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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051268
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】測量システムおよびレーザ受光器
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01C15/00 103B
G01C15/00 103D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157331
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐次
(57)【要約】
【課題】レーザ受光器で測量機の機械高を測定する。
【解決手段】測量システム(1)は、測定基準点(RP2)から高さ(H)で水平にレーザ光(LB)を出す回転レーザ装置(10)と、別の測定基準点(RP1)に設置された測量機(30)と、前記測量機の前面に固定されたレーザ受光器(20)を備え、前記レーザ受光器は、導光体の両端部に受光部を備え、H型に、第1の鉛直受光管(23)、第2の鉛直受光管(25)、水平受光管(24)を備え、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置(235)を特定し、中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記中央位置を境にプラス側かマイナス側かを検出し、前記差分距離のプラス/マイナスの組み合わせに応じて、前記レーザ光の高さ(H)と、前記受光器の受光器中心(RC)と前記測量機の機械中心(MC)の中心離距離(d1)と、前記差分距離と、から前記測量機の機械高(h)を測定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある測定基準点からある高さで水平にレーザ光を出射する回転レーザ装置と、
別の測定基準点に設置され機械中心までの機械高を有する測量機と、
前記測量機の前面に固定され、前記レーザ光を受光するレーザ受光器と、を備え、
前記レーザ受光器は、受光センサとして,柱状の導光体,前記導光体の両端部に配置された受光部,前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層,を備え、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、前記受光部に接続された演算処理部を備え、
前記演算処理部は、
前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の前記中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、
前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラス/マイナスの組み合わせに応じて、前記レーザ光の高さと、前記受光器の受光器中心と前記測量機の機械中心の鉛直方向の中心離距離と、前記差分距離と、から前記測量機の前記機械高を測定する
ことを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記第1の鉛直受光管と前記第2の鉛直受光管の前記差分距離が同じ値でともにマイナス値の場合は、該差分距離と前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から、前記機械高を算出し、
前記第1の鉛直受光管と前記第2の鉛直受光管の前記差分距離が同じ値でともにプラス値の場合は、該差分距離の絶対値を前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から差し引いて、前記機械高を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記水平受光管の前記差分距離がプラスの値の場合と、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記水平受光管の前記差分距離がマイナスの値の場合は、前記水平受光管の差分距離の絶対値の三角関数から求まる前記受光器中心の高さ変化量を前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から差し引いて、前記機械高を算出し、
前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記水平受光管の前記差分距離がマイナス値の場合と、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記水平受光管の前記差分距離がプラス値の場合は、前記水平受光管の差分距離の絶対値の三角関数から求まる前記受光器中心の高さ変化量と前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から、前記機械高を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項4】
前記レーザ受光器の後面には、後方に延出する左右一対のハンドルが上下方向にスライドロック可能に設けられており、該ハンドルを前記測量機に設けられたフックに固定することで、前記中心離距離が固定となることを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項5】
前記レーザ受光器の後面には、前記測量機に設けられた表示操作部および望遠鏡との干渉を避けるための収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の測量システム。
【請求項6】
ある測定基準点からある高さで水平に出射されるレーザ光を受光し、別の測定基準点に設置された測量機の前面に固定されたレーザ受光器であって、
前記レーザ受光器は、受光センサとして,柱状の導光体,前記導光体の両端部に配置された受光部,前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層,を備え、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、前記受光部に接続された演算処理部を備え、
前記演算処理部は、
前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の前記中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、
前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラス/マイナスの組み合わせに応じて、前記レーザ光の高さと、前記受光器の受光器中心と前記測量機の機械中心の鉛直方向の中心離距離と、前記差分距離と、から前記測量機の機械高を測定することを特徴とするレーザ受光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転レーザ装置からの水平なレーザ光を受光するレーザ受光器に関する。
【背景技術】
【0002】
建築・土木・内装工事などの測量作業では、水平出し(レベリング)のために、回転レーザ装置とレーザ受光器が利用されている。回転レーザ装置は、測定基準点に据え付けられ、レーザ光源を備えた回転ヘッドを備え、基準とする高さで水平にレーザ光を旋回させる。レーザ受光器は、受光センサを備えた検出体内でレーザ光の衝突位置を検出して、レーザ光に対するレーザ受光器の高さ方向(鉛直方向)の位置を検出する。例えば特許文献1では、受光センサとして複数のフォトダイオートを鉛直な軸線周りに設け、かつ受光センサを鉛直方向に移動可能に構成することで、測定基準点からの測定点の高低差を算出するレーザ受光器が開示されている。
【0003】
また一方で、測量作業では、トータルステーションや三次元スキャナなどの測量機による測量が行われる。測量機により測定対象物を測定する際には、測量機の設置面から機械中心までの機械高の測定を必要とする場合がある。測量機の機械高は、作業者がメジャー等により手作業で測定することが多いが、測定誤差が生じやすい。これに対し、例えば特許文献2では、測量機の望遠鏡を斜め下方向に向けて、測量機の設置面を測距光でノンプリズム測定することで、測量機の機械高を測定する測量機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-169921号公報
【特許文献2】特開2017-181427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転レーザ装置とレーザ受光器はレベリングの用途で測量現場でよく用いられているものであり,測量機は測定点の座標測定の用途で測量現場でよく用いられるものである。発明者らは、これらの測量現場でよく用いられている機械を利用して、測量機の機械高を測定することは出来ないかと考えた。
【0006】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、回転レーザ装置からの水平なレーザ光を受光してレベリングを行うレーザ受光器を利用して、測量機の機械高を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の測量システムは、ある測定基準点からある高さで水平にレーザ光を出射する回転レーザ装置と、別の測定基準点に設置され機械中心までの機械高を有する測量機と、前記測量機の前面に固定され、前記レーザ光を受光するレーザ受光器と、を備え、前記レーザ受光器は、受光センサとして,柱状の導光体,前記導光体の両端部に配置された受光部,前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層,を備え、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、前記受光部に接続された演算処理部を備え、前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の前記中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラス/マイナスの組み合わせに応じて、前記レーザ光の高さと、前記受光器の受光器中心と前記測量機の機械中心の鉛直方向の中心離距離と、前記差分距離と、から前記測量機の前記機械高を測定する。
【0008】
第2の態様の測量システムでは、第1の態様において、前記演算処理部は、前記第1の鉛直受光管と前記第2の鉛直受光管の前記差分距離が同じ値でともにマイナス値の場合は、該差分距離と前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から、前記機械高を算出し(数式1)、前記第1の鉛直受光管と前記第2の鉛直受光管の前記差分距離が同じ値でともにプラス値の場合は、該差分距離の絶対値を前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から差し引いて、前記機械高を算出する(数式2)のも好ましい。
【0009】
第3の態様の測量システムでは、第1の態様において、前記演算処理部は、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記水平受光管の前記差分距離がプラスの値の場合と、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記水平受光管の前記差分距離がマイナスの値の場合は、前記水平受光管の差分距離の絶対値の三角関数から求まる前記受光器中心の高さ変化量を前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から差し引いて、前記機械高を算出し(数式4)、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記水平受光管の前記差分距離がマイナス値の場合と、前記第1の鉛直受光管の前記差分距離がマイナス値、前記第2の鉛直受光管の前記差分距離がプラス値、前記水平受光管の前記差分距離がプラス値の場合は、前記水平受光管の差分距離の絶対値の三角関数から求まる前記受光器中心の高さ変化量と前記レーザ光の高さと前記中心離距離の和から、前記機械高を算出する(数式5)のも好ましい。
【0010】
第4の態様の測量システムでは、第1~3のいずれかの態様において、前記レーザ受光器の後面には、後方に延出する左右一対のハンドルが上下方向にスライドロック可能に 設けられており、該ハンドルを前記測量機に設けられたフックに固定することで、前記中心離距離が固定となるのも好ましい。
【0011】
第5の態様の測量システムでは、第1~4のいずれかの態様において、前記レーザ受光器の後面には、前記測量機に設けられた表示操作部および望遠鏡との干渉を避けるための収容凹部が形成されているのも好ましい。
【0012】
また、第6の態様のレーザ受光器は、ある測定基準点からある高さで水平に出射されるレーザ光を受光し、別の測定基準点に設置された測量機の前面に固定されたレーザ受光器であって、前記レーザ受光器は、受光センサとして,柱状の導光体,前記導光体の両端部に配置された受光部,前記レーザ光を前記導光体の前記両端部に向かって分割する光結合層,を備え、H型に配置された、第1の鉛直受光管、第2の鉛直受光管、および水平受光管と、前記受光部に接続された演算処理部を備え、前記演算処理部は、前記受光部の各受光信号から前記レーザ光の衝突位置を特定し、前記衝突位置の前記中央位置からの差分距離と、前記差分距離が前記導光体の長さの中央位置を境にプラス側とマイナス側のどちらにあるかを検出し、前記第1の鉛直受光管、前記第2の鉛直受光管、および前記水平受光管の前記差分距離のプラス/マイナスの組み合わせに応じて、前記レーザ光の高さと、前記受光器の受光器中心と前記測量機の機械中心の鉛直方向の中心離距離と、前記差分距離と、から前記測量機の機械高を測定するのも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転レーザ装置からの水平なレーザ光を受光してレベリングを行うレーザ受光器を利用して、測量機の機械高を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る測量システムの外観斜視図である。
図2】同測量システムの測量機の正面図である。
図3】同測量システムの測量機の側面図である。
図4A】同測量システムのレーザ受光器の背面図である。
図4B】同測量システムのレーザ受光器の側面図である。
図4C】同測量システムのレーザ受光器の平面図である。
図5】同測量システムの受光器の受光センサを説明する図である。
図6】同測量システムの構成ブロック図である。
図7】同測量システムの受光器に傾きが無い場合の、機械高の計算を説明する図である。
図8】同測量システムの受光器による左右への傾きの変化の検出を説明する図である。
図9】同測量システムの受光器に傾きが有る場合の、機械高の計算を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明において、同種の構成には同一の名称を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る測量システム1の外観斜視図、図2は同測量システム1の測量機の正面図、図3は同測量システム1の測量機の側面図である。測量システム1は、回転レーザ装置10と、レーザ受光器(以下、単に受光器と言う。)20と、測量機30を備える。
【0017】
回転レーザ装置10は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、またはSLED(Super Luminescent Diode)などのレーザ光源を備えた回転ヘッド11を備えている。図1に示すように、回転レーザ装置10は、測量現場の地面(平面)上の一測定基準点RP2に三脚および整準台を介して立設され、回転ヘッド11を回転させて、測定基準点RP2から、ある高さHとなる水平基準面12を旋回するように、レベリングのレーザ光LBを回転させる。回転ヘッド11は、レーザ光LBとして、所定周波数に強度変調されたパルス光を出射する。
【0018】
測量機30は、モータドライブトータルステーションまたは三次元レーザスキャナ等である。図1に示すように、測量機30は、測量現場の地面(平面)上の別の測定基準点RP1に、三脚を介して据え付けられ、図2および図3に示すように、測量機30は、三脚の上の整準台31、整準台31に着脱可能に取り付けられる基盤部32と、基盤部32に軸H-H回りに360°水平回転可能に設けられた托架部33と、托架部33の中央凹部に、軸V-V回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡34とを備える。測量機30は、托架部33の後面に主表示操作部35と、托架部33の後面に副表示操作部36を備える。主表示操作部35と副表示操作部36はいずれもタッチパネル式の液晶ディスプレイであり、いずれからでも測量機30の操作、測定結果の表示が行える。測量機30は、望遠鏡34から測距光MB(図3参照)を出射して測定対象物からの反射光を受光し、受光信号の位相差または飛行時間差に応じて、測定対象物までの距離と角度を測定する。測量機30の機械中心MCは、望遠鏡34内に設定されており、測距光MBの測定起点であり、軸H-Hおよび軸V-V上に設定されている。
【0019】
受光器20は、測量機30の前面に固定されている。図2に示すように、受光器20は、ケース21と、第1の鉛直受光管23と、水平受光管24と、第2の鉛直受光管25と、表示操作部22を備える。第1の鉛直受光管23,水平受光管24,第2の鉛直受光管25,表示操作部22はケース21の前面に配置されている。表示操作部22はタッチパネル式の液晶ディスプレイであり、受光管23,24,25の余白に配置され、受光器20の操作、測定結果の表示が行える。
【0020】
図4Aは受光器20の背面図、図4Bは受光器20の右側面図、図4Cは受光器20の上面図である。受光器20は、ケース21の後面に、後方に延出する左右一対のハンドル27を備えている。ハンドル27の内側面には、角または半円状に切り欠かれた係合部271(図4B参照)が形成されている。ハンドル27は、図3に示すように、測量機30の托架部33の左右側面に設けられたフック37に、係合部271の切り欠きで求心された状態で固定される。また、ハンドル27は、図4Aに示すように、ケース21の後面に上下方向に形成された公知のスライドロック機構29により、図4Bに示す第1ポジションP1、第2ポジションP2、第3ポジションP3に移動・固定が可能である。第1ポジションP1は、ハンドル27の係合部271が第2ポジションP2よりも水平受光管24の直径&#8467;分上に配置される位置であり、第3ポジションP3は、ハンドル27の係合部271が第2ポジションP2よりも水平受光管24の直径&#8467;分下に配置される位置である。ハンドル27を移動することにより、測量機30に対する受光器20の上下方向の位置を調節可能であり、すなわち、水平受光管24の上下方向の位置を調節可能であるから、レーザ光LBの高さに合わせて受光器20の測定可能範囲MA(図4B参照)を広げることができる。なお、ハンドル27をフック37から外せば、受光器20は測量機30から取り外し可能であり、受光器20と測量機30はそれぞれ独立の機器として測量現場で使用することができる。
【0021】
受光器20のケース21の後面中央部は、図4Aおよび図4Cに示すように、測量機30の副表示操作部36と受光器20、および測量機30の望遠鏡34と受光器20の干渉を避けるため、上下方向に通る収容凹部28が形成されている。
【0022】
図2に示すように、受光器20は、受光センサである第1の鉛直受光管23、水平受光管24、および第2の鉛直受光管25を、ケース21の前面に形成されたH型の溝(図示略)に収容し、「H」型に備える。詳細には、第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25のそれぞれの長さLの中央位置Mに水平受光管24の中心軸が合わされ、受光器中心RCが水平受光管24の長さLの中央位置Mになるように、「H」型に配置されている。第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25の中央位置M、水平受光管24の中央位置M、および水平受光管24にある受光器中心RCの位置は、予め計測し既知の数値として、後述する記憶部203に記憶されている。また、受光器20を測量機30に固定(ハンドル27をフック37に固定)することで、受光器20の受光器中心RCと測量機30の機械中心MCの鉛直方向の位置関係が固定となる。受光器20を測量機30に固定すると、受光器中心RCと機械中心MCは鉛直方向にd1だけ乖離する。この中心離距離d1は、予め計測し既知の数値として、後述する記憶部203に記憶する。なお、中心離距離d1は、図4Bに示す第1ポジションP1、第2ポジションP2、第3ポジションP3の三段階で計測しそれぞれを記憶部20に記憶するものとする。
【0023】
ここで、受光器20の受光センサである、第1の鉛直受光管23と、水平受光管24と、第2の鉛直受光管25について説明する。第1の鉛直受光管23および第2の鉛直受光管25は軸方向を鉛直方向に配置したもので、水平受光管24は軸方向を水平方向に配置したものであって、全て同一の構成であるため、第1の鉛直受光管23を用いて受光センサの構成を説明する。図5は受光器20の受光センサ(第1の鉛直受光管23)を説明する図であり、第1の鉛直受光管23の側面を表した図である。図5において、左がケース21の前面であり、レーザ光LBを受光する側である。
【0024】
第1の鉛直受光管23は、柱状の導光体231と、導光体231の一方の端部に配置された受光部232と、他方の端部に配置された受光部233を備える。受光部232,233は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)、または同等の光電変換素子である。受光部232,233が検出した各受光信号は、後述する演算処理部201にて処理される。導光体231は、レーザ光LBを体内で導光すれば材料は限定されないが、例えば透明なガラスや石英、またはアクリルやポリカーボネイトなどの樹脂である。導光体231は、軸方向に規定の長さLを備える、円柱、楕円柱、または全反射による導光が可能な柱状に形成される。導光体231には、光結合層234が形成される(横断面図を参照)。光結合層234は、光の回折、屈折、散乱、反射、分散、および/または蛍光の原理を使用して、レーザ光LBを導光体231に結合する(導光体外にレーザ光を反射せず、導光体内にレーザ光を入射させる)。光結合層234は、例えば蛍光粒子を溶液に分散させた塗料を導光体231の表面に塗布するか、または、蛍光粒子を含有する樹脂層を導光体231の表面に設けることで、形成される。
【0025】
図5に示すように、レーザ光LBが導光体231に衝突すると、衝突位置235において、レーザ光LBは、光結合層234によって導光体231内に結合されるとともに、一方の受光部232へ向かうレーザ光B1と、反対方向にある他方の受光部233へ向かうレーザ光B2に分割される。衝突位置235が導光体231の軸方向の中央位置Mであれば、レーザ光B1が導光した距離L1とレーザ光B2が導光した距離L2は同じであるため、受光部232、233の受光信号の波形は一致する。しかしながら、衝突位置235が導光体231の中央位置Mからずれると、レーザ光B1,B2が導光した距離L1,L2は異なるため、受光部232、233の受光信号の波形にズレが生じる。例えば図5では、衝突位置235は導光体231の中央位置Mより上で、距離L1が距離L2より短いため、受光部232の受光信号に対して受光部233の受光信号に遅れが生じる。演算処理部201では、これらの受光信号の時間差または位相差と、規定の長さLと、導光体231の光伝番速度から、距離L1およびL2を算出して、衝突位置235を特定する。また、衝突位置235は中央位置Mを境にしたどちら側にあるかと、衝突位置235の中央位置Mからの差分距離Dを、規定の長さLと、距離L1またはL2から算出する。例えば図5であれば、L/2-L1またはL2-L/2からDを求める。
【0026】
図6は測量システム1の構成ブロック図である。回転レーザ装置10は、前述の通り、レーザ光LBを出射する回転ヘッド11を備える。受光器20は、演算処理部201と、通信部202と、記憶部203と、上述の受光部(第1の鉛直受光管23のもの)232,233と、受光部(第2の鉛直受光管25のもの)252,253と、受光部(水平受光管24のもの)242,243と、表示操作部22を備える。測量機30は、托架部33の水平回転および望遠鏡34の鉛直回転を行うモータである回転駆動部303と、測距光MBを出射・受光して測定対象物までの距離を測定する測距部301と、測距時の托架部33と望遠鏡34のそれぞれの回転角を測定するロータリエンコーダである測角部302と、制御部304と、通信部305と、記憶部306と、上述の主表示操作部35および副表示操作部36を備える。通信部305は受光器20の通信部202との間で無線通信が可能であり、ブルートゥース(登録商標)、各種の無線LAN規格、赤外線通信、携帯電話回線、その他無線回線等を用いることができる。
【0027】
回転レーザ装置10および測量機30は公知の構成で良いため、本形態で特徴的である受光器20の構成について詳細を説明する。
【0028】
記憶部203は、主記憶装置としてのRAM、ROM、補助記憶装置としてのHDD(Hard・Disc・Drive)等を含むものである。記憶部203は、演算処理部201の行う各処理プログラムを格納している。
【0029】
演算処理部201は、少なくともCPU(Central Processing Unit)およびメモリ(RAM(Random・Access・Memory),ROM(Read・Only・Memory)等)を集積回路に実装した集積回路、集積回路の集合、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサを含むものである。
【0030】
演算処理部201は、傾斜・高さ変化検出部211と機械高算出部212の機能部を備える。各機能部は、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。
【0031】
傾斜・高さ変化検出部211は、第1の鉛直受光管23、水平受光管24、第2の鉛直受光管25のそれぞれの受光部232.233,242,243,252,253(図2参照)から受光信号を受け取り、それぞれの差分距離D23,D24,D25を、プラス値かマイナス値かも含めて検出する。機械高算出部212は、傾斜・高さ変化検出部211が検出した状態に応じて、測量機30の機械高hを計算する。以下、その詳細を述べる。
【0032】
図7は受光器20に傾きが無い場合の、機械高hの計算を説明する図である。受光器20に傾きが無い場合、傾斜・高さ変化検出部211は、図7の(1)に示すように、受光器中心RCの高さがレーザ光LBより上になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25ともに、衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、それぞれの受光部232,233、受光部252,253での受光信号にズレが生じ、中央位置Mに対して下の受光部233(253)側にマイナスの差分距離D23,D25を検出する。傾斜・高さ変化検出部211は、図7の(2)に示すように、受光器中心RCの高さがレーザ光LBより下になった場合、第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25ともに、衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部232(252)側にプラスの差分距離D23,D25を検出する。
【0033】
この検出を受けて、機械高算出部212は、傾斜・高さ変化検出部211が、第1の鉛直受光管23と第2の鉛直受光管25からマイナスの差分距離D23,D25を検出した時は、図7の(1)に示すように、機械高hは、レーザ光LBの高さHと、鉛直受光管23,25の検出した差分距離D23(またはD25)と、受光器中心RCと機械中心MCの中心離距離d1を用いて、数式1から算出する。但し、D23(D25)は絶対値を用いる。
【数1】
または
【0034】
一方、機械高算出部212は、傾斜・高さ変化検出部211が、第1の鉛直受光管23と第2の鉛直受光管25からプラスの差分距離D23,D25を検出した時は、図7の(2)に示すように、機械高hは、レーザ光LBの高さHと、鉛直受光管23,25の検出した差分距離D23(またはD25)と、受光器中心RCと機械中心MCの中心離距離d1を用いて、数式2から算出する。
【数2】
または
【0035】
なお、数式1および数式2において、ハンドル27をスライドさせた場合は、ハンドル27のポジションに応じて表示操作部22から中心離距離d1の値の更新を行うものとする。
【0036】
図8図9は受光器20に傾きが有る場合の、機械高hの計算を説明する図である。傾斜・高さ変化検出部211は、図8の(1)に示すように受光器20が左へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部232側にプラスの差分距離D23を検出し、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部253側にマイナスの差分距離D25を検出する。傾斜・高さ変化検出部211は、図8の(2)に示すように受光器20が右へ傾いた場合、第1の鉛直受光管23では衝突位置235が中央位置Mより下にずれ、中央位置Mに対して下の受光部233側にマイナスの差分距離D23を検出し、第2の鉛直受光管25では衝突位置235が中央位置Mより上にずれ、中央位置Mに対して上の受光部252側にプラスの差分距離D25を検出する。このとき、差分距離D23(D25)は、左右傾斜が大きくなるほど長くなり、差分距離D23(D25)と傾斜角δの値は一対一対応することが分かる。このため、差分距離D23(D25)と左右の傾斜角δの対応関係を記憶した左右傾斜検出テーブル342(図8参照)を記憶部203に記憶しておくことで、左右の傾斜角δは、差分距離の値に応じて算出することができる。図8は分解能0.5mm単位とした場合の左右傾斜検出テーブル342を例示している。左右傾斜検出テーブル342では、鉛直受光管23(25)の中央位置Mを0[mm]とし、中央位置Mを境に上の受光部232(252)側で検出された差分距離D23(D25)をプラス、中央位置Mを境に下の受光部233(253)側で検出された差分距離D23(D25)をマイナスとし、各差分距離D23(D25)に対応する傾斜角δが記憶されている。
【0037】
傾斜・高さ変化検出部211は、水平受光管24の中央位置Mを境に左の受光部242側をマイナス、右の受光部243側をプラスとすると、図9の(1)に示すように、受光器20が左に傾き、衝突位置235が受光器中心RCより上にずれた場合、受光部243側にプラスの差分距離D24を検出する。図9の(2)に示すように、受光器20が左に傾き、衝突位置235が受光器中心RCより下にずれた場合、受光部242側にマイナスの差分距離D24を検出する。図9の(3)に示すように、受光器20が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心RCより上にずれた場合、受光部242側にマイナスの差分距離D24を検出する。図9の(4)に示すように、受光器20が、右に傾き、衝突位置235が受光器中心RCより下にずれた場合、受光部243側にプラスの差分距離D24を検出する。受光器中心RCの高さ変化量Δdは、三角関数を用いて数式3から求められる。但し、数式3でD24は絶対値を用いる。
【数3】

但し、 Δd:高さ変化
D24:水平受光管が検出した差分距離
δ:レーザ受光器の左右方向の傾斜角
【0038】
この検出を受けて、機械高算出部212は、傾斜・高さ変化検出部211が、図9の(1)で説明した通り、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がプラス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がマイナス値、水平受光管24の差分距離D24がプラスの値を検出した時と、図9の(3)で説明した通り、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がマイナス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がプラス値、水平受光管24の差分距離D24がマイナスの値を検出した時は、受光器中心RCはレーザ光LBより下にあり、測量機30の機械高hは、レーザ光LBの高さHと、受光器中心RCと機械中心MCの中心離距離d1と、水平受光管24の差分距離D24から数式3で出せる受光器中心RCの高さ変化量Δdを用いて、数式4から算出できる。
【数4】
【0039】
一方、機械高算出部212は、傾斜・高さ変化検出部211が、図9の(2)で説明した通り、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がプラス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がマイナス値、水平受光管24の差分距離D24がマイナス値を検出した時と、図9の(4)で説明した通り、第1の鉛直受光管23の差分距離D23がマイナス値、第2の鉛直受光管25の差分距離D25がプラス値、水平受光管24の差分距離D24がプラス値を検出した時は、受光器中心RCはレーザ光LBより上にあり、測量機30の機械高hは、レーザ光LBの高さHと、受光器中心RCと機械中心MCの中心離距離d1と、水平受光管24の差分距離D24から数式3で出せる受光器中心RCの高さ変化量Δdと、を用いて、数式5から算出できる。
【数5】
【0040】
なお、数式4および数式5において、ハンドル27をスライドさせた場合は、ハンドル27のポジションに応じて表示操作部22から中心離距離d1の値の更新を行うものとする。
【0041】
機械高算出部212は、数式1、数式2、数式4、または数式5から機械高hを測定すると、通信部202を介して測量機30に送信する。測量機30は通信部305でこれを受信して、記憶部306に記憶する。
【0042】
以上、本形態の測量システム1によれば、受光センサとして第1の鉛直受光管23、第2の鉛直受光管25、および水平受光管24をH型に備えたレーザ受光器20を、位置合わせした状態で測量機30と一体にすることで、受光器20の各受光信号のプラス/マイナスの検出パターンを見て、それぞれの検出パターンに応じて、測量機30の機械高を正確に測定することができる。
【0043】
この測量システム1に用いられる回転レーザ装置10と受光器20はレベリングの用途で測量現場でよく用いられるものであり,測量機30は測定点の座標測定の用途で測量現場でよく用いられるものである。本形態の測量システム1では、レベリングの用途で測量現場に用意されている受光器20を測量機30に取り付けることによって、簡単に、測量機30の機械高を測定できる。
【0044】
また、受光器20と測量機30は、受光器20のハンドル27と測量機30のフック37で着脱可能であるため、機械高の測定時だけ受光器20を測量機30に取り付けて、機械高の測定が終了すれば取り外すことができる。そして、取り外した状態では、受光器20と測量機30は、それぞれ正規の用途の使用に戻すことができるので、便利である。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形例を述べたが、上記は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 測量システム
10 回転レーザ装置
11 回転ヘッド
12 水平基準面
20 レーザ受光器
21 ケース
22 表示操作部
23 第1の鉛直受光管
231 導光体
232 受光部
233 受光部
234 光結合層
235 衝突位置
24 水平受光管
242 受光部
243 受光部
25 第2の鉛直受光管
252 受光部
253 受光部
27 ハンドル
28 収容凹部
29 スライドロック機構
201 演算処理部
202 通信部
203 記憶部
211 傾斜・高さ検出部
212 機械高算出部
30 測量機
31 整準台
32 基盤部
33 托架部
34 望遠鏡
35 主表示操作部
36 副表示操作部
37 フック
301 測距部
302 測角部
303 回転駆動部
304 演算制御部
305 通信部
306 記憶部
MC 機械中心
d1 中心離距離
LB レーザ光
RC 受光器中心
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9