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  • 特開-水処理装置および水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051275
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240404BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20240404BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240404BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/66 521D
C02F1/66 521M
C02F1/66 521N
C02F1/66 521P
C02F1/66 530L
C02F1/66 530P
C02F1/66 540D
B01D61/02
C02F1/68 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157338
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 教介
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA55Z
4D006JA59Z
4D006KA72
4D006KB30
4D006KD30
4D006KE15P
4D006KE15Q
4D006MC17
4D006MC54
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
(57)【要約】
【課題】間欠運転を行っても安定的に処理水を製造できる水処理装置および水処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】被処理水W1を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理部10と、逆浸透膜処理部10で処理した逆浸透膜処理水W2を、ミネライザーラインL2を流れる処理水AとバイパスラインL3を流れる処理水Bに分流する分流部11と、処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水W3とするミネラル処理部12と、ミネラル処理水W3と処理水Bとを混合する混合部13と、を備える水処理装置1を用いて水処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理部と、
前記逆浸透膜処理部で処理した逆浸透膜処理水を、ミネライザーラインを流れる処理水Aとバイパスラインを流れる処理水Bに分流する分流部と、
前記処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水とするミネラル処理部と、
前記ミネラル処理水と前記処理水Bとを混合する混合部と、
を備える、水処理装置。
【請求項2】
前記ミネラル剤が炭酸塩である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記ミネライザーラインと前記バイパスラインのそれぞれに制御弁が設置されている、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記制御弁を制御する制御装置をさらに備える、請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
被処理水を逆浸透膜で処理すること、
前記逆浸透膜で処理した逆浸透膜処理水を処理水Aと処理水Bとに分流すること、
前記処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水とすること、および、
前記ミネラル処理水と前記処理水Bとを混合して混合処理水とすること、
を含む、水処理方法。
【請求項6】
前記混合処理水のpHが目標設定値となるように、前記ミネラル処理水と前記処理水Bの混合割合を調節する、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記逆浸透膜処理水の流量に対する、前記逆浸透膜処理水から分流される前記処理水Aの流量の割合が10%以上100%未満である、請求項5または6に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記混合処理水のpHが目標設定値に到達したときに、前記逆浸透膜処理水をすべてミネラル剤と接触させてミネラル処理水とする通常運転へ切り替える、請求項5または6に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水、河川水、海水等の原水を逆浸透膜によって脱塩処理する方法が知られている。脱塩処理によって得られる脱塩水はpHが低く、配管や設備を腐食させる問題がある。そのため、通常、脱塩水には、腐食性を抑制するためにミネラル剤が添加される。
特許文献1には、逆浸透膜で処理した脱塩水のpHを調整した後、炭酸塩粒子と接触させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-042734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水処理においては、水需要が少ない夜間や、設備の水処理機能の再生処理を行う際に一時的に運転を停止する、間欠運転が採用されることがある。
しかし、水処理装置を間欠運転すると、配管や装置にスケールが生じやすくなり、また処理再開時の水質が大きく変動して基準水質を満たすまでに数時間かかるといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、間欠運転を行っても安定的に処理水を製造できる水処理装置および水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が前記課題について検討したところ、処理水とミネラル剤とを接触させるミネラル処理部においては、運転停止中もミネラル処理部に溜まった処理水とミネラル剤との反応が継続することが原因であることが分かった。
より具体的には、例えばミネラル剤が炭酸カルシウムの場合、運転停止中も下記式(1)の反応が進行するため、処理水のpHが上昇し、遊離炭酸濃度が低下し、全炭酸濃度が高くなる。その結果、配管や装置におけるスケール形成や、処理再開時の処理水の水質変動の問題が生じ得る。
CaCO(個体)+CO+HO ⇒ Ca2++2HCO3- ・・・式(1)
本発明者等はさらに検討を進め、逆浸透膜による処理後の処理水を通水するラインにミネラル剤とは接触させないバイパスラインを追加し、ミネラル剤と接触させたミネラル処理水と、バイパスラインの処理水とを混合することによって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]被処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理部と、
前記逆浸透膜処理部で処理した逆浸透膜処理水を、ミネライザーラインを流れる処理水Aとバイパスラインを流れる処理水Bに分流する分流部と、
前記処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水とするミネラル処理部と、
前記ミネラル処理水と前記処理水Bとを混合する混合部と、
を備える、水処理装置。
[2]前記ミネラル剤が炭酸塩である、[1]に記載の水処理装置。
[3]前記ミネライザーラインと前記バイパスラインのそれぞれに制御弁が設置されている、[1]または[2]に記載の水処理装置。
[4]前記制御弁を制御する制御装置をさらに備える、[3]に記載の水処理装置。
[5]被処理水を逆浸透膜で処理すること、
前記逆浸透膜で処理した逆浸透膜処理水を処理水Aと処理水Bとに分流すること、
前記処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水とすること、および、
前記ミネラル処理水と前記処理水Bとを混合して混合処理水とすること、
を含む、水処理方法。
[6]前記混合処理水のpHが目標設定値となるように、前記ミネラル処理水と前記処理水Bの混合割合を調節する、[5]に記載の水処理方法。
[7]前記逆浸透膜処理水の流量に対する、前記逆浸透膜処理水から分流される前記処理水Aの流量の割合が10%以上100%未満である、[5]または[6]に記載の水処理方法。
[8]前記混合処理水のpHが目標設定値に到達したときに、前記逆浸透膜処理水をすべてミネラル剤と接触させてミネラル処理水とする通常運転へ切り替える、[5]または[6]に記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、間欠運転を行っても安定的に処理水を製造できる水処理装置および水処理方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例の水処理装置を示した模式図である。
図2】実施形態の他の一例の水処理装置を示した模式図である。
図3】実施形態の他の一例の水処理装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[水処理装置]
以下、実施形態に係る水処理装置について、一例を示し、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
図1は、実施形態の一例の水処理装置1を示した模式図である。
水処理装置1は、逆浸透膜処理部10と、分流部11と、ミネラル処理部12と、混合部13と、pH計14と、処理水槽15と、制御装置16と、を備えている。
【0012】
逆浸透膜処理部10では、被処理水W1が逆浸透膜で処理される。これにより、被処理水W1は逆浸透膜処理水(脱塩水)W2と濃縮水W5とに分けられる。処理後の逆浸透膜処理水W2は逆浸透膜処理部10からラインL1へと排出される。
【0013】
逆浸透膜処理部10としては、特に限定されず、公知の逆浸透膜を備えた膜濾過装置を用いることができる。
逆浸透膜の材質としては、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテートを例示できる。なかでも、逆浸透膜の材質としては、水処理効率および価格の観点で、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
【0014】
ラインL1は分流部11においてミネライザーラインL2とバイパスラインL3に分岐している。そのため、ラインL1に通水される逆浸透膜処理水W2は、分流部11においてミネライザーラインL2を流れる処理水AとバイパスラインL3を流れる処理水Bに分流され得る。
ミネライザーラインL2を流れる処理水Aは、ミネラル処理部12においてミネラル剤と接触されてミネラル処理水W3となる。また、バイパスラインL3を流れる処理水Bは、ミネラル剤と接触することなく混合部13へと通水される。
【0015】
ミネラル処理部12としては、処理水Aをミネラル剤に接触させることが可能な形態であればよく、例えば内部にミネラル剤が充填された通水管に処理水Aが通水される形態を例示できるが、限定はされない。
【0016】
ミネラル処理部12に用いるミネラル剤としては、逆浸透膜による脱塩処理後の処理水に添加される公知のミネラル剤を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩を例示できる。より具体的には、例えば寒水石、大理石、貝殻、石灰岩といった炭酸カルシウムを含有する鉱石を用いることができる。
ミネラル処理部12に用いるミネラル剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0017】
ミネライザーラインL2には制御弁21が設置されており、制御弁21の弁開度によってミネライザーラインL2を流れる処理水Aおよびミネラル処理水W3の流量が制御可能になっている。図1に示す一例では、制御弁21は、ミネライザーラインL2におけるミネラル処理部12の後段に設置されているが、限定されるものではない。
また、バイパスラインL3にも制御弁22が設置されており、制御弁22の弁開度によってバイパスラインL3を流れる処理水Bの流量が制御可能になっている。
制御弁21、22としては、特に限定されず、例えば弁開度を連続的に変化させて流量を連続制御可能な公知の制御弁を用いることができる。
【0018】
ミネライザーラインL2とバイパスラインL3は混合部13で合流されている。これにより、ミネラル処理部12による処理後のミネラル処理水W3と処理水Bは、混合部13において混合されて混合処理水W4とされる。混合処理水W4は、ラインL4を通じて処理水槽15へと送られて貯留される。
【0019】
水処理装置1では、制御弁21、22の弁開度を調節することにより、ミネライザーラインL2からのミネラル処理水W3とバイパスラインL3からの処理水Bの混合割合を自在に調節することができる。また、ラインL4に設置されたpH計14によって測定される混合処理水W4のpHに基づいて、制御装置16によって制御弁21、22の弁開度を制御するようになっている。このように、混合処理水W4のpHの測定結果をフィードバックして制御弁21、22の弁開度を制御することにより、ミネラル処理水W3と処理水Bの混合割合を変化させ、混合処理水W4のpHを所望の値に容易に調節することができる。
なお、実施形態の他の一例では、図3に示すように、処理水槽15から混合処理水W4を抜き出して処理水槽15に戻す循環ラインL5を設け、その循環ラインL5にpH計14を設けた水処理装置1Aとしてもよい。
【0020】
制御装置16としては、特に限定されず、例えば制御弁21、22の弁開度をPID制御できる制御装置を例示できる。
水処理装置に設置される各ラインには、水処理に用いられる公知の配管を採用することができる。
【0021】
[水処理方法]
本発明の水処理方法は、以下の(i)~(iv)の工程を含む。
(i)被処理水を逆浸透膜で処理すること。
(ii)前記逆浸透膜で処理した逆浸透膜処理水を処理水Aと処理水Bとに分流すること。
(iii)前記処理水Aをミネラル剤と接触させてミネラル処理水とすること。
(iv)前記ミネラル処理水と前記処理水Bとを混合して混合処理水とすること。
【0022】
好適例では、水処理装置を間欠運転する場合の処理再開時に(i)~(iv)の工程を行う。これにより、配管や装置におけるスケール形成を抑制することができ、また水質変動を抑制して基準水質を満たす処理水を速やかに製造することができる。なお、(i)~(iv)の工程を実施するのは処理再開時に限定されるものではなく、必要に応じて通常運転の途中に実施してもよい。
以下、実施形態の一例の水処理方法として、水処理装置1を用いた水処理方法について説明する。
【0023】
(通常運転)
水処理装置1を連続的に運転している通常運転時には、バイパスラインL3の制御弁22を全閉し、ミネライザーラインL2の制御弁21を全開にした状態で運転を実施し得る。
この通常運転では、逆浸透膜処理部10において被処理水W1を逆浸透膜で処理した後、逆浸透膜処理水W2をすべてミネラル処理部12に供給し、ミネラル剤と接触させてミネラル処理水W3とする。
【0024】
被処理水W1としては、特に限定されず、例えば井戸から汲み上げた地下水、河川水、湖沼水を用いることができる。また、地下水、河川水、湖沼水、海水を貯留槽に貯留した貯留水を被処理水W1として用いてもよい。
【0025】
(間欠運転の処理再開時の混合運転)
水需要が少ない夜間や、設備の水処理機能の再生処理を行う際などには、水処理装置1の運転を一時的に停止し得る。
処理再開時には、被処理水W1を逆浸透膜処理部10に供給し、逆浸透膜で処理して逆浸透膜処理水W2とする(工程(i))。また、バイパスラインL3の制御弁22とミネライザーラインL2の制御弁21の開度を調節し、ラインL1を流れる逆浸透膜処理水W2を、ミネライザーラインL2を流れる処理水AとバイパスラインL3を流れる処理水Bに分流する(工程(ii))。処理水Aはミネラル処理部12でミネラル剤と接触させてミネラル処理水W3とする(工程(iii))。そして、ミネラル処理水W3と処理水Bとを混合して混合処理水W4(工程(iv))とする。
【0026】
上述のように、運転停止中もミネラル処理部12に留まった処理水Aとミネラル剤の反応は継続しているため、運転停止時間が長くなるほど処理再開直後のミネラル処理水W3は、pHが高く、遊離炭酸濃度が低く、全炭酸濃度が高い。このようなミネラル処理水W3は配管や装置にスケールを形成させやすく、また基準水質を満たさない。一方、逆浸透膜による処理後にミネラル剤との接触がない処理水Bは、pHが低く、遊離炭酸濃度が高く、全炭酸濃度が低い状態にある。そのため、処理再開時のミネラル処理水W3に処理水Bを混合することにより、pHを下げ、遊離炭酸濃度を上昇させ、全炭酸濃度を低下させることができる。その結果、長時間の運転停止後の処理再開時であっても基準水質を満たす処理水を速やかに製造でき、スケール形成の問題を抑制することができる。
【0027】
処理水Bとミネラル処理水W3の混合割合は、処理再開時のミネラル処理水W3の水質と、目的の混合処理水W4の水質に応じて調整できる。より具体的には、運転停止時間が長くなるほど処理再開時のミネラル処理水W3はpHが高く、遊離炭酸濃度が低いため、処理水Bの混合割合を高くする。
【0028】
好適例では、混合処理水W4のpHをpH計14でモニターし、そのpHが目標設定値となるようにミネラル処理水W3と処理水Bの混合割合を調節する。
例えばpH計14の表示値に応じてバイパスラインL3の制御弁22の開度を調節することにより、混合処理水W4のpHを目標設定値へと調整し、その状態を保つことが可能となる。
【0029】
より具体的には、pH計14の表示値が目標設定値よりも高い状態ではバイパスラインL3の制御弁22を開け、処理水Bの混合割合を高めてpHを下げる。そして、pH計14の表示値が目標設定値に近づくにつれてバイパスラインL3の制御弁22を徐々に閉じる。そして、pH計14の表示値が目標設定値で安定して通常運転に移行した状態では、バイパスラインL3の制御弁22は全閉となり、すべての逆浸透膜処理水W2がミネラル処理部12で処理され、ミネラル処理水W3となって処理水槽15へと送られる。
【0030】
処理水Bとミネラル処理水W3の混合割合は、分流部11における処理水Aと処理水Bの流量の割合と一致し、バイパスラインL3の制御弁22とミネライザーラインL2の制御弁21の開度によって調節できる。
工程(ii)の逆浸透膜処理水W2の流量に対する、逆浸透膜処理水W2から分流される処理水Aの流量の割合は、空間速度(SV)等のミネライザーの処理条件、時間経過によるミネラル剤の粒径の変化、処理水の所定水質等によって決める。つまり、処理再開時の混合運転において、処理水Aの流量を調節することによって得られる混合処理水W4の水質が、通常運転時の処理水の所定水質基準(pH、遊離炭酸濃度等)に近ければ近いほど好ましい。
地下水を用いて飲料水を製造する場合、逆浸透膜処理水W2の流量に対する、逆浸透膜処理水W2から分流される処理水Aの流量の割合は、好ましくは10%以上100%未満、より好ましくは50%以上100%未満、さらに好ましくは70%以上100%未満である。運転停止時間が長いほど、処理再開時のミネラル処理水W3のpHが高くなるため、処理水Aの流量の割合を低くすることで目標設定値を満たす混合処理水W4が得られやすくなる。
飲料水以外の処理水を製造する場合、目的の処理水の基準(pH、遊離炭酸濃度等)により、逆浸透膜処理水W2の流量に対する、逆浸透膜処理水W2から分流される処理水Aの流量の割合を調整してもよい。
【0031】
混合処理水W4のpHの目標設定値は、要求される水質に応じて適宜設定することができ、好ましくは8.6以下、より好ましくは6.0~8.0、さらに好ましくは7.5~8.0、特に好ましくは7.5~7.8である。通常運転時のミネラル処理水W3のpHの目標設定値も同様である。
混合処理水W4の遊離炭酸濃度は、上限について、好ましくは4.0mg/L未満、より好ましくは3.0mg/L未満である。下限について、好ましくは1.5mg/L以上、より好ましくは2.0mg/L以上である。通常運転時のミネラル処理水W3の遊離炭酸濃度も同様である。
通常運転では、ミネラル処理部12における処理水Aの空間速度(SV)を調節することにより、ミネラル処理水W3のpH、遊離炭酸濃度および全炭酸濃度を調整することができる。
【0032】
混合処理水W4のpHや遊離炭酸濃度等が、所定目標設定値に到達すれば、通常運転へ切り替える。また、水処理装置1の運転を再び一時的に停止した後に処理を再開する際にも、上述した工程(i)~工程(iv)で運転する。つまり、通常運転、運転停止、運転再開、混合運転、通常運転の順で繰り返す。
【0033】
なお、本発明の水処理装置及び水処理方法は、前記した水処理装置1及びそれを用いた水処理方法には限定されない。
例えば、本発明の水処理装置は、図2に例示した水処理装置2であってもよい。図2における図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0034】
水処理装置2は、逆浸透膜処理部10の後段に逆浸透膜処理水W2を一旦貯留する貯留槽17が設けられ、ラインL1に設置された供給ポンプ18によって貯留槽17に貯留された逆浸透膜処理水W2が分流部11へと供給される以外は、水処理装置1と同様の構成である。
水処理装置2を用いた水処理方法は、逆浸透膜で処理した逆浸透膜処理水W2を一旦貯留する以外は、水処理装置1を用いた水処理方法と同様に実施できる。
【0035】
本発明の水処理装置は、制御装置を備えず、ミネライザーラインとバイパスラインの制御弁を人力で制御するものであってもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0037】
[pH]
採取した水のpHは、上水試験法に従って測定した。
【0038】
[遊離炭酸濃度]
採取した水の遊離炭酸濃度は、東亜DKK社製炭酸ガス濃度計CGP-31を用いて測定した。
【0039】
[全炭酸濃度]
採取した水の全炭酸濃度は、東亜DKK社製炭酸ガス濃度計CGP-31を用いて測定した。
【0040】
[実験例1]
図1に例示した水処理装置1を用いて水処理を行った。被処理水としては地下水、ミネラル剤として寒水石1分(6.5~8メッシュ)を用いた。
例えば、飲料水を製造した場合、pHの目標設定値を7.6として水処理装置1を10分以上連続運転し、処理水槽15からサンプリング水を採取してpH、遊離炭酸濃度および全炭酸濃度を測定した。
また、水処理装置1の運転を停止し、20分以上経過後に運転を再開し、再開直後の逆浸透膜処理水(処理水B)とミネラル処理水を採取した。採取した逆浸透膜処理水とミネラル処理水を表1に示す混合割合で混合し、得られた混合水のpH、遊離炭酸濃度および全炭酸濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、運転停止後に運転を再開したときのミネラル処理水は、通常運転時に比べてpHが7.93と高く、遊離炭酸濃度が低く、全炭酸濃度が高い。一方、逆浸透膜処理水はpHが低く、遊離炭酸濃度が高く、全炭酸濃度が低い。そして、運転停止の処理再開時には、逆浸透膜処理水とミネラル処理水とを体積比2:8で混合することにより、pHを目標設定値の7.6に速やかに低下させることができることが分かる。このとき、遊離炭酸濃度と全炭酸濃度も通常運転時の値に近づけることができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,2…水処理装置、10…逆浸透膜処理部、11…分流部、12…ミネラル処理部、13…混合部、14…pH計、15…処理水槽、16…制御装置、17…貯留槽、18…供給ポンプ、21,22…制御弁、W1…被処理水、W2…逆浸透膜処理水、W3…ミネラル処理水、W4…混合処理水、W5…濃縮水、L1…ライン、L2…ミネライザーライン、L3…バイパスライン、L4…ライン、L5…循環ライン。
図1
図2
図3