束を受光する位相差検出用画素と、前記第1の撮像用画素の上から前記位相差検出用画素の上にはみ出して配置され、前記第1の光束を前記第1の撮像用画素に集光する第1の撮像用マイクロレンズと、前記位相差検出用画素の上に配置され、前記第1の撮像用マイクロレンズが占める面積より小さい面積を占め、前記第1の撮像用マイクロレンズと繋がり、前記瞳分割された光束を前記位相差検出用画素に集光する位相差検出用マイクロレンズと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光束を受光する第1の撮像用画素と、
前記第1の撮像用画素に隣接し、瞳分割された光束を受光する位相差検出用画素と、
前記第1の撮像用画素の上から前記位相差検出用画素の上にはみ出して配置され、前記第1の光束を前記第1の撮像用画素に集光する第1の撮像用マイクロレンズと、
前記位相差検出用画素の上に配置され、前記第1の撮像用マイクロレンズが占める面積より小さい面積を占め、前記第1の撮像用マイクロレンズと繋がり、前記瞳分割された光束を前記位相差検出用画素に集光する位相差検出用マイクロレンズと、
を備える固体撮像装置。
【請求項2】
前記位相差検出用マイクロレンズは、前記第1の撮像用マイクロレンズの焦点距離より短い焦点距離を有する
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記位相差検出用マイクロレンズの光軸を含む断面における前記位相差検出用マイクロレンズの入射面の曲率は、断面方向によらず一定である
請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記位相差検出用画素の対角方向において前記位相差検出用画素に隣接し、第2の光束を受光する第2の撮像用画素と、
前記第2の光束を前記第2の撮像用画素に集光する第2の撮像用マイクロレンズと、
前記対角方向において互いに隣接し、第3の光束及び第4の光束をそれぞれ受光するふたつの撮像用画素と、
前記ふたつの撮像用画素の上にそれぞれ配置され、前記第3の光束及び第4の光束を前記ふたつの撮像用画素に集光するふたつの撮像用マイクロレンズと、
を備え、
前記位相差検出用マイクロレンズ及び前記第2の撮像用マイクロレンズの境界における前記位相差検出用マイクロレンズ及び前記第2の撮像用マイクロレンズの高さは、前記ふたつの撮像用マイクロレンズの境界における前記ふたつの撮像用マイクロレンズの高さより低い
請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記位相差検出用画素は、前記瞳分割された光束を受光する受光面を有し、
前記位相差検出用マイクロレンズは、前記受光面に焦点を有する
請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記位相差検出用マイクロレンズは、前記位相差検出用マイクロレンズの光軸を含み前記位相差検出用画素の対辺方向と平行である断面及び前記光軸を含み前記位相差検出用画素の対角方向と平行である断面において、前記受光面に焦点を有する
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1の撮像用画素は、前記第1の光束を受光する受光面を有し、
前記第1の撮像用マイクロレンズは、前記第1の光束を受光する受光面より奥側に焦点を有する
請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、固体撮像装置を開示する。当該固体撮像装置においては、第1マイクロレンズが、撮像用画素に光を集める。また、第2マイクロレンズが、位相差検出用画素に光を集める。第2マイクロレンズの焦点距離は、第1マイクロレンズの焦点距離より短い。第1マイクロレンズの焦点位置は、フォトダイオードの受光面上に位置する。第2マイクロレンズの焦点位置は、フォトダイオードの受光面から離れ、遮光膜に位置する(段落0020,0065及び0066)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-89432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された固体撮像装置においては、位相差検出用画素に光を集める第2マイクロレンズの焦点距離が、撮像用画素に光を集める第1マイクロレンズの焦点距離より短い。このため、第2マイクロレンズの曲率半径が、位相差検出用画素の対角寸法の1/2以下となる可能性がある。このため、位相差検出用画素の上に、マイクロレンズが配置されない領域が形成される可能性がある。マイクロレンズが配置されない領域は、位相差検出用画素により出力される位相差検出信号に重畳されるノイズの原因となり、位相差検出用画素の位相差検出特性を劣化させる。
【0005】
本開示の一態様は、これらの問題に鑑みてなされた。本開示の一態様は、例えば、位相差検出用画素の位相差検出特性を向上することができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の固体撮像装置は、第1の光束を受光する第1の撮像用画素と、前記第1の撮像用画素に隣接し、瞳分割された光束を受光する位相差検出用画素と、前記第1の撮像用画素の上から前記位相差検出用画素の上にはみ出して配置され、前記第1の光束を前記第1の撮像用画素に集光する第1の撮像用マイクロレンズと、前記位相差検出用画素の上に配置され、前記第1の撮像用マイクロレンズが占める面積より小さい面積を占め、前記第1の撮像用マイクロレンズと繋がり、前記瞳分割された光束を前記位相差検出用画素に集光する位相差検出用マイクロレンズと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。
図2図1に描かれた切断線a-a’の位置における、第1実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図3図1に描かれた切断線b-b’の位置における、第1実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図4】第1実施形態の固体撮像装置の、当該固体撮像装置に備えられる左眼画素の周辺を模式的に図示する断面図である。
図5】第1実施形態の固体撮像装置の、当該固体撮像装置に備えられる右眼画素の周辺を模式的に図示する断面図である。
図6】理想的な位相差検出特性を示すグラフである。
図7】第1実施形態の固体撮像装置の位相差検出特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8】第1実施形態の固体撮像装置に入射光が入射した状態を模式的に図示する断面図である。
図9】第1参考例の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。
図10図9に描かれた切断線a-a’の位置における、第1参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図11図9に描かれた切断線b-b’の位置における、第1参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図12】第2参考例の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。
図13図12に描かれた切断線a-a’の位置における、第2参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図14図12に描かれた切断線b-b’の位置における、第2参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
図15】第2参考例の固体撮像装置に入射光が入射した状態を模式的に図示する断面図である。
図16】第2参考例の固体撮像装置の位相差検出特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
1 第1実施形態
1.1 固体撮像装置
図1は、第1実施形態の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。図2は、図1に描かれた切断線a-a’の位置における、第1実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。図3は、図1に描かれた切断線b-b’の位置における、第1実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。切断線a-a’は、固体撮像装置の対辺方向に延びる切断線である。このため、図2は、対辺方向の断面図である。切断線b-b’は、固体撮像装置の対角方向に延びる切断線である。このため、図3は、対角方向の断面図である。
【0010】
図1図2及び図3に図示される第1実施形態の固体撮像装置1は、撮像を行って被写体像に応じた撮像信号を出力する。また、固体撮像装置1は、位相差検出を行ってデフォーカス方向及びデフォーカス量に応じた位相差検出信号を出力する。出力される位相差検出信号は、像面位相差方式によるオートフォーカシングに用いられる。
【0011】
図1図2及び図3に図示されるように、固体撮像装置1は、複数の画素11、遮光膜12、平坦化膜13及び複数のマイクロレンズ14を備える。
【0012】
各画素11は、正方形状の平面形状を有する。複数の画素11は、マトリクス状に配列される。複数の画素11は、被写体像を形成する光を受光する受光領域に配置される。各画素11は、受光面11Sを有する。各画素11は、受光面11Sにより受光された光を光電変換して電気信号を出力する。これにより、各画素11は、受光面11Sにより受光された光の強度に応じた電気信号を出力する。
【0013】
遮光膜12は、格子状の形状を有する。遮光膜12は、隣接する画素11の受光面11Sの境界の付近を覆う。遮光膜12は、被写体像を形成する光を遮る。これにより、遮光膜12は、被写体像を形成する光が、当該境界の付近により受光されることを抑制する。
【0014】
平坦化膜13は、遮光膜12に重ねて複数の画素11の受光面11Sの上に配置される。平坦化膜13は、遮光膜12により形成される凹凸を埋めて平坦面13Sを提供する。平坦化膜13は、被写体像を形成する光を透過させる。
【0015】
複数のマイクロレンズ14は、平坦面13Sの上に配置される。複数のマイクロレンズ14は、平坦化膜13を挟んで、複数の画素11の上にそれぞれ配置される。各画素11の上に配置されるマイクロレンズ14は、各画素11の受光面11Sに光を集光する。
【0016】
1.2 撮像用画素、位相差検出用画素、撮像用マイクロレンズ及び位相差検出用マイクロレンズ
複数の画素11は、第1の撮像用画素21、第2の撮像用画素22及び位相差検出用画素23を含む。
【0017】
第1の撮像用画素21、第2の撮像用画素22及び位相差検出用画素23は、同じ受光領域に配置される。第1の撮像用画素21は、位相差検出用画素23の対辺方向において位相差検出用画素23に隣接する。第2の撮像用画素22は、位相差検出用画素23の対角方向において位相差検出用画素23に隣接する。
【0018】
複数のマイクロレンズ14は、第1の撮像用マイクロレンズ31、第2の撮像用マイクロレンズ32及び位相差検出用マイクロレンズ33を含む。
【0019】
第1の撮像用マイクロレンズ31は、第1の撮像用画素21に対応し、第1の撮像用画素21の上に配置される。第2の撮像用マイクロレンズ32は、第2の撮像用画素22に対応し、第2の撮像用画素22の上に配置される。位相差検出用マイクロレンズ33は、位相差検出用画素23に対応し、位相差検出用画素23の上に配置される。
【0020】
第1の撮像用マイクロレンズ31は、第1の光束を第1の撮像用画素21に集光する。第1の撮像用画素21は、集光された第1の光束を受光し、受光した第1の光束に応じた電気信号を出力する。第1の光束は、第1の撮像用画素21の受光面11Sにより受光される。第1の撮像用画素21により出力される電気信号は、撮像信号を構成する。第2の撮像用マイクロレンズ32は、第2の光束を第2の撮像用画素22に集光する。第2の撮像用画素22は、集光された第2の光束を受光し、受光した第2の光束に応じた電気信号を出力する。第2の光束は、第2の撮像用画素22の受光面11Sにより受光される。第2の撮像用画素22により出力される電気信号は、撮像信号を構成する。位相差検出用マイクロレンズ33は、瞳分割された光束(以下では、「瞳分割光束」という)を位相差検出用画素23に集光する。位相差検出用画素23は、集光された瞳分割光束を受光し、受光した瞳分割光束に応じた電気信号を出力する。集光された瞳分割光束は、位相差検出用画素23の受光面11Sにより受光される。位相差検出用画素23により出力される電気信号は、位相差検出信号を構成する。
【0021】
複数の画素11及び複数のマイクロレンズ14が、図1図2及び図3に図示される形状及び配置と異なる形状及び配置を有してもよい。
【0022】
1.3 各マイクロレンズの曲率
以下の説明において、各マイクロレンズ14の曲率は、各マイクロレンズ14の光軸を含む断面における、各マイクロレンズ14の入射面の曲率である。
【0023】
各マイクロレンズ14は、各マイクロレンズ14の光軸を回転対称軸とする回転対称性を有する。このため、各マイクロレンズ14の光軸を含む断面における各マイクロレンズ14の曲率は、断面方向によらず一定である。このため、各マイクロレンズ14の曲率は、断面方向が周方向のいずれの方向であっても、一定である。これにより、各マイクロレンズ14の集光能力を最大にすることができる。
【0024】
1.4 撮像用マイクロレンズ及び位相差検出用マイクロレンズの最適化
以下の説明において、各画素11に入射する入射光の入射角θは、入射光の入射方向が各画素11の受光面11Sの法線となす角である。
【0025】
第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22に求められること並びに位相差検出用画素23に求められることは、互いに異なる。このため、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の最適化並びに位相差検出用マイクロレンズ33の最適化は、互いに異なる。
【0026】
第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22に求められることは、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22が高い感度及び良好な斜入射特性を有することである。このため、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32は、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22が高い感度及び良好な斜入射特性を有するように最適化される。第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22が良好な斜入射特性を有することは、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22が安定した感度を有する入射角θの範囲が広いことを意味する。
【0027】
そこで、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32は、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sより奥側にある光電変換領域に焦点をそれぞれ有する。このようにされるのは、下記の理由による。
【0028】
第1の撮像用マイクロレンズ31から第1の撮像用画素21の受光面11Sまでの距離が長くなった場合は、第1の撮像用画素21の斜入射特性が悪化する。なぜならば、0°より大きい入射角θを有する入射光の受光位置が第1の撮像用画素21の受光面11Sから第1の撮像用画素21に隣接する画素11の受光面11Sに向かってずれ、当該入射光が第1の撮像用画素21の受光面11Sに入射しなくなる可能性が高くなるからである。例えば、第1の撮像用マイクロレンズ31による屈折が無視された場合は、当該距離が1μmから2μmまで長くなったときに、30°の入射角θを有する入射光の受光位置が第1の撮像用画素21の受光面11Sから第1の撮像用画素21に隣接する画素11の受光面11Sに向かって約0.6μmずれ、当該入射光が第1の撮像用画素21の受光面11Sに入射しなくなる可能性が高くなる。このことは、第2の撮像用マイクロレンズ32から第2の撮像用画素22の受光面11Sまでの距離が長くなった場合も同様である。しかし、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32が第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sより奥側に焦点をそれぞれ有することにより、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32を第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sにそれぞれ近づけることができる。これにより、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32により集光された入射光を、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sにそれぞれ無駄なく受光させることができる。なお、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32が第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sに焦点を有しないことは、特に問題を生じない。
【0029】
これに対して、位相差検出用画素23に求められることは、位相差検出用画素23が良好な位相差検出特性を有することである。このため、位相差検出用マイクロレンズ33は、位相差検出用画素23が良好な位相差検出特性を有するように最適化される。位相差検出用画素23が良好な位相差検出特性を有することは、入射角θが特定の入射角を超えて変化した場合に位相差検出用画素23の感度が大きく変化することを意味する。特定の入射角は、例えば、0°である。
【0030】
そこで、位相差検出用マイクロレンズ33は、位相差検出用画素23の受光面11Sに焦点を有する。位相差検出用マイクロレンズ33は、図2に図示される、位相差検出用マイクロレンズ33の光軸を含み位相差検出用画素23の対辺方向と平行である断面、及び図3に図示される、位相差検出用マイクロレンズ33の光軸を含み位相差検出用画素23の対角方向と平行である断面のいずれにおいても、位相差検出用画素23の受光面11Sに焦点を有する。
【0031】
位相差検出用マイクロレンズ33から位相差検出用画素23の受光面11Sまでの距離は、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32から第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sまでの距離と同じである。その上で、位相差検出用マイクロレンズ33は、位相差検出用画素23の受光面11Sに焦点を有する。また、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32は、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の受光面11Sより奥側に焦点をそれぞれ有する。これにより、位相差検出用マイクロレンズ33は、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の焦点距離より短い焦点距離を有する。
【0032】
1.5 撮像用マイクロレンズと位相差検出用マイクロレンズとの隙間の抑制
位相差検出用マイクロレンズ33の焦点距離を第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の焦点距離より短くするためには、位相差検出用マイクロレンズ33の曲率を第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の曲率より小さくすることが望ましい。そして、位相差検出用マイクロレンズ33の曲率が第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の曲率より小さい場合は、平面視において、位相差検出用マイクロレンズ33の径が、位相差検出用画素23の対辺寸法及び対角寸法より小さくなり、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の径より小さくなる。このため、平面視において、位相差検出用マイクロレンズ33が占める面積は、位相差検出用画素23が占める面積より小さくなり、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32が占める面積より小さくなる。このため、位相差検出用画素23の外周部の上に位相差検出用マイクロレンズ33が配置されない領域が形成される。
【0033】
形成された領域には、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32の外周部が配置される。このため、平面視において、第1の撮像用マイクロレンズ31は、第1の撮像用画素21の上から位相差検出用画素23の外周部の上にはみ出して配置される。また、平面視において、第2の撮像用マイクロレンズ32は、第2の撮像用画素22の上から位相差検出用画素23の外周部の上にはみ出して配置される。これにより、位相差検出用画素23の上の領域にマイクロレンズが配置されない無効領域が形成されることを抑制することができる。また、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32が、位相差検出用画素23の外周部の上の領域に入射する光を第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22にそれぞれ集光することができる。
【0034】
さらに、平面視において、第1の撮像用マイクロレンズ31は、位相差検出用マイクロレンズ33と繋がる。これにより、第1の撮像用マイクロレンズ31と位相差検出用マイクロレンズ33との間において位相差検出用画素23の上の領域にマイクロレンズが配置されない無効領域が形成されることをさらに抑制することができる。また、第1の撮像用マイクロレンズ31が、位相差検出用画素23の外周部の上の領域に入射する光を第1の撮像用画素21により効果的に集光することができる。
【0035】
このように、固体撮像装置1においては、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32に、位相差検出用マイクロレンズ33の曲率半径と異なる曲率半径が与えられる。また、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32に、位相差検出用マイクロレンズ33の平面形状と異なる平面形状が与えられ、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32と位相差検出用マイクロレンズ33との間に隙間が形成されることが抑制される。これらにより、位相差検出用画素23の位相差検出特性を向上することができる。
【0036】
また、固体撮像装置1においては、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32に、位相差検出用マイクロレンズ33の高さと同じ高さが与えられる。これにより、複数のマイクロレンズ14が形成された後のプロセスが影響を受けることを抑制することができる。
【0037】
1.6 隣接するマイクロレンズの境界
図3に図示されるように、固体撮像装置1は、位相差検出用画素23の対角方向において互いに隣接するふたつの撮像用画素43及び44を備える。また、固体撮像装置1は、ふたつの撮像用画素43及び44の上にそれぞれ配置されるふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54を備える。ふたつの撮像用画素43及び44が、第1の撮像用画素21又は第2の撮像用画素22を含んでもよい。ふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54が、第1の撮像用マイクロレンズ31又は第2の撮像用マイクロレンズ32を含んでもよい。
【0038】
ふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54は、第3の光束及び第4の光束をふたつの撮像用画素43及び44にそれぞれ集光する。ふたつの撮像用画素43及び44は、集光された第3の光束及び第4の光束をそれぞれ受光する。
【0039】
位相差検出用マイクロレンズ33の径が小さくされることにより、位相差検出用マイクロレンズ33及び第2の撮像用マイクロレンズ32の境界における位相差検出用マイクロレンズ33及び第2の撮像用マイクロレンズ32の高さh2は、ふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54の境界におけるふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54の高さh3より低くなる。ここで、高さh2は、位相差検出用画素23及び第2の撮像用画素22の受光面11Sから位相差検出用マイクロレンズ33及び第2の撮像用マイクロレンズ32の入射面までの距離である。また、高さh3は、ふたつの撮像用画素43及び44の受光面11Sからふたつの撮像用マイクロレンズ53及び54の入射面までの距離である。
【0040】
1.7 瞳分割
図4は、第1実施形態の固体撮像装置の、当該固体撮像装置に備えられる左眼画素の周辺を模式的に図示する断面図である。図5は、第1実施形態の固体撮像装置の、当該固体撮像装置に備えられる右眼画素の周辺を模式的に図示する断面図である。
【0041】
瞳分割された光束を位相差検出用画素23に受光させる方式としては、位相差検出用画素23の受光面11Sの一部を遮光膜12により遮光する方式がある。当該方式によれば、図4に図示されるように、位相差検出用画素23の受光面11Sの右側が遮光膜12により遮光され、位相差検出用画素23の受光面11Sの左側が有効化された場合は、位相差検出用画素23が左眼画素となる。一方、図5に図示されるように、位相差検出用画素23の受光面11Sの左側が遮光膜12により遮光され、位相差検出用画素23の受光面11Sの右側が有効化された場合は、位相差検出用画素23が右眼画素となる。
【0042】
図6は、理想的な位相差検出特性を示すグラフである。図7は、第1実施形態の固体撮像装置の位相差検出特性のシミュレーション結果を示すグラフである。これらのグラフにおいては、横軸に左眼画素及び右眼画素の各画素への光線の入射角(光線入射角)θがとられており、縦軸に各画素の感度がとられている。感度は、最大値が100%となるように規格化されている。図8は、第1実施形態の固体撮像装置に入射光が入射した状態を模式的に図示する断面図である。
【0043】
図6に示されるように、理想的な位相差検出特性は、光線入射角θが0°より小さくなる入射角の範囲において左眼画素の感度に対する右眼画素の感度の比が高くなり、光線入射角θが0°より大きくなる入射角の範囲において右眼画素の感度に対する左眼画素の感度の比が高くなる位相差検出特性である。望ましい位相差検出特性を得るためには、前者の範囲において左眼画素の感度を0%に近づけ、後者の範囲において右眼画素の感度を0%に近づけることが期待される。
【0044】
図7に示されるように、固体撮像装置1は、図6に示される理想的な位相差検出特性に近い位相差検出特性を有する。固体撮像装置1がそのような位相差検出特性を有するのは、図8に図示されるように、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32と位相差検出用画素23との間に隙間が形成されることを抑制することができ、入射光61が、形成された隙間を経由して位相差検出用画素23に入射することを抑制することができるためである。この点については、下述する第2参考例と第1実施形態との比較により、より明確になる。
【0045】
1.8 参考例と第1実施形態との比較
図9は、第1参考例の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。図10は、図9に描かれた切断線a-a’の位置における、第1参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。図11は、図9に描かれた切断線b-b’の位置における、第1参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。
【0046】
図9図10及び図11に図示される第1参考例の固体撮像装置8においては、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32に、位相差検出用マイクロレンズ33の高さh1と同じ高さh1が与えられ、位相差検出用マイクロレンズ33の形状と同じ形状が与えられる。このため、固体撮像装置8においては、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の最適化並びに位相差検出用画素23の最適化を独立して行うことができない。このため、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22に求められること並びに位相差検出用画素23に求められることを両立することができない。
【0047】
図12は、第2参考例の固体撮像装置を模式的に図示する上面図である。図13は、図12に描かれた切断線a-a’の位置における、第2参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。図14は、図12に描かれた切断線b-b’の位置における、第2参考例の固体撮像装置の断面を模式的に図示する断面図である。図15は、第2参考例の固体撮像装置に入射光が入射した状態を模式的に図示する断面図である。
【0048】
図12図13及び図14に図示される第2参考例の固体撮像装置9においては、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32に、位相差検出用マイクロレンズ33の形状と異なる形状が与えられる。このため、固体撮像装置9においては、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の最適化並びに位相差検出用画素23の最適化を独立して行うことができる。このため、第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22に求められること並びに位相差検出用画素23に求められることを両立することができる。
【0049】
しかし、第2参考例の固体撮像装置9においては、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32が第1の撮像用画素21及び第2の撮像用画素22の上のみにそれぞれ配置される。このため、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32と位相差検出用マイクロレンズ33との間に大きな隙間が形成される。このため、図15に図示されるように、入射光61の一部62が、形成された大きな隙間を経由して位相差検出用画素23に入射する。このため、入射光61の一部62が、位相差検出信号に重畳するノイズの原因となり、光線入射角θが0°より小さくなる入射角の範囲において左眼画素の感度を0%に近づけ、光線入射角θが0°より大きくなる入射角の範囲において右眼画素の感度を0%に近づけることを妨げる。
【0050】
図16は、第2参考例の固体撮像装置の位相差検出特性のシミュレーション結果を示すグラフである。このグラフにおいては、横軸に左眼画素及び右眼画素の各画素への光線の入射角(光線入射角)θがとられており、縦軸に各画素の感度がとられている。感度は、最大値が100%となるように規格化されている。
【0051】
図16に示されるように、第2参考例の固体撮像装置9においては、光線入射角θが0°より小さくなる入射角の範囲において左眼画素の感度が約40%まで上昇し、光線入射角θが0°より大きくなる入射角の範囲において右眼画素の感度が約40%まで上昇する。このため、第2参考例の固体撮像装置9は、図6に示される理想的な位相差検出特性に近い位相差検出特性を有しない。固体撮像装置9がそのような位相差検出特性を有しないのは、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32と位相差検出用マイクロレンズ33との間に大きな隙間が形成され、入射光61の一部62が、形成された大きな隙間を経由して位相差検出用画素23に入射するためである。
【0052】
これに対して、図7に示されるように、第1実施形態の固体撮像装置1においては、光線入射角θが0°より小さくなる入射角の範囲において左眼画素の感度が約10%まで低下し、光線入射角θが0°より大きくなる入射角の範囲において右眼画素の感度が約10%まで低下する。このため、第1実施形態の固体撮像装置1は、図6に示される理想的な位相差検出特性に近い位相差検出特性を有する。固体撮像装置1がそのような位相差検出特性を有するのは、第1の撮像用マイクロレンズ31及び第2の撮像用マイクロレンズ32と位相差検出用マイクロレンズ33との間に隙間が形成されることが抑制され、入射光61が当該隙間を経由して位相差検出用画素23に入射することが抑制されるためである。
【0053】
本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 固体撮像装置、8 固体撮像装置、9 固体撮像装置、11 画素、12 遮光膜、13 平坦化膜、14 マイクロレンズ、11S 受光面、13S 平坦面、21 第1の撮像用画素、22 第2の撮像用画素、23 位相差検出用画素、31 第1の撮像用マイクロレンズ、32 第2の撮像用マイクロレンズ、33 位相差検出用マイクロレンズ、43 撮像用画素、44 撮像用画素、53 撮像用マイクロレンズ、54 撮像用マイクロレンズ、61 入射光、62 入射光の一部。
図1
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