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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051332
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/02 20060101AFI20240404BHJP
   B63B 39/03 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B63H9/02
B63B39/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157440
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 義典
(57)【要約】
【課題】帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、風が吹いたときには、風力推進部10による推進力で帆走を行うことができる。ここで、船舶1は、船体11の傾斜度合いを検出する情報検出部51と、情報検出部51の検出結果に基づいて、船体11の傾斜を抑制する傾斜抑制部60と、を備える。そのため、傾斜抑制部60は、船体11が傾斜したときには、船体11の傾斜を抑制することによって、船体11の傾斜による推進効率の低下の影響を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
風力によって前記船体を推進させる複数の風力推進部と、
前記船体の傾斜度合いを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記船体の傾斜を抑制する傾斜抑制部と、を備える、船舶。
【請求項2】
前記傾斜抑制部は、前記船体の傾き度合いに応じて、バラストタンクのバラスト水の量を調整する、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記傾斜抑制部は、質量体を移動させる、請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記傾斜抑制部は、前記風力推進部を移動させる、請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
船体と、
風力によって前記船体を推進させる複数の風力推進部と、
前記船体の傾斜度合いを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記風力推進部の傾斜を調整する傾斜調整部と、を備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CO等のGHGガスの削減のために、風力等の再生可能エネルギーを用いて推力を発生する船舶が知られている。例えば、特許文献1に記載された船舶は、プロペラによる推進器に加えて、船体上に、風力によって船体を推進させる風力推進部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-45018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような船舶は、ロータ帆などを有する風力推進部を船体に複数備えている。船舶は、全ての風力推進部において最大の推力が得られるように各風力推進部を制御する。船舶においては、船体が傾斜することによって、船体が旋回する回頭モーメントが発生し、それに対応するための当て舵の抵抗によって帆走の推進効率が低下するという問題があった。また、船体が傾斜することによって、推進力の水平成分が低減されることで、帆走の推進効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船体と、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部と、船体の傾斜度合いを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、船体の傾斜を抑制する傾斜抑制部と、を備える。
【0007】
本発明に係る船舶は、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部を備える。そのため、船舶は、風が吹いたときには、風力推進部による推進力で帆走を行うことができる。ここで、船舶は、船体の傾斜度合いを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、船体の傾斜を抑制する傾斜抑制部と、を備える。そのため、傾斜抑制部は、船体が傾斜したときには、船体の傾斜を抑制することによって、船体の傾斜による推進効率の低下の影響を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【0008】
傾斜抑制部は、船体の傾き度合いに応じて、バラストタンクのバラスト水の量を調整してよい。傾斜抑制部は、船体が傾斜したとき、船体が沈んでいる方に比して浮いている方のバラスト水の量を多くすることで、船体の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。バラストタンクは船体に既設の設備である。従って、既設の設備内のバラスト水の量を調整することで、傾斜抑制部は、シンプルな機構にて、傾斜の抑制を行うことができる。
【0009】
傾斜抑制部は、質量体を移動させてよい。この場合、傾斜抑制部は、船体が傾斜したとき、船体が浮いている方へ質量体を移動させることで、船体の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。
【0010】
傾斜抑制部は、風力推進部を移動させてよい。この場合、傾斜抑制部は、船体が傾斜したとき、船体が浮いている方へ風力推進部を移動させることで、船体の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る船舶は、船体と、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部と、船体の傾斜度合いを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、風力推進部の傾斜を調整する傾斜調整部と、を備える。
【0012】
本発明に係る船舶は、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部を備える。そのため、船舶は、風が吹いたときには、風力推進部による推進力で帆走を行うことができる。ここで、船舶は、船体の傾斜度合いを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、風力推進部の傾斜を調整する傾斜調整部と、を備える。そのため、傾斜調整部は、船体が傾斜したときには、風力推進部の傾斜を抑制することによって、風力推進部の揚力の鉛直成分を減少させることができ、船体の傾斜による推進効率の低下の影響を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。
図2】(a)はロータ帆の原理について説明する図であり、(b)は船舶の平面図である。
図3】制御システムを示すブロック図である。
図4】船体を後側から見たときの概略断面図である。
図5】船体が傾斜した様子を示す概略断面図である。
図6】船体の傾斜を抑制した様子を示す概略断面図である。
図7】変形例を示す図である。
図8】変形例を示す図である。
図9】変形例を示す図である。
図10】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の船首と船尾を結ぶ方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。船舶1は、例えば原油や液体ガス等の石油系液体貨物を運搬する船舶であり、例えば、オイルタンカーである。なお、船舶は、オイルタンカーに限定されず、例えば、バルクキャリア、その他、様々な種類の船舶であってよい。
【0017】
船舶1は、図1に示すように、船体11と、推進器12と、複数の風力推進部10と、を備えている。船体11は、船首部2と、船尾部3と、機関室4と、貨物室6と、を有している。船体11の上部には(または船内には)上甲板19が設けられている。船首部2は、船体11の前方側に位置している。船尾部3は、船体11の後方側に位置している。
【0018】
船首部2は、例えば満載喫水状態における造波抵抗の低減が図られた形状を有している。推進器12は、船体11の推力を機械的に発生させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられている。推進器12は、推進時に船尾部3における喫水線(海Wの水面)よりも下方に設置される。また、船尾部3における喫水線よりも下方には、推進方向を調整するための舵15が設置されている。
【0019】
機関室4は、船尾部3の船首側に隣り合う位置に設けられている。機関室4は、推進器12に駆動力を付与するためのメインエンジン16を配置するための区画である。上甲板19上には、機関室4の上方に居住区22、及び排気用の煙突23が設けられる。貨物室6は、船首部2と機関室4との間に設けられている。貨物室6は、貨物を収容するための区画である。貨物室6は、外板20と内底板21の二重船殻構造を採用することによって、複数の貨物室26と複数のバラストタンク27とに区画されている。バラストタンク27は、船の大きさ等に応じた量のバラスト水を収容する。
【0020】
風力推進部10は、風力によって船体11を推進させる機構である。本実施形態では、風力推進部10としてロータ式の風力推進機構が採用されている。風力推進部10は、船体11の上甲板19上に前後方向に並ぶように複数(ここでは四個)設けられている。図2(a)に示すように、風力推進部10は、上下方向に延びる円柱状のロータ帆31と、ロータ帆31を回転させる電動機32と、を備える。ロータ帆31に対して横側から風WDが吹き込むと、後側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが互いに反対となり、前側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが一致する。これによって、ロータ帆31の前後で圧力差が発生することで、前側へ向かう推力PFが発生する(マグナス効果)。図2(b)に示すように、船体11に対して横側から風WDが吹くことで、各風力推進部10の推力PFにより、船体11は前方へ進む。なお、本実施形態では、四本の風力推進部10A、10B,10C,10Dが設けられている。
【0021】
図3を参照して、制御装置50を備える制御システム100について説明する。制御装置50は、上述のような複数の風力推進部10を有する船舶1を制御する装置である。制御装置50は、船体11の傾斜を抑制する。
【0022】
具体的に、制御システム100は、前述の複数の風力推進部10と、推進器12と、舵15と、傾斜抑制部60と、を備える。また、制御システム100は、これらの機器を制御する制御装置50と、情報検出部51(検出部)と、を備える。
【0023】
制御装置50は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを統括し、後述する制御部30の機能を実現する。制御部30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部30は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0024】
制御装置50は、風力推進部10A,10B,10C,10Dの電動機32A,32B,32C,32Dへ制御信号を出力することで、ロータ帆31を所望の回転数で回転させる。制御装置50は、推進器12の駆動部(メインエンジン16等)へ制御信号を出力することで、推進器12を動作させる。制御装置50は、舵15の駆動部へ制御信号を出力することで、舵が所望の角度となるように動作させる。
【0025】
情報検出部51は、制御装置50の演算に必要な各種情報を検出する。情報検出部51は、風向き、及び風速などの風に関する情報を検出可能な風向風速計52を有する(図1参照)。情報検出部51は、舵15の角度を検出する舵角計53を有する(図1参照)。また、情報検出部51は、船体11の姿勢・動揺などの船体運動や方位を計測する計測器54を備える(図1参照)。情報検出部51は、計測器54の結果から、船体11の傾斜度合いを検出することができる。その他、情報検出部51は、天気予報等の予め風の状態を把握しておくことができるような情報受信部を備える。情報検出部51は、GPSなど、船体11の位置を検出可能な計測器を備える。情報検出部51は、検出した情報を制御装置50へ送信する。
【0026】
傾斜抑制部60は、情報検出部51の傾斜度合いの検出結果に基づいて、船体11の傾斜を抑制する。傾斜抑制部60は、船体11が一方側へ沈むように傾斜した場合、一方側の質量を軽くし、他方側の質量を重くするように質量移動することにより、船体11の傾斜を抑制する。なお、本実施形態では、傾斜抑制部60は、船幅方向における傾斜を抑制する場合を例示しているが、傾斜方向は特に限定されず、前後方向における傾斜を抑制してもよい。
【0027】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る船舶1の傾斜抑制部60について説明する。図4は、船体11を後側から見たときの概略断面図である。図4に示すように、船体11は、右舷側のバラストタンク27Aと、左舷側のバラストタンク27Bと、底側のバラストタンク27Cと、を備える。バラストタンク27A,27Bは、船幅方向の外板20Aと内板21Aとの間にそれぞれ形成される。バラストタンク27Cは、底側の外板20Bと内板21Bとの間に形成される。本実施形態では、ロータ帆31は、上甲板19の船幅方向の中央位置に設けられる。
【0028】
傾斜抑制部60は、船体11の傾き度合いに応じて、バラストタンク27A,27Bのバラスト水の量を調整する。傾斜抑制部60は、ポンプ61と、配管62と、バルブ63A,63Bと、を備える。ポンプ61は、バラストタンク27A,27Bに対してバラスト水を圧送する。配管62は、ポンプ61と、バラストタンク27A,27Bとを接続する。バルブ63Aは、バラストタンク27Aとポンプ61との間の配管62に接続される。バルブ63Bは、バラストタンク27Bとポンプ61との間の配管62に接続される。
【0029】
次に、図5及び図6を参照して、傾斜抑制部60の動作について説明する。図5は、船体11が右舷側に沈んだ状態の船舶1を示す。船舶1に向かって横側から風が吹くと、複数の風力推進部10にて揚力が発生する。これらの揚力を合算した場合の中心を揚力中心CE(Center of Effort)とする。当該揚力中心CEにて船舶1全体の揚力LFが発生する。一方、船舶1に風が吹き付けることにより当該風に対する抗力が発生する。このときの、横方向における抗力RFの中心を抵抗中心CLR(Center of Lateral Resistane)とする。当該抵抗中心CLRにて、揚力LFとは反対側へ横方向における抗力RFが発生する。抵抗中心CLRには浮力FFが作用する。なお、抵抗中心CLRを通過する鉛直方向に延びる線を基準線SLとする。
【0030】
船体11が傾斜すると、風力推進部10が基準線SLに対して傾斜する。従って、揚力LFが斜め下方向へ傾斜する。そのため、揚力LFは、水平方向の成分LFxと、鉛直方向の下向きの成分LFzと、を有する。このように鉛直方向の成分LFzが発生する場合、揚力LFを推力に変換する際に成分LFzが推力に寄与しないため、ロスが発生する。
【0031】
また、船体11が傾斜すると、揚力中心CEが基準線SLから水平方向にずれる。当該ずれの影響により、船体11に回頭モーメントが作用することで、船体11が旋回する。当該旋回を防止するために舵15を切ると、当て舵の抵抗によって帆走の推進効率が低下する。
【0032】
これに対し、図6に示すように、傾斜抑制部60は、情報検出部51の検出結果から船体11の傾斜が所定の大きさを超えた場合に、バラストタンク27Aのバラスト水をバラストタンク27Bへ供給する。具体的に、傾斜抑制部60は、バルブ63A,63Bを開にして、ポンプ61を作動させ、バラストタンク27Aからバラストタンク27Bへバラスト水を供給する。これにより、右舷側のバラスト水が減少し、左舷側のバラスト水が増加する。そのため、船体11が左舷側へ戻ることで、船体11の姿勢が水平となり、傾斜が抑制される。図6に示すように、揚力LFが鉛直方向の成分を有さない。そのため、揚力LFを推力に変換する際に、ロスが生じない。また、揚力中心CEは、基準線SL上に配置される。従って、船体11には回頭モーメントが生じないため、推進効率が低下するような抵抗が生じない。
【0033】
次に、本実施形態に係る船舶1の作用・効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係る船舶1は、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部10を備える。そのため、船舶1は、風が吹いたときには、風力推進部10による推進力で帆走を行うことができる。ここで、船舶1は、船体11の傾斜度合いを検出する情報検出部51と、情報検出部51の検出結果に基づいて、船体11の傾斜を抑制する傾斜抑制部60と、を備える。そのため、傾斜抑制部60は、船体11が傾斜したときには、船体11の傾斜を抑制することによって、船体11の傾斜による推進効率の低下の影響を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【0035】
傾斜抑制部60は、船体11の傾き度合いに応じて、バラストタンク27A,27Bのバラスト水の量を調整してよい。傾斜抑制部60は、船体11が傾斜したとき、船体11が沈んでいる方に比して浮いている方のバラスト水の量を多くすることで、船体11の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。バラストタンク27A,27Bは船体11に既設の設備である。従って、既設の設備内のバラスト水の量を調整することで、傾斜抑制部60は、シンプルな機構にて、傾斜の抑制を行うことができる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、図7に示す構造を採用してもよい。図7に示すように、傾斜抑制部70は、質量体72を移動させてよい。この場合、傾斜抑制部70は、船体11が傾斜したとき、船体11の傾斜の反対側へ質量体72を移動させることで、船体11の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。傾斜抑制部70は、上甲板19上に、質量体72を船幅方向へ移動させるためのベース部材71を有する。ベース部材71は、下方へ向かって窪むように湾曲した上面71aを有する。これにより、傾斜抑制部70は、ベース部材71の上面71aに沿って質量体72を船幅方向に沿って移動させることができる。
【0038】
図8に示すような傾斜抑制部80を採用してもよい。傾斜抑制部80は、ヒンジ部81と、支持部82と、質量体83と、を備える。ヒンジ部81は、上甲板19に設けられ、支持部82を船幅方向へ回動可能に支持する。支持部82の一端側はヒンジ部81に接続される。支持部82の他端部には質量体83が設けられる。このような構成により、傾斜抑制部80は、船体11が傾斜したとき、船体11の傾斜の反対側へ質量体72が移動するように、ヒンジ部81回りに支持部82を回動させる。
【0039】
図9に示すような傾斜抑制部90を採用してもよい。傾斜抑制部90は、風力推進部10を移動させる。この場合、傾斜抑制部90は、船体11が傾斜したとき、船体の傾斜の反対側へ風力推進部10を移動させることで、船体11の姿勢を戻し、傾斜を抑制することができる。具体的に、傾斜抑制部90は、上甲板19に設けられた移動支持部91を有する。移動支持部91は、風力推進部10を船幅方向にスライド移動するように、風力推進部10を支持する。図9においては、傾斜抑制部90は、船体11の右舷側及び左舷側において仮想線に示す位置へ風力推進部10を移動可能である。
【0040】
図10に示すような船舶1の構造を採用してもよい。図10に示す船舶1は、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部10を備える。そのため、船舶1は、風が吹いたときには、風力推進部10による推進力で帆走を行うことができる。ここで、船体11の傾斜度合いを検出する情報検出部51と、情報検出部51の検出結果に基づいて、風力推進部10の傾斜を調整する傾斜調整部110と、を備える。
【0041】
具体的に、傾斜調整部110は、上甲板19にて風力推進部10を回動可能に支持するヒンジ部によって構成される。図5に示すように、船体11の傾斜に伴って風力推進部10も傾斜する。これに対し、傾斜調整部110は、風力推進部10が上下方向に平行となるように、風力推進部10を回動させる。このとき、揚力LFは水平方向に作用するため、鉛直方向の下向きの成分が発生しない。傾斜調整部110は、船体11が傾斜したときには、風力推進部10の傾斜を抑制することによって、風力推進部10の揚力の鉛直成分を減少(または無くす)させることができ、船体11の傾斜による推進効率の低下の影響を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【0042】
なお、風力推進部の数や配置など、船体に対してどのように設けるかなどは特に限定されない。例えば、横方向にずれるような風力推進部を設けてもよい。
【0043】
船体11の構造も図1に示すものに限定されず、用途等に応じて適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0044】
1…船舶、11…船体、10…風力推進部、51…情報検出部(検出部)、60,70,80,90…傾斜抑制部、72,83…質量体、110…傾斜調整部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10