(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051289
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240404BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
H01L21/302 103
H01L21/302 101D
H01L29/78 301X
H01L29/78 301Y
H01L29/78 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157365
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】上馬 俊之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】目黒 佑一
【テーマコード(参考)】
5F004
5F140
【Fターム(参考)】
5F004BA03
5F004BB18
5F004BD04
5F004CA01
5F004CB02
5F004DA01
5F004DA15
5F004DA20
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB00
5F004EA13
5F004EA28
5F004FA08
5F140BA01
5F140BB05
5F140BC15
5F140BF42
(57)【要約】
【課題】組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に、他方の元素に対する一方の元素の選択比を高くすることができる半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の層と、前記第1の層とは組成元素が異なる第2の層と、が積層された積層体の側面を含む表面に保護膜を形成する工程と、前記保護膜が形成された前記積層体を等方性エッチングする工程と、を備えている。前記保護膜を形成する工程は、第1のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第1のラジカルを用いて行われる。前記積層体を等方性エッチングする工程は、前記第1のガスとは異なる第2のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第2のラジカルを用いて行われる。前記保護膜を形成する工程と、前記積層体を等方性エッチングする工程とが、同じ雰囲気内において行われる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、前記第1の層とは組成元素が異なる第2の層と、が積層された積層体の側面を含む表面に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜が形成された前記積層体を等方性エッチングする工程と、
を備え、
前記保護膜を形成する工程は、第1のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第1のラジカルを用いて行われ、
前記積層体を等方性エッチングする工程は、前記第1のガスとは異なる第2のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第2のラジカルを用いて行われ、
前記保護膜を形成する工程と、前記積層体を等方性エッチングする工程とが、同じ雰囲気内において行われる半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記保護膜を形成する工程において、前記保護膜の、前記第1の層の表面に形成された部分のエッチングレートは、前記保護膜の、前記第2の層の表面に形成された部分のエッチングレートよりも高い請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を等方性エッチングする工程において、前記第2の層の表面に形成された前記保護膜が除去されたと判定した場合には、前記等方性エッチングを停止し、前記保護膜を形成する工程を行う請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護膜が除去されたことの判定は、前記等方性エッチングの開始からの時間、および、発光スペクトルの変化の少なくともいずれかにより行う請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護膜を形成する工程と、前記積層体を等方性エッチングする工程とは、交互に複数回行われる請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の層は、シリコンゲルマニウムを含み、
前記第2の層は、シリコンを含み、
前記第1のガスは、酸素原子および窒素原子の少なくともいずれかを含むガスであり、
前記第2のガスは、フッ素原子と水素原子を含むガス、または、フッ素原子を含むガスおよび水素ガスである請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、第1の層と、前記第1の層とは組成元素が異なる第2の層と、が積層された積層体を有する処理物を載置する載置部と、
プラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマを発生させる領域に第1のガスを供給する第1のガス供給部と、
前記プラズマを発生させる領域に前記第1のガスとは異なる第2のガスを供給する第2のガス供給部と、
前記プラズマ発生部、前記第1のガス供給部、および前記第2のガスを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記プラズマ発生部、および前記第1のガス供給部を制御して、前記第1のガスを前記プラズマにより励起、活性化させて第1のラジカルを生成し、前記チャンバの内部において、前記第1のラジカルを用いて、前記積層体の表面に保護膜を形成し、
前記プラズマ発生部、および前記第2のガス供給部を制御して、前記第2のガスを前記プラズマにより励起、活性化させて第2のラジカルを生成し、前記チャンバの内部において、前記第2のラジカルを用いて、前記保護膜が形成された前記積層体を等方性エッチングするプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記処理物の処理面の近傍における発光を検出する検出部をさらに備え、
前記コントローラは、前記検出部からの検出値に基づいて発光スペクトルの変化を検出し、前記第2の層の表面に形成された前記保護膜が除去されたと判定した場合には、前記第2のラジカルを用いた前記積層体の等方性エッチングを停止し、前記第1のラジカルを用いた前記保護膜の形成を行う請求項7記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記保護膜の形成と、前記積層体の等方性エッチングと、を交互に複数回行う請求項7または8に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合がある。
【0003】
例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を微細化するとオン・オフ比が小さくなる。そのため、所望のオン電流が得られるように、ゲート・オール・アラウンド(GAA:Gate All Around)構造を有するMOSFETが提案されている。
【0004】
GAA構造を有するMOSFETの製造過程においては、基板の上に、シリコンゲルマニウム(SiGe)を含む層と、シリコン(Si)を含む層とを交互に複数積層し、これを順次エッチングして、シリコンゲルマニウムを含む層と、シリコンを含む層とが交互に積層された積層体を形成している。そして、積層体に含まれるシリコンゲルマニウムを含む層を等方性エッチングにより除去している。積層体に含まれるシリコンを含む層は、いわゆるナノワイヤチャネルとなる。
【0005】
ここで、等方性エッチングを行う際に、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を高くしないと、積層体に含まれるシリコンを含む層(ナノワイヤチャネル)の削れ量が多くなってしまう。つまり、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を高くすると、削りたい層(シリコンゲルマニウムを含む層)だけ削れるようになる。その結果、シリコンを含む層(ナノワイヤチャネル)を狙った寸法となるよう形成できるようになる。シリコンを含む層(ナノワイヤチャネル)を狙った寸法となるよう形成することができないと、GAA構造を有するMOSFETの機能や信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に、他方の元素に対する一方の元素の選択比を高くすることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に、他方の元素に対する一方の元素の選択比を高くすることができる半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の層と、前記第1の層とは組成元素が異なる第2の層と、が積層された積層体の側面を含む表面に保護膜を形成する工程と、前記保護膜が形成された前記積層体を等方性エッチングする工程と、を備えている。前記保護膜を形成する工程は、第1のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第1のラジカルを用いて行われる。前記積層体を等方性エッチングする工程は、前記第1のガスとは異なる第2のガスをプラズマにより励起、活性化させて生成した第2のラジカルを用いて行われる。前記保護膜を形成する工程と、前記積層体を等方性エッチングする工程とが、同じ雰囲気内において行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に、他方の元素に対する一方の元素の選択比を高くすることができる半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1における半導体装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図3】ナノワイヤチャネルの形成を例示するため模式工程図である。
【
図4】ナノワイヤチャネルの形成を例示するため模式工程図である。
【
図5】ナノワイヤチャネルの形成を例示するため模式工程図である。
【
図6】ナノワイヤチャネルの形成を例示するため模式工程図である。
【
図7】ナノワイヤチャネルの形成を例示するため模式工程図である。
【
図8】等方性エッチングに用いるガスに含まれるCH
2F
2の割合と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比との関係を例示するためのグラフである。
【
図9】保護膜が形成されたシリコンを含む層の表面の組成を分析した結果である。
【
図10】保護膜が形成されたシリコンゲルマニウムを含む層の表面の組成を分析した結果である。
【
図11】保護膜の厚みと、シリコンを含む層が除去されるのを抑制する効果との関係を例示するためのグラフである。
【
図12】等方性エッチングの処理時間と、シリコンを含む層、およびシリコンゲルマニウムを含む層の除去量と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比と、の関係を例示するためのグラフである。
【
図13】処理サイクル数と、シリコンを含む層、およびシリコンゲルマニウムを含む層の除去量と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比と、の関係を例示するためのグラフである。
【
図14】プラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(半導体装置の製造方法)
本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に適用することができる。ここでは、一例として、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を、GAA構造を有するMOSFETの製造に適用する場合を説明する。
【0013】
また、以下に例示をする各図中の矢印X、Y、Zは、互いに直交する三方向を表している。例えば、X方向とY方向は、半導体装置の要素が積層される基板の面に平行な方向とすることができる。Z方向は、半導体装置の要素の積層方向とすることができる。
【0014】
図1は、半導体装置300の模式平面図である。
図2は、
図1における半導体装置300のA-A線方向の模式断面図である。
図1、および
図2に示すように、半導体装置300は、例えば、基板301、一対のソース・ドレイン領域302、ゲート電極303、一対のコンタクト部304、および、複数のナノワイヤチャネル305を有する。
すなわち、半導体装置300は、GAA構造を有するMOSFETである。
【0015】
ゲート電極303は、一対のソース・ドレイン領域302同士の間に設けられている。コンタクト部304は、一対のソース・ドレイン領域302のそれぞれに設けられている。
図2に示すように、複数のナノワイヤチャネル305は、所定の間隔をあけて、Z方向に並べて設けられている。ナノワイヤチャネル305の表面には、ゲート絶縁膜306が設けられている。ゲート絶縁膜306が設けられたナノワイヤチャネル305は、ゲート電極303により覆われている。また、ゲート電極303の上には絶縁膜を設けることができる。
なお、GAA構造を有するMOSFETの構成や材料には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0016】
また、前述した様に、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、組成元素が異なる層を積層し、一方の元素を含む層を等方性エッチングする場合に適用することができる。そのため、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、所定の間隔をあけて、Z方向に並べて設けられる複数のナノワイヤチャネル305を形成する際に適用することができる。また、複数のナノワイヤチャネル305以外の要素の形成には既知の技術を適用することができる。そのため、以下においては、複数のナノワイヤチャネル305の形成方法について説明することとし、他の要素の形成方法については説明を省略する。
【0017】
図3~
図7は、ナノワイヤチャネル305の形成を例示するため模式工程図である。
なお、
図3~
図7は、1つの基板301の上に複数の半導体装置300を一度に形成する場合、すなわち、半導体装置300を個片化する前の状態である。
まず、基板301の上に、シリコンゲルマニウムを含む層307(第1の層の一例に相当する)と、シリコンを含む層305a(第2の層の一例に相当する)とを交互に複数積層する。
【0018】
次に、
図3に示すように、プラズマを用いた異方性エッチング(例えば、RIE:Reactive Ion Etchingなど)により、シリコンを含む層305aと、シリコンゲルマニウムを含む層307とを順次エッチングする。シリコンを含む層305aと、シリコンゲルマニウムを含む層307が順次エッチングされることで、シリコンゲルマニウムを含む層307と、シリコンを含む層305aが交互に積層された積層体308が形成される。この場合、積層体308に含まれるシリコンを含む層305aが、ナノワイヤチャネル305となる。
なお、シリコンゲルマニウムを含む層307、およびシリコンを含む層305aの成膜や、積層体308の形成には、既知の技術を適用することができるので、これらに関する説明は省略する。
【0019】
ここで、積層体308に含まれているシリコンゲルマニウムを含む層307を除去すれば、積層体308に含まれているシリコンを含む層305aをナノワイヤチャネル305とすることができる。この場合、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去は、例えば、プラズマを用いた等方性エッチングにより行うことができる。
【0020】
プラズマを用いた等方性エッチングにおいて、例えば、フッ素原子を含むガスを用いれば、フッ素ラジカルが生成される。フッ素ラジカルがシリコンゲルマニウムと接触すれば、揮発性物質であるSiF4とGeF4が生成される。そのため、プラズマを用いた等方性エッチングを行う際に、フッ素原子を含むガスを用いれば、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去することができる。
【0021】
ところが、フッ素原子を含むガスを用いたプラズマ処理においては、Ge-F結合に比べて、Si-F結合の方が安定的である。そのため、シリコンが優先的に除去されることになる。すなわち、プラズマ処理において、単に、フッ素原子を含むガスを用いれば、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比が小さくなる。
【0022】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比が小さくなると、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去する際に、シリコンを含む層305aの一部が除去されやすくなる。シリコンを含む層305aの一部が除去されると、シリコンを含む層305aを狙った寸法となるよう形成することが困難となる。シリコンを含む層305aを狙った寸法となるよう形成することができないと、半導体装置300の機能や信頼性が低下するおそれがある。
【0023】
この場合、フッ素原子と水素原子を含むガス(第2のガスの一例に相当する)、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガス(これらのガスは、第2のガスの一例に相当する)を用いれば、フッ素ラジカルと水素ラジカル(これらのラジカルは第2のラジカルに相当する)が生成される。前述した様に、フッ素ラジカルがシリコンゲルマニウムと接触すれば、揮発性物質であるSiF4とGeF4が生成される。水素ラジカルがシリコンゲルマニウムと接触すれば、揮発性物質であるGeH4が生成される。この場合、水素ラジカルはシリコンとは反応しない。
【0024】
そのため、フッ素原子と水素原子を含むガス、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスを用いれば、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を大きくすることができる。シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を大きくすることができれば、形成されたナノワイヤチャネル305の寸法精度や形状精度を向上させることができる。つまり、シリコンを含む層(ナノワイヤチャネル)を狙った寸法となるよう形成できるようになる。
【0025】
フッ素原子と水素原子を含むガスは、例えば、CH2F2、HFなどとすることができる。フッ素原子を含むガスと水素ガスは、例えば、CF4とH2などとすることができる。なお、プラズマを用いた等方性エッチングにおいては、ラジカルの寿命を延ばすために、フォーミングガスを添加する場合がある。フォーミングガスは、窒素ガスと水素ガスの混合ガスである。フォーミングガスを添加すれば、生成されたラジカルが再結合して消失するのを抑制することができる。
【0026】
図8は、等方性エッチングに用いるガスに含まれるCH
2F
2の割合と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比との関係を例示するためのグラフである。
なお、等方性エッチングに用いるガスに含まれるCH
2F
2の以外のガスは、酸素ガスとフォーミングガスである。
【0027】
前述した様に、CH2F2の割合を多くすると、フッ素ラジカルの量が増加するため、シリコンゲルマニウムのエッチングレートと、シリコンのエッチングレートがともに高くなる。また、CH2F2の割合を多くすると、水素ラジカルの量が増加するため、シリコンゲルマニウムのエッチングレートが高くなる。
【0028】
そのため、
図8から分かるように、CH
2F
2の割合を多くすると、シリコンのエッチングレートの増加が緩やかなのに対し、シリコンゲルマニウムのエッチングレートの増加が急激になる。すなわち、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を大きくすることができる。
なお、以上のことは、等方性エッチングに用いるガスを、フッ素原子と水素原子を含む他のガスとする場合や、フッ素原子を含むガスと水素ガスを用いる場合も同様である。
【0029】
ただし、等方性エッチングに用いるガスに対する、フッ素原子と水素原子を含むガスの割合、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合を多くし過ぎると、等方性エッチングを行うチャンバの内壁に付着する副生成物(デポ物)の量が多くなることが判明した。チャンバの内壁に付着する副生成物の量が多くなると、エッチングレートの面内分布のバラツキが大きくなるなどの不具合が発生するおそれがある。そのため、等方性エッチングに用いるガスに対する、フッ素原子と水素原子を含むガスの割合、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合は60%以下とすることが好ましい。
【0030】
またさらに、等方性エッチングに用いるガスに対する、フッ素原子と水素原子を含むガス、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合を多くすると、形成されたナノワイヤチャネル305の表面が荒れることが判明した。ナノワイヤチャネル305の表面が荒れると、半導体装置300の機能や信頼性が低下するおそれがある。
【0031】
そこで、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去する前に、積層体308の表面に保護膜309を形成する様にしている。具体的には、シリコンを含む層305aの表面を保護する保護膜309を形成する様にしている。
シリコンを含む層305aの表面に保護膜309が形成されていれば、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を大きくするために、等方性エッチングに用いるガスに対する、フッ素原子と水素原子を含むガスの割合、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合を多くしても、ナノワイヤチャネル305の寸法精度や形状精度を向上させることができ、且つ、ナノワイヤチャネル305の表面が荒れるのを抑制することができる。
【0032】
例えば、前述した
図3に示す積層体308が形成された後に、
図4に示すように、積層体308の露出部分を酸素ラジカル(第1のラジカルの一例に相当する)を用いて酸化、または窒素ラジカル(第1のラジカルの一例に相当する)を用いて窒化させて、積層体308の表面に保護膜309を形成する。なお、「積層体308の表面」は、酸素ラジカルまたは窒素ラジカルと接触する積層体308の露出部分である。つまり、積層体308の露出している面の全てが「積層体308の表面」に含まれる。そのため、
図4に示すように、「積層体308の表面」には、積層体308の側面も含まれる。
【0033】
例えば、酸素ガス(第1のガスの一例に相当する)とフォーミングガスを用いた等方性のプラズマ処理を行うことで、積層体308の表面に、酸化物を含む保護膜309を形成することができる。フォーミングガスは、例えば、窒素ガスと、水素ガスの混合ガスなどとすることができる。
【0034】
例えば、窒素ガス(第1のガスの一例に相当する)を用いた等方性のプラズマ処理を行うことで、積層体308の表面に、窒化物を含む保護膜309を形成することができる。この場合、窒素ガスに水素ガスを添加することができる。
【0035】
なお、水素ガスを添加することで、積層体308の表面の自然酸化膜と水素ラジカルが反応して、自然酸化膜がエッチングされる。自然酸化がエッチングされた積層体308の表面は、活性な状態となるため、窒化反応を促進することができる。
【0036】
また、保護膜309の形成と、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)は、プラズマ処理により行うことができる。そのため、例えば、用いるガスを切り替えて、同じチャンバの内部で、保護膜309の形成と、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)を順次行うことができる。
【0037】
図9は、保護膜309が形成されたシリコンを含む層305aの表面の組成を分析した結果である。なお、
図9は、保護膜309が酸化膜の場合である。
積層体308の表面に保護膜309を形成する形成工程(酸素ガスとフォーミングガスを用いた等方性のプラズマ処理)を行えば、
図9から分かるように、シリコンを含む層305aの表面に酸素を含む膜(保護膜309)を形成することができる。なお、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを用いた等方性のプラズマ処理を行えば、シリコンを含む層305aの表面に窒素を含む膜(保護膜309)を形成することができる。
【0038】
図10は、保護膜309が形成されたシリコンゲルマニウムを含む層307の表面の組成を分析した結果である。なお、
図10は、保護膜309が酸化膜の場合である。
積層体308の表面に保護膜309を形成する形成工程(酸素ガスとフォーミングガスを用いた等方性のプラズマ処理)を行えば、
図10から分かるように、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に酸素を含む膜(保護膜309)を形成することができる。なお、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを用いた等方性のプラズマ処理を行えば、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に窒素を含む膜(保護膜309)を形成することができる。
【0039】
ここで、保護膜309の、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に形成された部分の組成は、保護膜309の、シリコンを含む層305aの表面に形成され部分の組成とは、異なるものとなる。そのため、保護膜309の、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に形成された部分のエッチングレートは、保護膜309の、シリコンを含む層305aの表面に形成され部分のエッチングレートと、異なるものとなる。
【0040】
この場合、前述した、フッ素原子と水素原子を含むガス、あるいは、フッ素原子を含むガスと水素ガスを用いた等方性エッチングを行えば、保護膜309の、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に形成された部分のエッチングレートが、保護膜309の、シリコンを含む層305aの表面に形成され部分のエッチングレートよりも高くなることが判明した。
【0041】
そのため、表面に保護膜309が形成された積層体308を等方性エッチングすると、
図5に示すように、シリコンゲルマニウムを含む層307の表面に形成された保護膜309が先に除去され、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が開始されることになる。この場合、シリコンを含む層305aの表面に形成された保護膜309が残っていれば、シリコンを含む層305aが除去されたり、シリコンを含む層305aの表面が荒れたりするのを抑制することができる。なお、表面に保護膜309が形成された積層体308を等方性エッチングすることを、保護膜309が形成された積層体308を等方性エッチングする工程と呼ぶこともある。
【0042】
ただし、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が完了する前に、シリコンを含む層305aの表面に形成された保護膜309が除去されると、シリコンを含む層305aが除去されたり、シリコンを含む層305aの表面が荒れたりすることになる。そのため、保護膜309の厚みは、ある程度厚くする必要がある。
【0043】
図11は、保護膜309の厚みと、シリコンを含む層305aが除去されるのを抑制する効果との関係を例示するためのグラフである。
なお、シリコンを含む層305aの除去量は、形成した保護膜309に対して、等方性エッチングする時間を一定とした場合の除去量である。また、保護膜309を形成するための処理時間を長くすれば、シリコンを含む層305aの表面に形成される保護膜309の厚みを厚くすることができる。保護膜309を形成するための処理時間が0秒から60秒までの間における、シリコンを含む層305aの除去量は、保護膜309を形成するための処理時間に対して反比例している。つまり、保護膜309の厚みを厚くすることで、シリコンを含む層305aの除去量を少なくすることができる。
【0044】
図11から分かるように、保護膜309を形成するための処理時間を60秒以上にすれば、シリコンを含む層305aが除去されるのをほぼ無くすことができる。しかしながら、保護膜309を形成するための処理時間を60秒以上としても、シリコンを含む層305aの除去量を完全にゼロにすることはできない。これは、保護膜309は、一定の厚さまでしか形成することができないためである。一定の厚みを超える保護膜309を形成できない理由としては、ラジカルのシリコンを含む層305aに入り込める距離がシリコンを含む層305aの表面から数nmしかないためと考えられる。ラジカルがシリコンを含む層305aの表面から数nmしか入り込めない理由としては、ラジカルの寿命がシリコンを含む層305aの表面から数nm入り込んだときに尽きることが考えられる。また、ラジカルは、シリコンを含む層305aの表面にある原子と衝突を繰り返しながらシリコンを含む層305aの内部へと入り込む。そのため、衝突の際にエネルギーを消失しているとも考えられる。つまり、ラジカルは、シリコンを含む層305aの表面から数nm入り込むまでのシリコンを含む層305aとの衝突で、化学反応を生じさせるのに必要なエネルギーを失っているとも考えられる。そのため、保護膜309を形成するための処理時間は60秒程度とすることが好ましい。この様にすれば、シリコンを含む層305aが除去されるのをほぼ無くすことができ、且つ、生産性が低下するのを抑制することができる。
【0045】
ここで、保護膜309の厚みを薄くし過ぎたり、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去するための処理時間(等方性エッチングの処理時間)を長くし過ぎたりすると、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去している時に、シリコンを含む層305aの表面に形成されていた保護膜309が除去されてしまうことが生じ得る。
また、例えば、Y方向におけるシリコンゲルマニウムを含む層307の長さが長い場合には、シリコンゲルマニウムを含む層307が除去される前に、シリコンを含む層305aの表面に形成されていた保護膜309が除去される場合がある。
【0046】
この場合、保護膜309の厚みを厚くすれば、シリコンゲルマニウムを含む層307を除去している時に、シリコンを含む層305aが露出するのを抑制することができる。しかしながら、保護膜309の厚みを厚くすれば、前述した様に生産性が低下する。
【0047】
またさらに、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が進むと、
図5に示すように、Z方向におけるシリコンを含む層305aの面305bの一部が露出することになる。シリコンを含む層305aの面305bの一部が露出すると、露出した部分が除去されたり、露出した部分の表面が荒れたりする場合がある。
【0048】
図12は、等方性エッチングの処理時間と、シリコンを含む層305a、およびシリコンゲルマニウムを含む層307の除去量と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比と、の関係を例示するためのグラフである。
なお、
図12は、等方性エッチングに用いるガスにおけるCH
2F
2の割合が37%、保護膜309を形成するための処理時間が60秒、保護膜309を形成するために用いたガスが酸素ガスとフォーミングガス(窒素ガスと水素ガスの混合ガス)の場合である。
なお、CH
2F
2の割合は、エッチングの加工精度を高めるため、CH
2F
2の割合が60%の場合よりもエッチングレートが低い37%とした。
【0049】
図12から分かるように、等方性エッチングの処理時間が長くなると、シリコンを含む層305aの表面に形成されている保護膜309が除去されて、シリコンを含む層305aが露出する。そのため、シリコンを含む層305aが除去されることになる。シリコンを含む層305aが除去されると、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比が低下することになる。このことは、シリコンゲルマニウムを含む層307を任意の除去量以上(例えば、除去量が20nm以上)で除去しようとすると、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を高い値に維持することができないことを意味する。
【0050】
そこで、必要に応じて、
図6に示すように、保護膜309を再度形成することができる。
保護膜309の再度の形成は、前述した積層体308の表面に保護膜309を形成する場合と同様とすることができる。この場合、例えば、用いるガスを切り替えて、同じチャンバの内部で、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)と、保護膜309の再度の形成とを順次行うことができる。
【0051】
なお、例えば、Y方向におけるシリコンゲルマニウムを含む層307の長さが短い場合には、シリコンを含む層305aの表面に形成されている保護膜309が除去される前に、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が完了する場合がある。そのため、保護膜309の形成は、少なくとも1回行えばよい。
【0052】
ただし、Y方向におけるシリコンゲルマニウムを含む層307の長さが短い場合であっても、前述した様に、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が進むに従い、シリコンを含む層305aの面305bの一部が露出する。そのため、保護膜309の形成は、複数回行うことが好ましい。保護膜309の形成回数は、保護膜309の厚みや、Y方向におけるシリコンゲルマニウムを含む層307の長さなどに応じて適宜変更することができる。例えば、保護膜309の形成回数は、例えば、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
【0053】
また、保護膜309を再度形成するタイミングは、例えば、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)を開始してからの時間で管理することができる。この場合、保護膜309を再度形成するタイミングは、例えば、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
【0054】
また、シリコンを含む層305aの表面に形成されている保護膜309が除去されると、シリコンを含む層305aが露出する。シリコンを含む層305aが露出すると、等方性エッチングにおける発光スペクトルが変化する。そのため、発光スペクトルの変化を検出することで、保護膜309を再度形成するタイミングを決定することもできる。
【0055】
図13は、処理サイクル数と、シリコンを含む層305a、およびシリコンゲルマニウムを含む層307の除去量と、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比と、の関係を例示するためのグラフである。
【0056】
なお、
図13は、等方性エッチングに用いるガスにおけるCH
2F
2の割合が37%、保護膜309を形成するための処理時間が60秒、保護膜309を形成するために用いたガスが酸素ガスとフォーミングガス(窒素ガスと水素ガスの混合ガス)の場合である。
また、処理サイクル数は、「保護膜309の形成と等方性エッチング」を1サイクルとしている。例えば、サイクル数が4の場合には、「保護膜309の形成と等方性エッチング」を続けて4回行っている。
また、サイクル数にかかわらず等方性エッチングのトータル時間を600秒としている。例えば、サイクル数が1の場合には、等方性エッチングを1回行い、等方性エッチングの時間を600秒としている。例えば、サイクル数が4の場合には、等方性エッチングを4回行い、1回の等方性エッチングの時間を150秒(等方性エッチングのトータル時間:4回の等方性エッチングのトータル時間を600秒)としている。
【0057】
図13から分かるように、サイクル数が多くなれば、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を高くすることができる。シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比を高くすることができれば、シリコンを含む層305a(ナノワイヤチャネル305)の削れ量を小さくすることができる。
また、積層体308に含まれる、シリコンゲルマニウムを含む層307を等方性エッチングする場合、シリコンゲルマニウムを含む層307は、X方向およびY方向から等方性エッチングされる。そのため、エッチングする領域において、シリコンゲルマニウムを含む層307の削れ量がばらつくおそれがある。しかしながら、シリコンを含む層305aの表面に保護膜309が形成されていれば、シリコンを含む層305aをほとんど削ること無く、削れ残ってしまったシリコンゲルマニウムを含む層307だけを削ることができる。本発明の実施形態に係る保護膜309を形成する方法では、保護膜309を形成する処理時間を60秒以上とすることで、一定の厚さの保護膜309を形成することができる。つまり、エッチングする領域において、シリコンゲルマニウムを含む層307の削れ量にばらつきが生じても、積層体308中のシリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比がエッチングする領域においてばらつくことを抑制することができる。積層体308中のシリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択比がエッチングする領域においてばらつくことを抑制することができれば、積層体に含まれるシリコンを含む層(ナノワイヤチャネル)の寸法がばらつくことを抑制することができる。つまり、シリコンを含む層305a(ナノワイヤチャネル305)の寸法精度や形状精度を向上させたり、シリコンを含む層305a(ナノワイヤチャネル305)の表面が荒れるのを抑制したりすることができる。そのため、半導体装置300の機能や信頼性をさらに向上させることができる。
また、前述の通り、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合は60%以下とすることが好ましい。特に、処理サイクルを複数回実行する場合には、フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合は、25%から37%であることが好ましい。フッ素原子を含むガスと水素ガスの割合を上記の範囲とすることで、シリコンのエッチングレートは、ほとんどゼロとなる。そのため、保護膜309が削れて無くなってしまったとしても、シリコンを含む層305aを削ってしまうことを抑制することができる。
【0058】
以上の様にして、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が完了した場合には、
図7に示すように、シリコンを含む層305aの表面に残留する保護膜309を除去する。例えば、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が完了した後も等方性エッチングを継続することで、シリコンを含む層305aの表面に残留する保護膜309を除去することができる。なお、等方性エッチングのエンドポイントは、時間管理や発光スペクトルの変化などにより決定すれば良い。
【0059】
また、シリコンを含む層305aの表面に残留する保護膜309を除去すると、シリコンを含む層305a(ナノワイヤチャネル305)の寸法精度や形状精度が低下したり、シリコンを含む層305a(ナノワイヤチャネル305)の表面が荒れたりするおそれがある。そのため、シリコンゲルマニウムを含む層307の除去が完了した場合には、シリコンを含む層305aの表面を覆う保護膜309を再度形成するようにしてもよい。形成された保護膜309は、例えば、
図2に示すゲート絶縁膜306とすることができる。なお、保護膜309とは異なる絶縁膜を形成してもよい。
【0060】
以上に説明した様に、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えることができる。
第1の層(307)と、第1の層(307)とは組成元素が異なる第2の層(305a)と、が積層された積層体308の表面に保護膜309を形成する工程。
保護膜が形成された積層体を等方性エッチングする工程。
保護膜309を形成する工程は、第1のガスG1をプラズマPにより励起、活性化させて生成した第1のラジカルを用いて行われる。
積層体308を等方性エッチングする工程は、第1のガスG1とは異なる第2のガスG2をプラズマPにより励起、活性化させて生成した第2のラジカルを用いて行われる。
保護膜309を形成する工程と、積層体308を等方性エッチングする工程とが、同じ雰囲気内において順次行われる。
【0061】
保護膜309を形成する工程において、保護膜309の、第1の層(307)の表面に形成された部分のエッチングレートは、保護膜309の、第2の層(305a)の表面に形成された部分のエッチングレートよりも高い。
【0062】
積層体308を等方性エッチングする工程において、第2の層(305a)の表面に形成された保護膜309が除去されたと判定した場合には、等方性エッチングを停止し、保護膜309を形成する工程を行う。
【0063】
保護膜309が除去されたことの判定は、等方性エッチングの開始からの時間、および、発光スペクトルの変化の少なくともいずれかにより行う。
【0064】
保護膜309を形成する工程と、積層体308を等方性エッチングする工程とは、交互に複数回行われる。
【0065】
(プラズマ処理装置)
本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置は、前述したナノワイヤチャネル305の形成が実施可能なものであればよい。例えば、プラズマ処理装置は、プラズマを発生させ、発生させたプラズマによりガスを励起、活性化させてラジカルやイオンなどを生成し、主に、生成したラジカルを用いて処理を行うものとすることができる。主に、ラジカルを用いて処理を行えば、等方性の処理を行うことができる。
【0066】
図14は、プラズマ処理装置1を例示するための模式図である。
プラズマ処理装置1は、CDE(chemical dry etching)装置、あるいは、リモートプラズマ装置と呼ばれるマイクロ波励起型のプラズマ処理装置である。
【0067】
図14に示すように、プラズマ処理装置1は、例えば、チャンバ2、載置部3、減圧部4、放電管5、マイクロ波発生部6、ガス供給部7、検出部8、およびコントローラ9を有する。
【0068】
チャンバ2は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。チャンバ2の内部には整流板2cを設けることができる。整流板2cは、板状を呈し、厚み方向を貫通する複数の孔を有している。
【0069】
載置部3は、チャンバ2の内部に設けられ、処理物100を載置する。処理物100は、例えば、前述した積層体308が形成された基板301である。載置部3は、チャンバ2の底面に設けられている。
【0070】
減圧部4は、チャンバ2の内部の雰囲気が所定の圧力となるように減圧する。減圧部4は、配管を介して、チャンバ2に設けられた排気口2aに接続されている。減圧部4は、例えば、ポンプ、および圧力制御部を有する。ポンプは、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などである。圧力制御部は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などである。
【0071】
放電管5は、チャンバ2の外部に設けられている。放電管5は、管状を呈し、一方の端部が、配管部材4aを介して、チャンバ2の天井に設けられた導入孔2bに接続されている。放電管5は、誘電体材料から形成されている。放電管5は、例えば、石英から形成することができる。
【0072】
マイクロ波発生部6は、マイクロ波発生源6a、および導波管6bを有する。マイクロ波発生源6aは、所定周波数(例えば2.75GHz)のマイクロ波Mを発生させ、導波管6bに向けて放射する。導波管6bの一方の端部は、マイクロ波発生源6aと接続されている。導波管6bの他方の端部は、放電管5と接続されている。導波管6bは、放電管5が延びる方向と交差する方向に延びている。マイクロ波Mは、導波管6bの内部を伝播し、導波管6bの端部に設けられたスロットを介して、放電管5の内部に導入される。放電管5の内部空間5aであって、導波管6bのスロットの位置の近傍が、プラズマPが発生する領域となる。
【0073】
ガス供給部7は、放電管5の、チャンバ2側とは反対側の端部に接続されている。ガス供給部7は、前述した保護膜309の形成に用いるガスG1(第1のガスの一例に相当する)と、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)に用いるガスG2(第2のガスの一例に相当する)とを切り替えて放電管5の内部に供給する。
【0074】
例えば、ガス供給部7は、ガスG1を収納する収納部7a、ガスG1の制御を行う制御部7b、ガスG2を収納する収納部7c、ガスG2の制御を行う制御部7dを有する。収納部7a、および収納部7cは、例えば、高圧ボンベなどとすることができる。制御部7b、および制御部7dは、ガスの供給と供給の停止を切り替える機能と、ガスの流量を制御する機能を有することができる。
収納部7a、および制御部7bが、プラズマPを発生させる領域にガスG1を供給する第1のガス供給部となる。収納部7c、および制御部7dが、プラズマPを発生させる領域にガスG2を供給する第2のガス供給部となる。
なお、前述したフォーミングガスや水素ガスなどを供給するための収納部と制御部をさらに設けることもできる。
【0075】
放電管5の内部に供給されたガスG1、G2は、プラズマにより励起、活性化されてラジカル、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。生成されたプラズマ生成物は、放電管5から配管部材4aを介してチャンバ2の内部に供給される。この際、寿命の短いイオンや電子は、チャンバ2の内部に到達できず、ラジカルがチャンバ2の内部に供給される。ラジカルが処理物100に到達すると、処理物100の表面が化学的に処理される。すなわち、処理物100に対してラジカルを主体とする等方性処理が行われる。
【0076】
検出部8は、チャンバ2の外部に設けられている。検出部8は、チャンバ2の壁面に設けられた透光性を有する窓2dを介して、処理物100の処理面の近傍における発光を検出する。検出された発光のデータは、検出部8からコントローラ9に送られる。発光のデータは、発光スペクトルの変化の検出(エンドポイントの検出)、すなわち、前述した保護膜309を再度形成するタイミングを求めるために用いることができる。
【0077】
コントローラ9は、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。コントローラ9は、例えば、コンピュータである。コントローラ9は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0078】
なお、プラズマPの発生手順や条件、ラジカルなどのプラズマ生成物の生成、ラジカルカルを用いた等方性処理、処理物100の搬入や搬出などの手順などには既知の技術を適用することができる。そのため、以下においては、ガスG1とガスG2の切り替え(保護膜309の形成と、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)との切り替え)を説明する。
【0079】
例えば、コントローラ9は、検出部8からの検出値に基づいて発光スペクトルの変化を検出し、シリコンを含む層305aの表面に形成されていた保護膜309が除去されたと判定した場合には、等方性エッチング(シリコンゲルマニウムを含む層307の除去)を停止し、保護膜309を再度形成する。例えば、コントローラ9は、ガス供給部7の制御部7dを制御してガスG2の供給を停止し、制御部7bを制御してガスG1の供給を行う。なお、前述した様に、保護膜309を再度形成するタイミングは、予め定められた時間に基づいて行うこともできる。ただし、発光スペクトルの変化に基づいて、保護膜309を再度形成すれば、プロセス条件がばらついた場合にも対応が可能となる。
また、コントローラ9は、保護膜309の形成と、積層体308の等方性エッチングと、を交互に複数回行うこともできる。
【0080】
なお、一例として、プラズマ処理装置1を説明したが、主に、ラジカルを用いて処理を行うプラズマ処理装置とすればよい。
また、一例として、1つの基板301の上に複数の半導体装置300を一度に形成する場合を説明したが、個片化しない場合も本発明に含まれる。例えば、ナノワイヤチャネル305が所定の間隔をあけて、Z方向だけでなく、Y方向にも並べて設けられている半導体装置の場合にも、本発明は効果的である。
【0081】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、プラズマ処理装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0082】
1 プラズマ処理装置、5 放電管、6 マイクロ波発生部、7 ガス供給部、8 検出部、9 コントローラ、100 処理物、300 半導体装置、301 基板、305 ナノワイヤチャネル、305a シリコンを含む層、305b 面、307 シリコンゲルマニウムを含む層、308 積層体、309 保護膜、G2 ガス、G1 ガス、M マイクロ波、P プラズマ