(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051319
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63J 2/08 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B63J2/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157422
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 義典
(57)【要約】
【課題】通風の抵抗を低減できる船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、船体11の船首2に設けられた通風入口部41と、船体11の船尾3に設けられた通風出口部42と、を備える。そのため、船首2の通風入口部41から取り込まれた空気は、通風流路25を船首2から船尾3にわたって流通し、船尾3の通風出口部42から排出される。このように、空気は、上下方向に延びるダクトなどを通過することなく、船首2から船尾3にわたってスムーズに流れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体の船首に設けられた通風入口部と、
前記船体の船尾に設けられた通風出口部と、
前記船体内に設けられ、前記船体の船首から船尾にわたって通風する通風流路と、を備える、船舶。
【請求項2】
前記通風入口部の高さ位置と、前記通風出口部の高さ位置は、同じとなる、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記通風入口部及び前記通風出口部は、前記船体の船幅方向における中央位置に設けられる、請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記通風入口部には、開閉機構が設けられる、請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
自動車運搬船である、請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船体内へ通風を行う船舶が知られている。船体の上甲板にはファンを有する通風入口部と、通風出口部を有する。通風入口部から下方へ向かってダクトが延びる。また、通風出口部から下方へ向かってダクトが延びる。このような構成により、通風入口部から入り込んだ空気はダクトを通って貨物部を流れる。そして、空気は、通風出口部へ向かってダクトを通過し、通風出口部から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような船舶は、上下方向に延びる長いダクトが設けられている。そのため、船体内の換気を行う空気は、長いダクトを通過しなくてはならないため、通風の抵抗が大きくなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、通風の抵抗を低減できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶は、船体と、船体の船首に設けられた通風入口部と、船体の船尾に設けられた通風出口部と、船体内に設けられ、船体の船首から船尾にわたって通風する通風流路と、を備える。
【0007】
本発明に係る船舶は、船体の船首に設けられた通風入口部と、船体の船尾に設けられた通風出口部と、を備える。そのため、船首の通風入口部から取り込まれた空気は、通風流路を船首から船尾にわたって流通し、船尾の通風出口部から排出される。このように、空気は、上下方向に延びるダクトなどを通過することなく、船首から船尾にわたってスムーズに流れる。以上により、通風の抵抗を低減できる。
【0008】
通風入口部の高さ位置と、通風出口部の高さ位置は、同じとなってよい。この場合、通風入口部から取り込まれた空気が、同じ高さ位置の通風出口部へ向けて水平にスムーズに流れることができる。これにより、通風の抵抗を低減できる。
【0009】
通風入口部及び通風出口部は、船体の船幅方向における中央位置に設けられてよい。例えば、船体が傾斜することで、船幅方向の一方が海面に近付いたときなどに、海水が通風入口部及び通風出口部から入り込むことを抑制できる。
【0010】
通風入口部には、開閉機構が設けられてよい。例えば、船体内の火災時などに、開閉機構が通風入口部を遮断することで、酸素の供給を止めて火災を弱めることができる。
【0011】
船舶は、自動車運搬船であってよい。自動車運搬船は貨物室内の排気ガス等を換気する必要があるため、通風の抵抗を低減した状態で良好に換気することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通風の抵抗を低減できる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。
【
図3】通風入口部を船首側から船尾側へ向かって見た概略図である。
【
図4】通風入口部41を船幅方向から見た概略図である。
【
図5】通風機構の比較について説明した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の船首と船尾を結ぶ方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。船舶1は、例えば自動車を運搬する自動車運搬船舶である。なお、船舶は、自動車運搬船舶に限定されず、様々な種類の船舶であってよい。
【0016】
船舶1は、
図1に示すように、船体11と、推進器12と、を備えている。船体11は、船首2、船尾3、機関室4、各種タンク5、及び貨物室6を有している。船体11の上部には上甲板19が設けられている。
【0017】
船首2は、船体11の船首側における端部である。船首2は、例えば満載喫水状態における造波抵抗の低減が図られた形状を有している。船尾3は、船体11の船尾側における端部である。推進器12は、船体11の推力を機械的に発生させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられている。推進器12は、推進時に船尾3における喫水線(海Wの水面)よりも下方に設置される。また、船尾3における喫水線よりも下方には、推進方向を調整するための舵15が設置されている。
【0018】
機関室4は、船体11の船尾側であって、船体11の下側の領域に設けられている。機関室4は、推進器12に駆動力を付与するためのメインエンジンを配置するための区画である。タンク5は、燃料油や、LNGなどが貯留されるタンクである。タンク5は、機関室4より船首側であって、船体11の下側の領域に設けられている。なお、タンク5よりも船首側であって、船体11の下側の領域には、バッテリーやポンプなどの各種機器を配置する収納部7が形成される。
【0019】
貨物室6は、船体11の上側の領域に設けられている。貨物室6は、船体11の船首2から船尾3まで及んでいる。貨物室6は、自動車などの貨物を収容するための区画である。貨物室6は、上下方向に複数階の自動車デッキを有するように構成される。本実施形態では、貨物室6は、自動車デッキ6A,6B,6C,6D,6Eの五階層を有する。自動車デッキ6A,6Bの船首側には、収納部7が設けられる。自動車デッキ6A,6Bは、船尾3まで延びている。自動車デッキ6Cの船首側には、開口20が形成された引出部21が設けられる。自動車デッキ6Cは、船尾3まで延びている。自動車デッキ6D,6Eは、船首2から船尾3まで延びている。
【0020】
引出部21は、係留用のロープを引き出す部分である。開口20は、船体11の外壁を貫通するように設けられており、作業者が目視確認する開口である。船舶1を岸壁に係留する場合、船体11の内部から、引出部21の開口を介してロープを引き出す。
【0021】
船舶1は、船体11内の換気を行うための第1の通風機構30と、第2の通風機構40と、を備える。通風機構30は、貨物室6を通風流路25として、船首側から船尾側へ空気を流通させる。
【0022】
第1の通風機構30は、通風入口部31と、ダクト32と、通風流路25(ここでは貨物艙)と、ダクト33と、通風出口部34と、を備える。通風入口部31及び通風出口部34は、上甲板19の上に設けられる。通風入口部31からは、下方へ向かって自動車デッキ6A,6B,6Cまでそれぞれ延びるダクト32が設けられる。通風出口部34からは、下方へ向かって自動車デッキ6A,6B,6Cまでそれぞれ延びるダクト33が設けられる。第1の通風機構30は、船体11のうち、船幅方向の両端部に設けられる。なお、
図1には、第1の通風機構30の一部だけが示されており、更に多数の第1の通風機構30を有してよい。
【0023】
図2は、通風入口部31の具体的構成を示す概略図である。通風入口部31は、上甲板19上に設けられ、開口部31aから空気を取り込むファン35を有する。ファン35は、ダクト32に接続される。開口部31aには、当該開口部31aを開閉する開閉機構36が設けられる。開閉機構36は、開口部31aを蓋で塞ぐことで当該開口部31aを閉じることができる。開閉機構36は、開口部31aの蓋を開けることで当該開口部31aを開くことができる。ファン35及び開閉機構36の周囲は、ハウジング37で覆われている。なお、通風出口部34は、通風入口部31と同様な構成を有する。
【0024】
図1に示すように、第2の通風機構40は、通風入口部41と、通風流路25と、通風出口部42と、を備える。通風入口部41は、船首2に設けられる。通風出口部42は、船尾3に設けられる。船体11内には、船体11の船首2から船尾3にわたって通風する通風流路25が設けられる。通風入口部41は、自動車デッキ6D,6Eに対応する高さ位置に設けられ、通風出口部42は、自動車デッキ6D,6Eに対応する高さ位置に設けられる。このように、通風入口部41の高さ位置と、通風出口部42の高さ位置は、同じとなる。なお、「同じ」とは、高さ位置が完全に一致している場合のみならず、通風機能が得られる範囲で多少のずれは許容される。
【0025】
図3は、通風入口部41を船首側から船尾側へ向かって見た概略図である。
図3に示すように、通風入口部41は、自動車デッキ6D,6Eに対応する高さ位置にて、船体11の船幅方向における中央位置に設けられる。通風入口部41は、船体11の船首2における外壁を貫通して、船体11の外部と内部を連通する。具体的に、通風入口部41は、自動車デッキ6Dに対して設けられる一対の開口ユニット41Dを有する。一対の開口ユニット41Dは、船幅方向の中央位置において、互いに船幅方向に並ぶように設けられる。通風入口部41は、自動車デッキ6Eに対して設けられる一対の開口ユニット41Eを有する。一対の開口ユニット41Eは、船幅方向の中央位置において、互いに船幅方向に並ぶように設けられる。なお、船舶が小さい場合は、開口ユニットは一つでよい。開口ユニット41D,41Eは、いずれもルーバー46が設けられたルーバー付き開口である。ルーバー46とは、開口を覆うように複数の羽板を互いに平行に設けたものである。これにより、開口ユニット41D,41Eから異物が混入することを防止し、雨水対策を行うことができる。なお、開口20には、このようなルーバーは設けられていない。
【0026】
図4は、通風入口部41を船幅方向から見た概略図である。
図4に示すように、開口ユニット41D,41Eは、ファン47と、開閉機構48と、ハウジング49と、を有する。ファン47は、船体11の外部の空気を船体11内に取り込む。開閉機構48は、
図2の開閉機構36と同趣旨の構成を有しており、空気を取り込む開口部を開閉する。ハウジング49は、ファン47及び開閉機構48の周囲を覆う。ハウジング49の前面は開口していると共に、ルーバー46(
図3(a)参照)が設けられる。このような構成により、開閉機構36が開いた状態でファン47が回転することで、ハウジング49の前面から空気ARが船体11内に取り込まれる。なお、ハウジング49は船体前面より突出しても良いし、船体内に設けられた窪みに設けられても良い。取り込まれた空気ARは、自動車デッキ6D,6Eを通過する。なお、開口20には、ファン47、開閉機構48は設けられていない。なお、通風出口部42は、通風入口部41と同様なルーバー46、ファン47、開閉機構48、ハウジング49を有する。
【0027】
次に、本実施形態に係る船舶1の作用・効果について説明する。
【0028】
本実施形態に係る船舶1は、船体11の船首2に設けられた通風入口部41と、船体11の船尾3に設けられた通風出口部42と、を備える。そのため、船首2の通風入口部41から取り込まれた空気は、通風流路25を船首2から船尾3にわたって流通し、船尾3の通風出口部42から排出される。このように、空気は、上下方向に延びるダクトなどを通過することなく、船首2から船尾3にわたってスムーズに流れる。以上により、通風の抵抗を低減できる。
【0029】
比較例として、第2の通風機構40を有さず、第1の通風機構30のみによって構成される船舶について説明する。
図5に示すように、第2の通風機構40では、通風入口部31から取り込まれた空気ARは、上下方向に延びる長いダクト32を通過してから、通風流路25を通過して貨物室6の換気を行う。そして、空気ARは、上下方向に延びる長いダクト33を通過してから通風出口部34から排出される。そのため、空気が長いダクト32,33を通過する分、通風の抵抗が大きくなる。比較例に係る船舶は、第2の通風機構40のみで換気を行う必要があるため、船舶全体の通風の抵抗が大きくなる。
【0030】
一方、本実施形態に係る船舶1は、第1の通風機構30のみならず、第2の通風機構40を備えている。
図5に示すように、通風入口部41から取り込まれた空気ARは、長いダクトを通過することなく、そのまま通風流路25を通過して貨物室6を換気し、そのまま通風出口部42から排出される。このように、第2の通風機構40は、長いダクト32,33が不要である分、通風の抵抗が小さくなる。また、第2の通風機構40は、途中で空気の流れの方向が変わることなく、船首2から船尾3へ真っ直ぐに流すことができる。また、第2の通風機構40では、通風入口部41及び通風出口部42の開口面積を拡大することができるため、空気の収縮抵抗を低減することができる。更に、通風の抵抗を低減することができるため、ファンの損失抵抗を低減し、ファンのモーターの小型化を図ると共に、使用電力を低減することができる。更に、船舶1が前進する場合、船舶1の前進速度を利用して、通風入口部41から空気ARを取りこむ事ができ、使用電力を更に低減できる。また、ファンの小型化や使用電力低減に伴い、ファンの騒音も低減できる。
【0031】
通風入口部41の高さ位置と、通風出口部42の高さ位置は、同じとなってよい。この場合、通風入口部41から取り込まれた空気が、同じ高さ位置の通風出口部42へ向けて水平にスムーズに流れることができる。これにより、通風の抵抗を低減できる。
【0032】
通風入口部41及び通風出口部42は、船体11の船幅方向における中央位置に設けられてよい。例えば、
図6に示すように、船体11が傾斜することで、船幅方向の一方が海面に近付いた場合、船幅方向の端部側の通風入口部41(仮想線で示す)は海面に近付く。そのため、通風入口部41から海水が入り込む可能性がある。一方、通風入口部41及び通風出口部42が船幅方向における中央位置に設けられている場合、船体11が傾斜しても海面から離れた位置に配置されるため、海水が通風入口部41及び通風出口部42から入り込むことを抑制できる。
【0033】
通風入口部41には、開閉機構48が設けられてよい。例えば、船体11内の火災時などに、開閉機構48が通風入口部を遮断することで、酸素の供給を止めて火災を弱めることができる。
【0034】
船舶1は、自動車運搬船であってよい。自動車運搬船は貨物室6内の排気ガス等を換気する必要があるため、通風の抵抗を低減した状態で良好に換気することができる。
【0035】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
例えば、船体11の構造は
図1に示すものに限定されない。例えば、自動車デッキの階数などは特に限定されない。また、船舶の構造も、用途等に応じて適宜変更してよい。
【0037】
[形態1]
船体と、
前記船体の船首に設けられた通風入口部と、
前記船体の船尾に設けられた通風出口部と、
前記船体内に設けられ、前記船体の船首から船尾にわたって通風する通風流路と、を備える、船舶。
[形態2]
前記通風入口部の高さ位置と、前記通風出口部の高さ位置は、同じとなる、形態1に記載の船舶。
[形態3]
前記通風入口部及び前記通風出口部は、前記船体の船幅方向における中央位置に設けられる、形態1又は2に記載の船舶。
[形態4]
前記通風入口部には、開閉機構が設けられる、形態1~3の何れか一項に記載の船舶。
[形態5]
自動車運搬船である、形態1~4の何れか一項に記載の船舶。
【符号の説明】
【0038】
1…船舶、11…船体、25…通風流路、41…通風入口部、42…通風出口部。