(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051280
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】状態検知装置、半導体集積回路装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240404BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G05F1/56 310D
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157348
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
【テーマコード(参考)】
2G036
5H430
【Fターム(参考)】
2G036AA04
2G036AA24
2G036BA37
2G036BB02
2G036CA06
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430EE17
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG08
5H430HH03
5H430LA04
(57)【要約】
【課題】電源回路の出力電圧が降下し過ぎることなく、出力コンデンサの状態を検知することができる状態検知装置を提供する。
【解決手段】状態検知装置(20)は、出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差に基づくフィードバック制御を行うように構成されたフィードバック制御部(2~5)と、前記出力電圧を平滑化するように構成された出力コンデンサ(7)と、を有する電源回路に設けられ、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された状態検知装置であって、前記出力電圧の目標値を上昇させるように構成された目標値可変部(8)と、前記出力電圧の目標値の上昇に伴う前記出力コンデンサの充電中又は前記出力電圧の目標値の上昇後での前記出力コンデンサの放電中における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された検知部(9)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差に基づくフィードバック制御を行うように構成されたフィードバック制御部と、前記出力電圧を平滑化するように構成された出力コンデンサと、を有する電源回路に設けられ、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された状態検知装置であって、
前記出力電圧の目標値を上昇させるように構成された目標値可変部と、
前記出力電圧の目標値の上昇に伴う前記出力コンデンサの充電中又は前記出力電圧の目標値の上昇後での前記出力コンデンサの放電中における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された検知部と、
を有する、状態検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記出力電圧の目標値を第1値から上昇させた後に、前記出力電圧の目標値を前記第1値に戻すように構成されている、請項1に記載の状態検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記出力電圧の目標値を前記第1値から上昇させた後に、前記第1値よりも小さい値にまで下降させ、それから前記出力電圧の目標値を前記第1値に戻すように構成されている、請求項2に記載の状態検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、一定の放電時間における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記出力電圧が第1閾値電圧から前記第1閾値電圧より小さい第2閾値電圧に達するまでの放電時間に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記出力コンデンサの充電時間に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項7】
前記検知部は、定期的な検知を行い、検知結果の履歴に基づき前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項8】
前記出力コンデンサの放電電流をモニタするように構成された電流センサを有し、
前記検知部は、前記電流センサのモニタ結果にも基づき前記出力コンデンサの容量を検知するように構成されている、請求項5に記載の状態検知装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の状態検知装置と、
前記電源回路の少なくとも一部と、
を有する、半導体集積回路装置。
【請求項10】
前記出力電圧を受け取るように構成された内部回路と、
抵抗及び前記出力コンデンサを含むRC回路と、
を有し、
前記状態検知装置は、請求項4に記載の状態検知装置であって、
前記放電時間時に、前記内部回路は停止状態になるように構成され、前記検知部は前記RC回路の時定数にも基づき前記出力コンデンサの容量を検知するように構成されている、請求項9に記載の半導体集積回路装置。
【請求項11】
請求項9に記載の半導体集積回路装置を有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、状態検知装置、当該状態検知装置を有する半導体集積回路装置、及び当該半導体集積回路装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用IC(Integrated Circuit)等に対して、ISO26262(自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格)を順守することが求められている。そのため、車載用電源ICの出力コンデンサの故障を検知する機構が必要となっている。
【0003】
特許文献1に記載の故障検出装置は、スイッチングレギュレータを停止させてスイッチングレギュレータの出力コンデンサに蓄えられている電荷を減少させて、スイッチングレギュレータの出力コンデンサの故障を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の故障検出装置では、スイッチングレギュレータの出力コンデンサが劣化、破損等の原因で電荷を蓄積可能な静電容量が減少している場合、スイッチングレギュレータの出力電圧が降下し過ぎて、マイクロコンピュータにリセットがかかってマイクロコンピュータがダウンする。特許文献1に記載の故障検出装置に搭載されているECU(Electronic Control Unit)は、マイクロコンピュータのダウンによって機能不全に陥るおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている状態検知装置は、出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差に基づくフィードバック制御を行うように構成されたフィードバック制御部と、前記出力電圧を平滑化するように構成された出力コンデンサと、を有する電源回路に設けられ、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された状態検知装置であって、前記出力電圧の目標値を上昇させるように構成された目標値可変部と、前記出力電圧の目標値の上昇に伴う前記出力コンデンサの充電中又は前記出力電圧の目標値の上昇後での前記出力コンデンサの放電中における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された検知部と、を有する。
【0007】
本明細書中に開示されている半導体集積回路装置は、上記構成の状態検知装置と、前記電源回路の少なくとも一部と、を有する。
【0008】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の半導体集積回路装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書中に開示されている発明によれば、電源回路の出力電圧が降下し過ぎることなく、出力コンデンサの状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、基準電圧及び出力電圧の波形を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、車両の一構成例を示す外観図である。
【
図7】
図7は、検知部の他の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、基準電圧及び出力電圧の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MOSトランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOSトランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0012】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0013】
本明細書において、定電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
図1に示す半導体集積回路装置10は、いわゆる電源ICである。半導体集積回路装置10は、端子T1及びT2と、Pチャネル型のMOSトランジスタ1と、抵抗2及び3と、基準電圧源4と、誤差アンプ5と、内部回路6と、状態検知装置20と、を有する。状態検知装置20は、目標値可変部8と、検知部9と、を有する。
【0015】
端子T1には、入力電圧VINが印加される。端子T2には、出力コンデンサ7が外付け接続される。出力コンデンサ7の第1端が半導体集積回路装置10の外部で端子T2に接続され、出力コンデンサ7の第2端が半導体集積回路装置10の外部でグラウンド電位に接続される。出力コンデンサ7は、端子T2に発生する出力電圧VOUTを平滑化する。
【0016】
次に、半導体集積回路装置10の内部構成について説明する。MOSトランジスタ1のソースは、端子T1に接続される。MOSトランジスタ1のドレインは、抵抗2の第1端、端子T2、内部回路6、及び検知部9に接続される。内部回路6は、グラウンド電位にも接続される。
【0017】
抵抗2の第2端は、抵抗3の第1端及び誤差アンプ5の非反転入力端子に接続される。抵抗3の第2端は、グラウンド電位に接続される。基準電圧源4の正極は、誤差アンプ5の反転入力端子に接続される。基準電圧源4の負極は、グラウンド電位に接続される。基準電圧源4から誤差アンプ5の反転入力端子に基準電圧VREFが供給される。誤差アンプ5の出力信号は、MOSトランジスタ1のゲートに供給される。抵抗2及び3と、基準電圧源4と、誤差アンプ5と、によって、フィードバック制御部が構成される。当該フィードバック制御部は、出力電圧VOUTに応じた帰還電圧(出力電圧VOUTの分圧)と基準電圧VREFとの差に基づくフィードバック制御を行う。
【0018】
MOSトランジスタ1と、抵抗2及び3と、基準電圧源4と、誤差アンプ5と、出力コンデンサ7と、によってリニアレギュレータが構成される。上記のリニアレギュレータは、端子T1と端子T2との間にPチャネル型のMOSトランジスタ1を備えるためソース能力を有し、分圧回路として用いられる抵抗2及び3が高抵抗であるためソース能力を有さない。状態検知装置20は、上記のリニアレギュレータの上述した特徴を利用して、出力コンデンサ7の状態を検知する。
【0019】
目標値可変部8は、出力電圧VOUTの目標値を上昇させる。本実施形態では、目標値可変部8は、基準電圧源4を制御して基準電圧源4から出力される基準電圧VREFを上昇させることによって、出力電圧VOUTの目標値を上昇させる。なお、出力電圧VOUTの目標値の推移に関する詳細は後述する。
【0020】
検知部9は、出力電圧VOUTの目標値の上昇後での出力コンデンサ7の放電中における出力電圧VOUTの変化に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知する。
【0021】
図2は、検知部9の一構成例を示す図である。
図2に示す構成例の検知部9は、スイッチ91と、抵抗92と、コンパレータ93及び94と、発振器95と、演算部96と、を有する。演算部96は、レジスタ97を内蔵している。
【0022】
スイッチ91の第1端には出力電圧VOUTが印加される。スイッチ91の第2端は、抵抗92の第1端、コンパレータ93の反転入力端子、及びコンパレータ94の反転入力端子に接続される。スイッチ91のオン/オフは、目標値可変部8によって制御される。
【0023】
抵抗92の第2端は、グラウンド電位に接続される。コンパレータ93の非反転入力には定電圧である第1閾値電圧Vth1が印加され、コンパレータ94の非反転入力には定電圧である第2閾値電圧Vth2(<Vth1)が印加される。コンパレータ93及び94の各出力信号は、演算部96に供給される。発振器95は、クロック信号CLKを演算部96に出力する。
【0024】
スイッチ91がオンである期間において、演算部96は、コンパレータ93の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルに切り替わると、クロック信号CLKを用いて放電時間の計測を開始し、コンパレータ94の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルに切り替わると、放電時間の計測を終了する。つまり、演算部96は、出力電圧VOUTが第1閾値電圧Vth1から第2閾値電圧Vth2に達するまでの放電時間を計測する。
【0025】
演算部96は、抵抗92及び出力コンデンサ7を含むRC回路の時定数を予め記憶しており、上記の放電時間と上記のRC回路の時定数とから出力コンデンサの容量を検知(算出)する。
【0026】
なお、上記の放電時間時に内部回路6は停止状態になることが望ましい。これにより、出力コンデンサの容量の検知(算出)精度が向上する。
【0027】
また、出力コンデンサの容量の検知(算出)を省略し、上記の放電時間から出力コンデンサの状態(例えば正常又は異常)を検知してもよい。この場合も、上記の放電時間時に内部回路6は停止状態になることが望ましい。
【0028】
また、検知部9が定期的な検知を行い、レジスタ97に検知結果が格納され、演算部96が検知結果の履歴(例えば今回の検知結果と前回の検知結果との比較)に基づき出力コンデンサ7の状態を検知してもよい。この場合、演算部96によって算出される出力コンデンサ7の容量の絶対値精度が低くても、演算部96は、出力コンデンサ7の容量の変化を正確に検知することができる。
【0029】
図3は、基準電圧VREF及び出力電圧VOUTの波形を示す図である。
図3において、縦軸は電圧を表しており、横軸は時間を表している。
【0030】
通常(状態検知装置20による検知が実行されていない期間)、目標値可変部8によって基準電圧VREFは電圧V11に設定されており、出力電圧VOUTの目標値は第1値V1になる。
【0031】
状態検知装置20による検知が開始されるタイミングTM1で、目標値可変部8によって基準電圧VREFは電圧V11から電圧V12(>V11)に切り替わり、出力電圧VOUTの目標値は第1値V1から第2値V2(>V2)に上昇する。このとき、MOSトランジスタ1にソース能力があるために出力電圧VOUTは第2値V2まで急峻に上昇する。
【0032】
タイミングTM1から一定時間経過したタイミングTM2で、目標値可変部8によって基準電圧VREFは電圧V12から電圧V13(<V11)に切り替わる。これにより、出力電圧VOUTの目標値は第2値V2から第3値V3(<V1)に下降する。また、タイミングTM2で、スイッチ91はターンオンする。
【0033】
タイミングTM2から一定時間経過したタイミングTM3で、目標値可変部8によって基準電圧VREFは電圧V13から電圧V11に切り替わる。これにより、出力電圧VOUTの目標値は第1値V1に戻る。また、タイミングTM3で、スイッチ91はターンオフする。タイミングTM3は、状態検知装置20による検知が終了するタイミングである。
【0034】
タイミングTM2からタイミングTM3までの期間、抵抗2及び3にシンク能力がないため、抵抗92による放電で出力電圧VOUTは徐々に下降する。そして、上記のフィードバック制御部は、出力電圧VOUTが第3値V3を下回らないようにMOSトランジスタ1を制御する。
【0035】
したがって、第2値V2は、上記のリニアレギュレータに接続される負荷(本実施形態では内部回路6)の動作範囲上限または動作範囲上限より若干低い値に設定され、第3値V3は、上記のリニアレギュレータに接続される負荷(本実施形態では内部回路6)の動作範囲下限または動作範囲下限より若干高い値に設定される。これにより、上記のリニアレギュレータに接続される負荷(本実施形態では内部回路6)が機能不全に陥ることを防止することができる。
【0036】
状態検知装置20による検知の結果は、例えば半導体集積回路装置10に通信用端子を設け、当該通信用端子を経由して半導体集積回路装置10の外部に出力されてもよい。
【0037】
なお、本実施形態とは異なり、出力電圧VOUTの目標値は第2値V2から直接第1値V1に戻ってもよい。しかしながら、この場合、第1閾値電圧Vth1と第2閾値電圧Vth2との差を大きくとることができなくなり、演算部96によって算出される出力コンデンサ7の容量の絶対値精度が低くなる。このため、本実施形態のように、出力電圧VOUTの目標値は第2値V2から第3値V3を経由して第1値V1に戻ることが望ましい。
【0038】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
図4において、
図1と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図4に示す半導体集積回路装置11に設けられる検知部9の一構成例は、第1実施形態に係る半導体集積回路装置10に設けられる検知部9の一構成例と同様に、
図2に示す構成である。
【0040】
図4に示す半導体集積回路装置11は、第1実施形態に係る半導体集積回路装置10に電流センサCS1が追加された構成である。電流センサCS1は、例えば、端子T2と検知部9との間に設けられるセンス抵抗である。検知部9は、センス抵抗の両端電位差に基づき、センス抵抗を流れる電流の大きさを把握する。なお、抵抗92(
図2参照)を放電用の抵抗として用いるだけでなく、電流センサCS1となるセンス抵抗として用いてもよい。
【0041】
電流センサCS1は、スイッチ91(
図2参照)がオンであるときに、出力コンデンサ7の放電電流をモニタする。
【0042】
本実施形態では、演算部96は、出力コンデンサ7の放電時間と電流センサCS1によってモニタされた出力コンデンサ7の放電電流とから出力コンデンサ7の容量を検知(算出)する。
【0043】
本実施形態は、第1実施形態と比較して、演算部96によって算出される出力コンデンサ7の容量の絶対値精度が高くなる。
【0044】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る半導体集積回路装置の概略構成を示す図である。
図5において、
図1と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
図5に示す半導体集積回路装置12に設けられる検知部9の一構成例は、第1実施形態に係る半導体集積回路装置10に設けられる検知部9の一構成例と同様に、
図2に示す構成である。
【0046】
図5に示す半導体集積回路装置12は、目標値可変部8が基準電圧源4ではなく抵抗3を制御する点で第1実施形態に係る半導体集積回路装置10と異なり、それ以外の点で第1実施形態に係る半導体集積回路装置10と同様である。
【0047】
図5に示す半導体集積回路装置12では、抵抗3は固定抵抗ではなく可変抵抗である。目標値可変部8は、抵抗3の抵抗値を制御して抵抗3の抵抗値を小さくすることによって、出力電圧VOUTの目標値を上昇させる。
【0048】
なお、本実施形態とは異なり、抵抗2が可変抵抗であり抵抗3が固定抵抗であり、目標値可変部8によって抵抗2の抵抗値が制御される構成でもよく、抵抗2及び3が可変抵抗であり、目標値可変部8によって抵抗2及び3の各抵抗値が制御される構成でもよい。
【0049】
<用途>
次に、先に説明した半導体集積回路装置10~12の用途例について説明する。
図6は、車載機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、車載機器X11~X17と、これらの車載機器X11~X17に電力を供給するバッテリ(不図示)と、を搭載している。
【0050】
車載機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0051】
車載機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0052】
車載機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0053】
車載機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power Steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0054】
車載機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0055】
車載機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、電動サンルーフ、電動シート、及び、エアコンなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0056】
車載機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[Electronic Toll Collection System]など、ユーザの任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0057】
なお、先に説明した半導体集積回路装置10~12それぞれは、出力コンデンサ7とともに車載機器X11~X17のいずれにも組み込むことが可能である。
【0058】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0059】
上述した各実施形態では、状態検知装置20は、リニアレギュレータに設けられたが、リニアレギュレータ以外の電源回路に設けられてもよい。リニアレギュレータ以外の電源回路としては、例えばスイッチングレギュレータ、チャージポンプ回路等を挙げることができる。
【0060】
上述した各実施形態では、出力コンデンサ7は、半導体集積回路装置10~12それぞれに外付け接続されたが、出力コンデンサ7は、半導体集積回路装置10~12それぞれに内蔵されてもよい。
【0061】
上述した各実施形態では、検知部9は、出力コンデンサ7の放電時間に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知したが、出力コンデンサ7の充電時間に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知してもよい。ただし、上記のリニアレギュレータはソース能力を有するため、出力コンデンサ7の充電レートは出力コンデンサ7の放電レートよりも大きい。したがって、出力コンデンサ7の放電時間に基づき出力コンデンサ7の状態を検知する方が出力コンデンサ7の充電時間に基づき出力コンデンサ7の状態を検知するよりも容易である。
【0062】
図2に示す構成例では、検知部9がコンパレータ93及び94を有する構成であったが、コンパレータ93及び94の代わりに、出力電圧VOUTをA/D変換するADC(Analog-to-Digital Converter)が設けられ、当該ADCによってデジタル値に変換された出力電圧VOUTが演算部96でのデジタル処理によって第1閾値電圧Vth1及び第2閾値電圧Vth2それぞれと比較されてよい。
【0063】
また、
図2に示す構成例の検知部9は、出力電圧VOUTが第1閾値電圧Vth1から第2閾値電圧Vth2に達するまでの放電時間に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知したが、検知部9は、一定の放電時間における出力電圧VOUTの変化に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知してもよい。
【0064】
図7は、一定の放電時間における出力電圧VOUTの変化に基づき、出力コンデンサ7の状態を検知する検知部9の構成例である。
図8は、
図7に示す構成例の検知部9が用いられた場合の基準電圧VREF及び出力電圧VOUTの波形を示す図である。
図7に示す構成例の検知部9は、
図2に示す構成例においてコンパレータ93及び94の代わりに、サンプルアンドホールド回路101及び102と、ADC103及び104と、が設けられた構成である。なお、サンプルアンドホールド回路101及び102の出力を択一的に選択するスイッチが設けられ、ADCが一つだけ設けられ、当該ADCにサンプルアンドホールド回路101及び102のいずれかの出力が上記のスイッチを経由して供給されてもよい。
【0065】
図7に示す構成例の検知部9では、演算部96が、サンプルアンドホールド回路101に、スイッチ91がターンオンするタイミングTM2での出力電圧VOUTの値をホールドさせる。なお、タイミングTM2での出力電圧VOUTの値は、タイミングTM1より後でタイミングTM2より前の期間の出力電圧VOUTの値と略同一である。そのため、サンプルアンドホールド回路101が、タイミングTM2での出力電圧VOUTの値の代わりに、タイミングTM1より後でタイミングTM2より前の期間での出力電圧VOUTの値をホールドしてもよい。
【0066】
図7に示す構成例の検知部9では、演算部96が、クロック信号CLKを用いて、タイミングTM2から一定の放電時間が経過したタイミングTM2’(
図8参照)を求め、サンプルアンドホールド回路102に、タイミングTM2’での出力電圧VOUTの値をホールドさせる。
【0067】
ADC103は、スイッチ91がターンオフするタイミングTM3より後で、サンプルアンドホールド回路101によってホールドされていたタイミングTM2での出力電圧VOUTの値をA/D変換する。同様に、ADC104は、スイッチ91がターンオフするタイミングTM3より後で、サンプルアンドホールド回路102によってホールドされていたタイミングTM2’での出力電圧VOUTの値をA/D変換する。このように出力電圧VOUTが変動していないタイミングでADC103及び104がA/D変換を実行することで、出力電圧VOUTがADC103及び104の電源電圧又は基準電圧として利用されている場合であっても、ADC103及び104は、安定したA/D変換を行うことができる。
【0068】
演算部96は、例えば、ADC103及び104の各出力から求まる上記一定の放電時間での出力電圧VOUTの変化量と、抵抗92及び出力コンデンサ7を含むRC回路の時定数とから出力コンデンサの容量を検知(算出)する。なお、
図7に示す構成例の検知部9は、上述した第2実施形態又は第3実施形態においても、
図2に示す構成例の検知部9の代わりに用いられてもよい。
【0069】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0070】
本開示の状態検知装置(20)は、出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差に基づくフィードバック制御を行うように構成されたフィードバック制御部(2~5)と、前記出力電圧を平滑化するように構成された出力コンデンサ(7)と、を有する電源回路に設けられ、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された状態検知装置であって、前記出力電圧の目標値を上昇させるように構成された目標値可変部(8)と、前記出力電圧の目標値の上昇に伴う前記出力コンデンサの充電中又は前記出力電圧の目標値の上昇後での前記出力コンデンサの放電中における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成された検知部(9)と、を有する構成(第1の構成)である。
【0071】
上記第1の構成の状態検知装置において、前記検知部は、前記出力電圧の目標値を第1値から上昇させた後に、前記出力電圧の目標値を前記第1値に戻すように構成されている構成(第2の構成)であってもよい。
【0072】
上記第2の構成の状態検知装置において、前記検知部は、前記出力電圧の目標値を前記第1値から上昇させた後に、前記第1値よりも小さい値にまで下降させ、それから前記出力電圧の目標値を前記第1値に戻すように構成されている構成(第3の構成)であってもよい。
【0073】
上記第1~第3いずれかの構成の状態検知装置において、前記検知部は、一定の放電時間における前記出力電圧の変化に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている構成(第4の構成)であってもよい。
【0074】
上記第1~第3いずれかの構成の状態検知装置において、前記検知部は、前記出力電圧が第1閾値電圧から前記第1閾値電圧より小さい第2閾値電圧に達するまでの放電時間に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている構成(第5の構成)であってもよい。
【0075】
上記第1~第3いずれかの構成の状態検知装置において、前記検知部は、前記出力コンデンサの充電時間に基づき、前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている構成(第6の構成)であってもよい。
【0076】
上記第1~第6いずれかの構成の状態検知装置において、前記検知部は、定期的な検知を行い、検知結果の履歴に基づき前記出力コンデンサの状態を検知するように構成されている構成(第7の構成)であってもよい。
【0077】
上記第4又は第5の構成の状態検知装置において、前記出力コンデンサの放電電流をモニタするように構成された電流センサを有し、前記検知部は、前記電流センサのモニタ結果にも基づき前記出力コンデンサの容量を検知するように構成されている構成(第8の構成)であってもよい。
【0078】
本開示の半導体集積回路装置(10~12)は、上記第1~第8いずれかの構成の状態検知装置と、前記電源回路の少なくとも一部と、を有する構成(第9の構成)である。
【0079】
上記第9の構成の半導体集積回路装置において、前記出力電圧を受け取るように構成された内部回路(6)と、抵抗(92)及び前記出力コンデンサを含むRC回路と、を有し、前記状態検知装置は、上記第4又は第5の構成の状態検知装置であって、前記放電時間時に、前記内部回路は停止状態になるように構成され、前記検知部は前記RC回路の時定数にも基づき前記出力コンデンサの容量を検知するように構成されている構成(第10の構成)であってもよい。
【0080】
本開示の車両(X)は、上記第9又は第10の構成の半導体集積回路装置を有する構成(第11の構成)である。
【符号の説明】
【0081】
1 MOSトランジスタ
2、3 抵抗
4 基準電圧源
5 誤差アンプ
6 内部回路
7 出力コンデンサ
8 目標値可変部
9 検知部
10~12 半導体集積回路装置
20 状態検知装置
91 スイッチ
92 抵抗
93、94 コンパレータ
95 発振器
96 演算部
97 レジスタ
101、102 サンプルアンドホールド回路
103、104 ADC
CS1 電流センサ
T1、T2 端子
X 車両
X11~X17 車載機器