IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051292
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240404BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L25/00 B
H01L23/12 Q
H01L23/28 J
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157372
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕史
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109DA07
4M109DB02
4M109EA02
(57)【要約】
【課題】封止樹脂の低背化を図った半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置A10は、半導体素子1と、支持部材2と、配線層3と、複数の端子5と、封止樹脂6とを備える。支持部材2は、厚さ方向zの一方を向く搭載面21を有し、半導体素子1を支持する。配線層3は、搭載面21に少なくとも一部が接する。複数の端子5の各々は、支持部材2を貫通し、配線層3に導通する。封止樹脂6は、搭載面21に形成され、半導体素子1および配線層3を覆う。配線層3は、半導体素子1に導通する配線パターン部31と、コイルパターン部32と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
厚さ方向の一方を向く搭載面を有し、前記半導体素子を支持する支持部材と、
前記搭載面に少なくとも一部が接する配線層と、
前記支持部材を貫通し、前記配線層に導通する複数の端子と、
前記搭載面に形成され、前記半導体素子および前記配線層を覆う封止樹脂と、
を備え、
前記配線層は、前記半導体素子に導通する配線パターン部と、コイルパターン部と、を含む半導体装置。
【請求項2】
前記封止樹脂に覆われた磁性膜をさらに備え、
前記磁性膜は、前記コイルパターン部の少なくとも一部を覆う、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記磁性膜は、前記コイルパターン部の全体を覆う、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線パターン部と前記コイルパターン部とは、前記厚さ方向において同じ位置にある、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記コイルパターン部は、前記搭載面に平面巻回された平面コイルである、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の端子は、前記厚さ方向に見て、前記半導体素子の外方に配置される、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記コイルパターン部は、前記厚さ方向に見て、前記半導体素子に重ならない、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記支持部材を前記厚さ方向に貫通する放熱パッドをさらに備え、
前記放熱パッドは、前記厚さ方向に見て前記半導体素子に重なる、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記支持部材は、樹脂材料を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記封止樹脂は、前記支持部材と同じ樹脂材料を含む、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数の端子の各々は、前記支持部材を貫通する柱状部と、前記柱状部のうち前記支持部材から露出する面を覆う外部電極部とを含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記支持部材は、前記厚さ方向において前記搭載面と反対側を向く部材裏面を有し、
前記外部電極部は、前記部材裏面よりも突き出る、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記複数の端子は、前記コイルパターン部に導通するコイル端子を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体素子は、前記厚さ方向の他方側を向く素子主面と、前記素子主面に配置された素子電極を有しており、
前記素子主面は、前記搭載面に対向する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記支持部材は、前記厚さ方向に直交する第1方向を向く部材側面を有し、
前記複数の端子は、前記部材側面から露出する側方端子を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記封止樹脂は、前記厚さ方向の一方を向く樹脂主面と、前記第1方向を向く樹脂側面を有し、
前記樹脂側面は、前記樹脂主面に繋がる第1側部と前記部材側面に繋がる第2側部とを有し、
前記第2側部は、前記部材側面と面一であり、
前記厚さ方向に見て、前記第1側部は、前記第2側部よりも外方に突き出ている、請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの封止樹脂で、複数の電子素子(能動素子および受動素子など)を封止した半導体装置が知られている。このような半導体装置では、当該半導体装置とともに電子機器などの配線板に実装する電子素子の数を削減することができる。たとえば、特許文献1には、従来の半導体装置の一例が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置は、基板と、第1素子と、第2素子と、封止樹脂とを備える。第1素子は、たとえばLSI(Large Scale Integration)などの集積回路(IC)である。第2素子は、第1素子に接続される素子であり、たとえばダイオードなどの受動素子である。第1素子および第2素子は、基板に搭載される。封止樹脂は、基板上に配置され、第1素子および第2素子を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82694号公報
【特許文献2】特開2009-246305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体装置において、第2素子としてインダクタを用いた場合、第2素子(インダクタ)の厚さにより、封止樹脂の厚さが大きくなることがある。たとえば特許文献2には、インダクタの厚さが他の電子素子(ダイオード、コンデンサおよびスイッチング素子など)の厚さよりも大きい例が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の半導体装置において、基板の厚さに対して封止樹脂の厚さが大きくなるほど、熱応力により基板の反りが大きくなる虞がある。このような基板の反りにより、半導体装置の製造が困難となることがある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、封止樹脂の低背化を図った半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、半導体素子と、厚さ方向の一方を向く搭載面を有し、前記半導体素子を支持する支持部材と、前記搭載面に少なくとも一部が接する配線層と、前記支持部材を貫通し、前記配線層に導通する複数の端子と、前記搭載面に形成され、前記半導体素子および前記配線層を覆う封止樹脂と、を備え、前記配線層は、前記半導体素子に導通する配線パターン部と、コイルパターン部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の半導体装置によれば、封止樹脂の低背化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態にかかる半導体装置を示す底面側から見た斜視図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる半導体装置を示す平面図であって、封止樹脂を想像線で示している。
図3図3は、図2の平面図において、半導体素子、磁性膜および封止樹脂を省略した図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる半導体装置を示す正面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる半導体装置を示す底面図である。
図6図6は、第1実施形態にかかる半導体装置を示す右側面図である。
図7図7は、図2のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図8は、図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図9は、図2のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図10は、図2のX-X線に沿う断面図である。
図11図11は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図13図13は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図14図14は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図15図15は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図16図16は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図17図17は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図18図18は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図19図19は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図20図20は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図21図21は、第1実施形態の第1変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
図22図22は、第1実施形態の第2変形例にかかる半導体装置を示す平面図であって、封止樹脂を想像線で示している。
図23図23は、図22のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
図24図24は、第1実施形態の他の変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
図25図25は、第2実施形態にかかる半導体装置を示す平面図であって、封止樹脂を想像線で示している。
図26図26は、図25のXXVI-XXVI線に沿う断面図である。
図27図27は、第2実施形態の第1変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
図28図28は、第2実施形態の第2変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の半導体装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0010】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B(の)上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B(の)上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B(の)上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」を含む。また、「ある方向に見てある物Aがある物Bに重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、「ある物A(の材料)がある材料Cを含む」とは、「ある物A(の材料)がある材料Cからなる場合」、および、「ある物A(の材料)の主成分がある材料Cである場合」を含む。また、「ある面Aがある方向B(の一方側または他方側)を向く」とは、特段の断りのない限り、面Aの方向Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが方向Bに対して傾いている場合を含む。また、「ある面Aがある面Bに直交する」とは、特段の断りのない限り、面Aの面Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが面Bに対して傾いている場合を含む。
【0011】
図1図10は、第1実施形態にかかる半導体装置A10を示している。半導体装置A10は、半導体素子1、複数の回路部品19、支持部材2、放熱パッド29、配線層3、磁性膜39、複数の接合層41、複数の接合層42、複数の端子5および封止樹脂6を備える。
【0012】
説明の便宜上、互いに直交する厚さ方向z、第1方向xおよび第2方向yを参照する。厚さ方向zは、半導体装置A10の厚さ方向に相当する。以下の説明では、厚さ方向zの一方を上方といい、他方を下方ということがある。なお、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」および「下面」などの記載は、厚さ方向zにおける各部品等の相対的位置関係を示すものであり、必ずしも重力方向との関係を規定する用語ではない。また、「平面視」とは、厚さ方向zに見たときをいう。
【0013】
半導体装置A10は、電子機器および電気自動車などの配線板に表面実装する装置である。半導体装置A10は、リードレスパッケージ型であり、特に、QFNパッケージ(Quad Flat Non-leaded Package)型である。半導体装置A10は、平面視において矩形状である。半導体装置A10の大きさは、何ら限定されないが、第1方向xの寸法が0.8mm以上8mm以下、第2方向yの寸法が0.8mm以上8mm以下、厚さ方向zの寸法は、0.3mm以上1.2mm以下である。
【0014】
半導体素子1は、半導体装置A10の機能中枢となる部品である。半導体素子1は、たとえばLSIなどの集積回路である。この例と異なり、半導体素子1は、LDO(Low Drop Out)などの電圧制御用素子、オペアンプなどの増幅用素子、トランジスタおよびダイオードなどのディスクリート素子であってもよい。半導体素子1は、平面視において矩形状である。半導体素子1は、支持部材2に支持される。半導体素子1は、平面視において、支持部材2に重なる。
【0015】
半導体素子1は、図7図9に示すように、素子主面10aおよび素子裏面10bを有する。素子主面10aおよび素子裏面10bは、厚さ方向zにおいて、離間する。素子主面10aと素子裏面10bとは、互いに反対側を向く。素子主面10aは、支持部材2に対向する。
【0016】
半導体素子1は、図7図9に示すように、複数の素子電極11を有する。複数の素子電極11の各々は、素子主面10aに配置される。複数の素子電極11はそれぞれ、パッドおよびピラーを含む。各素子電極11において、パッドは、素子主面10aに配置され、ピラーは、パッドから厚さ方向zに延びる。ピラーは、素子主面10aから突き出る。パッドおよびピラーの各組成は、導電性材料を含んでいれば何ら限定されないが、一例では、パッドの組成は、アルミニウム(Al)を含み、ピラーの組成は、銅(Cu)を含む。複数の素子電極11はそれぞれ、平面視矩形状である。複数の素子電極11の各平面視形状は、矩形に限定されず、円形、楕円あるいは多角形でもよい。また、パッドとピラーとで平面視形状が異なっていてもよい。
【0017】
複数の回路部品19はそれぞれ、図2および図10に示すように、支持部材2に支持される。複数の回路部品19はそれぞれ、表面実装型である。複数の回路部品19はそれぞれ、たとえば抵抗器、コンデンサ、またはダイオードなどのいずれかである。複数の回路部品19はそれぞれ、図2および図10に示すように、一対の端子部191を含む。各回路部品19において、一対の端子部191は、平面視における長手方向の両側にそれぞれ配置される。なお、回路部品19の数は、1つであってもよい。
【0018】
支持部材2は、半導体素子1を支持する。支持部材2は、たとえば樹脂材料を含む。当該樹脂材料は、たとえば封止樹脂6と同じであるが、封止樹脂6と異なっていてもよい。また、支持部材2には、先述の樹脂材料にシリカなどのフィラーが混入されていてもよい。支持部材2は、樹脂材料ではなく、単結晶の真性半導体(たとえばケイ素(Si))を含む構成でもよい。支持部材2は、図2図3および図5に示すように、平面視矩形状である。支持部材2の厚さ(厚さ方向zの寸法)は、何ら限定されないが、たとえば30μm以上150μm以下である。支持部材2は、搭載面21、裏面22および複数の側面23を有する。
【0019】
図4図6図10に示すように、搭載面21および裏面22は、厚さ方向zにおいて離間する。搭載面21と裏面22は、互いに反対側を向く。搭載面21は、支持部材2の上面であり、裏面22は、支持部材2の下面である。搭載面21は、半導体素子1(素子主面10a)に対向する。裏面22は、半導体装置A10を配線板に実装した際、当該配線板に対向する。本実施形態では、搭載面21は、封止樹脂6に覆われ、裏面22は、封止樹脂6から露出する。
【0020】
図2図10に示すように、複数の側面23はそれぞれ、搭載面21と裏面22との間に挟まれている。各側面23の厚さ方向zの上端は、搭載面21に繋がり、各側面23の厚さ方向zの下端は、裏面22に繋がる。各側面23は、平坦であり、かつ、搭載面21および裏面22のそれぞれに直交する。
【0021】
配線層3は、半導体装置A10の内部に配置される導電体である。配線層3は、たとえばCuを含む。配線層3は、たとえばシード層(たとえばチタン(Ti)を含む)とめっき層(たとえばCuを含む)との積層体であるが、導電体からなる単層であってもよい。配線層3は、図2および図3から理解されるように、半導体素子1に導通する部位および複数の回路部品19のいずれかに導通する部位を含む。本実施形態では、配線層3は、搭載面21に形成され、搭載面21に接する。配線層3は、図3に示すように、複数の配線パターン部31およびコイルパターン部32を含む。本実施形態では、複数の配線パターン部31およびコイルパターン部32は、厚さ方向zにおいて同じ位置にある。
【0022】
複数の配線パターン部31は、複数の端子5とともに、半導体装置A10における導通経路をなす。図2および図3から理解されるように、複数の配線パターン部31は、半導体素子1と複数の端子5のいずれかとを電気的に接続するもの、半導体素子1と複数の回路部品19のいずれかとを電気的に接続するもの、および、複数の回路部品19のいずれかと複数の端子5のいずれかとを電気的に接続するものを含む。複数の配線パターン部31は、半導体素子1とコイルパターン部32とを電気的に接続するもの、および、コイルパターン部32と複数の端子5のいずれかとを電気的に接続するものをさらに含んでいてもよい。
【0023】
コイルパターン部32は、通電することによりインダクタンスを発生させる。つまり、コイルパターン部32は、インダクタの役割をなす。コイルパターン部32は、たとえば平面視において渦巻状に巻回された平面コイルである。図3に示すように、コイルパターン部32は、第1端321、第2端322および巻回部323を含む。巻回部323は、平面巻回された部位である。図示された例では、巻回部323は、平面視矩形の渦巻状である。第1端321は、巻回部323の一端に繋がる。第2端322は、巻回部323の他端に繋がる。図示された例では、第1端321は、半導体素子1に導通し、第2端322は、端子5に導通する。
【0024】
磁性膜39は、磁性材料を含む。磁性膜39は、磁性および絶縁性の両方を兼ね備える。磁性膜39は、たとえば、熱硬化性樹脂に磁性フィラーが充填された材料からなる。熱硬化性樹脂は、たとえばエポキシ樹脂を含む。磁性フィラーは、たとえば鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn)のいずれかを含む。磁性フィラーの一例としては、フェライト材の粉末が挙げられる。磁性膜39は、搭載面21上に形成される。磁性膜39は、コイルパターン部32を覆う。
【0025】
複数の接合層41はそれぞれ、配線パターン部31と、半導体素子1の複数の素子電極11のうちの対応する1つとを接合する。複数の接合層41はそれぞれ、導電性の接合材である。複数の接合層41はそれぞれ、配線層3に積層されたNi層と、当該Ni層に積層され且つ錫(Sn)を組成に含む合金層とにより構成される。Snを組成に含む合金層は、たとえばSn-銀(Ag)合金である。なお、複数の接合層41の各組成は、この例に限定されない。
【0026】
複数の接合層42は、配線パターン部31と、複数の回路部品19の複数の端子部191のうちの対応する1つとを接合する。複数の接合層42はそれぞれ、導電性の接合材である。複数の接合層42はそれぞれ、各接合層41と同じ材料により構成されていてもよいし、Agペーストまたははんだであってもよい。
【0027】
複数の端子5はそれぞれ、配線層3に導通しており、かつ、半導体装置A10の外部に露出した導電体である。複数の端子5はそれぞれ、半導体装置A10を配線板に実装する際の端子となる。複数の端子5はそれぞれ、支持部材2を厚さ方向zに貫通する。図示された例では、複数の端子5はいずれも、平面視において半導体素子1の外方に配置されており、平面視において半導体素子1に重ならない。この例と異なり、複数の端子5のいくつかは、平面視において、半導体素子1に重なっていてもよい。
【0028】
複数の端子5はそれぞれ、図7~10に示すように、柱状部501および外部電極部502を含む。次で説明する柱状部501および外部電極部502はそれぞれ、特段の断りがない限り、各端子5で共通する。
【0029】
図7図10に示すように、柱状部501は、支持部材2を厚さ方向zに貫通する。柱状部501は、たとえば金属材料を含む。当該金属材料は、何ら限定されないが、たとえばCuである。柱状部501の平面視形状は、何ら限定されないが、図示された例では矩形状である。柱状部501の上面(厚さ方向z上方を向く面)は、たとえば支持部材2の搭載面21と面一である。この柱状部501の上面は、配線層3に接する。なお、複数の端子5には、柱状部501の上面が配線層3に接しないものがあってもよい。このような端子5は、ダミー端子となる。柱状部501の下面(厚さ方向z下方を向く面)は、支持部材2から露出する。この柱状部501の下面は、たとえば支持部材2の裏面22と面一である。複数の端子5には、柱状部501の側面(第1方向xまたは第2方向yを向く面)が露出したものものある。
【0030】
図7図10に示すように、外部電極部502は、柱状部501のうち、支持部材2の裏面22または側面23から露出する部位に接する。外部電極部502は、裏面22および側面23から突き出る。また、外部電極部502は、柱状部501に接する配線パターン部31のうち、封止樹脂6から露出する部位に接する。外部電極部502は、無電解めっきにより形成される。外部電極部502は、たとえば、柱状部501に接する側から、Ni層、パラジウム(Pd)層、金(Au)層の順に積層された複数の金属層から構成される。外部電極部502は、その他の構成として、柱状部501に接する側から、Ni層、Au層の順に積層された複数の金属層、あるいは、Cu層、Ag層、Sn層の順に積層された複数の金属層とすることができる。外部電極部502の材料および形成方法は、これらの例に限定されない。外部電極部502の厚さは、特に限定されないが、たとえば1μm以上5μm以下である。
【0031】
複数の端子5は、図2図10に示すように、内方端子51および複数の側方端子52を含む。内方端子51および複数の側方端子52はそれぞれ、上記柱状部501および上記外部電極部502を含む。
【0032】
図5および図7に示すように、内方端子51は、柱状部501の下面が裏面22から露出し、柱状部501の側面は支持部材2に覆われてる。内方端子51は、コイルパターン部32に導通する。内方端子51は、コイルパターン部32を介して、半導体素子1に導通する。内方端子51は、特許請求の範囲に記載の「コイル端子」の一例である。
【0033】
図2図10に示すように、複数の側方端子52は、柱状部501の下面が裏面22から露出するとともに、柱状部501の側面が複数の側面23のいずれかから露出する。図示された例では、複数の側方端子52には、半導体素子1に導通するもの、複数の回路部品19のいずれかと半導体素子1とに導通するもの、複数の回路部品19のいずれかに導通するもの、および、半導体素子1と複数の回路部品19とのいずれにも導通しないものとがある。複数の側方端子52はそれぞれ、平面視において、半導体素子1の外方に配置され、半導体素子1に重ならない。この例とは異なり、複数の側方端子52のいくつかは半導体素子1に重なっていてもよい。
【0034】
放熱パッド29は、図7および図9に示すように、支持部材2を厚さ方向zに貫通する。放熱パッド29は、たとえば柱状部501と同じ材料を含む。放熱パッド29は、平面視において半導体素子1に重なる。図示された例では、放熱パッド29には、接合層41を介して、複数の素子電極11のうちのいくつかが接合されている。このような放熱パッド29に接合される複数の素子電極11は、たとえば半導体素子1内の機能部分に導通しないダミー電極であるが、当該機能部分に導通していてもよい。放熱パッド29の下面は、裏面22から露出する。図示された例では、当該放熱パッド29の下面は、裏面22と面一であり、外部電極部502と同じめっきで覆われている。
【0035】
封止樹脂6は、たとえば黒色のエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂である。封止樹脂6は、当該エポキシ樹脂にシリカなどのフィラーが混入されていてもよい。封止樹脂6は、図7図10に示すように、半導体素子1および配線層3を覆う。また、封止樹脂6は、図7図10に示すように、支持部材2の一部と、複数の接合層41と、複数の接合層42とを覆う。封止樹脂6は、搭載面21に形成される。封止樹脂6は、平面視において矩形状である。封止樹脂6の厚さ(厚さ方向zの寸法)は、何ら限定されないが、たとえば0.2mm以上1.2mm以下である。封止樹脂6は、図1図10に示すように、樹脂主面61、樹脂裏面62および複数の樹脂側面63を有する。
【0036】
図4および図6図9に示すように、樹脂主面61および樹脂裏面62は、厚さ方向zにおいて離間する。樹脂主面61と樹脂裏面62とは、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。樹脂主面61は、厚さ方向zにおいて、搭載面21と同じ方向を向き、樹脂裏面62は、厚さ方向zにおいて裏面22と同じ方向を向く。樹脂裏面62は、搭載面21に接する。樹脂裏面62には、配線層3の形状に応じて凹凸がある。
【0037】
図4図6図10に示すように、複数の樹脂側面63の各々は、厚さ方向zにおいて樹脂主面61と樹脂裏面62とに挟まれており、これらに繋がる。複数の樹脂側面63はそれぞれ、第1側部631および第2側部632を有する。次に説明する第1側部631および第2側部632はそれぞれ、特段の断りがない限り、各樹脂側面63で共通する。第1側部631と第2側部632とは、同じ方向を向く。図1および図4図10に示すように、第1側部631は、平面視において、第2側部632よりも外方に配置されている。第1側部631は、樹脂主面61に繋がり、第2側部632は、複数の側面23のうちの対応する1つに繋がる。第2側部632は、これに繋がる側面23と面一である。このような構成により、各樹脂側面63には、段差がある。
【0038】
次に、半導体装置A10の製造方法の一例について、図11図20を参照して説明する。図11図20は、半導体装置A10の製造方法における一工程を示す断面図である。これらの断面図は、図7に示す断面に対応する。なお、図18図20に示す断面図では、図11図17に示す断面図に対して、厚さ方向zが反対向きである。
【0039】
まず、図11に示すように、支持基板80を準備し、当該支持基板80上に複数の柱状導体850a,829を形成する。支持基板80は、たとえば単結晶の真性半導体材料を含む。当該半導体材料は、たとえばSiである。支持基板80を準備する工程では、たとえば支持基板80として、シリコンウエハを準備する。支持基板80は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く基板主面80aおよび基板裏面80bを有する。複数の柱状導体850a,829は、たとえば次の工程により形成される。まず、基板主面80aにシード層を形成する。当該シード層の形成は、たとえばスパッタリング法による。そして、シード層上にレジストをパターニングし、電解めっきにより複数の柱状導体850a,829を形成する。その後、レジスト層および不要なシード層を除去する。これらの工程を経て、支持基板80の基板主面80aに、複数の柱状導体850a,829を形成する。柱状導体850aは、後に端子5の柱状部501となる部位であり、柱状導体829は、後に放熱パッド29となる部位である。
【0040】
次いで、図12に示すように、支持基板80の基板主面80aに、柱状導体850a,829を覆う第1樹脂層82を形成する。第1樹脂層82の形成は、たとえばモールド成形による。第1樹脂層82は、たとえば黒色のエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂である。第1樹脂層82としては、当該合成樹脂ではなく、他の絶縁性の樹脂材料であってもよい。第1樹脂層82は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く頂面821および底面822を有する。頂面821は、基板主面80aと同じ方向を向き、底面822は、基板主面80aに対向する。第1樹脂層82は、後に支持部材2となる部材である。
【0041】
次いで、図13に示すように、第1樹脂層82を研削する。当該第1樹脂層82の研削は、頂面821側から、頂面821から柱状導体850a,829が露出するまで行う。当該研削の方法は特に限定されない。また、研削ではない方法により、第1樹脂層82を低背化してもよい。これにより、柱状導体850aから柱状部501が形成され、柱状導体829から放熱パッド29が形成される。
【0042】
次いで、図14に示すように、配線層3を形成する。配線層3は、たとえば次の工程により形成される。まず、頂面821、各柱状部501および各放熱パッド29の上に、シード層を形成する。当該シード層の形成は、たとえばスパッタリング法による。そして、シード層上にレジストをパターニングし、電解めっきによりめっき層を形成する。その後、レジスト層および不要なシード層を除去する。これらの工程を経て、複数の配線パターン部31およびコイルパターン部32を含む配線層3を形成する。
【0043】
次いで、図15に示すように、複数の接合層41および磁性膜39を順に形成する。複数の接合層41は、配線層3の上面に対してリソグラフィパターニングを施す。これにより、リソグラフィパターニングから配線層3の一部が露出する。次いで、リソグラフィパターニングから露出する配線層3の一部とリソグラフィパターニングの全体とに、スパッタリング法により下地層としての金属薄膜を成膜させる。次いで、当該金属薄膜を導電経路とした電解めっきにより、金属薄膜の上に、Ni層と、Snを含む合金層とこの順で形成する。最後に、リソグラフィパターニングと、これの上面に積層された金属薄膜、Ni層および合金層とを除去する。これらの工程を経て、複数の接合層41を形成する。磁性膜39は、たとえば、コイルパターン部32を覆うように磁性材料を含むペースト材をスクリーン印刷する。次いで、ペースト材を焼成する。これらの工程を経て、磁性膜39を形成する。
【0044】
次いで、図16に示すように、半導体素子1を搭載する。このとき、当該半導体素子1の搭載前または搭載後に複数の回路部品19も搭載する。半導体素子1は、たとえばフリップチップボンディングにより複数の接合層41に接合される。フリップチップボンディングでは、まず、半導体素子1の複数の素子電極11の各々を、複数の接合層41に対して個別に仮付けする。次いで、複数の接合層41をリフローにより溶融させる。最後に、溶融した複数の接合層41を冷却により固化させる。この工程を経て、複数の接合層41を介して、配線層3に半導体素子1が接合される。複数の回路部品19は、たとえばはんだまたはAgペーストなどを介して、配線層3(配線パターン部31)に接合される。
【0045】
次いで、図17に示すように、第2樹脂層86を形成する。第2樹脂層86は、支持部材2の上方に、半導体素子1、複数の回路部品19、配線層3および磁性膜39を覆うように、形成される。第2樹脂層86の形成は、たとえばモールド成形による。第2樹脂層86は、たとえば黒色のエポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂である。第2樹脂層86としては、当該合成樹脂ではなく、他の絶縁性の樹脂材料であってもよい。第2樹脂層86は、後に封止樹脂6となる部材である。第2樹脂層86は、厚さ方向zの一方を向く頂面861を有する。頂面861は、封止樹脂6における樹脂主面61に相当する。
【0046】
次いで、図18に示すように、支持基板80を除去する。当該支持基板80の除去では、たとえば、基板裏面80b側から支持基板80を研削する。当該研削では、支持基板80を、基板裏面80b側から行う。図示された例では、当該研削を、支持基板80の除去後も継続して行うことで、支持部材2、柱状部501および放熱パッド29を低背化する。この低背化は、行わなくてもよい。
【0047】
次いで、図19に示すように、第2樹脂層86に溝部869を形成する。当該溝部869の形成では、切断線CL1の部分を、たとえばダイシングブレードを用いたハーフカットにより除去する。溝部869を形成することで、支持部材2は半導体素子1ごとに分割され、支持部材2の側面が溝部869において露出する。
【0048】
次いで、図20に示すように、外部電極部502を形成する。外部電極部502は、裏面22から露出する柱状部501および放熱パッド29の頂面と、溝部869において露出する柱状部501の側面および配線層3の側面とに形成される。外部電極部502の形成は、たとえば無電解めっきによる。当該無電解めっきでは、柱状部501に接する側から、Ni層、Pd層、Au層の順に積層させる。これにより、各々が柱状部501および外部電極部502を含む複数の端子5(内方端子51および複数の側方端子52)が形成される。
【0049】
その後、図20に示す切断線CL2で、第2樹脂層86を切断することで、半導体素子1ごとに個片化する。第2樹脂層86の切断は、たとえばダイシングブレードを用いた切削加工により行われる。この工程で用いられるダイシングブレードの厚みは、上記溝部869の形成(ハーフカット)で用いるダイシングブレードよりも薄い。第2樹脂層86が切断線CL2で分割されることで、半導体装置A10における封止樹脂6が形成される。
【0050】
以上の工程を経て、図1図10に示す半導体装置A10が製造される。なお、半導体装置A10の製造方法は、上記した例に限定されない。たとえば、複数の接合層41は、配線層3の上面に形成するのではなく、半導体素子1の複数の素子電極11にそれぞれ個別に形成していてもよい。また、たとえば、支持部材2が単結晶の真性半導体(たとえばSi)を含む場合、次のように製造される。それは、上記支持基板80(シリコンウエハ)に、エッチング等により溝を形成する。次いで、当該溝に複数の柱状導体850a,829を形成する。次いで、第1樹脂層82を形成することなく、配線層3を形成する。また、第2樹脂層86の形成後において、支持基板80を除去するのではなく、先述の溝に形成された複数の柱状導体850a,829が露出するまで、研削する。このような工程に変更することで、支持部材2が半導体材料からなる半導体装置A10が製造される。
【0051】
半導体装置A10の作用および効果は、次の通りである。
【0052】
半導体装置A10では、配線層3は、コイルパターン部32を含む。封止樹脂6は、半導体素子1および配線層3を覆う。この構成によれば、配線層3のコイルパターン部32への通電によりインダクタンスが得られるので、ディスクリート部品としてのインダクタが不要となる。したがって、封止樹脂6の厚さが大きくなることを抑制できるので、半導体装置A10は、封止樹脂6の低背化を図ることができる。これにより、半導体装置A10は、支持部材2の反りを抑制できるので、製造する上での不都合を解消できる。
【0053】
半導体装置A10は、コイルパターン部32を覆う磁性膜39を備える。この構成によれば、コイルパターン部32への通電によって生じるインダクタンスの値を大きくできる。特に、半導体装置A10では、磁性膜39はコイルパターン部32の全体を覆うので、コイルパターン部32におけるインダクタンス値を向上させる上で好ましい。
【0054】
半導体装置A10は、コイルパターン部32は、搭載面21に平面巻回された平面コイルであり、配線パターン部31と厚さ方向zにおいて同じ位置にある。この構成によれば、コイルパターン部32を、一層の配線層3で構成できるので、封止樹脂6を低背化させる上で好ましい。
【0055】
半導体装置A10は、放熱パッド29を備える。放熱パッド29は、平面視において半導体素子1に重なる。この構成によれば、半導体素子1への通電によって発生する熱を、放熱パッド29を介して放熱することができる。つまり、半導体装置A10は、半導体素子1からの熱の放熱性を向上できる。特に、半導体装置A10では、半導体素子1の素子電極11は、放熱パッド29に接合されているので、半導体素子1からの熱の放熱性を向上させる上で好ましい構造である。
【0056】
半導体装置A10では、複数の端子5は、平面視において半導体素子1に重ならない。この構成によれば、半導体素子1の下方には、複数の端子5が配置されないので、放熱パッド29を配置することができる。したがって、半導体装置A10は、半導体素子1からの熱の放熱性を向上する上で好ましい構造である。
【0057】
半導体装置A10では、支持部材2は、樹脂材料を含み、当該樹脂材料は、封止樹脂6と同じである。この構成によれば、支持部材2の線膨張係数と封止樹脂6の線膨張係数との差を小さくできるので、半導体装置A10で発生する熱応力を抑制できる。
【0058】
半導体装置A10では、複数の側方端子52の各々において、外部電極部502が柱状部501のうちの側面23から露出する面にも形成されている。この構成によれば、半導体装置A10を、電子機器などの配線板に実装した際、当該実装時に用いる導電性接合材(たとえばはんだ)にフィレットが形成されうる。したがって、半導体装置A10は、電子機器などの配線板に適正に接合されているかの外観検査が容易となる。
【0059】
半導体装置A10では、コイルパターン部32は、平面視において半導体素子1に重ならない。この構成によれば、コイルパターン部32への通電によって生じる磁界が半導体素子1に伝達されることを抑制できる。
【0060】
以下に、本開示の半導体装置の他の実施形態および変形例について、説明する。各実施形態および各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0061】
図21は、第1実施形態の第1変形例にかかる半導体装置A11を示している。図21は、半導体装置A10における図7の断面に対応する。半導体装置A11は、半導体装置A10と比較して、次の点で異なる。それは、半導体装置A11の封止樹脂6の各樹脂側面63に段差がない。
【0062】
半導体装置A11の封止樹脂6では、各樹脂側面63は、平坦である。各樹脂側面63は、支持部材2の複数の側面23のうちの対応する1つと面一である。この構成では、各側方端子52において、外部電極部502は、柱状部501のうちの下面(裏面22から露出する面)には形成されるが、柱状部501のうちの側面(側面23から露出する面)には形成されない。
【0063】
半導体装置A11は、たとえば上記半導体装置A10の製造方法において、第2樹脂層86に溝部869を形成するハーフカットダイシング(上記図19に示す工程)を行うことなく、次の工程に進むことで、製造される。
【0064】
図22および図23は、第1実施形態の第2変形例にかかる半導体装置A12を示している。半導体装置A12は、半導体装置A10と比較して、コイルパターン部32の位置が異なる。
【0065】
半導体装置A12では、コイルパターン部32は、半導体素子1の下方に配置されている。よって、コイルパターン部32は、平面視において、半導体素子1に重なる。このような構成では、図22に示すように、支持部材2の平面視面積の縮小化を図ることができる。したがって、半導体装置A12は、半導体装置A10よりも平面視面積の縮小化が可能である。
【0066】
図22および図23に示す例では、半導体装置A12は、放熱パッド29を備えていないが、たとえば、図24に示すように、放熱パッド29を、半導体素子1の上方に配置することも可能である。図24に示す構成では、支持部材2の平面視面積の縮小化を図りつつ、半導体素子1からの熱の放熱性を向上させることができる。
【0067】
第1実施形態の第1変形例および第2変形例にかかる各半導体装置A11,A12においても、半導体装置A10と同様に、配線層3にコイルパターン部32が形成されている。したがって、各半導体装置A11,A12は、半導体装置A10と同様に、封止樹脂6の低背化を図ることができる。これにより、各半導体装置A11,A12は、支持部材2の反りを抑制できるので、製造する上での不都合を解消できる。その他、各半導体装置A11,A12は、半導体装置A10と共通する構成により、半導体装置A10と同様の効果を奏する。
【0068】
図25および図26は、第2実施形態にかかる半導体装置A20を示している。半導体装置A12は、半導体装置A10と比較して、次の点で異なる。第1に、半導体装置A12は、接続部材71を備える。第2に、複数の端子5が内方端子51を含んでいない。
【0069】
半導体装置A20において、複数の端子5は、複数の側方端子52とともに、複数の側方端子53を含む。図示された例では、複数の側方端子53は、平面視において、支持部材2の第1方向xの一方側に、第2方向yに沿って配置される。複数の側方端子53は、半導体装置A10において、半導体素子1および複数の回路部品19のいずれにも導通しない複数の側方端子52に相当する。複数の側方端子53のいずれかは、コイルパターン部32に導通する。当該コイルパターン部32に導通する側方端子53は、特許請求の範囲に記載の「コイル端子」の一例である。複数の側方端子53は、側方端子52と同様に、柱状部501および外部電極部502を含む。
【0070】
半導体装置A20において、配線層3は、複数の配線パターン部33を含む。複数の配線パターン部33はそれぞれ、複数の側方端子53のうちの対応する1つにそれぞれ接する。
【0071】
図25に示すように、半導体装置A20において、磁性膜39は、平面視において矩形環状に形成されている。この構成により、図25および図26に示すように、コイルパターン部32の第2端322は、磁性膜39から露出する。
【0072】
接続部材71は、互いに離間する部位を電気的に接続する。接続部材71は、たとえばボンディングワイヤであるが、板状の導電部材(リード部材)であってもよい。接続部材71の構成材料は、導電性材料であれば何ら限定されないが、たとえばAu、AlおよびCuのいずれかを含む。図25および図26に示すように、接続部材71は、コイルパターン部32の第2端322と、複数の配線パターン部33のいずれかに接合されている。図示された例では、接続部材71は、第2方向yに沿って配置された複数の配線パターン部33のうちの第2方向y中央に位置する配線パターン部33に接合されている。したがって、複数の側方端子53のうちの第2方向y中央に位置する側方端子53が、接続部材71を介して、コイルパターン部32に導通する。
【0073】
第2実施形態にかかる半導体装置A20においても、半導体装置A10と同様に、配線層3にコイルパターン部32が形成されている。したがって、半導体装置A20は、半導体装置A10と同様に、封止樹脂6の低背化を図ることができる。これにより、半導体装置A20は、支持部材2の反りを抑制できるので、製造する上での不都合を解消できる。その他、半導体装置A20は、半導体装置A10と共通する構成により、半導体装置A10と同様の効果を奏する。
【0074】
半導体装置A20では、複数の端子5はそれぞれ、支持部材2の複数の側面23のいずれかから露出する。この構成によれば、複数の側方端子53のうちの1つが、コイルパターン部32に導通するコイル端子となる。したがって、半導体装置A20では、半導体装置A10と異なり、当該コイル端子も、半導体装置A20の側方から視認できる。これにより、半導体装置A20では、当該コイル端子と、電子機器などの配線板との接合を容易に外観検査することができる。
【0075】
図27は、第2実施形態の第1変形例にかかる半導体装置A21を示している。図27は、半導体装置A20における図26の断面に対応する。半導体装置A21は、半導体装置A20と比較して、次の点で異なる。第1に、半導体装置A21は、接続部材71を備えていない。第2に、半導体装置A21は、絶縁層72を備える。
【0076】
絶縁層72は、絶縁材料により構成される。当該絶縁材料は、何ら限定されないが、たとえばポリイミド樹脂である。本実施形態では、図27に示すように、絶縁層72上に、コイルパターン部32の巻回部323が形成される。よって、絶縁層72の一部は、コイルパターン部32の巻回部323の下方に配置される。また、図27に示すように、絶縁層72は、巻回部323と、複数の側方端子53のうちの1つとの間に配置され、これを電気的に絶縁する。この構成により、当該側方端子53は、巻回部323に接触(短絡)することなく、第2端322の下方まで延出できる。このため、半導体装置A21では、先述の側方端子53は、第2端322の下方まで延出されて、第2端322に接する。つまり、先述の側方端子53は、第2端322に電気的に接続される。
【0077】
図28は、第2実施形態の第2変形例にかかる半導体装置A22を示している。図28は、半導体装置A20における図26の断面に対応する。半導体装置A22は、半導体装置A21と比較して、次の点で異なる。それは、コイルパターン部32が、複数の配線パターン部31,33に対して、厚さ方向z上方に配置される。
【0078】
半導体装置A22において、コイルパターン部32は、図28に示すように、複数の配線パターン部31,33の一部に対して、絶縁層72を介して積層されている。コイルパターン部32は、一対の貫通部325を含む。一対の貫通部325はそれぞれ、絶縁層72を厚さ方向zに貫通する。一対の貫通部325の一方は、第1端321と配線パターン部31との間に挟まれ、これらを電気的に接続する。この配線パターン部31は、半導体素子1に導通する。一対の貫通部325の他方は、第2端322と配線パターン部33の他端との間に挟まれ、これらを電気的に接続する。これにより、この配線パターン部33に接する側方端子53は、コイルパターン部32に導通する。
【0079】
第2実施形態の第1変形例および第2変形例にかかる各半導体装置A21,A22においても、半導体装置A20(A10)と同様に、配線層3にコイルパターン部32が形成されている。したがって、各半導体装置A21,A22は、半導体装置A20(A10)と同様に、封止樹脂6の低背化を図ることができる。これにより、各半導体装置A21,A22は、支持部材2の反りを抑制できるので、製造する上での不都合を解消できる。その他、各半導体装置A21,A22は、半導体装置A20(A10)と共通する構成により、半導体装置A20(A10)と同様の効果を奏する。
【0080】
上記第1実施形態および上記第2実施形態(これらの変形例を含む)では、各半導体装置A10~A12,A20~A22は、複数の回路部品19を備えていたが、複数の回路部品19のいずれも備えていなくてもよい。
【0081】
上記第1実施形態および上記第2実施形態(これらの変形例を含む)にかかる各半導体装置A10~A12,A20~A22では、複数の端子5は、コイルパターン部32に導通するコイル端子(たとえば内方端子51)を含んでいたが、この例と異なり、複数の端子5は、コイル端子を含んでいなくてもよい。この場合、コイルパターン部32は、半導体装置A10の内部で、配線層3を介して、半導体素子1および複数の回路部品19に適宜導通する。
【0082】
上記第1実施形態および上記第2実施形態(これらの変形例を含む)にかかる各半導体装置A10~A12,A20~A22では、コイルパターン部32は、半導体装置A10の内部において、半導体素子1に導通していたが、この例と異なり、半導体素子1に導通していなくてもよい。このような変形例にかかる半導体装置は、たとえば次のように構成される。それは、当該半導体装置は、複数の端子5が2つの内方端子51を含み、2つの内方端子51の一方がコイルパターン部32の第1端321に導通し、2つの内方端子51の他方がコイルパターン部32の第2端322に導通する。
【0083】
本開示にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の半導体装置の各部の具体的な構成、および、本開示の半導体装置の製造方法の各工程の具体的な処理はそれぞれ、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示の半導体装置は、以下の付記に関する実施形態を含む。
付記1.
半導体素子と、
厚さ方向の一方を向く搭載面を有し、前記半導体素子を支持する支持部材と、
前記搭載面に少なくとも一部が接する配線層と、
前記支持部材を貫通し、前記配線層に導通する複数の端子と、
前記搭載面に形成され、前記半導体素子および前記配線層を覆う封止樹脂と、
を備え、
前記配線層は、前記半導体素子に導通する配線パターン部と、コイルパターン部と、を含む半導体装置。
付記2.
前記封止樹脂に覆われた磁性膜をさらに備え、
前記磁性膜は、前記コイルパターン部の少なくとも一部を覆う、付記1に記載の半導体装置。
付記3.
前記磁性膜は、前記コイルパターン部の全体を覆う、付記2に記載の半導体装置。
付記4.
前記配線パターン部と前記コイルパターン部とは、前記厚さ方向において同じ位置にある、付記1ないし付記3のいずれかに記載の半導体装置。
付記5.
前記コイルパターン部は、前記搭載面に平面巻回された平面コイルである、付記4に記載の半導体装置。
付記6.
前記複数の端子は、前記厚さ方向に見て、前記半導体素子の外方に配置される、付記1ないし付記5のいずれかに記載の半導体装置。
付記7.
前記コイルパターン部は、前記厚さ方向に見て、前記半導体素子に重ならない、付記6に記載の半導体装置。
付記8.
前記支持部材を前記厚さ方向に貫通する放熱パッドをさらに備え、
前記放熱パッドは、前記厚さ方向に見て前記半導体素子に重なる、付記7に記載の半導体装置。
付記9.
前記支持部材は、樹脂材料を含む、付記1ないし付記8のいずれかに記載の半導体装置。
付記10.
前記封止樹脂は、前記支持部材と同じ樹脂材料を含む、付記9に記載の半導体装置。
付記11.
前記複数の端子の各々は、前記支持部材を貫通する柱状部と、前記柱状部のうち前記支持部材から露出する面を覆う外部電極部とを含む、付記1ないし付記10のいずれかに記載の半導体装置。
付記12.
前記支持部材は、前記厚さ方向において前記搭載面と反対側を向く部材裏面を有し、
前記外部電極部は、前記部材裏面よりも突き出る、付記11に記載の半導体装置。
付記13.
前記複数の端子は、前記コイルパターン部に導通するコイル端子を含む、付記1ないし付記12のいずれかに記載の半導体装置。
付記14.
前記半導体素子は、前記厚さ方向の他方側を向く素子主面と、前記素子主面に配置された素子電極を有しており、
前記素子主面は、前記搭載面に対向する、付記1ないし付記13のいずれかに記載の半導体装置。
付記15.
前記支持部材は、前記厚さ方向に直交する第1方向を向く部材側面を有し、
前記複数の端子は、前記部材側面から露出する側方端子を含む、付記1ないし付記14のいずれかに記載の半導体装置。
付記16.
前記封止樹脂は、前記厚さ方向の一方を向く樹脂主面と、前記第1方向を向く樹脂側面を有し、
前記樹脂側面は、前記樹脂主面に繋がる第1側部と前記部材側面に繋がる第2側部とを有し、
前記第2側部は、前記部材側面と面一であり、
前記厚さ方向に見て、前記第1側部は、前記第2側部よりも外方に突き出ている、付記15に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0084】
A10,A11,A12,A20,A21,A22:半導体装置
1 :半導体素子
10a :素子主面
10b :素子裏面
11 :素子電極
19 :回路部品
191 :端子部
2 :支持部材
21 :搭載面
22 :裏面
23 :側面
29 :放熱パッド
3 :配線層
31,33:配線パターン部
32 :コイルパターン部
321 :第1端
322 :第2端
323 :巻回部
325 :貫通部
39 :磁性膜
41,42:接合層
5 :端子
501 :柱状部
502 :外部電極部
51 :内方端子
52,53:側方端子
6 :封止樹脂
61 :樹脂主面
62 :樹脂裏面
63 :樹脂側面
631 :第1側部
632 :第2側部
71 :接続部材
72 :絶縁層
80 :支持基板
80a :基板主面
80b :基板裏面
82 :第1樹脂層
821 :頂面
822 :底面
829 :柱状導体
850a :柱状導体
86 :第2樹脂層
861 :頂面
869 :溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28