(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051286
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】タイヤ成形装置およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/60 20060101AFI20240404BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20240404BHJP
B29C 55/18 20060101ALI20240404BHJP
B29C 55/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B29D30/60
B29D30/30
B29C55/18
B29C55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157360
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】矢野 源太
【テーマコード(参考)】
4F210
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F210AA45
4F210AC03
4F210AG02
4F210AH20
4F210AM23
4F210AR08
4F210QA03
4F210QA04
4F210QC02
4F210QG01
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4F210QN21
4F215AH20
4F215AP07
4F215AP11
4F215AR08
4F215AR12
4F215VA02
4F215VD03
4F215VK02
4F215VK34
4F215VL11
4F215VM06
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4F215VQ07
4F215VR03
4F215VR04
4F501TA02
4F501TC03
4F501TD03
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4F501TE10
4F501TF06
4F501TL27
4F501TQ02
4F501TQ07
4F501TR07
4F501TR11
4F501TT03
4F501TT04
4F501TU08
4F501TU12
4F501TV23
(57)【要約】
【課題】加硫後のタイヤの均一性を向上させる。
【解決手段】
ここで開示されるタイヤ成形装置10は、一対のカレンダーロール30と、成形ドラム70と、伸長機構35,75とを備えている。一対のカレンダーロール30は、予め定められた間隔で配置されている。一対のカレンダーロール30では、ゴムストリップ95が間を搬送され圧延される。成形ドラム70には、一対のカレンダーロール30から予め定められた搬送経路に沿って搬送されたゴムストリップ95が巻き付けられる。伸長機構35,75は、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って伸長させる。伸長機構35,75は、搬送経路上に設けられている。伸長機構35,75は、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に基づいてゴムストリップ95の伸び率を制御する制御装置80を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムストリップが間を搬送され圧延される予め定められた間隔で配置された一対のカレンダーロールと、
前記一対のカレンダーロールから予め定められた搬送経路に沿って搬送された前記ゴムストリップが巻き付けられる成形ドラムと、
前記搬送経路上に設けられた、前記ゴムストリップを前記搬送経路に沿って伸長させる伸長機構と
を備え、
前記伸長機構は、前記カレンダーロールの周長と前記成形ドラムの周長に基づいて前記ゴムストリップの伸び率を制御する制御装置を備えた、タイヤ成形装置。
【請求項2】
前記搬送経路において前記カレンダーロールよりも下流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度よりも早い速度で前記ゴムストリップを搬送する第1ローラをさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度と前記ゴムストリップが前記第1ローラに沿って搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる、請求項1に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項3】
前記搬送経路において前記成形ドラムよりも上流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度よりも遅い速度で前記ゴムストリップを搬送する第2ローラをさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記第2ローラに沿って搬送される速度と前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる、請求項1に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項4】
前記搬送経路において前記カレンダーロールよりも下流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度よりも早い速度で前記ゴムストリップを搬送する第1ローラと、
前記搬送経路において前記成形ドラムよりも上流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度よりも遅い速度で前記ゴムストリップを搬送する第2ローラと
をさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度と前記ゴムストリップが前記第1ローラに沿って搬送される速度の差、および、前記ゴムストリップが前記第2ローラに沿って搬送される速度と前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる、請求項1に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が整数にならないように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が整数から0.05以上離れた値になるように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が0.5の整数倍にならないように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載されたタイヤ成形装置。
【請求項8】
予め定められた間隔で配置された一対のカレンダーロールから成形ドラムに向かってゴムストリップを予め定められた搬送経路に沿って搬送する工程と、
前記搬送経路に沿って搬送された前記ゴムストリップを前記成形ドラムに巻き付ける工程と
を含み、
前記搬送する工程および前記巻き付ける工程のうち少なくともいずれか一方は、前記ゴムストリップを前記搬送経路に沿って伸長させることを含み、
前記ゴムストリップの伸び率は、前記カレンダーロールの周長と前記成形ドラムの周長に基づいて制御される、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形装置およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-151870号公報には、帯状のゴムストリップを被巻付体に螺旋状に巻き重ねる際の巻回条件を計算する方法が開示されている。同公報に開示されている計算方法は、コンピュータにゴムストリップを巻き重ねるための制約条件を入力する工程と、コンピュータに目標断面形状からのゴム部材の誤差を特定するための第1目的関数を入力する工程と、コンピュータが最適化アルゴリズムに基づいて、制約条件の下で少なくとも第1目的関数を満足する巻回条件の少なくとも一つの最適解を求める工程とを含んでいる。かかる計算方法によると、目標の断面形状を有する環状のゴム部材が安定して形成されうるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴムストリップを成形ドラムに巻き重ねて成形する場合において、加硫後のタイヤの均一性を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示されるタイヤ成形装置は、ゴムストリップが間を搬送され圧延される予め定められた間隔で配置された一対のカレンダーロールと、一対のカレンダーロールから予め定められた搬送経路に沿って搬送されたゴムストリップが巻き付けられる成形ドラムと、搬送経路上に設けられた、ゴムストリップを搬送経路に沿って伸長させる伸長機構とを備えている。伸長機構は、カレンダーロールの周長と成形ドラムの周長に基づいてゴムストリップの伸び率を制御する制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0006】
かかる構成を有するタイヤ成形装置を用いることによって、加硫後のタイヤの均一性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、タイヤ成形装置10の模式図である。
【
図3】
図3は、ゴムストリップ95の模式図である。
【
図4】
図4は、ゴムストリップ95の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0009】
〈ローカバー90〉
図1は、ローカバー90の斜視図である。ローカバー90は、加硫成形前の未加硫のタイヤであり、生タイヤとも称される。ローカバー90は、ビードワイヤやカーカス、ブレーカ、ワイヤ等の基材に、未加硫のサイドウォールゴムやトレッドゴムが貼り合わせられた筒状の部材である。
図1に示されているように、ローカバーは、内側面と側面を構成する第1カバー91と、外側面を構成する第2カバー92とを備えている。
【0010】
第1カバー91は、円筒状の部材である。第1カバー91は、例えば、インナーライナと、カーカスと、一対のサイドウォールゴム91aとを備えている。第1カバー91はさらに、その径方向内側の端部に一対のビードを備えている。
【0011】
第2カバー92は、円筒状の部材である。第2カバー92は、内径が第1カバー91の外径よりも大きくなるように成形される。第2カバー92は、例えば、ブレーカと、バンドと、ベースゴムと、トレッドゴムとを備えている。第2カバー92は、例えば、成形ドラム上にブレーカ、バンドおよびベースゴムが順に巻き付けられ、次いで、トレッドゴムがベースゴム上に巻き付けられ、成形される。
【0012】
以下では、一例として、タイヤ成形装置10を用いてローカバー90に含まれるゴム部材92aを成形する方法について説明する。この実施形態では、ゴム部材92aは、第2カバー90のトレッドゴムを構成する部材である。ゴム部材92aは、ゴムストリップ95(
図2参照)がローカバー90の周方向に沿って巻き重ねられて構成されている。ゴムストリップ95は、ゴム部材92aよりも狭い幅を有する細長い長尺のゴム部材である。
【0013】
〈タイヤ成形装置10〉
図2は、タイヤ成形装置10の模式図である。
図2では、ゴムストリップ95が搬送経路に沿って成形ドラム70に向かって搬送される様子が模式的に示されている。
図2では、ゴムストリップ95の搬送方向および成形ドラム70の回転方向は、矢印で示されている。
図2に示されているように、タイヤ成形装置10は、一対のカレンダーロール30と、成形ドラム70と、伸長機構35,75とを備えている。伸長機構35,75は、後述する搬送経路上に設けられた、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って伸長させる機構である。タイヤ成形装置10は、第1ローラ40および第2ローラ60をさらに備えている。タイヤ成形装置10は、第1ローラ40と第2ローラ60の間にガイドローラ55~58およびフェスツーン50を備えている。
【0014】
かかるタイヤ成形装置10を用いて実現されるタイヤの製造方法は、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って搬送する工程と、ゴムストリップ95を成形ドラム70に巻き付ける工程とを含んでいる。ゴムストリップ95を搬送する工程およびゴムストリップ95を成形ドラム70に巻き付ける工程のうち少なくともいずれか一方の工程は、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って伸長させることを含んでいる。この実施形態では、ゴムストリップ95を搬送する工程およびゴムストリップ95を成形ドラム70に巻き付ける工程の両工程はそれぞれ、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って伸長させることを含んでいる。以下では、タイヤ成形装置10と併せてタイヤの製造方法について併せて説明する。
【0015】
ゴムストリップ95を搬送する工程では、一対のカレンダーロール30から予め定められた搬送経路に沿ってゴムストリップ95を搬送する。この実施形態では、ゴムストリップ95の搬送経路は、カレンダーロール30、第1ローラ40、フェスツーン50、ガイドローラ55~58、第2ローラ60、成形ドラム70によって設定されている。タイヤ成形装置10は、また、ゴムストリップ95の搬送速度を制御する制御装置80を備えている。ゴムストリップ95は、はじめに、押出機20から押し出される。
【0016】
〈押出機20〉
押出機20は、ゴムストリップ95を押出成形する。押出機20は、ゴムストリップ95の材料となるゴム材料を混錬しながら押出成形するための装置である。詳細な図示は省略するが、押出機20は、シリンダと、スクリューと、吐出口とを備えている。シリンダは、ゴム材料を収容する。スクリューは、シリンダ内に設けられており、回転しながらシリンダに収容されたゴム材料を混錬しつつ押し出すことができるように構成されている。吐出口は、スクリューによって押し出されたゴム材料が吐出される開口である。押出機20から押出成形されたゴムストリップ95としてのゴム材料は、カレンダーロール30に向かって搬送される。
【0017】
〈カレンダーロール30〉
カレンダーロール30は、ゴムストリップ95が間を搬送され圧延される一対のロールである。一対のカレンダーロール30は、予め定められた間隔で配置されている。ゴムストリップ95が一対のカレンダーロール30の間を通されることによって、ゴムストリップ95の厚み、表面性等が調整されうる。なお、カレンダーロール30の間隔は、成形されるゴム部材の構成、ゴムストリップ95が成形ドラム70に巻き付けられる巻き数、ゴムストリップ95の組成等に応じて適宜設定されうる。一対のカレンダーロール30は、ゴム材料の種類や成形されるゴム部材の種類等に応じて条件を適宜設定できるように構成されていてもよい。例えば、一対のカレンダーロール30は、ゴムストリップ95の条件に応じて交換されたり間隔が変えられてもよい。
【0018】
カレンダーロール30は、円筒状のローラである。カレンダーロール30は、周方向に回転可能に支持されている。カレンダーロール30には、制御装置80が接続されている。この実施形態では、制御装置80によってカレンダーロール30の回転が制御されている。このため、一対のカレンダーロール30間を搬送されるゴムストリップ95の搬送速度は、制御装置80によって制御されている。搬送速度は、回転数とロールの周長によって定められうる。一対のカレンダーロール30の間を搬送されたゴムストリップ95は、第1ローラ40に向かって搬送される。
【0019】
〈第1ローラ40〉
第1ローラは40、搬送経路においてカレンダーロール30よりも下流側に設けられている。第1ローラ40は、円筒状のローラである。第1ローラ40は、周方向に回転可能に支持されている。第1ローラ40は、一対のカレンダーロール30の間を通されたゴムストリップ95に所要のテンションをかけるためのローラでありうる。この実施形態では、第1ローラ40は、一対設けられている。ゴムストリップ95は、一対の第1ローラ40の間を通される。一対の第1ローラ40の間隔は、一対のカレンダーロール30の間隔よりも狭く設定されうる。一対の第1ローラ40の間隔は、目的とされるゴムストリップ95の厚み等に応じて適宜設定される。
【0020】
この実施形態では、第1ローラ40には、制御装置80が接続されており、制御装置80によって第1ローラ40の回転が制御されている。このため、一対の第1ローラ40の間を搬送されるゴムストリップ95の搬送速度は、制御装置80によって制御されている。
【0021】
この実施形態では、ゴムストリップ95が第1ローラ40に沿って搬送される速度は、一対のカレンダーロール30の間を搬送される速度よりも早い速度に設定されている。カレンダーロール30よりも第1ローラ40においてゴムストリップ95の搬送速度が速く設定されていることによって、カレンダーロール30と第1ローラ40の間でゴムストリップ95にテンションがかけられる。ゴムストリップ95にテンションがかけられることによって、ゴムストリップ95の寸法、形状等が整えられうる。また、一対の第1ローラ40の間隔が一対のカレンダーロール30の間隔よりも狭く設定されることによって、ゴムストリップ95にテンションがかけられやすくなる。
【0022】
搬送速度の差によってゴムストリップ95にテンションがかけられることによって、ゴムストリップ95は、搬送方向に沿って伸長される。この実施形態では、ゴムストリップ95を伸長させる伸長機構35は、カレンダーロール30と、第1ローラ40と、これらの回転を制御する制御装置80とによって実現されている。伸長機構35は、一対のカレンダーロール30の間を搬送される速度とゴムストリップ95が第1ローラ40に沿って搬送される速度の差によってゴムストリップ95を伸長させる。伸長機構35は、カレンダーロール30と第1ローラ40の間でゴムストリップ95を伸長させる。この実施形態では、制御装置80は、カレンダーロール30と第1ローラ40の回転(例えば、回転数)を制御することによって、ゴムストリップ95の伸び率を制御する。なお、本明細書において、ゴムストリップが伸長される前の長さに対する伸長された後の長さの比を「伸び率」と称する。伸長機構35において伸長されるゴムストリップ95の伸び率は、例えば、カレンダーロール30での搬送速度に対する第1ローラ40での搬送速度の差、搬送速度の比等で表される。この実施形態では、カレンダーロール30での搬送速度を100としたときの伸長機構35において伸長されるゴムストリップ95の伸び率は、以下の式で表される。
伸び率=第1ローラ40とカレンダーロール30での搬送速度の差×0.01+1
【0023】
一対の第1ローラ40の間を搬送されたゴムストリップ95は、ガイドローラ55,56に掛けられ、フェスツーン50に向かって搬送される。この実施形態では、ガイドローラ55は、間をゴムストリップ95が通される一対のローラである。ガイドローラ55の間を通されたゴムストリップ95は、ガイドローラ56に向かって搬送される。ここでは、ガイドローラ56は、複数設けられている。ガイドローラ56によって、ゴムストリップ95がフェスツーン50に搬送される角度が調整されている。
【0024】
〈フェスツーン50〉
フェスツーン50には、搬送方向に沿って搬送されるゴムストリップ95が溜められる。フェスツーン50は、複数の上部ローラ51と、複数の下部ローラ52とを備えている。複数の上部ローラ51は、フェスツーン50の上方において予め定められた間隔で前後方向に沿って並べられている。複数の下部ローラ52は、フェスツーン50の下方において予め定められた間隔で前後方向に沿って並べられている。ゴムストリップ95は、上下方向往復しつつ複数の上部ローラ51および複数の下部ローラ52に交互に掛けられている。
【0025】
上部ローラ51および下部ローラ52のうち少なくとも一方は、図示しない駆動装置によって上下方向に駆動可能に構成されている。これによって、上部ローラ51と下部ローラ52の間隔は、調整可能である。
【0026】
この実施形態では、上部ローラ51は、ガイドローラ56,57と略同一の高さに固定されている。下部ローラ52は、駆動装置によって上下方向に駆動可能に構成されている。上部ローラ51と下部ローラ52の間隔が調整されることによって、フェスツーン50を通るゴムストリップ95の長さが調整される。このように、ゴムストリップ95は、フェスツーン50に溜められてから成形ドラム70に向かって搬送される。これによって、ゴムストリップ95は、供給量や搬送速度に関わらず、張力が安定した状態で搬送されうる。
【0027】
フェスツーン50の上部ローラ51および下部ローラ52に掛けられたゴムストリップ95は、フェスツーン50よりも下流側に設けられたガイドローラ57に掛けられる。この実施形態では、ガイドローラ57は、複数設けられている。ガイドローラ57に掛けられたゴムストリップ95は、ガイドローラ58に掛けられて第2ローラ60に向かって搬送される。ガイドローラ58によって、ゴムストリップ95が第2ローラ60に搬送される角度が調整されている。
【0028】
〈第2ローラ60〉
第2ローラ60は、搬送経路において成形ドラム70よりも上流側に設けられている。第2ローラ60は、円筒状のローラである。第2ローラ60は、周方向に回転可能に支持されている。この実施形態では、第2ローラ60は、前後方向に間隔を空けて並べられた一対のローラである。一対の第2ローラ60には、搬送ベルト61が掛けられている。搬送ベルト61は、ゴムストリップ95よりも幅が広い帯状のゴムシートから構成されている。搬送ベルト61は、環状に形成された、いわゆる無端ベルトである。ゴムストリップ95は、搬送ベルト61に載せられ、成形ドラム70に向かって搬送される。なお、搬送ベルト61付近には、搬送ベルト61上を搬送されるゴムストリップ95を押さえつけるためのローラ、ベルト等が設けられていてもよい。
【0029】
搬送ベルト61は、第2ローラ60の回転によって駆動される。このため、搬送ベルト61上を搬送されるゴムストリップ95の搬送速度は、第2ローラ60の回転数と周長によって定められる。この実施形態では、第2ローラ60には、制御装置80が接続されており、制御装置80によって第2ローラ60の回転が制御されている。なお、一対の第2ローラ60の両方が定められた回転数で回転するように制御装置80によって制御されてもよい。また、一対の第2ローラ60のうち、一の第2ローラ60が定められた回転数で回転するように制御装置80によって制御されてもよい。この場合、他のローラは、搬送ベルト61を介して回転が伝えられ従動的に回転しうる。
【0030】
ゴムストリップ95が第2ローラ60に沿って搬送される速度(換言すると、第2ローラ60に掛けられた搬送ベルト61上を搬送されるゴムストリップ95の搬送速度)は、制御装置80によって制御されている。ゴムストリップ95の搬送速度は特に限定されない。この実施形態では、第2ローラ60に沿って搬送されるゴムストリップ95の速度は、カレンダーロール30の間を搬送される速度と同程度となるように設定されている。例えば、制御装置80は、第2ローラ60の周長と回転数の積が、カレンダーロール30の周長と回転数の積と略同一になるように、それぞれのローラの回転を制御しうる。カレンダーロール30と第2ローラ60での搬送速度が略同一に設定されていることによって、ゴムストリップ95が不要に撓んだり引っ張られたりしにくく、搬送が安定しやすくなる。
【0031】
搬送ベルト61上を搬送されたゴムストリップ95は、搬送ベルト61よりも下流側に設けられている搬送ベルト63に渡される。搬送ベルト63は、搬送ベルト61と同様、ゴムストリップ95よりも幅が広い帯状のゴムシートから構成された無端ベルトである。搬送ベルト63は、一対のローラ62に掛けられている。ローラ62の回転は、制御装置80によって制御されている。ローラ62の回転は、搬送ベルト63と搬送ベルト61においての搬送速度が略同一になるように設定されている。搬送ベルト63上を搬送されたゴムストリップ95は、成形ドラム70に向かって搬送される。搬送ベルト63と成形ドラム70の間には、成形ドラム70に対してゴムストリップ95を押さえるための押さえローラ64が設けられていてもよい。
【0032】
〈成形ドラム70〉
成形ドラム70は、上述した搬送経路に沿って搬送されたゴムストリップ95が巻き付けられるドラムである。成形ドラム70は、円筒状のドラムであり、ゴムストリップ95が巻き重ねられる外周面を有している。成形ドラム70の周長および径は、成形されるローカバー90の寸法等によって定められうる。成形ドラム70は、周方向に回転可能に構成されている。また、成形ドラム70は、軸方向に移動可能に構成されている。ゴムストリップ95を巻き付ける工程では、成形ドラム70は、回転されつつ軸方向に沿って往復しつつゴムストリップ95が巻き重ねられる。このため、成形ドラム70の外周面において、軸方向および径方向にゴムストリップ95が巻き重ねられる。
【0033】
成形ドラム70は、予め定められた一定の速度で軸方向に移動しうる。これによって、成形ドラム70に巻かれるゴムストリップ95は、先に巻かれたゴムストリップ95に対して幅方向の端部が重なりながら成形ドラム70上を軸方向に沿って順次巻かれる。ゴムストリップ95は、成形ドラム70上の予め定められた範囲において巻かれる。ゴムストリップ95が巻かれる範囲は、ゴム部材92aの幅に応じて適宜設定される。ゴムストリップ95が成形ドラム70上の予め定められた範囲において巻かれると、成形ドラム70は、反対方向に同じ速度で移動する。これによって、ゴムストリップ95は、先に巻かれたゴムストリップ95の上に巻き重ねられる。ゴムストリップ95は、成形ドラム70上に予め定められた回数巻き重ねられ、ローカバー90のゴム部材92aが成形される。
【0034】
成形ドラム70には、制御装置80が接続されている。制御装置80は、成形ドラム70の回転を制御している。ゴムストリップ95が成形ドラム70上を搬送される(巻き付けられる)速度は、第2ローラ60に沿って搬送される速度よりも早い速度に設定されている。換言すると、第2ローラ60によって搬送速度が設定される搬送ベルト63よりも成形ドラム70においてゴムストリップ95の搬送速度が早くなるように回転が設定されている。このため、ゴムストリップ95が成形ドラム70に巻き付けられる際に、テンションがかかった状態で巻き付けられる。これによって、ゴムストリップ95と成形ドラム70の間および巻き重ねられるゴムストリップ95の間には隙間が生じにくくなる。
【0035】
このように、ゴムストリップ95は、搬送速度の差によってテンションがかけられた状態で成形ドラム70に巻き重ねられる。このため、ゴムストリップ95は、成形ドラム70の周方向に沿って伸長された状態で巻き重ねられる。この実施形態では、ゴムストリップ95を伸長させる伸長機構75は、第2ローラ60と、成形ドラム70と、これらの回転を制御する制御装置80とによって実現されている。換言すると、伸長機構75は、ゴムストリップ95が第2ローラ60に沿って搬送される速度とゴムストリップ95が成形ドラム70上を搬送される速度の差によってゴムストリップ95を伸長させる。伸長機構75は、成形ドラム70上でゴムストリップ95を伸長させる。この実施形態では、制御装置80は、第2ローラ60と成形ドラム70の回転を制御することによって、ゴムストリップ95の伸び率を制御する。伸長機構75において伸長されるゴムストリップ95の伸び率は、例えば、成形ドラム70での搬送速度に対する第2ローラ60での搬送速度の差や搬送速度の比等で表される。この実施形態では、第2ローラ60での搬送速度を100としたときの伸長機構75において伸長されるゴムストリップ95の伸び率は、以下の式で表される。
伸び率=成形ドラム70と第2ローラ60での搬送速度の差×0.01+1
【0036】
上述した実施形態では、タイヤ成形装置10は、カレンダーロール30と、第1ローラ40と、これらの回転を制御する制御装置80とによって実現される伸長機構35を備えている。タイヤ成形装置10は、第2ローラ60と、成形ドラム70と、これらの回転を制御する制御装置80とによって実現される伸長機構75を備えている。このため、カレンダーロール30の間を通されたゴムストリップ95と成形ドラム70に巻かれるゴムストリップ95とを比較した、ゴムストリップ95の最終的な伸び率は、伸長機構35において伸長される伸び率と伸長機構75において伸長される伸び率との積で表される。
【0037】
なお、タイヤ成形装置10は、制御装置80がカレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に基づいてゴムストリップ95の伸び率を制御する限りにおいて、特に限定されない。例えば、タイヤ成形装置10は、必ずしも伸長機構35および伸長機構75の両方を備えている必要はない。タイヤ成形装置10は、伸長機構35および伸長機構75のうち一方のみ備えていてもよい。また、伸長機構35および伸長機構75は、同一の制御装置80によって制御される必要はない。例えば、タイヤ成形装置10は、それぞれ別の制御装置によって搬送速度、ゴムストリップ95の伸び率を設定してもよい。
【0038】
ところで、ゴムストリップが搬送方向に沿って厚みばらつきがある場合等は、成形ドラムに巻き重ねられたゴムストリップにも厚みばらつきが生じうる。ゴムストリップに厚みばらつきがあることによって、成形されたローカバーには、厚みが不均一な箇所が形成されうる。ローカバーにおいて厚みが不均一な箇所が形成されている場合には、最終製品である加硫成形後のタイヤにも不均一な部位が発生し、いわゆるユニフォーミティが悪化する懸念がある。本発明者の知見では、ゴムストリップには、カレンダーロールの組付けに由来する振れや、ゴムストリップにかけられるテンションに由来して、ゴムストリップには不可避的な厚みの変動が生じうる。かかる厚みの変動は、ゴムストリップの搬送方向において周期的に形成されうる。
【0039】
図3および
図4は、ゴムストリップ95の模式図である。
図3では、カレンダーロール30の間を通されるゴムストリップ95が模式的に示されている。
図4では、成形ドラム70(
図2参照)の軸方向に沿って巻かれたゴムストリップ95が模式的に示されている。
図3では、ゴムストリップ95の搬送方向およびカレンダーロール30の回転方向は、矢印で示されている。なお、
図3および
図4は、模式的に描かれており、実際の寸法を反映しているわけではない。
【0040】
カレンダーロール30の間を通されたゴムストリップ95には、相対的に厚みが薄い部分95aおよび相対的に厚みが厚い部分95bが形成されている。本発明者の検討では、ゴムストリップ95の厚みのパターンは、ゴムストリップ95の搬送方向において略一定の間隔で周期的に形成されうることがわかった。例えば、ゴムストリップ95の厚みのパターンは、カレンダーロール30が回転する際に振れることが一因として形成されうる。このため、ゴムストリップ95において相対的に厚みが薄い部分95aおよび相対的に厚みが厚い部分95bは、カレンダーロール30が一回転するごとに形成されうる。換言すると、ゴムストリップ95の厚み薄い部分95aと厚みの厚い部分95bのパターンは、カレンダーロール30の周長を1周期として周期的に形成されうる。ゴムストリップ95が巻き重ねられる際に、厚みが薄い部分95aまたは厚みが厚い部分95bが成形ドラム70の周方向において集中すると、他の部分との厚みの差が増幅されうる。
【0041】
上述した実施形態では、伸長機構35,75の制御装置80は、カレンダーロール30、第1ローラ40、第2ローラ60、成形ドラム70に沿って搬送されるゴムストリップ95の搬送速度を制御することによってゴムストリップ95の伸び率を制御する。制御装置80は、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に基づいてゴムストリップ95の伸び率を制御する。この実施形態では、制御装置80には、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長が予め記憶されている。制御装置80は、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長を入力可能に構成されていてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、タイヤ成形装置10は、一対のカレンダーロール30と、成形ドラム70と、伸長機構35,75とを備えている。一対のカレンダーロール30は、予め定められた間隔で配置されている。一対のカレンダーロール30では、ゴムストリップ95が間を搬送され圧延される。成形ドラム70には、一対のカレンダーロール30から予め定められた搬送経路に沿って搬送されたゴムストリップ95が巻き付けられる。伸長機構35,75は、ゴムストリップ95を搬送経路に沿って伸長させる。伸長機構35,75は、搬送経路上に設けられている。伸長機構35,75は、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に基づいてゴムストリップ95の伸び率を制御する制御装置80を備えている。
【0043】
かかるタイヤ成形装置10によると、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に応じてゴムストリップ95の厚みのパターンが周方向において重ならないように、ゴムストリップ95の伸び率を制御することができる。これによって、ゴムストリップ95に厚みが薄い部分95aおよび厚みが厚い部分95bが形成されている場合にも、成形ドラム70の周方向において厚みに差がある部分を分散させることができる。その結果、ローカバー90の厚みばらつきが低減され、加硫後のタイヤにおいても均一性が向上する。
【0044】
例えば、カレンダーロール30の周長と成形ドラム70の周長に基づいて伸び率を制御することにより、成形ドラム70上においてゴムストリップ95の厚みばらつきを分散させることができる。
図4に示されている実施形態では、搬送速度は、厚みが厚い部分95aと厚みが薄い部分95bとが、ゴムストリップ95が一周巻かれるごとにわずかにずれるように制御されている。このように、成形ドラム70の外周面において厚みが薄い部分95aと厚みが厚い部分95bのパターンが軸方向において一致しないように伸び率を制御することができる。
【0045】
本発明者は、上述したタイヤ成形装置を用いて、ゴムストリップの搬送速度を種々変更してローカバーを試作した。ここでは、カレンダーロールの速度と第2ローラの速度を同じ速度に設定し、基準の速度(100)とした。カレンダーロールの速度と第2ローラの速度は、各例で同一である。本発明者は、作製されたローカバーを加硫し、タイヤを加硫成形した。ここでは、サイズ265/65R17のタイヤを各例(例1~5)において5つずつ試作した。
【0046】
試作したタイヤのユニフォーミティを検査した。ここでは、ユニフォーミティ自動測定機を用いてRFV(Radial Force Uniformity)を測定した。測定されたRFVのデータを、コンピュータを用いて次数解析した。次数解析は、公知の解析方法に従って解析されるとよい。次数解析では、1次から9次までの次数成分を算出し、各例において次数成分の平均値を計算した。下記の表1は、各例の実施条件および結果を示している。
【0047】
なお、表1の「伸び率」は、カレンダーロールで圧延されたゴムストリップが成形ドラムに貼り付けられるまでに伸長された比率を示している。表1の伸び率は、カレンダーロール、第1ローラ、第2ローラおよび成形ドラムにおける搬送速度より計算される。ここでは、表1の伸び率は、カレンダーロールの速度と第1ローラの搬送速度の差、および、第2ローラと成形ドラムの搬送速度の差から算出されている。カレンダーロールでの搬送速度を100としたときの成形ドラムでの伸び率は、以下の式で表される。
伸び率=(第1ローラとカレンダーロールでの搬送速度の差×0.01+1)×(成形ドラムと第2ローラでの搬送速度の差×0.01+1)
【0048】
表1の「周期」は、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長の値を示している。
【0049】
【0050】
周期が整数から離れている例1,3では、RFVの高次(6次以上)の成分が10以下に抑えられていた。一方、周期が整数に近い例2,4,5では、RFVの高次の成分で高い値が検出された。周期が7.99である例2では、RFVの8次の成分が22.1であった。周期が6.99である例4では、RFVの7次の成分が15.4であった。周期が6.04である例5では、RFVの6次の成分が23.4であった。このことから、周期が整数に近い値である場合には、その周期に対応するRFVの次数成分が高くなり、ユニフォーミティが低下しうることがわかる。
【0051】
ここで開示されるタイヤ成形装置の制御装置では、カレンダーロール、第1ローラ、第2ローラおよび成形ドラムの搬送速度を設定することができる。また、制御装置では、カレンダーロール、第1ローラ、第2ローラおよび成形ドラムの搬送速度から、ゴムストリップの伸び率を制御することができるように構成されている。例えば、制御装置では、カレンダーロールの周長と成形ドラムの周長が記憶されており、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長が確認できるように構成されている。このため、制御装置では、搬送速度を制御し、伸び率とカレンダーロールの周長の積に対する成形ドラムの周長が整数にならないように調整することができる。搬送速度の設定は、ゴムストリップの搬送前に事前に設定されてもよい。また、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長が予め設定された値(例えば、整数等)にならないようにゴムストリップの搬送中に自動的に搬送速度が設定されるように構成されていてもよい。伸び率とカレンダーロールの周長の積に対する成形ドラムの周長が整数にならないように制御されることによって、カレンダーロールの周期性に由来するローカバーの厚みの不均一が生じにくい。その結果、加硫後のタイヤの均一性がより向上しうる。
【0052】
上記の表1に示されている結果から、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長は、整数から0.05以上離れた値に設定されることによって、加硫後のタイヤの均一性がより向上しうる。カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長は、例えば、整数から0.1以上離れた値に設定されてもよく、0.15以上離れた値に設定されていてもよい。
【0053】
本発明者の別の試行では、上述したタイヤ成形装置を用いて、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長が7.5倍になるように搬送速度を設定して例6のローカバーを試作した。また、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長が7.2倍になるように搬送速度を設定して例7のローカバーを試作した。作製したローカバーを加硫し、例6および例7のタイヤを加硫成形した。例1~5のRFVの測定で用いた装置と同様のユニフォーミティ自動測定機およびコンピュータを用いて、ここで試作したタイヤそれぞれのRRO(Radial Run Out)を測定した。測定したRROを次数解析し、1次から20次までの次数成分を算出した。RROの1次から20次までの次数成分の中で、15次の成分において例6のタイヤと例7のタイヤの差が最も大きかった。例7のRROの15次の成分は、例6のRROの15次の成分よりも43%低い値であった。
【0054】
このことから、カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長が整数+0.5倍である場合には、その値の2倍(例6では、7.5の2倍の15)に対応する次数成分のユニフォーミティが低下しうる。このことから、伸び率とカレンダーロールの周長の積に対する成形ドラムの周長が整数と0.5の和にならないようにゴムストリップの搬送速度を制御することによって、当該次数成分のRROを抑えうることがわかる。この結果と表1の結果から、伸び率とカレンダーロールの周長の積に対する成形ドラムの周長が0.5の整数倍にならないようにゴムストリップの搬送速度を制御することによって、ローカバーには、カレンダーロールの周期性に由来する不均一な部分が生じにくくなりうる。その結果、加硫後のタイヤの均一性がより向上しうる。カレンダーロールの周長と伸び率の積に対する成形ドラムの周長は、例えば、整数+0.5から0.1以上離れた値に設定されてもよく、0.15以上離れた値に設定されていてもよい。
【0055】
以上、ここで開示される技術について、種々説明した。しかしながら、ここで開示されるト技術は、特に言及されない限りにおいて、上述した形態に限定されない。例えば、上述したタイヤ成形装置では、成形ドラム上にゴムストリップが巻き重ねられているが、かかる形態に限定されない。例えば、上述した技術は、成形ドラムに巻かれたゴム部材(例えば、ブレーカ、バンド、ベースゴム等)にゴムストリップが巻かれる場合にも適用される。この場合、成形ドラムに巻かれた状態のゴム部材の周長を、上述の「成形ドラムの周長」としてゴムストリップの伸び率が制御されうる。さらに、成形ドラムに搬送されるゴムストリップが、先に巻かれたゴムストリップに重ねられる際には、当該先に巻かれたゴムストリップの厚みも考慮した周長を「成形ドラムの周長」としてゴムストリップの伸び率が制御されてもよい。
【0056】
また、種々言及した形態の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。なお、本明細書は以下の発明を含んでおり、以下の発明は、上記した実施形態には限定されない。
【0057】
本発明(1)は、タイヤ成形装置に関する。本発明(1)にかかるタイヤ成形装置は、
ゴムストリップが間を搬送され圧延される予め定められた間隔で配置された一対のカレンダーロールと、
前記一対のカレンダーロールから予め定められた搬送経路に沿って搬送された前記ゴムストリップが巻き付けられる成形ドラムと、
前記搬送経路上に設けられた、前記ゴムストリップを前記搬送経路に沿って伸長させる伸長機構と
を備え、
前記伸長機構は、前記カレンダーロールの周長と前記成形ドラムの周長に基づいて前記ゴムストリップの伸び率を制御する制御装置を備えている。
【0058】
本発明(2)は、本発明(1)に記載されたタイヤ成形装置であって、
前記搬送経路において前記カレンダーロールよりも下流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度よりも早い速度で前記ゴムストリップを搬送する第1ローラをさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度と前記ゴムストリップが前記第1ローラに沿って搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる。
【0059】
本発明(3)は、本発明(1)に記載されたタイヤ成形装置であって、
前記搬送経路において前記成形ドラムよりも上流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度よりも遅い速度で前記ゴムストリップを搬送する第2ローラをさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記第2ローラに沿って搬送される速度と前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる。
【0060】
本発明(4)は、本発明(1)に記載されたタイヤ成形装置であって、
前記搬送経路において前記カレンダーロールよりも下流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度よりも早い速度で前記ゴムストリップを搬送する第1ローラと、
前記搬送経路において前記成形ドラムよりも上流側に設けられ、かつ、前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度よりも遅い速度で前記ゴムストリップを搬送する第2ローラと
をさらに備え、
前記伸長機構は、前記ゴムストリップが前記一対のカレンダーロールの間を搬送される速度と前記ゴムストリップが前記第1ローラに沿って搬送される速度の差、および、前記ゴムストリップが前記第2ローラに沿って搬送される速度と前記ゴムストリップが前記成形ドラム上を搬送される速度の差によって前記ゴムストリップを伸長させる。
【0061】
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれかと任意の組み合わせのタイヤ成形装置であって、
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が整数にならないように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する。
【0062】
本発明(6)は、本発明(1)~(4)のいずれかと任意の組み合わせのタイヤ成形装置であって、
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が整数から0.05以上離れた値になるように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する。
【0063】
本発明(7)は、本発明(1)~(4)のいずれかと任意の組み合わせのタイヤ成形装置であって、
前記制御装置は、前記伸び率と前記カレンダーロールの周長の積に対する前記成形ドラムの周長が0.5の整数倍にならないように、前記ゴムストリップの搬送速度を制御する。
【0064】
本発明(8)は、タイヤの製造方法に関する。本発明(8)にかかるタイヤの製造方法は、
予め定められた間隔で配置された一対のカレンダーロールから成形ドラムに向かってゴムストリップを予め定められた搬送経路に沿って搬送する工程と、
前記搬送経路に沿って搬送された前記ゴムストリップを前記成形ドラムに巻き付ける工程と
を含み、
前記搬送する工程および前記巻き付ける工程のうち少なくともいずれか一方は、前記ゴムストリップを前記搬送経路に沿って伸長させることを含み、
前記ゴムストリップの伸び率は、前記カレンダーロールの周長と前記成形ドラムの周長に基づいて制御される。
【符号の説明】
【0065】
10 タイヤ成形装置
20 押出機
30 カレンダーロール
35,75 伸長機構
40 第1ローラ
50 フェスツーン
60 第2ローラ
61 搬送ベルト
70 成形ドラム
80 制御装置
90 ローカバー
95 ゴムストリップ